04/08/24 独立行政法人評価委員会第13回調査研究部会議事録             独立行政法人評価委員会調査研究部会                  第13回 議事録             平成16年8月24日(火)15:00〜17:00             厚生労働省専用第18・19・20会議室 出席委員 五十嵐委員、岩渕委員、大久保委員、岸委員、黒澤委員、酒井委員、      清水委員、武見委員、田村委員、政安委員 1.開会 ○大久保部会長  定刻になりましたので、ただいまから独立行政法人評価委員会第13回調査研究部会を 開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただ き、誠にありがとうございます。  今回は、安井委員が御欠席です。  それでは、はじめに事務局から本日の議事について簡単に説明願います。 ○岩渕政策評価官  本日の会議ですが、第12回調査研究部会の最後に説明させていただいたとおり平成17 年度末までに中期目標期間が終了する法人の組織・業務の見直しに向け、当省において 検討中の調査研究部会所管の3法人の見直し素案の見直しについて、委員の皆様の御意 見をいただきたいと考えております。  本日いただいた御意見を踏まえ、見直し素案を当省にて策定することとなっておりま すので、よろしくお願いいたします。 2.審議 (1)3法人見直し素案の説明 ○大久保部会長  それでは、議事に移ります。  事務局から説明があったとおり、調査研究部会所管の3法人の「中期目標期間終了時 における独立行政法人の組織・業務全般の見直しの素案」については、現在厚生労働省 において検討中です。  この検討中の見直し素案の内容について、3法人を所管しております厚生労働省の担 当課から、説明をお願いします。説明については、1法人あたり15分程度でお願いしま す。  なお、説明は、3法人分を通して行っていただき、その後まとめて委員から意見等を いただく形にいたします。  では、はじめに、国立健康・栄養研究所の見直し素案について、厚生科学課の高山研 究企画官より説明をお願いします。 ○高山研究企画官  厚生科学課研究企画官の高山でございます。国立健康・栄養研究所につきまして御評 価いただきましてありがとうございます。また、前回は所用により途中で席を外させて いただきまして大変失礼いたしました。おわび申し上げます。  それでは、見直しの素案整理表に従いまして簡単に説明させていただきます。  1ページは、まず法人全体の概要について書いています。  次に中期目標の達成状況ですが、ここでは7つの項目に分けてまとめております。  1.効率的な業務運営体制の確立  独立行政法人化以来、業務の効率化を図るため、従前の組織の見直しを行い、目的と する研究内容に対する「プロジェクト体制」を整備してきております。職員の採用につ いては、原則として任期付、公募制で行っており、15年度では研究員2名を採用してい ます。  2.内部進行管理の充実  四半期に1回、各プロジェクトリーダー、部長が各担当から業務の進捗状況の報告を 受け、必要な指導を行うとともに部長会に報告し、部長会メンバー全員が研究内容・進 捗状況を把握し、内部進行管理の充実を図っています。  プロジェクトごとの報告・評価とは別に12月に中間報告を行い、年度末の実績報告に 関して、研究所外部の委員も含めた形で評価を行っています。  個人評価は、全研究員に対して客観的な指標における業務評価及び理事長による個別 面接を実施し、その評価結果は、予算・研究スペースの配分、特別研究員の配置等に反 映しています。  3.業務運営の効率化  共通物品の一括購入、ペーパーレース化、節電等により可能な限り経費節約を実施し てきており、運営費交付金を平成13年度の2%相当額節減するとの目標は達成できる見 込みです。  4.運営費交付金以外の収入の確保  (1)運営費交付金以外の収入の確保は、本来業務に支障のない範囲で積極的にその確 保に努めており、「競争的資金」の獲得は約4億1,000万円であり、目標の2億7,300万 円を大きく上回っています。  (2)寄附研究部の創設については、15年3月に関係する規程を策定し、16年4月から 運営しています。「寄附研究部」創設の目的は、民間の資金を獲得し、比較的自由に研 究させることにより特許を得られるような技術の創出を念頭に置いており「特定保健用 食品」をターゲットに、年間4,500万円程度の寄附を見込んでいます。  5.行政ニーズ及び社会ニーズに沿った調査及び研究の実施  5年ごとに行われる食事摂取基準(栄養所要量)の改定のために、ヒューマンカロリ ーメーターを用いた測定、二重標識水によるエネルギー消費量データの収集を行うとと もに、エネルギーや各種栄養素に関する国内外の文献レビュープロジェクトを完了し、 第7次改定食事摂取基準策定の中心的役割を果たしました。  いわゆる「健康食品」の有効性、安全性の評価を行うとともに、インターネットを活 用した「健康食品等の安全性情報ネットワーク」の構築のほか様々なデータベース化を して、対策の有効性を評価するシステムを構築しました。  このほか、国民健康・栄養調査の集計・分析、健康増進法に関する試験等国の行政施 策に直結した調査研究業務を多数行うとともに、研究成果を広く発信することにより社 会のニーズに応えています。  6.成果の積極的な普及及び活用  15年度までの3カ年において、学会発表578回、原著論文を262報行っており、中期目 標を超えて大きな成果を上げています。また、インターネットも活用し、ホームページ に研究成果や業務概要を公開しています。  7.国内外の健康・栄養関係機関等との協力の推進  (1)若手研究者の育成として、若手研究者等を積極的に受け入れることに努めており、 15年度では特別研究員7名、協力研究員27名、研修生47名、計82名の受け入れを行いま した。  (2)連携大学院構想というのがありまして、「お茶の水女子大学大学院」との連携を 持つこととし、研究員1名を客員教授として派遣したところです。  (3)国際協力としては、アジア・太平洋地域の栄養科学に関する研究者のネットワー クを構築するため、アジア地域の研究者を招いて第1回アジアネットワークシンポジウ ムを開催するとともに、若手外国人研究者招へい事業を策定し、候補者を募集しまし た。これらの新たな取り組みにより、アジア・太平洋地域において初めての栄養関連の WHO協力センターとなる準備が整いました。  4ページ以降は法人の事業について、個別法に記載されている業務の範囲について取 りまとめたものです。  4ページは、国民の健康の保持及び増進に関する調査研究など基礎研究の3つについ て、事業の概要、事務及び事業の改廃に係る具体的措置、上記措置を講ずる理由、この 3項目についてまとめています。  理由のところですが、これらの研究を基に作成される「栄養所要量(食事摂取基準) 」は、日本人が健康を保つために必要なエネルギー及び各栄養素の標準的な摂取量を示 すもので、年齢や性別に応じて一日当たりに必要なエネルギーや各栄養素について、そ れぞれの数値を求めたもので、学校給食や栄養指導の現場はもちろん、バランスのとれ た食事の献立づくりの基準として、幅広く用いられていることから、国民の健康・栄養 に係る指標が失われてしまうこととなり、業務の廃止を行うことはできない。  当該業務による調査研究は、中長期的に継続して行う必要があり、研究所は長年にわ たる調査・研究のノウハウを蓄積しており、他に類似の調査研究を行っている機関はな く、健康・栄養政策の基礎となる調査研究を実施するうえでの信頼性や公平性におい て、他に主体となりうるものは見あたらないことから、業務の移管を行うことはできな いと考えています。  また、当該業務は、健康・栄養政策の基礎となる研究であり、採算性は見込めないこ とから民営化は困難であると考えています。  見直しの方向性については、個別の調査研究テーマの終了に伴う新テーマを、新たな 中期計画等においてより具体的・計画的に定めることを基本としつつ、その時点での健 康・栄養政策の動向を十分に踏まえたうえで、国民生活の向上に資するテーマをより効 果的・弾力的に設定することとしたいと思います。  5ページにいきまして、国民の健康・栄養調査の集計業務です。  理由のところですが、この調査の目的は、時系列的に国民の健康状態等を把握して、 国民の健康増進のための施策の企画・立案等の基礎資料として活用することにある。国 民の健康状態を継続的に把握し、時系列的変化等もフォローするためには、調査結果の 処理、集計を栄養学的な観点から行う必要があり、これらの業務について廃止や縮小し た場合は、国民の健康状態の的確な把握、分析が困難となり事態に応じた政策立案等が 困難になる。  また、この調査には高度の個人情報が含まれており、データの処理、集計を行ううえ でも調査対象である国民の信頼が不可欠ですので、研究所の職員以外の者が実施する場 合には、調査そのものの実施が困難となるおそれがあり、民営化や他の法人への移管は できない。  見直しの方向性については、当該業務は、厚生労働省が行う「国民健康・栄養調査」 に係るデータの処理・集計に関するものであり、廃止・縮小及び他機関への譲渡は効率 的な事業継続の観点から困難であり、新たな中期計画等における標準処理期間の設定を 図るとともに、事業実施に当たっての費用節減や事務の効率化の徹底等を図っていきた いと考えています。  6ページは特定用途表示の許可等に係る試験です。  健康増進法第26条3項の規定により実施している「特定用途食品」の表示許可の申請 に係る試験については、同法の改正に伴い、平成15年度から厚生労働大臣の登録を受け た法人(登録試験機関)でも実施できることになりましたが、15年度の登録機関での認 定実績は0件であり、直ちに「特別用途食品制度」に支障が生じることになります。  見直しの方向性については、研究所における特定用途食品の許可のための試験検査を 受けようとするニーズが高いことから、現段階において、当該業務を廃止・縮小した場 合、直ちに「特別用途食品」の許可等に支障が生じることから、処理期間の短縮等を図 りつつ、引き続き当該業務を継続することとしたいと思います。  7ページは特別用途食品の収去試験です。  理由のところですが、健康増進法では、「厚生労働大臣は、特定用途表示をする者が 法に違反し、又は虚偽の表示をしたときは、当該許可を取り消すことができる」とされ ており、研究所の行う試験検査の結果に基づき、厚生労働大臣は、特定用途表示の許可 の取り消し等を行うものであり、研究所の試験は公権力の行使の前提となる試験です。 当該試験は、公衆衛生の確保のため、公正かつ迅速に行う必要があることから、独立行 政法人たる研究所が国と連携を図りつつ検査を行うことにより、信頼等を確保しうるも のであります。  見直しの方向性については、当該業務は、中立性・公平性を確保するために一元的に 行う必要があり、廃止・縮小及び他機関の譲渡は困難であるが、新たな中期計画等にお ける標準処理期間の設定を図るとともに、事業実施に当たっての費用節減や事務の合理 化等を図っていきたいと考えています。  8ページは組織形態の見直しに係る素案です。  理由を3つあげています。  1.当該研究所で行っている生活習慣病対策の基礎研究、保健機能食品に係る基礎研 究、国民健康・栄養調査の集計業務などの各種の調査・研究は厚生労働省の健康・栄養 行政の基礎的な部分を担っており、確実な実施が必要とされているもので、他の研究所 において類似の研究を行っているところがないことから、業務の廃止や移管を行うこと ができない。  2.研究所の設置目的は、個別法第3条に示されている「国民の健康の保持及び増進 に関する調査及び研究並びに国民の栄養その他国民の食生活に関する調査及び研究等を 行うことにより、公衆衛生の向上及び増進を図る」ことにある。この目的を遂行するこ とが研究所の使命であり、様々な研究を実施していますが、採算性の点から営利を目的 とする民間の研究所では行い得ない。  また、研究所の施設及び設備は、国立感染症研究所の庁舎の一部を無償借用している ことからも、民営化し、有償使用となった場合には、採算性が低下することから、民営 化は困難ではないか。  3.国民のプライバシーに係わる情報を取り扱う「国民健康・栄養調査」に関する業 務を実施しているほか、食品の特別用途表示食品の収去試験等、公権力の行使を前提と する業務を実施しており、極めて高い客観性と信頼性が確保できるように安定した身分 を付与し、引き続き、特定独立法人とすることが必要と思われます。  見直しの方向性については、業務の効率化を図るため、従前の組織の見直しを行い、 目的とする研究内容に対応する「プロジェクト体制」を整備してきていますが、さらに 一層効率的な研究体制の整備に努めており、次期中期目標では部体制の見直しを行いた いと考えています。以上です。 ○大久保部会長  では次に、産業安全研究所及び産業医学総合研究所の見直し素案について、労働基準 局安全衛生部計画課の森戸調査官より説明をお願いします。 ○森戸調査官  産業安全研究所から説明させていただきます。  まず中期目標の達成状況ですが、中期目標で求められているのは、業務運営の効率 化、国民に対して提供するサービスその他業務の質の向上、財務内容の改善です。その 中で業務運営の効率化に関しては、効率的な業務運営体制の確立、内部進行管理の充 実、業務運営の効率化に伴う経費節減等の目標が設定されています。  効率的な業務運営体制の確立に関しては、産業安全研究所が独立法人化される時に、 それまで研究所が行っていた産業安全博物館の管理業務を行政に移し、併せて依頼試験 業務を廃止して、調査研究業務に集中するための業務区分の見直しを行いました。  また、多様化する研究分野と課題に対応した効率的な業務運営を図り、部の枠を超え たチームによる研究を推進するため、組織を2課4部体制から1課2部体制として、研 究組織にグループ制を導入しました。  研究員の採用に関しては、公募によって行っておりまして、任期付研究員の採用も行 っています。  内部進行管理の充実に関しては、内部評価委員会によって研究課題の評価を行い、そ の結果に基づいて研究予算の増減を行うとともに、ポイント制による個人業績評価を行 って評価の客観性・公平性を高める等の取り組みを行っています。  経費の節減に関しては、運営費交付金を充当して行う事業については、中期目標期間 中において、新規追加、拡充部分を除き、平成13年度の運営費交付金の最低限2%に相 当する額を節減することとされていますが、施設整備管理部門を一般競争入札とし、省 エネルギー月間の設定、省内LANの活用によるペーパーレス化等により経費節減を図 っておりまして、中期目標に沿って削減しているところです。  さらに、外部研究資金の獲得についても積極的に取り組んでいるところです。  国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関しては、労働現場のニー ズ及び行政ニーズに沿った調査研究の実施が求められていますが、中期目標に示されて いるプロジェクト研究及び基盤的研究を着実に実施しておりまして、中期目標の一つで ある学会発表300報、論文発表200報を十分に達成する見込みです。  調査研究の成果の中には行政基準や行政通達に反映されているものがあります。  産業安全研究所の特徴の一つとして労働災害の原因調査がありますが、大規模な災害 が発生した場合等において迅速にこれを実施しておりまして、その調査結果が行政通達 に反映されるものもあり、同種災害の防止にも寄与しています。  財務内容の改善についても中期目標に従って実施しているところです。  次に見直しの方向について説明したいと思います。2ヘージにいきまして、今まで申 し上げたような現状を踏まえて、研究所の見直しの方向について検討したということで す。  まず産業安全研究所の実施している事業ですが、事業所における災害の予防に関する 調査及び研究を行っています。  その事業の概要としては、最近増加傾向にあることから行政ニーズが高まっている重 大災害を中心とした産業災害を防止するために、各種災害現象の解明及び災害防止技術 の開発に関する調査研究を行うとともに、行政からの依頼に基づいて高度な専門的知見 を活用し、日々多様化・複雑化する労働災害の原因調査を行い、再発防止対策の立案の 一翼を担っています。  見直しの方向につきましては、2点示しています。  (1) 現在、産業安全研究所においては災害原因の究明に関する調査を行っています が、多様化する災害の原因をより適切かつ迅速に究明するための機能の強化を図るた め、組織の再編、柔軟化により労働災害調査体制を強化する。  これに関して、5ページの3つ目の○を見ていただきたいと思います。昨年発生した 愛知の製鉄所におけるガスホルダーの爆発災害は川下の産業である自動車産業にも影響 を与えるような事故でして、早急な災害原因の究明が求められています。  事故が発生した場合、責任を求めることが抑止力になることから、災害調査を十分に 実施する必要がありますが、6ページの(3)を見ていただきますと、技術の高度化や設 備制御のシステム化等が進んでいるために、労働基準監督署の職員では原因究明が困難 になってきているという現状があります。そのようなことから労働災害調査体制の強化 を図ることとしています。  (2) 欧米ではリスクを管理するという発想で機械安全などにも取り組まれておりま して、ISO規格、国際規格も策定されています。しかし日本の安全というのは、リス クがあれば安全ではないのではないかという極端な発想にとらわれつつ、一方で安全を 設備ではなくて労働者の教育に求めているという実態があります。単一民族で教育水準 が高いという前提で安全性対策が進められてきた面があるわけですが、そういった背景 からリスクマネジメント等に関する分野においては欧米より遅れているということもあ りまして、安全の国際化にも対応するために、リスクマネジメント等の分野について戦 略化・重点化を図ろうということです。  人を増やすことはできませんので、さらに効率化を図るためには研究分野の整理も必 要であるということで、(2)にありますように、専門的知見の継承を目的とする研究を 原則廃止し、プロジェクト研究の基礎となる研究、萌芽的な研究に重点を移していく。 過去から実施してきた研究も災害調査に必要な専門的知識の基盤となることから決して おろそかにはできませんが、限られた組織・予算で効率化を図るために見直しの方向に 掲げさせていただきました。  次に、事務及び事業の廃止ができない理由を書いています。  労働災害による死亡者数は年間1,600人を超え、約53万人が被災しています。重大災 害の発生も最近は増加傾向にあります。  国は、災害発生原因の究明と再発防止対策の推進、法違反を伴う労働災害についての 司法処分の実施等を行い、これによって労働者の安全と生命の確保を図っているところ ですが、これらの各施策の推進・実施に当たり、労働災害防止に資する技術的研究、高 度な専門的知見が必要となる場合が数多くあり、そのほとんどを産業安全研究所にお願 いしているというのが実態です。  その成果は、ヒドロキシルアミンによる爆発災害の防止のための労働安全衛生規則の 改正、安全帯の規格の改正のほか、「土止め先行工法に関するガイドラインの策定につ いて」、「コンクリートポンプ車のブーム破損に係る労働災害防止について」等の行政 通達に反映される等、労働者の安全と生命を守るという行政目標の達成のため活用され ており、このような事業を行っている機関は他に存在しませんので、事業を廃止するこ とはできないとしています。  3ページの一番上の○を見ていただきますと、例えば、六本木ヒルズで回転ドアによ る事故が発生し、「大型自動回転ドア安全JIS規格原案作成委員会」が設けられまし たが、大学には専門家がおらず、産業安全研究所に学識経験者としての委員就任要請が くるなど、我が国唯一の安全に関する調査研究機関であるということです。  次の民間又は地方公共団体への移管を行わない理由については、4ページからの組織 形態の見直しに係る素案のところで説明いたします。  組織形態の見直しに係る措置については、労働災害調査体制等の強化及び産業安全に 係る唯一の調査研究機関としての調査研究の重点化を図ることにより、効率的かつ効果 的な組織体制を整備することとし、公務員型である特定独立行政法人を維持することと しております。  その理由につきましては6ページを見ていただきたいと思います。  (3)安全性研究所は、労働基準監督官等による災害原因の究明が困難な爆発災害等の 災害が発生した場合には、直ちに現場に赴いて災害原因を究明する緊急の調査を行って います。  最近は原因究明が困難であり、周辺住民を巻き込んだ大規模なものが多く、また一工 場の生産が止まることにより、取引先や関連企業の事業の展開に大きな影響を与えるも のであることから、早期に災害原因を究明し、適切な再発防止対策を講じる必要があり ます。実際に事業所に立ち入り、必要であれば試料等の提供を受けるなど、公権力を行 使しつつ災害調査を行う必要があることから、産業安全研究所職員は公務員でないとう まくいかないのではないかということです。  (4)にありますように、災害調査はすぐに行っていただく必要があるわけですが、争 議権等の問題もありますので、労使の中での争議等がありますとすぐに行けないという 問題もあります。  私どもは送検という司法処分を行いますが、司法処分を行うかどうかの前提となる技 術面の判断を行う必要があり、公正・中立的な立場から産業安全研究所が行っておりま す。  (1)企業のノウハウが漏れるおそれがなく、公正・中立的な立場から高度な技術的助 言を受けられることから、産業安全研究所には企業から安全に関する相談が寄せられて います。昨年度の実績は160件あり、これがなくなれば、企業の安全対策が滞り、今後 大規模な災害が発生するおそれがあります。  実際に、群馬県で大規模な爆発を発生させたヒドロキシルアミンの製造に関し、爆発 事故が発生する前に、事故を発生させたメーカーとは違う別の大手メーカーから相談を 受け、安全確保が十分できていないとして当該メーカーが製造をやめた例があります。  こうした技術相談については、公正・中立な立場の公務員型の特定独立法人であるこ とを信頼して、企業秘密に属する事項を相談しているということであり、特定独立行政 法人でなくなった場合にはこのような技術情報の相談がなくなり、安全水準の向上が阻 害されることになります。  (2)また、唯一の安全に関する調査研究機関として、職員がその専門性を活かして、 国際規格を含む規格策定に参加・貢献し、安全の担保を担っていますが、特に、産業安 全研究所が特定独立行政法人として高度な公正・中立的な立場にあることから、策定さ れた規格の公正性、信頼性の向上に貢献しています。  以上が産業安全研究所です。  次に、産業医学総合研究所について説明いたします。  まず中期目標の達成状況です。中期目標に求められているのは業務運営の効率化、質 の向上、財務内容の改善等ですが、業務運営の効率化に関しては効果的な業務運営体制 の確立、進行管理の充実、業務運営の効率化に伴う経費節減等です。  効率的な業務運営体制の確立に関しては、国内外の労働機関との協力の推進を図るた め、労働衛生研究の国際化に対応し、国際基準策定への協力、途上国支援など国際交流 支援機能を強化するため、図書情報室を改組して、国際研究交流情報センターとしたと ころです。  研究員の採用に関しては、公募によって行っており、任期付研究員の採用も行ってい ます。  内部進行管理の充実に関しては、定期的に開催する部会により研究業務の進行管理を 行うとともに、所内イントラネットを利用し、役員及び管理者による業務進捗状況管理 の効率化を図っています。  また、個人業績評価により研究員の配置換えを行っています。  経費の節減に関しては、産業安全研究所と同様、中期目標において運営費交付金の2 %に相当する額を節減することとされていますが、競争入札の徹底、節電等による光熱 水費の節約等によって、中期目標に沿って削減しているところです。  外部研究資金については、競争的研究資金、受託研究等に積極的に応募し、一定の成 果を上げています。15年度は合計39件となっていますが、競争的研究資金について共同 研究に参画したものも含まれていますので、それを除きますと14件になります。  国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関してですが、労働衛生重 点研究推進協議会の開催等によって労働現場のニーズの把握に努め、労働現場のニーズ 及び行政ニーズに適切に対応し、中期目標に示されているプロジェクト研究及び基盤的 研究を着実に実施しているところです。その結果、中期目標の一つである学会発表 1,000報、論文発表400報を十分達成する見込みです。調査研究成果の中には行政通達に 反映されたものもあります。  さらに、労働衛生に関する国際基準、国内基準の制改定についても積極的に取り組ん でおり、WHO、ISO、OECD等の国際機関に設置された21の委員会へ役職員を派 遣し、研究成果を国際基準の制改定等に反映させています。  財務内容の改善については、中期目標に従って実施されています。  次に、見直しの方向について説明したいと思います。  実施している事業としては、労働者の健康の保持増進及び職業性疾病の病因、診断、 予防その他の職業性疾病に係る事項に関する総合的な調査及び研究です。  事業の概要としては、労働者の健康の保持増進等に寄与するために、社会的・行政的 ニーズの高い職業性疾病等を中心として労働衛生に関する調査及び研究を幅広く行って います。  見直しの方向については2点掲げております。  過重労働、メンタルヘルスについては労災認定件数が高水準で推移しており、社会的 にも大きな問題になっています。この分野については今後さらに研究の必要性が高まる と予想され、予防という観点から行政の施策と従来以上に密接な関連が求められると考 えているところです。  このため、行政ミッション型研究業務への重点化を図るというのが1点目です。  厚生労働大臣は、職業性疾病を含む労働災害の発生状況等を踏まえ、計画的にその防 止対策を講じるため、労働災害防止計画を5年ごとに策定しています。平成15年4月か ら第10次労働災害防止計画が推進されていますが、そこで必要とされている調査研究を プロジェクト研究として実施し、研究資源を重点的に配分しようというものです。  また、労働衛生上の課題を早期に発見することを目的として、作業関連疾患や作業環 境の全国サーベイランスを実施する機関としても期待されています。  2点目は、国内における労働衛生に係る研究の実施に際して、限られた研究資源を有 効に活用し、より一層効果的に研究が行われるよう、ナショナルセンターとしての役割 を充実させようということです。  産業医学研究所は、「21世紀の労働衛生研究戦略会議」が示した18の優先研究課題に ついて研究実施状況の調査等を行い、課題別の研究者数や研究課題を取りまとめて発信 しているところです。その中で、大学や民間で取り組まれていない全国調査や多様な分 野の専門家が協力して行う必要のある研究など、国の機関として取り組むべき課題に研 究の重点化を図るというものです。  研究課題の重点化を図るという観点から基盤的研究課題を精選し、それに伴う研究体 制の整備も図ることとしています。  法人を廃止しない理由ですが、職業性疾病の発生は年間8,000人を超え、重篤な職業 性疾病も後を絶っておらず、社会問題となっている過重労働による脳血管疾患や虚血性 心疾患、精神障害等の労災の申請、認定件数も増加傾向にあります。このため、国は、 職業性疾患や健康の保持増進対策を講じているところです。  これらの各施策を効果的に進めるためには、行政がその時点で必要な労働者の健康の 保持増進及び職業性疾病の予防に資する技術的研究が実施されることが必要であり、産 業医学総合研究所が行った研究が「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラ イン」や「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」といった形で行政指針となる など、大きな貢献を果たしています。  また、職員がその専門を活かして、国又は国際規格の策定等に貢献しています。  民間又は地方公共団体への移管を行わない理由につきましては、組織形態の見直しの ところで説明したいと思います。4ページですが、組織形態の見直しに係る素案です。  組織形態に関する見直しに係る具体的措置ですが、社会的・行政的ニーズの高い研究 に研究資源を重点配分するなど行政ミッション型研究業務の重点化及びその基盤となる 労働衛生研究に関して研究課題を精選し、社会的・行政的意義の低い研究を廃止するな ど、労働衛生研究の推進振興をより一層図るために効率的かつ効果的な組織体制を整備 するということです。  以上の理由により、産業医学総合研究所を廃止することはできないということです。  5ページにいきまして、特定独立行政法人であることを維持する理由です。  産業医学総合研究所の研究は、職業性疾病や「過労死」等の防止に係るものである が、当該研究は、今後国が労働衛生政策の中で特に重点を置いて推進していく施策のた めに必要不可欠な調査・研究であり、かつその重点の方向は、企業における個人の健康 情報や企業の事業内容に幅広くかつ深く関与するものです。このような研究は、公務員 である特定独立行政法人でないと、個人や企業からの協力が得られず、適切な成果を生 むことが困難となり、労働衛生行政の運営に支障をきたすことになる。特に労働者個人 は自分の健康情報を企業に知られれば解雇等につながるという怖れを常に抱いており、 安心して情報提供できる公務員という社会的身分が必要ではないかということです。  2番目としては、実際に災害現場に赴く回数は産業安全研究所と比較すると少ないの ですが、災害調査機関としての役割も担っておりまして、企業の中に立ち入ったり、関 係者から事情を聴取したり、場合によっては試料を持ち帰るということで、公権力の公 使が伴います。また、適切な調査結果に基づく関係者の責任追求をすることを考慮する と、公務員としての身分を有するべきであると考えているところです。  私からの説明は以上です。 (2)3法人見直し素案に対する意見 ○大久保部会長  では、ただいま説明のありました法人の見直し素案について、御質問や御意見があり ましたらお願いいたします。 ○黒澤委員  産業安全研究所の1ページの下から2行目に「国内外の産業安全関係機関等との強力 」とありますが、「協力」だと思いますので、訂正していただきたいと思います。  5ページの3番目の行で事例的な現状をコメントしていますが、そのとおりだと思い ます。ただ、最後の「地域経済に大きな影響を与えかねない」という表現は臆測的な表 現で、あまり好ましくないと思いますね。データを背景にしたような表現のほうがいい んじゃないでしょうか。認識としては全く異存はありませんが、表現としては適切でな いと思いますので、工夫していただければと思います。 ○政安委員  国立健康・栄養研究所の4ページですが、事務及び事業について上記措置を講ずる理 由のところで、3行目に「学校給食や栄養指導の現場はもちろん」と書いてあります。 学校給食に限定するのではなくて、「特定給食施設」という書き方にすると、すべての 国で認めている給食施設が入るのではないかと思いました。 ○武見委員  国立健康・栄養研究所のことなんですが、去年、今年の評価委員会の中でNR制度の 創設といったような中期目標、中期計画に具体的にないことについてかなり議論になっ たと思います。そうした社会的ニーズ、行政ニーズに対応した積極的な取り組みをこの 評価委員会の中では評価する意見も多かったと思いますが、一方でそのことが財務面な どでいろいろ難しい面を呈したことも事実だと思うんです。  今後、栄養や食生活に関して社会的ニーズや行政ニーズが刻々と変化していくことは 予想されますが、そうした部門への対応というのは今回のこの素案の中ですと、どこに 盛り込まれているのか。あるいは盛り込まれてないのか。そうしたことについてどう考 えたらいいのかということをお聞きしたいと思います。  強いていうなら、国立健康・栄養研究所の4ページの上から3つ目の箱の事業の改廃 に係る具体的措置というところの2行目に「健康・栄養政策の動向を十分に踏まえた上 で、国民生活の向上に資するテーマをより効果的・弾力的に設定することとする」とあ りますが、ここがそれに当たるのでしょうか。もう少し積極的にそうしたものを表現し ておいてもいいのではないかと思ったんですが、いかがでしょうか。 ○高山研究企画官  評価の中で特別に取り上げていただきましたNR制度等につきましては、今回の素案 では明確な記載はございません。中期目標、中期計画との関係もありますので、今回の 素案には明確には明記してありませんが、2ページの行政ニーズ、社会ニーズに関係し たものについては中心的役割を果たしていくとか、4ページの基礎的な研究のところ で、動向を踏まえて効果的・弾力的に運営していくとか、関係した記載はございます。 事業の推進に当たっては財務面で見直しをしなくてはいけないものもありますので、直 ちにどうしていくかということまでは明確に記載できなかったところです。御指摘を受 けて、省として最終的にまとめる段階で、どうしていくかを考えさせていただきたいと 思います。  8ページに組織形態の見直しの全体像があります。17年度までで1回の計画が終わり を迎えて、次の段階にいくに当たって、部体制の見直しなども行うわけですが、そうい った際に配慮できるのではないかと思います。 ○武見委員  中期目標が出てくるわけで、それに縛られるのはやむを得ないんですが、縛られすぎ ず、より柔軟な対応ができるような見直し案にしておいていただけると、これはすべて の研究所にとって共通だと思いますので、社会のニーズに合ったことが行っていただけ るのではないかと思った次第です。 ○五十嵐部会長代理  国立健康・栄養研究の5ページの3つ目の箱の2行目に「他機関の譲渡」とあります が、「他機関への」でしょ。「へ」が抜けてますよね。 ○武見委員  国立健康・栄養研究所の3ページの(2)に「国立大学大学院は徳島大学一校のみであ り、高度な栄養に関する教育を実施している大学はほとんど皆無である」と書かれてい ます。国立ではないかもしれませんが、多くの私学の大学大学院ではそれなりに努力し て教育をやってきているつもりですし、もう少し表現を検討していただけないものかと 思いました。 ○高山研究企画官  その実情を踏まえまして見直させていただきたいと思います。 ○大久保委員長  てにをはにつきましては、再度見直していただくということと、我々も気づきました ら、その時点で連絡するということで対応させていただきたいと思います。それ以外に 何かございますでしょうか。 ○五十嵐部会長代理  3研究所全体にかかわることなんですが、フォームを同じにしておいていただいたほ うがいいような気がします。厚生省関係と労働省関係とちょっと違うように思いますの で、3研究所を同じフォームにそろえていただきたい。どういうフォームがいいかとい うことは申し上げませんが、評価委員会が終わったわけですから、できるだけ同じフォ ームにしていただきたいと思います。長さその他はいいんですが、数字から始まったり ○から始まったりしてますので、そのへんをそろえていただいたほうがいいと思いま す。 ○大久保部会長  基本的には合っているように思いますけど、それにプラスしてということだと思いま す。事務局によろしくお願いしたいと思います。ほかにございますか。 ○岩渕委員  今日の趣旨なんですけど、参考資料を拝見しますと、「中期目標期間の終了に伴う組 織・業務全般の整理縮小、民営化等の検討に16年夏から着手する」という文言があった り、次のページでは「業務内容が類似する法人」「業務の対象分野が類似する法人」と いう文言があります。業務全般の見直しに関して、この委員会として論議をするという ことでよろしいんでしょうか。 ○大久保部会長  そのように理解しております。 ○岩渕委員  そういうことでしたら、私は去年から多少物を言っておりますので、口火を切って、 たたき台として若干申し上げたいと思います。去年から産業医学研究所と産業安全研究 所の間で、もう少し研究の協力ができないかということを申し上げてまいりました。今 日出された資料もそうですし、当たり前のことですが、何ひとついらないものはありま せん。必要不可欠な研究でありますし、必要不可欠な組織であることは言うまでもあり ません。  ここに書いてありますように、分野が類似するからということではなくて、研究の協 力をすることが、より良い結果を生み出すことになるのではないかということで、去年 から申し上げてきました。  具体的に言いますと、韓国とか東欧の大学や研究所と協力するぐらいだったら、産安 研と産医研で協力すべきテーマはたくさんあると思っています。例えば長距離運送事業 における産業医学、産業安全の両方の分野からのアプローチで、もう少し国民の共感を 得られるような総合的な研究ができるのではないかと申し上げてきました。研究所同士 が協力する場合、所管している本省の担当課がどういうふうに音頭をとっていくかとい うことが問題になります。  例えば長距離運送事業における労働安全、産業安全、事故防止といったテーマを考え るのであれば、所管の課が指示したり音頭をとったりして、総合的に行政としてどうい うふうに対応するかということも含めた研究にならなければ意味がないんですよ。ただ 単に労働安全とか労働衛生という研究テーマは入ってるんですね。入ってるけど、単独 ではあまり大きな意味を持ち得ないというのが私が申し上げてきた一番大きな狙いなん です。  この業務が必要だとか、隣り同士だとか、そんな瑣末な話ではなくて、本来からいえ ば所管の本省の責任だと思いますが、研究所同士の協力体制というのは当然あるべきだ と思うんです。水と油みたいに研究分野が全く違うから、そんなことは荒唐無稽な話 で、全く意味がないとおっしゃるんでしたら私は黙って引き下がるしかありませんけ ど、そのあたりはいかがでしょうか。 ○森戸調査官  研究所と行政の関係で申し上げますと、産業安全研究所は私どもの部で言いますと、 安全課というところと連絡会議などを持って、その時々のテーマを議論する。私も同席 するという形になっております。産業医学総合研究所につきましては、私どもに労働衛 生課というのがありまして、そこが中心になって産業医学研究所と連絡会議などを持っ ております。私はそれにも出ております。  今まではそれぞれが持っていたわけですが、それぞれがやっている研究を持ち寄る と、共同研究のテーマも出てくる可能性もありますので、行政との会議の持ち方につき ましては少し考えていきたい。今までは安全課、衛生課が主としてやるという形で分か れていたものですから、少し工夫をしていきたいと思います。 ○酒井委員  るる説明していただいて、結論的には賛成です。なんの異論もありません。3機関を 一つずつ独立して読むと、こういう論理で廃止する必要はない、続けるべきだと思える んですが、他に類似の調査研究を行っている機関がないというのがすべての機関に出て くると、あるパターンでこれを作ったんじゃないかと思えるんですね。  それぞれの機関が独立して、行政ニーズ、社会ニーズを先取りして、予見性のある研 究データがどんどん出てくることが大事なことで、そういうことをやっていただく意味 で3機関ともそれぞれの分野で非常に大事なんだという論理を使っていただいたほうが いいと思うんです。単にほかではできない、採算性の悪い仕事をやってるというのでは なくて、各機関の使命をアピールするような前向きの姿勢で書いていただけたらと思い ます。  もう1点は、一つ一つの機関が大事だということは了解できますけど、岩渕委員が言 われたように、3機関の間で情報をシェアしていただきながらやったら、もっともっと いい研究が出るのではないか。安全と保健を分けてやるというのは欧米では少なくなっ てきて、一体としてやるというのが国際的な流れになっています。合併すべきだという 話をしてるのではなくて、中身で協力体制をとったらどうかという岩渕委員の意見には 賛成したいと思っています。 ○黒澤委員  最近はいろんな分野にまたがった境界領域的なテーマが多くなってきていることは事 実ですね。安全と衛生を一緒にやる領域というのはけっこう出てきてますので、進める 必要はあると思います。一方、産業安全固有の領域がありますね。これは極めて地味 で、継続的にやらなくてはならない。黙ってると埋没していくような性格の研究がある んですね。私も過去にいろいろ経験してきましたけど、一緒にやりますと、地味なテー マは後回しにされたり、置き去りにされたり無視される。こういう傾向が続いてるんで すね。これは非常に危険だと思ってるんです。  現実に産業界で起こってる災害は、そういうことを背景にして起こってるんですね。 世間的な評価がなくなった、注目されなくなった。地味ではあるけれど非常に重要なこ とがあるんですね。これがどんどんネグレクトされてる。予算的にもネグレクトされて る。こういう傾向があるんですね。こういう地味な継続してやらなくてはならない領域 をどうやって評価して位置づけていくか。こういうことを重点的に考えるべき時代にき ていると思います。最近の災害の事例を見てますと、痛切にそのことを感じますね。  岩渕委員のおっしゃることはそのとおりなんですね。新しい領域が発生してきて、共 同してやらなくてはならないテーマが生まれてる。その一方、地味な研究をしなければ ならんような領域もある。これを継続してやらないと、日本の国家としての安寧のイン フラを阻害することになる。こういうことを感じておりますので、そのへんも含めて検 討していただきたい。分けておくという意味もあるんですね。 ○田村委員  私も3回この評価委員会に参加させていただきまして、評価に加わらせていただきま した。いろいろお話を伺いますと、各機関とも中期目標に対して大変な努力をされて、 それなりに立派な成果を上げてこられているということを感じました。そういう意味で は評価の一つの重要な役割が果たせているように思います。  国の研究機関としての役割というのは、一つは社会ニーズ、行政ニーズに沿った基盤 的な研究、中期的な先見性をもった研究、これも非常に重要ですが、それと同時に、先 導的、長期的な研究は公の機関でなければできないと思うんです。しかも体系的な研究 は大学の場合は難しいというのが実態だと思いますし、研究設備等の問題もあります。 アイディアの研究はできるかもしれませんが、研究の成果ということになると難しい面 がある。そういう意味で公の機関に大いなる期待を寄せているところであり、先導的、 長期的研究もぜひやっていただきたいと我々は思っているわけです。  今の評価の仕組みを見ますと、中期的な研究に対して細部にわたり評価していくこと になりますと、それをきちっとこなしていくというのは大変なことでして、その上先導 的、長期的な研究を行うことは困難な環境ができていくのではないかということを私は 一番心配しています。各研究機関においてはいろんな努力をされながら、そういったこ ともやっておられるとは思いますが、もっと堂々とやれるような評価の仕組みを考えて いかないと、将来の研究の展望は開けていかないのではないかという気がするわけで す。  これは毎回申し上げているんですが、先導的、長期的研究も評価できる仕組みを考え ていかないと、どこがそういったことをやっていくのかということに対して非常に不安 を感じております。この場の議論ではないかもしれませんが、機会があればそういった ことも考えていただければと思います。 ○大久保部会長  将来的な課題として非常に重要だと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○岩渕委員  参考資料を見てると、どういうことなのか、的確に理解できない部分があります。マ スコミ的に見ますと、整理統合まで踏み込もうという文言のように読み取れるんです が、仮に国の大方針としてそういうのがあって、どのように対処するかということにな った場合、どこかとどこかが統合する。今まで国研でも統合されたものがたくさんあり ますが、それによるメリット、デメリットはあると思います。統合することによる致命 的なマイナスがあるのかどうか、わかってる方がいたら教えていただきたいと思いま す。 ○大久保部会長  ケース・バイ・ケースだと思うんですが、どうでしょうか。 ○高山研究企画官  どういう相手があるのか、業務として一緒になれるところがあるのかなというのを私 どもも議論しておりますが、厚生労働省の中において薬のところでは規制と振興の分離 というのが言われておりまして、別の独立行政法人のところで振興部門を分離すること をやって、そこを明確にした上で適切な運営を図ってるという事例があります。  この中では、長期にわたって継続的に公平性を確保してやっていくような国民栄養調 査の関係の業務とか、特定用途食品の表示に係る基礎データを与える試験の実施とか、 中期的にやらなくてはならないところもありますので、相手が探しづらいというのが正 直な印象です。個別具体的にこういう機関というのが出てきたら考えることになるかと 思いますが、一般的に統合という形は考えづらいというか、マイナスのほうが大きいか なという印象は持っております。 ○森戸調査官  同じような業務をしているところがあって、昔の筑波の移転という形でポンと新しく 作るということであれば効率化という点でメリットがあると思うんですが、場所が離れ ているとシステムを組み直すのかとか、連絡調整はどうするのかとか、それに伴う経費 がかかるとか、うまく効率化できるのかどうか。片方が規模が小さくて、それは事務部 門だということで、スペース的にも移すことが可能だとか、そういうのがいろいろ出て くると統合のメリットも出てくると思うんですが、費用対効果とかいろんな面でうまく いくのかというのは検証する必要があると思います。くっつければ効率化されるかとい うと、必ずしもそうではないのではないかと思っております。 ○大久保部会長  今回、3つの法人を評価していただきましたが、人数が少ない中で、理事長の強力な リーダーシップによって効率のいい運営をしておられるように思いました。安全につい ては、先ほど運輸の問題が出ましたが、消防も安全の中に入ってきますし、省庁を超え た形での安全に対する取り組みというのも今後の問題になりますし、そのあたりをどう 考えていくのかが大事だと思います。小さい領域での統合というのは非効率的になりま すので、そのあたりはマクロに検討しなくてはいけないのではないかと思います。  産医研の場合は現場対応もしておられますけど、災害分析というのは少ないんです ね。基礎研究というか、長期的な展望に立った研究が全体的には多いような気がしま す。産安研の場合は行政ミッション型というか、問題となる点を中心的にとらえられて る。個々の独自性を発揮しながら、重要な点について問題解決に取り組んでおられるの で、そういう意味では国民のためにも非常にプラスになっているのではないかと思いま す。  安全と衛生の分野で考えてみますと、スウェーデンのNational Institute of Occupational Health(スウェーデン労研)というのがありますが、3〜4年前に National Institute of Working Lifeになって、かなり広く安全衛生の分野をとらえ だしてるということもあります。海外の状況も精査をしながら、じっくりと取り組んで いく必要があると思います。  ほかにいかがでしょうか。 ○岩渕委員  致命的なデメリットがあるのかなと思ってお聞きしたんですが、致命的なデメリット というほどのことではないようだなというのが、いまお聞きした印象です。それぞれの 研究機関が独立してやっていくということであれば、それなりにきちんとした理論構築 をしていただかないと、総務省相手には通らないのではないかと、老婆心ながら申し上 げておきたいと思います。  役所のほうがこれから案を作ることになりそうな書きぶりですので、役所に意見を申 し上げておきたいんですが、国の大方針に対して、しっかりした理論構築なしに整理合 理化に対して抵抗するというのはあまり得策ではないと思うんです。厚生労働省もほか の規制改革会議とか経済財政諮問会議から様々な球を投げられて、きちんと打ち返さず に、抵抗勢力という印象だけがものすごく強くなっているというのがこれまでの現実で すので、もう少し戦略的な物の見方をもって、向こうの要望に応えながら、資源を含め て研究基盤を確保して、先ほどからお願い申し上げているように、国民に対してアピー ルできるような研究体制をいかにして整えていくかということをしっかり考えていただ きたいと思います。 ○黒澤委員  統合というのは、大学が医学部と工学部を一緒にできるかという問題と似てると思う んですね。学際的なジャンルのテーマがどんどん発生してますから、学際的な研究の必 要性は私は認めているんです。しかし医学部と工学部を一緒にして本当にいいのかとい うことだと思うんですね。産業安全研究所はどちらかというと理工学的な研究領域なん ですね。産業医学研究所のほうは医学部的な研究領域なんですね。それぞれ背景が違 う。  私は医学部のことはよくわかりませんけれど、工学部ならなんとなくわかるんです ね。医学部と工学部と両方が必要な領域は私はよく知っているんです。福祉分野にたく さんあるんです。ロボットとか義足とかリハビリテーション機器とか、そういう分野で は工学と医学を一緒にやらなくてならない領域がたくさんあることを知ってます。私も 現実に関与している分野がありますからよくわかるんですが、工学部と医学部を一緒に してしまうというのはデメリットのほうが大きいと思います。両方がれっきとした専門 領域を研究しているがゆえに意義があるということだというふうに私は理解していま す。岩渕委員のおっしゃる一緒にするというのは、共同研究をする、学際的研究をやる ということとは別の次元で検討しなくてはいかんと思います。 ○岸委員  法人を廃止しない理由のところで、プライバシーの問題で国家公務員型のほうがいい とか、それも一つの理由だとは思います。産業医学総合研究所でしたら、働く人々の健 康をより増進させるために長期的な広い研究をされているわけです。働く人たちの働き 方が多様になってきてまして、高齢になって働く方もいますし、女性の労働者も増えて いる以上にいろんな問題を抱えていますし、在宅の方もいればIT産業で働いてる方た ちもいる。そういう多様な労働者の健康のニーズに対応するために我々の研究所はもっ とこういうところを強めなければいけないという背景というか、それは国民のために法 人を廃止しない大きな理由であるわけですから、そういう積極的なことが前面に出たよ うな書き方をしていただきたいと思います。  スウェーデンの研究所がNational Institute of Working Lifeという名前になったと 部会長が言われましたが、社会科学的な面も含めて、健康の問題というのは雇用とか失 業とかいろんな問題と関係しているわけですね。もっと大きな視野で、もっと長期的な 視点に立って法人の見直しとか、在り方とか、ほかの研究所との連携を考えるべきだと 思います。  国立健康・栄養研究所は地域の人たちの健康という面では非常にすばらしい研究をさ れてると思うんですが、働く人たちの健康の問題については、産業医学研究所と連携し て長期的な研究をやっていただいたら日本の働く人たちにとってはいいだろうと思うん ですね。国立健康・栄養研究所は長期縦断研究、コホート研究のノウハウをお持ちです ので、厚生労働省所管の他の研究所と連携して、今おやりになってることをさらに発展 させていく。組織の統合ではなくて、そういうことをやることによって、国民の側から 見て、我々が誇る研究所があるというふうに認識できると思うんですね。そういう書き 方をしていただけると国民も納得すると思うんです。  せっかくいい仕事をされてるし、いいミッションをお持ちの研究所ですので、統合と いう前に、そこをちゃんとやっていただければ充実するのではないかと思います。酒井 先生がおっしゃってくださったので、重ねてということになりますが、よろしくお願い したいと思います。 ○清水委員  統合によって一般管理事務部門が統合されて経費等が節減できるという可能性が一つ あると思うんです。研究も統合してやっていくことによって、よりいいものができる可 能性があると思いますので、所管課が違うからという理由で最初から考えないというこ とではなくて、そういった可能性の調査もお願いしたいと思います。私はこの分野は専 門外ですので、どういう機関があるのか、類似の機関があるのかというのは存じません ので、ここに書かれているとおりないということであれば、そのとおりなのかもしれま せんが、同じ系統の研究所の事務部門の効率化ということも可能性としては視野に入れ て検討していただきたいと思っております。  参考資料で基本方針が出されていますが、政府の考え方というのは拡大ということで はなくて、整理縮小、民営化ということだと思うんですね。各事業について本当に公が やる必要があるのかどうかということを一つ一つ洗い直していくことが求められてい て、それは本省でやるのがいいのか、エージェンシーでやるのがいいのか民間でやるの がいいのかということを洗い直していく必要があると思うんです。  今回の素案整理表ですと、事業がまとめられていて、そういう細かい検討が見えない 部分があります。具体的措置とは書いてあるんですが、具体的に読めない部分がありま す。先ほどから消極的、ネガティブなという発言がありましたが、変えないんだという 前提が先にあって、それに理由づけをしているような印象を受けました。一つ一つの事 業について、その研究所がやっていく理由、研究所が特定独立行政法人としてやってい く理由というのをもう少し説得力をもって説明していただきたいと思っております。 ○大久保部会長  そのほかにございませんか。特にございませんでしょうか。  各研究所によって、分野、手法というのは全く異なるわけですし、そういった中で効 率的な運営をするには、それなりのちゃんとした裏付けがあった上で進めていかなくて はいけない。海外の情報も含めて幅広くメリット、デメリットを評価していくことが必 要だと思います。  各研究所が学際的な分野を共同でやっていくというのは世界的な潮流でもありまし て、スウェーデンですと社会心理学系、社会科学系、行動科学からのアプローチもあり まして、従来の視点よりもう一歩広い視点に立ったことをやっております。これも将来 的な課題だと思いますので、そのあたりは今後の問題ということで、広い視野に立って 検討していただきたいと思います。 ○黒澤委員  動脈産業と静脈産業というのがあるんですよ。動脈産業側に立つと、たいていOKに なっちゃうんですね。静脈産業側を強調するとネガティブという印象になりがちなんで す。世の中には必ず動脈側と静脈側と両方あるんですよ。どちらも国なり産業なりのイ ンフラを構成することには変わりない。両方が大事なんですよ。ところが長年やってる ことは古いという印象が出てしまうんです。そこでネガティブなイメージになってしま うんですね。  産業安全というのはそういう傾向があるジャンルなんですね。昔から労働者の災害防 止についてはずっとやってきているんですが、今でも災害はなくなっていない。なくな ってないだころか、新たな災害が発生してるという現実があるわけです。なぜなのか。 静脈側を研究してないんですよ。日本は動脈側については一生懸命研究するんです。予 算もつくんです。ところが静脈側については予算もつかなければマンパワーもいない、 こういう状況がずっと続いてるんですね。これが最大の問題点だと思います。こういう ことをポジティブにキャンペーンすべきなんですね。そういうふうに位置づけたいと思 います。 ○大久保部会長  それでは、コメントも出尽くしたようですので、少し時間をいただいて、事務局と取 りまとめをさせていただきたいと思います。ここで10分ほど休憩をお願いいたします。                 (休憩) ○大久保部会長  それでは再開させていただきます。本日の当部会の議論については、次のように取り まとめをしたいと思いますが、いかがでしょうか。読み上げさせていただきます。  当部会としては、中期目標期間の3年度目である平成15年度の事業実績評価を終えた ばかりであり、本日、省から説明を受けた、3つの「中期目標期間終了時における独立 行政法人の組織・業務全般の見直し素案」に示された「具体的措置・方向性」について は、現段階においては、これを了承する。  なお、当部会の議論において、次のような意見があったので、今後厚生労働省として の見直しを進めていく中で、考慮されたい。  1.それぞれの機関は、刻々と変わる社会・行政ニーズに対応して、国民の共感を得   られるような重要な役割を果たすということを積極的に示すべきではないか。  2.政府全体の見直しの今後の動向を踏まえながら、整理合理化の様々な視点につい   て、きちんとした論理構成をしていくことが必要である。  3.欧米等における当該領域、当該分野の現状分析を含め、広い視野に立った産業、   安全、衛生等の分野の研究の動向などを踏まえ、将来的に共同研究を実施するな   ど、3つの研究部門の連携をより強化すべきである。  4.今後、中期計画を見直すに当たっては、社会・行政ニーズに弾力的に対応できる   ようなものにしていくこと。  5.その他、表現面で指摘された事項に考慮すること。  先ほどの御意見を集約しますと以上のようになりますが、よろしいでしょうか。 ○各委員  異議なし。 ○大久保部会長  ありがとうございました。  本日の議論については、議事録において後日公表されますが、いま読み上げたような 本日の議論の要点を整理したメモを作成し、私が確認した上で、現段階での意見とし て、厚生労働省あて渡したいと考えております。そのような取り扱いでよろしいでしょ うか。 ○各委員  異議なし。 ○大久保部会長  ありがとうございます。 ○五十嵐部会長代理  いま先生がおっしゃったことは、修文されたものを各委員にメールであれ何らかの手 段で送っていただけますか。本物を持ってないと、何かあった時に困りますので、いた だきたいと思います。 ○大久保部会長  事務局、よろしいでしょうか。そのようにお願いいたします。 3.閉会 ○大久保部会長  それでは、そろそろ時間ですので、事務局から何か連絡事項があれば、お願いいたし ます。 ○調査官  特にございません。 ○大久保部会長  本日は、以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心な御議論をいただきまして ありがとうございました。                                    (終了) 照会先:政策統括官付政策評価官室 企画係 電話 :03-5253-1111(内線7783)