04/08/26 科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会 第21回議事録             第21回厚生科学審議会科学技術部会        ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会                    議事録            日時  平成16年8月26日(木)                15:00〜17:10            場所  経済産業省別館827号会議室 〇事務局  第21回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専 門委員会を開催いたします。  お手元の資料の確認をさせていただきます。本日の資料は3点でございます。  資料1−1 ヒト幹細胞を用いた臨床研究における死亡胎児利用の在り方について    1−2 インフォームド・コンセントの実施方法について    1−3 死亡胎児の利用についてのヒアリング資料集  参考資料という形で今までのものを添付いたしております。  これらの資料を御確認いただきまして不備等がございましたら、途中でも結構でござ いますので、事務局までお申しつけください。  では議事進行を委員長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。 〇中畑委員長  本日の議題に入ります。前回に引き続きまして死亡胎児の臨床研究利用についての議 論をしていきたいと思います。まず事務局より資料の説明をお願いいたします。 〇事務局  お手元の資料について御説明いたします。今回御用意させていただきました資料は、 20回の時の資料と基本的には同じような形になっております。資料1−1につきまして は、最初だけ御議論をいただきましたので、そこは前回の議論を反映させた形で少し手 直しを入れてございます。それが資料1−2と1−3でございます。  資料1−2につきましては、流れのところの御議論いただきましたが、インフォーム ド・コンセントの文面のたたき台がついてございますので、参考資料として今回もお付 けしております。では、資料1−1につきまして、前回も事務局から説明をさせていた だいておりますので簡単に説明いたします。  特に死亡胎児の利用の在り方について、ということについてまとめた資料でございま す。大きくそれぞれの大事な要件のところをまとめてございます。  最初に(1)死亡胎児利用の要件、ということで(1)基本的要件、(2)手続き面での要 件、等々が書いてございます。前回は1番のところに基本理念という形で書かせていた だいておりまして、そのような形で御議論をいただいたわけですが、前回の御議論を踏 まえて一部修正をしております。(2)は手続き面での要件ということです。これは先生 方にたたいていただくための案として出させていただいております。(3)は施設面での 要件です。  (2)の(1)はa)b)c)d)e)f)g)と書いてございますが、これはいろいろな選択肢がある ということで、それをすべて並べてあるような書き方をしてございます。(1)がインフ ォームド・コンセントを受ける者。(2)はインフォームド・コンセントを実施する者。 (3)は同意手続の際の手順。(4)はインフォームド・コンセントの内容。(5)は倫理委員 会の承認。こういう順番で書いてございます。  途中にES細胞の指針の部分がそのまま(抄)として入っているところがございま す。こちらにつきましては、以前、ES細胞の指針となるべく整合性をとる方が良いの ではないかという御議論もございまして、あえてそういう中身で入れさせていただいて おります。これもたたき台を別途用意するというよりは、ES細胞の当該部分のところ をたたき台として挿入させていただいているという状況になっております。  繰り返しになりますが、資料1−2は資料1−1を御検討いただくための参考として 今回用意してございます。資料1−3はヒアリングの時の資料を改めてお付けしており ます。以上でございます。 〇中畑委員長  ただいま事務局から資料の御説明がございました。逐一議論をしていくわけですが、 全体を通じてこの場でどうしてもという御質問なりがございますでしょうか。ないよう でしたら、順番が逆になりますが、資料1−2を御覧いただき、こういう流れ図でいい のかということです。前回はここに大分の時間を費やして御議論をいただいたわけです ので、ここを確認していただければと思います。  まず(1)が妊娠中絶の手術の説明です。(2)が中絶の意思確認・中絶の意思決定。(3) が研究協力の説明を受けることについての意思確認。(4)はコーディネーターに連絡が いく。(5)ではコーディネーターが研究協力についての説明をして説明文書を渡す。(6) が再度中絶の説明をしていただく。(7)は研究協力の同意書とパートナーへのお話。(8) が研究協力の意思確認をする。その後に中絶の手術が行われる。最終的な研究協力への インフォームド・コンセントである意思決定は(9)で中絶後に行われる。(10)の同意は いつでも取り消せる。こういう流れ図になっております。  あとで御議論になると思いますが、(2)の段階からパートナーと二人に、中絶の確認 あるいは意思決定まで係わったように胎児を取り扱うべきではないか、という議論があ りましたが、そこは最終的な合意には至ってないのではないかと思います。一応はこう いう流れ図で来ていると思います。この点について何か御議論ございませんか。そうい うことはないという御議論はございませんか。  ではこういう形で前回の会議では合意されたという形の理解でよろしいでしょうか。 では資料1−1に戻ります。  細かいいろいろな要件について決めていきたいと思います。  (1)死亡胎児利用の要件。(1)基本的な要件です。前回も御議論いただきましたが、 事務局で整理をしていただきましたので、このようなことで良いかどうかを確認してい ただきたいと思います。基本的な要件です。・科学的な妥当性かあるか(十分な動物実 験の実績、代替の研究方法がない等の科学的な妥当性があるかどうか。)・両親あるい は母親の自由な意思に基づいて提供されている。・関係者に対する良心的拒否の機会の 保障(拒否の機会の保障であると思います。)・死亡胎児への礼意の保持。・胎児組織 の売買禁止。・中絶の時期や手技が胎児組織を提供するからといって変更されてはなら ない。・中絶の意思決定と胎児組織提供の意思決定とは峻別されなければならない。・ 死亡胎児を用いた研究を奨励するものではない。  このくらいのところが前回話し合われて、こういうことを織り込むべきではないかと いうことであったと思います。この点について、こういうことでよろしいかどうか、あ るいはまだ欠けている点があるかどうか、その点いかがでしょうか。 〇位田委員  最初の基本的要件は死亡胎児を使って良いという前提でこういう基本的要件がありま すということですが、その前に、前回申し上げたと思いますが、なぜ死亡胎児を利用し て良いのか、という理由を、指針の中に書くか書かないかは別として、きちんと押さえ ておく必要があるのではないか。  確かに、これまで死亡胎児を利用すると治療効果がある可能性が高い、すべてではな いにしても、幾つかの疾病ではそういう可能性が高いという話は出ています。だからと いって、死亡胎児をすぐに利用して良いというところに行き着くには、いろいろな反対 論があります。前回意見が出てきたり、その他新聞などの報道でも反対論なども出てい ますので、この委員会として、死亡胎児を利用して良いという理由をきちんととらえて おく必要があるのではないかと思います。それを前提にして、使っても良いという結論 を出す。前回に、使っていけないわけではない、という結論を出していると思いますの で、実際の使って良いということを前提にした基本的要件はこれである。もしくは手続 き要件はこれである、ということになると思います。  基本的要件は、当然ながら指針の中に何らかの方で書き込まれないといけないと思い ますが、その理由をこの委員会としてコンセンサスを得ておかないと、対外的には難し い問題もあると思います。 〇中畑委員長  ありがとうございました。貴重な御意見であると思います。その点についてどなたか 御意見ございませんか。 〇青木委員  位田先生がおっしゃったのは、科学的妥当性のところで述べられませんか。 〇位田委員  そういう形にするかどうかが問題であると思いました。 〇青木委員  そこにうまく書き込めば、位田先生の意思は生きるのではないかと思います。 〇位田委員  若干懸念しているのは、科学的な妥当性がある。つまり動物実験は十分にやっておら れて代替の研究方法がないという場合に、では死亡胎児であれ何であれ、使っても良い という方向に一般化されることを危惧しております。死亡胎児については、こういう理 由であるということが何かいるのではないかと思っております。 〇町野委員  科学的妥当性だけではなく、倫理的妥当性も議論しろということでしょうか。そうす ると青木先生の言われるようにはできないということになるはずです。 〇位田委員  そうではなく、科学的妥当性、つまり科学的妥当性があれば人間の細胞をどういうこ とであっても使っても良い、ということにならないだろうかという危惧があるので、死 亡胎児だから特別な理由があるかどうかという問題であると思います。 〇町野委員  だから、それは倫理的妥当性の問題です。それをここでもう一回議論するということ であれば、まず位田さんからその点について議論をしていただきたい。 〇位田委員  ある程度はこの委員会のなかで議論はしていると思います。こういう理由だからとい うことをはっきりと定義づけるという話ではありませんでしたが、枠をつけたことはあ まりなかったと思います。死亡胎児という基本的要件の中にもありますが、礼意を保持 しないといけないものについて、病気の治療のために臨床研究に使う。このことがES 細胞のときの胚もそうでしたが、死亡胎児というところに焦点を当てれば何らかの特別 の理由がいるかどうか、という問題であると思います。  ある程度は、皆さんの中で議論をされていると思いますが、私自身の考え方は、ES 細胞の時と同じですが、中絶をする、もしくは死産で出てくるということがわかってい る、もしくは実際にそうなったというときに、本来であればそれをそのまま葬る、とい うことなのだが、しかしそういう非常に価値のあるものを、それでなければ治療ができ ないような難病の治療に使うというのは、例外として妥当性があるのではないか。そう いうふうに思っております。その考え方に御同意をいただけるのであれば、そういう理 由と考えても良いと思いますし、何か別の理由があれば、そちらを議論していただいて もいいと思います。 〇中畑委員長  位田先生のいわれた内容で今までこの委員会の話し合いが進んで、ほぼ合意が形成さ れたのではないかと私は考えております。その背景には、もちろんこういう再生医療を 待っておられる患者さんがたくさんいるということが一つ、現実的にそういう治療を受 けるために日本から外国にいかれてそういう治療を受けておられるという実際の現実も ある。  外国では以前からパーキンソン病をはじめ幾つかの疾病に対して、死亡胎児を使った 臨床研究という形で大規模研究も実際には行われてきた。  我が国を見ると、今までの指針がないままに、アンダーグラウンドでそれが行われる 形になってきた。この委員会でこの問題をとりあげた以上は、これをはっきりと表に出 して社会に見える形で進めるべきではないか、というのが委員長の意見であるという形 で何回かお話をしてきました。そういう社会的、あるいは倫理的な妥当性ということに も、患者さんを救うということにつながる。しかも非常に限定された中で、中央審査と いうような厳しい審査の中で限定されたものについてだけを行うという形で、しかもそ れは公開で行う、社会に見える形で行うという形で、この委員会としては合意されてき たのではないかと考えております。その点についてほかに議論はございますでしょう か。 〇町野委員  私はそれで結構だと思います。位田さんのいわれた通りに、どうして許されるかとい うことについて、この委員会としてはどこかで態度決定をする必要がある。  しかしその中身については、位田さんのいわれるのはちょっと違うと思います。それ は石井委員についても同じです。ESの時については、あれは受精卵の問題でした。ヒ ト胚というヒトの生命が問題です。こちらは死亡胎児ですから画然とそこが違います。 基本的にはかなり違ったものがあるということを意識した上でやらないといけない。  そしてこれが許されるということは、「例外」というだけでは済まない問題である。 どうして例外であるかということを言わないといけない。  それは、どうして許されないかという議論から出発しなければならない。中絶を誘発 する危険性があるということがひとつだと思います。それから女性の決定とか意思に不 当な影響を与えないかということがもうひとつだと思います。その害悪ということを踏 まえた上で議論をしないといけない。ただ「例外である」といって済む問題ではないと 思います。  したがいまして、ここで議論をするかどうかは別としまして、今のことは確かに突っ 込んだ議論が今までされていなかったと思います。安易にかなり簡単にES指針に倣う ということをいわれたり、いろいろなことがあったりしましたので、十分な議論がされ ていないと思いますが、大方の御意見では許容の方向に向かっていると理解しまして、 前回もそのように申しました。  しかし、だからといってその内容を詰めなくても良いということにはならないと思い ますので、どこかできちんとした議論をされた上で、書かれるのが筋道であろうと思い ます。ここで議論をするかどうかはまた別な問題です。 〇石井委員  ちょっとずれるかもしれませんが、胎児の特殊性を踏まえておくことが必要だと思い ます。ことに12週以前については、その取り扱いについて、法的にきちんと定められて いない中で研究に使うことをここで認めるので、その点は明らかにしないといけないこ とが1点です。  もう1点は、新聞でも報道されたように、社会において胎児が必ずしも礼意をもって 取り扱われていないという現状を踏まえると、ここでは礼意の保持を言ったとしても、 全体としてそれが確保されるような方向なしに、ここだけきちんとしておりますという ことでは、社会は納得しないと思います。その辺をきちんとする。ここではできないと しても、全体をきちんとすることを求める前提で議論をしない限り、社会的には受け入 れられないと思います。 〇中畑委員長  最後の問題につきましては、この委員会で作る指針だけその辺を厳密にしても、社会 一般に行われていることと乖離があるのではないか、という議論が以前にもありまし た。ここで出される指針は、その辺を非常に厳密にして出すべきである。そういうこと によって、いま行われている中絶に対しても、よりよい方向に働くのではないか。より 健全な形でこのインフォームド・コンセントの取り方その他についても、健全な形で進 むのではないか、という議論が以前にあったと思います。  私自身はそういう解釈をしておりました。だからむしろこの委員会できちんとしたも のを作れば、それも一つの例として、いま一般に行われている中絶などについても波及 効果があるのではないかと考えております。そういう解釈ではまずいでしょうか。 〇町野委員  石井委員は「胎児」といわれましたが、正確には「中絶胎児」、「死胎」です。死胎 の取り扱いについて、はっきりしていないというのは、かなりの問題であると思いま す。それを現行法ではどうなっていてどのように扱われているのかということを把握し た上で、この問題に取り組むのが筋道であるというのは、石井委員の言われたことであ ると思います。  ですから、これが突破口となってという中畑委員長のお話しも理解できますが、まず 全体を理解して、どのような格好になっているのかということがわからなければいけな いと思います。もしかしたら現行法にも問題があるかもしれない。その辺は死胎の届出 とか、そういう問題について事務局で整理していただき、ここに問題を出していただく ということが必要であると思います。 〇中畑委員長  その点について事務局はいかがでしょうか。 〇事務局  例えば、昨今報道のあった、胎児をどのように扱っているのかという問題等につい て、実は疾病対策課とは違う部局、違う省にまたがる問題ですが、そういうところで現 在は整理を進めているところであると聞いております。  そういうところとも協議をいたしまして、私どもが中心となりまして、この会に現状 ではどうなっているのかという点については整理をしてお示しをする、ということでよ ろしいでしょうか。 〇中畑委員長  そういうことでよろしいでしょうか。非常に気になるところでした。先ほども話し合 いをしたのですが、そういう対応をしていただけるということになりました。 〇位田委員  死亡胎児の利用について、この委員会で議論を始めたきっかけは、IRBに任せると 野放しになる可能性がある、既成事実が積み重ねられてここまでしかだめだといったと きには、既に先に話が進んでいるということでは困るので、この委員会の扱う事柄につ いての限りで死亡胎児の利用を認めるか認めないか、認めるとすればどういう条件で認 めるのかということを議論しましょう、こういう話であったと思います。  したがって、この委員会でヒト幹細胞を用いた臨床研究で死亡胎児を利用して良い、 こういう厳しい条件の下で利用しても良いという結論が出たとしても、それは一般的に 死亡胎児をいろいろな医学研究なり、場合によっては産業利用も含めてですが、様々な ことに利用して良いという結論を出したわけではない。そこはちょっと確認をしておく 必要があると思います。  それを突破口とお考えになるのかというのは、それぞれの人の評価であると思います が、私は必ずしも突破口と考えていない。むしろ今はどこまでなら認められるのか、と いう範囲をはっきりさせておいて、そこから先はもう少しきちんと議論をしましょう。 この委員会そのものは、死亡胎児の利用という一般的な議題について議論をするような 場ではないし、もしそういう問題を議論するとすれば、この委員会の現在の構成では不 十分、もしくは不適当であると思います。そこまでは話を広げないということだと思い ます。 〇中畑委員長  その点については既に合意されていると思います。本委員会で取り扱うのは、ヒト幹 細胞を用いた臨床研究におけるということで、それに限定した死亡胎児の取り扱いで す。もう少し広く一般的な死亡胎児の取り扱い云々については、この委員会の役割では ないという形で、非常に限定された中で死亡胎児をどう取り扱うのかということで、今 まで議論をされてきたと思います。位田委員のいわれたようなことでいままで議論をさ れてきた。この点もこの場で再確認をしていただくということでよろしいかと思いま す。 〇長沖委員  今のことに関してです。新聞で報道されたりすることを見てもわかるように、この委 員会が日本の中で最初にOKを出してしまうということは、社会的にみれば、これは中 絶胎児の利用に関して他の分野に関しても、一歩踏み出したと思われてしまうというこ とは現実であると思います。ですから、位田委員がおっしゃったように、なぜ中絶胎児 を利用して良いのかというきちんとした枠組みを作っておかない限り、これはほかの臨 床研究であるとか基礎研究でも、どんどんと中絶胎児を使っても良いのだということに 受け取られてしまう。  少なくともここで作るガイドラインに関していえば、そこにしか範囲は及ばないわけ です。でも実際の現場ではいろいろなところで使われているわけです。そこを本当にき ちんと限定するとすれば、そのことを明確に出さない限りは、外からは見えないだろう と思います。 〇中畑委員長  その点はできるだけそういう形で厳密にやるということです。幹細胞を用いた臨床研 究については、必ず施設のIRBを通すと共に中央審査という過程を経て、それをまた フィードバックしたものだけが認められる、という形の仕組みをいままで作り上げてき たと思います。できるだけ限定した中で行う、という形でこの委員会としては今まで行 ってきたわけです。  ですから、それ以外のものは、施設のIRBを通したり、あるいはIRBを通さない まま日本産婦人科学会の戒告にある程度は従って、胎児をいろいろな研究に利用してき ていると思います。ですから今回については、この委員会の中でのある程度きちんとし た仕組みを作るとい形で今まで議論されてここまで来たと思います。 〇長沖委員  そういう限定ではなく、ここに関して議論をしたのは、幹細胞の臨床研究だけです、 ということが明確になる形にしておかないといけないということです。幹細胞に関して 中絶胎児を使っても良いのであれば、ほかのものでも良いだろうという形でルーズにな っていくのではないか、ということを申し上げました。 〇中畑委員長  わかりました。そうならないような文面にして書いていく、ということにしていきた いと思います。ほかに御意見ございませんか。では具体的に先ほどのような前提に立っ てという形で議論を進めていきたいと思います。具体的な基本的要件というところで す。 〇長沖委員  先ほど委員長が海外では研究が行われているとおっしゃいました。実際に今までそう いう形で説明はされてきましたが、この前、福島さんから出てきた意見書の中では、海 外で中絶胎児を使った実験に関して、すでに追試が行われて効果がないのではないかと いうことで、海外の研究者たちが撤退しているということが中身として書かれていまし た。  そのことに関して、私たちは具体的に知識がないので、事務局かもしれないし詳しい 方かもしれないのですが、その辺の資料をきちんと出して、それが事実なのか、科学的 にみてそれが正しいのか正しくないのか、ということを私たちが判断できる資料を是非 出していただきたいと思います。 〇鍋島委員  胎児の利用を全面的に解決するようなシステムがつくられた後にこの議論をしている なら、こういう議論をせずに我々は進めることができるのですが、そこはいま望めない 事態にいるわけです。ですが幹細胞の研究を進めざるを得ない事情というのは、患者さ ん側にはあるということから、それに限った形で何とかしようと考えているわけです。 その点は恐らく全員の前提になっており、そこは合意が形成されていると思います。  いまの胎児の利用状況を見ると、胎児組織そのものを使うことが基本要件となってい ます。ここで議論してきたのは、それとは異なっています。いま福島先生の話が出まし たが、確かに胎児組織そのものを使った研究というのは、そもそも採った胎児がどうい う細胞なのか、どういう性質を持っているのか、ということも毎回違うようなことで、 そもそも結論の出せるような医学研究ではないのです。  そういうところでいろいろな失敗が起こったり、効き目がないということが起こって 撤退するという事態が起こっても、これはある意味では実験方法そのものに不備があっ て当たり前の話であると思います。それは福島先生がそう主張されているのも無理はな いという部分があります。  そういう実験をやるということに関してここでも議論があって、その結果、胎児その ものをたくさん集めてきて打つというようなことはしないと合意されました。それより はきちんと科学的に判断できるような幹細胞を樹立して、その性質を確認した上で治療 に使うのかどうかを議論してきたのです。そこをきちんとしておかないといけないので はないかと思います。そうすれば今のような議論はかなり避けられると思います。 〇位田委員  その件に関連してです。福島先生からいろいろと資料をいただきました。福島先生の 言い方であると、岡野先生も効果がないということを認めているような言い方をされて いるのです。岡野先生が効果はありませんと明確に言い切っておられる部分はないので すが、福島先生は岡野先生も効果がないということを認めているのではないか、という 言い方をされています。岡野先生がきょう出て来られれば聞きたいと思ったのです。き ょうはおられないのですが、その辺りはどうなのかということは、長沖委員と同じでよ くわからないので懸念はしております。 〇中畑委員長  その件については、前の金村先生のヒアリングであるとか、あるいは岡野先生の今ま でのいろいろなところでの発表という場で、神経幹細胞を使った治療は非常に効果があ るということで、彼は一貫して発表してきていると思います。それは岡野先生がこの場 にいらっしゃらないのでわからないのですが、ヒトへの応用への全段階としてラット、 さらにサルを使った研究で非常に効果がある、という形で一貫して報告をされてきてお ります。  岡野先生について福島先生が何かいわれたとすれば、欧米で特にニューイングランド ・ジャーナル・オブ・メディスンに非常にたくさんの胎児を集めて打つという数だけを 集めて打つという方法に対しては、彼は批判的である、そういう理解ではないでしょう か。ただ本人がいないので、次回にでもその点を聞いていただければと思います。 〇高坂委員  今の議論についてです。私も15年程前から神経幹細胞ではないのですが、胎児の脳、 これはラットですが、そういうものをパーキンソン病モデルラットに入れるとかという ことで研究を進めていました。そういう実験においては、明らかにこれは効果がありま す。それはドーパミンというものが出れば症状は改善されるというのは現実です。ただ それが胎児の組織を丸ごと入れるというケースもヒトにも応用されたのですが、これは 効果がまちまちである。この原因については鍋島先生がおっしゃったように、実験の手 段というのがまちまちです。本当にサイエンティフィックに判断できるだけのきちんと したものができていない、ということは明確であると思います。  もう一つ、福島先生が幹細胞を使って効果がないのではないかということ、研究者の 一人ですから何をいわれても結構で、いろいろな方の意見があるのは現実です。ただ恐 らく、効果かないではないかという論文というのは、Freedのことであると思いますが、 それはたくさんの胎児の組織を入れたということではなく、胎児の組織を採った後に1 週間という時間をカルチャーしてしまっている。しかも血清を入れているということで す。こうなると分化が進んで、すでにそれを脳の中に入れても、もはや幹細胞よりも神 経細胞としての機能を果たしてしまう。ですからこれは従来の脳のプライマリーカルチ ャーの移植と同じことです。ですから幹細胞という特性を本当に使ってはいないので す。そういうことは基礎研究をやっている人は、我々を含めてですが、いろいろな議論 はできます。  ですから、いちがいに福島先生のようにこれは効果がないということを言われては、 ぼちらの立場としてはそうですか、という疑問を投げかけざるを得ないのです。  現状から申し上げますと、人間ではそれだけのきちんとしたことは行われていないの ですが、動物レベルではかなりサイエンティフィックに証明されていると思っていま す。 〇中畑委員長  ほかにどなたか御意見ございませんか。 〇加藤委員  いま説明いただいたようなことを、高坂委員に聞きたいのです。いろいろな人に分か るような形でまとめることは可能でしょうか。こうやっていろいろな委員がいろいろな 意見をおっしゃるのはいいのですが、この中でどういうものが見えているのか、という ことを確認しておく段階にあると長沖委員もおっしゃいましたが私もそう思います。 〇高坂委員  それに類した総説が多分あると思います。私が知っている限りは非公開ですが、そう いう公開討論も行われていてそれの抄録も出ております。そういうものを提供すること は可能です。非常にわかりやすく書いてあります。 〇鍋島委員  動物実験レベルだと非常に効果がある、というデータはたくさん出ていると思いま す。京大でいまやられていることを見ても、非常に長くドーパミンニューロンがパーキ ンソン病を良い方向に向かわせているというデータが動物実験レベルでは確かに出てい ます。問題は、人にこれを投与してそれを判断するときの難しさでするというのは、治 療をずっと続けている患者さんに薬剤を切って、それで実験治療をするというのはなか なか困難です。ですから非常に多面的な影響の状況の中で効果をみなければ、人間の場 合には判断が困難です。  なぜかというと、いろいろなコントロールをきちんと取ることは動物実験では可能で すが、人の場合にはそういうコントロールを取れば、その患者さんに非常に大きなダメ ージをもたらす恐れがあるわけですから、そういうことはできないわけです。  その意味では、臨床段階で本当に効果があるかということを見るのは、かなり先の課 題であって、今は動物実験レベルで非常に重要な効果があるかどうか、あるいはいろい ろな想定される問題をクリアする実験をやる、というのが今は重要であると私は思いま す。 〇中畑委員長  先ほどの胎児の神経細胞、あるいは神経幹細胞を使った治療の有効性をある程度示唆 するような文献というか、そういうものを少し収集していただく。これは高坂委員にお 願いしたらよろしいでしょうか。ではよろしくお願いします。  議論を進めていきます。基本的要件の中に、さらにこれを織り込むべきであるという 項目がありましたら織り込んでいただきたいと思います。 〇鍋島委員  幹細胞を樹立してそれをきちんと確認して使うということについて一致しているの で、その点だけは基本的要件に書いておいたほうがよいと思います。 〇中畑委員長  その点についてはいかがでしょうか。そこまで限定した指針にするべきかどうか。 〇鍋島委員  幹細胞ということで語弊があるとすれば、少なくとも何らかの形で性質を確認できる 細胞という形にしておいたほうがいい。少なくともそのぐらいのことはしたほうが良い のではないか。 〇北村委員  それはその計画案が出てきたときにちゃんと審査するようになっているから、それで 十分ではないかと思います。あまり限定してしまうとよくないと思います。 〇位田委員  研究計画が出てきたときに、それにゴーサインを出すか出さないかという基準をここ で決めるわけですから、鍋島委員がおっしゃった幹細胞、もしくは性質を確認できる細 胞ということが基準であるとすれば、書くべきであると思います。そうでないと、同じ ような研究計画でこちらは認めたのにこっちは認めないというケースも出てくるかもし れない。基準になるとすれば、それはルールとして書いておくべきであると思います。  IRBにしろ中央審査にしろ、今度できあがる指針を基準にしてやるわけですから、 これに合致していれはOK、合致していないとノー、という話になると思います。 〇高坂委員  書くことには全く問題はないと思います。ただ最初のときに幹細胞等という「等」を 入れたのは、そこでかなり議論をした記憶があります。由来する細胞であるということ ですね。そういうことはすべてどういう細胞であるかということで、ある程度性質が明 らかになるということを前提にしているわけですから、ここに特に入れなくても、幹細 胞等でかなりしっかり書いたという記憶があります。 〇中畑委員長  その点はかなり議論がありました。北村委員からもその時に御意見があったと思いま す。もう一度振り返るということでよろしいでしょうか。ほかには織り込むべきものは よろしいでしょうか。  では(2)の手続きの要件に入ります。・インフォームド・コンセントの必要性、これ は当然であると思います。・中絶の意思決定と胎児組織提供の意思決定との分離、これ も決められたと思います。・胎児組織提供の意思決定に対する中絶の意思決定の先行、 これも資料1−2の図に従えばそういう形になっていると思います。・中絶の時期や手 技が、胎児組織を提供するからといって変更されてはならない。これも当然で、こうい うことも盛り込むべきであると思います。・胎児組織の提供先指定の禁止、この点につ いては御議論いただきたいと思います。・倫理委員会の承認。・同意の撤回はいつでも できるようにする。これについてどなたか御意見ございませんか。  提供先指定の禁止というのは、ある程度ちゃんと申請されて、それが中央審査を通っ たものであれば、そこに関しては幹細胞を樹立している施設があるとすれば、そこから 提供は必ずするという意味ではないかと思います。自分と共同研究をやっているところ には提供するが、ほかには提供しない、そういうことがあってはならないという意味で ここでは書かれていると思います。多少、誤解を与える文書ですので、ここは考えたい と思います。 〇石井委員  もともとここに入れられている趣旨はともかくとして、誰にあげるということの指定 はできないことは必要と思います。それは基本的な考え方として入れておく必要がある と思います。幹細胞利用のために中絶をするということがあってはならないので、誰に あげるという指定はできないことが必要 ではないかと思います。 〇中畑委員長  それは重要な点であると思います。これは絶対に入れるべきことです。誰かの治療の 目的で中絶が行われ、またそれが臨床研究に利用されるということが絶対にあってはな らない。それは非常に重要な点です。それは基本的要件に入るでしょうね。だから特定 の個人への臨床研究を目的として死亡胎児の利用はあってはならない、ということであ ると思います。その点は皆さんに同意いただけると思います。非常に貴重な御意見あり がとうございました。  ほかには手続き面での要件として、あとはこの前パートナー云々というのは、後で同 意の手続きで出てきますので、その時に御議論いただきたいと思います。ほかには手続 き面での要件はここに盛り込まれていることでよろしいでしょうか。  (3)の施設面での要件。参考としてヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針がここ にあがっています。少しこのES細胞の場合と多少は異なると思います。施設面での要 件ということについては、今まであまり具体的には話し合われてきませんでした。この 点について事務局から何か御説明はございます。 〇事務局  施設面での要件についていままでの議論をひも解いてみますと、具体的に胎児の細胞 を採取する産婦人科がどういう施設であるかとか、例えばコーディネーターをちゃんと 教育できる施設であるのか、という御議論は過去にありました。そういう部分について は、ESの指針とは異なっております。ESのほうは樹立機関の基準と提供医療機関の 基準という形で整理されております。  逆にいいますと、今までの中では、どちらかというと産婦人科でどういうところがで きるのかという議論だけで、実際に、例えば中絶胎児の細胞を取り扱うのは特別にしな いで、ほかの幹細胞と同じで良いという御議論であれば、あえてここで加筆する必要は ないのですが、そうではないということであれは、ここに足りないものを御議論いただ ければと思っております。これはイメージを作るために埋めただけですので、ここのと ころは具体的な話は今のところは起きていないと考えております。 〇中畑委員長  施設面ということで、細胞を無菌的に処理する施設ということでの議論は数回前にあ ったと思います。セルプロセッシングセンターと呼ばれるような無菌的な環境の中で細 胞を処理する、という議論もちょっとあったと思います。それもこの施設面の要件の中 に入れるのか,あるいはこれは単に死亡胎児を取り出して、死亡胎児を取り扱い施設の 要件という形での受け止め方なのかです。 〇事務局  うまい説明ができずに申し訳ありませんでした。私の申し上げたかったことは、今回 は幹細胞全体の指針の中でも死亡胎児の利用の在り方、というところに限定したペーパ ーを作っておりますので、そこに特別に必要なものは何かという観点で御議論をいただ ければ良いと思っております。 〇中畑委員長  わかりました、御意見ございませんか。 〇位田委員  新聞等でも報道されたような、中絶胎児そのものの中絶後の取り扱い、それがきちん と管理というか処置がなされている施設でないといけない。そういう1項目は必要では ないかと思っております。有名な病院だから良いということではない、ということで す。現実にああいう報道が出たときに、厚生労働省さんがどこまでそういうことをきち んと把握されているのでしょうか、そういうシステムは元々ないのか。現実に中絶胎児 がどのように扱われているのか、という報告というか、そういうものが把握できるシス テムになっているのでしょうか。 〇事務局  違うところで整理をしておりますので、果たしてどこまでそういうことを御報告でき るのかということは、今のところはわかりません。 〇位田委員  そこをはっきりさせないで、使うだけ使って良いという話になると、具合が悪いと思 います。きちんとどこかで、中絶なら中絶胎児について何らかの把握をするシステムが あって、そのもとで利用してよろしいという形であれば何とか大丈夫かなと思います。 〇中畑委員長  12週以前の問題ということ、この間の報道の場合には12週以後のものも入っていたの ではないかということです。以後のものということになると、実際には法律があるわけ ですので、それに違反しているという問題になってしまうと思います。12週以前のもの についても、当然、この指針でずっと今まで議論をされてきたのは、死亡胎児の礼意を しっかり保持して扱う、扱うという中には、当然、必要な組織を採って残った部分とい うものも礼意をもって埋葬するということを含んでいると思います。その辺まで施設面 での要件ということに加えるのか。  あるいは、少なくとも倫理審査委員会がある、あるいはその施設の責任者の監督下に おかれるようなコーディネーターが存在すること。それは守秘義務がありますので、施 設以外の人が入ってきて、その方がいろいろな説明をするということはまずいというこ とです。施設の責任者の監督下に置かれるコーディネーターがいるということが、前回 お話であったと思います。  そのほか、適正に礼意をもって胎児を取り扱うということ、幾つかあろうかと思いま す。これは次回に整理していただき、もしここに入れたほうが良いというものがありま したら事務局に言っていただくということでよろしいでしょうか。 〇町野委員  施設というのは提供施設だけで、ほかの臨床試験で使うところは除外した議論です ね。わかりました。 〇事務局  ここのところです、参考ですが、以前の御議論の中で、これは整理されているものは ここに書き込んであるのですが、あった御意見です。例えば、限定するべきであるのか どうかという議論。自発的に研究に協力したいという病院でないといけない。そういう 御意見が出ているようです。ただ最終的にそれをどういう形でという結論にはなってな いので、ここに書き込んでいません。参考までに過去にそういう御議論がございまし た。 〇中畑委員長  施設をあらかじめ限定するべきではないか、という意見も確かにあったと思います。 それに対しては、反対の意見もあったと思います。幾つかの要件がきちんとして、しか も中央審査という形でやるということになれば、かなり施設としては結果として限定さ れてくるのではないか、というところに落ち着いた気がします。そういうことでよろし いでしょうか。あらかじめここの施設だけで行うという限定した指針としてスタートす るというわけにはいかないのではないかと思います。 〇事務局  そうすると今の御議論でいうと、こういう細胞を提供するような施設については、限 定をするというよりは一定の条件を付ける、そういう方向であるということでよろしい でしょうか。 〇中畑委員長  皆さんそれでよろしいでしょうか。 〇位田委員  指針の中で施設の条件を定めて、こういう条件を満たしている施設はどれかという話 ではなく、具体的に臨床研究の計画が出てきたときに、この施設は条件に合っているか ら大丈夫だ、場合によっては、この施設は条件を満たしてないからだめである。具体的 な形で判断をするということになると思います。条件はもちろん書くのですが、あらか じめこういう施設という、例えばリストという形にはならないと思います。 〇中畑委員長  ここの中の細かいことについては事務局と相談して、次回までに書き上げるというこ とにしたいと思います。次です。  (2)同意の手続きでございます。(1)インフォームド・コンセントを受ける者、これ は中絶のインフォームド・コンセントと研究協力のインフォームド・コンセントは全く 分離するということは既に合意されております。実際に同意の手続きということで、イ ンフォームド・コンセントを受ける者として、ここに考えられるものを上げておりま す。  aからgまであげております。以前のヒアリングでほとんどの国においては、dで母 親の同意同意+父親の拒否の不存在、これはパートナーと読み替えてもよいと思いま す。次がeで母親の同意+父親については言及なし。gは原則として両親の同意。ただ し父親が不存在の場合には母親の同意のみで足りる。これは母体保護法と同様である。 これのいずれかであろうと思います。この点についてはいかがでしょうか。 〇町野委員  インフォームド・コンセントは「受ける者」というのはおかしなことです。コンセン トというのは同意ですから同意を「与える者」ではないでしょうか。 〇中畑委員長  そうですね。すみません。ここにあげてあるgまでの7つのうちのどれがよろしいで しょうか。  以前ヒアリングのあった国立病院大阪医療センターでは、インフォームド・コンセン トは妊婦とパートナーの同意という形に現在はなってきているということのようです。 するとgということになると思います。恐らくdかgのどちらかだと思います。 〇町野委員  母体保護法の場合の同意の問題とは全然違うと思います。母体保護法の場合には中絶 するわけです。こちらは中絶した胎児について誰がそれをクリアするべきかという問題 ですから、母体保護法と同じに考える必要はないと思います。中絶の場合の自己決定に ついては幾つかの考え方があります。石井委員などはもっと詳しいと思いますが、女性 の権利がすべてであって男性のほうが拒絶権を持つというのは憲法違反であるという考 え方もあるわけです。同じ考え方は死胎組織の提供についてはとれないと思います。女 性の中絶についての自己決定の問題がこちらに及ぶということではない。だからこそ中 絶の決定と、この提供の意思決定とは切り離すということです。こちらはまた別に議論 をしないといけないと思います。  結論として、gになるかどうかはこれからの議論だと思いますが、母体保護法からの アナロジーで考えるのはかなりの問題があると思います。 〇長沖委員  実際には現場では母体保護法に基づいて行われているので、そこから離れてはいけな いわけです。いろいろな考え方があるという一つには、中絶そのものの決定が、今の日 本の法律では両方の合意が必要ですが、女性だけの合意で成り立つということもあるわ けです。そういうところで、今度は中絶の同意そのものが女性だけで決定されるとき に、その胎児の利用に関してパートナーをそこに引っ張りだすのはおかしなことになり ますよね。それはわざわざそこの場所、中絶という現場に男性を引っ張ってくるという ことになってしまうので、おかしなことになると思います。  中絶をどう考えるのかということにかなり左右されてきてしまう、実際にいま日母は 母体保護法の改正提案を出しています。その中では9週までは女性のみの合意で中絶が できるという改定案を出しています。  そうなったときとかいろいろな状況を考えないと、誰の同意でいいのかということは 簡単にはいえない。この時に使って良いと考えているのは12週以前でしょうか。だとす るとひょっとするとこの先、女性だけの同意で中絶そのものができる可能性が出てきた 時、その時にわざわざパートナーをそこに引っ張ってくるのはどういう意味を持つの か。  反対に今の現場でいえば、両方の合意が必要なときに、それを片方の合意だけで良い といっていいのか。海外はこうだからこれで良いと簡単に言えるものではないという気 がします。 〇高坂委員  長沖委員の意見に少し賛成です。実はインフォームド・コンセントの実施方法につい ての資料1−2で(2)と(7)は現実的には連動せざるを得ないだろうと思います。(2)の 中絶と提供は切り離すべきであるというのは理想的にはわかりますが、現実的には(2) と(7)の過程は連動してくると思います。 〇中畑委員長  資料1−2の図が多少誤解を与えているのではないかと思います。(7)のところには 研究協力の同意書、パートナーへのお話があります。前回のときにはパートナーも(2) から係わるべきであるということでした。 〇高坂委員  パートナーへのお話というのは入れる必要はない、と思います。 〇中畑委員長  前回は、中絶の意思決定もパートナーがしっかり参加したような方からのものを最初 の臨床研究としては使うべきではないか、ということで議論がありました。最初からパ ートナーがそろって最初に中絶の意思決定がなされて、さらに説明をパートナーと一緒 に聞いて、最終的に研究協力の同意というものもパートナーもそこでしっかり同意をす るという者から最初の臨床研究を始めた方が良いのではないか、というのが私の考えで す。 〇位田委員  長沖委員の御説明で分かりにくいところがありました。現在の母体保護法では両方必 要です。それを基礎にすればこの場合も両方の同意がいると考えても良いのでしょう か。それとも将来的に女性の同意だけで中絶ができるようになるかもしれないから、今 から女性だけでできるようにしようという話でしょうか。  つまり我々は現行法の枠組み、必ずしも完全に現行法がかぶっているわけではないに しても、ある程度は現在の体制でどうするかということを考えて、もし法律が変わるの であれば、その時に指針も連動して変えればいいと思います。ですが将来こうなるであ ろうからというのは、ちょっと今はおいておかないといけない。今だとどう考えるべき かというのは、さっきのお話ではよくわかりませんでした。 〇長沖委員  そこをごまかしてしゃべっていました。簡単に決められないであろうということを申 し上げました。基本的には私は女性の同意だろうと思っています。この流れでいくので あればです。ただしそもそもこの前提案したように、本当に女性の同意で中絶胎児を使 っても良いのかという疑問が残っておりますので、誰が中絶胎児を使って良いというこ とを決定できるものを持っているか。  ごめんなさい、決定できるとすれば女性しかいないが、本当にそこで女性が決定して 良いのかということに私は疑問を持っているのでごまかしてしゃべっています。 〇町野委員  私は母体保護法の問題と結びつけるのはおかしいと思います。現在、やりにくいなら やりやすいようにきちんとしないといけない。理念が先行すべきなのであり、やりやす いかどうかの問題ではないと思います。私は、基本的には中絶というのは女性の権利で あると思いますから、配偶者の承諾を要件としている現在の母体保護法はその限りでは 不当であると私は思います。なぜそう考えるのかというと、妊娠して出産に至る過程は 女性については非常に大きな問題である。彼女の自己決定が優先されるべきであって、 他人から「お前は産め」といわれる筋合いは、夫であろうとないという考え方に立つべ きであろうと思います。  しかし中絶された胎児について、それについてパートナーの遺伝子がその中にあり、 いろいろなものはそれは含んでいるわけです。その時についても中絶を決めたのは自分 だから勝手であるというのは別の問題である。結論として同じになるかもしれません が、そこにかかっている利益、あるいは権利というのは別物であると認識しないといけ ない。そうでないといつ人が死んだかはっきりしなくて議論するという、脳死・臓器移 植論と同じことをすることになる。どっちもはっきりしないで議論ができるということ はないだろうと思います。そこで問われているのは何かということが問題である。法律 がどう変わるかという問題ではない。  位田委員は母体保護法が変わったときに考えればいいといいますが、母体保護法とそ れは完全に違います。そういう問題ではないと思います。 〇中畑委員長  町野委員の意見は僕は非常に理解できます。 〇長沖委員  いまおっしゃるのは一つの流れですが、いまおっしゃったのは、中絶胎児の利用に関 しては、両性の同意が必要だということですよね。違うものであるということにしたと きに、中絶に関する決定に、そのことが影響を及ぼしてはいけないわけですよね。もし 中絶に関していま実際にその辺が問題になるのですが、いまの実際の現場においては、 女性の決定だけで行われていることも十分にあり得るわけですよね。つまり同意書さえ あれば女性が決定している場面もある。ここでまた研究に関して、男性の合意が必要で あるとなったときに、中絶の決定そのものに男性の影響が出てくる可能性があるわけで すね。  すると、研究協力を要請することが中絶の決定そのものに影響を与える可能性は出て きてしまうことにはならないでしょうか。 〇町野委員  可能性はなくはないです。しかしそれは排除するようにしなければいけないというこ とです。その可能性があるからそれをやめて女性だけだ、という議論は成り立たないと いうことです。 〇石井委員  私も基本的には町野先生と同じ考えです。中絶の問題は女性の問題であるが、(7)の ところでは必要であると思うのは、パートナーときちんと話し合える人のみが提供をす るべきではないか。ここでは例外的に利用を認めようという場合においては、それだけ の条件のある人、あとで後悔したりしないためには、きちんと十分に考えた上で決定を するというためにも、パートナーときちんと話し合った上で決定ができる人にするべき であろうということが1点です。  もう一つは、現行の母体保護法を守るべきかどうかというのはなかなか難しい問題で はあるが、それを十分に踏まえた上で中絶の手術を行っている施設で提供が行われるべ きということを考えると、パートナーの同意を要件として決定したほうがよいと思いま す。 〇中畑委員長  はっきりしなかったのですが、(2)の部分にも中絶の意思決定のところにもパートナ ーと一緒に参加された、そして意思決定されたような、最終的には母親が一番の権利を 有すると思いますが、パートナーがそこに参画した中で決定されたものだけが次のステ ップに行くと考えていたのですが、ここでの(2)のパートナーというのは入れるべきで はないということなのか。あるいはそこはあまりはっきり書かずにおけということなの か、その辺石井先生どうなのでしょうか。 〇石井委員  中絶にパートナーも同意していることを確認した上で、コーディネーターが研究協力 の説明をするための要件とする可能性はあると思います。必ず中絶にそれを必要とする というわけではなく、同意がある人にのみ提供の説明をする。 〇中畑委員長  そういうことです。2人でパートナーも参画して中絶の意思決定がなされたペアのみ が次の段階の(3)に移れる、という理解をしていたのです。だから最初にスタートする ときは、そのくらいきちんとしたものからスタートするべきではないかという考え方で す。その点、長沖委員それでよろしいでしょうか。 〇長沖委員  日本にある法律がきちんと守られているという前提の上でしかこの先には進めないと いうことですよね。  だからこそ中絶の現場がどうなっているのかということを、もう一回きちんとした調 査なり話が必要だと思います。限定されるというのは当然であろうと思います。現場が 実際にそうなっているのかということも重要なことだと思います。  パートナーときちんと話せるような人しか提供するべきではないというのは、それは その通りであると思います。中絶胎児を提供することによって、中絶に対する免罪符に しようという思い、そういうことが入ってこないようにするためにも、パートナーと話 ができる人でないと提供できないというのは当然であると思います。病院としても本当 にお互いの意思が確認できるような人たちをケースとして対象にしていくというのは当 然であると思います。  ただ(2)の段階にパートナーがいることを前提とする必要はないと思います。この前 もそういうケースはほとんどないと思いながら聞いていたのですが、多分、最初に中絶 の意思確認する場合、2人で行くケースというのは実際の現場ではほとんどないと思い ます。 〇中畑委員長  その場合でも、当然ながらパートナーの最終的な同意の文書というのは必要だという 理解でよろしいですね。 〇鍋島委員  中絶の問題だけでパートナーの問題を話すわけにはいかない。恐らく細胞を採ってそ の性質を解析すれば、パートナーの遺伝情報はかなりの部分は明らかになる恐れがこの 中には含まれていて、パートナーにも必ず影響があるのです。ですから、そういうこと を含めてパートナーが同意してくれないと、この細胞というのは恐らく使えないことに なると思います。研究者であれば、できる限りいろいろな情報のわかっている胎児から 細胞を採って、できる限り効果のある方法で使いたいと思うのは当たり前ですので、そ の辺のことを考えると、パートナーの情報は必要であると思います。 〇中畑委員長  その点について、(1)に関しては、今の御議論であると研究協力の同意書の時のイン フォームド・コンセントということにあります。おのずから、原則として両親の同意、 ただし父親が不存在の場合には母親の同意のみで足りる。後段の文書を入れるかどうか に限られると思います。後段の文書、今の鍋島委員の御意見だと、後段の文書を入れて しまうと、細胞の提供者の情報が不足しているので、それは臨床研究に使うのは好まし くないという鍋島委員の御意見であったと思います。そうしますと後段の文書は入れな い。原則として両親の同意のあるもの、ということに限定されると思います。そういう ことでよろしいでしょうか。原則としてはなくす。両親の同意のあるもの。そういう形 にする。この点についてはこれでよろしいですね。最初はそういう形でスタートする。 〇町野委員  両親というのは結婚している必要はないということですね。 〇中畑委員長  そうです。パートナーということです。  (2)のインフォームド・コンセントを実施する者。研究協力への同意は産婦人科の主 治医ではなく、中立的なコーディネーターが取るべき。取るべきというのはよくないで すね。コーディネーターに必要な資格はなにか。例として国立大阪医療センターでは助 産師、看護師、心理療法士が担当している。また研究者がコーディネーターであるべき ではない。これは当然です。  ここで議論があったのは、責任のとれる方がインフォームド・コンセントを実施する べきである。だから病院の職員または病院長の監督下にある者が行うべきである。もう 一つの点は、ある程度は守秘義務が法的に課せられている職種のものがあたるべきでは ないか。僕はその要件も入れたほうが良いと思います。法的に守秘義務を有するという ことを定められている者というと、職種としては医師と助産師、看護師、心理療法士に ついてはどうなのでしょうか。では次回までに確認してください。ここの要件としては 今のようなことを織り込むということでよろしいでしょうか。 〇位田委員  コーディネーターという資格を持つ人を想定するのか、たまたま助産師なり看護師な りにコーディネションの役割をしてもらうという話なのか、そこをはっきりしておかな いといけない。コーディネーターという名前を付けてしまうと、そういう資格が助産師 以外にあると考えてしまうかもしれない。  例えば臓器移植の場合のコーディネーターとはかなり違うと思います。文部科学省の リーディングプロジェクトのコーディネーターとも違うと思う。ここでコーディネータ ーを使った場合には、助産師ならコーディネーターができるという意味にしかならない のか、それとも助産師には幹細胞の研究の何らかの十分な知識を持ってもらうための養 成なりを求めて、元の資格+αを求めて、そういう人でないとできないという形にする のか。その辺、コーディネーターのイメージというものを、ただ単に説明をして同意を いただくという話だけではないと思います。  臓器移植の場合にはちゃんと決まっているわけです。あれとは違うと思います。リー ディングプロジェクトの場合には、あのプロジェクトの中でメディカルコーディネータ ーというものを養成される形になっている。今回はそれをどうするのかという問題があ ると思います。 〇中畑委員長  その点について何か御意見ございますか。あまり限定するべきではないという意見も あろうかと思います。 〇鍋島委員  例えば大学病院を想定すると、いろいろな立場の人がコーディネーションに当たり得 ると思います。恐らく重要なことは、研究から中立であるということで、これは絶対に 重要なことです。それから妊婦の立場を十分に理解してそれに配慮できることができる だけの経験と素養をもっている。もう一つはこの研究に対する知識があることです。全 く知識なしでは無理ですので、その3点を満たす人とせざるを得ないのではないでしょ うか。 〇位田委員  その場合に、例えばこういうことをやる可能性のある施設に、コーディネーターはこ の人ですとあらかじめ置いておくのか、具体的に研究計画が出てきたときに、誰かにコ ーディネーターを頼みましょうという形にするのか。多分研究計画が出てくる時には、 コーディネーターが誰ですという名前を出さないといけないと思います。 〇鍋島委員  その意味では、私はその都度作るというのは問題があるのではないか、こういうこと の議論の経過をよく理解していただかないといけないわけです。なぜコーディネーター が必要かということも理解しているということですから、その意味では何人か限られた 人間をはじめから養成しておく、というのが一番理想的ではないかと思っています。 〇中畑委員長  ある一定の要件を付けるべきであるということになると思います。その要件として は、母体に対する十分な理解がある。そういう人である。研究に対しては中立的であ る。一方研究に対してある程度の理解がある。全く理解のない人では務まらないだろう ということですね。その3つの要件プラスある程度の守秘義務ということで、法的に見 ても守らないとまずいと思う。それについては事務局が調べる。  病院の職員、あるいは病院長の監督下にあるもの、ですからコーディネーターという 職種の人が外部から入ってきて、その人がコーディネーターをするという、いろいろな ところでのコーディネーターの中にはそういうコーディネーターもいるわけですが、そ の病院の中の職員、あるいは非常勤職員でもいいのですが、少なくともその施設の責任 者の監督下にある者で守秘義務が守れる人になると思います。そういう限定でよろしい でしょうか。 〇高坂委員  基本的にそれで結構であると思います。鍋島先生がおっしゃった研究の基礎的な知識 を有するものというのは、もちろん説明する義務はあるのですが、どの程度のことをお 考えになっておられるのでしょうか。 〇鍋島委員  相手が説明を求めたとき、理解ができるように平易にかつ分かりやすく説明できると いうのは最低の条件です。それであって、別に研究の最先端のことを知っているかどう かをいっているわけではなく、この幹細胞医療の目的であるとか、基本的な在り方と か、将来どのようなことになるかについて、患者さんが聞いてくるに違いがないので、 それについてきちっと説明して提供することの意義が患者さんにとって十分に理解でき るということです。 〇高坂委員  それでいいと思います。よく知っていても説明が下手な人もいますからね。 〇中畑委員長  指定職という格好ではなく、こういう要件を満たす人かコーディネーターにあたるべ きであるということですね。 〇位田委員  その辺の制度設計の話であると思います。あらかじめこの病院のコーディネーターは AさんBさんCさんですよということで置いておくのか。研究計画ごとに、この研究計 画のコーディネーターはAさんで、こっちの計画のコーディネーターはBさんである。 その計画が終わってしまえばその人はコーディネーターでなくなってしまう。どちらが 良いのかという話です。そこは現場との関連もあります。 〇中畑委員長  いかがでしょうか。私自身は後者で良いと思います。あらかじめAさんBさんと決定 しておくのではなく、先ほどの要件を満たすような人を養成していただく。あるいは最 初は1人かもしれませんが、それが2人になり3人になるということで、コーディネー ションできる人が施設でも増えていくということになると思います。 〇町野委員  インフォームド・コンセントを取るのがコーディネーターであるということになって いることで、若干の混乱があると思います。インフォームド・コンセントを得るという こと以外に、コーディネーションできる人ということがあります。機能はかなり違うの です。インフォームド・コンセントをいただくということだと、お医者さんがやっても 構わないわけですが、そうではないところにポイントがあるわけです。そうするとコー ディネーションができる人と、インフォームド・コンセントを的確に受け取ることがで きる人、その資格が決まっていれば、それを最初の研究計画の中で最初から指定してお くとか、病院の施設の中で指定しておく必要はないと思います。  研究計画書を出すときには、誰であるということをやらないといけないと思います が、問題なのは適当な人を決めてはいけないということで、これだけのことができる人 を決めないといけないということですから、それさえ決まっていれば、施設として決め る必要はないと思います。 〇位田委員  コーディネーターはコーディネーションをするとおっしゃいましたが、コーディネー ションをするのでしょうか。何と何のコーディネーションをするのでしょうか。今まで は、説明をして同意を得るというところを研究者ではなく、お医者さんではなくコーデ ィネーターという話であったので、私はインフォームド・コンセントを取るというのは 基本的な目的であると理解しています。町野先生の今のお話だと、インフォームド・コ ンセントだけではなくコーディネーションをするとおっしゃった。そうであれば、どう いうコーディネーションをするのか、今までの議論の中でははっきりしないのでお尋ね します。 〇町野委員  コーディネーターというのはかなり特別な技能を持っていないといけない。提供する 人の意思を考えながら、その人のケアもしないといけない。その場合には中絶をした人 から組織を提供してもらうわけです。だから心理療法士の人が入っていたりするわけで す。ある場合には精神科医が入る場合もあり得るということです。  コーディネーターというのは単純に取次屋ではないところにこの問題の難しさがある と思います。説明できる人なら誰でも良いということではないということです。そのこ とさえはっきりしておく必要がある。  これはこの場合のコーディネーターばかりだけではなく、臓器移植コーディネーター でも、生殖補助医療をやるときのコーディネーターであろうと、皆同じ問題があるわけ でございます。  インフォームド・コンセントとコーディネーションがごちゃ混ぜに議論をされている ことがありますが、機能はかなり違うということを理解しておかないといけない。一人 の人間が両方をやってはいけないということではなく、今はやるべきであろうと思いま すが、機能はかなり違って、できる人の資質がかなり違っているということを理解しな いといけないことだと思います。 〇中畑委員長  ありがとうございました。そういうことになるとかなり限定されてくると思います。 コーディネーターで提供した後のいろいろなフォローまでするということまで中に含ま れる、心理的なフォローまで含むということになると、助産師とか臨床心理士とか、看 護師でもいいかもしれませんが、そういう職種に限られてくる。その場合にはあらかじ め決めておくということではなくてもいいのではないかという町野委員の御意見でした が、一応、そういう方をできるだけその施設としては養成をしていく、という理解でよ ろしいでしょうか。 〇石井委員  反対するわけではないのですが、施設を限定しないという前提の中で、あらかじめ作 るということが可能かどうかというのがわからないのです。 〇中畑委員長  そうですね。それは難しい問題ですね。施設を限定するという中には、きちんとした コーディネーターの資格が持てる人が存在するということも、その施設を限定するとい う要件の中には含まれているのではないかという石井委員の御意見です。そういうこと に立てば、ある程度このような要件を満たすコーディネーターになり得る人が存在する こと、そういうことが施設の要件の中に入ってくるという石井委員の御意見です。 〇北村委員  それは施設をあらかじめ指定しておくのではなく、結果として立派なコーディネータ ーがおられるところしかこういうことはできないという形で決まってくると思います。 ですから、あらかじめ指定する必要はないと思います。 〇中畑委員長  今の要件を満たすような方が存在する施設、その中に施設がおのずからある程度は限 定されてくるのではないか。そういう理解でよろしいでしょうか。では先ほどの守秘義 務云々の問題がありますので、それについては事務局で調べていただくということにし たいと思います。 〇位田委員  コーディネーションですから、ケアまでやるということを前提にしているわけですか ら、その病院なら病院で、そういう体制がとれるということも重要だと思います。コー ディネーターがいるということだけではなくてね。つまり例えば看護師さんがコーディ ネーターであるとすると、看護師さんでは無理な問題は、例えば心理療法士さんにもっ ていくとか、そういう体制もきちんと整えていただくということではないでしょうか。 〇中畑委員長  それを文書にしてみて、その辺をできるだけ母体のケアまでできるような施設という 形で文書的に落とすということで検討してみたいと思います。よろしいでしょうか。  次、(3)同意の手続きの際の手順です。ここにあるのはただ網羅しているだけですの で、きょう決めていただきたいと思います。(イ)同意のタイミング。・中絶の意思決 定よりも後に行うべきである。・妊婦が同意した後に、研究利用のための提供について 説明し、同意を得る。これは国立大阪ではそういう形でやっている。  (イ)同意の要件としては、・利用目的の開示。・同意後、1カ月間は同意が撤回で きる。・同意がヒト幹細胞採取の誘導につながってはならない。  (ウ)その他。・同意の撤回はいつでもできるようにするという形です。羅列してあ ります。  ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の中のこともあります。それは資料1−2 の中で両者の違いがあります。1−2の2ページ目を開いてください。これは各段階の インフォームド・コンセントの具体的な内容ということで、誰が行うかということでま とめていただいております。  (1)妊娠中絶の手術の説明、これは主治医が患者さんとの間で説明をする。  (2)中絶の意思確認・意思決定、これも主治医が行う。この中絶の意思決定がなされ た方についてだけ次に行く。  (3)研究協力の説明を受けるかどうかについての意思を確認する。これは主治医が患 者さんにそのことを尋ねる。もし説明を受けたいという患者さんは次に行く。  (4)コーディネーターに主治医が連絡をする。  (5)研究協力についての説明をして説明文書を手渡す。コーディネーターの方が患者 さんに説明をして文書を手渡すということになります。  (6)再度中絶手術の説明と同意は、主治医が患者さんに行うわけです。  (7)研究協力の同意書、パートナーへのお話。これはコーディネーターの方が患者さ ん及びパートナーに対して行う。  (8)研究協力の意思確認、これは患者さんからコーディネーターの方に研究協力をし たいという形で行われる。  (9)研究協力の意思決定、最終的にそういう形で行われる。  (10)最終的な同意の取消、患者さんからコーディネーターです、この場合にはコーデ ィネーターでなくてもいいかもしれませんね。施設の長でもなんでもいいかと思いま す。そういう形で実際に中絶は1−2の1ページでいうと、研究協力の意思確認という ことの後に実際は中絶の手術が行われて(9)の最終的な意思決定がおこなわれる。こう いう形で整理をしていただきました。  次のページは研究協力についての説明の具体的な内容です。ES細胞との指針との違 いをここでは書いていただいております。これはちょっと今の3番とは違いますかね。 こちらの不手際です。  (3)の同意の手続きの際の手順を決めてしまいたいと思います。同意のタイミングは 中絶の意思決定よりも後に行う。妊婦が同意した後に、研究利用のための提供について 説明する。これは1−2の全体の流れ図を承認していただきましたので、こういう形で 行っていく。  同意の要件。利用目的の開示、この説明文書を手渡して研究協力についての説明を し、その文書を手渡す。  同意後はいつでも同意の撤回ができる。ここで1カ月というものが出ておりますが、 これはヒトのES細胞の提供のときの文書との整合性ということで1カ月というのが出 できました。いつでも撤回できるという方がふさわしいのではないかという気がします が、いかがでしょうか。  それとも細胞株として樹立されていたものを途中で撤回してほしいということで、そ の細胞がすべて失われるということになると、それも問題かと思います。それも難しい 問題ですので御議論いただけますでしょうか。 〇高坂委員  1カ月というのは、これから少しずつ基礎的なデータが出てくると思うので、その時 に非常に響いてくると思います。というのはマウス、ラットでの実験というのは、細胞 をもし提供していただいたとして、それを培養すると、大体で1カ月以内、早ければ1 週間とか2週間でニューロスフェアというステムセルの塊が出てくるのです。それを言 い方は悪いのですが、フレッシュな状況で脳に戻してあげたほうが効果は出やすいと基 礎的には考えられます。ですからそこでそういうニューロスフェアが出たときに1カ月 間使えないということになると、将来的にいろいろなデータが積み重なってきたとき に、1カ月2カ月待ったために、あるいは凍結してしまったために、効き方が非常に悪 かったということも起こり得ると思います。  ですからどこから1カ月かというのは問題ですが、ここは慎重に考えていただきたい と思います。 〇中畑委員長  ありがとうございました。1カ月という限定をつけると、1カ月の間は少なくとも臨 床応用ということでは使えないということになってしまうのではないかということで す。文書的にその辺で良い表現はございますでしょうか。ある程度は、提供したが悩ん で使ってほしくないという形で撤回できる、ということは当然保障されるべきです。そ こといかに折り合いを持たせるかということです。ただ撤回したいという段階で、すで に使われてしまったということでは仕方ないということになってしまうわけですが、そ こをうまく文書的に表現できる言葉があれば。 〇長沖委員  うまい文書ではなく、そこを聞きたかったのです。例えば1年後にすでに使われたこ とは知っているが、やはりもうこれ以上は使わないでほしいという撤回の仕方ができる のかどうかによって文書は随分違ってくると思います。ですから、1カ月に関してもそ れまでに使われていても、これ以上はやめてください、ということが言えるか言えない かで中身が随分と変わってくると思います。 〇中畑委員長  長沖委員がいわれた、それまで使われていても、1カ月以後は使ってほしくないとい うことが伝わる文書であればいいと思います。1年後という形でも、例えば以前ヒアリ ングをした金村参考人のやり方だと、神経幹細胞を長期間ずっと培養していく。場合に よっては1年間培養できる。その間に数千万倍かに増やせるということを報告されてお りました。そういう場合も1年後にもそういうことはあり得るということになると思い ます。いかがでしょうか。  長沖委員がいわれたように、使われてしまっていたものはしょうがないが、それ以後 のものについては使ってほしくないということをいつでも言える、ということを文書に するということしかないという気がします。 〇位田委員  未来永劫いつでも同意を撤回しても良いというかどうかです。つまり委員長がおっし ゃったように細胞株にして増殖させて、場合によってはそれを分配するというようなこ とがあったときに、それが全部使えなくなるわけです。それはその親が死ぬまでは同意 撤回できるという話なので、本当にそれでいいのでしょうか。私はそれで一向にかまい ませんが、本当にそれで良いのでしょうか。  基本的に臨床研究で患者さんを治したいということを考えているときに、同意の撤回 というのはどこかで区切っておかないと、現実に同意を撤回したのに撤回の効果がほと んどないという状況になってしまうのは問題があるかもしれない。  1カ月ということにこだわっているわけではなく、例えばES細胞の場合には胚を凍 結した形で1カ月間を保持しておくということが前提になっています。なぜ1カ月かと いうと、大体1カ月ぐらいはあけておいた方が、最終的にその胚を潰してES細胞を採 るということを確認するというか、自分たちで納得するのに1カ月ぐらいあけておいた 方がいいだろうということでの1カ月なので、特に1カ月という数字に合理的な根拠は ないと思います。  今回の場合には、採取した幹細胞をできるだけ早く使うということですよね。すると 大体、早く使うというのはどのくらいのタイムスパンで考えればいいのか。例えば1週 間なら1週間で考えたほうがいいのか、それとも1カ月たっても大丈夫とおっしゃるの なら1カ月でいいと思いますが、その辺は科学的な問題だと思います。 〇高坂委員  人間のデータがないというのが非常に問題だと思います。 〇北村委員  細胞株が樹立されるまではいつでも撤回することができる、というのが現実的ではな いでしょうか。細胞株として樹立してしまえば、これは多くのヒトが使える権利はある と思います。細胞株としてされるまでは、いつでも、それ以上進めることはしないでほ しいといって撤回できるが、細胞株ができてしまった後に、その細胞株を使ってくれる なというのは非現実的だと思います。 〇中畑委員長  難しいのは、どこまでが細胞株か、何を細胞株とするのか。そこの議論になるとまた ややこしい話になります。そこはちょっと難しい気がします。そうしますといつでも撤 回できるという根拠の中に、先進医療というのは、誰が提供したのかということもたど っていけば遡及調査ができるというところが引っかかっております。そうでないなら、 連結不可能な匿名化という形にすれば、そこから後は患者さんから全く離れてしまう。  現時点では、新しい医療は連結可能匿名化という形で遡及調査ができる形で進めてい ったほうがより安全ではないか。これは最初の頃に何回か議論があったと思います。  そうしますと、連結可能匿名化の中に個人情報がどうしても入るということになりま す。そうしますと、連結不可能匿名化だとある一定のところで線を引けばいいと思いま すが、そこの問題がちょっと引っかかる。だから1カ月に線を引けばいいのか、あるい はもっと早い1週間なのか。あるいは1日なのか。その辺は非常に難しい。  長沖委員がいわれたような、行われてしまったものは主張できない。その細胞を使っ て行われていないものであれば、そこからあとはその細胞は使わないというような形に するのか、あるいはそれにプラスして北村委員がいわれた長期に培養されて細胞株にな ったものだけは、そこから除外する。そういう形のものにするのか。その辺のところに 落ち着くのではないかと思いますがいかがでしょうか。 〇高坂委員  これは最後のところでまた直す可能性はあるのですが、現状から申し上げますと、ラ ットとかマウスのデータを見てみると常識的にステムセルがきちんと出てくるまでに大 体1〜2週間は培養する必要があると思います。そうするとほかの例でクーリングオフ というのが1週間でしたか。ですからちょっと違いますが、2週間という線であれば後 々どういうデータが出て来てもと思います。 〇中畑委員長  きょうの時点では、1カ月を1〜2週間という形に改める。どちらかに限定してくだ さい。 〇位田委員  科学的に2週間でも1週間と2週間でそう差がないのであれば、患者さんの気持ちを 考えると、できるだけ長い方が望ましい。それが2週間でも1カ月でもあまり違わない ということであれば1カ月の方がいいと思います。そこは科学的な要素との勘案です。 〇高坂委員  実際にマウスでは2週間ぐらいかかっていると思いますので2週間。 〇中畑委員長  では2週間という形にここは変えていただくということです。よろしいでしょうか。 あまり長く培養していると、その性質が能力が失われてしまうということで、1カ月は 長すぎるのではないかという高坂委員の意見がありましたので、2週間という形にした いと思います。 〇町野委員  2週間の間に研究に着手しても良いということですね。わかりました。前の1カ月は 長すぎるという御議論の中では、1カ月待っていたのでは何もできないという御議論が あったので、その間は何もやらないという趣旨かなと思ったのですが、そうではなく、 始めるということですね。 〇高坂委員  そうでないとその状況で細胞を2週間とっておけないわけです。 〇町野委員  わかりました。撤回したからどうなるのかと言うことの議論は全然ない。ある場合、 法律ではそのものを返せとかという議論になるわけですが、それは不可能なわけです。 一方、2週間の間は凍結しておくという趣旨でもないわけですね。わかりました。 〇中畑委員長  もし撤回するということになれば、その細胞は礼意をもってちゃんとそれなりの処分 をする。それはES細胞を取り扱うときと同じ要件ということになると思います。やた らと同意が撤回されたからといって、その辺のごみ箱に捨ててしまうということは絶対 にあってはならないことです。細胞になったとはいえ、その細胞は敬意をもってその後 の処理をするということになると思います。 〇石井委員  わからないので先ほどの確認です。ESのときの1カ月と2週間の意味は全く違うと いうことですね。2週間で切るという決定的な根拠がもう一つわからない。なぜ2週間 なのかということをもう一度説明してください。 〇高坂委員  脳というか神経系の組織をばらばらにして一つ一つの細胞をごちゃっと入れればいい というのはやめましょうという話です。できれば幹細胞という性格をきちんと確認して からやるということは、その脳の細胞を培養しないといけないわけです。培養している 間にそこから幾つか存在している神経幹細胞がどんどん分裂して、たくさんのボール状 の塊になってくるのです。そういうものが使えるということです。そういうボール状の 塊、神経幹細胞の塊が出てくるまでに通常は1〜2週間かかりますということです。  したがって、そういうものが出て来てはじめて可能ならば患者さんに応用していくと いうことになりますので、最低限1〜2週間の期間がないとその細胞は使えませんとい うことです。 〇石井委員  2週間あると使える状態が生じるから、その使える状態になってから撤回してもらっ ては困るということですね。 〇高坂委員  いや使える状態になって撤回があった場合には使わない。 〇中畑委員長  2週間たてば使われてしまうのではないか。使われてしまった後で撤回したいという ことを申し出たとしても、それは取り返しがつかないということになるわけです。だか ら長沖委員がいわれたことは、使われてしまったものは仕方ないが、それ以上は使って ほしくないという形でそこに細胞が残っているとすれば、それは廃棄というか、それな りの処分をするような方向に持っていくべきではないか、というのが長沖委員の意見で あったと思います。 〇位田委員  2週間という期限は設けるが、その後にボール状になったものが出てきて、それがま だ使われないで保存されている場合には、同意の撤回があった場合にはそれを廃棄する ことかできる。そういう意味ですね。ESの指針もそのように書いてあった。1カ月を 超してまだ保存されている、使われないでいる場合には、どの時点でも、その状態であ る限りはね。使われてしまえばそれを撤回するというのは実際には無理だと思います。 〇中畑委員長  その点についても御意見があったように、細胞株になって何十人、何百人に使われる ような状態になったものを撤回するということは、いろいろなことを考えると、それは 難しいのではないか、その問題も逆にあります。 〇高坂委員  細胞株というものと、ステムセルは違うのです。神経幹細胞は厳密にいうと株ではな く、これは一番の問題はそれを凍らしたときに、凍らせてそれをもう一回起こしたとき に、分裂能があるのかということがヒトではまだ十分にわかってないのです。細胞株と いうのは凍らせようと何をしようがどんどんと分裂してその都度増えていく、というこ とですが、残念ながら神経幹細胞の場合にはたくさん増えるということはわかっており ますが、凍結によってどういう影響を受けるのか、あるいはそれを何回もお皿に植え替 えていって培養したときに、本当に神経細胞になっていくのか、そういうところの能力 はヒトではまだ十分に基礎研究ができていないのです。ですから現状では2週間ぐらい のところですぐに使わないといけない事態が起こり得るということです。 〇中畑委員長  時間も5時を過ぎましたので、いまぐらいのところでほぼ合意が得られたということ にして、次回、その辺については再確認をしたいと思います。 〇石井委員  2点あります。1点目は先ほどの手続の要件に、提供をすることによって中絶の時期 が遅れることがないということを要件として入れる。 〇中畑委員長  それは入っていると思います。手続き面での要件の中に中絶の時期や手技がと入って いる。 〇石井委員  意思決定の問題ではなく、実行が遅れることは母体に対する危険があるのです。 〇中畑委員長  それは織り込まれていると思います。 〇石井委員  わかりました。もう1点は、基礎研究がないからわからないということが言われてい る。これは臨床研究の指針です。基礎研究がないものについて臨床研究を行うことは認 められないのではないか。まだ基礎研究が必要であるという段階であれば、臨床研究指 針として胎児を利用することを認める必要性はないのではないか。 〇中畑委員長  高坂委員のいわれたことは、動物実験は十分にやられているが、実際に岡野委員のよ うにヒトの胎児の脳からの細胞株というのが実際に国立大阪から作られてそれを使った 研究が十分に行われているが、まだその点をさらにもう少し基礎研究を重ねて臨床に移 るべきだという趣旨でいわれたと思います。基礎研究が行われていないということでは ないのです。十分にいま行われている。まだ少し足りないということの趣旨であると理 解しましたが高坂委員それでよろしいですね。 〇高坂委員  まさしく臨床研究という意味で申し上げたのです。ラットやマウスはたくさんある。 サルもある。実際にヒトを使った研究は全くできていないのです。科学的な根拠に基づ いてこういうデザインで実験をするということがね。それがそういう意味での基礎研究 というのは、まさしくそれは臨床研究であると思いますが、それが基礎的であるからや ってはいけないということであるなら、未来永劫できなくなってしまいます。 〇中畑委員長  時間になりましたので事務局から、御挨拶を含めてお願いします。 〇事務局  御議論ありがとうございました。7月に疾病対策課長の異動がございましたので御紹 介をさせていただきます。 〇疾病対策課長  関山でございます。きょうは所用がございまして遅参いたしまして大変に恐縮でござ います。この件につきましては、先生方に熱心な御討議を本日いただきましてありがと うございます。今後ともよろしくお願いいたします。 〇事務局  続きまして次回の予定でございます。私どもで日程を調整いたしまして、日程を決定 させていただきます。それが決まりましてから委員の先生方に日程をお知らせしたいと 思っておりますのでよろしくお願いいたします。 〇中畑委員長  以上を持ちまして本日の会議を終了したいと思います。ありがとうございました。                         ○照会先                         厚生労働省健康局疾病対策課                         tel 03−5253−1111                         担当:菊岡(内線2353)