04/08/30 第１１回社会保障審議会年金数理部会議事録


　　　　　　　　　　　　　　　　　　第１１回
　　　　　　　　　　　　　 社会保障審議会年金数理部会


　　　　　　　　　　　　　 平成１６年８月３０日（月）
　　　　　　　　　　　　　　　　厚生労働省年金局


時間　　：平成16年8月30日（月）14:00～16:07
場所　　：富国生命ビル28階会議室
出席委員：
　堀部会長、都村部会長代理、栗林委員、近藤委員、田村委員、林委員、
　宮島委員、山﨑委員

　議事次第
　１．平成14年度財政状況について
　　　－厚生年金保険・国民年金（基礎年金）－
　２．平成16年度年金制度改正における給付と負担の見直しについて


開会

○田村首席年金数理官
　定刻になりましたので、ただいまより、第11回社会保障審議会　年金数理部会を開催
させていただきます。
　今回の年金数理部会は、当初の予定では６月下旬に行う予定でした。ただ、今回の報
告から、初めて時価ベースでの資産評価をすべての年金制度で行うということもあり、
資産評価を行う際に本当に各制度同一の基準で比較しているか等、資料内容の精査・確
認に時間が必要なため延期させていただきました。そして本日の開催となりました。
　委員の先生方及び関係各位にご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げま
す。
　審議に入ります前に、前回の部会開催以降に事務局の異動がありましたので御紹介を
いたします。
　年金局長の渡邉でございます。

○渡邉年金局長
　渡邉でございます。よろしくお願いいたします。

○田村首席年金数理官
　その隣が審議官（年金担当）の大谷でございますけれども、本日、都合により遅れて
来ることになってございます。
　次に年金局総務課長の貝谷でございます。

○貝谷総務課長
　貝谷でございます。よろしくお願いいたします。

○田村首席年金数理官
　年金局年金課長の髙倉でございます。

○髙倉年金課長
　髙倉です。よろしくお願いします。

○田村首席年金数理官
　年金局数理課長の山崎でございます。

○山崎数理課長
　山崎でございます。よろしくお願い申し上げます。

○田村首席年金数理官
　年金局年金数理官の水上でございます。

○水上年金数理官
　水上です。よろしくお願いいたします。

○田村首席年金数理官
　次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
　座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
　資料１は、平成14年度財政状況－厚生年金保険－です。
　資料２は、平成14年度財政状況－国民年金（基礎年金）－です。
　資料３は、平成16年年金制度改正における給付と負担の見直しです。
　配布資料は以上でございます。
　なお、積立金等の時価ベースの値を参考として報告していただいておりますが、それ
に当たりまして、各制度を横並びで比較して評価するという観点から、各制度の所管省
に時価評価の方法について調査を追加でお願いしております。その結果を報告資料の特
記事項欄に記載をしております。本日、厚生年金、国民年金だけでございますが、次回
予定しておりますところにも各制度ごとに記載をしていただいております。
　次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、渡辺委員が御都合
により御欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の方が３分の１を超え
ておりますので、会議が成立していることを御報告申し上げます。
　それでは、以降の進行につきましては、堀部会長にお願いいたします。

○堀部会長
　ようやく長かった夏も終わった感じで涼しくなってきて、大変結構だと思います。お
忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。
　先ほど首席年金数理官から部会の延期についてご迷惑かけたという言葉がありました
けれども、直前の延期で、お忙しい委員には大変迷惑を受けられたと思います。今後は
こういう準備不足ということのないようにしっかりと事前に準備を行って、そうした上
で日程を決めていただきたいと思っております。
　以上、部会を代表して一言申し入れをしたいと思います。
　それでは本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第にありますように、例
年のように、各制度の財政状況についてのヒアリングを行います。今年は平成14年度の
財政状況についての報告です。本日は厚生年金と国民年金で、次回は各共済年金につい
ての報告を聴取することになります。
　今年は財政再計算が行われましたが、正式な財政再計算結果のヒアリングは来年に予
定しております。平成16年の年金制度改正における給付と負担の見直し等については、
後で事務局から簡単な説明があると思います。
　それでは、最初の議題の厚生年金、国民年金の平成14年度財政状況についての議事に
入りたいと思います。
　まず、厚生年金の平成14年度の財政状況について報告を聴取します。お願いします。


議題
１．平成14年度財政状況について－厚生年金保険－

○山崎数理課長
　年金局の数理課長でございます。お手元の資料１「平成14年度財政状況－厚生年金保
険－」に沿いまして、厚生年金保険の平成14年度の財政状況について御説明させていた
だきます。恐縮ですが、座ったままで説明させていただきます。
　資料１の表紙をめくっていただきまして１ページでございますが、14年度の財政状況
等の概要の「１．収支状況」ということで、14年度は右端でございますが、10年度以降
の時系列で収入、支出、収支残、積立金の額等の数値を記載してございます。これは下
の特記事項の一番下にございますが、平成14年度の収支状況は、今年の２月に公表いた
しました平成14年度の厚生年金保険の特別会計の決算、それから、時価ベースのことに
関しましては、昨年の10月に公表いたしました年金積立金の運用報告書、こちらの方で
公表済みの数字を改めて記載して時系列と並べて整理したという性格のものでございま
す。
　概略を御説明申し上げますと、上の欄が収入でございますけれども、右上の欄でござ
いますが、平成14年度の厚生年金保険の総収入、30兆8,884億円ということでございまし
て、13年度に比べまして1兆0,999億円の増になっております。
　14年度の厚生年金保険の特徴といたしまして、まず１つは、65歳以上、69歳までの適
用拡大があったということで、被保険者の方が60万人弱増えているというような事情が
ございます。また、農林年金の統合が14年度に行われまして、これで45万人程度被保険
者が増えている。こういう事情もございまして、保険料収入が増えているということが
あるわけでございます。収入欄を見ていただきますと、14年度の保険料収入が20兆2,034
億円ということでございまして、昨年の保険料収入に比べ2,674億円、1.3％の増となっ
ています。
　国庫負担の方も伸びておりまして、4兆0,036億円ということになっております。
　運用収入でございますが、これは特別会計の方のいわゆる現金収支の方で見ました運
用収入で申しますと、こちらにございますように、3兆1,071億円ということでございま
して、13年度に比べ7,536億円の減になっているわけでございますが、こちらの方を運
用報告書に沿いました時価ベースで見ますと、13年度は2兆6,541億円でございましたも
のが、14年度は厳しい運用環境ということがございまして、2,731億円が時価ベースの
厚生年金の運用収益でございまして、ここのところで前年度に比べ2兆3,810億円下がっ
ているということがあるわけでございます。
　これを勘案いたしますと、収入総額のところも［時価ベース］となっておりますが、
時価ベースで見ますと、28兆0,545億円ということでございまして、対前年度で5,274億
円の減ということになっているところでございます。
　それともう一点、積立金相当額納付金、これは収入欄の下から３つ目のところにござ
いますが、これが13年度は1,621億円に対し、14年度が1兆7,243億円ということでござ
いますが、これは農林年金の統合に伴い、平成14年度に積立金の移管、これは概算額で
1兆5,800億円が内払いという形で入っているわけでございますが、こちらの数字が含ま
れているということでございまして、それ以外の数字は、いわゆる旧三公社の統合の際
の積立金移管が分割払いになっている分がございまして、そちらの分が入っているとい
うことでございます。こういう収入も14年度のある意味で臨時収入ということでござい
ますが、入っているということでございます。
　支出の方でございますが、支出につきましては、給付費が20兆3,466億円ということ
で、対前年度7,238億円、3.7％の増となっています。
　また、基礎年金拠出金が9兆8,961億円ということで、5,913億円、6.4％の増というこ
とでございまして、全体の支出総額で見て30兆5,878億円ということで、1兆3,059億円、
4.5％の増になっているところでございます。
　収支残の欄を見ていただきますと、いわゆる特別会計の決算で見ました場合には、
3,007億円の収支残プラスということになっていますが、積立金について時価評価をす
る時価ベースでは括弧書きのように、2兆5,333億円の赤字ということになっているとこ
ろでございます。時価ベースで申しますと、既に13年度の時点で約7,000億円の赤字で
ございましたのが、赤字幅が約1兆8,000億円拡大したと、こういうような形になってい
るということでございます。
　こちらを反映いたしまして、年度末積立金も鍵括弧書きが時価評価をした場合の年度
末積立金ということでございますが、13年度に134兆5,967億円という額でございました
ものが、132兆0,717億円ということで、約2兆5,000億円減少したという形になっていま
す。
　積立金の運用利回りは時価ベースで表記してございますが、13年度1.99％でありまし
たものが、14年度は0.21％ということで、1.78％下がっています。
　特記事項のところにございますように、今の時価ベースで申し上げた数字ですが、こ
れは株式等の評価損益も運用収入に含める時価ベースで評価したものということでござ
いまして、先ほど来申し上げていますように、現金ベースの収支を示す厚生年金の特別
会計の決算とは異なるということでございます。
　なお、この時価ベースの評価には、旧年金福祉事業団から承継した資産に係る損益を
含めているということでございまして、この承継した資産につきましては、厚生年金、
国民年金のそれぞれの積立金と合わせて一体で運用しているわけでございますが、この
承継資産分の損益の按分については、厚生年金と国民年金の積立金の元本平均残高の比
率によって、厚生年金の特別会計の方と国民年金の方に按分していると、こういう姿に
なっているところでございます。
　それから、特記事項の下から２番目の「○」でございますが、13年度以前は旧農林年
金分を含まないということでございまして、13年度の農林年金は掛金：0.3兆円、収入
総額：0.5兆円、支出総額：0.5兆円という姿になっているということで、その分、13年
度と14年度の比較の際には、それが入る、入らないという違いがあるという状況にある
ところでございます。
　１ページ目は以上でございますが、２ページ目は、今、御説明申し上げましたことを
図表にしたものでございますので、御説明は省略させていただきまして、おめくりいた
だきまして３ページ、「２．給付状況」でございますが、（１）で受給権者数、年金総
額、老齢年金の受給権者の平均年金額および平均加入期間ということで、所定のフォー
ムに沿って数値を整理したものでございますが、一番上の欄、受給権者数は、15年３月
末で2,198万人ということでございまして、14年３月末に比べて1,421千人、6.9％の増
になっています。こちらの受給権者につきましては、農林年金を統合したので、農林年
金の受給権者も15年３月末には含まれています。
　年金総額につきましても、14年３月末は228,000億余でございましたが、15年３月末
は23兆9,806億円ということで、1兆1,602億円、5.1％の増という姿になっているところ
でございます。
　次に４ページ、男女合計での老齢年金の平均年金月額を表にしたものですが、14年３
月末と15年３月末を比べまして、全体の老齢年金の平均年金月額で申しますと、15年３
月末は14万2,017円ということで、2,567円、1.8％の減となっておりますが、厚生年金
というのは基本的に２階部分の年金ということでございますが、今はまだ60年改正以前
の旧法から新法に移り変わる過渡期でございますので、旧法の年金の方は、厚生年金か
ら全体が出ているということで、両者入り混じったような形での平均になっているとい
うことで、どうしても新法の方が出てまいりますと、そちらは基本的に２階建ての２階
ということでございますので、平均値は下がるという要素がございますので、上から４
段目、上記の老齢年金平均年金月額に老齢基礎年金の推計値を加算した平均年金月額と
いうことで、２階建ての１階、２階を合わせたものでどうなるか。こちらの数字を見て
いただきますと、こちらが17万1,892円ということで、前年に比べ903円、0.5％の減と
いう状況になっています。
　ただ、こちらの数字も１階と２階を合わせたと申しましても、今、特別支給の老齢厚
生年金の１階部分の支給開始年齢が60歳から61歳に繰り上がっておりますので、そこの
部分の方に関しましては２階だけということになりまして、そういう形の１階、２階両
方ある方と２階だけの方と平均したような形の数値になっているという要素もあるとい
うところでございまして、これは13年３月末から14年３月末のところで、１階部分の支
給開始年齢が60から61に上がっておりますので、ここで多少段差がありまして、14年３
月末から15年３月末は基本的に支給開始年齢が61のままということで、そこの部分は変
化を見るという際には仕組みとしては同じ形ということでございます。
　ただ、この年金額を見ます場合に、これは受給者個々人の年金額の平均ということで
ございまして、昭和60年の年金制度改正によりまして、それまで厚生年金は標準的な年
金は世帯単位で考えるというような考え方で、定額部分と報酬比例部分と加給年金とい
うもので妻の分までカバーするという給付水準の考え方でありましたものが、第３号被
保険者制度を通じまして、妻の基礎年金という部分のところに一部が振り替わるという
仕組みになっているわけですが、こちらの年金の実績統計では、夫婦合わせた年金額は
なかなか今のところ把握できない状況でございまして、どうしても受給者個人単位での
年金額の把握になるということから、年金額の数値を見ていくと、個人ベースで把握し
た場合にはそういう要素もございまして、若干下がっていく傾向があるというところで
ございます。
　次の５ページでございますが、今の数値を男女別に展開したものということでござい
ます。こちらはお目通しいただければと思いますが、年金額ということでみると、若干
差があるというような数字が出ているというのは、今、御説明したような事情のあると
ころでございます。
　次の６ページは、加入期間20年以上の新規裁定の年金受給者についての平均年金月額
というものを時系列の推移で示したものでございます。こちらを見ていただきますと、
男女別に分かれております男性を見ていただきますと、平成12年度の数値が19万7,808
円という姿でございましたのが、13年度14万6,025円、更に14年度は11万8,510円という
ことで、順次額が下がっております。これは新規裁定ということでございますので、支
給開始年齢（定額部分）の引き上げの影響が出てくる部分でございますが、13年度から
既に支給開始年齢（定額部分）が61歳に引き上がっているということのわけですが、新
規裁定といいます場合に受給権発生から実際裁定請求を出しまして、裁定されるのに二
月とかかかるわけでございますので、その結果、13年度の新規裁定の方の中には、60歳
支給開始、つまり前の年度のうちに受給権が発生している方が一部含まれているという
ことで、こういう数字になるということでございまして、14年度の新規裁定に関しまし
ては、これは純粋に定額部分が61歳支給開始の方ということで、従来の20万弱の額に比
べてその半分強ぐらいの額になっていると。これが２階部分だけだとこのぐらいの数字
になっています。女性の場合はそういう事情がございませんので、定額部分の支給開始
年齢は上がっておりませんので、数値を見ていただくとほぼ横ばいになっているという
ことでございます。
　続きまして７ページでございますが、こちらは現在、支給開始年齢が定額部分につい
て引き上げの途上にあるということで、その辺の状況がわかりやすいようにということ
で、特別支給分を年齢ごとに区分けして詳しく表示したものでございまして、こちらは
年度末現在の数字になります。７ページは男女合計でございますが、支給開始年齢は男
子と女子で引き上げが違いますので、むしろ男女別に分かれているものの方が見やすい
ということで、８ページは男性でございますが、これを見ていただくと、特別支給分で
60歳の方、表の真ん中より少し上ぐらいでございますが、これを見ていただきますと、
15年３月末で11万2,334円ということで、61歳の方、19万1,330円に比べて半分強ぐらい
になっていると。これは２階だけの年金だとこのぐらいだということでございまして、
こちらは末現在ですので、14年３月末の段階から既に11万3,000円余ということで２階
だけの水準になっていると。その前の13年３月末は１階と２階と合わせた水準というこ
とでございましたので、19万4,000いくらという数字になっているということでござい
ます。
　続きまして、９ページはこれの女性ということでございまして、女性の場合は、支給
開始年齢の引き上げの影響はまだ出てきてございませんので、男性のような数値の大き
な変動はないということでございますが、しかし女性の場合は男性に比べて被保険者期
間が短いということと平均賃金が低いということで、額としては10万余というような数
字が並んでいると、こういう数字になっています。
　続きまして10ページでございますが、こちらが老齢年金の受給権者の年齢構成という
ことでございまして、こちらを見ていただきますとわかりますように、60代がかなりの
割合を占めていまして、平均年齢が70歳ちょっとというような数字になっています。
　次に11ページにまいりまして、「３．被保険者状況」でございますが、被保険者数、
冒頭も御説明いたしましたが、こちらについては、特記事項のところにございますよう
に、平成13年度以前は旧農林年金分を含まないということで、15年３月末は農林年金を
含んだ数字になっているということと、あと、65歳以上への適用拡大というものがあっ
たということが２つございまして、568千人、1.8％の増で、32,144千人になってござい
ます。男性は1.5％の増、女性が2.3％の増になっています。
　被保険者の平均年齢でございますが、概ね従来、１年につき0.1歳ぐらい上がってき
ているのですが、今回、65歳以上に適用拡大したということがございまして、その年齢
の方々が平均の算入に入ってくるということによりまして、今回は0.6歳平均年齢が上
がって、41.3歳になっていると、こういう状況にあるところでございます。これは男女
ともほぼ同じ数値ということでございます。
　標準報酬の平均でございますが、これも農林年金の統合と65歳以上の適用拡大が影響
しているわけですが、65歳以上ですと、どうしてもそれ以前の年齢の方に比べて賃金が
低いということがございますので、平均の標準報酬、男女計で31万4,489円ということ
で1.3％低くなっている。ただ、女性の場合は比較的賃金はフラットでございますので、
そういう意味では女性は変動が少ないということで、男性が平均35万9,249円というこ
とで、前年度と比較して1.6％の減。専ら男性の方に標準報酬の減少があらわれている
ところでございます。
　次の12ページが被保険者の分布でございますが、こちらは今回一番下の65歳以上とい
う項が付け加わっておりまして、人数で592千人、全体の1.8％を占めるという姿になっ
ております。一番右に分布の様子をあらわす百分率が出ておりますが、これで見ていた
だきますと、50から55歳のところが12.8％ということで、ここが１つのピークになって
いるということでございまして、もう一つ、若い年齢のところで、25から30でございま
すとか、30から35のところにまた大きいピークがあるわけでございますが、１つ、50代
のところにこぶと申しますか、１つのピークがあるという特徴があるところでございま
す。
　次の13ページ、14ページが、これを男女別に見たものでございまして、男性の場合
は、今、申し上げました全体の特徴というものがそのままあらわれていると申します
か、30代前半のところに14.6％というふうに分布している一方で、50から55のところは
13％という分布になっていると。
　14ページが女性でございますが、女性の場合はより若いところに分布がシフトしてい
るわけでございますが、50代前半のところは12％ということでかなりの割合を占めてい
るという状況にあるところでございます。
　続きまして、標準報酬の分布、15ページでございますが、左側の欄が男性でございま
すが、一番下にございます標準報酬の平均、35万9,249円ということでございまして、
男性の場合、標準報酬の上限であります62万円のところにパーセンテージで申しまし
て、9.29％と１割近い方が張りついているということで、一方で分布で一番割合の多い
ところは30万円のところ6.49％ということで、上限に張りついている方が押し上げる分
もあって、平均が36万円ぐらいになっているという面がございます。女性の場合は上限
該当は1.35％ということでございまして、平均値22万4,000円強でございますが、分布
を見ましても22万円のところにピークがあるという形で、上限の影響は比較的小さいと
いうような分布になっているところでございます。
　続きまして、積立金の運用状況でございますけれども、資産構成で見ていただきます
と、こちらにございますように、預託金が77.1％、市場運用分が10.4％、財投債が12.6
％ということでございまして、運用利回りは、承継資産の損益を含む場合で全体の収支
状況を整理させていただいておりますが、これで運用利回りの下の欄、0.21％という姿
になっております。承継資産の損益を含まない場合ですと、1.34％ということで、この
辺の数字は、すべて昨年10月に発表いたしました運用報告書に記載されている数字を転
記したものでございます。
　下の特記事項にございますように、厚生年金の市場運用は、年金資金運用基金におき
まして、厚生年金、国民年金、承継資産の分を合わせて一体として運用を行っていると
いうことでございまして、これらの運用資産の14年度末の時価総額と構成割合はこちら
にあるとおりでございまして、国内債券：51％余、国内株式：23％余、外国債券：８
％、外国株式：14％余、短期資産：３％程度というような姿になっているということで
ございます。
　一番下の「○」にございますが、時価評価の方法は、市場運用分の国内債券、国内株
式、外国債券、外国株式については、年度末の市場価格（運用手数料控除後）の数字を
用いていまして、一方、満期保有が原則である財投債については簿価を用いている。こ
の簿価の算出としましては、償却原価法ということで、取得価格と償還時の額面価格に
差があります場合、例えば額面100円のものを98円で取得したというような場合に、取
得時には取得価格：98円。償還時には額面で償還されてきますので、その額面価格の100
円。その間のいわゆる差額は毎期一定の方法で収益に計上していくということで評価し
ていくと、こういう償却原価法という方法で簿価評価をしている。こういうものを記載
しているところでございます。
　次のページにまいりまして、ここからが財政再計算における将来見通しとの比較とい
うことでございますが、こちらで比較の対象としております財政再計算は、前回、平成
11年の財政再計算でございまして、後ほど今回の制度改正について簡単に御説明する予
定になっておりますが、今回の制度改正に準拠いたしました平成16年の財政再計算には
基本的に14年度の状況というものは足元として反映した上で計算してございますので、
こちらの数値は、あくまで11年度のときに見込んだものと14年度の実績はどうなってい
るかという比較でございます。
　14年度につきまして、こちらの表にあるところでございますが、まず財政再計算の将
来見通しと実績を比較いたします場合に、まず財政再計算では厚生年金基金の代行部分
を含んだ全体一体とした形で将来の見通しを行っているということがございまして、こ
れと比較するという意味から、実績の方に厚生年金基金の代行部分を含むという形で、
実績の方を将来見通しと比べ得る形に加工いたしまして両者を比較するというのが適切
だということでございまして、あともう一点、基礎年金の交付金でございますが、こち
らにつきましては、いわゆる給付費の中の財政上は基礎年金と見なされる部分というも
のにつきまして、基礎年金拠出金で全体で拠出したその基礎年金の会計から交付金を受
けて給付していると。いわばある種二重構造になっているということで、財政再計算で
はこちらの方、実質的な支出で見るという考え方で算出してございますので、それと合
わせるために、基礎年金の交付金を収入と支出の両面から控除した形で給付費の方を比
較するという形にしてございまして、そういう意味で、支出のところ、実績で基金代行
分を除くで20.3兆円となってございますが、こちらは基金代行分を含む実績の推計で
19.7兆円、基金代行分を足し合わせたのに額少なくなっているように見えて、ちょっと
見づらいのでございますが、これは基礎年金の交付金：1.4兆円と収入のところにござ
いますが、これは給付費の中のみなし基礎年金の部分でございまして、いわゆる基礎年
金拠出金で費用負担的には賄われている部分ということで、それを差し引いたというケ
ースをここの19.7兆円と掲げているということでございまして、具体的には特記事項の
最初の「○」のところにございますが、基金代行分を含む実績の推計にあたって、「基
礎年金交付金（1.4兆円）を収入支出の両面から控除し」とある、こちらでございます。
　更に(2)にありますように、保険料には免除保険料を加えてございますが、給付の方
に、厚生年金基金の代行分と政府負担金を加えると。更に職域等費用納付金を控除す
る。これは旧三公社の過去分の３階給付を費用負担は存続組合が行って、支払いの方は
厚生年金の方でまとめてやっているという形になってございますので、そこの部分は財
政再計算、将来見通しではカウントされておりませんので、それを調整するために控除
するということでございますが、こういう差引きを行いましてこの19.7兆円という数字
になっています。
　数字の比較をいたしますと、保険料でございますが、将来見通しでは24.4兆円という
見込み、11年再計算でこのようになってございましたのが、実績推計が21.6兆円という
ことで、こちらの差の主な要因としては、１つは被保険者数の見通しに比べて、実際の
被保険者数が１割程度少なくなったということでございまして、もう一つは、賃金上昇
率につきまして、平成10年度以降の累積で見通しより７％低いということで、人数で申
しましても一人当たりの報酬ということで申しましても、見込みに比べて実績の方が低
かったということでこういう乖離が生じているところでございます。
　続いて運用収益でございますが、こちらは時価ベースとの比較ということになります
が、将来見通しでは6.3兆円という数字でございましたのが、基金代行分を含む実績の
推計では1.3兆円というような数字になっているということで、こちらは名目運用利回
りも見通しが3.49％でしたが、一方で実際の運用利回りが0.21％ということで低くなっ
ている。ただし、賃金上昇率の方も、財政再計算の見通しでは＋2.5％ということでご
ざいましたが、後ろの方に数字が出てまいりますが、実績の方の賃金上昇率は－1.15％
ということで、こちらの方も相当低くなっているということで、賃金上昇率と運用利回
りの差という面でみた実質的な運用利回りは財政再計算の前提の数字が確保されている
ということでございますが、現実の運用収益という意味ではここはかなり乖離が大きい
状況にあるところでございます。
　その他のところの5.6兆円と4.4兆円の差、これは農林年金の移管金：1.6兆円が実績
の方に入っているというところが大きく作用しているところでございます。
　一方、給付でございますが、将来見通しで20.5兆円という見込みに対し実績推計の方
で19.7兆円。これはいわゆるみなし基礎年金の部分を除いて基金代行分は加えたという
形で比較し得る数字で比較してこういう形ということですが、年金改定率が見通しより
３％程度低下した要素と、あとは被保険者の人数が減ったというような面から被保険者
期間が減少したという効果、あるいは請求遅れと書いてございますが、財政再計算では
発生ベースと申しまして、受給権が発生したときに即時に給付が支払われるような前提
での考え方になっているところでございますが、そちらとの差ということはあろうかと
いうところでございます。
　あと、基礎年金の拠出金でございますが、将来見通しで10.7兆円に対しまして、実績
推計値で9.9兆円ということでございますが、この実績の方で9.9兆円となっております
が、この実績は、当年度の概算分と前々年度の精算分ということでございますが、実
際、実績全体を締めてみまして、本来いくらであるべきかという数値、これを確定値と
呼んでいるわけでございますが、こちらの方は10.3兆円でございましたので、この10.3
兆円と将来見通しの10.7兆円が比較されるべきものということでございまして、年金改
定率の低下によって、これはほぼ差が説明されると、こんな状況になっているところで
ございます。
　続きまして、18ページでございますが、被保険者数及び受給者数ということで、被保
険者数につきまして、14年度末の実績32,144千人ということでございますが、将来見通
しでは3,500万人を見込んでいたということでございまして、これは近年の景気の影響
による被保険者数の減少という要因ということでございます。
　受給者数につきましては、老齢相当の受給者数で見まして、将来見通しで970万人と
見込んでいたのが957万人というようなことでございまして、一方で、通老相当の方は、
600万人と見込んでいましたのが、660万７千人と。老齢相当が若干見込みよりも少なく
て、通老相当が見込みより多くなっているということで、これは被保険者数の減少をも
たらしているのは、被保険者期間の短縮によりまして老齢と通老の境目におられるよう
な方が、その通老相当に動いたというような要素があるのかなというふうに考えている
ところでございます。
　それから、新規加入、脱退でございますが、実績はこちらにあるとおりでございます
が、将来見通しの方では、新規裁定、失権者の推計というものをまだいたしていないと
いうことでございまして、比較する数値が恐縮ですが、ございません。
　次の19ページで財政指標の比較ということでございますが、年金扶養比率でございま
すけれども、こちらの方、括弧書きの受給者ベースの数値と比較していただくのが適切
かというところでございまして、11年の財政再計算結果で、14年度の数字は3.6人で１
人を支えるという数字だったわけでございますが、実績の方は括弧書きの14年のとこ
ろ、3.36人で１人を支えるというような状況でございまして、再計算の見通しよりも厳
しくなっているということでございまして、こちらは被保険者数の減少ということが影
響しているわけでございます。
　次の20ページでございますが、総合費用率ということでございまして、こちらの方
も、実績の方、再計算の方と比較できるようにということで、基金代行部分を補正する
ということを行いまして、14年度のところ「＊」が付いてございますが、一番下の欄、
20.7％。この数字は、14年度までは、まだ総報酬が導入されておりませんので、標準報
酬ベースの数字だということで見ていただきたいのでございますが、総合費用率という
のは、ある意味で賦課方式の保険料率というような数字になるわけですが、財政再計算
では、14年度：19.4％と見ていたものが、実績では20.7％ということで少し厳しくなっ
ていると。これは被保険者数の減少というものが影響しているというふうに考えられる
ところでございます。
　次のページでございますが、独自給付費用率、これはいわば２階部分の賦課方式の保
険料率というものに相当するような部分でございますけれども、こちらにつきまして
は、同じように厚生年金基金の代行部分を補正したもので見まして、決算結果、実績が
15.3％に対しまして、財政再計算の見込みは14.2％だったということで、こちらも被保
険者数の減少というものを反映して、実績は見込みより厳しいものになっているという
状況でございます。
　22ページ、収支比率ということでございまして、これはいわゆる実質的な支出の中か
ら、保険料で見るべき実質的な支出ということでございますが、それに対して保険料収
入と運用収入と、両者の対比ということでございまして、これが100を超えているとい
うことは、いわば保険料収入と運用収入で、国庫負担分を除いた実質的な支出をカバー
しきれていないという状況になるというわけでございますが、14年度の「＊」のところ
を見ていただきますと、この収支比率が111.4ということで100を上回っているという状
況になっておるところでございます。財政再計算の見通しでは、14年度が87.3という数
字だったということで、こちらの方はかなり現実の財政が悪化していると見えるという
ところでございますが、ただ、こちらの収支比率は、いわゆるデフレの下で給付費も伸
びないし、運用利回りも低いという場合には、どうしても名目の運用収入は小さく出て
まいりますので、この収支比率というものはより悪い数字に見えると。
　一方で、現実に持っている積立金そのものは、むしろ給付の伸び、あるいは賃金の伸
びが低いときには価値が高まるという面がございますので、次のページの積立比率と併
せて見ていただくことが必要かと思いますが、こちらの積立比率ということで見ていた
だきますと、これは実質的な支出に対する前年度末積立金の比率でございますが、14年
の数値、これは基金の代行分も合わせたものを鍵括弧で書いてございますが、［6.9］
倍という数字でございますが、財政再計算の見込み、14年度の数字は6.8だったという
ことで、そういう意味では、こちらの方は財政再計算の見込みよりも若干でございます
が、数値は上がっているということで、ある意味で積立金の効用はむしろ現在のように
賃金も低いし運用利回りも低いという状況の下では、現に持っている積立金の重さとい
うものは若干高まっているという事情があろうかというところでございます。
　ちょっと時間長くなりまして恐縮ですが、御説明、以上でございます。

○堀部会長
　ありがとうございました。審議官が見えられたようなので、首席年金数理官より御紹
介をお願いします。

○田村首席年金数理官
　改めて御紹介いたします。審議官（年金担当）の大谷でございます。

○大谷審議官
　遅れて失礼しました。大谷でございます。

○堀部会長
　それでは、ただいまの御説明に対し、御質問、御意見ありましたら、よろしくどう
ぞ。

○都村部会長代理
　６ページの老齢年金の平均年金月額についてお尋ねしたいのですけれども、これは受
給権者ベースですね、受給者ベースではなくて。

○山崎数理課長
　受給権者ベースです。

○都村部会長代理
　３ページに、全額停止した者が示されていますが、年金が全額停止となる者は、厚年
でいうと167万人で、年金総額で1兆2,300億円となっています。公的年金制度全体で見
ると、平成13年度も平成14年度も約1兆7,000億円が全額停止されています。平均年金月
額は受給権者の裁定年金額の平均値であり、在職老齢年金制度による支給停止等を考慮
する前の額ですね。高齢者雇用が進んできまして、雇用と年金をめぐる状況がだんだん
変化してきますと、全額支給停止される者が増加すると思います。そうするとこの平均
年金月額と、それから、実際に受け取っている人の平均年金月額に差が出てきて、実際
に受け取っている人の年金の方がやや低くなります。ここに示されている老齢年金平均
月額の方が高くなっていくわけですね。どういう意味でこの資料を提示するかというこ
とにもなると思うのですけれども、平均年金月額として示されると、実際の受給者の平
均年金額と読み取られると思います。受給者ベースでなくて受給権者ベースで老齢年金
の平均年金月額を示すという点についてどうなのでしょうか、考慮が必要なのではない
かと思うのですけれども。４年前に比べまして、厚年だけでも全額停止が人数で1.6倍、
年金総額で1.3倍に増えてきています。制度をどう改正していくかにもよるのでしょう
けれども、今後全額停止となる者はますます増えてくるのではないかと思います。受給
権者ベースか、受給者ベースかという点について、どのようにお考えになるか、お尋ね
したいと思います。

○堀部会長
　多分厚労省の方は、我々の年金数理部会が用意した様式に沿って書いたと思うので、
むしろこの質問は首席年金数理官の方が適当ではないかと思いますが。

○田村首席年金数理官
　そこまで配慮が至らずに申し訳ありませんでした。先生の御指摘については検討させ
ていただきたいと思います。

○堀部会長
　関連しての感想なのですが、65歳前の分を入れると、定額部分がどんどんなくなって
いくし、２階部分もなくなっていきますので、非常に実態がわかりにくくなりますね。
だから、これからは65歳以上をメインにしないと、どうも誤解を招く感じがします。

○都村部会長代理
　それから、もう一つ、４ページの下のところで、老齢年金平均年金月額に老齢基礎年
金額の推計値を加算されています。これはどのように推計されたのでしょうか。

○廣瀨数理調査室長
　年金数理調査室の廣瀨です。まず、老齢基礎年金の推計値を加算したという部分でご
ざいます。細かい話になりますのでちょっと恐縮ですけれども、説明いたします。ま
ず、今回ここに入っていますのは、当然従来から厚生年金であったという年金。それか
ら、平成９年に統合された旧三共済の年金、それから、平成14年に統合された農林年金
の年金、この３つの部分を合わせたものがこの数値になっております。
　それから、老齢基礎年金の部分でございますけれども、従来から厚生年金であったも
の。それと平成９年に統合された旧三共済のもの、これにつきましては、老齢基礎年金
は推計ではなく、当人の受給されている老齢基礎年金を含んでおります。ただし、最後
の平成14年に統合された農林年金でございますけれども、これにつきましては、まだ統
計等の事務を旧農林年金にお願いしているところでございますので、当人の老齢基礎年
金をそのまま実績として加えることができないので、一定の推計を行って加えているた
めにここではまず「推計」という言葉を使っております。
　次に、農林年金の基礎年金部分というのはどういう具合にしているかということにな
ろうかと思いますけれども、実際に基礎年金の統計の方で、農林年金の期間を持ってい
る方というものを寄せ集めまして、そこから１人当たり、どれだけの老齢基礎年金にな
るかということを計算しております。それに農林年金の２階部分、いわゆる報酬比例相
当部分、ここの部分だけの平均額というものと合わせることによって、農林年金部分の
老齢基礎年金を含んだ平均年金額というものをつくっております。
　そして最後に、それぞれの金額が出ておりますので、それぞれの受給権者でもって加
重平均をいたしまして、全体の平均年金月額を構成していると。このような手順で行っ
ております。

○堀部会長
　一度聞いただけでは全くわかりませんので、次回にでも文書にして提出していただけ
ませんでしょうか。

○廣瀨数理調査室長
　簡単な手順と、あとこういうもので組み合わさっていますよという形でつくって事務
局に提出いたします。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
　それでは、次、国民年金の平成14年度の財政状況について報告をお願いします。


議題
１．平成14年度財政状況について－国民年金（基礎年金）－

○山崎数理課長
　それでは、引き続きまして、国民年金（基礎年金）の14年度の財政状況を資料２に沿
いまして御説明申し上げます。
　ページをおめくりいただきまして１ページ、まず基礎年金勘定の収支状況ということ
でございますが、平成14年度の基礎年金勘定、収入総額が15兆9,665億円ということで
ございまして、前年度に比べまして4.9％の伸びという状況でございまして、それに対
し支出総額が14兆5,993億円ということで、3.7％の伸びと。収支残1兆3,672億円になっ
てございますが、こちらの収支残のところを見ていただきますと、13年度も1兆1,461億
円ということで、この収支残がほぼ翌年の収入のその他のところに来るというような感
じで累積しているという姿になっているところでございます。こちらの方は、昭和60年
に新たに基礎年金というものが発足いたしましたときに、旧国民年金の下での妻が任意
加入していたという事情がございまして、そちらに相当する積立金でございますが、そ
ちらの方の取扱いに関しまして、基礎年金の財政に用いるということになったわけでご
ざいますが、具体的に被用者年金の拠出金の軽減に用いることができるということにな
っておりますのが、具体的にどういう形で取扱いをするかというあたりがまだ最終的に
調整できておりませんで、その積立金の運用収入がずっとこちらの方に入ってくるとい
う形になってございまして、収入のところに運用収入が計上されてございますが、そち
らが累積されて、こちらの収支残になっているという状況があるところでございまし
て、そういう数字が入っているということになっているところでございます。
　拠出金算定対象者数でございますけれども、これは20歳から59歳の被保険者の数、た
だ、国民年金の場合は、実際に将来、基礎年金の給付に結び付くいわゆる保険料を拠出
されている方の数ということで全制度を通じて足し上げたものということでございます
が、14年度で58,142千人ということでございまして、前年度に比べて1,107千人、1.9％
の減少ということになっておりまして、こちらは厚生年金の被保険者が減少している一
方で、いわゆる１号被保険者は増えているわけでございますけれども、その１号被保険
者につきまして、保険料の納付率が低下しているというような状況がございまして、拠
出金算定対象者は減少しているという状況にあるところでございます。
　拠出金の単価でございますけれども、21,450円（月額）、これは３分の１が国庫負担
ということでございますので、それに３分の２を掛けましたのが一番下の欄の保険料相
当額ということでございますが、これが14,300円ということで、前年に比べて867円、
6.5％の増という姿になっているというところでございます。
　こちらの拠出金の単価、どういうふうにして算出されているかというところで、（２
）の方を見ていただきますと、基礎年金の給付状況（平成14年度確定値）ということが
書いてございまして、下の（注１）を見ていただきますと、１ページの収支状況のとこ
ろにある額は、14年度の概算値と12年度の精算額を合計したものとなっているわけでご
ざいますが、基礎年金で制度ごとにどれだけ負担するか、１人当たりいくらかというの
は、実績を締めてみまして、最終的な確定値が出たところで整理すると。当初概算で出
したものとの差額を２年後精算するという姿になっておりまして、１ページの表の拠出
金単価とか保険料相当額、２ページの数値全体、これは確定値で整理してあるというも
のでございます。
　２ページ見ていただきますと、まず基礎年金給付費（本来分）、これはいわゆる新法
の本当に国民年金の基礎年金勘定から基礎年金という名前で出ているお金、これの合計
が、平成14年度で10兆2,454億円ということでございまして、その右の欄、基礎年金相
当給付費（旧法分）、これがみなし基金年金というふうに呼んでいるものでございまし
て、受給者に対しましては、例えば厚生年金なら厚生年金の老齢年金というような形で
出ているものの、費用負担の面で言いますと36年４月以後の国民年金の加入期間に相当
する部分ということで、基礎年金勘定から費用負担はされるのですが、受給者には厚生
年金の老齢年金として一本で給付されている、そういう性格のもの。これは国民年金の
旧法年金もすべからくそれでございますが、各制度全体を合わせまして、それが5兆
2,115億円ということで、全体合計して右の欄、15兆4,563億円、これが基礎年金給付費
の14年度確定値の総額になるわけでございますが、その下の欄、負担状況のところを見
ていただきますと、合計のところに同じ数字が入ってございまして、まず、これから引
くものとしてすぐ左の欄、特別国庫負担というのがございまして、これは保険料免除分
の給付ですとか、あるいは20歳前の障害の方に対するかさ上げ分、そこの部分の特別国
庫負担：4,910億円。これは別途、直接国庫負担される形でございますので、それを差
し引くことによりまして、基金年金拠出金の一番左の欄、14兆9,653億円という数字が
ございますが、基礎年金給付費全体から特別国庫負担を差し引くことによりまして、全
体で支える分というものが決まってくる。これは３分の１は国庫負担で、残りの３分の
２が保険料で負担するという姿になるわけでございますが、これに対しまして、各制度
の拠出金算定対象者、国民年金の場合は被保険者の方のうち保険料を納付されている
方、60歳以上で任意加入されている方も給付の方が基礎年金に結び付きますので、その
方も入っているということでございますが、１号の拠出金算定対象者：11,994千人とな
ってございます。
　そのほかの制度につきましては、まず２号として、被保険者本人の方の20歳から59歳
の方の頭数で、被扶養の配偶者の方で20歳から59歳の方、制度ごとにそれぞれ３号被保
険者ということで、こういう人数を全体カウントいたしまして、全部足し上げましたも
のが拠出金算定対象者の一番右の欄にあります58,142千人ということでございまして、
この人数で基礎年金の拠出金の総額：14兆9,653億円を頭割りすると。こういう計算を
行うことによりまして拠出金単価というものが計算されると。１ページの表にござい
ます14年度の拠出金単価、これは確定値で計算したものでございますので、21,450円
と、この数字がそういう形で算出されてくると。それの３分の２が保険料相当ですの
で、14,300円になるということでございますが、国庫負担は各制度を通じて基礎年金勘
定に入ってくるということでございますので、２ページの基礎年金拠出金の数字、例え
ば国民年金でございますと、3兆0,873億円という国民年金の勘定からの拠出金の数字と
いうものが載っているところでございますが、これは国庫負担分を含んだ拠出金単価：
21,450円に12月を掛けまして国民年金の拠出金算定対象者：11,994千人、これを掛けま
すと、この3兆0,873億円という数字になるということで、こういう形で各制度頭割りし
たものを各制度の拠出金算定対象者数で平等に負担するという姿になっているというと
ころでございまして、そういう意味では、例えば、未納・未加入の方が増えて、拠出金
の算定対象者が減ったというときに、それは拠出金単価が上がるということになってく
るわけでございますが、それによる影響というものは被用者年金制度だけではなくて国
民年金の勘定にも及ぶと、こういう姿になっているというところでございます。
　次のページ、３ページでございますが、これが国民年金勘定（第１号被保険者）の収
支状況ということでございますが、こちらにつきましては、14年度の収入総額：5兆
8,224億円ということでございますが、保険料収入が1兆8,958億円ということで３％の
減少となってございまして、国庫負担が258億円の増。基礎年金交付金、これはいわゆ
る旧法年金に関する支出というものでございますので、年々減っていくという数字にな
るわけでございますが、それでも14年度で2兆2,771億円あるということでございまし
て、そうしたものは支出のところの給付費を見ていただきますと、2兆3,819億円の大部
分を占めているわけでございまして、給付費につきましては、国民年金勘定から直接出
るというのは、いわゆる新法の給付というのは、死亡一時金や新法の寡婦年金でござい
ますとかごく一部でございまして、国民年金勘定から直接支給されています給付費とい
うのは大部分が旧法ということになりますので、基礎年金の交付金の対象となっている
ということでございまして、そういう意味では、国民年金勘定の実質的な意味での支出
というのは基礎年金拠出金で、支出のところで言いますと、3兆3,693億円、これが実質
的な支出の主要部分ということになるわけでございまして、これに対しまして国庫負担
と保険料収入と運用収入で支えていくという姿になるということでございます。
　運用収入につきましては、先ほど厚生年金のときに御説明申し上げましたように、現
金収支のベース、特別会計の決算ベースで申しますと、1,897億円の運用収入というこ
とでございましたが、これを時価ベースにいたしますと、△371億円という数字になっ
ているという状況でございます。
　収支残につきましては、特別会計で申しますと、△485億円ということになりますが、
その下の欄、業務勘定から国民年金勘定積立金へ繰入というものがございまして、実質
的にはこれを加えた形での、その下の欄、年度末積立金の前年度との比較で△382億円
となっておりますが、実質的な意味での特別会計上の赤字はこの△382億円だというこ
とでございまして、一方で積立金を時価評価した場合の数値といたしましては、時価ベ
ースで△2,753億円ということになっているという状況でございます。
　続きまして、４ページにつきましては、これを図にしただけですので省略させていた
だきまして、５ページでございますが、給付状況でございますが、これは新法の基礎年
金と旧法の国民年金とを合計したものということでございまして、費用負担の面では被
用者年金におきましてもみなし基礎年金ということでカウントされる人がいるわけです
が、何分現実の年金給付そのものは厚生年金なら厚生年金の老齢年金ということで一体
として払われているということでございまして、統計上、これをカウントするのは困難
でございますので、こちらの数表には新法の基礎年金と旧法の国民年金を合計したもの
ということで数字を載せています。
　受給権者数で申しまして、15年３月末：21,653千人で4.8％の増。年金総額で申しま
して13兆3,598億円、6.2％の増ということでございます。
　６ページは平均年金月額でございまして、男女合計のところで見ていただきますと、
15年３月末で月額52,233円となっておりまして、対前年1.2％の増。平均加入期間が300
月ということで、ちょうど25年ということでございますが、前年度に比べ８月増という
姿になっております。
　男女別は下にございますような数値でございます。
　次の７ページは、新規裁定の数字ということでございまして、上の欄、男女合計で見
ていただきますと、14年度が53,821円ということで、対前年度0.5％の増ということで、
平均加入期間354月、８月増となっているところでございます。
　国民年金の場合には繰上減額というのがございますので、減額支給を除いたものの平
均ですと58,504円、減額支給されたものの平均が39,910円ということで、減額支給され
た方とでかなり差異があるという数字になっているところでございます。
　続きまして８ページでございますが、こちらは老齢年金の受給権者の年齢構成で、こ
ちらも60代後半から70代前半のところが今のところかなり多いということで、平均年齢
が70代前半くらいの数字になっているというところでございます。
　次の９ページ、被保険者状況でございますが、第１号被保険者につきましては、14年
３月末から15年３月末にかけまして、294千人の増ということで、15年３月末で22,368
千人ということでございまして、第３号被保険者につきましては98千人の減少でござい
まして、11,236千人ということでございますが、男女別で見ますと、男性の第３号被保
険者、もともとごくわずかなのでございますが、57千人から７万人ということで13千人
増えているという状況にあるところでございます。
　被保険者の平均年齢につきましては、その下にございますように、0.1歳上がってい
る。ただ、第３号の男性だけは逆にちょっと下がっていると、そんな数値になっていま
す。
　10ページでございますが、被保険者の分布、一番右の年齢別の構成割合を見ていただ
きますと、20代前半のところ、これは学生の方が１号被保険者になるというような事情
がございまして、こちらにかなりの人数がいると。一方で、50代のところにまた１つ集
中している部分があると、こういう２つの山を持った分布になっているということでご
ざいます。
　それを男女別に見ましたのが、11ページと12ページでございまして、男女で見てもほ
ぼ同じような傾向ということでございます。
　次の13ページ、第３号被保険者の分布でございまして、これは男女合計と女性の分布
はほぼ同じですので、男女別で見ていただきますと、14ページが男性でございますけれ
ども、割合のところで見ていただきますと、50代のところが割合としては多いわけでご
ざいますけれども、ただ、前年の数値、こちらにはございませんが、対前年で見ます
と、20代後半から40代前半ぐらいのところで前年より増えているということで、そこの
割合もちょっと増えているという事情がございますので、これは例えば共稼ぎをされて
いて、男性の方が失職されたようなときに、奥様の３号になるというようなケースがあ
って、そういうものが反映しているのかなというふうに思っているところでございま
す。
　次の15ページは、女性の年齢期間別の分布で、右側の割合のところを見ていただきま
すと、20代は割と少なくて、30代のところからかなりフラットな分布になっているとい
う状況でございます。
　16ページでございますが、積立金の運用状況ということでございまして、時価ベース
の資産構成でございますが、預託金が75％、市場運用分が8.7％、財投債が16.3％とい
うことでございまして、積立金に関しては、承継資産の損益を含む場合で9兆4,698億円
ということで、運用利回りが△0.39％。承継資産の損益を含まない場合は0.76％という
ことでございます。
　資産の構成でございますが、これは厚生年金と一体で運用してございますので、ここ
の数字には承継資産分も合わせました全体の構成割合と数値ということで、厚生年金の
ときと同じものが掲げてございます。
　以下の特記事項のところも厚生年金と同じことでございますので省略させていただき
ます。
　続きまして、17ページでございますが、財政再計算における将来見通しとの比較とい
うことで、厚生年金勘定の収支状況の比較ということでございますが、こちらに関しま
しても、下の特記事項にございますように、実質収支というものを作成するに当たりま
しては、基礎年金の交付金：2.3兆円を収入・支出の両面から控除するということで、
実質的な収支の状況がわかるような形で、その実績の方を加工いたしまして、将来見通
しと比較するという方法で比較しております。
　もう一点、積立金のところには、国庫負担の繰延分：2.0兆円というのがございまし
て、財政再計算は一時に繰り戻されたという前提で計算をしておりますので、それとの
比較という意味で積立金に繰延分を加えるという形で比較をしております。
　数値の方を見ていただきますと、保険料収入が14年度は1.9兆円ということでござい
ましたが、将来見通しは2.0兆円と見ていたというところでございまして、数値的には
割と近いのですが、現実には被保険者数は見通しよりもかなり多くなっていて、2.5割
程度増加となっておりますが、一方で、納付率が見通しよりも低下していると。11年の
財政再計算のときには、平成８年度の国民年金の実績の収納率・納付率に準拠いたしま
して、82.9％の保険料の納付率が将来にわたり維持されるということで財政再計算を行
ったわけですが、14年度の納付率が62.8％ということでございまして、かなり見通しよ
りも低下していると。この両方の事情がある程度相殺するような面がございまして、収
入の額としては、割と再計算の見通しに近いような数字になっているところでございま
す。
　運用収入に関しては、将来見通しでは0.4兆円という見込みでしたが、時価ベースの
実質収支で見ますと、ちょうど０ぐらいということでございまして、これの差の主な要
因といたしましては、名目運用利回りが見通しでは3.28％ということでしたのが、実際
には△0.39％だったということでございます。
　ただ、厚生年金のときに申し上げましたように、賃金上昇率の実績に対し将来見通し
：2.5％と見ているわけですが、その差の方がむしろ大きいということでございますの
で、賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りは財政再計算の前提が確保されているとい
う状況でございますが、名目の運用収入で見ますと、将来見通しが0.4兆円に対してほ
ぼゼロだという姿になっているということでございます。
　収入総額のところの差はほとんど保険料収入の差と運用収入の差ということで説明さ
れるような数値ということでございます。
　続きまして18ページ、こちらが基礎年金の被保険者数及び受給者数（みなし基礎年金
受給者を含む）の比較ということでございまして、一番上の欄に被保険者数の実績、将
来見通しで6,950万人と見込んでいたところでございますが、14年度末6,989万人という
ことで、これは基礎年金の被保険者数ということで、日本全体というようなことでござ
いますので、割と近い数字になっているということでございます。
　受給者数は、2,420万人という見込みに対しまして、2,405万ということで、これもか
なり近い数字になっているということでございます。
　一番下の特記事項を見ていただきますと、実績の受給者数は受給権者数（推計値）で
あると記載してございまして、実際のところみなし基礎年金受給者も含むということ
で、人数をカウントするということになりますと、現実に基礎年金として新法で裁定さ
れる方はその人数を数えればいいわけでございますが、旧法の方の場合、各制度を、例
えば厚生年金で20年以上を満たして、それで厚生年金の老齢年金の受給権者となってい
る方は、それで１人とカウントすればいいわけでございますが、いくつかの制度を通じ
て通算老齢年金というものを受けておられる方をどういうふうに人数でカウントするか
というところはなかなか難しい部分がございまして、ここのところについて通算老齢年
金の加入期間等に基づいた推計を行いまして受給者数を推計しています。
　実際そういうような形で推計をやっております関係上、末現在の人数の方はそういう
形で実績を推計して入れることができるのですが、失権者となると各制度、通算老齢年
金で失権された数がわかっても、そこをどういうふうにつないで１人というふうに落と
し込めばいいか、そこまでやるのは難しいということで、一番下の失権者の欄も恐縮で
すが、これらについては実績の数字も推計でつくるのは難しいということで埋まってい
ないところでございます。
　新規裁定者でございますが、こちらも特記事項の２番目にございますように、新法基
礎年金の新規裁定受給権者である、と書いてございますが、現実に基礎年金の受給者に
なられる方の中には、最初に特別支給の老齢厚生年金を受けられて、65歳になったとこ
ろで、そこの中のいわゆる１階部分が基礎年金に振り替わるような形で基礎年金受給者
になるという方がおられるのですが、そういう方もカウントした形で新規裁定の人数等
というのが、今のところできない状況でございまして、新規裁定者、本当に初めて年金
の裁定を受けるときに新法基礎年金の裁定を受けるような方の人数がカウントされてい
るということで、こちらの数字は入っているということでございます。
　続きまして19ページでございますが、財政指標の比較ということで、まず年金扶養比
率でございますが、こちらにつきましては、国民年金でも基礎年金につきまして、いわ
ゆる日本全体で見た場合の基礎年金の支え手と支えられる側の人数の比率ということで
記載しているところでございます。と申しますのは、国民年金の場合、先ほど来、申し
上げておりますように、国民年金の勘定から出ているいわゆる旧法分の老齢年金という
のは、大部分が基礎年金の交付金ということで財政上カバーされているということで、
事実上、国民年金の特別会計は日本全体として一人頭いくらといってカウントされて出
てくる基礎年金の拠出金を払うというのが主たる支出でございまして、それを自営業者
の方等々の１号被保険者の保険料と運用収入、国庫負担で賄うと、こういう財政構造に
なっておりますので、いわゆる何人で何人を支えるというもので、国民年金の財政に直
接はね返ってまいりますのは、国民年金自身のということではなくて、日本全体でどれ
だけの拠出金算定対象者あるいは被保険者でどれだけの受給者を支えるか、そういう数
値ということになりますので、こちらの年金扶養比率は基礎年金に関するものというこ
とで入れているところでございます。
　こちらで見ていただきますと、年度末の被保険者・組合員数と、年度末の老齢基礎年
金受給者数の対比で、11年の再計算では、平成14年度では3.1人で１人を支えるという
ような数字で見ていたわけですが、14年度の実績で見ますと3.17人で１人を支えるとい
う数字でございまして、これは日本全体ですので、割と数値のブレが少ないということ
でほぼ見込んだ線に近いような数字になっているという状況でございます。
　20ページでございますが、収支比率につきましては、国民年金の勘定、いわゆる１号
被保険者の勘定の出入りで見るのが適切だということで、国民年金勘定の収支比率を掲
げているところでございますが、国庫負担分を除いた実質的な支出、当然基礎年金の交
付金も控除したということでございますが、それに対しまして保険料収入と運用収入が
どれだけカバーしているかということで、分母が保険料収入＋運用収入、分子の方が、
実質的な支出から国庫負担で賄える部分を除いたものという定義になるわけでございま
すが、これが時価ベースで見まして108.5ということで収支が赤だということを反映し
ているわけですが、11年の再計算結果では、14年度は92.3という数値で、単年度収支と
いうことで見ると再計算で見込んだものよりはかなり収支は厳しくなっていますが、こ
れも厚生年金のときに説明しましたように、物価や賃金の伸びも低い、運用収益も低い
という状況を反映している部分がございまして、21ページを見ていただきますと、積立
比率でございますが、こちらについても、財政再計算と比較するために、国庫負担の繰
延分をもとに戻すというような形で比較し得るような形に調整いたしまして、上の欄の
実績の方、14の「＊」となっているところで見ますと、積立比率が5.8ということにな
っているわけでございまして、国庫負担を除いたいわば保険料や運用収入で賄うべき支
出に対する積立金比率が5.8倍ということですが、11年の財政再計算結果、下の欄で見
ていただきますと、14年度、これが5.7倍と見ていたということで、この積立比率とい
う意味では、今の経済の低成長が反映して、むしろ積立金の比率というものは見込みよ
りも若干高まっているという実績になっていると、こういう状況は厚生年金の場合と同
様でございます。
　説明は以上でございます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。それでは御質問、御意見どうぞ。田村委員。

○田村委員
　先ほど聞くのを忘れてしまったのですけど、16ページ、厚生年金の場合も同じなので
すが、ちょうど真ん中辺の年度末積立金について、承継資産の損益を含む場合と含まな
い場合の額が出ています。その差額が、承継資産を移管した場合の利差損の額より大き
いのですね。それから、前の方の特別会計ベースの積立金の額と比べてもちょっと違う
のです。どこがどういうふうに違うのか、ご説明いただけるとありがたいのですが。

○山崎数理課長
　まず国民年金の場合で……

○田村委員
　9兆7,708億円と9兆4,698億円とありますね。その差額が３ページの平成12年度末の承
継資産に係る累積利差損△1,125億円より大きいのですが。

○山崎数理課長
　３ページでございますが、平成12年度末の承継資産に係る累積利差損を掲げさせてい
ただいておりまして、これは特記事項にわざわざこれを書くからわかりにくいのかと思
うのでございますが、要するに12年度のところで累積利差損がどうだったかということ
を３ページの方は示しておりまして、16ページの方の年度末積立金は、14年度末の数値
でございますので、その後、13年度や14年度の状況も反映されたものになっているとい
うことでございますが、ちょっとお答えになっているのか……３ページの方は、12年度
末時点の数値でございまして、あと13年度、14年度の分が累積されてきて、14年度末の
承継資産の損益を含む場合と含まない場合の差になるかと思うのでございますが。

○田村委員
　ということは、1,125億円の利差損が増えてきているということですか。

○山崎数理課長
　14年度につきましては、承継資産の損益を含む場合というのは、承継資産分の損失を
厚生年金と国民年金に割り振って積立金の額を出したもので、損益を含まない場合とい
うのは、承継資産の損益分は別にしての積立金になりますので、14年度分の承継資産の
損益の分は、３ページにございます12年度末時点での累積利差損には含まれていないと
いうことになりますので、当然その分で数値は変わってくるはずだと思うのですが。

○田村委員
　特会の方の9兆9,108億円との関係はどうなのですか。要するに、9兆9,108億円と、9
兆7,708億円と9兆4,698億円と３つ数字があるのですが、これらがどういう関係になっ
ているのかということなのです。

○山崎数理課長
　特別会計の数字の方は、そもそも時価評価は全然入っていない、いわゆる現金収支ベ
ースの数字でございまして、承継資産の損益を含む、含まないはどちらも時価評価ベー
スでございますが、承継資産と申しますのは、もともと資金運用部から借入をして、そ
れで運用されていたもので、実際の年金資金運用基金の市場運用というのは、厚生年金
の方では直接寄託されている部分と国民年金の分と、あと承継した分、その三者合わせ
て運用されておりまして、その損益の中で、承継資産分に割りつけられました損益を、
更に厚生年金と国民年金の資産残高の比率で割りつけて見る場合と割りつけないで見る
場合というのを２通り掲げているというのが16ページでございますが、ただ、３ページ
の表の方で両方を示すのは３つの数字が出ることになりわかりにくいので、時価評価に
つきましては、むしろ承継資産に係る損益、これは最終的には年金の会計が負担するも
のになるであろうという考え方の下に、時価ベースの数字の方には、承継資産の損益を
含むものだけを掲げさせていただいておりまして、それといわゆる現金収支の特別会計
ベースの数字というのが３ページで比較できるようになっているというところでござい
まして、16ページの方は、むしろ同じ時価評価ベースの中で、承継資産の損益を含むと
含まないと２つの種類のいわば時価評価の数字を出させていただいているということ
で、３通り数字があって見づらくて恐縮ですけれども、三者はそういう関係にあるとい
うことでございます。

○堀部会長
　これもわかりにくいので、時間もありませんので、また、文書等で簡潔にまとめてく
ださい。

○山崎数理課長
　後日、提出させていただきます。

○田村委員
　もう一点、よろしいですか。

○堀部会長
　どうぞ。

○田村委員
　今回の説明よりは、むしろ今後説明をお願いする財政再計算の問題かもしれないので
すが、厚生年金の場合もそうなのですけれど、被保険者の分布表には、過去に不連続な
期間を有する者については、この期間が加入期間に反映されてないということが書いて
あります。それはそれでよろしいのですけれども、これが財政再計算のベースになって
いるはずです。その再計算の際に、表に反映されていない不連続な期間をどのようにし
て反映する形にしたのかということなのです。それは今回の報告とはちょっと関係ない
かもしれませんが、再計算の基本的なところだと思うので、もし簡単に説明できるのだ
ったらご説明いただきたいのですが。

○山崎数理課長
　まず、例えば10ページでございますけれども、過去に不連続な期間を有する者につい
てはカウントされてない場合があると。これは本来的には同じ被保険者番号で期間をつ
ないできちんとそういう形で皆さんが届け出されて管理されていれば、それが反映して
完全なものになるわけでございますけれども、実際には制度をわたり歩いたときにそれ
ぞれの番号を持っていて、両者がつながっていないと。現実に年金の裁定を受けるとき
には、それは申し出ていただいてつなぐような形になるわけでございますが、まだ被保
険者でいる間は、制度としては両者は必ずしも同一人物とは確認されない形で記録を持
っているということで、それをもとに加入期間をカウントといたしますと、例えば全体
では15年ある人が、５年と10年と分かれていると、５年のところに１人とか、10年のと
ころに１人という形でカウントされたりするということで、実際に将来の費用の推計を
いたしますときには、それは加入した期間に対応して給付が出てまいりますので、そう
いう意味では現実に25年の資格期間を満たすかどうかのところにつきましては、基本的
にはカラ期間等々もあるので、再計算の上では、それは皆さん基本的には満たすものと
いう前提で算出して、費用の推定をしているわけでございますけれども、将来の受給者
数等々につきましては、それをそのまま計算してまいりますと、通算老齢年金の人数が
非常に多くなったりしますので、そこのところは現実にどのぐらいの通算老齢年金の方
が出てきて、それで被保険者期間がどれぐらいあるかというものとの関係を見まして、
ある種の補正を加えて、将来の被保険者数の見通しを出しているということでございま
すが、詳細につきましては、今詳しいところまではちょっと申し上げる余裕がございま
せん。

○田村委員
　再計算の説明があるときでよろしいと思います。

○山崎数理課長
　できれば、そのときにまとめて御説明させていただければと思うのでございますが。

○堀部会長
　あとはいかがでしょうか、近藤委員。

○近藤委員
　我々はあまり議論しなかったのですけど、障害年金について、大きなものになってい
るので、データを出してほしいのですけれども、新規裁定者の中で、障害年金の年齢５
歳階級別に新規裁定者の数、13年も14年も多分７万人で中身もそんなに変わらないと思
うので、14年度の分だけで結構です。

○山崎数理課長
　新規裁定ということでございますか。

○近藤委員
　新規裁定だけです。

○山崎数理課長
　５歳階級別の人数ですね。

○近藤委員
　人数です。トータル７万人にこれはなっています。毎年７万人ぐらい出るのですけれ
ども。

○山崎数理課長
　それは統計を調べまして、お出しいたします。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。
　私、年金扶養比率についてお伺いしたいのですが、半額免除制度が始まったのは何年
でしたか。

○山崎数理課長
　平成14年４月からでございます。

○堀部会長
　基礎年金の拠出金の単価を計算する上で、人数的に半分にしているのですか。その場
合に、年金扶養比率の場合について、人数で半分にするのかどうか。拠出金単価の場
合、どうしているのか。

○廣瀨数理調査室長
　基礎年金拠出金を算定する方をお答えいたします。基礎年金拠出金を算定するときに
は、半額免除者が半額を払った場合に、その月を２分の１月として換算いたします。も
ともと基礎年金拠出金を計算するときには、１号被保険者の場合は納付月数をずっと加
算してまいって、１年分これだけの月数ありますよとやり、半額免除の人は、保険料が
半額であるから１月あたり２分の１月として捉えて、全体として満額の保険料の何月分
の納付があったかという形で計算して、それに被用者年金制度分を含めて割り算をする
ことにより１月あたりの単価を出すと、このようになっております。

○堀部会長
　被保険者数ですから、あまり関係ないのですか。免除者も含んでいるのですね。わか
りました。あとはいかがでしょうか。

○山崎数理課長
　年金扶養比率の方でございますが、これは年度末の被保険者組合員数の方は、これは
いわゆる１号、２号、３号の被保険者の合計ということでやっておりまして、そういう
意味では、半額免除以前に全額免除の方とか、未納の方も被保険者数ということでカウ
ントされた数字になっておりますので、再計算の方もそういう意味では被保険者組合員
数というのはそういうベースになっておるのですが、実質的な保険料負担の対象になる
方ということですと、もうちょっと別の指標を考えるとかということは必要なのかなと
いう感じでございます。

○堀部会長
　わかりました。月単位なので、なかなか人数ということにはならないかもしれないで
す。国民年金についてはこれでよろしいでしょうか。
　それでは、時間がちょっと押しているのですが、「平成16年の年金制度改正における
給付と負担の見直し」について、事務局から説明をお願いしたいと思います。


議題
２．平成16年度年金制度改正における給付と負担の見直しについて

○山崎数理課長
　数理課長でございますが、引き続き、お手元の資料３「平成16年の年金制度改正にお
ける給付と負担の見直し」という資料に沿いまして、制度改正とそれに基づく財政再計
算の考え方につきまして概略を御説明させていただきます。
　１ページでございますけれども、今回の年金制度改正の考え方としまして、中段にご
ざいます保険料負担を将来に向けて１つ設定し固定すると。その範囲の中で給付を考え
ていくという考え方、これが１つの基本ということでございまして、現在厚生年金：
13.58％、国民年金：13,300円という保険料を厚生年金では年0.354％、国民年金で毎年
月額280円ずつ引き上げていって、平成29年度以降、厚生年金：18.3％、国民年金：
16,900円で固定すると。国民年金の場合は16年度価格ということで、当然名目の額は賃
金が上がれば上がっていくということになるわけでございますが、そういうもので固定
すると。
　その範囲の中で給付を考えていくということでございまして、現在標準的なサラリー
マンの世帯ということで、受給開始時に59.3％という所得代替率ということでございま
すが、これを後で御説明申し上げますマクロ経済スライドという手法により、徐々にそ
の比率を下げていく。ただ、もらっている年金額は引下げないという方法でなだらかに
給付水準を調整していきまして、今の見通しでは、平成35年（2023）年度以降50.2％と
いう給付水準を維持するということにより、2100年の段階で１年分の積立金を持つとい
う形で財政運営をやっていけると、こういう見通しになっているというわけでございま
す。
　その前提となりますのが、一番右にございます基礎年金の国庫負担割合の引上げとい
うものが前提になっているわけですが、これにつきましては、平成16年度に着手という
ことで、まず１つ年金課税の見直しという財源によりまして、増収約2,400億円のうち、
地方交付税分を除く約1,600億円分を基礎年金に充当ということで、16年度は初年度と
いうことで272億円でございますが、17年度以降毎年増加いたしまして1,600億円相当、
これを国庫負担率に換算して1000分の11という数字になるのですが、そちらで国庫負担
割合を引き上げると、これは既に今回の改正法で法定されておりますので、今回の財政
再計算ではそれを前提としているということでございまして、平成17年度、18年度には
適切な水準にまで、２分の１に至る過程として適切な水準まで引き上げるということで
ございますが、これは別の法律で定めるということになっておりまして、具体的な数値
はまだ入ってございませんので、財政再計算では、ここについては具体的な数字は入れ
ずに、ある意味で保守的な見方ということで、３分の１＋1000分の11という年金課税の
分だけの国庫負担割合の引上げというものを前提としている。
　平成21年度までに２分の１への引上げを完了すると。これは平成19年度を目途として
消費税を含む抜本的税制改革を実現して行うということになっているわけですが、こち
らに関しまして、財政再計算上は平成21年度から国庫負担割合は２分の１になると。そ
れまでは３分の１＋1000分の11、そういう前提で財政再計算を行いまして、それに基づ
いて2023年度以降50.2％という所得代替率が見込まれていると、こういうことになって
いるところでございます。
　２ページは保険料率の引上げの階段グラフでございますので省略させていただきま
す。３ページが、保険料水準固定方式によるマクロ経済スライドということで、色のつ
いたものが現役男子の平均手取り年収で、これが足元39.3万円から、給付水準調整期間
終了（2023年度）には55.8万円というふうに上がっていくと。ただ、これは物価上昇分
も含んだのでございますので、括弧書きにありますように、物価上昇分を除いた実質価
格で言いますと、46.2万円と。それでも実質の賃金上昇、これは財政再計算では、将
来、年率平均で1.1％の実質の賃金上昇があると見込んでおりますので、それに従いま
して、実際現役の手取りが増えていくという見方でございますけれども、その増えた分
をそのまま年金の給付には反映させずに、後で御説明申し上げますが、マクロ経済スラ
イドということで、年金を支える力の大きさというものに見合った形で給付水準を調整
するということ、ただ、名目年金額は物価や賃金が下がらない限りは下げないという形
で調整していくことによりまして、今、標準的な年金額で23.3万円のものが、2023年度
には名目額で28万円と。割引いた実質価値でも23.2万円ということで、ほぼその水準が
維持されると。
　ただ、御案内のように、左側のところに書いてございますが、それぞれの年に年金を
受給し始めたときの年金の給付額を表示しているということでございまして、受給開始
後も名目額は下がらないということでございますが、実際、前回の改正で、年金は裁定
後は物価スライド制ということなりましたので、裁定された後は、そのときの現役の賃
金に比べますと、比率をとれば数値は下がるということでございますが、年金の給付水
準は、65歳の支給開始のときに見るという考え方に沿って数値は整理しているところで
ございます。
　次の４ページでございますが、これはマクロ経済スライドの考え方を示したものとい
うことでございまして、左側の欄が現在の年金額改定の考え方でございまして、新規裁
定のときの年金というのは、１人当たりの所得・賃金の上昇を反映して年金額が改定さ
れると、こういう仕組みになっているわけでして、裁定後は物価スライドにより年金の
購買力を維持すると、こういう姿になっています。
　一方で、年金を支える側といいますのは、１人当たりの平均所得・賃金が上昇する。
一方で、支える分母になる労働力人口というものが掛け合わさって、その全体で年金の
給付を支えていくということになるわけですが、右側の欄を見ていただきますと、今
後、労働力人口が減少に向かうということが見込まれている中で、今までのような１人
当たりの平均所得や賃金によるスライドというものをそのまま行っていくと、現役と受
給者との間でアンバランスが生じるといいますか、支えていけなくなるということで、
支える側の力の減少分である労働力人口の減少の分というものを年金額の改定率の方に
反映させていきその分、調整していくと。
　一方で、年金の方も平均余命の延びによりまして、同じ額の年金をもらっていても、
そのコストというものは伸びていくということで、そちらの方も調整のファクターに入
れると。この２つのファクターで調整することにより、年金の水準を徐々に調整してい
き、支える力の範囲内におさめると、こういうような改正を行っていくという考え方な
わけでございます。
　ここでマクロ経済スライドのファクターとなっております平均余命の延びでございま
すが、こちらの方は、社会保障人口問題研究所の将来人口推計の下での2025年までの余
命の延びというものの平均値を反映いたしまして、年率0.3％という見込みでスライド
の調整期間の間、これを調整するということになっておりまして、労働力人口につきま
しては、労働力人口そのものと申しますよりは、年金制度で用いるということで、被保
険者数、日本の年金制度全体の被保険者数の減少割合ということの実績を用いてスライ
ド調整率に反映させるということで、スライド調整期間中で平均0.6％程度の被保険者
の減少率になるということで、被保険者分の0.6％と余命の延びの分の0.3％を合わせま
した平均およそ0.9％程度の調整率になるというふうに見込んでいるところでございま
す。
　こちらの調整率の数字でございますが、平均余命の方は0.3という数字で、法律でも
書き込んでございますし、あと、被保険者数の方も、日本全体の被保険者数でございま
すので、既に生まれている方が、大体20歳以上の方が被保険者になっていて、それより
下の年齢の方で生まれている方が、これから20年間は段々労働市場に参入していくとい
うことでございますので、足元の出生率が変わったりしても、このマクロスライドの調
整率に影響を及ぼすのは20年後ぐらいから徐々にということでございますので、出生
率、今見込みよりも低くなったりしてございますが、このマクロスライドの調整率自体
に影響が出てまいりますのは随分先のことになると、20年とか先になるということで、
出生率が変わっても、マクロスライドの調整スピード自体にはほとんど影響しないとい
うことになるわけでございますが、実際のところ、こういう形でマクロ経済スライドを
続けていきつつ、少なくとも５年ごとに年金の財政の見通しというものを改めて出しま
して、財政の検証を行っていくわけでございまして、そのときには新しい出生率の見込
みでございますとか、賃金や物価の将来の見通しをもとに、年金の財政が将来どうなっ
ていくかということを見込むわけでございますが、その場合にも、マクロ経済スライド
による調整スピードはそれほど今の見込みと大きく変わることはないと思われるのでご
ざいますが、再度、例えば50.2％で本当にとめて100年後とかになりますと、2100年で
ございますが、そこまで積立金１年分という形で財政が維持できるかどうか、その見込
みには出生率の見込みがどうなるかというようなこととか、あるいは実質賃金上昇率が
どのぐらいのものと見込まれるのかというものが影響を与えると、こういう関係にある
ところでございます。
　５ページでございますけれども、こちらの方は、いわゆる名目年金額下限型というこ
との意味ということでして、基本的に物価や賃金が上がっているときに、このスライド
調整率、平均で0.9％ぐらいと申し上げましたが、それよりも高い上昇がある場合には
それを差し引いたものがそのまま給付の改定率になるということですが、賃金や物価の
上昇が小さい場合には名目額下限ということでございますので、これによって年金改定
率はマイナスとすることはしないということで年金額は据え置きという形になると。
　賃金、物価が下落した場合には、それに対応する年金改定ということで、それに加え
てスライド調整を行うということはしないということでございますので、仮に下の２つ
のケースのように、賃金や物価の上昇が低くて、名目額下限ということで、マクロ経済
スライドが十分に行われないというようなケースが生じました場合には、給付調整に時
間がかかるということになるわけでございまして、基本的にはその場合には、むしろ所
得代替率で見ました給付水準はなかなか下がりきらないということになって、そのかわ
り、財政上はその分だけ見込んでいた調整効果が後ろに繰り延べになってしまうので、
より最終的には大きい調整をしなければならないと、そういう方向になるわけでござい
ます。
　ただ、いずれにしましても、５年ごとに新しい出生率の見込みでございますとか、新
しい経済の見込みというものを入れまして財政の現況と見通しというものを作成、公表
していくということになるわけでございまして、ただ、今までのように５年たったとこ
ろで、その見通しが変わるので、すぐに制度改正が必要という仕組みではございません
で、このマクロスライドというものが、当初予定したような形で、徐々に給付水準を調
整していくと。
　その間、一方で固定された保険料階段に従いまして保険料率が上がっていくという状
況の下で、当面、例えば５年後で申しますと、その新しい状況の下で、将来の財政の見
込みがどうなるかというのをお示しするわけでございますが、一方で、出生率などは少
子化対策を行いましても、直ちに効果が目に見えてあらわれるというものでもないとい
うことからいたしますと、ある程度長い目で見ながら、そういうものをやっていくとい
う中で、結局マクロスライドをやってまいりますと、調整していきまして、およそ20年
後ぐらいに代替率が50％に近づくと。この年限はそれほど大きく動くことはないわけで
ございますが、その段階におきまして、将来の財政の見込みを立てまして、そのときに
今現在置いておりますような基準的なケースでの見込みでございますと、そこで調整を
とめて、100年後のところまで安定的に財政が運営できるのではないかと見ているわけ
でございますが、その段階で見通しを立てまして、それが必ずしもそうならないという
見込みであったといたしましたならば、一応給付水準につきましては、将来にわたって
50％確保するということを置いておりますので、まずはそこの段階でマクロスライドを
本当に続けるのか、とめるのかについて検討をして、所要の措置を講ずると。
　マクロスライドをとめた場合には、もし、そういう状況でございますと、財政が均衡
しないということになりますので、そのときには給付と負担につきまして、所要の処置
を講ずると。要するに財政が均衡するようにやっていくと。そういう考え方になってい
るということでございます。
　次の６ページでございますが、こちらが基礎年金、厚生年金のそれぞれの被保険者
数、受給者数の見込みということでございまして、2005年の数字に比べまして、基礎年
金のところで見ていただきますと、被保険者と老齢基礎年金の受給者の比率が2.9対１
のものが2100年のところは1.4対１になるということで、かなり少子高齢化が進んで厳
しい状況になっていくということでございます。
　７ページ、これはご覧になっていると思いますけれども、厚生年金と国民年金それぞ
れの財政見通しということでございます。
　８ページ、９ページ、これは財政再計算の諸前提ということで、将来推計人口につい
ては、中位推計を用いたと。
　労働力率につきましては、職業安定局の推計、2025年までの間、高齢者とか女性の労
働力率の上昇を見ていると。以後は2025年の数値で一定という前提にしているというと
ころでございます。
　経済前提につきましても、2008年までは内閣府の「改革と展望－2003年度改定」に準
拠ということでやっておりまして、以後については、物価につきましては、過去20年の
平均値と改革の展望の期間中の平均値と両方にらみまして１％というふうに置いている
ところでございまして、賃金上昇率、運用利回りにつきまして、平成21年度以降でござ
いますが、これは年金資金運用分科会の報告をもとに設定したということで、構造改革
の実行を前提といたしまして、日本経済全体の生産性の上昇の見込み、これがいわゆる
全要素生産性の上昇率で、年率0.7％という見込みを基準としたところでございますが、
これに基づいて、中長期的な実質賃金上昇率や実質運用利回りを推計したということで
数値はその表にあるとおりでございます。
　時間もオーバーしておりますので、簡単にポイントだけ申し上げますと、10ページが
夫婦の所得別の年金月額及び所得代替率ということで、こちらは基本的な厚生年金の給
付構造といたしまして、いわゆる所得代替率ということで見ますと、世帯としての賃金
が高いほど率は低くなるという右肩下がりのグラフと。マクロ経済スライドによりまし
て、所得代替率が下がっていくわけですが、それがこの構造を保ちつつ下がっていくと
いうのが白い矢印で書いているところでございまして、一方で、ただ、賃金の高い方は
率は低いわけですけど、逆に世帯としての年金月額は高いというのがその右肩上がりの
グラフでございまして、これにつきましては、将来においても年金の月額の水準はほぼ
維持されるというものがこの右肩上がりのグラフということになるわけでございます。
　11ページにつきましては、世帯類型ごとで見たらどうかというものを１つの軸に入れ
てみたものでございまして、11ページが16年度、12ページが2025年ということで対比し
ているものでございます。
　13ページはこれの前提となるものをまとめたところでございます。
　大変時間延びまして恐縮でございます。以上でございます。

○堀部会長
　改革の内容等については、前に一度お聞きしておりますし、財政再計算の検証のとき
にまた詳しくヒアリングをするということで、特に質問しておきたいということがあれ
ば伺いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。


閉会

○堀部会長
　それでは、本日の議題はこれにて終わりということになります。本日はこれまでにさ
せていただきたいと思います。
　次回の日程について、首席年金数理官の方からお願いします。

○田村首席年金数理官
　次回、第12回の年金数理部会でございます。国共済、地共済、私学共済の財政状況に
ついてヒアリングをしていただきます。９月２日（木曜日）午後２時から、同じ場所で
予定しております。よろしくお願いします。
　以上でございます。

○堀部会長
　本日はどうもありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－了－


（照会先）
　厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
　（代）03-5253-1111（内線3382）