2004年日本政府年次報告
「国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約(第144号)」
(2003年6月14日〜2004年5月31日)


Iについて

 三者の協議機関たる懇談会(以下「ILO懇談会」という。)に関しては、「ILO懇談会開催要綱」及び「ILO第144号条約の3者協議方法についての申合せ」(別紙1)(以下、「開催要綱等」という。)に基づいて運営を行っている。なお、海上労働に関する事項について協議すべき必要が生じた場合には海上労働に関する協議会(以下「ILO海事協議会」という。)を開催する予定である。

IIについて

〔第1条〕
 本条約第1条に規定する「最も代表的な労働者及び使用者団体」は、ILO憲章第3条5に規定するものと同義と考えており、従来、一般総会の代表選出に当たっては日本労働組合総連合会と日本経済団体連合会が、海事総会の代表選出に当たっては、全日本海員組合、漁船同盟連絡協議会、日本船主協会、日本内航海運組合総連合会及び大日本水産会を最も代表的な団体として取り扱ってきたところである。

〔第2条〕
 効果的な協議を確保するため、採用される手続の性質及び形式にかかわらず
 (1)「協議」は、政府が最終決定が下される前に行われること、
 (2)協議を受ける側が、その意見を形成する十分な時間が与えられ、かつすべての必要な情報を得ていること、
 (3)政府の最終決定が下される前に協議を受ける側がその意見を提示できること
 に配慮して協議を開催しているところである。
 また、開催要綱等については、政労使三者の合意の上で作成したところである。

〔第3条〕
 使用者及び労働者の代表者の選定については、ILO懇談会の参集者である厚生労働省大臣官房総括審議官が最も代表的な労使団体からILO懇談会に参加する者の推薦を得て、それに基づいて参集を求めているところである。(ILO海事協議会の開催に当たっては、国土交通省海事局船員政策課長が同様の対応を行うこととしている。)

 また、平等の立場で代表することを確保するためには、協議手続の運営が労使両者に対し公平、公正に行われることが重要であると考えており、労使の代表者について、
 (1)協議事項についての情報が平等に与えられること、
 (2)ILO懇談会等の場で意見を述べる機会を等しく与えられていること、
 (3)ILO懇談会等の場で表明した意見について、政府が等しく真剣に検討し、また対外的な公表等に当たり等しい取扱いを行うこと、
等に配慮しているところである。

〔第4条〕
 行政上の支援としては、必要に応じて、会合場所の提供、会合の招集、必要な通信などを行うこととしている。

 「手続への参加者に対する必要な研修のための経費の負担」についての取極は、ILO懇談会への参加者の研修が必要であり、この研修に経費の負担が生じることが判明した場合になされるものである。  いずれにしても、我が国の最も代表的な労使団体のILO総会及び理事会での活動実績等を踏まえれば、本条約の趣旨を理解した上で、協議手続に参加するにふさわしい能力を有する者を代表者として選ぶものと考えられることから、我が国においては研修の経費負担が必要になることはないと考えている。

〔第5条〕
 ILO懇談会の開催頻度については、これまで、代表的団体との合意の上で、年2回(4月及び8月)の頻度で開催してきたところであり、今後もこの頻度で行っていくこととしている。各事項に関する協議については以下のとおりである。
(a) に関する協議について
 第92回国際労働総会の議題(人材養成と訓練に関する勧告案)に関するILO事務局からの勧告案文に対する政府の回答書の作成に際しては、勧告案が送付される時期の関係で、ILO懇談会の場での協議が時期的に難しかったことから、書面による協議を行ったところである。
(b) に関する協議について
 協議すべき事項が無かったことから、2004年5月31日現在、ILO懇談会の場でこの項に関する協議を行った実績は無い。
(c) に関する協議について
 2004年4月開催のILO懇談会において協議を行った。
 取り上げた条約は、政府代表の提案に基づくILO第155号条約及び第162号条約並びに労働者代表の提案に基づくILO第111号条約及び第173号条約の4本であった。
(d) に関する協議について
 ILO第87号、第98号、第100号、第122号、第142号、第156号及び第182号条約に関する2003年の報告書の作成にあたっては、2003年8月開催のILO懇談会の開催前に十分な時間的余裕をもって労使に送付し、労使団体の意見を聞いたところである。
(e) に関する協議について
 協議すべき事項が無かったことから、2004年5月31日現在、ILO懇談会の場でこの項に関する協議を行った実績は無い。

 ILO懇談会における協議の結果として行われた報告・勧告については、政府の最終的な見解をとりまとめる上で、最大限に尊重していくこととしている。

 なお、第92回国際労働総会の議題(漁業における労働条件に関する議題)に関するILO事務局からの質問状に対する回答の作成及び海上労働に関する条約であるILO第185号条約の権限のある機関への報告に際しては、ILO海事協議会の場での協議が時期的に難しかったこと等から、書面による協議を行ったところである。また、ILO海事協議会については、前述の2つの事項以外に協議すべき事項が無かったことから、2004年5月31日現在、開催の実績は無い。

〔第6条〕
 議事要旨等協議に関する情報については、ILO懇談会が開催される毎に審議会等台帳への記載等一般に閲覧できる方法により、厚生労働省が公開している。(ILO海事協議会が開催された場合には、国土交通省が同様の対応を行う。)
 ILO懇談会における協議の詳細については、議事要旨(別紙2)を参照されたい。

IIIについて

 ILO懇談会の運営については、政労使三者の合意を得て作成された開催要綱等に基づき、厚生労働省に委任されているところである。このILO懇談会の運営に関する検査機関については、明文の規定は設けられていないが、運営に際しては、議題等について労使の意見を聞いていること、議事要旨をホームページ上で公開していることから、実質的には適正な運営が確保されていると認識している。

IVについて

 該当無し

Vについて

 無し

VIについて

 本報告の写を送付した代表的労使団体は、下記のとおり。
  (使用者団体)日本経済団体連合会
  (労働者団体)日本労働組合総連合会



(別紙1)
ILO懇談会開催要綱


 目的
 国際労働機関の活動に関する事項について、政府、使用者及び労働者の代表者の間で効果的な協議を行うために、ILO懇談会(以下、「懇談会」という)を開催する。

 メンバー
 最も代表的な労使団体から選ばれた者それぞれ3名及び原則として厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)、同国際課長、同海外情報室長とする。

 テーマ
 ILO第144号条約(国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約)第5条1に列挙されたILO活動についての協議を行うとともに、ILO総会、理事会等の会議の報告を厚生労働省大臣官房国際課から行う。

 懇談会の運営
(1) 懇談会は、厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)が労使の参集を求めて開催する。
(2) 懇談会は、毎年4月頃と9月頃の年2回開催とし、1回2時間程度とする。
(3) 懇談会自体は非公開とし、議事要旨を公開する。
(4) 懇談会の庶務は厚生労働省大臣官房国際課において行う。



LO第144号条約の三者協議方法についての申合せ


 ILO第144号条約(国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約)に定める三者協議の実施方法について、条約第2条2に基づき、以下のように定めることに合意する。

 協議体制
 厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)が労使の参集を求めて開催するILO懇談会において協議を行うこととする。(政府の行政運営上の参考に資するために開催される「懇談会等行政運営上の会合」としての位置づけ。)

 メンバー
政府側原則として厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)、同国際課長、同海外情報室長の3名。ただし、政府の他の府省から特定の回の会合について出席要請があった場合、その回においては、前記3名以外の者も出席できることとする。
使用者側最も代表的な使用者団体からの推薦に基づいて厚生労働省大臣官房総括審議官が参集を求める3名。
労働者側最も代表的な労働者団体からの推薦に基づいて厚生労働省大臣官房総括審議官が参集を求める3名。
 メンバー以外の労使の出席については、メンバー全員の合意がある場合にのみ認めることとする。
 最も代表的な使用者団体及び労働者団体からの推薦は、2年ごとに行うものとする。

 協議事項
 第144号条約第5条1に列挙された次の事項についての協議。
(a) 国際労働総会の議事日程の議題に関する質問書に対する政府の回答及び同総会において討議するために提案された文書に関する政府の意見
(b) 国際労働機関憲章第19条の規定に基づく条約及び勧告の提出に関連して権限のある機関に対して行われる提案
(c) 批准されていない条約及び実施されていない勧告について、これらの条約又は勧告を批准し又は実施することを促進するためにいかなる措置をとり得るかを検討するため、適当な間隔を置いて行う見直し
(d) 国際労働機関憲章第22条の規定に従って国際労働事務局に対して行われる報告から生ずる問題
(e) 批准された条約の廃棄に関する提案

 協議に当たっての留意事項
 政労使三者は3に掲げる事項を協議するに当たっては次のことに留意する。
(1) 政府は協議を誠実に行わなければならないが、表明されるいかなる意見にも拘束されず最終決定について全責任を負う。なお、「効果的な協議」とは、政府が最終決定を下す前に協議が行われるということである。
(2) 懇談会を具体的な課題や案件の解決を求め、議論する場として用いない。なお、議事進行を行う政府が協議事項の範囲外と判断する事項について意見が出た場合、協議事項外であるため協議には応じないことを伝え、次の事項に移ることとする。
(3) 協議は原則として懇談会の場で行うものとする。ただし、(a)に関する協議について、ILO事務局からの質問書、案文が送付される時期によって懇談会の場での協議が時期的に難しい場合には書面による協議を行うことができる。
(4) (c)に関する協議については、懇談会の運営を円滑に進めるため、一回の懇談会につき政労使それぞれ希望がある場合には二つ以下の条約をあらかじめ協議対象として提示し、それに基づき政府が議題として取り上げることとする。なお、(c)については、年2回の懇談会のうち4月頃開催の懇談会で協議する。
(5) (d)に関する協議の範囲は、政府の年次報告案の範囲内とする。すなわち政府の年次報告案の内容が事実に基づく適切な記述であると考えるか否か、また、政府の報告案に事実に基づいて追加的に記述すべき事項又は削除すべき事項があると考えるか否か、について協議することとする。

 懇談会の運営
(1) 3の協議の他、総会、理事会、必要な場合にはその他の会議について政府から報告を行うことができる。
(2) 懇談会の開催の頻度は、4月頃と9月頃の年2回とし、1回2時間程度とする。
(3) 懇談会自体は非公開とし、後日審議会等台帳への記載により議事要旨を公開する。
(4) 懇談会の進行は厚生労働省が行う。



(別紙2)
第1回ILO懇談会議事要旨


1.日時:平成15年8月27日(水) 14:00〜15:30

2.場所:経済産業省第821会議室

3.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会顧問  伊藤 祐禎
日本労働組合総連合会労働法制局長  長谷川 裕子
日本労働組合国際政策局部長  大久保 暁子
(2)使用者側
日本経済団体連合会国際労働政策本部長  讃井 暢子
日本経済団体連合会労働政策本部副本部長  川本 裕康
日本経済団体連合会国際労働政策本部国際交流グループ長  高澤 滝夫
(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)  長谷川 真一
厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長  荒井 和夫

4.議題
(1) ILO懇談会開催要綱について(確認)
(2) 2003年年次報告について(協議)
(3) 第91回ILO総会等について(報告)

5.議事要旨

(事務局)
 それでは第1回ILO懇談会を開催致します。私は皆川国際課長の代理で出席しております国際企画室長の荒井でございます。本日の司会を務めさせていただきます。初めに開催に当たりまして、本日の懇談会の主催者である長谷川総括審議官より一言ご挨拶させていただきます。

(事務局)
 本日はお集まりいただき心より感謝申し上げます。これより第1回ILO懇談会を開催致します。
 ご承知の通り、本懇談会はILO144号条約がこの6月に発効したことを受け、本条約に定める効果的な協議を行うことを目的として開催するものでございます。
 ILO144号条約は1976年の総会で採択されたたもので、ILOが、2年に1回の頻度で年次報告の提出を求めている12本の優先条約の1つでありましたが、幾つかの規定の解釈が不明確であったこと等もあり、批准に至らずにおりました。その後2000年に総合調査が行われ解釈上の疑義が解消されたこと等を受け、労使団体や関係省庁のご理解、ご協力を得て、昨年の通常国会で批准されるに至ったわけでございます。
 本条約に基づいた協議を通じて、政府、使用者団体及び労働者団体の間の意志の疎通が、より一層深まるものと期待できるところでございます。ご参集いただいた労使のメンバーの方々におかれましては、日頃よりご協力・ご支援いただいているところでございますが、国際労働行政の発展のためにも、建設的な議論が行われるよう、ご協力よろしくお願い申し上げます。また、関係する各省庁、また省内の各部局の方々にもご協力いただいているところでありますが、今後ともこの懇談会の円滑な遂行に向けてご協力もあわせてお願い致します。

(事務局)
 続きまして、懇談会のメンバーをご紹介させていただきます。労働側から、伊藤連合顧問、中嶋連合総合国際局長、長谷川連合労働法制局長、使用者側から鈴木日本経団連国際協力センター専務、讃井日本経団連国際労働政策本部長、川本日本経団連労働政策本部副本部長でございます。政府側は、先ほどご挨拶申し上げた総括審議官、国際課長、国際情報室長がメンバーとなっております。なお本日は、海外出張中の中嶋連合総合国際政策局長に代わり、大久保連合国際政策局部長にご出席いただいております。また、鈴木専務理事は用務の都合上、欠席となっており、代理として高澤日本経団連国際労働政策本部国際交流グループ長に出席いただいております。政府側は、国際課長に代わりまして、国際企画室長が出席しております。また国際情報室長は所用により欠席させていただいております。

(事務局)
 それでは初めに、本懇談会の開催要項について、事前にご説明していたものと変更はございませんが、改めてお手元に(資料1)としてご用意させていただいておりますものを、この場で正式な要綱として確認したいと思います。

(一同異議なし)

(事務局)
 それでは、特にご異議もないようでございますので、本要綱につき、この場で承認されたものとして取り扱わせていただきます。

(事務局)
 続きまして、議題2になりますが「2003年日本政府年次報告」に関する協議に入りたいと思います。まず政府側より報告案についてご説明させていただきます。

(政府側説明)

(事務局)
 続いて政府報告案に対して労働者側のご意見につきご説明願います。

(労働者側説明)

(事務局)
 続いて政府報告案に対する使用者側のご意見につきご説明願います。

(使用者側説明)

(事務局)
 これまでのご説明等について、何かご質問、ご意見等ございますでしょうか。

(労働側)
 補足資料の中で、表現を一部削除された理由は何でしょうか。

(事務局)
 内容についてその根拠を調査中であり、今回ILOへ明示的に報告する内容ではないと考えたところです。

(労働側)
 この表現に明らかに反する事実がみつかった訳ではないのですね。

(事務局)
 そうではなく、内容につき精査しているところです。

(労働側)
 この懇談会ですが、政府の報告をチェックするものだと思いますが、今回提出する意見は今後どのような取り扱いになるのでしょうか。

(事務局)
 事実に反するような記述があるのか、事実に即して追加するものがあるか、削除するものがあるか、ということを議論するものであります。ご意見として出されたものについては、その取り扱いについてこれからご説明したいと思うのですが、できるだけ広く公の趣旨に反しない範囲内で回答したいと考えております。

(事務局)
 それでは他にご発言がなければ、議題2についてはこれまでとさせていただきたいと思います。使用者側、労働者側それぞれよりご提出いただいた政府報告案に対するご意見につきましては、関係府省庁等にも送付し、政府報告案の修文を含めて検討させていただくこととしたいと思います。ILO事務局へは、こうした検討作業が済み次第、政府報告に労使のご意見を添付して提出することを予定しております。
 また、厚生労働省においての取り扱いでございますが、審議会及び局長等が主催する行政運営上の会合等の資料につきましては、会合終了後1週間以内にホームページに公開するのが通常の取り扱いでございますが、年次報告案につきましては、労使からご提出されたご意見も含め、情報公開法第5条第3号の「国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」に該当すると考えておりますので、確定したものではなく事前の協議の段階ですので、年次報告案につきましては、ILO事務局に確定版を提出するまでは、非公開とさせていただきたいと思います。確定し送付した時点で、またご連絡を致したいと思います。
 続きまして、議題3でございますが、「第91回ILO総会等の会議の報告」に移りたいと思います。

(政府側説明)

(事務局)
 ご質問等ございましたらよろしくお願い致します。

(特になし)

(事務局)
 他にご発言がないようでございますので、議題3についてはこのぐらいにしたいと思います。
 本日の議題は以上でございますので、これで懇談会を閉会と致したいと思います。
 なお、本日の会合につきましては、先程もご説明しましたとおり、国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を取り扱っておりますので、会合自体を非公開とさせていただきたいと思います。また本日の会合の内容等につきましては、政府案を確定してILOへ送付した時点まで非公開とさせていただきます。
 本日はこれで解散とさせていただきます。どうもありがとうございました。

−了−



第2回ILO懇談会議事要旨


1.日時:平成16年4月9日(金) 14:00〜15:30

2.場所:厚生労働省専用第11会議室

3.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会総合国際局長  中嶋 滋
日本労働組合総連合会労働法制局長  長谷川 裕子
日本労働組合総連合会国際局部長  大久保 暁子
(2)使用者側
日本経団連国際協力センター専務理事  鈴木 俊男
日本経済団体連合会国際労働政策本部長  讃井 暢子
日本経済団体連合会労働政策本部長  川本 裕康
(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)  長谷川 真一
厚生労働省大臣官房国際課長  村木 太郎
厚生労働省大臣官房国際課海外情報室長  野地 祐二

4.議題
(1)ILO理事会の報告等(報告)
(2)未批准条約について(協議)

5.議事要旨

(司会)
 それでは第2回ILO懇談会を開催いたします。私は厚生労働省大臣官房国際課長の村木でございます。私が、本日の司会を務めさせていただきます。初めに開催に当たりまして、本日の懇談会の主催者である厚生労働省総括審議官の長谷川より一言ご挨拶させていただきます。

(長谷川総括審議官)
 本日は、お忙しいところお集まりいただき心より感謝申し上げます。これより第2回ILO懇談会を開催いたします。
 本懇談会は、ILO第144号条約が昨年6月に発効したことを受け、本条約第2条第1項で定める政労使の代表者の間での効果的な協議を行うことを目的として開催するものです。ご承知の通り、昨年8月末に第1回の会合を開催し、今回が2回目の会合となります。
 前回、第1回の会合におきましては、既批准条約の年次報告についての協議ということで議論を行いましたが、今回は、条約第5条第1項(c)の規定に基づき、未批准条約について議論するということになっております。
 本条約の協議を通じて、政府、使用者団体及び労働者団体の間の意志の疎通が、より一層深まるものと期待しております。
 ご参集いただいた労使のメンバーにおかれましては、国際労働行政の発展のためにも、建設的な議論が行われるよう、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 また、未批准条約に関する検討や議論を円滑に行っていく上では、関係する各府省庁及び省内各部局の協力が不可欠と考えます。これまでのご協力に心より感謝申し上げると共に、引き続きご協力をお願いいたします。

(司会)
 続いて懇談会のメンバーをご紹介させていただきます。労働側から中嶋日本労働組合総連合会総合国際局長、長谷川日本労働組合総連合会労働法制局長、大久保日本労働組合総連合会国際局部長、使用者側から鈴木日本経団連国際協力センター専務理事、讃井日本経済団体連合会国際労働政策本部長、川本日本経済団体連合会労働政策本部長でございます。政府側は、先ほどご挨拶申し上げた総括審議官、国際課長、海外情報室長がメンバーとなっております。
 それでは初めに、議題1「ILO理事会の報告等」ということで、政府側より、資料に 基づいてご説明させていただきます。

(政府側説明)

(司会)
 ただ今の件についてのご質問、また補足的なお話がありましたらお願いいたします。

(労働側)
 分担金についてですが、アメリカ、日本の両国が納めないとILOの事務の執行に大きな影響を与えることから、きちんと納めてほしいという要望が労働側の議論として強くありましたことを申し上げます。

(政府側)
 分担金の支払いにつきましては、事務的経費なのできちんと払うべきというご批判を労使よりいただいておりますことは承知しておりますが、一方、ILOの財政規律について見直していただきたいという思いもございます。財政規律については、今後、労使とも話をしながら追求していきたいと考えております。

(司会)
 続きまして、議題2になりますが「未批准条約」に関する協議に入りたいと思います。まず初めに、第155号条約及び第162号条約について、政府側よりご説明させていただきます。

(政府側)
 第155号条約については、重大災害が頻発している中で、法令の整備を含め労働安全衛生対策の強化を図っていきたいと考えており、同条約と国内法制の整合性の確保の検討を進めてまいりたいと考えております。
 第162号条約についても、本年10月より施行される改正労働安全衛生法施行令など、必要な法令の整備が進められており、国内の法制との整合性の確保についての検討を進めてまいりたいと考えております。

(司会)
 以上についてのご質問等ございましたらお願いいたします。

(使用者側)
 第162号条約については随分環境が整ってきたと考えておりますが、第155号条約につきまして、これまで批准しなかった理由と、今後批准に向けた方向性をお聞かせいただきたいと思います。

(政府側)
 この条約の内容については労働安全衛生法等の法令によって概ね実施されていると理解しておりますが、例えば、2以上の企業が同一作業場で同時に活動する場合の協力について、一定の請負関係にある企業についてのみ法律上規定されています。
 昨年夏以降に頻発した重大災害を契機として、昨年11月に大規模製造業事業場を対象として実施した「安全管理体制及び活動等に係る自主点検」の分析結果等を踏まえ、「大規模製造業における安全管理の強化に係る緊急対策要綱」を本年3月に策定したところでもあることから、本要綱も踏まえつつ、国内法制の検討を行う中で、批准に向けた環境も整っていくのではないかと考えております。

(労働者側)
 製造業においては、正社員、請負、派遣の3形態の労働者が含まれるケースがあると思います。今般の派遣法改正により、派遣労働者については派遣先・元双方に安全衛生義務が課せられたところですが、請負についてはそのような義務はありません。そういった状況も含め、今後トータルに安全衛生管理を整備していくという姿勢であると認識してよろしいのでしょうか。

(政府側)
 それらがカバーされればとは思いますが、具体的な検討はこれからということになります。

(労働者側)
 労働者側としては第155条約を批准すべきと従来より主張しているので、是非検討すべきだと思います。

(使用者側)
 第155号条約に関してはこれからの検討になるということはわかりましたが、第162号条約については、すぐにでも批准するということでしょうか。

(政府側)
 国内法制の整備等詰めるべき点もありますので、この場で具体的には申し上げられないことをご理解いただきたいと思います。

(司会)
 続きまして、労働側よりご希望のありました、第111号条約と第173号条約についてとなります。まず、労働側よりご発言をお願いします。

(労働者側)
 第111号条約は、ILOの基本条約の一つであり、早急に批准すべきではないかと考えています。人権擁護法は廃案になりましたが、受け皿を出してもらう等、環境整備を進めてほしいと思います。
 第173号条約については、現在国会で破産法改正の審議をしており、法改正にあわせて批准すべきと考えます。

(司会)
 第111号条約につきまして、まず政府側から発言したいと思います。

(政府側)
 第111号条約については、雇用及び職業に関する差別に対する施策は関連労働法令によって基本的には講じられているものの、本条約は雇用及び職業に関する広範な差別を対象としているため、条約と国内法制との整合性について引き続き検討する必要があると考えております。

(司会)
 何かご質問、ご意見等ございますでしょうか。

(労働者側)
 人権擁護法案が廃案となり受け皿となる法律が存在しないということ以外に、第111号条約の批准を困難にしている原因はあるのでしょうか。

(政府側)
 基本条約なので早期に批准すべきとは考えておりますが、人権擁護法案が廃案となり、それに代わるものがない状態であるということ、また、論点はいろいろとございますが検討中であるということで、ご理解をいただきたいと思います。
 批准に向けて、今後引き続き検討したいと存じます。

(司会)
 続きまして、第173号条約について、政府側から発言させていただきます。

(政府側)
 第173号条約においては、労働債権に国及び社会保障制度の債権よりも高い順位の特権を与えることとされているところ、今回の破産法の改正によっても、未払い賃金等の順位は租税債権と同順位にとどまる等、批准が難しいという状況は変わっていないものと考えております。

(司会)
 ご発言がありましたらお願いいたします。

(労働者側)
 ご説明を伺うと、批准に向けてのハードルが高いということですね。国の債権と同順位までは来たが、さらに優先されるところまで行かないといけないわけですね。

(司会)
 それでは他にご発言がなければ、議題2、未批准条約についてはこのぐらいにしたいと思います。他にご発言がございましたらお願いします。

(発言なし)

(司会)
 それでは、本日の議題は以上でございますので、これにて閉会といたします。
 なお、本日の会合の議事要旨は公表する予定としております。議事要旨については事務局で作成し、ホームページ上に公表したいと考えています。
 懇談会は終了とさせていただきましたが、ご出席の方から別途ご発言等ございますでしょうか。

(意見交換)

(司会)
 他にご発言等がなければ、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

−了−

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