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1.管理濃度

物質名 管理濃度
(現行)
管理濃度
(改正案)
産衛学会
許容濃度
(2002)
ACGIH
TLV-
TWA
(2002)
定量
下限
検討概要
アセトン 750ppm 500ppm 200ppm 500ppm  日本産業衛生学会(以下「産衛学会」という。)は200ppmを勧告し、ACGIHは500ppmを勧告している。産衛学会の提案理由においては200ppmから500ppmの範囲における健康影響は明確ではないこと、各国のアセトンのばく露限界値を見ると、500ppmという値が適当であると考えられることから、管理濃度は500ppmに引き下げることが適当である。
イソプロピルアルコール 400ppm 200ppm C400ppm 400ppm
(2003年
勧告
200ppm)
 産衛学会は天井値として400ppmを勧告し、ACGIHは200ppmに変更する予定である。管理濃度は天井値の2分の1程度とすることが適当であるので、管理濃度は、200ppmに引き下げることが適当である。
エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル
(別名ブチルセロソルブ)
25ppm 25ppm   20ppm  ACGIHは25ppmから20ppmに引き下げられているが、根拠がはっきりしないため、管理濃度は25ppmのままとすることが適当である。
キシレン 100ppm 50ppm 50ppm 100ppm  ACGIHは1965年に勧告された100ppmのままであるが、産衛学会が新しい知見を基に50ppmを提案しており、この提案理由が妥当であると考えられることから、管理濃度は50ppmに引き下げることが適当である。
酢酸イソプロピル 250ppm 100ppm   250ppm
(2003年
勧告
100ppm)
 ACGIHは100ppmに変更する予定であり、提案理由が妥当であることから、管理濃度は100ppmに引き下げることが適当である。
酢酸イソペンチル(別名 酢酸イソアミル) 100ppm 100ppm 100ppm 50ppm  ACGIHは50ppmを勧告しているが、提案理由を検討したところ、管理濃度を50ppmに引き下げる明確な根拠がないため、当面100ppmのままとすることが適当である。
酢酸エチル 400ppm 200ppm 200ppm 400ppm  産衛学会は200ppmを提案しており、ACGIHは400ppmを勧告している。この400ppmは1948年に勧告されたものであること、1995年の産衛学会の提案理由が妥当であることから、管理濃度は200ppmに引き下げることが適当である。
酢酸ノルマル−ブチル 150ppm 150ppm 100ppm 150ppm  産衛学会は100ppmを提案しているが、この100ppmの根拠が150ppmでの軽度の刺激のみに基づいているため、管理濃度は150ppmのままとすることが適当である。
酢酸ノルマル−ペンチル(別名 酢酸ノルマル−アミル) 100ppm 100ppm 100ppm 50ppm  ACGIHは50ppmを勧告しているが、提案理由を検討したところ、50ppmとする明確な根拠が見い出せなかったことから、管理濃度は当面100ppmのままとすることが適当である。
ジクロルメタン(別名 二塩化メチレン) 100ppm 50ppm 50ppm 50ppm  産衛学会及びACGIHは、ともに50ppmを提案しており、理由は妥当であると考えられることから、管理濃度も50ppmに引き下げることが適当である。
スチレン 50ppm 20ppm 20ppm 20ppm  産衛学会及びACGIHは、ともに20ppmを提案しており、理由は妥当であると考えられることから、管理濃度も20ppmに引き下げることが適当である。
テトラクロルエチレン(別名 パークロルエチレン) 50ppm 50ppm 検討中 25ppm  ACGIHは25ppmを勧告しているが、提案理由において、現行の50ppmを否定する理由も見当たらないため、現行のままとする。なお、今後、産衛学会の許容濃度が提案された際に再度検討することとする。
トリクロルエチレン 50ppm 25ppm 25ppm 50ppm  産衛学会は25ppmを勧告しており、ACGIHは50ppmを勧告している。この50ppmは1980年に勧告されたものであること、産衛学会の提案理由は妥当であるとことから、管理濃度は25ppmに引き下げることが適当である。
ノルマルヘキサン 50ppm 40ppm 40ppm 50ppm  産衛学会及びACGIHの提案理由は、管理濃度が50ppmとされた1988年当時と変化はないが、提案の根拠になった論文を更に精査した結果、管理濃度は40ppmに引き下げることが適当である。
1−ブタノール 25ppm 25ppm C50ppm 20ppm  産衛学会は天井値として50ppmを勧告し、ACGIHは20ppmを勧告している。ACGIHの20ppmについては提案理由が明確ではない。このため、産衛学会の提案している天井値を参考として、管理濃度は天井値の2分の1程度とすることが適当であることから、25ppmのままとすることが適当である。
カドミウム及びその化合物 Cdとして0.05mg/m3 Cdとして0.05mg/m3 Cdとして0.05mg/m3 Cdとして0.01mg/m3(インハラブル粒子に対して)、0.002mg/m3(レスピラブル粒子に対して)  ACGIHが検討した論文において現在の0.05 mg/m3で問題があるという根拠がないため、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
クロム酸及びその塩 Crとして0.05mg/m3 Crとして0.05mg/m3 Crとして0.5mg/m3(金属クロム、3価クロム化合物)0.05mg/m3(6価クロム化合物)0.01mg/m3(ある種の6価クロム化合物) Crとして0.5(金属の粉じん、クロム(III)化合物)、0.05mg/m3(水溶性クロム(VI)化合物)、0.01mg/m3(不溶性クロム(VI)化合物)、0.01mg/m3(クロム酸亜鉛)、0.001mg/m3(クロム酸カルシウム)、0.0005mg/m3(クロム酸ストリンチウム)、Pbとして0.05mg/m3(クロム酸鉛)CrO3としてC0.1mg/m3(クロム酸t-ブチル)  産衛学会及びACGIHは、3価クロム、6価クロム等を対象としているが、中でも6価クロムを中心に考慮する必要がある。新しいデータもなく、0.05mg/m3であれば問題は生じないと考えられるため、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
重クロム酸及びその塩 Crとして0.05mg/m3 Crとして0.05mg/m3 Crとして0.5mg/m3(金属クロム、3価クロム化合物)0.05mg/m3(6価クロム化合物)0.01mg/m3(ある種の6価クロム化合物) Crとして0.5(金属の粉じん、クロム(III)化合物)、0.05mg/m3(水溶性クロム(VI)化合物)、0.01mg/m3(不溶性クロム(VI)化合物)、0.01mg/m3(クロム酸亜鉛)、0.001mg/m3(クロム酸カルシウム)、0.0005mg/m3(クロム酸ストリンチウム)、Pbとして0.05mg/m3(クロム酸鉛)CrO3としてC0.1mg/m3(クロム酸t-ブチル)  産衛学会及びACGIHは、3価クロム、6価クロム等を対象としているが、中でも6価クロムを中心に考慮する必要がある。新しいデータもなく、0.05mg/m3であれば問題は生じないと考えられるため、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。) Hgとして0.05mg/m3 Hgとして0.025mg/m3 0.025(水銀蒸気)mg/m3 Hgとして0.025mg/m3(金属水銀を含む無機形態)  産業衛生学会及びACGIHは、ともにHgとして、0.025mg/m3を勧告しており、その理由は妥当と考えられるので、管理濃度はHgとして0.025mg/m3に引き下げることが適当である。
ベリリウム及びその化合物 Beとして0.002mg/m3 Beとして0.002mg/m3 Beとして0.002mg/m3 Beとして
0.002mg/
m3(インハラブル粒子)(*0.0002
mg/m3
提案中)
 産衛学会及びACGIHはともに0.002mg/m3を勧告しているが、ACGIHは新たに1999年にインハラブル粒子として0.0002mg/m3を提案している。
国内では、金属ベリリウムを溶解する作業等は行われていない。したがって、産衛学会の許容濃度の値で管理上問題がないと思われることから、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く) Mnとして1mg/m3 Mnとして0.2mg/m3 Mnとして0.3mg/m3
(吸入性粒子として)
Mnとして0.2mg/m3(レスピラブル粒子)(*0.03
mg/m3
提案中)
 産衛学会は吸入性粒子として0.3mg/m3を勧告し、提案理由の中で総粉じんとして1mg/m3程度となるとしていること、また、ACGIHはレスピラブル粒子に限定せず0.2mg/m3を勧告し、提案理由の中で1mg/m3になるとかなり影響があるとしているため、管理濃度は0.2mg/m3に引き下げることが適当である。
鉛及びその化合物 Pbとして0.1mg/m3 Pbとして0.05mg/m3 Pbとして0.1mg/m3 Pbとして0.05mg/m3  鉛は、吸入以外に経口でのばく露も考えられ、ばく露のリスクが高いことから、できるだけ低く管理することとし、管理濃度はPbとして0.05mg/m3に引き下げることが適当である。
ベンゾトリクロリド C0.1ppm(0.8mg/m3)    ACGIHは天井値として0.1ppmを勧告している。管理濃度は天井値の2分の1程度とすることが適当であるが、定量下限値が0.089ppmであることから、今回は管理濃度は定めないことが適当である。
アクリルアミド 0.3mg/m3 0.3mg/m3 0.3mg/m3 0.03mg/m3  産衛学会は、0.3mg/m3を勧告している。ACGIHは、神経障害防止のためには0.3mg/m3で十分であるとしているが、ラットの発がん性応答を考慮して0.03mg/m3を勧告している。しかし、人間の発がん性については根拠が十分ではないため、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
塩化ビニル 2ppm 2ppm 2.5ppm
(できる限り検出可能限界以下に保つよう努めるべきこと)
1ppm  ACGIHは、1ppmを勧告しているが、提案理由が明確ではない。また、現在の管理濃度を決めた1975年以降のばく露に起因すると思われる肝血管肉腫は発生していないため、この値を見直すべき理由がなく、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
塩素 0.5ppm 0.5ppm C 0.5ppm 0.5ppm  産衛学会は天井値として0.5ppmを勧告し、ACGIHは0.5ppmを勧告している。産衛学会の勧告している天井値0.5ppmは軽度の刺激のみに基づいているため、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
シアン化カリウム CNとして5mg/m3 CNとして3mg/m3 CNとして
C5mg/m3
CNとして
C5mg/m3
 産衛学会及びACGIHは、ともにCNとして 天井値で5mg/m3を勧告しており、その理由は妥当であると考えられる。管理濃度は天井値の2分の1程度とすることが適当であるので、管理濃度はCNとして3mg/m3に引き下げることが適当である。
シアン化水素 5ppm 3ppm 5ppm CNとして
C5mg/m3
(HCNに換算した場合C4.7ppm)
 産衛学会はCNとして5ppmを、ACGIHはCNとして天井値で5mg/m3を勧告している。 産衛学会ではシアン化水素については天井値としていないが、シアン化カリウム及びシアン化ナトリウムについては2001年に改訂し天井値で5ppmとなってることから、シアン化水素についても天井値としてとらえる方が適当である。管理濃度は天井値として提案されている値の2分の1程度とすることが適当であるため、管理濃度はCNとして3ppmに引き下げることが適当である。
シアン化ナトリウム CNとして5mg/m3 CNとして3mg/m3 CNとしてC5mg/m3 CNとしてC5mg/m3  産衛学会及びACGIHは、ともにCNとして天井値で5mg/m3を勧告しており、その理由は妥当であると考えられる。管理濃度は天井値として提案されている値の2分の1程度とすることが適当であるため、管理濃度はCNとして3mg/m3に引き下げることが適当である。
臭化メチル 5ppm 5ppm *1ppm
(2003年提案)
1ppm  ACGIHは1ppmを勧告しているが、産衛学会は提案の段階で勧告していない。ACGIHの勧告している1ppmは、ラットの鼻の刺激を基にしたものであり、人間のデータは使用していないので、管理濃度は現行のままとすることが適当である。
パラ−ニトロクロルベンゼン 1mg/m3 0.6mg/m3 0.64mg/m3 0.1ppm(0.64mg/m3)  産衛学会及びACGIHは、ともに0.64mg/m3を勧告しており、その理由は妥当であると考えられる。パラ−ニトロクロルベンゼンは昇華性が強いが融点が高いので、結果的には固体として捕集することになる。このため、単位はppmではなくmg/m3とすることとし、管理濃度は、0.6mg/m3に引き下げることが適当である。
弗化水素 3ppm 2ppm C3ppm Fとして
C2.5mg(HFに換算した場合C2.9ppm)
 産衛学会は天井値で3ppm、ACGIHは天井値としてFで2.5mg(HFで2.9ppm)を勧告している。管理濃度は天井値の2分の1程度とすることが適当であるため、管理濃度は2ppmに引き下げることが適当である。
硫化水素 10ppm 5ppm 5ppm 10ppm
(*5ppm
提案中)
 産衛学会は5ppmを勧告し、ACGIHは5ppmを提案しており、その理由は妥当であると考えられるため、管理濃度は5ppmに引き下げることが適当である。
三酸化砒素   Asとして3μg/m3 Asとして
3μg/m3
(過剰発がん生涯リスクレベル 10-3)
0.3μg/m3
(過剰発がん生涯リスクレベル
10-4)
0.01mg/m3(Asとして)  産衛学会で勧告しているのは評価値(備考(2)参照)であるため、管理濃度を検討するためにはACGIHのTLV-TWAの方が参考になる。しかし三酸化砒素は発がん物質であることから可能な限り低い値とする必要がある。このため、管理濃度は3μg/m3とすることが適当である。
石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く。) 2本/cm3(5μm以上の繊維として) 0.15
本/cm3
(5μm以上の繊維として)
クリソタイルのみのとき
0.15繊維/ml(過剰発がん生涯リスクレベル10-3
0.015繊維/ml(過剰発がん生涯リスクレベル10-4
クリソタイル以外の石綿繊維を含むとき
0.03繊維/ml(過剰発がん生涯リスクレベル10-3
0.003繊維/ml(過剰発がん生涯リスクレベル10-4
(長さが5μmより大で、長さと幅の比が3:1以上の繊維を計数する)
0.1
本/cm3(長さが5μmより大で、長さと幅の比が3:1以上の繊維を計数する)
 ACGIHは0.1本/cm3を勧告する理由として「石綿肺を予防すれば、肺がんが防止できる」という考え方を採用しているが、中皮腫の発生の可能性を考慮すると、この考え方は不適切である。また、産衛学会が勧告しているのは評価値(備考(2)参照)であり、石綿の肺がん及び中皮腫の発生を問題としていることから可能な限り低い値とする必要がある。このため、作業環境中の石綿以外の粉じんにより測定の精度が落ちることを考慮して、管理濃度は0.15本/cm3(アモサイト及びクロシドライトを除く)に引き下げることが適当である。
(石綿については、繊維の本数を計測することから、X線回折分析方法は適切ではないため、作業環境測定基準を改正し、当該方法を削除する必要がある。)

(注)
 現在、経過措置として、アモサイト及びクロシドライトの管理濃度はそれぞれ2本/cm3及び0.2本/cm3とされているが、アモサイト及びクロシドライトについても、上記と同様の理由により管理濃度は0.15本/cm3に引き下げることが適当である。
ベンゼン 10ppm 1ppm 1ppm
(過剰発がん生涯リスクレベル
10-3)
0.1ppm
(過剰発がん生涯リスクレベル
10-4)
0.5ppm  産衛学会の評価値(備考(2)参照)及びACGIHのTLV-TWAの値を考慮すると、10ppmという管理濃度の値は引き下げる必要がある。測定技術を考慮すると、管理濃度は1ppmに引き下げることが適当である。
粉じん
2.9

0.22Q+1
mg/m3

Q:遊離けい酸含有率(%)
3.0

0.59Q+1
mg/m3

Q:遊離けい酸含有率(%)
吸入性粉じん(遊離けい酸含有率10%以上)
2.9

0.22Q+1
mg/m3

総粉じん
12

0.23Q+1
mg/m3

Q:遊離けい酸含有率(%)
結晶質シリカ(レスピラブル粒子)
0.05mg/m3

他に分類できない非水溶性又は難溶性粒子状物質(レスピラブル粒子)
3mg/m3
(1)現行管理濃度の根拠となった産衛学会の許容濃度は、2型以上のじん肺罹患率が5%となるかもしれないばく露濃度であり、ばく露防止を徹底させる観点から最近の文献等を参考に見直しする必要があること
(2)石英、クリストバライト、トリジマイトの体内での挙動は大きく異なるものではないこと等から、これらの物質ごとではなく、結晶質シリカ総体として管理濃度を定め方が適当であること
(3)ACGIHのレスピラブル粒子の定義(相対沈降径が4μmのときに透過率50%となる等の分粒特性)を吸入性粉じんの定義とすることが適当であること
 以上の考え方から、現行管理濃度と同様に混合物に対するばく露限界についての一般的な考え方を踏まえ、ACGIHの「結晶質シリカ(レスピラブル粒子)」の勧告値0.05mg/m3及び「他に分類できない非水溶性又は難溶性粒子状物質(レスピラブル粒子)」の勧告値3mg/m3を代入して、管理濃度は3.0/(0.59Q+1)mg/m3とすることが適当である。
(作業環境測定基準を改正して、分粒装置の特性をACGIHのレスピラブル粒子の定義(=ISO・CENのレスピラブル粒子の定義)に合わせる必要がある。)

備考
(1)   *は暫定値を、Cは天井値を示している。
(2) 日本産業衛生学会は、発がん物質については許容濃度を勧告することは適当でないとし、石綿、ベンゼン及びヒ素については、過剰発がん生涯リスクレベル10-3及び10-4に相当する評価値を勧告しているが、これは労働者が受容すべきリスクとして勧告するものではなく、発がん物質の衛生管理を行うための参考値として示している。

定量下限   ◎: 現行の測定方法(測定基準、ガイドブック)で新しい管理濃度の1/10まで測定可能
△: 測定方法を改正(測定基準の改正及びガイドブックの改訂)すれば新しい管理濃度の1/10まで測定可能


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