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障害のある人の「働きたい」を応援する共働宣言
〜共に働き・共に生きる社会づくりを目指して〜


 私たちは、障害があっても無くても「人は一定の年齢になったら働く」ということが当たり前になるように願っています。そこで、障害のある人の立場、障害のある人の暮らしを支える福祉の立場、就労支援をする立場、障害のある人を雇用する企業の立場、そしてそれらを取り結ぶ行政の立場から、あるべき姿について話し合いました。
 皆で話し合ううち、「もっと働ける…」そんな勇気と確信が湧いてきました。
 そして、「障害のある人もない人も共に働き・共に生きる社会をめざす」という「みんなのための社会」を構想し、多くの人に伝えるために、委員の発言を中心に「共働宣言」として取りまとめました。



「障害者の就労支援に関する有識者懇話会」
平成16年9月29日



━━ 私をあてにしている人がいる ━━

働いている障害のある人より:
「私をあてにしている人がいる。
 そこにこそ自分の居場所がある。
  そこには自分の出番がある。」



━━ 1 働きたい! ━━

 夢や目標を変えなくていい!
障害のある企業経営者より:
 車椅子を使用する生活になったとき、「夢をあきらめなくてはいけないのか?」と問いかけた私に、医師が言った言葉、「障害があっても夢や目標を変えなくていい。夢や目標を叶えるための手段や方法を変えれば良い。」

就労支援関係者より:
 障害のある人は、次のステップに向けて移行するときにさまざまな困難に遭遇するが、障害のある人の支援をする専門家は、短期的な視点からではなく、次のステップや本人の将来を展望した応援や助言をすべきである。
 初めて出会う羅針盤(専門家)としてのあなたの一言はとても重い意味を持っていることを認識すべきだと思う。



 今からでも早くはない、今でも遅くはない
本人より:
 障害がある私は、療育や学校生活の中ではらはら・どきどきの日々を過ごしていました。そして就労に向かおうとするときはもっと「とまどい」「ためらい」を感じます。
 「今からでも早くはない、今でも遅くはない」をモットーに、理解ある支援者や適切な制度と出会うことによって果敢にそれを乗り越えたいと思っています。


就労支援関係者より:
 障害者だ、健常者だという前に、人にはそれぞれに名前があり、個性があります。
 「障害者」という決めつけがいろいろな推測や誤解を生じさせます。



 自分の障害をみんなが知っている ―― オープン!
企業経営者・役員より:
 「障害について触れられたくない、言われたくない。」
 こんな態度が周囲とカベを作っているのかもしれない。
 むしろ、気さくにオープンにしてしまう方が良いかもしれない。自分の障害、できること、できないこと、周囲にも分かってほしいこと、など。
 周りの人は意外とこだわっていないという現実に気づいてほしい。



 働くことは実感すること
福祉団体関係者より:
 働くこと、それは生活の糧を得ること、仲間とつながること、自分の可能性に気づきそれを発揮すること、自分の居場所を見つけること、そして何よりも自分自身が人生の主人公になること。
 そのことによって自らの存在を実感するに違いありません。



━━ 2 仕事を創る ━━

 全国どこでもみんなでできる作業がある!
福祉団体代表者より:
 「メール便」配達事業なら、障害者に向いていると思った。
 実際にやってみると、仕事の内容も細分化でき、お客様からありがとうと感謝される、配達先の犬とも仲良くなれる、セールスドライバーから働く姿勢が学べる、そしてしっかりとした収入になるということが分かった。さらに、全国どこでも取り組め、広がりも期待できる。



 あえて難しい作業を選んだ
福祉団体代表者より:
 これまで小規模作業所が行ってきた、「手軽に取り組めるけれど低賃金」という作業ではなく、きちんと賃金が払えて長続きするような作業、しかし特段に難しい作業にあえて取り組み、みんなでがんばった。


 社員を育てることは企業の本来の役割
企業経営者・役員のことば:
 企業は社員の適性を活かし能力を十分に発揮するよう育て上げたいと思っています。障害のある人を雇用した場合も全く同じです。


 「障害者には向かない」という思いこみを捨てたらできた!
企業経営者・役員より:
 流通業の業務は大変な仕事なので、障害のある人には向かないと思い、昔は障害のある人が配置された職場に人事の担当者が赴きフォローしていた。しかし、今は障害のある人も一緒に働いている風景が当たり前になり、各職場の同僚や上司が対応できるようになっている。


 できる仕事はいくらでもある!
企業経営者・役員より:
 障害者には無理、と決め込んでいませんか。会社の中の仕事を棚卸しして見ると、それぞれに合ったいろんな仕事が見えてくる。

企業経営者・役員より:
 文字が読めなくても、計量器の目盛りがわからなくても、いろいろな工夫をしていますから、障害が重いといわれる人たちでも十分に作業ができるのです。
 「できないこと」に固執しないという発想の転換が必要なのです。
 本人の力では越えることのできない高いハードル,越える必要のないバリアーは最初から取り払ってしまえばいいのです。



 在宅でITの力を借りて能力を発揮!
福祉団体代表者より:
 パソコンは武器になる。ITの力を借りて、その人の持てる力を発揮できるよう支援することによって、障害が重度でも才能を開かせていくことができる。
 知的障害のある人がITを駆使して働いている事例もある。



 ホームヘルパーとして働く
就労支援関係者より:
 知的障害のある人が、ホームヘルパーとして高い評価を得ながら働いている。同じ目線、気配り、飾らない働きぶりが評価されている。この仕事は全国どこにでもある。


 身体もこころもときほぐす・・・ヘルスキーパーという仕事
就労支援関係者より:
 視覚障害のある人が、資格を持つ専門家として、多くの企業で働いています。社員の健康管理の一助としてマッサージなどを行う「ヘルスキーパー」として活躍しているのです。ITを使って予約業務もこなしています。


 何度でも挑戦できる!
マスコミ関係者より:
 障害のある人の保護者たちは、失敗するとかわいそうだからと、挑戦したり、失敗したりする自由を、障害のある人から奪ってしまいがちです。

マスコミ関係者より:
 一度就職したらずっとその企業で働きつづけるという雇用形態が変化しつつあります。また、企業でうまくいかなかったからといってそれで就職は終わりということではありません。
 雇用分野と福祉分野には何度でも再就職へ挑戦できるようなセーフティネットが稼動し始めています。こうした仕組みがもっと充実されるといいと思います。



━━━ 3 工夫と支えがあれば働ける! ━━━

 福祉との連携があれば
企業経営者団体関係者より:
 福祉側の支援者は、自分が支援してきた人の「できること・できないこと」を正確に企業に伝えてほしい。そうすれば必要な支援策を考えることができる。
 また、障害についてよく知っている福祉側のノウハウや支援を企業と共有できれば、もっと多くの企業が障害のある人を雇用できるようになる。



 企業と福祉の両輪
就労支援実践者より:
 働くことができても、働き続けることはもっと難しいといわれます。離職の原因として、意外と多いのが生活面でのほころびです。
 仕事のことは企業にお任せし、生活面のことはもっと福祉分野がしっかり支えます。両者で良い関係をつくり「安心して働ける」「安心して雇用できる」、そんな関係を社会のそこここに創っていこうではありませんか。



 もっともっと接近しなければ/協働しなければ
福祉団体代表者より:
 どうしてこんなにも開きが出てしまったのでしょう。企業で働くと最低賃金が保証され、施設や作業所だとあまりに低い工賃。しかし、企業で働いている障害のある人の数は限られています。
 福祉サイドから押し出す力、企業が障害のある人を引き付ける力、双方ともに弱さがあるように思います。障害がある人びとをど真ん中に据えて、知恵を出し合えば必ずや魅力的な道は拓けるはずです。


企業経営者より:
 経営者として障害のある人を雇用するのは、一つには社会連帯として障害のある人の雇用義務という「社会規範」を果たすことです。
 でも、それだけではありません。もう一つには、働く場でしか得られない感動や充実感をともに味わいたいと思うからです。企業は、その宝庫だと思います。



 ネットワークの構築・・・地域を耕す
福祉団体関係者より:
 福祉、医療、労働、教育関係者等の地域の関係者が日常的につながる場を設け、その中で互いに知り合い、互いに支え合うことが大切です。
 そうすることで、障害者ひとりひとりの〜働きたい〜という願いを受け止め、安心して働きつづけられる機会を増やす取り組みが広がっています。私たちは、こうした取り組みを共働して応援します。


福祉団体関係者より:
 「あの地域は特別だから」と言う人もいますが、そのネットワークをつくった人たちは、どこの地域にもある機関や、組織に所属する人たちです。
 自律的な市民感覚が求められている今日、多くの英知が「地域を耕す」ために連携するという気概こそが求められているのではないでしょうか。



━━━ 最後に ━━━

 障害のある人の「働きたい」という切実な願いにこたえるためには、次のようなことが大切です。

「関係者の就労支援への意識を高めること」
「働く場や仕事を創ること」
「働くための工夫をし、支えていくこと」

 「障害のある人もない人も共に働き・共に生きる社会」の実現を願ってここに宣言します。


 この宣言は、これで完成ではありません。さらに、多くの人の意見や知恵や実践を集めて、障害のある人の「働きたい」を応援する大きな流れとなることを願ってやみません。



障害者の就労支援に関する有識者懇話会の委員(50音順、敬称略)



安藤 よし子 滋賀県副知事

小倉 昌男 (財)ヤマト福祉財団理事長

小島 茂 連合総合政策局生活福祉局長

勝又 和夫 全国社会就労センター協議会副会長

桂 靖雄 (株)松下電器産業常務役員東京支社長

北山 守典 (福)やおき福祉会紀南障害者就業・生活支援センター所長

小板 孫次 (財)日本知的障害者福祉協会会長

小宮 英美 NHK解説委員

五阿弥 宏安 読売新聞社会部長

関 宏之 大阪市職業リハビリテーションセンター所長

竹中 ナミ (福)プロップ・ステーション理事長

畠山 千蔭 特例子会社(株)ビジネスチャレンジド前取締役社長

藤井 克徳 きょうされん常務理事

(座長) 堀田 力 (財)さわやか福祉財団理事長

丸山 宏充 ハートピアきつれ川就労支援相談役

水越 さくえ (株)イトーヨーカ堂常務取締役常務執行委員

山崎 泰広 (株)アクセスインターナショナル代表取締役社長

輪島 忍 日本経団連労働政策本部雇用・労務管理グループ長


谷畑 孝 厚生労働副大臣


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