04/09/01 第2回「痴呆」に替わる用語に関する検討会議事録           第2回「痴呆」に替わる用語に関する検討会 1 日時及び場所   日時:平成16年9月1日(月)17:00〜19:00   場所:厚生労働省共用第7会議室 2 議題  (1)「痴呆」という用語の来歴について  (2)スケジュールについて  (3)用語変更の必要性について  (4)関係団体等ヒアリング  (5)代替用語について ○大島室長  定刻となりましたので、ただ今から『第2回「痴呆」に替わる用語に関する検討会』 を開催させていただきます。  本日は、辰濃委員が欠席でございます。前回欠席でございました堀田委員が本日みえ られておりますので、ご紹介申し上げます。堀田委員でございます。 ○堀田委員  堀田です。よろしくお願いします。 ○大島室長  7月23日付けで厚生労働省老健局内の人事異動がございましたので、ご紹介させて いただきます。審議官の新島でございます。 ○新島審議官  新島でございます。よろしくお願いします。 ○大島室長  それでは高久座長、議事進行方、よろしくお願いいたします。 ○高久座長  それでは、議事に入らせていただきます。  皆様方、お忙しいところ、また夕方にお集まりいただきまして、ありがとうございま した。本日は、「痴呆」の問題に関係のある方々にご出席いただきまして「痴呆」に替 わる用語についてご意見をお伺いし、また我々も質問させていただくというのが主な目 的であります。最初に事務局から、本日の配布資料の説明をよろしくお願いします。 ○大島室長 (配布資料の説明。) ○高久座長  皆さんのお手元に資料があると思います。では、前回の検討会で「痴呆」という用語 を変更する必要性をはっきりさせるべきというご意見もありましたので、『用語の由来 』、『検討会の今後のスケジュール』と『用語変更の必要性』について、事務局から説 明をよろしくお願いします。 ○大島室長  (資料1:「痴呆」の国語辞典等登載史、資料2:「痴呆」に替わる用語に関する検 討会スケジュール(改正版)、資料3:「痴呆」という用語の変更の必要性に基づき説 明。) ○高久座長  どうもありがとうございました。今の事務局の説明に対しまして、どなたかご質問、 ご意見おありでしょうか。よろしいでしょうか。  「痴呆」という用語の変更の必要性に関しましては、資料3に書かれたことが主な理 由であると思いますので、委員の方々にも痴呆という用語の変更の必要性をご認識して いただければと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、本日はいろいろな関係の方々にご出席いただきましてお話をお伺いするこ とになっています。「痴呆」という言葉をどのように替えたらいいかということにつき まして、ご意見をおひとり恐縮ですが5分から10分ぐらいの間でご説明をお願いした いと思います。では事務局から、ご説明される方々のご紹介をよろしくお願いします。 ○大島室長  (資料4:関係団体等ヒアリング参考人名簿に基づき説明。全国痴呆性高齢者グルー プホーム協会は、大河事務局長・佐竹事務局員に変更。) ○本間参考人  (資料8:参考人資料「日本痴呆ケア学会」)日本痴呆ケア学会の本間でございま す。先日、痴呆の呼称に関するアンケート調査を会員に対して行った結果をご報告いた します。  行った時点での会員数が1,350人でございました。そのうち、回収された数が3 77人でしたので、回収率は27.9%ということになります。約4人に1人というこ とです。  この学会の会員の背景、デモフラフィックスがどうなっているかということですが、 アンケートを行った直近での背景の結果ではないのですが、これが一番直近の結果で す。所属別に見ますと、およそ大学・研究機関あるいは病院、施設というふうなところ で、だいたい同じような割合で、どこかの施設にだけ偏っているということはありませ んでした。  これは専門分野別ですが、15%が医学、看護が14%、保健・福祉・介護が17 %、リハビリが7%、教職が14%、不明・その他が32%ということで、これも特定 の専門分野に偏っているということはないといっていいのではないでしょうか。まあま あ職際的な団体と言えるのではないかと思います。  質問は2つしたのですが、『「痴呆」は症状を表わす医学用語で、明確に診断基準が 定められていますが、この言葉に痴呆の人を馬鹿にしたり、偏見がこめられていると思 いますか。』という質問をした結果が円グラフです。「はい」と「偏見がこめられてい ると思います」と答えられた方が31.8%、「いいえ」と答えられた方が41.3 %、「いいえ」と答えた方のほうが多いわけです。「どちらとも言えない」というのが 26.5%でした。必ずしも大半の人たちが、痴呆の人を馬鹿にしたり偏見がこめられ ているとは思っていないということが職際的な団体の結果としては言えるわけです。  『「痴呆」という言葉を他の言葉に変更した方がいいと思いますか。』という質問に 対する答えですが、「はい」が37.6%、「いいえ」が37.9%、「どちらとも言 えない」が23%ということでした。これは、おそらく、業務に従事している年数など でブレークダウンできると面白い結果があるのかも知れませんけれど、今回はそこまで はできませんでした。  具体的に『痴呆の新しい呼称として適切な言葉は?』という質問も、これは自由記載 で質問をしているのですが、そこにお示ししている言葉というのがだいたい挙げられて いる言葉です。「認知障害」が16人、「認知症」は11人、それ以外のカッコ内に数 字が書いていない言葉は全部一桁の人数です。「デイメンシアとかデメンシア」、「ア ルツハイマー病」、「認知失調症」、「もの忘れ」、「記憶失調症」、「記憶障害」、 「ちほう」、ひらがなでちほうにしようということです。「認識障害」、「認知機能障 害」、「脳不全」というようなことが挙げられていました。かなりばらばらということ です。  これは学会の意見ということではなくて、自分自身の考えということになりますけれ ども、おそらく新しい呼称を考える時にはこういうふうな条件であればいいのではない かということをお示ししたものです。  1つ目が、これは診断基準で定義をすることができる用語ということになるわけで す。これは当たり前のことだろうと思います。それから、できれば病気であることを示 す字が含まれている用語のほうがいいのではないかと思います。それから、今の痴呆と いうのは、漢字で2文字ですので、できるだけとにかく短いほうがいいだろうと思いま す。それからネガティブな意味が含まれているような字というのは無いほうがいいので はないか。「低下症」、「失調症」、「不全症」、「障害」。例えばある自治体では、 言葉狩りに近いものがあるかもしれませんけれども、障害の「害」の字をひらがなにし て記載しようというふうに決めているところもあるわけです。ですから、「障害」とい うのも無いほうがいいかなというふうな私自身の考えです。以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○大島室長  下川さん、お願いいたします。 ○下川参考人  東京都の下川と申します。よろしくお願いいたします。  本日は、東京都で先だって実施しましたインターネット福祉改革モニターアンケート というものの中で、痴呆性高齢者グループホーム等の質問と一緒に痴呆の呼称について の質問をアンケートという形でさせていただいた結果をご報告させていただきます。 (資料9:参考人資料「東京都福祉保健局」)  インターネット福祉改革モニターアンケートということで、募集区分別としてはセミ ナー応募者・ナレッジバンク・民生委員・一般公募となります。セミナー応募者という のは、福祉保健局で実施している福祉に関するセミナーにご出席いただいた方ですと か、ナレッジバンクといって福祉施設の経営支援ですとかそういったところでご協力い ただいているような方々がいらっしゃるのですが、そういった方の中でご協力をいただ ける方、登録をしていただける方ということです。それから民生委員、一般公募という ことで、なんらかの形で福祉に興味をお持ちの方です。特に高齢福祉の専門家とか、そ れに携わっていらっしゃる方ということではないということです。年代別、職業別には このような分類の方が、今回ご協力していただいたということです。  設問としては、3つ設けました。まず「痴呆」という呼称を改めることについて、あ なたはどうお考えですかということ。改めるとしたら、自由記載でどんな呼称がいいか ということ。最後に、仮に選択肢の中から選ぶとしたらどれがいいかというような聞き 方をしています。質問用紙の中には、広辞苑の引用などを頭に載せまして、「痴呆」と いう言葉自体にはこのような意味合いがありますというようなことを説明した上で載せ ています。  呼称を改めることについては、3頁をご覧いただくと円グラフがでていますが、 『「痴呆」には蔑視的な意味合いが含まれているため、新しい呼称に変更すべきだ』と 回答した方が26.7%、『適切な呼称があれば、変更してもよい』という回答を選ば れた方が52.8%で、ほぼ8割の方が改めるということに賛同されたという結果が出 ています。それから、私どもで痴呆介護実務者研修、身体拘束廃止についての研修など も担当しているものですから、その研修生についてもアンケートをしてみたのですが、 結果はやはり全体的には似たようなかたちで、合わせて8割という線は変わりませんで した。ただ、こちらのモニターアンケートに比べますと、「適切な呼称があれば」とい う条件付きの回答がかなり多くて、適切な呼称があれば変更してもよいという方が 67.3%、7割近くの方がこういう回答を寄せたというような結果もでています。  4頁目は、選択肢をこちらで用意をしました。この選択肢については都の高齢者分野 に携わっている職員にまずアンケートを取った中から選択肢を決めたわけですけれど も、「認知機能症」・「統覚失調」・「老人性失調」・「加齢期失調」・「忘却症」・ 「忘惑」というようなことで候補を決めまして、その中で選ぶとしたらということで調 査してみたところ、一番多かったのは「認知機能症」の20.6%です。全体としてみ るとちょっと分散したかなという印象を持っています。  研修生についてとったアンケートでも、やはり「認知機能症」が一番多かったので す。その次には「加齢期失調」というのを選んだ方が多かったという結果がでていま す。  5頁は、自由記載で書いていただいたものがかなり割れたので、羅列したというよう な感じになっていますが、頭についた言葉で分類したものです。替えたほうがいいとは 思うけれども、適切な用語となると思い浮かばないという回答が多かったような印象は 持っています。以上です。 ○大島室長  ありがとうございました。続きまして中島理事長お願いいたします。 ○中島参考人  資料10:参考人資料「日本老年看護学会」の最後の頁を先に見ていただけるといい と思います。3枚目でございます。  私ども学会は、会員が現在698名です。そのうちの9割が教育職にいて、老年看護 について学生を指導しているメンバーから成り立っております。1割が現場の看護職と いう構成です。私どもはホームページに掲載して、替えたほうがいいかどうか一般会員 にアンケートをとりました。回答者が非常に少なくて20名ぐらいの人が返事を寄せて くれました。替えたほうがいいというのが、その全部でございました。  具体的にはということになりますと、「わからない」とか「おまかせします」という ことでございました。ですから、ここに書かれているAからEまでは、13名の理事の 議論の中から出されたものです。この理事の構成は、13人のうち2人が現場の看護部 長クラス、あとは大学の老年看護の教授、これが理事の構成メンバーです。皆さんの意 見をAからEにまとめさせていただきました。  A:3名、E:3名、B・C・Dは1名ずつ、あとはわからないという議論の結果で ございます。Aが「認知失調症」ということでございまして、私たちのメンバーは「障 害」という言葉には、「邪魔」というか「妨げ」という意味があって、むしろ「失調」 という言葉のほうが調和を欠くという意味でいいのではないかという認識をしているよ うです。(1)のところですが、看護の人間ですから、頭の中にはやはり全体論的な認識 が先にございまして、痴呆の疾患のメカニズムがどうなっているかという病理的なこと はあまり強調したがらないグループだと認識していただければいいと思います。そうい う意味では、全体論的認識を持って「認知失調症」という名称にしたいという意見が3 名の理事から出されました。  それからEも3名いました。Eというのは、「アルツハイマーズ(Alzheimer’s)」 という英文名、日本名だと「アルツハイマー症候群」という名称にするか、「症」でも いいかなというようなことでございました。かつて「らい」という病名がございまし た。これがやはり差別用語ということで、ハンセン病ということになった例から言って も別に英文ではいけないということではないのではないか、むしろこの痴呆という疾患 が病気に由来し、そして非常に複雑な状態をなしているということから言っても「アル ツハイマーズ」ということにして、そして今までの「アルツハイマー症」だとか、「老 人性アルツハイマー」、「アルツハイマー型老人痴呆」だとかといういろんな意味で混 乱的に使われているものを、これに統一したほうが今までの経過からみていいのではな いか。  (2)番目としては、この名称はこれは特に私自身理事長としても、それから家族の会 と四半世紀一緒に歩んできた人間としても、私がこの意見を持っている一人ですが、こ の名称はアルツハイマー・ディの活動としてもう定着して国民運動になりつつある。こ の10月にありますが、既に60カ国以上が加盟している「Alzheimer’s Disease International」の組織運動があって、これが世界的にも一つの組織になっている。 国際的に見てもこの言葉に統一したほうが、日本語として難しいというか、わかりにく いよりもいいのではないかという考えで、皆さんの意見とそれから数の多さからいって AかEかというのが理事長としてのまとめでございます。  その前にあるのは、私ども学会の願いとして、また理事長自身の願いとして、1頁の 真ん中にあります、こういう認識をきちんと皆さんに持っていただきたい。例えば痴呆 の本質は、複数の認知機能障害の組合せには還元できない社会的知能の障害でありま す。だから痴呆の人は、身についた社会的知能と身体技術の体系にトラブルを抱えてい る人であり、こういうトラブルを抱えた人のケアのあり方というのは、「よくわからな い」ということをスタンスに置いていただいて、コミュニケーションだとかその人自身 の評価をしていただきたい。それにふさわしいモデル、新しいケアモデルとふさわしい 言葉が欲しいということを申し添えたいと思います。以上です。 ○大島室長  ありがとうございました。続きまして、大河事務局長、佐竹さんお願いいたします。 ○大河参考人  全国痴呆性高齢者グループホーム協会の大河でございます。現在、全会員を対象とい たしましてアンケート調査を実施中でございます。したがいまして、今日の検討会で集 約した意見なり要望を申し述べるものがございません。集約した意見の発言の機会があ れば、その際にはよろしくお願いをしたいと思います。 ○大島室長  では、続きまして呆け老人をかかえる家族の会、高見代表と永島理事にお願いいたし ます。 ○高見参考人  呆け老人をかかえる家族の会の代表の高見と申します。家族の会は、現在41の都道 府県に支部がありまして、会員が8千人位います。家族の会につきましては、本日の参 考資料として3種類お配りしていますのでそれをご覧ください。なお、私が胸につけて います赤いバッチは、10月に開催します国際会議のシンボルバッチであります。  私は、9つの筋立てで意見を述べたいと思います。1つ目。家族の会は1980年に 結成されたのですが、当時、会の組織の名称を決めるにあたっていろいろ議論をしまし た。その際に出た言葉というのは「痴呆」か「呆け」かいずれかでありました。当時、 アルツハイマー病という言葉はあまり浸透していませんでしたので、「痴呆」か「呆け 」の争いであったわけです。「痴呆」につきましては、私も当時は現役の介護家族であ りましたので、家族の感覚からすると、医学面あるいは法律、行政面で使われていた言 葉で非常に冷たく親しみのない言葉だということで、「痴呆」にはなりませんでした。 むしろ「呆け」のほうが、日常語でありますし一般的には「うちのおじいちゃん痴呆に なった」というよりも「うちのおじいちゃん呆けた」というほうが通常でありますから 「呆け」という言葉を組織の名前としました。  2つ目。しかし当時は「呆け」という言葉はマスコミなどでは使われませんでした。 例えば1981年の新聞ですが、ある新聞は、私たちの組織を「自立困難な老人をかか える家族の組織」というふうに書きましたし、別の新聞では「知的機能の衰えた老人の 手立てを話し合う家族の会が結成された」というふうに書かれました。このように「呆 け」という言葉は使われなかったわけです。一方、行政例えば保健所など主催の会合、 研修会などに呼ばれて私が行きますと、「痴呆性老人を抱える家族の会代表高見さん」 というふうに紹介されましたし、あるいはあるテレビ局がニュースで取り上げてくれて テロップで出る場合も「痴呆性老人を抱える家族の会の代表の高見」というふうに出ま した。私たちはその都度、この名称は固有名詞であるから勝手に変えないでくれという ふうに抗議をしてきました。  3つ目。そういうことで「呆け」という言葉に好き、嫌いはありましても、呆け老人 をかかえる家族の会というこの組織の名称は、呆けの人の介護の問題に苦労する家族の 存在を天下に知らしめましたし、あるいは呆け問題や介護問題を一気に社会的な関心と して高めたというような効果があります。なお、94年には14年間の活動が認められ まして、厚生大臣からこの名前のままで社団法人として許可を受けています。  4つ目。以上の経過から「痴呆」という言葉を言い替えすることについては、家族の 会としては大賛成でありますし、むしろ遅きに失したというふうに思っています。  5つ目。ですから家族の会というのは、医学用語あるいは法律用語、行政用語である 「痴呆」という言葉に対応する介護者側からの用語あるいは日常用語として「呆け」と いう言葉を使ってきました。そういう意味では、「痴呆」と「呆け」というのは同じ状 態を指す表と裏の言葉というふうに思っています。  6つ目。しかしながら家族の会の中でも「呆け」という言葉についても異論がないわ けではありません。そういうことがありまして、私たちは98年から2年間かけて会の 名称を変更しようかという議論をしたことがあります。その際に、私たち執行部側、理 事会は「アルツハイマー病協会」としたらどうかと提案をしたのですが、残念ながら会 員の中からは、「うちのおじいちゃんはアルツハイマー病ではない」とか、「アルツハ イマー病協会」というとそれは家族の組織ではなくなるというイメージがあるというこ とで、理事会はまさに朝令暮改のようにいったんアルツハイマー病協会を提案したので すが世論を見てそれを撤回するということで、現在また呆け老人をかかえる家族の会と いうことで落ち着いています。ただし、パンフレットをご覧いただきますとその下に小 さく国際名:日本アルツハイマー病協会というのをつけております。これは今年の国際 会議もにらんで世界的にはやはりアルツハイマー病協会というものが多いものですか ら、世界に向けては、日本アルツハイマー病協会と名乗ろうかというようなことで2つ 名前をつけています。  7つ目。ここが結論です。したがって私は今日では「呆け」あるいは「呆けの人」と いう言葉は、社会的に認知をされた用語であるというふうに思っていますし、表と裏の 関係であります「痴呆」という言葉を変更するのなら、もう一面の言い方である「呆け 」あるいは「呆けの人」という言葉に統一することが最も妥当だろうというふうに思っ ています。  8番目。ただし今回の「痴呆」という言葉の言い替えが、医学用語あるいは法律用 語、行政用語としての「痴呆」を言い替えるということが目的であるとするならば、そ れはその道の専門の皆さん方によって適切な言い替え語を案出していただきたいと思い ます。  9番目。最後ですが、なお「痴呆」という言葉が今まででていますような幾つかの用 語に決まりましたとしましても、私たちの「呆け老人をかかえる家族の会」という名称 を変更するということは全く考えておりません。以上です。 ○高久座長  引き続いてどうぞ。 ○永島参考人  呆け老人をかかえる家族の会の理事としてというよりも個人的な考えを述べれば良い というようなお話しでしたので、参加をさせていただきました。  私は、基本的には「痴呆」という名前は替えていただいたほうがいいと思います。 今、名称の経緯についての高見さんの発言はそのとおりで、私も理事会や総会での名称 の変更の時にも立ち会いましたので、いろんな思いをしながら聞いておりました。  私が介護していた昭和50年代には「痴呆」という言葉はあまり使われていませんで した。それから私の母は血管性の痴呆だったとは思うのですが、話が変なほうに逸れま すが、MRIを撮ろうと思って機械の中に入れられそうになった時に「私はまだ生きて いますから焼かないでください」とすごい抵抗して、結局検査ができなくて病名をつけ れないまま亡くなりました。なんという病気だったのかいまだにわかりませんが、状況 からいったら痴呆であったことは間違いなかろうと思います。  その当時、なんと言っていたかと言うと「耄碌した」と言っていました。「痴呆」よ りはそういう言葉のほうが一般的でした。それから「呆けた」というのは、関東地方で は一般的ではなかったように思います。私は昭和55年に家族の会ができたというの で、「これは私の入る会だ」と思って入ったのですが、その時には自分の介護のことが すごく大変で、「呆け老人をかかえる家族の会」という名前にはあまり拘らないで入っ たように思います。  このようなことが自分のことですが、それから25年ぐらい千葉県支部で会の支部活 動をやってきました。高見さんが今言ったように「呆け」それから「老人」、「かかえ る」その3つについて抵抗を示す方が非常に多いのです。私自身は「痴呆」より「呆け 」というほうがやさしいと思うし、日常会話の中では使い易いというふうに思っていま す。  社団法人になる前は、呆け老人をかかえる家族の会という名称に多少の抵抗がある支 部も結構多かったと思うのです。千葉県支部は、そこにいらっしゃる中島理事長が支部 を立ち上げてくださったのですが、中島理事長もあまり「痴呆」という言葉は好きでな かったようで、千葉県支部では「呆けの人をかかえる家族の会」というふうにずっとい っていました。「呆けの」と「の」を入れるほうが「呆け老人」というよりは、ニュア ンスとして尊重するような気がしてずっとそれを使っていました。ちなみに「呆け」と いうのは千葉県支部ではひらがなでした。  それは前の話ですが、会員の中でも名前に対する抵抗感というのはないことはないで す。今でも会のフルネームの「呆け老人をかかえる家族の会」というのを、どこの支部 も封筒に印刷していません。本部もそうです。ただ、「家族の会」としています。本部 のは「家族の会」、私たちは「家族の会・千葉県支部」というふうに、会報などを送る 時の封筒の下に書いています。  というのは、これは自宅に郵便物が届く会員に対する配慮です。新入会員で、特に郵 便物がこの名前で送られてくると本人が郵便ポストに取りに行って「これはなんだ」と 怒るからこういう封筒は使わないでくださいと、特に注文してくる人もいます。そうい う人はちゃんと名簿に白い封筒と印をつけて、会の名前のない封筒で送っています。そ ういうようなことはまだ現実にあります。ただ、会員として会の活動を理解していくう ちに、名前より病気や実態の理解だということになって、あまり名前には拘らなくなっ てきて、抵抗感はなくなっています。ですから抵抗感を持つというのは会員になる前の 人とか、それから実際に介護していない人のほうがむしろあって、新聞などでいろいろ 言われたりすることがあるのです。こういう会なら私は入りませんといわれたこともあ ります。  今、高見さんが言ったように社会的な言い方は「呆け」でいいと思うのですが、これ を診断書や成年後見法などで「呆けの人」というのは少しまずいのかなと思って、今日 は個人的にということで「認知失調」という用語の提案をしようと思いました。「認知 」というのは、広辞苑を引きますと、長くなるから言いませんが、そういうふうに書い てあるし、「失調」というのも調和を失うこととか、調子が狂うことといって「栄養失 調」という例がありますので、「そんなに抵抗感はないのではないか」というふうに思 いました。高齢者というのがついた時に「認知失調高齢者」が長すぎたり収まりがどう かということについては、今高見さんが言いましたとおりです。以上です。 ○大島室長  高見さん、永島さん、どうもありがとうございました。関係の方々のヒアリングは以 上でございます。 ○高久座長  皆さん方、非常に明快にお話しいただきましてどうもありがとうございました。今の  5人の方のお話しに、どなたかご質問おありでしょうか。  中島さんにお伺いしたいのですが、Eの「アルツハイマー症候群」あるいは「アルツ ハイマー病」、これは例えば「症候群」とか「病」というのをなくしてアルツハイマ ー、WHOは「アルツハイマー・ディ」にしていますね。「アルツハイマー」でもよろ しいですか。 ○中島参考人  はい。ハンセン氏病は、はじめはそういっていましたがハンセン病になりましたね。 それの例から言っても「アルツハイマー」のほうがいいのではないかと私どもは思って います。「ズ」をつけることで、脳血管性痴呆の人たちも含んで総称としてそういう言 葉が国際的には楽かなということでございます。 ○高久座長  どなたかいらっしゃいますか。私の個人的な意見を言わせていただければ、本間さん の意見に賛成でして、「障害」、「失調」、「低下」あるいは「不全」とかこういう言 葉は入れないほうが良いのではないかという感じがいたします。他にどなたかご意見お ありでしょうか。  あまりご意見がないようですので、事務局から候補ということで説明していただけま すか。 ○大島室長  (資料5:代替用語の要件について、資料6:「痴呆」に替わる用語の候補例に基づ き説明。) ○高久座長  どうもありがとうございました。先ほどの今後の予定の説明の中にありましたよう に、国民の意見募集を行う予定ですが、その時当然、この検討会での候補の名前を挙げ ます。もちろんこれだけでなく、委員以外の方からもご意見をいただきたいと思いま す。おそらく幾つか候補を挙げてその中でどれが一番良いとお考えか、あるいはそれ以 外のものが良いとお考えかという形で公募をするのが能率的だと思います。事務局から 5つの言葉、「認知障害」、「認知症」、「記憶症」、「もの忘れ症」、「アルツハイ マー症」が候補の案としてだされましたが、この中であまり適当ではない、あるいは、 これ以外にももっとあるのではないかということで、国民の意見募集のときの候補の名 前を出していただければと思います。いかがでしょうか。 ○井部委員  資料6の痴呆に替わる用語の候補例のところの最初の囲みの中で、いくつか基本的な ことについて抑えておかなければいけないことがあります。病気の診断の際の病名が一 つ、それから日常生活の中での一般的な用語でもあり、かつ行政上の用語、この3つの 基準がここに示されていて、この枠の中の最後の文章ですと病名は専門家の判断による と示してあります。そうなりますと日常生活の中での一般用語と行政上の用語にどうい う名称をあてるのかということを考えるのか、先ほど病気の病名だと何回もでておりま すので、病名という診断名としてもここで検討している用語が力を持つのか、その点は どうでしょうか。 ○大島室長  法律上、例えば介護保険法の中にも痴呆という用語が使われておりますので、そうい う意味で行政上の用語でもありますが、行政上で使う場合も法律上で使う場合も、病気 としての名前を前提としている場合、例えば初老期痴呆により云々という形で病気とし ての名前を前提としている場合もございます。一般的用語と診断上あるいは病気として の名前が重なり合って使っている場面がございまして、主としては一般的な用語あるい は行政上施策の対象として呼ぶ場合の痴呆の用語としての検討を年頭に置きたいわけで すけれども、結果として一部使う中に病名としての痴呆のことを指す場合もでてくると いうことになろうかと思います。したがいまして、実際に現場でお医者さんが診断され る場合のそういう意味での現場での病名と、一般上の使う場面で病名を指す場合で、そ の名前が違ってくるということはあり得ることだと思いますので、その場合に両者が一 致していることの確認といいますか、それについての混乱が生じないようにする必要が あるかなと考えております。 ○高久座長  ここでは主に行政的な用語ですね。そういうふうに理解したいと思います。もちろん 一致するのが一番良いと思いますが、一致しない場合もあり得るのではないか。例え ば、アルツハイマーというのは確立した診断名です。これは学問的な用語です。それで は血管性痴呆のほうをどう呼ぶかという事は、学会の判断に任せればいいと思うので、 ここでは痴呆に替わる行政的な用語ということでご議論いただければ良いのではないか と思います。 ○長谷川委員  今の井部委員のご指摘は非常に重要なことだと思います。事務局、それから高久座長 がおっしゃいましたように、この委員会のメンバーのコンセンサスとして、まず一般的 な用語あるいは行政上の用語を「痴呆」に替わるものとして選び、診断名というのは学 会に委ねるという視点でいいのではないかと思うのです。例えば、感染症というのは、 かなり一般用語になっています。だけど病名というと例えば「SARS」とか「エイズ 」とか「急性肺炎」とかいろいろな病名がついてくるわけです。我々が現在議論してい る「痴呆」というのはちょうど感染症とか、そういうところにあたるところを議論して いると認識したいと思うのです。大変重要なことだと思います。 ○井部委員  そうしますと、行政の何か手続をとるときに医師の診断書を持ってその状態を証明す るということはあるのではないかと思うのですが、その時は行政のほうは読み替えるわ けですか。例えば、アルツハイマー型痴呆というふうにもし学会が替えなければ、それ を診断書として持っていって、これは例えば「記憶症」という行政用語なんだというふ うに読み替えていくことになるのでしょうか。 ○大島室長  頭の中で読み替えることになると思いますけれども、例えば「知的障害」も医学上で は「発達遅滞」とかそういう形で診断を書かれる場合が今でもありまして、それも行政 上、そういったことを踏まえて「知的障害者」だと認定して手帳を発行しておりますの で、そこはお互いに同じものを指しているのだということをうまく周知することによっ て、齟齬を来たさないように運用でカバーしていくということを考えたいと思っており ます。 ○長谷川委員  高久座長が先ほどおっしゃったように、それが行政用語にもなるし医学用語にもなり うるという、そういうオーバーラップするところがあっていいのではないかと思うので す。だけど私自身の考え方が精神科医の考えですから偏りがあるだろうと思いますけれ ども、例えば「痴呆症」というのは本当の病名にはなっていないわけです。「アルツハ イマー病」、「アルツハイマー型痴呆」、「脳血管性痴呆」、「前頭側頭型痴呆」とい う痴呆性疾患の一群があるわけです。「アルツハイマー型痴呆」、その痴呆も例えば、 アルツハイマー型の例えば大括りの痴呆というところを「認知障害」にした。じゃあこ っちのアルツハイマー病とかアルツハイマー型痴呆も「アルツハイマー型認知障害」に してくださいと我々は言わない。「痴呆症」のところだけを問題にするというのが視点 ではないかと思うのです。しかしやがては「認知障害」がどんどん広まって、それが国 民の間でも専門医の中でもそういうことがいわれてきて、専門学会でもやはりアルツハ イマー型痴呆という言葉は良くないからアルツハイマー型認知障害にしようということ になれば、それはそれでいいと思うのです。  しかし、この委員会では「痴呆症」というその大枠のところを議論しようというのは どうでしょうか。やがてはそういうふうになるのを希望しますけれど。 ○高久座長  ここでは私がさっき言いましたように、行政的な用語ということに絞りたいと思いま す。学会のほうの判断は学会のほうで任せるということにしませんと、議論のキリがな くなりますので。 ○井部委員  一言申し上げたいのですが、そうしますと、この用語を検討するときには、不快感と か侮蔑感を感じさせたり気持ちを暗くさせたりするので用語を替えようとしているわけ で、医学用語というのは不快感とか侮蔑感とか気持ちを暗くすることはそのままにして おくということになる。そのことには触れない。人間の尊厳が問題になるので替えよう と言っているけれども、根本的なところの専門の団体には介入しないということにな る。 ○高久座長  それは学会の判断で、この委員会の判断ではないと思います。 ○堀田委員  前回でておりませんので、ちょっと意見を申し上げます。私はこれからいろいろと一 般の意見を聞かれるわけですから、その結果によって決めるのがいいと思っておりま す。ですから、ご意見募集のプレゼンテーションが大事だと思います。  座長がおっしゃいましたこの例示がこれでいいのかということですが、私は例示とし てはこれでおそらく足るのだろうと思います。ただ、やや「認知障害」あるいは「認知 症」のほうに誘導的であって、その点が気になるところであります。長谷川委員がおら れますし、今日のご報告でもだいたい「認知障害」あるいは「認知症」が有力ですの で、敢えて私は問題を申し上げます。  この代替用語の要件として、一般の人々にわかりやすいこと、これが第1の要件にな っています。これは座長がおっしゃるような言葉を捜すとすれば最も重要な要件だと思 うのですが、認知するということがあまり一般的には使われないのです。「認める」と か「認識する」というように使われるのですが、「認知する」というのは一般的には使 われません。私は法律家のせいかもしれませんが、「認知する」というと、婚外子を認 めるというそんな時にしか一般的には使わない。その婚外子を認める時の「認知」とこ こでいう「認知」とはあきらかに意味が違うわけです。この「認知」という言葉は非常 に多義的であって、この定義の中でも挙げられておりますが、記憶、見当識、理解、判 断、言語、学習いろんなことが入っておって、ですから「認知障害」というと、一般の 人はいったいどこがどうおかしいのかと、もうひとつピンと気にくいところがあるとい うことに、私はこの言葉については問題があるのかなという気がいたしております。  例えば自分の息子が自分の息子だとわからなくなったとき、私の妻もよく父親から 「あなたはどなたですか」と言われておるのですが、その時に親が子どもを認知してい ないというときに何を認めていないのか、そこにそういう人間がいることは当然に認め ているわけです。認識はしておるわけです。ただ、その人が自分の娘であるということ の判断ができない。それはなぜ判断ができないのか、娘であることの記憶がなくなって いるからそこの同一性の照会が、認識したものと照合する娘の認識のほうが失われてお るからわからないわけです。そうするとそれは結局、記憶がないということから来てい るのではなかろうか。  そういうふうに見ていきますと、このプレゼンテーションで例えば記憶障害につい て、痴呆の特徴として「記憶障害を伴うことや云々」とあって、この記憶障害のほうが 非常に軽くただ伴うものだというふうに扱われているけれども、実は記憶に障害がある ということがそういう失認の基本的な原因になっている。認知は非常に多義的ですか ら、「これだ」といってしまえばどれかにあたるわけで、どうもはっきりしない。むし ろ記憶のほうが大変わかりやすいのではないかというそういう考え方もありうる。敢え て固執して私はそれを強力に主張はしませんけれども、そういうことも考えに入れてみ んなに聞いてほしいと思います。  例えば「認知」に欠陥があるのか、「記憶」に欠陥があるのかというのは、非常に私 ども法律家にとっては大事なことであります。反対尋問をするときに必ず、「あなたは そこをしっかり見ていなかったのか、よく誰かわからなかったのか」そこの観察認知の ところを徹底的に争うか、それともその時には認めておったのだけれども忘れてしまっ て忘れっぽい人間であったということを強調するのか、その「認識」と「記憶」という のは、反対尋問するについても決定的に意味が違うわけです。ですから、ここの認知の 意味が非常に広いのでもう少し、もしこっちのほうの言葉を採用するならこの「認知」 というのは、こういうことを言っているのだということを明確にこちらで定義してあげ ないとわかりにくくなる点があるかと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。他にどなたか意見はありませんか。 ○中島参考人  1980年ぐらいから、「呆けのある」、「痴呆のある」という問題が社会的に大き な問題になってきたのです。その80年から90年まで、つまり厚生省が痴呆性老人対 策本部を設けるまでは、「呆け」も「痴呆」も高見さんが言ったように表裏だったので す。その時に「呆け」は素人用語だから駄目。「痴呆」は医学専門用語だからと言っ て、いつのまにか行政は医学専門用語に支配されたわけです。そういう言い方は失礼で すが、そうだったと思います。同じことを繰り返していただきたくないと思って私は申 し上げているのです。  その次にあったのは「老人」駄目といって、これも差別であるかないかとは別にいつ のまにか高齢者になってしまった。だから「痴呆性高齢者」が今の行政用語です。しか しそれは差別用語であったり医学用語であるという、その極端な中で、本当に市民合意 として「老人」が駄目だったのか「痴呆」が良かったのかというのはわからないままに 来て現在に至っています。私自身は、はじめ「認知」が一番弊害がないかなと思ってず っと「認知」と考えていたのですが、この1ヶ月ぐらいじっと考えてきて、さっき堀田 委員がおっしゃったような意味で「認知障害」というのは大変わかりにくい。「痴呆」 に替わるわからない言葉とか、痴呆でもない人までも痴呆と言ったりとかということが 起こりうる可能性があるという意味で、私は「認知障害」だとか「認知症」というの は、これは要警戒だと思い始めたわけです。  もう一つは、「ディジーズ」という言葉と「イルネス」という言葉が、「病」だとか 「症」の中には同居していると思うのですが、ちょっと専門的になって大変興恐縮です が、やはり医学者グループの中では、このディジーズにおける病理診断に非常に関心が あるでしょうから、ディジーズで呼ぶアルツハイマーというのはすごく嫌な言葉で、一 つの総称でじゃあ脳血管疾患をどうするとかとそういう話しになると思うのです。しか し「イルネス」というふうに考えると、つまり一つの症候を持った事例ということを考 えて国際的に通用するということであるならば、そして今までの弊害をなんとかして今 カッティングしたいと思うならば、曖昧な言葉よりも、国際的に通用する「アルツハイ マーズ」が妥当だろうというのが私の主張でございます。  しつこいようですけれども一生懸命に、行政用語、一般用語、専門用語の妥協を考え た末にアルツハイマーズでありたいと、そういう主張でございます。 ○高久座長  本間さんどうぞ。 ○本間参考人  行政上使われる言葉と、医学上使われる言葉が別になる可能性もあるのではないかと いう議論もあったかと思うのですけれども、ただ、井部委員がご指摘になったように、 従来のなぜ「痴呆」という言葉を今替えようとしているのかということを考えれば当然 それは別であってはいけないのではないかと。医学会に任せるということになると、あ る医学会では「痴呆」という言葉がそのまま残る可能性が否定はできないだろうと思う のです。そうすると、今までのせっかく偏見をなくそうという意図というのが非常に弱 まってしまうのではないか。ですから個人的にはそれは同じであるべきだというふうに 思います。  それから、今仮に「痴呆」という言葉はきちんと医学的に診断基準が定義されている 言葉なわけですけれども、例えばなんらかのそれに替わる言葉がそこに収まった場合に はそれも同じような診断基準というのが当然適用されてしかるべきだろうと思うので す。ただ一方、例えば「呆け」という言葉は、これはきちんとした定義というのがされ ていませんので、その「呆け」という言葉を使う人がどういう意図で使うかによって病 気を示す場合もあるでしょうし、単に生理的な変化を示す場合もあるでしょう。いろん なものが含まれるだろうというふうに思いますので、これは明らかに分けて考えるべき だろうと思います。 ○高久座長  私も、本来ならば行政的な用語と学会の用語とは同じであるべきだと思います。た だ、この委員会で強制することができないと言っているだけでして、それは学会の良識 に任せたいと考えています。他にどなたか、どうぞ。 ○野中委員  学会用語とか、その部分の中でいろいろ惑う部分がありますが、ただ一般の人にわか りやすく、できれば短いこととか、2番目の不快感とか侮蔑感、その部分は大事なこと だろうと思います。私も自分の母親が今痴呆で私のことをわかってくれません。そのへ んに関しては、他に覚えていないか、記憶がまったくないかというとそうでもない部分 があります。その中で本当に適切な言葉かどうかわからないのですが、実際にはご本人 も惑っていらっしゃると思うし、私も息子としても惑っています。例えば「認知」とか そういうものを本当に規定するという言葉が、ある面では医師として、学会上としては 必要なのかもしれませんが、今の「痴呆」という言葉が世の中にとって本当にその人に 対して尊厳を与えていないという認識を大事にするのであれば、ご本人も惑っているし 私たちも惑っているという意味で、それが名称としていいのかわかりませんが、「惑い 症」とか、そのへんの適切な言葉がでてこなくてこの間からずっと苦しんでいるのです が、何かそういう意味の言葉にしていただいたほうがご本人も地域が大切にするし、お 世話する私たちも大切にするという意味で、大切にしたいということを何か言葉で表現 したいという気持ちがありますので、「認知」とか「記憶」とかにするとそれが無くな った人というのは、何か寂しいなという気がします。 ○下川参考人  先ほどの報告の中に、こちらで示した選択肢の意味付けというようなお話しをしてい なかったので、今の議論の参考になればということでちょっと付け加えさせていただき たいと思います。  お話にありました「認知」という言葉については、やはり「認知症」で出すか「認知 機能症」で出すかという議論が私どもの中でもありました。「認知症」のほうが短いと いうお話もあったのですが、事務サイドのスタッフとか管理職も含めて話していく中 で、先ほど堀田委員がおっしゃられたような「認知」というと全く違うことを連想して しまうという意見がありました。誤解を招くことを避けるという意味で「機能」という のを長くなるけれども足したらどうかということで「認知機能症」というのを選択肢の 一つにした経緯があります。  それから、今まで使っていない別な言葉で明確に言い表せるような言葉がないかとい う視点では、一つは「統覚失調」という言葉です。これも職員から提案された言葉で す。「統覚」というのは、心理学用語ではある程度意味づけのある言葉で、カントの心 理学では「自我が感覚的多様性を自己の内で結合させて統一すること」というような意 味合い、それからブントの心理学では「意識内容が明白となる注意作用の成果」という ような意味づけがされている言葉だということです。一般的な用語ではないのですが、 いろいろな「認知」だとか「認識」というようなことを自己の中で結合させて統一する こと、そういう機能がなかなか難しいのが痴呆の方だという意味では、的を射た用語な のではないかということでこうした用語も加えたという経緯があります。  それから「加齢期失調」、「老人性失調」という2つの言葉がありますが、これは特 有の症状を示す言葉ではありませんが、加齢によって、年老いていく過程でいろんな意 味で今までの自分の姿、自分が自分としていろんなことができていたその調子が狂うと いうイメージを表現するには概念が広くなりすぎるのかもしれませんが、こんな言い方 もあるのかなということがありました。  もう一つ、今、野中委員がおっしゃられたことと非常に共通する部分があるのです が、「忘惑」という言葉です。これを出した方は「忘惑」の他に、老いる・惑うで「老 惑」、心・惑うという案もだされていたのですが、忘れてしまうことによって本人が非 常に戸惑って困難を生じているというような印象、イメージが湧きやすいとすれば、ご 本人の心情に配慮したということで理解が得られやすいのではないかということから「 忘惑」といった言葉も、聞き慣れない単語、造語ですけれども選択肢として加えたとい うような経緯があります。  私はどれが一番いいということではないのですが、やはり「認知症」という言葉で は、一般的な理解という意味では誤解も招くかなというような気が個人的にはしていま して、ちょっと補足をさせていただきました。 ○高久座長  ありがとうございました。先ほどから議論されていますが、資料5の代替用語の要 件、  これは極めて重要だと思います。一般の人にわかりやすいということ、できれば短い ということ。それから不快感や侮蔑感を感じさせたりしないということで、先ほど本間 さんからお話しがありました低下症とか失調症、不全症という言葉はできれば避けたい ということです。この中に障害という言葉が入るかどうかということは問題になると思 いますが、この1と2の原則はできれば守りたいと考えています。  そこで、この資料6に候補が挙げられていますが、この中の「もの忘れ症」は省いて も良いですか。「もの忘れ症」というよりは「記憶症」。「もの忘れ症」のほうがわか りやすいですか、どうでしょうか。 ○野中委員  先ほど私が言ったことと矛盾するかもしれないのですが、この間もビデオを見せてい ただきましたが、「痴呆」に認定された方が最近少しお話しをされてきていることが新 聞等にもでています。その中に、自分がアルツハイマーというか病気だということであ れば、自分としてそれが病気なんだということがひとつの安らぎになるというようなこ とがでていました。他の人から「あなたは記憶がおかしいよ」とか「バカになっている よ」とか、そういうことを言われることが評価されることがご本人にとっては嫌なのか なという気持ちもするわけです。ですから、ご本人にとっては今がどうであるかという ことを、例えば病気であればまだ自分とすれば情けないけれども受け入れやすいという 姿勢もあるのかなということもありますので、そのへんも配慮する必要があるかなと思 っています。 ○高島委員  伺いたいのですが、「痴呆」というので今まで参考人の皆様のお話を聞いていると、 道具を使うとか言葉を話すことができなくなるとか、それから食事や排泄がうまくでき なくなるという話があったのです。「認知」というのは、僕が考えると、「ものごとが わかる」というのが「認知」で、「認知できない」というのは「ものごとがわからない 」という感じがするのです。ここで言っている「認知」というのはもっと幅が広くて道 具を使えない、うまく話せない、排尿・排便がきちっとできないというようなところま でを含んでいるのですか。 ○大島室長  たぶん日本の医学用語の訳語として「認知」というのが、そういう意味では一般的な 感覚とちょっとずれているのかもしれませんが、英語でいう「cognitive」というのは まさにそういう広い意味のようで、知的な能力とか知能それ自体を指す言葉のようで す。しかし、日本で「認知」といいますと、どちらかというと「認識」といった意味合 いのほうが強いかと思いまして、ここでいう「認知障害」というのはまさに医学用語と いうか、英語の「cognitive impairment」という意味での「認知障害」、ある意味特殊 な学術用語的な色彩ではないかと思います。そういう意味で、一般で言われている何か もの事を認知するとか、認識しているということよりはかなり広い概念としてとらえて います。 ○高島委員  食事とか排泄まで、その「認知」の中には入っているのですか。 ○長谷川委員  本質的には入っていないと思うのです。ただ、どんどん痴呆が酷くなってくるとそう いう単純な作業までやっとやれるという状態になるのです。だからやがてはそうなると 思うのですが、本質は食事をすることと「認知機能」とは関係ないのではないかと思う のです。大変痴呆が酷くなったときにそうなる。  私はやはり診断基準などに左右されていますので「認知障害」とか「認知症」が一番 痴呆の本質を表しているのではないかと思うのです。野中委員がおっしゃったように 「戸惑い」とか痴呆を持った人は「不安」を持つというけれども、それは本当にそうだ と思うのです。だけどそれは「認知障害」があるために不安を持つわけですから、その 中核のところをしっかり捉えた言葉でありたいなと思うのです。それは一般的にはなか なか理解できない場合もあるし、堀田委員のおっしゃったように、自分の子どもを認知 するとかそういう法律的な言葉と非常にバッティングしますけれど、そこは十分説明を して「認知症」という言葉はこういう意味ですよということを周知徹底させていただく のがいいのではないかと思うのです。  それから「統合失調症」に「精神分裂病」から替えるとき10年ぐらいかかっている のですが、しかしある精神科医が言った言葉で、とにかく替えるということが大切で、 理想的なものを一生懸命に考え出すというのは不可能だと。だからとにかく替えてとり あえずこういう妥当な名前をぶつけようかというところが目標ではないかと思います。  私の職場は「高齢者痴呆介護研究・研修東京センター」というのです。もし「痴呆」 というところを替えたらこれは行政用語ですから当然我々の施設も替えなければならな い。私自身が臨床で病院の中で働いていたとき、それから専門家で学会などで議論して いるときは痴呆に対する蔑視感はなかったのです。これは学問用語だということで、お そらく本間さんのアンケートの発表の中でも、専門識が非常に強いところでは痴呆を替 える必要をあまり認めないという感じがでてくるのではないかと思うのです。 ○高久座長  私は患者の周りの方々や、家族の方々が替えることを希望されているのだと思いま す。専門の人は専門用語としてあまり抵抗がないのではないでしょうか。ただ何回も繰 り返しますが、資料6の一般の人にわかりやすくということになると、「痴呆」が一番 わかりやすい。例えば「認知症」となると、堀田委員のおっしゃるとおり一般の人はわ かりにくいと思います。不快感や侮蔑感は少ないだろうということで、もともと矛盾し た条件が出されている。そこがこの検討会の難しいところです。  私にはアルツハイマーのほうが抵抗がないのですが、ただそうすると学会が困るだろ うと思います。医学用語と一般用語とがあまりにも離れすぎてしまう。血管性の痴呆が アルツハイマーということはないわけですから、そういう意味ではアルツハイマーは難 しいという感じがしないでもない。井部委員がおっしゃったように、専門用語と行政用 語が完全に違うと混乱が起こってくる可能性があるので、学会として「痴呆」という言 葉に抵抗がなくても、行政的に替えるならばやむを得ない、学会のほうも替えようと納 得していただける名前が一番いいのではないかと思います。一般の方にわかりにくくて も「痴呆」という言葉には抵抗があるからこう替えたのだというふうに理解をしていた だくような努力・宣伝をしていけば、だんだん浸透していくのではないかと思います。 「統合失調症」などはもっともわかりにくく、個人的にはなんでこんな言葉にしたかと 思ったのですが、皆さんがそう呼ばれるならやむを得ないかなと無理に自分で頭の中に 入れた感じです。  私は「痴呆」を替えようという最大の動機は2番目の項目だと思っていますので、替 えるならば2の点を一番重視するべきではないかと思います。  資料6ですが、これに何か付け加えるものがなければこの5つ、あるいは「もの忘れ 症」を除いた4つで一般の方々のご意見を聞いていいですか。これには説明を加えるの ですね。 ○大島室長  はい。ホームページに載せる際に、なぜこういうふうに直すのかという簡単な説明を 併せて載せることにしております。 ○高久座長  よろしいでしょうか。 ○堀田委員  取り上げるのはこれでいいと思うのですけれど、障害について問題があるのではない かという意見もでておりますので、「認知障害」が頭にでるよりは「認知症」が頭にで て、「認知症」、「認知障害」、それから「記憶症」、「記憶障害」、そして「アルツ ハイマー」と並ぶのではないでしょうか。 ○高久座長  ありがとうございました。 ○井部委員  私は個人的には「もの忘れ症」に1票入れたいので、これは落とさないでいただきた いと思います。 ○高久座長  では、この5つにもう1つ「記憶障害」を入れて、「認知症」、「認知障害」、「も の忘れ症」を3番目にして、それから「記憶症」、「記憶障害」、「アルツハイマー症 」。アルツハイマー症は「症」を入れますか「アルツハイマー」でいいですか。「アル ツハイマー・ディジーズ」ですね。「病」にするか、もう「病」を除いて「アルツハイ マー」にして公募したいと思いますがいかがでしょうか。 ○中島参考人  よろしいと思います。 ○高久座長  では繰り返しますが、「認知症」・「認知障害」・「もの忘れ症」・「記憶症」・ 「記憶障害」・「アルツハイマー」、この6つで一般の方々のご意見を公募してよろし いでしょうか。 ○高島委員  この厚生労働省の公募例の文書は、さっきのお話だと、今日のヒアリングの前に作っ たものだから参考人の意見はなんら考慮されてないということだったのですが、それを そのままにするのだったら今日なんのために参考人の方々に来ていただいて話を聞いた のかわからないという感じがするので、そういう候補を並べるのだったら今日お出でに なった方々の意見を聞いて、こういうのを入れてくださいとか、これも並べてください ということを聞かないと失礼ではないかなと思います。 ○高久座長  それでは、今日ご出席くださった参考人の方々のご意見をいただきたいと思います。 これ以外に付け加えるものがあればどうぞ。 ○下川参考人  参考人という立場でどのくらいお話しをしていいのかという部分もありますが、個人 的には先ほどいいましたような経緯もありますので、「加齢期失調」とか「統覚失調」 あたりを、もし候補に加えていただけるのであればという気持ちはしておりますが、委 員の先生方に最終的にはご判断していただければよろしいかと思っております。 ○高久座長  今、ご提案があった「加齢期失調」と「統覚失調」ですか、委員の方々でご意見あり ますか。 ○高島委員  候補に加えてもらいたいというだけではなく、こういう理由でということもつけて、 参考人の皆さんは今日だけしかお出でにならないと思うので、今日のうちに出していた だいて、私はこういうのを候補に挙げてもらいたいと、それはこういう理由であると。 長くてもいいから出していただいて、一般の人に意見を聞くのだったらそれも並べたほ うがいいのではないかと思います。候補だけだしたのでは、とても賛成する人はいない のではないかと思います。 ○高久座長  これは事務局のほうから説明を付けるわけですから、付け加える場合には当然説明も 付け加えることになります。 ○大島室長  そうさせていただきます。 ○高久座長  他にどなたか意見はありませんか。 ○永島参考人  今の議論とずれるかもしれませんが、これだけの先生方がいらっしゃるのでお聞きし て帰りたいと思います。私どもがいろいろ例会などをやるときに、「アルツハイマー病 というのは遺伝するのですか」といったのが必ずでてくるのです。そういうのは非常に 確率は少ないから、心配することはありませんといろいろな先生がおっしゃるのです。  ここにアルツハイマー症とかアルツハイマー病が候補に挙がっていることについて、 世界ではアルツハイマー病協会とかそういうのはアルツハイマーの中にいろんないわゆ る痴呆症状を含むことを全部入れてアルツハイマーと言っているのでしょうか。日本で は、アルツハイマー病と例えば脳血管性痴呆とは違うのだと、私などはそういうふうに 理解していたのです。ですから、世界のアルツハイマー病協会というのは、どうもそう ではないのでしょうかという、そのへんがどうもよくわからないので、「アルツハイマ ー症」とか「アルツハイマー病」の概念についてお尋ねしておきたいのですが、どうい うふうになっているのでしょうか。 ○高久座長  その前に下川さんに確認したいのですが、付け加えるご意見としては「統覚失調」と 「加齢期失調」ですね。事務局のほうでこの2つについての理由をお聞きして、一般の 方々からのご意見を聞くのなら候補は多いほうが良い。メニューがたくさんあったほう が選ばれる方もご意見を述べやすいので、理由を聞いて付け加えて下さい。  それから今のご質問ですが、アルツハイマーには遺伝的な型とそれから加齢に伴う型 とがあります。ですから、アルツハイマーでも遺伝的な型の人はかなり若く、40代、 50代でも起こります。この点については、まだよくわかっていない部分があります。 ○永島参考人  アルツハイマーのほうが大きい概念なのか、それともいわゆる今までの「痴呆」とい う中にアルツハイマーと他のいろんな病気があるのかで、そこを言わないと「アルツハ イマー」という、こういう一つの選択肢がでているということがちょっと問題ではない かという意味で質問しました。 ○高久座長  事務局のほうでそれも当然付け加えてください。 ○大島室長  提案する際には、「痴呆」と同じ言葉としての「アルツハイマー」という形でさせて いただきたいと思います。 ○高久座長  ですが、実際には違うわけですね。 ○大島室長  実際には当然一部ですので、それは問題点としては出てくると思いますが、候補とし て説明する際には、まさに「痴呆」に替わるものとしての候補として挙げたいと思いま す。 ○高久座長  アルツハイマーは、学問的には痴呆全体をカバーする言葉でないということを留意点 として説明しておかないと一般の方にはわかりにくいことがありますから、そこのとこ ろは説明をする必要がありますね。 ○大島室長  わかりました。 ○高久座長  よろしいでしょうか。 ○長谷川委員  「加齢期失調症」ですが、これはすごく広い概念になってしまうのです。何が失調す るのか、そうすると少し機嫌が悪くなったので、これは「加齢期失調症」だということ になっても困るので、やはり「痴呆」の名前を替える場合、「痴呆」の本質的なものは 何かということを捉えたものが一般用語で難しくて理解しがたいかもしれないけれど も、それを選ぶのが私は正当な考え方ではないかなと思います。  それから、アルツハイマー型と血管性痴呆、これは両極です。2つとも同格の病気で す。ただ、欧米はアルツハイマー病がやたらに多くて血管性痴呆というのがほんの僅か です。そのためにアメリカなどでは、「アルツハイマー病」で痴呆の全てを代行してい るのではないかと思うのです。これは問題から外れますが、以上です。 ○高見参考人  私も参考人として来させていただいて、このまま終わりますと私の意見はなんら反映 されずに、誰からも歯牙にもかけられずに終わったという感じになるのです。やはりさ っきも言いましたように、一般用語でなくて専門用語、行政用語、法律用語として、そ ういう面から考えるならわかりにくくても正確な本質を突いた言葉にして欲しいと思い ます。曖昧な、わりと柔らかいような言葉にするなら「呆け」にしてくださいといいた いです。ですからそこらへんの区分はしっかりつけていただかないと非常にわかりにく くなりますから、あくまで医学的、専門的な言葉の言い替えだと。そこを確認していた だかないと、私も参考人として意見を言った意味がありませんのでよろしくお願いしま す。 ○高久座長  先ほどから何回も言いましたが、「痴呆」という言葉が不快感とか侮蔑感を感じさせ るということで今回改めるわけであります。しかしながら、行政用語と医学用語は完全 に分離すると将来混乱が起こるであろう。そういう意味では専門の医学会の人も納得で きる言葉であるということが1つの条件だと思います。その意味では、限られてくると 思います。 ○本間参考人  先ほど「痴呆」という言葉は非常にわかりやすく、よく知られているというふうな高 久座長のご発言があったのですが、必ずしも僕はそうではないと思っています。もちろ ん「痴呆」という言葉は知っている、聞いたことはあるのですが、じゃあ痴呆とはどう いう状態なのかということまできちんと理解されているとは思わないわけです。ですか らそれが結局偏見の元になっているわけです。偏見がある、侮蔑感があるというふうな ことをより接していない人であればあるほど思いやすいということは、やっぱりわかり やすい言葉ではないのではないかというふうに考えてもいいだろうと思います。  ですから新しい名前を考える場合に、例えば「認知症」とか、そういう場合の「認知 」というのがあまり親しみがないのではないかというご指摘もありましたけれども、逆 に親しみがなければ、それを親しむようにいろいろな啓発活動をすることが結局今まで の偏見なりそういう侮蔑感というものを替えることに繋がって行くからそのことが非常 に意味があることになるのではないかと思います。 ○高久座長  他にどなたかご意見ありませんか。 ○中村老健局長  今日は参考人の皆さんにもご提案いただいて、私どもも事務局のたたき台で出したも のですから拘るわけではありませんし、候補をたくさん増やしていただくことは構わな いと思うのです。  先ほど、もし広げるのであればということで「加齢期失調」と「統覚失調」のご提案 をいただいたと思うのですが、こういうモニターアンケート調査をしていただいて大変 ありがたかったと思うのですが、「加齢期失調」と「統覚失調」については2つ問題が あるのではないかと思います。「加齢期失調」のほうは、広すぎるのではないかという お話がありました。「統覚失調」のほうは、先ほどの本間先生の少し元気がでない「失 調」というのはやめたほうがいいのではないかというお話の点に「統覚失調」がひっか かるということと、このアンケート調査をやっていただいた中でも「統覚失調」と「加 齢期失調」は支持が少ないので、いわば予選をやっていただいて予選で負けているとい うことなので、こっちは決勝戦のリーグですのでご提案に敬意は表するのですが、予選 でこれは落ちていると判断していただいたらいかがかと思います。これは私の提案です ので、ご審議をお願いしたいと思います。 ○高久座長  今の局長さんの意見にどなたかご意見ありませんか。長谷川委員もそのようにおっし ゃいましたですね。他によろしいでしょうか。  それでは、資料6にありますように、これに「記憶障害」を加えた言葉を候補の対象 にしたいと思いますがよろしいでしょうか。  本日はありがとうございました。特に参考人の皆様方、お忙しい時間を割いていただ き、また、いろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。 ○大島室長  連絡事項をさせていただきます。ホームページの掲載資料をお手元にお配りしており ましたが、今日のご議論を踏まえまして修正させていただきます。また、「記憶障害」 を加えるなどの変更も行います。  ホームページに載せる際に、もう一度各委員の皆様方にお配りさせていただき、お目 通しいただいて、お気づきのことがあれば教えていただければと思っております。  それから次回の開催につきましては、資料を広く広報いたしまして、いろいろなご意 見を集約させていただきたいと思っておりますので、多少時間をいただきまして、次回 は11月の上旬か中旬ぐらいにこの会を催させていただきたいと思います。日程につき ましては改めてご連絡させていただきたいと思います。以上でございます。 ○高久座長  それではまた次回よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。                                      以上                       照会先:老健局計画課痴呆対策推進室                            痴呆対策係(内3869)