04/07/28 労働者の健康情報の保護に関する検討会 第4回議事録 <第4回議事録>           第4回労働者の健康情報の保護に関する検討会             日時 平成16年7月28日(水)                  16:00〜           場所 合同庁舎5号館16階労働基準局会議室                 照会先 :厚生労働省労働基準局安全衛生部                         労働衛生課産業保健班                         TEL03−5253−1111                             (内線 5495)                             担当:武末、中野、松井 ○主任中央じん肺審査医(土屋)  本日はご多忙のところありがとうございます。保原座長は大学の用務の日程で少し遅 れるかもしれないという連絡がありました。昨日、保原座長から自分が万が一遅れるよ うなことがあっても、先に始めてほしいとの指示を受けております。  ただいまより「第4回 労働者の健康情報の保護に関する検討会」を開催いたしま す。本日、鳥井委員はご欠席、藤村委員は遅れて来られるとの連絡を頂戴しておりま す。議事に入る前に、7月23日付で事務局の異動がございましたのでご紹介申し上げま す。本日は所用で欠席しておりますが、松崎労働基準局長が異動となり、後任に青木局 長が着任しております。恒川安全衛生部長の後任として、小田部長。中林労働衛生課長 の後任として阿部課長。そして、私が山崎主任中央じん肺診査医の後任の土屋です。よ ろしくお願いいたします。以上、事務局の異動に伴う紹介をいたしました。  本来ならば議事進行を保原座長にお願いするところですが、しばらく私が続けさせて いただきます。お手元にお配りしてある「第3回速記録(案)」については、本日お持 ち帰りいただき、内容の確認後、何かお気づきの点がありましたら、8月5(木)まで にFAXにてご連絡ください。ご意見を反映した後、ホームページ上に公開したいと存 じます。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、資料の確認をさせていただきます。「議事次第」「座席表」「検討委員会名簿 」の他、表紙を含めて16頁の資料があります。本日の進め方について、昨日保原座長よ り、まず事務局から検討会報告書(素案)をすべて読み上げてから、パラグラフごとに 検討していきたいとの指示がありましたので、私から朗読させていただきます。目次で は、1.労働者の健康情報の範囲について、2.労働者の健康情報保護についての基本 的な考え方、3.労働者の健康情報を取り扱うに際しての事業者の義務等、4.労働者 の健康情報の保護に向けた取組という構成になっております。3頁から読ませていただ きます。                  (資料朗読) ○保原座長  昨日、本検討会の報告書素案を検討させていただいたのですが、内容が豊富になっ て、いま朗読いただいたように、多くの事項について検討し、まとめていくことも結構 大変な仕事ではないかと思っております。全部を読んでいただきましたが、少しずつ分 けて議論していただきたいと思います。  4頁の1.労働者の健康情報の範囲について、5頁の2.労働者の健康情報保護につ いての基本的な考え方の2つについて、総論的な部分ですがご議論をお願いいたしま す。 ○堀江委員  4頁の2つ目の○の「労働衛生の分野で」云々というところですが、安衛法第65条に は労働局長が指示して行う、臨時の健康診断という条項があり、作業環境に応じてその ようなことが行われた場合は、この中には入っていないようですが、やはり健康診断で すので健康情報に当たるのではないかと思いました。 ○保原座長  その点については検討させていただきます。 ○堀江委員  もう1点は、労働者災害補償保険法の健診の情報がありますが、この情報が発生する のは実施した医療機関等であり、事業者の手元に来るのは、労働者によって提出をされ たところからだと思いますので、この文章ですと、それがすべて事業者の手元にあるよ うに読めますから、その辺ちょっと注意した書き方のほうがいいのではないかと思いま した。 ○保原座長  堀江委員から指摘があったように、二次健康診断を受けるかどうかは本人の選択にか かっており、本人が希望した場合、労災保険給付として健康診断を受けることができま すが、受けるかどうかはあくまでも任意です。それに基づいて、雇い主に健康診断の結 果を報告するかどうかということも、個人の自由であると解釈されると思います。その 他、お気づきの点があればお願いいたします。なければ、最後に総ざらいをしたいと思 います。3.労働者の健康情報を取り扱うに際しての事業者の義務等に移り、目的の特 定と利用目的による制限、収集、守秘義務、情報の管理・利用などいろいろあります が、(1)目的の特定と利用目的による制限についてご議論いただきたいと思います。 これは、同様に健康情報と言っても、利用目的を特定しなければいけないということ と、健康情報を使用するに当たって、特定された目的以外に利用する場合は、原則とし て労働者本人の同意を得なければいけないという趣旨のことが書かれてあります。 ○中嶋委員  (1)目的の特定ですが、できる限り特定というのは、「健康情報の性質上、単に労 働者の健康の保持増進等という抽象的、一般的な特定ではなく、具体的・個別的に特定 しなければならない」と書かれてあるのですが、例えばTHP(トータル・ヘルスプロ モーション・プラン)などは、内容が特定されているというよりも、まさしく労働者の 健康の保持増進という目的ではないかと思うのです。そうすると、これは特定されてい ないという抽象的、一般的に過ぎないということになると、行政施策の上では少し困る のではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  健康の保持増進という、まさに法律上出てくる言葉をそのまま例示として挙げている ので、おっしゃるとおりだと思います。この点については、健康の保持増進というか、 労働者の健康のために集めるという、ある意味では漠然とした言い方は良くないという ことで書いており、これがTHPの枠の中で、保持増進という目的の下に集めることを 想定していたわけではないので、ちょっと言葉足らずだったと思っております。健康の 保持増進という安衛法上定められた事項を実施するために集める形であれば、特定され るものにはなるのだろうと思いますが、同じ言葉を使ってしまったので誤解を招いたの ではないかと思っております。ここは見直しをさせていただきます。 ○中嶋委員  ちなみに、THPと言うと、典型的例としてはどのようなものがありますか。 ○主任中央労働衛生専門官  THPの流れとして、指針に「健康測定」、健康診断とはちょっと違うということで 健康測定というものが入っています。指針では一般的な健康診断に近い項目の他、運動 機能といったものも測定するということにしておりますので、その範囲はある程度特定 できるのではないかと思っております。 ○中嶋委員  そこに疑義が生じないようにしていただきたいということです。 ○藤村委員  (2)の収集までの範囲ですか。 ○保原座長  いまは(1)のことだけです。必要に応じて戻ることにして、特に他になければ、 (2)の収集に移ります。 ○藤村委員  7頁のいちばん上、収集の2番目の○ですが、「労働者から提出された診断書よりも 詳細な内容について医療機関から情報を収集する必要がある場合」と書かれてあります が、実際に収集する必要があるからということで本人に同意を得た上で、実際に情報を 求めるのは、産業医などになるわけですか。誰が求めるのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  具体的に誰がということよりも、企業が、事業場がということになると思います。実 際には、産業医がいる事業場であれば産業医の判断等が入った上で、このようなものを 求めることになるのではないかと思います。 ○藤村委員  事業場がということになると、医療機関の守秘義務に関わってくるのです。本人ある いは非常に近い家族でない限り、医療機関においては、検査結果や各種資料などの情報 を提供することは一般にはしませんし、拒否する場合が多いと思います。産業医が医者 同士の話し合いでということで行うのであれば、割とスムーズにいくと思います。 ○保原座長  まず、誰が収集するかということですが、6頁のいちばん下の○を見ると、「事業者 は」と書いてあり、いま事務局からお答があったとおり、情報の収集の主体は事業者で す。会社であれば会社自体ということになるのですが、具体的にその行為を誰がやるか というのは、また別の問題であり、委員が言われたように、事が重大だということであ れば、産業医が主治医とコンタクトを取ることになると思います。7頁のいちばん上 は、情報の収集の主体はあくまでも事業者ということで、具体的に誰がするかというこ とは、また別の問題です。確かに、委員が言われたように、労務担当者がいきなり電話 して、「うちの会社の誰々の病気はどうなっているのだ」と言っても、それは教えない と思いますから、然るべき職務、肩書きを持った人が、然るべき手続きを経てというこ とになると思います。ここで書かれているのは、事業者が情報収集する場合についての ことであります。 ○加藤委員  いまの委員の意見について、この文章ですと、例えば、医療機関で病気になったとき の医学的なデータのようなイメージを持つかもしれません。産業医がいらっしゃれば、 そういったデータに基づいて自分のところでいろいろな処置ができるでしょうが、いな い場合については、医学的なデータというよりも、その人がこのような仕事ができるか どうかを聞かれることはあり得るかもしれません。そのような場合も駄目、教えないと いうのですか。 ○藤村委員  原則的には教えません。例えば、何々会社の社長、あるいは人事部長だが、これはど うでしょうかと言ってきても、本人の同意を得ているという言葉だけでは教えることは できないと思います。 ○加藤委員  医学的なデータではなく、その人が就業できるかどうかということについても教えら れないのですか。 ○藤村委員  そうです。それもできないと思います。例えば結核を考えてみます。発熱があり咳も しているという状態で、人の生命、身体または財産の保護のために、要するに感染が蔓 延することを防ぐために、会社が医師にデータを要求した場合、あるいは就労していい かどうかを聞いた場合、例えば開放性の結核かどうかは、一般に医療機関としては、や はり教えるわけにはいかないのではないかと思います。本人がもう一度来た場合は別で す。 ○保原座長  本人が来る場合は別ですね。 ○藤村委員  全く別です。 ○保原座長  事業者としてはどのような方法がありますか。 ○藤村委員  産業医でしょうね。医師同士の話し合いということならば、それはできると思いま す。 ○加藤委員  産業医がいない企業はたくさんありますが、そのような場合はどうしたらいいのか。 ○藤村委員  そのような場合は、やはり本人にもう一度聞き直してきてもらうなどの配慮がなけれ ばいけないのではないでしょうか。 ○保原座長  本人が主治医から手紙か何かをもらって、それを会社に出すのですね。 ○藤村委員  より詳しい診断書という意味でです。 ○保原座長  事業者からの直接の問合せは難しいということですか。 ○藤村委員  難しいのではないでしょうか。具体的に、私の所にそのような電話がかかってきて も、絶対教えません。 ○加藤委員  電話では難しいとは思いますが、例えば行ったらどうですか。 ○藤村委員  来ても駄目でしょうね。 ○加藤委員  本人と事業主が一緒に行った場合はどうですか。 ○藤村委員  それはもちろんいいです。本人がいらっしゃればよろしいのです。 ○主任中央労働衛生専門官  この部分は原則的には本人の同意を得ることが必要であるという、収集に当たっての 手続を書いておりますので、それが妥当かどうか、できるかできないかというところま では書き込んでおりません。実際には委員が言われるように、本人が同意していても、 会社が言ってくるならば、データはもらえないという状況が起こると思います。結果と して駄目になるかもしれないが、少なくとも本人の同意は得た上で、そのような手続を 取るべきであるということは言っておきたいということです。 ○荒井委員  私も同じようなことがあるのですが、本人からの話が全然なくて、誰それの上司です が、という電話がかかってくることがあります。相手が誰かわからないわけですから、 そもそも受診しているかどうかについても話ができないのです。 ○保原座長  例えば、何々会社の人事課長の何々ですという電話がかかってくるのですか。 ○荒井委員  そうです。それだけでは相手が誰かわからないわけです。受診しているかどうかにつ いても、私は発言できないのです。本人が言っているとか私が診断書を書いた歴史があ ればまた別の話ですが、本人が会社に、自分が受診していることを言っているかどうか を私が知らない場合、私は受診しているかしていないかについてもコメントできないの です。 ○保原座長  あくまでも主治医と患者の関係だけということですか。 ○荒井委員  あなたが誰かわからないから、私は何も答えられませんと申し上げるしかないわけで す。 ○保原座長  先生は労働者である患者が来た場合、診療するということは、あくまでも先生と患者 の関係で、取りあえず会社は関係ないわけですが、会社から電話がきたとき、それは知 りませんということになるわけですか。 ○荒井委員  知りませんというか、本人が受診したことを会社に報告していることを私が知ってい て、本人から依頼があれば私は答えますが、本人から依頼もなく、本人が会社に、自分 が受診したかどうかを伝えたかも不明なときに電話がきても、私は何も言えないと思う のです。そのことについて、その人が誰なのかも私は確認できないわけです。例えば電 話番号を聞いて、相手が誰かを明確にするためにコールバックすることは可能ですが、 その手順を取っても、労働者の同意が得られているかどうかは、本人が同意していると 言っていても、それはその時点で私にはわからないわけです。その手順を踏むために、 本人に来てもらって、然るべき事業者名の診断書なり、どんな質問についてなのかを書 いて別にお答えするという手順になるのだろうと思います。それをやらないと結局、ど こかで漏洩する可能性、あるいは、目的外使用が発生する可能性はあるだろうというよ うに。 ○藤村委員  これは医療機関の常識です。どこの医療機関でやっても同じ返事が返ってくると思い ます。ご本人でない限りお答えできません。 ○保原座長  原則的なことはここに書いてあるのですが、もう少し詳しく、その辺を敷衍して。 ○藤村委員  本人に再度確認をさせるとか、何らかの文章が入ったほうがよろしいと思います。 ○保原座長  それをどこに書くかというのは、また別に考えます。 ○荒井委員  個別の話になってしまっているので、何もしゃべらないということではなく、手順さ え踏んでいただければ十分情報は提供できると思います。 ○堀江委員  この文章を読まれて各委員が想像される具体的な事例が少しずつニュアンスが違うの で、いろいろな意見が出るような印象があります。その誤解は最初の1行目ではないか と思うのです。それは「労働者から提出された診断書よりも詳細な内容について、医療 機関から情報を収集する必要がある場合」となっています。ということは、こういう場 合があるという前提をここで認めていますから、そこが腑に落ちないといいますか、事 業者が直接医療機関に健康情報を聞くという状態がある、ということを前提に始まって いるところが、書き方で誤解を生むのではないかという気がします。したがって、逆に 「事業者は原則として医療機関に労働者の健康情報を求めてはならない、ただし云々」 ということであれば、条件が整理できるのではないかと思いました。 ○保原座長  私は医学界の常識が分からないのですが、会社としては、もうちょっと、この人はど んな病気か中身を聞きたいな、というのがあるのではないでしょうか。 ○堀江委員  私が知っている範囲では、平成7年に神戸地裁姫路支部の判決で、退院してきた方を そのまま事業者が病院に何も聞かずに復職させて、その方が心不全を起こして亡くなっ て損害賠償が認められている事件があります。その際には、確かに事業者が病院の主治 医に対しても、あるいは産業医という言葉も出ていたと思いますが、産業医に対しても 何も尋ねなかったことが、むしろいけなかったのだという裁判所の書き方になっていま す。その場合のポイントは、聞くべきことは健康情報ではなく、働く際に何か注意しな ければいけない、人事・労務的な配慮すべき事項があるかどうかを聞かなかった、とい うことで整理できるのではないかと思います。 ○加藤委員  それが健康情報に入るかどうかです。先ほど私が聞きたかったのはそこなのです。 ○藤村委員  就労できますかどうですか、私は何々会社の社長ですが、人事部長ですがという電話 で、はい、就労はできます、就労はできると思います、危険性があります、というよう なことは申し上げられないと思います。 ○保原座長  いま堀江委員が言われた事件は、たしか病院から退院して来たばかりの人が長時間労 働で過労死した、という事件だったと覚えていますが、そのときに、いま堀江委員が言 われたような、会社は注意義務を果たしていないと、その中身が問題になった事件で す。 ○藤村委員  それは簡単に診断書の提出を求めればよろしいのではないですか。就労を可と認めま すとか、そういう診断書を患者に取ってこさせることが先であって、退院したという情 報がありながら放置して働かせたということに問題があって、収集しなかったことに問 題があるのではないと思います。 ○保原座長  これは石川島興業事件(大阪高判平8.11.28)です。交通事故の負傷による体 力の回復が不十分なのに、過重な労働を継続させ、急性循環器障害を起こしたという事 件です。 ○藤村委員  会社は診断書の提出を求めておけばよかったのではないでしょうか。会社は本人が退 院して帰って来たならば、診断書をもらって提出してくださいと言えばよろしいわけで す。 ○計画課長  いまの議論の点ですが、中間報告のときには「労働者から提出された診断書よりも詳 細な内容(診療経過等の医療情報等)について、情報収集する必要が場合は、産業医等 が労働者の同意を得た上で、医療機関の医師に対して情報提供を求めるよう事業場内で ルール化しておく必要がある」と。この趣旨を書きたいつもりで書いたわけですが、若 干言葉足らずの点がありました。藤村委員のご指摘の、まさにその点から議論が出発し ていると考えております。ここは少し表現を直したいと思います。 ○保原座長  ただ問題は産業医がいない所はどうするのだということです。 ○堀江委員  事業場の97%です。労働者数の6割です。 ○保原座長  そうですね。 ○藤村委員  よく生命保険会社から問い合わせがあるのです。いつからかかっていますかとか、こ れが答えられないのです。本人の同意書みたいな、何か訳の分からない文書を持って来 ても答えられないです。 ○保原座長  前の報告書をもう少し活かす形で。そのほかに、産業医がいない場合はどうするか と。 ○藤村委員  本人に再度、詳しい情報を求めさせるのがまず第1段階です。それがどうしてもでき ない場合は人道的な問題がありますので、また考慮しなければいけないと思います。 ○荒井委員  診断書の様式を事業主が定めて、それを本人が主治医に書いてもらい、それを会社に 届けることを本人が同意していれば就労の適否は書けると思います。それは産業医がい ようと、いまいと。我々は、いま診断書は患者に全部見ていただいておりますので、本 人は会社に、自分のどんな情報が伝わるかは知っているわけです。その手続を踏めば、 本人は自分の情報が会社にどう伝わっているかチェックできますし、会社も何を知って いるかも従業員に分かっている、という構造にできると思います。ですから、診断書の フォーマットが病院付きのフォーマットだと、就業可のみだと内容が分からない。例え ば、こういう作業をさせていいかという質問には、個別のことで答えられない。逆に言 うと、病状についての問合せ書を作っていただき、それを本人から病院宛に出す、それ で本人が受け取ってそれを会社に届ける作業をすれば情報は流れると思います。 ○保原座長  そうすると、どういうフォーマットを作るかが問題になる。 ○荒井委員  ものすごく詳細なフォーマットを持っている会社もあります。書くのに1時間ぐらい かかります。病歴、飲んでいる薬、予後から書かないといけない。 ○保原座長  医者はとてもペイしないですね。 ○荒井委員  実際にそういう会社もありますので、提出を求められれば書かざるを得ない。労働者 にとって不利益になりますので、一生懸命カルテを繰って、初診日から経過を書いて本 人に見せるのです。本人が、それでよしとすればお渡しする。 ○中嶋委員  産業医のおられない所は事業場数で97%ですから、そういう所は法令付けするのは無 理でしょう。小規模事業場であっても、きちんとカムバック等の手続については社内 で、何か衛生委員会のようなものを設置し、産業医でなくても嘱託医、あるいは、近所 の医師とも相談し、就業上の注意等について協議する。その際に分からなければ、医師 が病院の医師に尋ねれば一定程度教えてくれる確率はあるわけですね。 ○藤村委員  医師同士の話ですか。 ○中嶋委員  はい。 ○藤村委員  それはあります。 ○中嶋委員  事業場のルール化を進めるというか、少し強く行政として推し進めるということにな れば、実効性は非常に高いとはいえないけれども、ただ産業医等、産業医等言っても、 ほとんど解決にならない。産業医等がいる所は大体ルール化しているわけでしょう。そ れを小規模事業場にも広めることを本報告書を通じてしていただきたいと思います。指 針はどうせ出ることになると思いますから。 ○保原座長  指針とかガイドラインですが、50人未満だと衛生委員会もないということですから。 ○中嶋委員  そういう手があります、ということを啓蒙しておく必要があるということです。数人 であっても10人であっても。医師は各まちにおられるわけですから、そういう所へ社長 が相談に行けばよろしいわけでしょう。復職問題が生じ、就業上の注意事項が生じたよ うな場合は。そういうのを提言してはいかがでしょうか。 ○加藤委員  中嶋委員が言われるのは、地域産保の活用が可能かどうかですね。 ○中嶋委員  地域産業保健センターが活用を進めるとか。それもなければ、まちの医師と一緒にそ ういうのを検討するようなルールを作ることが望ましいということでも、ガイドライン としては無意味ではないですね。 ○主任中央労働衛生専門官  地域単位で地域産業保健センターを設置する、それはまさに50人未満の事業場のため にということですね。 ○中嶋委員  そういうオフィシャルな例をすべて役所は利用しようとするとするからうまくいかな いので、まちの医師でいいわけです。それを進めると隣の医師がいて、隣の工場の社長 が親しくしていれば、そういう人たちも健康増進や復職のために役立つことがあるわけ です。そういう手を教えてあげる。既存のオフィシャルな機関だけの利用ではなく、そ ういうことを、たまには書く必要があるのではないかというのが私の考えです。 ○藤村委員  中嶋委員、それは嘱託産業医を契約しなさいということでしょう。 ○中嶋委員  嘱託産業医をつくりなさいというところまでは、言えるかどうかは私も自信はないで すが、事業場に法律上の名前が付いた委員会ではなくても、そういう手がありますよと いうことを啓蒙しておくことが必要ではないかという趣旨です。 ○保原座長  嘱託医については後から出てきますので、そこで議論したいと思います。 ○中嶋委員  産業医等と言っておられたので、産業医等だけを書くのではあまり意味はないのでは ないかということを申し上げたわけです。 ○保原座長  いま(2)の収集をやっていますが、ほかに何かありますでしょうか。 ○堀江委員  下の○の所に「安衛法第66条1項」とありますが、これは1項に限らない話ですの で、1項は削除されたほうがいいと思います。1項にすると、一般健診だけを特定する 話になるかと思います。 ○主任中央労働衛生専門官  再度確認して整理いたします。 ○保原座長  そのほかにはいかがでしょうか。労働者の受診義務はだいぶここで議論しましたが、 こういうまとめでよろしいですか。各委員100%ご満足ではないと思いますが。 ○加藤委員  現行どおりということですか。 ○保原座長  当面現行どおりということです。 ○中桐委員  この会の冒頭の議論のときに、労働者の健診の権利化の問題について、将来の検討方 向として反対はしませんという発言をしたと思いますが、この検討会も含めて、いま行 っているその他の検討会、特に安衛法の改正を考えている検討会の中身というのは、マ ネジメントシステムを使ったその普及、それと、CSRについての普及、労使の自主的 な管理体制を核にしたいという流れだと思うのです。そうすれば衛生関係についてマネ ジメントシステム上の管理体制、要するに労使の自主的な方向が打ち出されてくるので はないかと思うわけです。そのようにイギリスのマネジメント、そのようなことも書い てあると思います。  いま出ている、要するに現行の健康診断も含めて変えないという方向でいくと、労使 の自主的な参加による衛生管理体制といったものを、すべて否定しているような格好に ならないか。もちろん、他の検討会は最終的な方向を出していませんが、そういう方向 にいこうという厚生労働省の意欲があるように思っているのです。そういった意味で、 もう少し一般健康診断についても、労働者の自主性なりの尊重を、いまやれと言われた ら、まだ法律も改正されたわけでもないし、不安はたくさんありますが、そういうこと が必要ではないか。そういうことが議論されたということを報告書の中にきちんと明記 し、そういう方向が実は目標であるということを言及できないかと思っていますが、い かがでしょうか。 ○保原座長  目標であるということになると大変なことになります。将来の検討課題であるという ところまでなら皆様にご同意いただけると思いますが、こういう方向で将来はいくのだ ということになれば、そこの議論を再開しなければいけない問題になります。 ○中桐委員  将来の検討課題ということでも明記していただければ、そういう方向に皆が向かって いくのではないか。産業医の配置の問題もそうですが、今は難しいが、32年ぶりに安衛 法を変えようかという意欲の中で、管理体制も変えたい、変えようという意欲ですか ら、ここだけそれと関連がないというのも、ちょっといかがなものかなという気がして おります。 ○主任中央じん肺診査医  そういうご意見もあったということで、方向を変えるべき意見として取り上げていま すので、それでご了解いただければと思います。 ○中桐委員  それを強調させていただきたいと思います。 ○藤村委員  義務付けを外すか外さないほうがいいかという議論で、外すほうの意見が先に書いて ありますが、私としては非常に不満です。 ○保原座長  ただ、現行法があるわけですから、現行法を変えようというのが最初にくると、筋書 きとしてはどうなのでしょう。 ○藤村委員  分かりました。過重労働メンタルヘルスの検討会で検討して、その結論として出した のは、健康診断を非常に重視し、健康診断でハイリスクの者には過重労働を課さないよ うに、という結論付けをしようと私どもが意見を出しています。 ○保原座長  その方向のようですね。 ○藤村委員  はい。実際問題として、ある組織に属して労働をするというのは特殊の状態です。例 えば老人保健法の健康診断は任意ですが、それと同等にやっていいかどうか。特殊の条 件下だったらそうではないほうがいい。  とにかくリスクの高い者を見つけ出して過重労働を避けさせるのだ、それが脳・心疾 患の発生を予防する非常に大切なファクターであるという結論です。 ○保原座長  いま藤村委員が言われましたように、藤村委員と私が委員になっているのですが、過 重労働メンタルヘルスについての検討会が、この労働衛生課が主管しておりますが、そ こではむしろ健康診断をきちんとやれと。 ○松本委員  前回も同じような議論をした記憶がありますが、労働者の義務か権利かという視点 と、事業者の義務かという視点は多分ずれがあって、労働者の義務であることと、事業 者の義務であることを一緒に外してしまって完全に自由になって、単に健康診断を受け るのに会社が補助金を出しましょう、ご自由におやりくださいとなってしまうのか。そ うではなく、会社側としては労働者の健康状態に配慮した業務を提供する義務があるの だから、その一環として労働者の協力を得て、健康情報について労働者から自発的に提 供してもらえるようないろいろな環境をつくりなさいと。その中に、事業者が提供する 健康診断の機会もあるし、他のチャネルも用意しますという形で、事業者の義務は外さ ないが労働者の受診義務は外すという選択肢は十分あり得ると思います。 ○中嶋委員  私の記憶では、使用者の義務を外せという議論は出ていないです。問題は労働者の義 務、安全衛生法令が命じて健康情報を発生させる仕組みが近代的でないというか、そう いう議論で使用者の義務は残すと。  私の考えは、健康診断に関しては就業規則の事項にして、それで当事者の権利義務で きちんと実効化を図れるようにしていけば、ここで労働者の受診義務を外しても健康診 断は強化こそされ、ないがしろになることはないというのが私の感想です。  堀江委員は、多分健康診断の受診率は減るという議論で、使用者も外して当事者に任 せろというのは、中桐委員もそういう意味ではないですね。 ○中桐委員  ではないです。 ○中嶋委員  問題は労働者の受診義務を国が法律をもって課すというのは、健康情報がそこに必ず 生ずる以上は権利はないかという。 ○松本委員  確かに労働関係という、私人間の関係に国が直接一方に義務を課すというのは、ちょ っと変な感じです。それでは義務違反の場合にどんな効果が生じるのですかということ まで考えると、罰則を科すということでもないですし、これは一種の訓示規定ですか。 ○主任中央労働衛生専門官  罰則はあります。 ○松本委員  労働者に対してあるのですか。 ○主任中央労働衛生専門官  労働者に対してはありません。 ○松本委員  そうすると、そういう労働者の義務は何ですかということで、一体、守らなければど ういう不利益があるのですかというと、その場合は労災に遭っても会社は責任を負わな いという不利益が、結果的に出てきますという、民事ルールの裏返しのような義務を、 国がこの法律で課している構造に果たしてなるのかどうか。 ○保原座長  一般的に考えられているのは雇い主に義務があって、労働者の義務は、雇い主の義務 履行に対する協力義務だと一般には解釈されていると思います。その後どうなるのだと 言われると、委員が言われたように、安全配慮義務との関係はどうするのだとか、いろ いろあります。いずれにしても、雇い主の健康診断義務を外せば、かなり安全配慮義務 の議論にも波及するのは必至です。ここではそこまではやっていません。時間の関係も ありますので、この委員会では、大体の大勢は、労働者の受診義務は現行法を維持する のが大勢である。ただ、そうでないという意見もある。将来の検討課題としては残る、 というぐらいにとどめさせていただきたいのです。 ○藤村委員  ○の2つ目ですが、「健康診断の受診を義務付けている結果、本人の意思に関わら ず、個人の特に機微な情報といわれる健康情報が事業者に把握される」という表現があ ります。健康診断で血圧がどのぐらい、コレステロールがどのぐらい、貧血があるかど うか、などというのは機微な情報ではないのではないでしょうか。機微な情報と言われ ますと、最近のHIVの問題などですが、ごく当たり前の情報を機微な情報と言うから ややこしくなってしまう。機微な情報というのは取ったほうがいいです。 ○保原座長  でも、健康情報はみんな機微な情報だということでずっとやってきたのです。これを 取るということになると、えらいことになります。 ○中嶋委員  確かに言われるとおり、従来からの議論ですと、ほかの労働者の情報に比べて健康情 報は機微だということであって、その機微な情報の中でも特別に機微なものと、通常、 機微なものがあるという。中間報告はそう読めるような感じだったのですが、どうだっ たでしょうか。 ○保原座長  そこまでは記憶していないですね。 ○中嶋委員  特に機微な情報というと、HIV、B型、C型肝炎が列記されてあったのではないか と思います。 ○保原座長  それは中間報告書を見て表現の仕方、特に機微な情報という表現を、場合によっては HIVに使うという程度にさせていただきたいと思います。藤村委員から発言がありま したが、ちょっと大変なので。 ○藤村委員  はい、分かりました。 ○保原座長  そのほかには、(2)の収集について、何かありませんでしょうか。よろしければ9 頁の(3)守秘義務にいきます。これは2つ問題があり、1つは守秘義務の対象となる 範囲が法定の健康診断だけでいいかという問題。もう1つは、対象となる人間の範囲を もう少し広げるかということです。この報告書では、必要な範囲で守秘義務を課す範囲 を広げたほうがいいだろうということです。 ○堀江委員  現行法の守秘義務は事業者との両罰規定になっています。そういう意味からしても、 事業場の中のスタッフにとどまっている感じがいたします。ただ現場では、実際には労 働衛生サービス機関、健康診断を実施している機関が委託されて健診をやっていて、そ の方々の守秘義務は自主的に全衛連等がやっていたり、あるいは契約上、守秘義務を付 けた契約をして委託していたりするのだろうと思います。ここでそれを言うべきかどう か分かりませんが、守秘義務の中で是非、外部委託している健診機関のことをどうする かを検討したほうがいいと思います。 ○主任中央労働衛生専門官  健診機関における情報の管理は9頁のいちばん下に書いてあります。 ○堀江委員  これは事業者側から見たときの契約上の安全保護措置のようなことですよね。 ○保原座長  これは法律で守秘義務を課するということではなく、契約に際してそういう措置をと りなさいという方向ですか。 ○主任中央労働衛生専門官  はい。医療機関一般に対して安衛法が、そういった義務付けができるかというのは、 法律上難しいのではないかと思います。 ○保原座長  自分が使用する労働者との関係で規制するというのが安衛法ですから。何か仕事を頼 まれたというのは安衛法の適用はない。ただ機械の製造とか化学物質の輸入では、「人 」を使っていない者も関係が出てきますよね。そういう関係と同じに考えていいのかど うか。 ○主任中央労働衛生専門官  健康診断機関といいながら医療機関であるわけでしょうから、医療機関としても、一 般的な意味での守秘義務は当然かかってくると思います。 ○保原座長  それは医療機関に働く医師とか看護師という人は、守秘義務はかかっている。 ○荒井委員  医療機関であればいいのですが、例えば事業場外の資源として、EAP機関なども、 これからその対象になってくると思います。ですから「関連する」としておいたほう が。医療機関はいますでに課せられていますし、あるいは契約の中で実現されています が、これから公的な守秘義務を持っていない所との契約を、ある事業場がしていると いうことが発生しますと、そのときに健康情報が、ある他の組織が持つ可能性が出てき ていますので、そこに関係している外部の資源に対しても守秘義務を課すということ は、将来的には、課しておかないと大変だという気がします。 ○保原座長  柚木委員、いかがでしょうか。 ○柚木委員  健診機関はほとんど事業場の求めに応じて契約をしておりますし、かつ、知れた情報 を漏らさないというのは、各健診機関で十分教育をしています。教育しているのです が、それでも法的に職員のことまできちんと触れておく必要があるかどうかです。 ○荒井委員  医療機関ではなく、従業員支援プログラムとか、そういう所でのことも出てきている ので、事業場で流通し得る個人情報が健康診断の問題だけではなく、ほかにも出てき得 ると思うのです。それについて安衛法の中でやれるのかどうかは分かりませんが、守秘 義務の範囲は出来る限り広げておいたほうが、従業員の安全という意味ではいいと私は 考えています。ですから、なるべく広範囲に守秘義務がかけられるような、例えばデー タならそこにアクセスできる可能性のある人というようにすればいいわけです。 ○保原座長  罪刑法定主義の関係で、刑罰を伴うということになると、対象をはっきりさせなけれ ばいけないですから、それが可能かという。 ○荒井委員  私は法律家でないので分かりませんが、民間人にも守秘義務はあります。原子力施設 ですが、民間人にも守秘義務を課すという。これはテロ対策という特別なことに対して の民間人への守秘義務ですが、健康情報は特異にナイーブな情報であるとすれば、民間 人にも守秘義務が課せられてもおかしくないと思います。 ○加藤委員  荒井委員が言われるように、医療機関外の、例えば電話健康相談何とかシステムと か、メンタルのアンケートを配って調査してくれる所とか、それは医療機関ではないけ れどもいっぱいあります。そういった所のことを言っておられると思うのです。医療機 関であれば契約してきちんとやっている部分もあります。医療機関ですから信頼してい る部分もあります。そうではない所がたくさんあるのも事実です。そういう売込みは結 構多いですから、24時間健康相談などをやってくれるとなると、すぐにお願いしてしま うことがあるかもしれません。相手をよく分からないままというのも結構あるのではな いかという気がしております。 ○荒井委員  そうしないと外部の資源のクオリティーも上がらないと思います。 ○保原座長  これは大きな問題ですね。 ○荒井委員  それはここの中で議論していいかどうか分かりませんが、個人情報という意味では、 これからは会社の中だけではとどまっていませんので。 ○加藤委員  それはいま国の検討機関の中でも、それをどう使うかというのはやっておられますよ ね。中災防で。 ○中桐委員  もう終わっています。 ○加藤委員  そこの中で、どういう議論がされたかというのはあると思いますが。 ○保原座長  中災防はどういう議論ですか。 ○中桐委員  EAPです。そのあり方です。もう報告書が厚生労働省に出されています。 ○保原座長  報告書は出ているのですか。 ○中桐委員  はい。 ○主任中央労働衛生専門官  メンタルヘルス面での外部機関の活用という視点でやっております。私も詳細に読ん でおりませんので詳しいことは分かりませんが、個人情報の保護に留意する必要がある ということは言っていると思いますが、それ以上のことまではコメントしていないので はないかと思います。 ○保原座長  その範囲の守秘義務化とか。 ○主任中央労働衛生専門官  守秘義務について議論する場ではなかった。 ○荒井委員  していかないと問題になると思っています。 ○藤村委員  6,000万人労働者に対する健康管理が、将来この人たちが退職していきますと老人保険 法の健診につながっていかなければいけないわけです。つまり、産業保健が地域医療と つながっていかなければいけないわけです。それが全く別々に縦割りになっていると、 本人のためにもなりませんし、社会のためにもなりません。そういう意味で、実は老人 法の各種健診、ここでは詳しい健診をしているのです。がん検診をやっていますし、例 えば前立腺がんの腫瘍マーカーを調べたり、そういうことを全部地方自治体が責任を持 ってやって、結果の通知を出しているのです。地方自治体は守秘義務について、もっと フレキシブルに考えてやっているのです。  ですから、これ以上詳しく守秘義務の規定をする必要はないと思います。つながって いくことが必要であります。退職者に今までのデータを渡し、あとは地域医療に反映さ せてくださいとするのが正しいやり方です。だから、廃棄の問題もそれに絡んでくると 思います。ただ、産業保健だけを一生懸命やればよいという問題では絶対にないと思い ます。 ○保原座長  だから、老人保健でカバーできないという分野もある。 ○藤村委員  つながりを持たせないような状態にしてはいけないです。 ○保原座長  健康増進法などは、つなぎなさいと言っていますね。 ○藤村委員  そうです。「健康日本21」などは、やはりつなげる方向になっていますから。 ○保原座長  今日は他にたくさん検討しなければいけないことがありますので、この問題は大きな 問題ですから、私に引き取らせていただきまして、次回までに事務局ともよく相談をし て、どういう方向でいくかを考えたいと思います。 ○中嶋委員  参考のために1つだけよろしいでしょうか。私の知る限りでは、安衛法と保助看法の 守秘義務と刑法上の秘密漏洩罪の3つが整合していないのです。私がいちばん良いと思 ったのは、刑法草案という全然日の目を見ない草案が六法に載っています。これ自体は 非常に評判の悪いものでしたが、秘密漏洩についてはかなり良くできた規定だと思って います。適度に広く、構成要件も割合明確です。ですから、第六法の中の刑法草案をご 参照いただきたいと思います。 ○保原座長  それも参考にさせていただきます。次に(4)情報の管理・利用について、お願いし ます。 ○松本委員  4つ目の○だと、事業者が集めた健康情報の取扱いを外部の業者にやらせるという場 合の委託先に関する必要な監督という流れです。だから、最初に情報収集するのは事業 者ですが、それの処理を外部委託するというイメージになります。先ほど議論していた のは、収集の段階で、いわば外部の業者にお願いをし、労働者との対応や労働者からの 健康情報を集めるのを外部の業者にやってもらうという場合、外部の業者が医療機関で ない場合に守秘義務を医療機関並みに課せられるのかという話ですね。4つ目の○は、 事業者が自ら集めて持っているのですが、自分で処理してデータ化するのは大変だから 外部でコンピューター処理してもらうとか、あるいは保管してもらうという場合の流れ ということになり、少し似ていますが違います。4つ目の○であれば、直罰としての守 秘義務を負わすかどうかではなく、やはり契約上の守秘義務をきちんとしなさいと、そ うでないと事業者自身の罰則の問題になりますという感じでしょうか。  病院がカルテを管理するのに外部の業者に委託するという場合がありますが、それと 同じような流れになるのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  両方想定していると思います。外部に委託してというケースも当然ながら、管理はき ちんとしてくださいということです。 ○藤村委員  現在医療機関はしていないでしょう。IT化されたときに、それを外部に保存してい いかどうかをいま議論されていますが、現在では、外部に保存を依頼することはないは ずです。 ○松本委員  ついこの前にデータ入力の事件があったと思います。外部の業者に委託したところ、 そこが契約違反をし、さらに下に流して、その下で情報が消えてしまったという事件が ありましたが。 ○藤村委員  病院の場合は、多分ないと思います。 ○松本委員  確か厚労省絡みの患者調査票の紛失のケースだったと記憶していますが。 ○藤村委員  カルテの外部保存の委託は、いま議論が始まったところで、IT化されるときに議論 の対象になるので、紙の上では、外部保存は絶対ないと思います。 ○加藤委員  1つありますのは、厚生労働省の法律ではなく文部科学省の法律で、放射線の障害の 場合は、健康診断の結果と、ばく露量を協会に全部出すというのがあり、私どもはそれ を出しています。 ○主任中央労働衛生専門官  放射線被曝のデータ管理制度はあります。 ○加藤委員  それはほぼ強制に近いのですが、健診結果を全部そこへ提供することになっています ね。 ○堀江委員  会社が移動することがあって、そういう形をとっているのかなと私は理解しておりま したが。 ○加藤委員  企業の中でその設備がなくなってしまった場合もですね。「出せ」というから出して いるところはあります。 ○松本委員  完全に預けておくというイメージもあるでしょうけれど、データ入力の代行のような サービスがいま非常に増えています。いずれは戻ってくるのだが、入力を委託している 間に紛失するケースがよくあるようです。 ○加藤委員  企業の健康診断の施設の中では少ないと思うのですが、おそらく病院の電子カルテに なっている所は、外部委託でやっている所が多いのではないですか。専門業者に頼ん で。 ○藤村委員  まだやっていないのではないですか。何を外部委託するのです。 ○加藤委員  データの入力、保管とか。 ○藤村委員  保管はまだやっていないはずです。 ○加藤委員  中にはそういう医療機関が。 ○藤村委員  いま検討しているところですから。 ○荒井委員  保管というのは、システムの中の保管ですか。 ○加藤委員  そうです。 ○藤村委員  外部委託を認めるかどうかをいま検討中です。 ○加藤委員  外へ出すというより病院の中です。 ○藤村委員  中なら当然あって構いません。 ○荒井委員  中でのデータの保存については、そのシステムを作った会社との、契約の中での守秘 義務は当然発生しますので、相手の会社がそれを持っている。職員は守秘義務を課せら れた人になるわけです。 ○主任中央労働衛生専門官  個人情報保護法においても、委託先の監督等のことは言われておりますので、その趣 旨をこれに盛り込んでいるということです。 ○保原座長  これは契約を通じてですね。 ○主任中央労働衛生専門官  はい、基本的には。その部分では、先ほど出ました守秘義務までという話は別になる と思います。 ○保原座長  利用ルールの整備等はどうでしょうか。 ○中桐委員  この場所が適当かどうか分かりませんが、ウの「労働者とのトラブル」です。もちろ ん労使間でルールを作ってきちんとやるべきですが、それでも、例えば自分のデータを 書いてくれと言っても書いてくれないとか、拒否されたとかといった場合に、それを守 ってもらう権利というか、労働者の権利というか。あと行政もありますが、例えばアメ リカなどもそうだと聞いておりますけれど、監督署に通報してやってもらうとか、その ような救済システムがあると思いますが、そのようなことを是非、盛り込んでいただき たいと思います。  必ずしもいつもルール通りいかないと思いますし、権利侵害があった場合に救済して もらうための手続というか国の機関。アメリカだとか欧州辺りも、何か電話で通報する 義務があるというようなことがありますがそのようなことについて、少し、この場では ないかも分かりませんが、個人情報の場合、検討していただければ有難いと思っており ます。 ○保原座長  健康情報について全体の、例えば特別の。 ○中桐委員  健康情報が主ですが、職場の安全確保の中でもあるのかも分かりません。通常の通報 というか。 ○計画課長  例えば個別紛争処理のシステムがありますが、その中で利用できるかどうかについて 検討する必要があると思いますので、その観点で考えさせていただきます。 ○保原座長  外国だと労働監督機関に申立てをするのが多いですね。紛争処理の場合は、いま課長 が言われたのは任意的な取扱いが前提ですから、公権力が直接関与しない、お世話をす るだけということなので、その点をどう考えるかがありますね。 ○中桐委員  監督署が適当かなと思います。 ○保原座長  検討させていただきます。これ労働者とのトラブルだけでいいのかな。よく考えてい ないのですが、トラブルは労働者との間だけかという。これは安衛法だからいいのか な。 ○主任中央労働衛生専門官  労働者の健康情報という観点では、そこがメインになろうと思います。先ほどの外部 に情報処理を委託したような場合のトラブルとか、そういうものも考えられますが、安 衛法はそこまでは。 ○保原座長  分かりました。ここでも1つ宿題をもらいました。では、次に進みます。(5)の開 示です。1つは、本人からデータの開示請求があった場合について個人情報保護法を引 用していること。もう1つは、一般健康診断以外の特殊健康診断の結果についても通知 義務を課すかという問題です。これは一応議論したので大体この線でよろしいでしょう か。  それでは、次の(6)第三者提供の2つ目の○の文章を、ちょっと直します。「合併 等と事業承継は」という所の「は」というのはやめて、事業承継に伴う労働契約の承継 の場合には、字句だけの問題です。これは、原則は本人の同意なくして事業者は健康情 報を第三者に提供してはならない。しかし、合併等で大量に労働契約が承継される場合 には、そうも言ってられないので個別同意は必要ない、という原則でいこうということ です。 ○松本委員  いまの点ですが、先ほどの流れからいきますと、労働関係も含めて事業を承継した雇 用者側には、むしろ情報を知るべき義務があるとなるのではないですか。安全健康を維 持できるような労働環境を提供しなければならない義務だとすれば、その時点から情報 はゼロになりましたでは駄目ということになって、先ほどの退院して来た人に対して、 病院に確認しなければならないというのであれば、事業承継に伴う労働関係の承継の場 合には、前の職場でのことを積極的に知るべき義務があるという話になってこないでし ょうか。第三者提供に当たらないというような表現では、弱すぎると言ってもいいぐら いかという気もするのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  第三者に当たるとすれば、いちいち合意を取らなければいけないのは大変なのでそこ までは求めない、ということで書いています。全体が情報保護というスタンスが強く出 ているので、労働者保護という視点での言い方が、若干弱くなっているのは、おっしゃ るとおりかもしれません。 ○中桐委員  通常の契約関係よりは弱まっていることはないでしょう。ですから、第三者に当たら ないというだけで、ここはよろしいのではないかと私は思いました。 ○松本委員  実際的には、それでよろしいと思います。 ○主任中央じん肺審査医  いまのことは、下の但しを削除するという話ではないということですね。 ○保原座長  但し書は、また別の問題です。 ○堀江委員  収集の段階からずっと似たような文章で、人の生命、身体、財産の保護のために必要 がある場合、除外規定という書き方がずっと貫かれているのですが、個人情報保護法の 中では、公衆衛生の向上という事項も入っているかと思います。その点が、本当にいら ないかなというところが気になっているのです。 ○保原座長  公衆衛生の向上という中に、具体的には何が入りますか。 ○堀江委員  感染症ですとか。 ○労働衛生課長  それは感染症のことと、健康情報は、当然公衆全体の健康度の地域診断、要するにヘ ルスポリシーの策定に統計的に使うことを昔からやっていますので、保健疫学的な統計 処理に使うような場合を想定して、やっている。がん登録が、それの最たるもので、そ の分は入っています。  こちらも産業保健で全体の産業保健水準を向上させるために、あるいは学術的に統計 処理するために提供を求めることを、想定して入れるかどうかの議論は、あってしかる べきだと思います。 ○主任中央じん肺審査医  例えば生命、身体の保護のために必要のある場合、で読めます。 ○堀江委員  個人情報保護法が、この文章と並列で公衆衛生の向上と、児童の健全な育成というの が、2つ並列に書いてあるものですから、わざわざここの所が除外規定と同じような書 き方なので、もう1つの方を削除する理由が、それほど明確ではない。  課長がおっしゃるように、労働衛生水準の分野の公衆衛生の向上には、むしろ一定の 保護措置を付けるのでしょうが、提供できるようにしておかないと、いろいろと問題が 生じないかと思いました。 ○労働衛生課長  ちょっとそこは。 ○主任中央労働衛生専門官  これまであまり、議論に出てなかった部分だと思うのですが。 ○保原座長  検討させていただきたいと思います。 ○労働衛生課長  実際公衆衛生関係ですと、生データを持って来て統計処理するのですが、実はこれは 完全な個人情報なのでやるたびに相当議論が出てきまして、いちいち全部本人に承諾を 取るのか、あるいは死亡証憑というのがありますが、死亡者だからこれに該当しないの ではないかとかいうすごい議論になりますので、そちらのほうの状況を調査した上で、 もう1度相談させていただきます。 ○保原座長  ありがとうございました。 ○加藤委員  2つ目の「合併等」の「等」のところは、仕事も従業員も移るような場合、合併また は新会社をつくったりということが前提ですね。 ○保原座長  はい。 ○加藤委員  出向などでよその会社に業務命令で行く場合には、健康情報や、そういったものはつ いていかないのですか。 ○保原座長  これは、大量処理の場合です。 ○加藤委員  だけですね。 ○保原座長  はい。個別的に出向とか何とかという場合には、原則どおり本人の同意が必要になっ てきます。  次に、(7)特に配慮が必要な健康情報の取扱いの留意点。HIV、B型肝炎の企業 内での検査問題。それから、外国に派遣される労働者についてのHIVの取扱いです。 ○堀江委員  表現上の問題だけなのですが、最初のHIVの○の所、(7)の最初のHIV感染症 やB型肝炎等で始まる文章の次の3行目で、「これらは本人の生活習慣の改善努力や、 治療等で変更できるものではない」と言い切っていますが、これはちょっと病気の性質 をここで言い切ってしまうのは誤解を招くと思いますので、何か形容詞で、例えば必ず しも変更できるものではないとか、容易に変更できるものではないとしたほうがよろし いのではないかと思います。 ○保原座長  例えば、治療等のみで変更できるものではないとか。 ○堀江委員  治療によって治る場合もあると思います。 ○保原座長  必要ないのではないかと思いますが、このセンテンスは。 ○加藤委員  ここはやめてもいいかという気はするのです。 ○保原座長  ここはやめるということでいいですか。 ○__  はい。 ○中嶋委員  色覚検査は、いつの段階からか、法定健診からは除外されました。それなのに、色覚 検査等の遺伝情報の取扱いというのは、どういう場合に生ずるのでしょうか。つまりお 医者さんに行ってやられますが、本人の同意がありますね。 ○保原座長  やっぱり色を使う職業。 ○中嶋委員  法定健診ではなくて、任意的に付け加えてあるというようなことですか。 ○保原座長  形式論を言えば、採用差別はいけないと。 ○中嶋委員  採用時健診。 ○保原座長  採用したあとで、色を使う仕事に就けていいかで、検査をすることはあると思うので す。 ○中嶋委員  意味はわかります。 ○保原座長  結核などについては、本人の承諾がなくてもということです。  それから、メンタルヘルスについてはだいぶ議論をしましたが、情報提供者について も保護の必要性がある、ということが言われています。 ○中嶋委員  いちばん下の○は判例もありますが、HIV感染をタイかどこかでは、滞在のための 検査の必須項目にしているのです。だから向こうへ行ってやらざるを得なくて、その結 果が日本の企業に送られてきたことはあったのですが、これですと渡航先から予め、相 手方のどこが要求してくるのでしょうか。 ○保原座長  例えば、中国などはそうですね。 ○中嶋委員  政府ですか。 ○保原座長  政府だと思います。 ○堀江委員  就労ビザを発行する際に必要です。 ○中嶋委員  そうなるとそういう話です。政府が要求してくると、労働者本人が任意である。とい うことは、HIV検査を受けられなければ、行かなくてもいいということですか、望ま なければ。やってもいいという人だけ行きなさいと。 ○保原座長  とにかく本人が検査を受けたくなければ、その国に行かなくていいです。 ○中嶋委員  業務命令違反にはならないですか。 ○保原座長  ならないと思います。 ○加藤委員  基本的には、いまはそうしています。 ○中嶋委員  情報のことですから、そういうことなのですか。 ○加藤委員  ただ、向こうの国については、強制的にやらされてしまうところがあるようです。我 々もよくわからないところがあります。 ○中嶋委員  事件は、判例がタイだったと思います。 ○加藤委員  タイは確かですね。検診項目の中に入ってしまっている。 ○中嶋委員  法律で何か。 ○加藤委員  ですから、会社から行っている従業員も、一覧表に載ってしまったりすることがある ようです。あまり何かピンとこない人たちが、まだ日本人に多いです。 ○中嶋委員  それは要請が出て、現地の所長が、本社にエイズだっていう情報を送ってきたので す。だから本社から解雇されたという事件でした。 ○松本委員  それは所長が解雇されたのではなくて、当該労働者が解雇されたのですか。 ○中嶋委員  所長が褒められた。 ○保原座長  大体よろしいですか。 ○中嶋委員  結構です。 ○保原座長  13頁メンタルヘルス、結核等について、何かございますか。 ○荒井委員  最後の第2のパラグラフなのですが、これも申し上げるまでもなく、いままで貫いて きていることですが、「本人の同意を得て、上司やその職場に適切な範囲で情報を提供 し」という言い方がないとまずいと思います。要するに本人に。 ○保原座長  本人の同意を得ていることですね。 ○荒井委員  産業医が、衛生管理者が、本人に何も伝えずに職場に話をすることは、個人情報の保 護にはならないと思いますので、繰り返しですが、「本人の同意を得た上で、上司やそ の職場に適切な範囲で情報を提供し」となります。 ○保原座長  ありがとうございました。そのほかはよろしいですか。  それでは、14頁、労働者の健康情報の保護に向けた取組について、何かございます か。 ○中嶋委員  15頁のイの小規模事業所への対応は、先ほど申し上げたように、もっと身近にいろい ろと考えてやってくださいというのと、地域産業保健センターは活用しなくても事業場 で考えなさい、ということを入れてもらいたいです。 ○中桐委員  関連なのですが、いろいろ出てきました50人なり10人なり、事業主籍の義務を免除さ れているのは、やはりいろいろな問題を起こしているわけで、それが普遍であることで はないと思います。30人でやっている国やいろいろな国もありますので、それは固定的 に考えていただけないかということと、小規模事業場にもっと、自主的な活動について 支援をすることを書き込んでいただけるとありがたいです。 ○保原座長  何か小規模事業場について、いい方法はないのですか。こういうガイダンスを出した らいいなど。 ○中嶋委員  地域産業保健所というのは、何か協同組合のようにしてはできないのですか。 ○中桐委員  そういう具合でも出しています。いろんな形態で。 ○主任中央労働衛生専門官  共同選任事業というのはありますよ。 ○荒井委員  掛り付け医についてはここに書くのは何だとは思いますが、先ほどお話のあったなじ みの掛り付け医は、当然一人ひとりが持っています。そうすると、その掛り付け医に仕 事の相談をするのはできると思いますし、それを会社に持って行っていただければいい ので、ここに書くのがいいのかどうかはわかりませんが、地産保だけではなくて、一般 の家庭医が、当然その役を持ってくれると思うのですが、実際にやっているのではない でしょうか。 ○堀江委員  先ほど来議論されている小規模のお話については、当然産業医という専任義務があれ ば一応、形上は解決するのでしょうが、実態はそうはいきません。しかしながらやはり 復職の問題や、あるいは就業適性の問題は、極めて産業医の専権事項と言いますか、や らなければならない本質的な事項と思いますので、たぶん議論すべきことは産業医の専 任ではなくて、産業医機能を誰が果たすかではないかと思いました。その際に重要なの は、医師が地産保にいるか掛り付け医かというよりは、むしろ問題は労働者と、働く現 場のことをどれぐらいよく理解しているかが重要であって、その2つを理解した上で医 学的判断を下して、就業可か不可かが言えれば、別にそれは前々から産業医契約をして いる人ではなくても、一応産業医機能として、この瞬間は復職の判定を下す資格のある 医師と認めていいのではないかと、私は思います。 ○保原座長  そういう医師を、どうやって見つけたらいいですか。 ○堀江委員  労働者の健康情報については、藤村委員もおっしゃったように、医師同士の何らかの コミュニケーションで、本人同意を得ながら情報をもらって、一方では事業場について は、事業主からきちんとした情報をいただいて判定する、その作業だけなのです。それ は、医師の資格の中でとりあえずやっていただくということにしかなりませんが。 ○保原座長  一般に事業主というのは、変な医師が来て、会社の中を調べられるのは嫌だというこ とにならないのか。産業医だと、しょうがないという気もするけれども。 ○堀江委員  もしそういうことであれば、もう主治医が直接判断したほうがまだましだ、となって しまうのではないか。それでは本当の意味で職業性疾病の防止、あるいは産業関連疾患 の増悪の防止といったことにはならないので、やはり事業主は、1回任せたのであれ ば、そのお医者さんにきちんと情報提供をすべきではないかと思います。 ○井上委員  中小の事業主というと、産業医制度などわからないし、大変ではないかと思います。 家庭とかホームドクターという表現がいいのかなと思います。 ○荒井委員  実際はやっています。例えば事業場の中にはメディカルスタッフはいないわけですか ら、主治医の意見が唯一の医学的な意見だという場合があって、本人の状態、働けるか 働けないかは、通常の医師でなくても判断できるわけですから、診断書を1つの根拠に して、働いてもらう契約を履行してもらうことになると思うのです。  地産保に委ねるやり方もあると思うのですが、遠いです。時間もかかるし誰が判定す るのか、何の病気については誰がやるのかで大変になってきて、地産保自身が対応しき れない可能性があると思うのです。先生がおっしゃるように、ある所に集めてやるとい う作業をしたら。 ○堀江委員  もし地産保の形を描くのであれば、お宅の事業場の周辺では、産業医の資格を持って いる先生はこんな人がいますよ、という紹介をしていただいて、あとは事業場が周辺の 資格を持った先生の所に行って、実は事業場はこんな仕事ですというお話をし、こうい う労働者がこんな診断書を持って来ましたがどうでしょうか、と相談すればいい話だと 思います。 ○荒井委員  コーディネーターが地産保にはいらっしゃるので、そのコーディネーターが近くの、 それこそホームドクターを紹介することはあり得ると思います。 ○堀江委員  なるべく産業医資格を持っている方ということですね。 ○荒井委員  そうですね。 ○保原座長  フランスの場合は、95%の労働者が産業医でカバーされていると言われているのです が、中小企業については産業医療センターがあって、そこに産業医がたくさんいます。 日本と違うのは、そこで健康診断をやるのです。企業の健康診断は産業医だけがやるこ とになっていて、そこで労働者を捕まえているのです。日本はなかなかそうはいかない ものですから。 ○荒井委員  会社は、その情報には。 ○保原座長  原則としてタッチできないです。 ○荒井委員  会社の中にメディカルスタッフは、僕らはあまり、フランスの場合は知らないです が。 ○保原座長  会社の中でも、健康診断は産業医が企画・立案して、健診機関に頼んで、その情報は 産業医が手元に最初にもらう。手元にもらったデータを産業医が見て、この人はいまの 仕事がよくないという場合には、加工した情報を雇い主と労働者に同じ文章で伝えるこ とにしています。したがいまして産業医は、直接データを持っています。しかし雇い主 は、血圧の数値がいくつかは聞けない。いまの仕事に適しているとか、夜勤はやめさせ ろなど、そういう範囲ではきます。 ○井上委員  健康診断の結果報告そのものが、50人以上の事業場になっていますね。50人未満の事 業場の健診、受診などの情報は、全然掴んでませんね。どうなのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  報告という仕組みはございませんが、統計調査のような形での実施状況は、把握して います。 ○保原座長  それは、おおよそどの程度ですか。 ○主任中央労働衛生専門官  ちょっといま記憶はないですが、小さいほど低いという傾向が、残念ながら出ていま す。ただ徐々に、年とともに上がってきているかと思います。8割とか、そのくらいに は上がってきていると思います。ちょっといま、数字まではわかりませんが。 ○保原座長  おそらく小規模事業場というのは、いちばん大きな問題ですね。これをどうやってい くかです。  時間がないので最後に(2)事業者によるルールの策定の所、これは国が事業者のル ールの策定に当たって、指針を示すということ、事業者はどういうことを考えてそのル ールを決めたらいいかが書いてあります。全体としてご意見があれば承りたいと思いま す。先ほどいくつか宿題が出ましたが、それは次回とさせていただきます。 ○中嶋委員  「産業医等や衛生管理者等も参画して衛生委員会等で審議する必要がある」これは法 定のことを言ってますね。これは当然のことで、それ以外のことで何かこれを促進する ような表現を、一箇所ぐらいしてもらいたいと思うのです。 ○保原座長  何かいい考え方がありますか。大体よろしいですか。  それでは、本日の検討会はこれで終わりたいと思います。今後の予定等につきまし て、事務局からお願いします。 ○主任中央じん肺診査医  各委員のご都合を調整いたしますと、次回の第5回は、8月23日月曜日の午後3時か ら、場所は17階共用第21会議室にて開催したいと考えております。また、厚生労働省の ホームページ上においてもご案内させていただきます。  なお、次回はこれまでの検討会の議論を踏まえ、座長及び委員の先生方とご相談しな がら、事務局にて最終報告原案を作成し、第5回の検討会にて討議をお願いできればと 考えています。 ○保原座長  うまくいくと次回で終わりか、それとももう1回やるのか、あるいはやってみないと わからないのですか。 ○主任中央じん肺診査医  次回で終わらせたいと考えておりますが、ことと次第によっては次々回ということも あり得るかと思いますが、いまのところは次回で終了させるつもりでおります。 ○保原座長  できたら3時間ぐらいあったほうがいいかもしれないですね。 ○計画課長  できるだけ事前に皆さん方に案をお見せして、意見が通るような形でまとまるように したいと思いますので、よろしくお願いします。 ○労働衛生課長  それと、事前調整をきちんとさせていただきます。 ○保原座長  各委員から何かございませんでしょうか。  それでは、これで議事を終了します。ありがとうございました。