04/08/27 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成16年8月27日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年8月27日(金) 14:00〜   厚生労働省専用第21会議室              2.出席委員(12名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 折 笠 秀 樹、 守 殿 貞 夫、   神 谷   齊、 後 藤   元、 田 島 知 行、 土 屋 文 人、   早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 吉 田 茂 昭   (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人6名   欠席委員(4名)   岡 田 義 昭、 川 嵜 敏 祐、 木 村   哲、 溝 口 昌 子 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 川 原   章(審査管理課長)、   平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   森   和 彦(医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   赤 川 治 郎(医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   辻 村 信 正(医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部 会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありが とうございます。当部会委員数16名のうち現在11名の御出席を頂いておりますので、 定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。  審議に入ります前に、7月23日付けで事務局の人事異動がございましたので御紹介さ せていただきます。まず大臣官房審議官医薬担当の黒川でございます。 ○審議官 黒川と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○審査管理課長 それから申し遅れまして大変失礼いたしましたが、私は審査管理課長 の川原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それから審査管理課の関係で 審査調整官の林でございます。 ○事務局 林でございます。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 それから医薬品医療機器総合機構の関係で新薬審査第二部長の坂本で ございます。 ○新薬審査第二部長 坂本と申します。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 同じく第三部長の牧野でございます。 ○新薬審査第三部長 よろしくお願い申し上げます。 ○審査管理課長 では池田先生、以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 先生方、お忙しいところありがとうございました。それでは早速本日の 審議に入りたいと思いますけれども、いつものように審議に入る前に事務局から配付資 料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いします。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきたいと思います。まず資料1〜7まで と、資料3及び資料4の審査報告書の差し替えがあらかじめお送りした資料でございま す。それから本日席上に配付させていただきました資料といたしましては、議事次第、 座席表、本部会委員の名簿、資料2-1として「トリセノックス注10mg添付文書について」、 資料2-2として「トリセノックス注10mg毒薬・劇薬等指定審査資料のまとめ」、それか ら資料8として「医薬品第二部会審議品目の薬事分科会における取扱い、毒薬・劇薬の 指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の要否について(案)」という資料でござ います。それから資料9として専門委員のリストを配付させていただいております。ま たこれに加えまして当日差し替えの資料として、資料7-1、7-3、7-10を配付させていた だいております。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関係された委員の確認で ございますが、本日の議題については関与された委員はおられません。  また、本日の一番最後のその他の議題のところで、参考人として何名かの先生におい でいただくことになっております。岩手医科大学医学部教授の杉山先生、国立がんセン ター中央病院骨軟部組織科医長の中馬先生、埼玉医科大学脳外科助教授の西川先生、栃 木県立がんセンター薬物療法科医長の藤井先生、国立がんセンター中央病院第一領域外 来部通院治療センター医長の藤原先生、静岡県立静岡がんセンター消化器内科部長の朴 先生、これらの先生にお越しいただくことになっております。以上でございます。よろ しくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。本日はお手元の議事次 第にありますように審議事項が3題、報告事項が3題、その他1題ということになって います。それでは早速議題1について機構の方から説明をお願いしたいと思います。 ○機構 議題1、資料1、無水エタノール注の輸入承認の可否等について、医薬品医療 機器総合機構より御説明させていただきます。  本薬の有効成分であるエタノールは日本薬局方収載品であり、手指消毒用の外用剤と しても承認されているものでございます。申請されました本薬は日本薬局方の無水エタ ノールを注射剤として製剤化したものでございます。  肝細胞癌の発生頻度と申しますと、男性では肺癌、胃癌、大腸癌に続くものであり、 また女性においては大腸癌、乳癌、胃癌、肺癌に次いで発生頻度の高い癌であります。 肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入療法は1983年に千葉大学より初めて報告され、 その後国内外を問わず広く用いられてきている治療法であります。本剤は肝細胞癌に用 いられる薬剤として医学薬学上公知であるとして申請され、また当該効能については日 本病院薬剤師会、並びに日本肝癌研究会より承認の要望が出されているものでございま す。  肝細胞癌の本薬の薬効と申しますと、腫瘍病変に直接本薬を注入することによりその 脱水固定作用により腫瘍を壊死させると考えられております。  本剤のエタノールの注射剤形は英国でメタノール中毒の治療剤として上市されており ます。しかしながら、本申請効能での承認取得は行われておりません。  本申請にかかわる専門委員としては資料9の1ページにございますが、小俣委員、鶴 尾委員、金子委員、吉田委員の4名の委員を指名しました。  提出された資料は、新たに実施された資料としては規格、安定性にかかわるもののみ であり、毒性及び一般薬理、あるいは薬効薬理、臨床試験については文献等の引用資料 が提出されております。これら資料から、規格、安定性、毒性、一般薬理、薬効薬理に ついては大きな問題は認められておりません。  経皮的エタノール注入療法については米国癌研究所のPDQや国際的な教科書等に記 載が認められておりまして、国内での使用実績については、日本肝癌研究会が調査を実 施した全国791施設、約4,000人の本療法を実施した検討が資料として提出されており ます。その中で経皮的エタノール注入療法を実施した患者での腫瘍縮小率及び壊死効果 等の評価から、著効及び有効と評価されたものは83%と高い有効性が示されておりま す。  安全性については、本薬の重篤な副作用としてはショック、心筋梗塞が見られ、また 注入手技に伴う合併症について肝不全や肝梗塞が起こることもあり、本療法は緊急時に 十分処置できる医療施設及び経皮的エタノール注入療法に十分な経験を持つ医師の下で 実施することが必要性であると考えております。  以上のとおり機構での審査の結果、肝細胞癌における経皮的エタノール注入療法の効 能は医学薬学上公知であり、有用性はリスクアンドベネフィットの観点から認められる ものと判断し、承認して差し支えないと判断しております。なお、本剤は新投与経路医 薬品であることから、再審査期間を6年とすることが適当であると判断しております。 御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。先生方も御存じのようにこれはPEITとい うことで、我が国の臨床上でも非常に長い間試行されていたものでございまして、今回 こういう申請が出てきたわけですが、先生方の御議論をお願いしたいと思います。どう ぞ、折笠委員。 ○折笠委員 質問といいますか、この資料を拝見していまして一般臨床試験というのは 1994〜1996年にかけて行われていて、これはリドカインを配合した製剤ですけれども、 「FO-439」という開発番号が付いている試験のようですが、この試験結果をもって承認 か何かをなされた経緯はあるのですか。 ○新薬審査第一部長 実はこれは他社が過去に申請をした経緯がございまして、それは 処方がちょっと違うものだったのですが、審査の途中で会社側が力尽きて取り下げたと いう経緯がございます。 ○折笠委員 成績、効き目が不十分だというわけではないのですか。 ○新薬審査第一部長 当時の議論としても有効性に問題があるわけではないのですが、 何分申請会社が非常に小さな会社でございまして、審査側のいろいろな照会に対する回 答がなかなか上手にできないということが多々あったというちょっと昔の話でございま す。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ、堀内委員。 ○堀内部会長代理 このエタノールについては薬剤部等でかなり作っておりましたの で、それが製品化されるということは大変結構な話だと思いますし、日本病院薬剤師会 等でもそれをお願いしていたという経緯もございます。ですからその有効性についての 問題はないと思いますけれども、先ほどの御説明では熟知した医師が使うことが求めら れると思いますが、添付文書等を見ますとそのようなことが記載されておりません。ま た、これは医学薬学上公知の事実として承認されるということですが、この薬だけでは ありませんが、これからそういうものが増えてくると思います。その場合にきちんと表 記する等の措置が必要ではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。 ○池田部会長 どうぞ。 ○新薬審査第一部長 最初の御質問に関しては、添付文書(案)の冒頭の「警告」欄の中 に、「経皮的エタノール注入療法は、緊急時に十分処置できる医療施設及び経皮的エタ ノール注入療法に十分な経験を持つ医師の下で、本療法が適切と判断される症例につい てのみ実施すること」というふうに書かせていただいたところでございます。この御指 摘はごもっともですので、こういうふうにさせていただいております。  公知申請のものについて、そういう審査をしたのだということを添付文書に書いては どうかという御提案かと私どもは理解いたしますが、それについてはちょっと本省で検 討していただいて、いかがなものかと思うのですが。 ○池田部会長 いかがですか。 ○審査管理課長 ちょっと難しい御質問で今ここでクリアな御回答ができないのです が、実際問題としますとこの添付文書(案)にもございますように、主要文献といったよ うなものは新しい臨床試験などはほとんど並んでいなくて、先生方の個別の研究とかそ ういったものの文献を並べてあるといったことで、それとなくそういう感じは見えるの かなとも思いますけれども、ちょっと検討させていただければと思います。 ○池田部会長 そのほかいかがですか。 ○堀内部会長代理 もう一つよろしいですか。この無水エタノールは例えば神経ブロッ ク等にも使われているケースが多いわけですが、今回は肝細胞癌治療剤ということで肝 細胞癌しか適応がない形になっていますが、せっかくやるのでしたら両方あるような形 にしたらいかがかと思います。適応がなければ薬剤部でまた作らなければいけないわけ です。自分たちで作ってそれを適用する形になってしまいます。このような市販品の形 にすると、元は安いものだと思いますけれども、多分高い薬価が付くのではないかと思 います。そうなると自分たちで作らざるを得なくなるということもありますので、せっ かく医学薬学上公知の事実という観点でやるのでしたら、実際上使われている事実に基 づいて適応症をつけていただけると大変有り難いと思います。 ○池田部会長 その点についてどうでしょうか。確かに実際にこの無水エタノールは相 当の適用があるわけですが。 ○新薬審査第一部長 この件に関してはこの会社の方にそういう指導をするのも考えら れなくはないのですが、何分非常に小さな会社ということもございまして、今回の申請 に関しては肝臓癌の領域で切実に必要だという学会からの御要望に対して企業もこたえ てくれたという格好でございますので、実際に神経ブロックの用途についてまで手を広 げてやれるかどうかということに関しては、課題として検討させていただきたいとお答 えするしかないのかなと思います。何分今回の審査においては、肝臓癌に対する経皮的 エタノール注入療法のエビデンスというところを評価させていただきましたので、神経 ブロックに関するエタノールの使用というのはまたどのような根拠でデータ、実態があ るのか。これはそれをお使いになっている学会の方からの要望が上がってくるとか、そ ういうことも伴って公知の扱いという形での審査というのも考えられるのかなと思いま す。いずれにしましても、今ここですぐ会社にやらせますというほど簡単ではないので はないかということでございます。 ○池田部会長 どうぞ、守殿委員。 ○守殿委員 今のことに関連することですが、泌尿器科学会の関連では腎癌に経動脈的 に無水エタノールを動注するということについては同じ原理で行われています。御参考 のために。 ○池田部会長 土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 今のことの続きですが、結局公知の事実だという話を出すときに、例えば これは日本病院薬剤師会からも出ていたのだと思いますけれども、そういうときにそう いうものをすべて並べておかないと公知にはならないのかと。要するに、公知というも のを認めるための要件というのは何かあるのでしょうか。 ○新薬審査第一部長 これももともとは薬事法の施行規則の中に、医学薬学上公知とい うものについては改めて試験の資料提出を要しない場合もあると書いてあるところから 始まっておりますが、それも定められた時期が非常に古うございますので、その時代の 科学水準に照らして広く知られていると、学問的に確立しているということに関して、 やはりその時代における学問水準はございますので、時代とともに変遷するものだろう と思います。それでこの5年間くらいですが、国際的によく知られているpeer-review journalに例えば比較臨床試験の成績が掲載されているもの、それから国際的によく知 られている教科書、学会、できれば国際学会の公的なガイドライン、こういったものに 明瞭な記載があるようなものは広く知られている、学問的には十分確立しているエビデ ンスであろうというところで、非常に堅い線を掲げて公知というのは基本的にはそこで あろうというふうに示しております。これに関してはやはりその時点における相場とい う性格がございますので、きちんとした規則のような形にするのはなかなかなじまない。 それから医薬品によっては疾患領域が非常にマイナーなところになりますと、そういう 大規模な比較試験などはできませんので、そういったレベルのエビデンスに固執し過ぎ てもまた問題があろうかということで、やはりどうしても個別的な判断もある程度せざ るを得ないのですが、望ましくはというところは今申し上げたような三つ、四つの条件 を示してございます。これは対外的ないろいろな説明会の場で、審査の実務の現場から の考えということで公表してございます。  あともう一つは公的な研究費で行われた研究成果、こういったもので広く世に知られ ている、しかも成績としてきちんとうまくいっているものもありまして、これも公知の 一つの根拠として重要であろうということをやっております。大体そういったところが 今の相場ということで御説明しております。 ○池田部会長 よろしいですか。どうぞ。 ○土屋委員 こういうもともと院内製剤で作っていたものを製品化するということが今 後もいろいろあると思いますので、そういったときにその出し方によって、先ほどの話 ではないですが、結果として適応外使用になってしまうからどうしようという話になる とやはり結構つらいものでございます。そもそもが非常にボリュームがあるものではな いので、そこら辺が公知という話と、我々病院薬剤師会とかそういうところのそもそも の要望の出し方もあるのかなとは思いますけれども、今後のこともあったものですから 一応確認いたしました。 ○池田部会長 そのほかどなたか御意見ございますか。どうぞ、後藤先生。 ○後藤委員 添付文書の使用上の注意に「その他の合併症」というのがありますが、そ の中の呼吸器のところで「呼吸苦」という言葉があります。呼吸器病学の用語としては 「呼吸困難」というのが一般的な用語だと思いますので、もしほかの添付文書と照らし 合わせて整合性がとれるようだったらその方がよろしいかと思います。 ○機構 それに関しては申請者の方にも確認いたしまして、対応を採らせていただきた いと思います。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。これは添付文書に「主要文献及び文献請求先」と 書いてあって主要文献がずらずらとあるのですが、これは挙げるにふさわしい文献だと いうチェックはできていますか。要するに、一施設の院内の雑誌に載せたものとかいろ いろなレベルのものがありますね。いわゆる商業雑誌の解説文のようなものも入ってい ますし、実際に成績として挙げているものもありますけれども、これはどうでしょうか。 もちろん私もチェックはしていませんが、相当いろいろな質の文献が入っているように 思われるのですけれども。 ○機構 先生御指摘の部分に関しましては、今回の文献を載せた趣旨としては、安全性 に関する情報が得られている場合は、文献をメインに審査をしていた以上、そこの根拠 となるような文献に関しては示していこうという形で添付文書を作ってきているところ でございます。おっしゃいますように、文献ですといろいろな部分でレベルがあるとは 思うのですが、我々としましては根拠となるものはここにあるということで示させてい ただいているのが現状でございます。 ○池田部会長 余り見ていないでこんなことを言うのも適切ではないかもしれません が、余り不適切な文献が入っているとちょっと問題かなという気がしますので、見てい ただいているとは思いますけれども、念のため一応ざっと目を通して…。そのほか何か、 どうぞ土屋委員。 ○土屋委員 二点ございまして、一つは中身は日局無水エタノールということで、審査 報告書の方はそう書いてあるのですが、添付文書の方は特に日局無水エタノールという ことが書いてございません。これはもちろん中身として日局無水エタノール、要するに 局方の通り方で、これは注射剤だということでその理由はあれですけれども、例えばこ ちらの審査報告書の方は「1アンプル中に日局無水エタノール5mL」とあるのですが。 ○機構 審査報告書に書きましたのは、規格として薬局方に準じているという整理で記 載させていただいております。添付文書の方は有効成分であります一般名称無水エタノ ールという形で、局方のものを買ってきて入れているという整理ではございませんので、 「無水エタノール」ということで記載するというような形にさせていただいております。 ○土屋委員 分かりました。それからちょっとラベルの問題ですが、この「火気厳禁」、 「危険物第4類」とかは個別のものにも付けなくてはいけない法定記載事項なのでしょ うか。 ○新薬審査第一部長 ちょっとそれは確認させていただきます。ただ、これは実際の現 場のエタノール製品の中にもそういう表示をしてあるのを見掛けたことがあるように思 うのですが。 ○土屋委員 というのは、各社「火気厳禁」とか「危険等級II」とかいろいろお書きに なっていますけれども、要するに注射のラベル上の問題になったときにそれが法的に記 載しなければいけないのか、根拠があるのかそれとも各社が自由記載で書いている部分 なのかということをちょっと知りたかったのです。 ○新薬審査第一部長 それはちょっと確認して後ほど御説明いたします。 ○池田部会長 どうぞ、上原委員。 ○上原委員 先ほどの池田先生の御質問に関係するのですが、今初めて眺めたのですけ れども、主要文献がたくさん載っていますが、この治療法を最初に提唱された杉浦先生 の文献というのがこの中では一番載せるべき大事な文献ではないかと思いましたが、そ れが漏れているような感じがしますので、お願いしたいと思います。 ○池田部会長 そうですね。よろしいですか。ちょっと指摘しておいてください。その ほかいかがでしょうか。それからこれだけ症例数があるのですけれども、例えば「重大 な副作用」というところで心筋梗塞は0.1%という値なのですが、ショックとか肝癌破 裂とか、この辺はある程度ラフな頻度は書けないのですか。ちょっと難しいですかね。 ○機構 ちょっと難しいという判断で「頻度不明」とさせていただいております。 ○池田部会長 そのほかいかがですか。これはもう本当に長い間、現在も日常臨床で使 われているものですので、恐らく添付文書の書きぶりとかその他で多少は問題あるかも しれませんけれども、このものに関しては特段御意見もないかと思いますが、いかがで すか、よろしいですか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 是非適応拡大の方向を考えていただきたいということだけお願いし ておきたいと思います。 ○池田部会長 それはまた泌尿器科の方からも出るかもしれませんので。よろしいでし ょうか。それではこの件に関しては承認を可として、薬事分科会へ報告とさせていただ きたいと思います。ありがとうございました。  それでは議題2に移りたいと思いますので、総合機構の方から説明をお願いいたしま す。 ○機構 議題2、資料2、トリセノックス注10mgの輸入承認の可否等について、医薬品 医療機器総合機構より御説明させていただきます。  本薬の有効成分である三酸化ヒ素は日本薬局方収載品でございます。また、歯科系の お薬でございますが、歯髄失活剤として外用剤が承認されており、申請されました本薬 は日本薬局方三酸化ヒ素を注射剤として製剤化したものでございます。  急性前骨髄球性白血病(以下APLと略)は、急性骨髄性白血病のFAB分類でM3に 分類される疾患でございます。我が国では推定で年間約600人の方が罹患しており、初 発のAPLの治療はレチノイン酸を含む治療が標準的な寛解導入療法として確立してい るものでございます。初発のAPLの治療におきましてはレチノイン酸を投与すること で90%が完全寛解に至りますが、その後初発患者の約40%程度、年間250人程度の方が 再発いたしまして完全寛解に至らなく、再発したり難治性を呈するということに至りま す。再発、難治性のAPLの患者さんでは、レチノイン酸に対して耐性を有することが 非常に多くございまして、耐性を示した場合国内においてはその後の有効な薬剤は現在 ないという状況であります。また、化学療法を施行して完全寛解を得ることができた患 者さんでも、移植ドナーを有する患者さんにおいては造血幹細胞移植の選択肢はござい ますが、それ以外の患者さんに関しては有効な治療法が現在ないという状況でございま す。本薬はこのような再発又は難治性のAPLに対して効果を示すものとして申請がご ざいました。  APLの発症メカニズムに関しましては、15番と17番の染色体上のレチノイン酸受 容体α鎖遺伝子と前骨髄球性白血病遺伝子の転座により融合タンパク質が産生され、こ れにより前骨髄球以降の分化、成熟及びアポトーシスが阻害されることが関与している と考えられております。本薬の薬効といたしましては、転座により生じた融合タンパク 質の分解誘導を介してAPL細胞をアポトーシスに誘導し、薬効を示していると考えら れております。   本薬は当該効能に対して医学薬学上公知であるとして申請され、また優先審査品目と して審査が行われました。加えて当該効能については、日本血液学会より承認の要望が 出されております。  申請された効能・効果は、海外においては2000年9月に米国で、2002年3月に欧州 でそれぞれ承認され、また申請された用法・用量も諸外国と同様でございます。  本申請にかかわる専門委員としては、資料9の2ページに記載しておりますが、青柳 委員、池田委員、小椋委員、金子委員、斎藤委員、菅野委員、竹内委員、鶴尾委員、飛 内委員、林委員、原田委員、比留間委員、森下委員、安原委員の14名を指名いたしまし た。  評価資料は規格に関する資料、並びに参考資料として文献や米国での申請資料がござ いましたが、安定性、毒性、一般薬理、薬効薬理、臨床試験について提出され、それら の資料を検討いたしました。まず、規格、安定性、毒性、一般薬理、薬効薬理等につい ては大きな問題はないと考えております。  臨床試験に関しましては、米国で6試験及び国内で1試験の成績が提出され、再発又 は難治性のAPLを対象とした国内外の試験結果は、本薬によりいずれも8〜9割の極 めて高い完全寛解率が示されております。機構はこのような結果から本薬の有効性は認 められると判断しております。  安全性については、国内で得られている症例数が少なく、国内外の安全性プロファイ ルに関しては違いは明確ではないと考えられますが、国内症例において海外と同様にQ T延長やAPL分化症候群等の重篤な副作用が発現しているということもございますこ とから、機構としては安全性プロファイルに関しては類似していると考えております。 しかしながら、国内症例数が極めて少ないということがございまして、特に本薬の使用 に際しては極めて慎重な投与等の十分な注意喚起が必要であろうということや、市販後 においては全例調査による安全性の確認をすべきであろうと考えております。  以上のとおり機構での審査の結果、本薬の再発又は難治性のAPLに対して、有用性 はリスクベネフィットの観点から認められ、承認して差し支えないと判断いたしました。 なお、本剤は新投与経路医薬品であることから、再審査期間を6年とすることが妥当で あると判断しています。また、本日先生方のお手元に配付しております資料2-1、2-2 がございますが、まず資料2-1に関しては資料発送後抜けの部分が確認できましたので、 訂正という形で配付させていただきました。また資料2-2については、本剤の毒薬指定 についての資料が抜けていたということが分かりましたので、毒薬指定の根拠資料とし て本日配付させていただきました。以上でございます。御審議のほどよろしくお願いい たします。 ○池田部会長 ありがとうございました。急性前骨髄球性白血病(APL)の再発時の治 療薬として三酸化ヒ素を使おうという申請でございますが、いかがでしょうか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 これも医学薬学上公知の事実ということですが、米国あるいはヨー ロッパでは既に発売されていますけれども、添付文書には米国でのFDAへの申請のデ ータだけが載っているのですが、既に八百数十例に使われたということが記載されてお ります。そのデータの有効性、安全性についてどうだったかということが余り明確では ないですが、それについてはいかがでしょうか。特に医学薬学上公知の事実ということ で考える場合には、治験だけではなくてこれまでの使用実績について有効性、安全性を 評価することが求められるのではないかと思いますが、その結果がどうだったか教えて いただきたいと思います。 ○機構 お答えいたします。米国での情報といいますと、市販後の調査の中から得られ ている、特に安全性にかかわるような情報が主でございまして、審査報告書にも記載し ておりますが、安全性に関して得られている情報については添付文書に盛り込むという 作業を行ってまいりました。有効性については人数が少ないということもございまして、 添付文書にかっちりとして書けるような状態ではないところはございますが、米国にお いて審査を受けてきている情報をこちらとしては広く入手いたしまして、このような添 付文書の形にさせていただいているという状況でございます。 ○堀内部会長代理 有効性に関してはここに出ている40症例ですね。 ○機構 治験で得られている症例はそうでございまして、国内…。 ○堀内部会長代理 要するに、40症例以外のデータの有効性についてはきちんと評価さ れていないと考えてよろしいですか。 ○機構 きちんとと言われると難しいところですが、我々としては得られているデータ で有効性に関しては三つの試験を見ているわけですが、どれもいわゆる参考資料という 文献的な情報のレベルで入手されている情報でございまして、得られる中で評価ができ る範囲はすべて行っているということでございます。 ○新薬審査第一部長 ちょっと補足いたしますが、審査報告書の76ページにそのくだり について一応記載しております。海外で承認後使われているのは実際にどのくらいある のだという話は聞いておりまして、実はAPLに使う以外に多発性骨髄腫や骨髄異型性 症候群、急性骨髄性白血病などいろいろなものに使われておりまして、全体では約4,000 例ぐらいに使われております。こうしたもののデータを一応縦覧して見たのですが、現 在の添付文書の記載を改めるような特別なものは出ていないということなので、今の安 全性についての記載内容になっているということでございます。 ○堀内部会長代理 分かりました。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほか。どうぞ、折笠委員。 ○折笠委員 日本では大野先生のところで試験が行われているようですが、それはレチ ノイン酸に反応しなかった患者さんに絞ってやっていると。今回この薬剤というのは添 付文書を見るとそれは規定がないわけですよね。最初からファーストラインとして…、 ありますか。 ○機構 添付文書に記載されているもので再発難治性という形で…。 ○折笠委員 最初に治療を行った後ということですか。 ○機構 そういうことです。 ○折笠委員 そういう意味ですか。分かりました。ちなみに最初からレチノイン酸とこ れを比較した試験などというのはないのですか。 ○機構 ないと思います。 ○折笠委員 やはり最初に行ってから駄目な場合にということですか。 ○池田部会長 そうですね。比較したものはないですね。レチノイン酸はもうファース トチョイスとしてエスタブリッシュされていますので、実際にレチノイン酸と移植と化 学療法を組み合わせると恐らく7〜8割くらい治癒が望めるという状況です。ですから、 レチノイン酸が効かない、あるいは移植後に再発したりする症例はその残りということ になりますが、かなり少ない症例が対象になるだろうと思います。レチノイン酸単独と レチノイン酸とヒ素併用というのは中国の上海のグループがやっていまして、それは併 用療法の方がいいというデータはあります。そのほかいかがでしょうか。ヒ素というこ とですので、いろいろ慎重に議論しなければいけないところもあるかと思いますが、ど うぞ。 ○堀内部会長代理 国内治療研究という医学薬学上公知の事実という場合、学会等で求 められているものが迅速に承認されることは大変結構だと思いますが、医師主導の治験 などの新しい仕組みが動き出しているところで、例えば公的な研究費で行われるものに ついては評価しようというお話もありましたけれども、やはり基本的には治験をやるべ きだろうと思います。このような形で治験をやらなくても自主的なプロトコルを動かし て承認されることが広がることについてはそれなりの問題点があると思いますが、いか がでしょうか。メーカーは治験をやらないという姿勢のように私には見えますけれども、 やはり基本は治験をやるのだということだろうと思います。 ○池田部会長 どうですか。どうぞ。 ○審査管理課長 先生御指摘のとおり、この世に既に存在するものでありましても、や はり適応によりましてはきちんと臨床試験をやって開発をしてもらうことが基本だろう と考えます。そういう状況の中で、新しい化合物とかそういうような場合には治験がや られて開発されてくるということが非常に多いと思います。しかし、既存のものの適応 追加のような場合、それから本日出ておりますエタノールとか亜ヒ酸のように物として 既にかなり昔からございまして、そのものの性質みたいなものがよく分かっているよう な場合ですと、医薬品として投与経路とかそういうものを総合的に判断すれば新薬とい う扱いにはなるのですけれども、全体から見ると効能追加、用途の追加のようなものに なります。そうすると、やはり完全な新規物質としての医薬品というわけではございま せんので、そういう点で先ほど森部長の方から説明がございましたような公知の扱いを 活用してといいますか、そういう形で認可というような方向を目指さないと、実際問題 としてなかなか現場に供給できないという問題もあるかと思います。御指摘のとおり、 臨床試験をやっていただくことが基本だとは思いますけれども、物が既に存在する場合 はいろいろな医学研究とかそういったものを通じまして、公知の扱いという方向での活 用も考えられるケースもあるというふうに考えております。 ○堀内部会長代理 確かにこれ自体は局方品ですから新しいものではないわけですが、 ただ作用メカニズムなどを考えると、かなり新しいメカニズムで効いている可能性があ ると思いますし、血液学的なCRなどを見ますと、グリベックと同等な効果があります。 薬価の話をして申し訳ないのですが、アメリカでも1本3,500円くらいで売られていま す。ですからまた類似薬をどうするかという話になりますけれども、グリベックと同じ ようになる可能性もあります。幾ら局方品でもそんなに安い薬ではないだろうと思いま す。したがって、そういうことも含めて検討する必要があるだろうと思います。 ○新薬審査第一部長 ちょっと補足させていただきますが、確かに先生のおっしゃると おり、この品物については治験はほとんどやられていないという状況でございまして、 そういう状態で承認が取れたという格好でどんどん売られてしまうというのは大変まず いだろうと。何のために治験をやらなければいけないのかという部分に少し立ち返って 考えてみますと、やはり有効性に関するデータ、特に日本人の患者集団、あるいは日本 の医療の現場における成績というのがどれほどになるのかということをきちんとデータ としてまとめる必要があるだろうと。それからもちろん安全性については、欧米で知ら れているものと頻度、内容が違う部分がないのかということもきちんと集積する必要が あると思います。ただし、治験としてやろうとした場合、今回の適応のようにAPLの ファーストラインではなくてセカンドライン、サードライン、サルベージのような使い 方をするとなりますと、年間の対象患者数は全国で合わせても恐らく250人、いっぱい いっぱいでそれくらいというような見積もりをしてきていて、それを治験の中で更にや るとなりますと、ものすごく数が限られてきます。そういう点が現実問題としてござい まして、その規模のデータでどれくらい確たることが言えるのか、これはどうしても限 界がございます。  したがいまして、本来的に必要なデータをきちんととろうと思うのであれば、市販後 にかけてそのデータの集積を継続的に行うということもまた大事ではないかと私どもは 考えておりまして、本品については全例の市販後登録を行って調査をすることを承認条 件として付けることにいたしております。これはただ全例ということだけではなく、最 近幾つかありました薬剤の経験を基にして、症例の登録に協力していただけることが確 約できた施設にだけ品物を納品するという形で、症例の登録の義務付けをかなり厳格な 格好で進めていただくことにしております。その点に関してはやはり学会の方からも御 理解いただいて、市販後の全例調査に協力していただくことも必要と考えております。 その点、学会から御要望を頂いていることもございまして、行政側から学会に対して日 本新薬という会社が行う市販後調査に対して御協力いただくようにお願いしようという ことになっております。そうした形で、市販後にも活路も見いだしてやっていける方策 も一つの手ではないかと考えているところでございます。すべての事例について同じよ うなやり方がいいわけではございませんで、本品については患者さんが少ないとかいろ いろな事情を考慮いたしまして、こういうやり方をさせていただいたわけでございます。 ○池田部会長 よろしいですか。このように少ない症例ですね。恐らく250例はないと 思うのです。ですからそれで学会から依頼が来て承認された場合に、やはり学会の責任 としてこれくらいの症例数でこのような特徴的な疾患で市販後にきちんと調査ができな いようだと、恐らくほかの疾患は全くできないだろうと思いますので、その辺はやはり 行政と企業と学会が一体となってチェックするような格好で是非進めていただきたいと 思います。 ○守殿委員 これにちょっと関連してですが、今堀内先生が言われていたことと私はそ の反対の立場といいますか、疾患数が全体的には少ないけれども有効性が明らかな薬、 あるいは治療法があっても、それこそメーカーさんは最終的には営業的に採算が合わな い限りは対応してくれないのです。そういうことがありますので、この製剤は我々にと っては非常に有り難いケースと思っております。 ○池田部会長 よろしいですですか。この日本の大野先生がやられた14例は、恐らく癌 助成金か何かでやったスタディーですね。先生がおっしゃったように、そういうものを サポートしながらそういう頻度の低い疾患についてやはり有効な治療法が認められるよ うな方向になっていくといいと思います。 ○堀内部会長代理 私もそれを否定しているわけではございません。逆に言いますと、 この審査報告書の30ページに海外でいろいろな治験が走っていて、そのデータが今年の 後半から来年の始めに出てくると思いますけれども、こういうデータについては生かさ れるのですか。例えば適応拡大されるとか。それからこれまではファーストラインでは なくセカンドラインの薬ということですが、当然ファーストラインでもかなり有効だと 思うのですけれども、そういう方向も考えられるのでしょうか。 ○新薬審査第一部長 この辺りは池田先生がお詳しいところですが、ただ私の方から申 し上げられるのは、こうした海外の試験成績が出てきて、例えばネガティブな結果が出 てくることもあり得るわけでございます。それらについては要するに市販後の安全性定 期報告、それから研究報告、いろいろな形で行政側に報告することが義務付けられてご ざいまして、中の研究成果としてインパクトのある、特に一般的にいうとネガティブな 結果が出たものに対しては行政側がきちんと対応しなければいけないという仕組みにな ってございます。ポジティブな結果が出たものに関しては、それを利用した効能追加の 申請というのもまた企業において検討されることは十分あり得ると思いますが、何分今 回のこの申請は実は当初は企業に対して行政側から働き掛けをして、頼み込んで説得を して申請してもらったという経緯がございますので、この辺り企業がどのくらい発展的 にやれるかというのは、その都度のデータなり適応についての検討によって個々に判断 されることになるだろうと思っております。 ○池田部会長 そうですね。恐らくほかの癌腫、あるいはほかの疾患に対するこのアー セナイトの効果というのは、まだこれから評価される状況だと思います。まだそんなに 有効性が確立されているものはないと思うのです。恐らくこのAPLという疾患だけに これだけの成績が上がっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、 土屋先生。 ○土屋委員 素朴な疑問で2件ございますが、承認条件で「本剤の適正使用に関する情 報は、最大限に活用し、医療機関に対し必要な情報提供を迅速かつ確実に行うこと」と ございますが、こういう承認条件がなくて何か影響があるのか。要するに、どちらかと いうと余事記載というか、こんなことは一般則ではないのかなという気がするのですが、 まず承認条件にこういうものが当たるのかどうかということ。  それと同じようなことでございますが、添付文書(案)の「警告」の欄に「4.本剤使用 に当たっては、『禁忌』、『原則禁忌』、『慎重投与』、『重要な基本的注意』の項を 参照し、慎重に患者を選択すること。なお、本剤使用時には、添付文書を熟読すること」 と、こんなことを警告しているわけでございます。要するに、私は警告というものは本 当に警告であってほしくて、添付文書を読んでいないというのは公知の事実なのかもし れませんが、余りそういうことをこういう文書に書かない方がいいのではないかという 気がするのです。やはり、それが守られないのだったら別の手段で考えるべきであって、 個々の添付文書で対応すべきものなのかどうかについてちょっと疑問があるのですが。 ○池田部会長 いかがですか。 ○機構 まず承認条件に関するところですが、適正使用に関する情報というのは様々あ ると思うのですが、特にこの薬に関しては情報として、「迅速」という言葉が何日だと いう話になると思いますが、法律上位置付けられている15日とか30日とかというレベ ルではなくて、やはりレベルとしては治験のレベルで対応して、つまり情報が入った瞬 間にはもう行けるような方策を採るということを主眼としてこのように書かせていただ いているところです。 ○土屋委員 それは例えば全例市販後調査をやるとかそういう状況で、先ほど言ったよ うに販売網をかなり制限しながらやるという中で、そういうことは守られないのですか。 通常の中に入るのではないですか。 ○新薬審査第一部長 二次的、付随的にそういうことが期待されるということは当然だ と思います。ただ、これまでの経験で全例登録調査を義務付けていたものであっても、 ユーザー側から必ず全面的に協力していただけるとは限らなくて、登録漏れのケースと いうのも世の中に出ておりまして、会社がいろいろな角度から情報提供をし続けなけれ ばならないということをこちらからお願いをしているという意味合いが一つございま す。  それからもう一つは、確かに先生御指摘の点として具体性が欠けているというところ があって、実はこれを考えている理由の一つは薬物動態のデータがもう少しで出てくる だろうという話がございます。そうした日本人での薬物動態のデータがもう少したてば 出てくる見込みがありますので、そうしたものはできるだけ速やかに現場に提供して、 投与計画の考慮に役立てていただきたいということがございます。この条件を盾にして、 そうしたものについて一つ一つ私どもが企業に対して提供を迫るということを意図して いるものでございます。その辺りの中身、心を御理解いただけますと、この辺りのニュ アンスは分かっていただけるのかなと思います。  それから添付文書の「警告」欄の熟読吟味、実はこれもちょっと歴史的経緯がござい まして、抗癌剤の重篤な副作用に関して再三の警告をしているにもかかわらず、副作用 による死亡の報告が過去相次いだことがございました。その際にこんなことを書くのは 余りにもどうかという意見もございましたが、読んでいないものは読めと書くしかない というお話があって書いた経緯が実はございます。それがいわゆる抗癌剤の化学療法剤、 細胞毒性が強いようなお薬の場合、そうした記載をしている経緯がございます。今回そ れに倣ったというところがございますが、では本品についてそのような必要性があるの かどうかということを考えるべきという御指摘であれば、確かに本品についてよく検討 する必要がありますが、これは物がやはり毒でございます。抗癌剤は一般的にはみんな 毒性が非常に高うございますが、この品物もいわゆる亜ヒ酸の注射剤ということで、毒 性は極めて明瞭にございます。そうしたことを考えますと、やはりこの品物についても このような記載をせざるを得ないのかなと現時点では考えてございます。 ○土屋委員 理由とかそういうことは分かるのですが、情緒的な話を言われても、実は 私が情報処理をいろいろやる関係から言いますと、行政にとってはいろいろ指導がしや すいからこれを使って何とかということがあるのですが、例えば添付文書などを電子化 しようとしたときに、これはどうやってチェックをするのだというようなことになって 極めて困るのです。実は今の添付文書はほとんどが電子化したときに困るのです。ただ 本当に電子化するというのではなくて意味をきちんとやろうとすると、そこがすごく難 しいところなのです。せっかく電子化をして確実にチェックを入れようとかそういうこ とを考えても、それができないということでございます。  ですからチェックする側の論理ではそうなのですが、実際に使う側の論理として一体 そういうところはどうなのだと。そもそも読まない添付文書の警告のところに書いて、 読んでくれるというエビデンスはあるのかということも現実としてはあると思います し、もちろんそういうことについて書かなくてはいけないということが情けないことで はあって、そう書かざるを得ないという気持ちは十分分かりますし、我々も普段そうい うことは経験しております。しかしそれでもこう書いたときに、こういうものが裁判に なったときに裁判上どうなってくるのかと。添付文書を読んでいなかったら最高裁の判 例で、添付文書の記載事項について守らない合理的な理由があれば別だけれども、そう でない場合はそこに過失が推定できるということが平成8年にあるわけです。それだっ たらむしろそのことをきちんと書いておいてあげて、添付文書を読んでいないとあなた は過失が推定されますよということの方がずっと警告になるのであって、こういう患者 を選択するのには慎重にやりなさいとか熟読しなさいというのは、別に失礼だとは言い ませんが、どちらかというと御都合主義なのかなという気がしないでもないですが。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかいかがですか。 ○堀内部会長代理 一つ確認したいのですが、CRになった後再発した場合については 使用経験はないと添付文書に書かれているのですが、これは要するに60回投与までが認 められて、その後再発した場合には当然使っても構わないのですね。ただ使用経験がな いということだけであって、医師の責任において使う分には構わないと、保険上も問題 ないということですね。 ○新薬審査第一部長 保険上の概念についてはちょっと私どもの領域ではございません ので。ただ、これはもともと寛解導入のところで60回という使い方をして、その後に要 するに寛解後療法ということで地固めしていくような、そういうところへつながってい くシリーズでやっていく格好になっているそうでございまして、その部分はまた別途25 回とかという規定になっていて、続いていくことになっています。ですから、60回をち ょっとでも超えたらアウトということは全然ございません。 ○堀内部会長代理 その後は…。 ○新薬審査第一部長 実際にこれは寛解導入終了から3〜6週間後に寛解後療法を始め て、5週間の間に1日1回計25回ということでかなり長期間やっていく格好でございま して、もしこの間に再発した場合はかなり悪性度が高いので、その後の治療はなかなか 困難だと一般的には言われているようでございます。ですから、先生がおっしゃるよう な再発したときにもう一回治療するチャンスがあるケースは極めてまれで、ラッキーな ケースということで、そうであるからこそまだエビデンスがほとんどないというような 状況でございます。心配があるとかないとかということについてなかなか保証はできま せんが、極めてまれなケースだと私どもは考えております。一応実際上使われる範囲は すべてカバーするようにできる限り書いたつもりでございます。 ○池田部会長 よろしいですか。1か月ぐらいである程度寛解に入るものもありますし、 2か月くらいずっと続けて寛解に入るものもあると。それを見て、寛解に入ってもし効 果があれば様子を見ながら持続して使うという格好になると思います。サルベージです ので、恐らくこれだけでキュアは望めないと思います。ですからやはり状況を見ながら 使うという格好になると思います。審議官、どうぞ。 ○審議官 どうもありがとうございます。土屋先生から大変重要な問題の御指摘を頂い たわけでございますけれども、担当部長の方から経緯も御説明申し上げました。患者さ んの最善の利益、安全などを大切に考えて私どもは何をしようかということになります と、やはり先生方、あるいはその他薬剤師の方々の意識に残り、日常の業務内容に反映 していただきたい。そのためには国民から医療の安全に対して大変厳しい注文がついて いる中で、ありとあらゆる手だてを採っていく必要があるだろうという現在の判断でご ざいます。例えば先生から見てダブっているとか、あるいは電子化から見てどうなのだ ろうかというお話もあったと思いますが、それはまた時代の進歩に応じて最適なものを 選ぶとしても、今の時点では私どもはこういったようなものも採っていかざるを得ない のではないかと考えている次第であります。またいろいろいい案がありましたら教えて いただければと思います。ありがとうございました。 ○池田部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。そのほかこの三酸化ヒ素、 APLについての治療ですけれども、いかがでしょうか。何かございますか。よろしい でしょうか。もし特になければこの部会では一応承認ということで、これは薬事分科会 に上程させていただきたいと思います。恐らくまた薬事分科会でもいろいろ議論がある かもしれませんけれども、そのようにさせていただきたいと思います。どうもありがと うございました。  それでは議題3に移りたいと思います。機構の方から説明をお願いします。 ○機構 議題3、資料3の医薬品塩酸バンコマイシン点滴静注用0.5gの製造承認事項 一部変更承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。本品 目に係る審査は医薬品医療機器審査センターにおいて開始されましたが、本審査報告書 につきましては、審査センターにおける照会・判断等についても機構の名称に統一し、 記載をさせていただいております。  塩酸バンコマイシンは米国イーライリリー社により開発されたグリコペプチド系抗生 物質であり、本邦においては1981年に散剤が承認され、点滴静注用製剤については1991 年に敗血症などの「MRSA感染症」を効能・効果として承認されております。海外に おきましては1958年に米国で承認されて以来、2004年6月現在世界105か国において 使用されております。  今回は「ペニシリン高度耐性の肺炎球菌による髄膜炎、敗血症、肺炎」の効能追加に ついて申請がなされました。本申請の専門委員には資料9の3ページにございますとお り、後藤委員ほか斧委員、加藤委員、前崎委員の3名を指名いたしました。なお、今回 申請されました効能・効果については、平成11年に希少疾病用医薬品に指定されており ます。  今回の申請に際しては薬理作用に関する資料として、ペニシリン耐性肺炎球菌(以下P RSPと略)に対する本剤の抗菌力について二つの試験が実施され、参考資料として18 報の文献が提出されております。これらの資料より本剤はPRSPに対し抗菌力を有す ると機構は判断いたしました。  また、吸収、分布、代謝、排泄に関する資料といたしましては、11報の文献が提出さ れ、これらにおいてMICを十分上回る量の本剤が病巣に移行すること、感染モデル動 物において本剤による治療効果が認められることを確認しております。  臨床成績に関する資料といたしましては、小児科領域及び内科領域の二つの一般臨床 試験、国内における適応外使用の情報を収集するためのレトロスペクティブな使用調査 が一つ、この二つが実施されております。また、文献報告として4報の文献が提出され ております。  臨床試験における有効性評価症例は6例と著しく少なかったものの、細菌学的検討が 可能であったいずれの症例においても菌が消失していること、安全性については既承認 の効能・効果における安全性と大きく異なる可能性が示唆されていないこと、また国内 外の学会のガイドライン等において、PRSPが起炎菌と疑われる敗血症、肺炎、化膿 性髄膜炎などの重症全身性感染症に対してはバンコマイシンが治療の選択肢として推奨 されていること、国内においても適応外使用としての使用実績があること、PK/PDか らもその有効性が示唆されること、以上より本剤はPRSPによる肺炎、化膿性髄膜炎、 敗血症に対し有効性を有すると機構は判断いたしました。  しかし、バンコマイシンについては世界的にその耐性菌が問題となってきており、そ の使用は必要最低限に抑えるべきであると考えております。成人の肺炎等についてはニ ューキノロン系抗菌薬やケトライド系抗菌薬など、有効性が期待できる既存薬が存在し ていることから、アレルギーなどの理由により他剤が使用できない場合や、他剤が無効 であった症例に対して本剤を使用すべきであると考えて、その旨を添付文書(案)の「効 能・効果に関連する使用上の注意」の項に記しております。敗血症、化膿性髄膜炎につ きましては、その重篤性から他剤による効果確認を行う時間的猶予がない場合も多いこ とが予測されますが、これらの疾患においては抗原検査やグラム染色の結果、抗菌薬服 用歴や生活歴、具体的に申しますと集団保育を受けている年少小児などでございますが、 こういった情報からPRSPが起炎菌であることが強く疑われる症例に限定して使用す べきであると考えており、承認後にこのような内容を情報提供することを申請者に指示 しております。  また、臨床試験として検討された症例が著しく少ないことから、承認されました後に は可能な限り全例を対象とした市販後調査を指示しており、現在その具体的な方法につ いて申請者と検討を繰り返しております。  以上のような審査の結果、機構は本剤にペニシリン耐性肺炎球菌による敗血症、化膿 性髄膜炎、肺炎を追加承認して差し支えないと判断いたしました。再審査期間について は審査報告書には6年と記載されておりますが、オーファンドラッグですので10年間と することが適切であると訂正いたします。薬事分科会では報告を予定しております。御 審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ペニシリン耐性の肺炎球菌に対して適応症は 一応敗血症、肺炎、化膿性髄膜炎ということで塩酸バンコマイシンを申請してきたわけ ですが、後藤先生何かございますか。 ○後藤委員 肺炎球菌に関しましては御承知のようにペニシリン耐性が非常に大きな問 題になっておりまして、恐らくこの薬剤の最初の申請のときは希少疾病用医薬品という ことで、申請があった当時はまだPRSPが非常に少なかったので確かに希少疾病とい うことだったと思うのですが、それからの数年間でPRSPは非常に増えまして、現在 我々が対象とする肺炎の患者さんの何10%というレベルでPRSPが見付かる時代に なっています。ですから、希少疾病というのは現時点では適切かどうかという問題があ ると思いますので、専門協議の中では今回適応となっております三つの疾患を肺炎、そ れから敗血症、髄膜炎と二つに分けました。肺炎の場合に関しましては軽症から重症ま でいろいろな疾患があるということで、今事務局からお話がありましたようにほかに治 療に使える薬剤があるということもありますので、これは使用の条件を厳しくしようと いうことがございます。それに対して敗血症、髄膜炎に関しては非常に重篤な疾患であ るということと、他の薬剤に替える時間的な余裕がないということで、これに関しては かなり早い時期から使うことも認めるということで、この二つを分けて承認の要件とし たところが今回のポイントだと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま後藤先生から現時点でのPRSP感 染症の現状と今後の使い方についてお話しいただいたのですが、先生方何か御意見ござ いますか。バンコマイシンも耐性になっているような菌はまだ出ていないのですか。 ○後藤委員 現在のところ黄色ぶどう球菌で一部バンコマイシン耐性が問題になってい ます。これに関しては日本の国内では問題になる状況にはなっておりませんし、肺炎球 菌に関しても同じ状況です。 ○池田部会長 そうですか。いかがでしょうか。どうぞ、神谷委員。 ○神谷委員 小児の投与の問題ですけれども、バンコマイシンそのものはやはり一番聴 覚障害と腎障害があることが一つ問題でありまして、ファーストチョイスとして使うと いうわけではないのですが、先ほど後藤先生が言われたようにやはりほかに薬があれば ほかのものを優先するという意味では、「小児等への投与」のところにもう少しそうい うような言葉は入らないかと思うのです。血中モニタリングをしなさいとありますが、 そんな簡単に血中モニタリングが全部の症例にやれるわけではないので、やはりそうい うことの注意をもう少しこの「小児等への投与」のところに書いていただいて、ファー ストチョイスとして選ぶのではなく、やはり耐性菌を中心にして使うということがはっ きりした方がいいのではないかと思います。 ○池田部会長 いかがですか、小児の点について。 ○機構 御指摘ありがとうございます。今先生から頂きました御指摘を踏まえまして、 書き方等について検討させていただきたいと存じます。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。どうぞ、守殿委員。 ○守殿委員 12ページのところ、それとMICのところに書いてあるのですが、要する にin vitroの本剤の殺菌力というのは4又は8MICよりも2MICの方が優れている という言葉があるのですけれども、in vivoでは濃度依存性であって、こういうin vitro の成績は関係ないという理解でいいのでしょうか。 ○池田部会長 どうぞ。 ○機構 事務局より御説明いたします。今の点についてほかのin vitroの試験等におい ては濃度依存性が認められているもの等もございまして、御指摘いただきました点がな ぜそのような結果になっているか現在不明でございます。しかしその点については、な ぜそのような結果になるかということについて今後も引き続き検討するように申請者の 方に指示しておりまして、申請者の方も引き続き検討を行う旨を回答しております。 ○守殿委員 他の株を使えばこういう結果が出ないこともあり得るということですね。 ○池田部会長 どうぞ。 ○三瀬委員 一つはこれはバンコマイシンがいわゆる殺菌的ではなくて、生菌的な作用 をすることと関係があるのではないかと私は思うのです。それから私は全体的にこの提 案に賛成です。もう御存じのとおりPRSPは非常に多くなってきていますし、困った ことにPRSPは例えばニューキノロン系とかほかの抗生物質にも耐性で効くものがな くなってきています。そういう意味ではバンコマイシンを入れることは非常にいいと思 いますけれども、ただバンコマイシン自身が生菌的であるためにすべてに効くというわ けではないという問題はあるかと思っています。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。PRSP肺炎の場 合も実際問題としてはほとんどこれを使うことになるのでしょうか。 ○後藤委員 実際問題としては、現在我々がPRSP肺炎の治療に使う薬剤で非常に難 渋していることはございません。ですから基本的にはPRSP肺炎に関しては、現在我 々が使える薬剤で十分対応できると思います。 ○池田部会長 対応できるのですか。そのほかいかがですか。これは適応の拡大という ことですので、恐らく使い方の問題に一番のポイントが絞られるかと思います。この添 付文書にそういう点がきちんと記載されているかどうかということになると思います が、よろしいですか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」の3の2)のとこ ろで、「原則として他の抗菌薬及び本剤に対する感受性を確認すること」となっていま す。現在のバンコマイシンは1週間に1回検査するということになっていると思うので すが、ここは変更になった点だろうと思います。以前の記載がよく分からないので、ど のように変更になったか分かりませんが、そうとらえてよろしいのでしょうか。それと も「原則として」というのは、それが少し緩くなったということでしょうか。 ○池田部会長 感受性の検査について分かりますか。どうぞ。 ○機構 この項について字面ですとか、1)や3)等をいじっておりました関係で下線が 全部引かれておりますが、内容的には同じような内容が現行も記載されております。 ○池田部会長 よろしいですか。いかがでしょうか。特にございませんか。もし特に御 意見がございませんでしたら、これも承認を可といたしまして薬事分科会に報告とさせ ていただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは審議事項3題終了いたしましたので、続きまして報告事項に移りたいと思い ます。総合機構及び事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○機構 それでは報告事項の議題1、医薬品注射用マキシピーム0.5g、同1gの輸入 承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料4と審査報告書部分は後日別送 いたしました資料番号なしの「資料4の審査報告書の差し替え」というものになります。  資料4の頭紙を御覧ください。本剤については注射用セファロスポリン系抗生物質で ありまして、本邦では平成4年3月に既承認部分の効能・効果について輸入承認の申請 が行われ、平成7年6月に承認されております。今回の申請については平成11年2月1 日の厚生省医薬安全局審査管理課長ほかの通知、「適応外使用に係る医療用医薬品の取 扱いについて」に基づき、国内での臨床試験を新たに実施することなく申請されたもの でございます。今回の申請は発熱性好中球減少症の効能・効果を追加するものでござい ます。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、安全性、有効性上特段の問題はなく、 これらの効能・効果を承認して差し支えないと判断したものでございます。また、新た に再審査期間を附帯する必要はないものと考えております。 ○事務局 次に報告事項の議題2、エムトリシタビンの希少疾病用医薬品の指定につい て事務局の方から御説明させていただきます。資料5でございます。2枚めくっていた だきまして「平成16年8月10日」という日付の入ったページでございますけれども、 「希少疾病用医薬品としての指定の可否に関する審査報告書」に沿って説明をさせてい ただきます。  名称はエムトリシタビン、HIV-1感染症のお薬でございまして、申請者は日本たばこ 産業株式会社でございます。審査結果でございますけれども、1の対象患者数について は、平成16年3月末現在のHIV感染者及びエイズ患者の合計数としては8,889例とい うことでございますので、希少疾病用医薬品の指定条件の5万人以下を満たしておりま す。  2の医療上の必要性でございますが、現在HIV感染症の治療はここに書いてござい ます作用機序、副作用の異なるものを組み合わせで治療効果を向上させようとする併用 療法が主流となっております。その次のパラグラフでございますけれども、我が国にお いても抗HIV感染症薬として核酸系逆転写酵素阻害剤8種類、非核酸系逆転写酵素阻 害剤3種類、プロテアーゼ阻害剤7種類が上市されておりますけれども、服薬負担の増 大に伴うアドヒアランスの低下、あるいは耐性ウイルスの発現等いろいろな問題がある ということで、医療現場においては更なる選択肢が求められている現状でございます。 本剤の場合は薬物動態に及ぼす食事の影響が少ない、さらに併用薬剤との間に臨床的に 重大な薬物相互作用を起こす可能性が少ないことが示唆されておりまして、他の薬剤の 選択を制限する可能性が低いという特徴がございます。次のページでございますが、ま た抗HIV薬の投与期間は長期に及ぶということがございますけれども、本剤の場合は 1回1錠、1日1回の服用でございますので、アドヒアランスの向上に貢献するものと 考えられるということでございます。  3の開発の可能性でございますが、海外では八つの第II相、第III相試験が実施されて、 既存薬に対する非劣性あるいは優位性が既に確認されております。米国では2003年7月 に承認を受けておりますほか、EUでも19か国において販売されているという現状がご ざいます。安全性については、核酸系逆転写酵素阻害剤に特徴的な副作用が本剤におい ては認められていないということがございまして、副作用による投薬中止などが類薬に 比較し少ないということから、開発の可能性もあると考えられてございます。以上のよ うな結果から、本品目を希少疾病用医薬品として指定させていただきたいと考えており ます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。どうぞ、次をお願いします。 ○機構 続きまして報告事項の議題3、医療用医薬品の再審査結果について御報告いた します。資料6-1のシンメトレル錠50mg、シンメトレル錠100mg、シンメトレル細粒と、 資料6-2のメロペン原末、メロペン点滴用0.25g、メロペン点滴用0.5gほかの二つの 再審査報告書になります。資料6-1については、1枚めくっていただきまして、効能・ 効果はA型インフルエンザウイルス感染症についての再審査、資料6-2についてはまた 1枚めくっていただきますとここに書いてございますが、各種感染症に対する再審査と いうことでございます。こららの品目については市販後の使用成績調査、特別調査等の 成績に基づき申請が行われまして、それぞれ審査の結果、いずれの品目にも薬事法第14 条第2項各号の承認拒否事由のいずれにも該当しないということになりました。すなわ ち効能・効果、用法・用量等の承認事項については、変更の必要はないカテゴリー1と 判定したものでございます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま三つの報告事項を頂きましたが、何 か御質問ございますか。特にございませんか。よろしゅうございますでしょうか。それ では次に移りたいと思います。 ── 参考人着席 ── ○池田部会長 その他ですけれども、これは抗癌剤の事前評価ということで幾つか非常 に重要な問題がありますので、お願いしたいと思います。冒頭にも事務局の方から話が ありましたけれども、この議題に関しましては本日参考人として岩手医科大学の杉山先 生、国立がんセンターの中馬先生及び藤原先生、埼玉医科大学の西川先生、栃木県立が んセンターの藤井先生、静岡県立静岡がんセンターの朴先生にお越しいただいておりま す。先生方、お忙しいところどうもありがとうございました。それではまず事務局の方 からこの抗癌剤の事前評価についてお願いいたします。 ○事務局 抗癌剤の事前評価についてはまず資料7-1を御覧いただきたいと思います。 1のところに経緯がございますけれども、抗癌剤併用療法に関しましては平成16年5月 21日に開催させていただきました本部会において、既に七つの療法について報告書、事 前評価を行っていただきました。これら七つの療法に関する医薬品については、1品目 については現在のところ用法・用量拡大の承認申請がなされまして、残りの品目につい ても現在各メーカーにおいて承認申請の準備が行われているところでございます。今回 事前評価をしていただきますのは平成16年6月25日、それから平成16年7月23日に 開催されました抗癌剤併用療法に関する検討会において御了承いただいた八つの療法の 報告書でございます。資料7-1はそれらの療法について2のところに概要をまとめたも のでございます。それから資料7-2にエクセルの表がございますけれども、これは検討 候補品目のリストでございまして、一番右のカラムのところに「進行スケジュール(医薬 品第二部会)」ということで、「済」のところは前回御検討いただいたと。それから「8 月27日」と書いてあるところは今日御検討いただくものでございます。以上でございま す。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは早速領域ごとに参考人の先生方から 説明をお願いしたいと思いますけれども、まず最初に整形外科でよろしいですか。それ では中馬先生、お願いいたします。 ── 土屋委員退席 ── ○中馬参考人 国立がんセンターの中馬でございます。今までは骨肉腫に対してシスプ ラチンが認可されておりましたけれども、今回は悪性骨腫瘍全般に対するシスプラチン の適応拡大ということです。これに対してまず8ページを見ていただきたいのですが、 悪性骨腫瘍の疾患の特徴といいますと組織系が非常に多くて、それからレアキャンサー であるということです。国内で年間400〜500例発症していると考えられますが、4割は 骨肉腫、その他軟骨肉腫、悪性線維性組織球腫、小児癌であるユーイング肉腫、血液癌 を除きますとこの四つの疾患が多いということですが、骨肉腫に比べるとほかの疾患は 非常にまれということになります。世界的に見ましてもこの中でエビデンスを集めてく るというのは非常に難航しておりまして、最近になりまして悪性線維性組織球腫に関し てフェーズIIが50例程度報告されるのが2報出た状態でございます。今回は発症年齢が 骨肉腫とその他の悪性骨腫瘍で異なるということで、副作用のプロファイル、それから 有効性について主眼にして無作為の比較試験を行った骨肉腫4報、それから悪性線維性 組織球腫に対しての第II相試験2報を公知の裏付けデータになる文献として記載してお ります。  この中で毒性のプロファイルについて十分検討され得る論文として判断いたしており ますが、それを総括したところが10ページの「6.本剤の安全性に関する評価」でござ います。ここを読ませていただきますと、骨悪性線維性組織球腫は骨肉腫と比較して成 人、高齢者の症例も多く含まれるので、シスプラチンとドキソルビシンの併用時、8割 の患者でWHOグレード3、4の白血球減少が発生し、治療コンプライアンスも50%程 度に低下することが観察されております。また、シスプラチンとドキソルビシンの併用 療法を組み込んだ骨肉腫や骨悪性線維性組織球腫についての臨床研究で発生した死亡例 をまとめてみますと、これらの文献上骨肉腫を対象にしたEOIの二つの臨床研究で1 例の骨髄抑制による死亡、それからドイツのCOSS82では肺塞栓、それからドキソル ビシンによる心毒性が各1例。イタリアの臨床研究では5例のドキソルビシンの心筋障 害が報告されております。骨悪性線維性組織球腫の二つの報告では死亡例の報告なく治 療研究が行われておりますが、これらの研究の安全性はシスプラチンとドキソルビシン の併用療法に対する血液毒性、消化器症状、悪心嘔吐の対策、それから腎毒性庇護療法 が十分に行われた結果であると考えております。これらの報告と国内の治療の現状をか んがみて、年齢、患者、症状に合わせて投与量を調節し、十分に支持療法に熟知した医 師が行うのであれば安全に行えると判断いたしました。  9ページの「5.国内における本剤の使用状況について」でございますが、論文におい ては国内でも多施設の共同研究と第II相試験が骨肉腫について行われております。それ に関しての論文をそこに記載しております。さらに副作用に関してでございますが、ド キソルビシンとシスプラチンの併用療法に関しては、私どもの国立がんセンターで2002 〜2004年まで20症例の毒性プロファイルを調査いたしました。その中で40歳以下の若 年者の骨肉腫、若しくは骨悪性線維性組織球腫の患者において、骨髄抑制に関する毒性 プロファイルに差は認められませんでした。また、大阪大学整形外科で1997〜2000年に 四肢原発の骨肉腫に関して、ドキソルビシンとシスプラチン及びイホスファミドの交互 療法で術前、術後化学療法を行った25症例の報告でございますが、著効率73%、5年 生存率79.6%と極めて高い有効性を示しており、毒性に関しても死亡例の発生なく、骨 髄抑制は高いけれども十分に治療可能な療法であるということを確認しております。  以上のことにおいて総評といたしまして、骨肉腫及びその他の悪性骨腫瘍に対してド キソルビシンとシスプラチン併用、若しくはシスプラチンの単剤用法が有用性を持ち、 かつ国内で十分に熟知した医師であれば毒性を防止しながら治療できると判断いたしま した。以上でございます。 ○池田部会長 中馬先生、どうもありがとうございました。ただいま中馬先生から悪性 骨腫瘍についてのシスプラチン、あるいはシスプラチンとドキソルビシンの併用療法に ついてのエビデンス、評価についてお話を伺ったわけですが、先生方何か御意見ござい ますでしょうか。折笠先生、何かございますか。よろしいですか。どうでしょうか、何 か特段…。非常に詳細に検討していただいたというふうにお聞きしましたけれども、よ ろしいですか。特に御意見がないようですので、中馬先生、ありがとうございました。  それでは次に婦人科領域の品目についてお願いしたいと思いますが、よろしくお願い いたします。 ○杉山参考人 岩手医大の杉山と言います。よろしくお願いいたします。婦人科領域か ら子宮体癌に対するシスプラチンとドキソルビシンの併用療法、いわゆるAP療法を申 請させていただきたいと思います。使用薬剤はシスプラチンとドキソルビシンで、共に 子宮体癌に適応はありません。それからシスプラチンの用法・用量は現在他癌腫で用い られている用法・用量でいいのですが、ドキソルビシンの場合は用法・用量の変更も必 要となります。  本題に入ります前に子宮体癌のことについて若干お話しさせていただきますと、子宮 体癌というのは婦人科生殖器癌の中で欧米では最も多い癌です。しかし日本では子宮頸 癌の方が体癌より多いのですが、最近欧米の食生活が日本に入ってきたことと女性の高 齢化が進んでいるので、子宮体癌が非常な勢いで日本でも増えております。そういった 背景の中で、現在日本で子宮体癌に保険適用のある薬剤で有効とされているものはシク ロフォスファミドの一つだけです。要するに、欧米で標準的治療として使われているシ スプラチンとドキソルビシンは、日本では保険診療上は使えないということになってい ます。  そういった背景の中で、公知ということで無作為論文をここに四つ挙げています。先 ほどシクロフォスファミドが適用があると言いましたけれども、このシクロフォスファ ミドを併用する意義がないという論文が1です。それから2、3、4は子宮体癌に最も 有効とされる薬剤がドキソルビシンですが、それにシスプラチンを併用する意義がある かということを比較したRCT論文です。その簡単な内容を簡単に述べさせていただき ますが、2ページの「(5)総評」のところを御覧いただければと思います。今言いました ように、ドキソルビシン60mgというのが欧米での標準的投与量で、この投与量でフェー ズIIスタディーで非常に高い奏効が示されております。また、シスプラチンも同様に高 い奏効が確認されております。そういった背景でこれらの2剤を併用したAP療法での フェーズIIスタディーが行われまして、共に奏効率が一つの試験では60%、もう一つで は82%、あるいは化学療法、ナイーブな症例では92%ということが報告されております。  そういった背景の下に今度はドキソルビシン単剤とこのAP療法の比較試験が第III相 で行われたわけです。これらの比較試験の詳細は4〜7ページに記載してありますが、 簡単に言いますと2の試験はアメリカのGOGでの試験ですが、これではAP療法、内 容はドキソルビシン60mgとシスプラチン50mgを使った併用療法がドキソルビシン単剤 より有用であったと。生存期間等に対しても有用であったということが述べられており ますし、毒性も許容できるものであったと。その後ヨーロッパで行われた3の試験でも 全くアメリカと同様な結果が示されています。そういうことで次に行われた4の試験で すが、これは2003年にASCOのプレナリーで発表された試験で、体癌の術後補助療法 としての比較試験です。アメリカでは体癌の術後療法としては全腹部照射が標準的に行 われます。日本ではなかなか行われない理由は、日本人で全腹部に照射すると腸管毒性 が非常にひどくなりまして、癌をコントロールできたとしても非常にQOLを損なう。 毒性のために長期入院を強いられることがしばしば経験されるので、日本では全腹部照 射より化学療法が主として行われているわけです。アメリカでもそういった晩期腸管毒 性が起こっているのだろうと推察され、術後補助療法として全腹部照射とAP療法の比 較試験として行われたと考えられます。その結果、AP療法の方が無再発生存期間、全 生存期間において優れていたが、血液・神経毒性においてはAP療法の方が多く、治療 死がやや多いという結果が示されております。  それから用法・用量に関してですが、このドキソルビシン60mg、シスプラチン50mg というAP療法の主な毒性は悪心嘔吐、脱毛、白血球減少です。国内においては保険診 療上査定されないという理由で、保険で承認されているシクロフォスファミドを使った 併用療法として行われてきた経緯があるのですが、投与量は違いますけれども、こうい ったCAP療法の経験からしても、化学療法を熟知した医師が行えばこの投与量でのA P療法の安全性は十分に担保できると考えられます。  そして9ページの方で、時間の関係もありますので、「5.国内における本剤の使用状 況について」というところですが、これは実際日本での産婦人科の中でどういった診療 がなされているかということを2003年第37回治療年報とその前の第35回治療年報で見 てみますと、やはり多くの施設で化学療法が術後治療として選択されています。そして 共にやはり放射線療法と比べてCAP療法などの化学療法の方がやや生存がいいという 傾向が示されています。それから学会、研究会レベルでも化学療法と放射線のどちらが いいかという検討が行われてきました。日本での検討ですので、どうしてもランダマイ ズといきませんで、ヒストリカルコントロールとの比較ですが、やはり化学療法は放射 線と比べて効果の点では同等以上であるということが認識されております。  それから「6.本剤の安全性に関する評価」ですが、日本でAP療法でのデータはあり ませんので、これを本邦でのCAP療法からの毒性、それから欧米でのフェーズIIIスタ ディーでのアームからの間接的な検討で考えてみますと、今回申請させていただきまし たAP療法というのは安全性が十分担保できると考えられました。  最後の「7.本剤の投与量の妥当性について」というところで、このAP療法の投与量 は現在欧米では第II相試験の結果を基に第III相試験でもこの投与量が用いられている 点、欧米でもこれ以外の投与量の検討はされていないこと、これ以外の投与量の妥当性 は示されていないこと、現在でも欧米ではこの用法・用量が標準的ということで、本邦 においてもこのAP療法を標準的投与量として認めるべきであろうと考えられます。実 際このドキソルビシン60mgというのは現行の承認の用法・用量を外れるものですが、先 ほど言いましたようにこれまでに報告された体癌の臨床成績の結果から、また他の固形 癌を見てみますと乳癌の投与量でも60mgが標準的投与量として投与されていることか らも、体癌においても60mgが妥当であると考えられると思います。以上でこの用法・用 量を申請させていただきました。 ○池田部会長 ありがとうございました。何か御意見頂けますでしょうか。このAP療 法は3週間ごとで何回くらいやられるのですか。 ○杉山参考人 術後の場合、通常5〜6コースというのが標準的に行われています。 ○池田部会長 ドキソルビシン60mgで3週間ごとで6コースというとかなりサイトペ ニアが来るように思うのですけれども、婦人科の先生方は十分なサイトペニアに対する 対策というのは大丈夫ですか。 ○杉山参考人 大丈夫だと私は思いますけれども、多分最初は施設をある程度限定して やった方が…。 ○池田部会長 かなり来ると思いますね。 ○杉山参考人 かなり来ると思います。 ○池田部会長 今までの40mgと60mgでは大分違いますので。 ○杉山参考人 日本ではCAP療法の中で35mg、40mgが使われてきました。 ○池田部会長 60mg3週間ごとで数回というと相当2、3回目にはサイトペニアが来る と思うのです。そのほかよろしいですか。非常に標準的な治療としてエスタブリッシュ されているということですので、これについては事前評価で十分に検討していただいた ということでよろしいでしょうか。先生、どうもありがとうございました。それでは血 液の品目についてお願いいたします。 ○藤原参考人 血液の担当は愛知県がんセンターの小椋先生と癌研病院の畠先生です が、御都合がどうしてもつかないということで、私がワーキンググループの方から出て まいりまして、御説明させていただきます。資料7-5と7-6でございます。まず資料7-5 でございますけれども、再発難治性悪性リンパ腫に対するシスプラチンの適応外使用を 何とかしていただきたいというための報告書でございます。1ページに書いてあります ように、現行では悪性リンパ腫に対するシスプラチンの適応がございませんで、そうい う中でワーキンググループでいろいろ調べてまいりました。ページをめくっていただき ますと、先ほどから各先生方がおっしゃっていらっしゃいますように、公知の背景にな る公表論文、教科書、総説、メタ・アナリシス、それから診療ガイドライン等がござい まして、ここに掲げてございますように各種多数ございます。それに関しては主なもの の臨床試験成績が4〜7ページにございまして、血液の領域で一番有名なのが、これは 池田先生の方がお詳しいとは思いますけれども、6ページにThe New England Journal of Medicineに1995年に出ましたParmaスタディーというものでございまして、これは再 発aggressive non-Hodgkin's lymphomaに対してDHAP療法、これはシスプラチンを含む サルベージセラピーとしては現行で一番広く使われているレジメンの一つでございま す。このDHAP療法をやりまして、その後にトランスプランテーションをやるか、標準的 な化学療法をやるかというランダム化比較試験でございます。こういう非常に大規模な 比較試験の中でDHAPというシスプラチンを含むサルベージレジメンが使われていると いうことが、このDHAPというシスプラチンを含んだサルベージのセッティングの公知の レベルを示すものとして、血液内科の先生方は非常に重視されている論文でございます。  9ページを御覧いただきますと、そのほかにも再発の悪性リンパ腫に対しては各種レ ジメンがございます。上からEPOCH、DHAP、ESHAPなど種々ございますけれども、この中 でシスプラチンを主に使っているものはDHAP、ESHAP。それから国内では愛知県がんセ ンターの小椋先生が中心になりましたスタディーとしてCHASEというのも、シスプラチ ンを含んだ治療として行われているものと聞いております。10ページをめくっていただ きますと、実際に適応外使用としてこれまでも国内で非常に広く使われておりまして、 既に血液内科の先生方はこの領域に十分精通しているものと考えております。  11ページの安全性に関する評価においてもその辺を述べさせていただきまして、シス プラチンの投与が100mg/m2でございますので、腎毒性についてはいろいろな注意が必 要でしょうということを考えております。  用法・用量の妥当性に関しましては、既承認の種々の癌腫の用法の中で100mg/m2/ 日というのはかなり使われておりますし、血液内科の先生方のぺーシャントのマネジメ ントに関しては非常に優れたものがございますので、安全性は大丈夫なものと考えてお ります。資料7-5については以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。何か御意見頂けますでしょうか。血液領域で はDHAP、ESHAPは実際にほとんど毎日のように使っているような状況だと思いますけれ ども、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。  資料7-6のVADについてお願いいたします。 ○藤原参考人 資料7-6のドキソルビシン、multiple myelomaに対するVADですけれ ども、これもやはり血液内科の先生方は非常に広く使っていらっしゃるレジメンでござ います。実際には1ページに書いてありますように、ドキソルビシン、ビンクリスチン、 デキサメサゾンに関して悪性リンパ腫の効能はあるのですけれども、多発性骨髄腫に対 する適応はございませんので、今回のこの報告書の記載となった次第です。  先ほどと同じように1ページから公知の取扱いの背景になる論文が出ておりまして、 教科書、総説に関してはいい総説が見付からなかったのでネグってありますけれども、 診療ガイドラインにもしっかり記載がございます。臨床成績の中では2ページの5)の Annals of Oncologyの2003年に出ました海外のぺーパー、これがVADレジメンに関 して一番詳細に有効性、安全性に関する情報が出ているものでございまして、このほか にも種々の有効性、安全性に関するデータがございます。5ページに行っていただきま すと、国内でもやはりもう既に多数の論文が出ておりまして、国内での適応外使用とし ての使用経験も十分に積まれておりまして、汎用されているレジメンであるということ が分かります。したがって、最終的に6ページの中段辺りに書いてありますけれども、 ドキソルビシン、ビンクリスチンの使用に習熟している医師のような化学療法に習熟し ている医師による慎重な使用、又はその医師の指導の下で実施することが重要であって、 ビンクリスチンに関しては先般医療過誤のような話もございましたので、そういうもの に注意していただければ十分安全に使えるものでありましょうという報告書になってお ります。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。先生方、御意見ございますでしょうか。これ も実際にはもう日常的に骨髄腫の患者さんには使われている療法だと思います。よろし いでしょうか。藤原先生、どうもありがとうございました。  それでは資料7-7になります。頭頸部癌について、よろしくお願いいたします。 ○藤井参考人 栃木県立がんセンターの藤井と申します。頭頸部癌に対するフルオロウ ラシル(5-FU)の持続静注療法について申請させていただきます。効能・効果ですが、 単剤又は他の抗腫瘍剤、放射線と併用して使用し、最大成人1,000mg/m2/日を4〜5日 間持続静注ということで、用量の増量ということでお願いしたいと思います。  頭頸部癌ですけれども、簡単に申しますとその領域に存在する嚥下、発声という機能 がありまして、標準的な方法は手術ですが、手術をしてしまってはその機能が損なわれ てしまいますし、美容面の問題もあるということで、それを維持する形で化学療法が行 われております。  それでこの療法ですが、既に20数年以上前からこの用法で行われております。持続静 注療法の有効性に関しては短時間の静注療法との比較試験がありまして、持続静注の方 がよかったということで、いまだに持続静注が標準的に使われています。この化学療法 の使われ方ですが、初回治療としてはシスプラチンとの併用、それからシスプラチンと の併用と放射線との併用、化学療法併用放射線治療ということですけれども、これらに おきまして使用されておりますし、それから転移再発においてはやはりシスプラチンと の併用、それから5-FU単剤の使用というものが行われております。これらにおいては いろいろな論文の報告がありまして、もうエビデンスのレベルもかなり高いものとなっ ており、公知の扱いとなっております。ガイドラインにも出ておりますけれども、頭頸 部領域にはいろいろな部位がありますが、それらに対してこの用法・用量で治療が行わ れております。  日本の現状ですけれども、12ページのところに国内の使用状況を記載させていただい ております。おおよそ5-FU600〜800mgの4〜5日間という方法が行われております。 現在の承認用法ですが、13ページに記載させていただきましたように、これは一例です が、今回申請させていただく用量を標準量といたしますと、現在の用法・用量では3分 の1から2分の1しか認められていないということになります。増量に伴いまして副作 用が増強されてくる可能性が予測されますが、以前から使われていて慣れてきつつある ということと、それから最近の補助療法の普及等に伴いまして、ある程度安全に行える 状況になっているのではないかと考えております。ただし、やはり副作用の扱いに熟知 した医師が滞りなく行える施設において行うべきであろうと考えております。  以上をまとめますと、効果については海外の長年にわたるエビデンスがありますし、 安全性に関しても癌療法に精通した医師、それから医療チームで行える状況があれば管 理可能と考えております。今回の用法・用量は妥当なものであると考えておりまして、 御審議のほどよろしくお願いしたいと思います。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。何か御質問ございますか。どうぞ、折笠先生。 ○折笠委員 先ほど標準的な治療ということでガイドラインに載っているという話のと きにPDQが出ていたものもあったのですが、これらは調べたけれども載っていないと いうことですか。例えばこのフルオロウラシルの治療に関してはPDQの中にはまだ書 かれていないということでしょうか。それとも調べられていないということでしょうか。 ○藤井参考人 このガイドラインということですか。 ○折笠委員 癌治療のガイドラインとしてはPDQが一番よく参照されるのですが、そ こにはこの治療法は載っていないということですか。 ○藤井参考人 頭頸部癌のPDQに関しては部位別の記載になっており、化学療法につ いては薬剤名はあっても量の記載が明確でありませんでした。 ○折笠委員 余り書かれていないと。 ○藤井参考人 はい。NCCNのガイドラインにかなり詳しく載っておりまして、まと めて、頭頸部癌としての治療の内容が記載されており、部位別にもなっていて、それで 下咽頭癌、中咽頭癌というふうに分けてここで記載させていただいております。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかいかがですか。よろしいでしょうか。ありが とうございました。  それでは引き続き脳外科領域の品目についてお願いします。資料7-8と7-9ですね。 ○西川参考人 資料7-8が塩酸プロカルバジン、資料7-9が硫酸ビンクリスチン、二つ 報告書を用意させていただきましたが、同時に説明させていただきます。予定効能・効 果は同じでありまして、悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫、この二つの 疾患が対象でございます。そもそもこれらの疾患は余りなじみがないかと思いますが、 本文の中にデータを載せておきました。「4.本療法の位置付けについて」のところに具 体的にどのくらいの頻度がある疾患かというのを簡単に述べさせていただきましたが、 脳腫瘍の中で15%強ですので、10万人当たり1.6人ということは日本の人口から考えま すと年間の発生率は2,000人程度の患者さんが対象になると思います。  この疾患に対して、実際PCVと申しますプロカルバジンとCCNUとビンクリスチ ンの3剤の併用療法が、有効性のエビデンスが非常に高い治療法として欧米では広く用 いられています。したがって、この両剤を同時に説明ということですが、特に3ページ の「(5)総評」の「1)有効性」の最初に書かせていただいたカナダのグループの乏突起膠 腫系の腫瘍を対象にした臨床試験のデータが非常に有名でして、このPCV療法の有効 率が75%と。神経膠腫の世界で化学療法の有効性が75%というのは私どもにとっては驚 異的な数字が出まして、これは非常に有名な論文でございます。この優れた治療を是非 我が国でも公に認めて使えるようにしたいというのがこの報告書の骨子でございます。  もう一つ対象として挙げさせていただきました悪性星細胞腫に関しては、その総評の ページの一番下のところから次のページに行きまして、カリフォルニアのグループがP CV療法は昔から積極的に推進しておりまして、特にグレードIIIの退形成性星細胞腫と 呼ばれる群においては、従来の標準治療の欧米のBCNU群の生存期間中央値82週に対 して、PCVを行ったところ157週という非常に優れた成績が報告されております。幾 つか論文を紹介させていただきましたが、論調はすべて同じでありまして、それらの報 告を受けまして主要な教科書、総説、それから先ほど出ましたPDQも含めましてガイ ドラインにはすべて、乏突起膠腫系の腫瘍に関してはPCVがまず第一に挙げられてい ます。それから悪性星細胞腫系の神経膠腫に対しては欧米ですからBCNUですが、並 んでPCVもそれと同等、あるいは場合によってはそれより優れている治療として位置 付けられて挙げられています。我が国においてはPCVを行うことはできませんし、C CNUは発売されておりませんので、それに対応する薬剤のACNU、これは神経膠腫 に適応が認められている薬ですので、これを組み合わせていわばPAVとして行うこと になるかと思います。PAVの報告に関しては我が国では熊本大学から70数例の報告が 上がっておりまして、その要約を我が国における現状というところにまとめさせていた だきましたが、問題となります安全性ですけれども、主要な有害事象は骨髄抑制、それ からプロカルバジンによる皮疹と報告されておりまして、いずれも対応が可能な、非常 に頻度が高く重症だというわけではない、通常耐えられる範囲の副作用ということが既 に知られております。  最後に用量ですが、このPAVあるいは欧米ですとPCV療法において用いられる薬 の用量は、それぞれの薬剤が従来我が国で認められている用法・用量の範囲内でござい ますので、その点から見ても問題ないかと考えました。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。プ ロカルバジンとビンクリスチン、特に御意見ございませんか。非常に妥当なものだろう と思います。ありがとうございました。それでは次に消化器領域の品目についてお願い いたします。 ○朴参考人 静岡がんセンターの朴と申します。よろしくお願いいたします。今回は結 腸・直腸癌に対するフルオロウラシルとアイソボリンの用法・用量の拡大を申請いたし ました。まず1ページの一番下を見ていただきますと、現在日本で認められている5- FU、アイソボリンの投与方法は、5-FU急速静注にアイソボリンの点滴を併用するや り方でありますが、最近大腸癌の化学療法は世界的に日進月歩しておりまして、上のde Gramont療法、AIO療法、sLVFU2療法という持続静注と急速静注を併用するような形 の方法が世界的には標準治療となりつつあります。  めくっていただきまして、まず5-FUとロイコボリンの使い方ですけれども、急速静 注と持続静注の比較試験が行われておりましたし、メタ・アナリシスのところを見てい ただきますと、急速静注と持続静注を比べますと生存期間においても持続静注の方がわ ずかですが長い。また、血液毒性に関しては急速静注よりも持続静注の方が安全性が高 いという結果が得られておりまして、教科書的にも持続静注の5-FUの方が有効性に優 れており、忍容性が高いであろうと記載されております。NCCNのガイドラインとP DQをここに引用させていただきましたが、ガイドラインでは現在結腸癌、直腸癌の化 学療法として塩酸イリノテカンとオキサリプラチンの併用がもう既に標準治療となって おりますので、どちらのガイドラインにも5-FU/ロイコボリンの持続静注をベースに したオキサリプラチンとCPT-11の併用療法が標準的治療であると記載されておりま す。  次のページに行きまして、まずは5-FU/アイソボリンと塩酸イリノテカンの併用に 関してのことですが、急速静注、持続静注の直接比較は全くありませんが、表6を見て いただきますと分かりますように、急速静注のロイコボリン、イリノテカンよりは持続 静注のオキサリプラチンを併用したものの方が延命効果が示されております。続きまし て持続静注をベースにしたイリノテカンとオキサリプラチンを比較したものでは、生存 期間は同等であったということがあります。間接的ではありますけれども、急速静注を ベースにしたイリノテカンの併用療法よりは持続静注をベースにしたイリノテカンの併 用療法の方が延命効果が高いであろうと推測されます。  次のページに行きまして、現在オキサリプラチンは承認を申請中の薬でありますけれ ども、既に世界標準として使われておりまして、世界標準として使われるベースになり ました試験を表7に記載しております。オキサリプラチンが日本で承認された際にも、 5-FU/ロイコボリンと併用したいと思ったときに持続静注を使えるようにしたいとい うのがこの位置付けについてのコメントであります。  それから安全性についてですが、急速静注の5-FU/アイソボリンしか現在日本で認 められていないことを受けまして、イリノテカンとの併用に関しては急速静注プラスC PT-11を我々は日常診療で行わざるを得ないのですが、欧米での試験において急速静 注の5-FU/ロイコボリンとイリノテカンの併用療法の60日以内の早期死亡率が高い ということが進行切除不能大腸癌においても、もう一つは術後補助化学療法においても 問題となっておりまして、持続静注の方が安全性が高いということが言われております。 現在我が国においては持続静注の5-FU/アイソボリンというものは臨床診療では余り 行っておりませんけれども、国立がんセンターを中心としまして今フェーズIが終わり まして、欧米と全く同じ量のドーズで用量制限毒性が全く認められませんで、今フェー ズII段階に入っております。今後医師主導の臨床試験などを中心にして世界の標準治療 を我が国にもどんどん広めていく必要があると思いますが、今現在行っているものより も安全性が高く、有効性が高いという持続静注の5-FU/アイソボリンの適応拡大につ いて御討議をお願いしたいと思います。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいまの事前評価について何か御意見ござ いますか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 一つ確認したいのですが、持続静注については日本ではまだこれか らと考えてよろしいのですか。今そのように伺ったのですが。 ○朴参考人 一部の施設ではやっているのですけれども、余り広くは行われておりませ ん。 ○堀内部会長代理 これが承認されるともっと持続静注が増えると考えてよろしいので すね。 ○朴参考人 先ほども申しましたように、オキサリプラチンが多分承認されるだろうと いう状況におきまして、世界の標準治療、一番いいと言われている治療が今後どんどん 広まっていくだろうと思います。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。事前評価についてここで承認されれば、今後は関 係企業から承認申請をされて、またここで扱うという格好になると思うのです。ですか ら、今伺った幾つかの領域でもいろいろなカテゴリーがありまして、もう日本で実際に 非常に多くの経験があるものと、それから今のように一部の施設でその経験があるもの、 少し段階の違うものが混ざっていると思います。ただ、エビデンスという評価に関して は恐らく海外のエビデンスも含めて非常に詳しくレビューしていただいたのではないか と思います。いかがですか、何か御意見ございますか。第1回のときも同じような議論 が少し出たかと思いますけれども、いずれ承認申請が上がってきたときにはまたここで そのデータについては評価させていただくことになると思いますけれども、よろしいで すか。どうも先生方お忙しいところをありがとうございました。それではこの事前評価 についてはこの部会で承認していただいたということにさせていただきます。ただいま 私が申し上げましたように、この関係する企業から今後承認申請がされて、またこの部 会で取り扱うことになりますので、その際にはまたよろしくお願いしたいと思います。  今日の議題は以上でございます。こちらの不手際で少し時間が長くなりましたけれど も、事務局から何かございますでしょうか。 ○審査管理課長 次回の日程でございますけれども、恐縮でございますが、事前調整の 結果10月8日金曜日午後2時からということにさせていただいておりますので、よろし くお願いいたします。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。それでは本日はこれで終了させていただきたいと 思います。先生方、長時間ありがとうございました。参考人の先生方もありがとうござ いました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -