04/07/27 第4回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録            第4回労働政策審議会 勤労者生活分科会                  基本問題懇談会                       日時 平成16年7月27日(火)                          14:00〜                       場所 経済産業省別館1107会議室 ○企画課長  まだお見えでない方もおられますけれども、定刻となりましたので、第4回労働政策 審議会 勤労者生活分科会 基本問題懇談会を始めさせていただきたいと思います。  はじめに、委員の皆様への連絡事項です。日高座長は体調の関係で、本日ご欠席とな りましたので、齋藤分科会長に本日の座長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょ うか。                 (異議なしの声) ○企画課長  それでは齋藤分科会長、よろしくお願いいたします。 ○齋藤分科会長  今日は、日高委員のほかに山口委員がご欠席です。また、分科会から篠原委員と南雲 委員が参加されています。  議事に入ります。前回の基本問題懇談会で概ねのスケジュールをご了解いただいたと 思いますが、これに沿って、今日は財形貯蓄について第1回目の議論をお願いいたしま す。資料が用意されておりますので、まず説明をお願いいたします。 ○企画課長  財形貯蓄について、今回と次回の半分を使って議論していただくことにしております が、私どもで財形貯蓄全般について論点を整理しましたので、資料1を使いながらご説 明いたします。  財形貯蓄について検討するに当たっての大きな視点として、財形制度設立の経緯、勤 労者の財産形成が不十分であること、あるいは、さまざまな周辺環境の変化がありま す。  税制、金融、住宅といった関連する施策も変化していますが、その前段として、より 広く今後のあるべき勤労者像、勤労者のイメージのようなものをご議論いただいて、そ の上で財形制度をどうしていくかを論じていくことも必要なのではないかということで す。勤労者像といっても、就業形態が多様化しているので、1つのものとしてイメージ を持つことは難しい面もあるのかもしれませんが、他方で、我が国の場合、勤勉に働く ことが重視されていた社会であったわけです。今後もそうしたことはある意味で重要な のではないかと思うわけですが、そうした中で、今後の勤労者像としてどういうものが イメージできるのか。あるいは、そうした勤労者のイメージの実現に財形制度はどのよ うに資することができるのか、そういった観点からもまず検討することが必要なのでは ないかということです。  その上で、2の財形貯蓄を巡る状況変化ということですが、貯蓄に関する意識という ことで、資料2の4頁以降をご覧いただきたいと思います。貯蓄についての目的を経年 的に調べたものですが、これも時代の移り変わりに伴って変化している面がございま す。貯蓄の目的としては、病気などへの備えがやはり多いわけですが、時を追うごと に、老後の生活資金のために貯蓄をする方が割合として多くなっています。貯蓄につい て、そういう変化が見られるわけです。  論点の2つ目に企業の福利厚生制度が掲げてありますが、それに関するものが資料2 の7頁、「福利厚生制度の今後の意向」です。企業で充実していく福利厚生制度とし て、健康・医療関連、自己啓発関連等を充実していくと答えている企業の割合が多くな っています。他方で住宅などについて見ると、縮小の方向で考えている企業もかなり多 く、企業の福利厚生制度にもそういった変化が見られます。  次の論点になっている貯蓄動向ですが、資料2の11頁に家計貯蓄率の変化が載ってい ます。年を追うごとに家計貯蓄率は下がっており、平成4年には14%以上家計貯蓄率が ありましたが、平成14年度には6.4%とかなり下がっており、もう日本は貯蓄率が高い 国とは言えなくなっているのではないかという指摘もなされております。  もう1つは関連する施策です。資料2の15頁の住宅施策の状況ですが、従来は住宅の 戸数を量的に確保していくことが政策の目標でした。しかしながら、現状では住宅総数 が5,000万戸を超える状況になっており、それを踏まえて住宅施策も「量」から「質」 へという見直しが進められております。「少子高齢化等に対応した市場で流通し得る良 質な住宅ストックの整備」等、質を重視した住宅施策に政策面も変わってきています。  もう1つ関連する政策領域で重要なものが金融関係の施策です。税制関係の付属資料 をご覧いただくとわかるように、こういった税制・金融関係の施策も「貯蓄」から「投 資」へという意味での変更がなされている状況にあるわけです。  次は論点2の(2)に関する状況で、財形貯蓄の契約状況です。資料2の16頁以降 に、財形貯蓄についての状況の変化を掲げております。財形貯蓄の保有率で見ると、平 成2年以降、保有率は経年的に低下しています。25.4%をピークとして下がっている状 況にあります。  17頁に、財形の加入状況を世帯主の年収などで見たものがありますが、世帯主の年収 別に見ると、年収の低い層ほど財形の保有率は低くなっているという状況で、平成12年 においては、世帯主の所得が第I階級の場合は5.6%の保有率になっています。  19頁は世帯主の勤め先企業規模別で見た財形保有率ですが、規模が小さい企業ほど、 財形を保有している世帯が少ないという状況にあります。  21〜22頁は規模別で見た企業の財形加入率ですが、一般財形の場合は、1,000人以上 の企業の場合、約90%の企業において一般財形を実施していますが、29人以下の場合は 38.9%になっています。1,000人規模の所と小規模の所と格差はありますが、小規模の 所でも4割の企業は入っているという状況です。  個人の状況で見たものが23〜24頁です。23頁の中ほどに、企業規模別に見た利用した ことのある資産形成支援制度ということで、一般財形について見ると、1,000人以上の 規模の企業の場合、その46%の方が利用したことがある。29人以下では30.6%で、企業 の加入度よりはずっと圧縮されておりますが、規模により利用度に若干差があるという 状況になっています。  26頁は今後利用したい制度です。これは数字的に比較的拡散しておりますが、利用で きるようにしてほしい制度としては、左から2つ目の年金財形を挙げる方が多くなって います。特に規模の小さい事業場に勤務している方では、そういった方が多くなってい るという状況にあります。  もう1つご覧いただきたいのが42頁です。これは前回ないし前々回に資料提出希望が あった事項ですが、財形貯蓄について見た年度別の加入件数と解約件数の資料です。全 金融機関のものが取れる状況ではなく、労働金庫についてのみ調べたものですが、これ を見ると、特に解約件数が、平成13年度以降大幅に多くなっております。この時期に金 利が下がったということなどの影響で、こういうことになったと思われますが、いずれ にしても平成13年度以降、解約件数がそれまでに比べて多くなったという状況です。財 形貯蓄についても、こういった変化があるわけです。  このような状況を踏まえて、もう一度論点ペーパーに戻っていただきたいと思います が、本日ご議論いただきたいことの1点目は、こうした財形貯蓄制度の本質的な意義や 将来に向けての意義をどういうところに見い出したらいいのかということです。  3の財形貯蓄制度は、勤労者の計画的な財産形成を促進することを目的としているわ けですが、いま述べたような状況を踏まえて、将来に向けてどういう意義があるのかを まずご議論いただく必要があるのではないかということです。  (1)働く勤労者の視点から見ると、先ほどの調査にもあったように、貯蓄の目的と して老後の資産形成を図りたいという意向が強まっているということもあり、そうした ことを踏まえれば、老後に向けての財産形成として財形というものの意義が捉えられる のではないかということが1つです。  他方、勤労者の資金需要は、老後ということだけではなく、結婚、育児・介護、住宅 購入等さまざまな事情で資金需要が起きるわけで、そうしたことに備えることが必要な のではないかということです。  特に勤労者の場合、一時期にたくさんの収入があるということがあまり期待できない 状況にあり、その時々の給与などから定期的に貯蓄をしていくということは、貯蓄を形 成するためには重要であり、天引き制度によって貯蓄を形成する財形制度は、そうした 勤労者の収入構造に整合的な制度になっているのではないかということが1つです。ま た、こうした勤労者の財形制度をやめた場合には、低コストで貯金をするということも なかなか難しくなりますので、勤労者の貯蓄率が一層下がるということが問題として生 じるのではないかということです。  (2)ですが、企業の視点から見た場合でも、従業員が自助の精神で将来に向けた貯 蓄をすることを促進することにより、従業員の生活の安定が図れるわけです。そういっ たことが図れれば、従業員の安定的なモラルの発揮ができて、生産性の向上のようなも のにつながるのではないかということが、企業としてのメリットとして考えられるので はないかということです。  3点目として、社会的に見た場合、勤労者の自助による資産形成が図られることは、 少子高齢化の中で、働く人の安心感につながっていくのではないか。あるいはマクロ的 に見た場合に、先ほど説明したように貯蓄率が下がっている状況で、消費と貯蓄のバラ ンスを一定確保するための役割を果たすことができるのではないかということです。  (4)で、その他考えておくべき事項として、若年者について貯蓄のない者が非常に 増加しております。13頁の資料は、年齢別に見た貯蓄非保有世帯の割合です。全体的に 貯蓄非保有世帯の割合は高まっておりますが、特に若年者で貯蓄のない方が多いという ことがわかるのが13頁です。西暦2000年には、20歳代の方では37.4%が貯蓄がないとい う状況になっております。  12頁にも同様の資料がありますが、これは年齢別に見た純金融資産の推移です。これ を見ても、30歳代の純金融資産は、1999年には28万円まで下がっているという状況で す。このように、若年者に貯蓄をしない者の割合が増加しているという状況もあるの で、財形貯蓄は若年者の貯蓄習慣の形成にも資する面があるのではないかということで す。  そういったメリットの一方で、財形のコスト面も考えておく必要があるのではないか ということで、1つは、企業のコストとして事務経費がかかるわけですし、金融機関の 側にも同様に事務経費がかかります。あるいは、非課税措置や助成金制度をどう考える か、そういったコスト面のことも論点として考えておく必要があるのではないかという ことです。  次に4について。財形の大きな特徴として天引き制度でやっているわけですが、天引 き制度の意義についてどう考えるかです。資料2の32頁で財形貯蓄を利用する理由を聞 くと、9割ぐらいの方が、給与天引きが簡単にできるから財形を利用するのだという答 えをしています。したがって、天引き制度は勤労者にとって非常にメリットが多い。そ の都度貯蓄に関する手続をしなくてもいいし、いろいろな意味でのコストを負担しなく ても貯蓄できるメリットがあるということですが、こうしたことについてどう考えるか です。  5の適用拡大の問題ですが、中小企業や比較的賃金水準の高くない方、あるいは若年 者等の財形加入率は低くなっていて、そうした状況の原因をどう考えるか。その上で加 入促進を図るため、そのコストをどこまで負担するか、どの程度負担できるか等の問題 があるかと思います。そういったコスト面を踏まえて、有効な促進策としてどのような ものがあるかも論点の1つであると考えます。  6が非課税措置です。特に低金利で現行の非課税措置のメリットが減少しているわけ で、そうした中でどう考えるかです。  個別的には財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄があります。財形年金貯蓄については、公的 年金をめぐる環境変化から、勤労者の側にも老後の資産形成をしたいという希望が高ま っており、そうしたことを踏まえて、勤労者の自助による老後の資産形成を促す制度と して、こういった面からの存立意義が高まっていると考えられます。  他方で若年者にとっては将来に向かって貯蓄をすることになるので、メリットを感じ にくいという面もあろうかと思われ、こうしたことを踏まえて、年金貯蓄についてどう 考えるかです。もう1つの論点は、確定拠出年金との関係をどう考えるかです。3つ目 は財形住宅貯蓄です。住宅政策が変わっており、企業の福利厚生面でも、持ち家対策、 住宅政策が後退している面があります。こうした変化がある中で、財形住宅貯蓄をどう 考えるかです。他方若年者の場合、まだまだ持ち家比率が低い状況にありますし、持ち 家志向を調べますと、依然高い状況もあります。そうしたことを踏まえて、住宅財形を どう考えるかも1つの論点ではないかということです。  これに関連して、財形全般の課税問題、あるいは財形年金等の加入年齢の問題やその 据置き期間の問題が論点になると思われます。  次が確定拠出年金との関係です。確定拠出年金は一部個人拠出もできるようになって いますが、こうしたものとの関係、制度の簡素化等との関係でどう考えるかが1つの論 点かと思われます。  8点目はポータビリティの問題です。転職が珍しくなくなってきている状況の中で、 昨年度転職継承については一部制度改正を行いましたが、転職先に財形制度がない場合 もあります。こうした場合を含めて、ポータビリティの問題をどう確保していくかも1 つの論点かということです。  9番目は預け替え等の問題です。金融商品等が多様化している中で、預け替えをより 弾力化すべきではないかということについてどう考えるか。預け替えの制限についてど う考えるか。対象商品についてどう考えるか、そういったことも論点ではないかと思わ れます。  最後に事務代行制度です。現行の事務代行制度が十分に機能しているか、それも1つ の論点になっています。その中で、確定拠出年金の場合は「レコード・キーパー」とい う制度が設けられており、非課税管理を一括してレコード・キーパーが行う制度も設け られておりますが、個人個人の非課税管理等の記録管理を一元化することについてどう 考えるか、この点も論点になるのではないかということです。財形貯蓄については、こ のような論点があると考えています。 ○齋藤分科会長  いまの説明について、意見や質問があれば自由にどうぞ。 ○宮野委員  2点ありますが、まず1点目が1頁の1です。今後あるべき勤労者像とは何かをまず は視点として捉えて、その実現に資する観点からどうするかという話があるのですが、 私の印象では、どちらかというと、今日的な財形制度をめぐる環境がどう変化している のか。例えば就労構造一つをとっても、非典型の部分が増加したり、雇用の流動化のよ うなことが起こっているという中で、たぶんこの財形制度を設立した当初からは、そう いうものがかなり変わってきている。その中で、いま制度をどう再構築していくのかと いう話ではないかという認識があるのです。  そういう中で、どちらかというと、あるべき勤労者像ということで、ものすごく高い 理想像を現実を超えたところでつくって、そこに近づくために財形制度を利用していこ うという発想になっているので、それは私の認識とは少し違うというのが1点です。  それと、雇用の流動化の話をした中で、ポータビリティの話が4頁の8に出てきたと 思います。これはこのとおりだと思いますし、資料2の33頁の「財形貯蓄制度を利用し たことがない理由」の中に、勤め先にその制度がないからというのが理由の第1位とし て挙がっていることを踏まえると、ポータビリティに関する何らかの対応が必要なので はないかと思います。 ○奥村委員  財形制度を検討するに当たっての視点は、勤労者ということで当然なのですが、再々 言っているように、いまの財形制度の問題点は、若年層の加入率が低くなっていること です。昔であれば、我々も新入社員に、とにかく自分のベースとなる資産を持ちなさい とか、いくらを目標に貯めなさいというようなことがあって、確かにそういう癖がつい たのかもしれないのですが、いま財形を若い人たち、新しく入った人たちに勧めること ができるかというと、リスクヘッジのような機能がないこと、もともと企業が選んだ金 融機関なり金融商品であるということがあって制約的である。例えば、金融機関が倒れ てしまった場合に、いろいろな問題が実際に起こったということもあって、おそらく、 企業も新入社員等に対して、財形貯蓄で貯蓄しなさいと、半ば強制的な指導のようなこ とはできなくなっていると思うのです。貯蓄をすること、資産形成をすることは非常に 大事なことですし、企業としても、社員にきちんと指導をして、将来のことも考えて生 活設計をしなさいというようなことを言うわけですが、いまの財形制度は金融界の変化 に対して付いていけていない。要するに、どの銀行・金融機関も金融商品も変わること がないという時代ではなくて、それこそ消費者が自己責任で自分の生活設計に応じたよ うな資産形成をしていく。そういうことで金融機関も選ぶし、金融商品も選ぶというこ とが基本だと思いますし、それに財形が対応できていないということが、いちばんの問 題だと思うのです。  まずもって大事なことは、金融界の変化に対応した制度に変えていかないと、誰も入 らなくなる。特に、自己責任ということを言えば言うほど、選んだ金融機関がつぶれる とか、商品がリスクが高く運用損が出るとかいうようなことが考えられるとすれば、こ れを長期にやろうということにはならないだろうと思うのです。そういったことをここ の視点の中に是非入れていただきたいのです。金融市場の変化というものも十分に考え ておかないと、資産形成、財産形成をやるという議論の中で、本当のところは見えてこ ないだろうと思います。  若年層の加入率が減っているということに対して、若年層に対して、長い職業生活の 中で、しっかりした計画を立てなさいと言うわけです。  持株会の資料がありますが、持株会も状況の変化で変わらざるを得ない典型でしょ う。昔は自社株を持っていれば、これだけずっと成長していて、安定的で、ある意味で はこんなにリターンがあるというようなことで我々も勧めることができた時代があった のです。しかし、持株会の勧め方も典型的に破綻してしまって、リスクをちゃんと引き 受けてくれ、なおかつ、会社の再建に協力してくれ、という姿勢に変わってきていると 言えるのではないかと思います。  いくつかあるので、皆さんの意見に関連して言おうと思うのですが、企業が持ち家制 度、住宅を支援するような制度が無くなっているのではないかということに関して言う と、特に外資などはその典型なのですが、長期の大きなローンを社員に抱えさせること は、ある意味では縛り付ける、囲い込みの施策だということがあって、そういうことは やるべきではないのではないか。特にいま流動化ということがあって、環境もいろいろ 整ってきて、転職を自分の実力に応じて考えるという人も増えてきています。そうなる と、30年なり40年のローンを、その会社にいることを前提に組むということは非常にリ スクが大きいのでやらない。先ほどの資料の中の説明で、企業は住宅を社員に持たせる ような施策をやらなくなってきているというのは、たぶん住宅財形のことと関連してい るかと思うのですが、正しい読み方は、企業はむしろ自分の自助努力で資産形成をしな さいと。当然、資産の中には住宅などがあるのですが、そういったことをしなさい。企 業があえて縛ることはしませんと、こういうことが流れの中にあるのではなかろうかと 思うのです。  企業のサイドでまず言っておくことは、天引き制度に関してです。天引きについての コストは確かにかかります。ただ、天引きの仕組みでいろいろなものを運用していると いうのは財形だけではないのです。源泉徴収の話から、社会保険料の話から、任意団体 から、労働組合も、場合によってはそうだと思いますが、いろいろなものを天引きして いるのです。ですから、いまの企業の給与システムの中に天引きというのは自然に入っ ている。  ただデータを作成するというような項目が物理的に増えるだけということで、給与天 引きしたものを金融機関に送金するという仕組み自体は当たり前の制度であって、企業 がこれで負担を感じるということは、たぶん、ないのだろうと思うのです。負担はあり ますが、それは財形だから負担があるとかそういうことではないという意味です。この こと自体は大した問題、本質的な問題では全然ないのだろうと思います。  こつこつ貯める貯蓄の癖という話が出てきましたが、我々企業サイドからすると、社 員が財産を形成する、住宅を取得する、老後の資産形成をする。財形ではなくて、いろ いろな金融商品の紹介というのは、生保だとか傷害保険だとか、いろいろなものをやっ ているわけで、企業からすると、財形制度だと天引きで定期的に貯められるから貯蓄の 癖がついたとは思っていない。企業はそういうことに心を配ってきたし、今後とも、み んなが一生懸命働くための環境をつくるためには大事なことだということで、企業も社 員も、それから労働組合も、きちんとした生活設計をつくっていこうと、そういうこと が大事なのだと努力してきた結果だと思うのです。  確かに財形がそういうことに資することはあったのかもしれないのですが、財形だけ がそういうものでもないと考えています。仮に財形が無くなれば、我々は社員のため に、そして企業にとってもプラスになるような制度を新たに考えるだけだと思っている ので、天引きについてそんなに論議しても仕方がないのではないか。企業の立場に立つ と、そう思います。 ○勝委員  議論を整理するために、何でいま財形貯蓄の改革が必要なのかという基本的な視点を まとめるべきだと思っています。頂いた資料で、あるべき労働者像とは何かという所に 非常に違和感を感じております。働くとは何かということは個人によってかなり違うで あろうし、それについてモラルであるとか啓蒙するとかというのではないと思うので す。  1つ目の視点としては、働き方が変わってきたという現実の流れを基本にすべきだと 思います。90年代以降、日本の経済構造はかなり変わってきた。特に企業のあり方、企 業統治が変わってきたというところと非常に関連するわけですが、非正規社員が多くな ってきたこと、流動性が高まったということ、そういう現実の下で、いまの財形貯蓄が それに合わなくなってきたという視点は1つ必要なのだろうと思います。  もう1つは、公的年金の問題も考えなくてはならない。つまり、財形というのはかな り端っこに追いやられてしまっていますが、考え方としては、公的年金や企業年金がい ま非常に問題を抱えており、それを補完するというよりもむしろ、一部代替するぐらい の大きな役割を財形に与えることが必要だという認識をすべきなのではないか。それが いままでの財形の制度設計を変えていくことにもつながると思うのです。それが2番目 として必要なのだろうと思います。  3番目としては、貯蓄から投資へということが流れとして、日本経済にとって必要に なってきた。前回の懇談会で一般論だという話もありましたが、むしろ、それがあるか らこそ金融界の変化が出てきたわけです。つまり、金融界の変化がベースにあるのでは なくて、そういった大きな流れ。その点から見ると、2頁の(3)「社会的視点から」 の3行目で、貯蓄率が低下する中で、消費と貯蓄の一定のバランスを確保することにも 資するというのがあるのです。明治時代以降、あるいは戦後もそうだったわけですが、 日本は貯蓄増強というよりも、投資を増強していくという意味でのリスクマネーを増大 させることが必要でした。前回の懇談会でも、そういったリスクを負うのは問題ではな いかということもありましたが、金融商品を多様化することは必要なのだと。しかし適 当な金融商品はなかなかないので、残高がこのように減ってきているということも考え ると、そういった3つの視点を考えるべきではないか。  それとの絡みから言うと、金融機関の財形に対しての考え方というものも、できれば この懇談会で、ヒアリングのような形で聞いてみたいという気がしております。今日頂 いたほかの各論の所では、金融機関のコストや預け替えの弾力化ということが謳われて いますが、例えば預け替えに関してもかなりコストはかかると言われているわけで、そ ういったことについて、専門家の立場のヒアリングも是非聞いてみたいと思います。私 が言いたかったことは、ベースとしての考え方をまずしっかり押さえておくべきではな いかということです。 ○松井委員  いま預け替えの点の指摘がありました。金融機関のヒアリングをするということにつ いて、私は反対するわけではないのですが、重要なことは、現行の仕組みをすべて前提 にヒアリングをするのか、そうでない方向でやるのかによって回答が相当違うのではな いかと私は思っております。具体的に言うと、金融機関が預け替えを嫌がる最大の理由 は、一般財形ができるということと、その他の財形ができないということで見ればわか ると思うのですが、非課税のレコード・キーピングの問題だという指摘がなされてお り、それをいまの状況だけで見るのか。非課税のレコード・キーピングについても、確 定拠出というまた別の枠組みが出来ているので、そういうことでやればまだできるとい う考え方をするのか。そういう、もうひとつ違った視点も必要なのではないかと思いま す。  奥村委員から、天引きのことはそんなに大したことでないという指摘がありました が、天引きは、確かにもう1つ追加すればいい。すでにやっている企業からすれば、そ れは事実だと思いますし、そのときに新たに労使協定で、こういう賃金控除をするのだ とか、いろいろ手続があるのだと思います。もう1つ考えなくてはいけないことは、か つて従業員、勤労者が貯蓄を手軽にできなかったという事実はあるかもしれませんが、 いまは、仮に事業者がそういう制度を設けてくれていない企業の従業員の場合は、例え ば自分の銀行の給与振込みの口座から自動引き落としで積立てなどもできる時代にもな っていると思うのです。  天引きを重要視する人がお役所の中にもいるやに私も聞いているのですが、天引きそ のものがかつて持っていた意味合いといまの意味合いとは少し変わってきている。変わ った段階で、違う仕組みでやることがいいのか悪いのかという、また別の議論も起きる のではないかと思っております。  天引きとの関連で言うと、事務代行制度のことが10に書いてありますが、事務代行制 度が基本的に普及しないのは、私の知る限りにおいては、事業主が1回天引きをして、 1回お金を事務代行団体に送って、事務代行団体からもう1回どこかの金融機関に行く というわけです。いまの金融機関は、いろいろな形での事業再編成の中で、コストのか かるものにはちゃんと手数料を取るということが原則になっていますので、振込み手数 料も昔よりかなり高くなっています。いまの金利の状況を考えると、そこでお金が2回 トランスファーされるだけで目減りしてしまう。そういう点もあると、天引きにこだわ らないで何かやる仕組みも、いまの金利情勢を前提とすると、考えなくてはいけない視 点ではないかと思います。 ○藤田委員  基本問題を考えるということなので、ちょっと大きな問題になるかもしれませんが、 その辺のところを少し申し上げたいと思います。  1つは、貯蓄率が低下しているという話が先ほどありましたが、なぜ貯蓄率が低下し ているか。いろいろ要因はあるかと思いますが、1つは、利子率そのものが政策的に決 められて、ゼロ金利とよく言いますが、金利水準が低ければ、当然貯蓄率は落ちてくる という因果関係もあると思うのです。落ちたからまた貯蓄の意義があると考えられるわ けですが、しかし、利子率が低いところでは貯蓄はなかなか起こってこないので、その 辺をどう考えるかです。  貯蓄から投資へというお話ですが、要するに投資先がないということが大きな理由な のではないかと思います。バブルが起こったのも結局、投資先がなくて、過剰流動性に よって株や土地に流れ、それでバブルを形成したわけですから、要するに有効な投資先 がないところで貯蓄率を上げても、果たしてどうなのか。結局利子率、金利水準が低い ということは、言ってみれば過剰資本ということを客観的には意味していると考えたほ うがいいのではないかと思います。  現状認識としてもう1つ。雇用の流動化が起こっているというお話でしたが、これ も、これからの労働力は流動化というのがずっと起こっていくのか、あるいは、この不 況の中で、一時的に短期雇用に踏み切らざるを得ないという状況でそうなっているの か、その辺は見極めないといけないだろうと思います。  私自身は、日本経済においては、長期雇用といいますか日本的経営がやはり有効であ る。雇用政策の基本は雇用の安定化でなくてはいけないと考えております。この辺は特 に経営者サイドにお聞きしたいのですが、企業としては、これから流動化にどう対応し ていくのか。雇用の安定化ということで市場全体を安定化させる方向で臨んでいくの か、これから雇用問題がどうなるかを考えた場合、その辺が非常に重要なポイントにな るのではないかと思います。  それについて政策論を少し申し上げたいと思います。財形制度はいままで企業別に行 われてきたわけです。つまり、人事・労務管理の1つの手段としてあったと思います。 それが、どうも自己責任ということで、企業サイドから見ると、突っぱねるような傾向 が最近出てきているということを懸念しているわけですが、これからの財形制度が超経 営的な制度になっていくのか。つまり、企業を超えた横断的な制度として考えていくの か。その場合には、国がもっと前面に出てこなくてはいけないわけです。企業で労働力 を管理していく、保全していくというような政策にとどまるのか、あるいは全体がもっ と流動化して、国が前面に出ていかなくてはいけない状況になるのか。その辺をどう考 えるかだと思うのです。  勤労者像をどう考えるかという問題も提起されました。私個人の意見ですが、これか らはパートナーシップということを大事にしていかなくてはいけない。かつてのよう な、労使対決型の労使関係ではなくて、例えばヨーロッパでは、ドイツで経営参加が行 われておりますし、イギリスではFinancial Participation(財政参加)がなされて、 実際にパートナーとして労働者を考えて、利益分配の制度を前面に、福利制度の中に出 してきているのです。だから、これからの財形制度もそういう方向で展開していくべき ではないかと考えております。  さらには財形制度の将来です。かつては、40代で住宅財形をやって、定年までに財形 年金をやるのだという二段階論があったと思うのですが、いまの財形に必要なのは、目 標をしっかり定めることではないかと思います。今日は老後に向けての財産形成という ことが出ていましたから、年金なら年金、住宅を入れて二本立てにするならばそれ。財 形融資の問題もありますが、これは副次的な問題でありまして、いちばん大事なのは財 形の目的をしっかり定めることではないか。そういう意味で、大変難しいとは思います が、その辺をしっかり議論していただきたいと思います。 ○奥村委員  貯蓄率の問題なのですが、年代別に貯蓄額が違うということがありますから、貯蓄率 を上げるというマクロの議論と、勤労者が公平に制度を利用するということの議論は別 だと思っています。  いま若い人がなぜ貯蓄をしないかということで先ほどのことに付け加えて言います と、たぶん成果主義的な処遇制度になって、昔のように、給与が年功とともに上がって いくということがない。したがって、自分の将来の収入のカーブを予想して、どのぐら いの貯蓄率で、いつまでに目標としていくらやろうというのが、ある意味で非常にぼや けてきているということは多分ある。  企業は当然雇用を最大限に守ろうとするわけですが、事業の展開というのを、海外に シフトしたり、分社化したり、合弁したりということがあって、極端なことを言えば、 この春に入社する人は、4月1日になったら別の会社と一緒になっているという事態も 実際起こっているのです。そういう意味では、安定的に財産形成しようと思っても、事 業の展開がいろいろな形で変わってくる。分社化するとか合弁になるということがある ので、安定的に貯蓄を続けようということ、藤田委員の言葉によれば、企業の中でずっ と安定して働くという前提がありましたが、そういう前提も崩れているので、企業の中 だけの独自の制度である財形制度なり貯蓄については二の足を踏まざるを得ない、とい うのが実態であるわけです。  20代は貯蓄が非常に少なくて、住宅を取得するとかがあって、40代からまた少し下が る、また老後のための資産を形成する、こういうパターンだと思うのですが、特に若年 層が財形などを利用しない、新規加入も減ってきているというのは、そういう事情があ ると思うのです。利子が低いのに貯蓄して、どうやって運用するのかということとは別 個に、どんな状況でも一定程度の貯蓄率というのはあり得るのではないかと思うのです が、いまの財形の問題、若い人が入っていないというのは、とてもそんなレベルでもな いのではないかと思います。 ○新村委員  私も同じようなことだろうと思いますし、前回言ったことの繰り返しになるかもしれ ませんが、企業と被雇用者の関係がものすごく変わってきているということを前提にし ないといけない。そうだとすると、いまのように、すべて企業経由でやっている財形制 度というのは、いろいろな意味で問題が生じてくる。  論点の後段の部分はみんな尤もだと思うのです。人生のそれぞれのライフ・イベント のときに必ずしも十分借金できない、そういうことがあると困るので、ある程度の資産 形成が必要だということはわかるのですが、いまのように、それを企業経由でやること に無理があるのではないかと思います。  藤田委員の話からも感じられることなのですが、昔のような企業と被雇用者の関係に 戻るということは、ほとんど考えられないことである。そうだとすると、変わっていく ほうを前提として考えなくてはいけないと思いました。企業の福利厚生ではなくて、国 の政策として何かそういうものをと考えたときに、いま国の財政ということから考える と、いまの制度のような、勤労者なら誰でも使えるような制度に対して政策支援を行う ことは極めて難しい状況だと思うのです。  そもそも勤労者財産形成のターゲットをどこに置くかという議論が要るのではないだ ろうかと思います。一体どの辺のどういう方たちに財産形成を進めるような支援策が必 要なのか、そこを明確にしないと、後の議論がなかなかうまく進まないと思いました。  この間もターゲッティングというようなことで申し上げたと思うのですが、いまのよ うに非常にジェネラルでユニバーサルな制度だと、データにもあるように、大企業で、 かなり給与水準の高い人が最も利用率が高い。それで果たしてこの制度はいいのだろう かというようなところを考えた次第です。 ○南雲委員  検討に当たっての視点ということなのですが、さっきいろいろ説明をいただきまし た。3番目の財形貯蓄制度の今日的意義とか必要性については、言われるとおりです。 それから、先般厚生労働省の委託調査研究として行われた、企業の福利厚生のあり方 云々の報告などを見て、まさにそのとおりだと思っているのです。  特に1と2、検討に当たっての視点と財形貯蓄をめぐる状況変化で思うところを述べ させていただきます。今日の財形制度にはいろいろ問題があるわけですが、これだけ問 題が起こっている大きな背景として、1つは雇用形態あるいは就労形態の問題が今日の 制度を弱める大きな要因になっているのではないかと思います。それと並行して、厚生 労働省の役所としての企業への周知徹底がどれほどなされて今日まで来ているのだろう か、それが2つ目です。3つ目、これも微妙に関連するのだと思うのですが、労働組合 の組織率の低下云々も、財形制度が伸びない大きな要因の1つになるのではないかと思 うのです。この3つが、検討するに当たっての視点として思うところなのです。  特に1つ目の、今日の就労あるいは雇用形態では、厚生労働省でしたか、2003年の非 典型労働者の数がもう30%半ばに来ているということでした。今年辺りはおそらく4割 ぐらいになっているのではないかと思われます。やはり、いろいろな雇用形態がある。 経営としては、ただ単に安い労働力とか、コスト云々だけでこういう実態を引き起こし ているということになると、微妙な面で財形制度などにも影響を及ぼしてきているので はないかと思うのです。  働き方は多様化していてもいいと思うのですが、しかし、そこに差別、あまりの格差 があるというのは問題ではないか。働き方はいろいろあっても、均等待遇なりが出来た 中で、それに合わせてこういう制度をどう組み立てていくか。財形制度を考えるとき に、こういうところを今後の課題を考える視点として持っておかなければいけないだろ うと思います。  2つ目の周知徹底はそんなに問題はないのですが、3つ目の労働組合の組織率は、財 形に加入している所が、1,000人以上の規模の所で圧倒的に多いわけです。この辺も、 いま労働組合の組織率、人数からいったら20%もあったというのも大変なことなのです が、企業の数からしたら200万社の法人の登録企業がある中で、労働組合があるのは3 万あるかどうかですから、企業の数からいくとその組織率というのは1%、99%は労働 組合がない。こういうところの中で、果たして労使という関係が本当にあるのだろう か。従業員の代表を選んで、その代表と企業との話はどれほどされているのだろうか。 こういうことを考えると、財形制度がいまいち上がらないのはそういうところにもある のではないか。したがって労働組合を作ればいいということよりも、なくても労使の関 係でこういう制度がどれだけ話なり周知徹底がされているのだろうか。この辺を視点と して持っておきながら、論議をしていく必要があるのではないかと考えています。以上 です。 ○奥村委員  関係して申し上げますと、これはいままでの会合でも何回も申し上げてきたのです が、どういう形で働くかについていうと、別に財形制度でこういう働き方をするとかい うことは決まらないと思います。主たる労働条件、どういった収入が得られるかという ことが基本であって、こういった福利厚生に関わるものというのは付随的なものだと思 います。もう1つは周知徹底の問題ですが、実は働いている人たちは若い人たちも決し て馬鹿ではなくて、財形制度を利用できる立場の人は、私自身の主張は誰でも選べるよ うな運営制度にしようということが基本ですが、若い人だって財形に入る権利を持って いる人は、入ろうと思えば入れると思います。毎月1,000円でも貯蓄することは非常に 簡単なことだと思います。  ただし、将来的に見て財産形成に資するような制度かどうかということは自ずとわか る。先ほどから言っているように投資型に変えようと、その場合はまたリスクも大きく なってきて、リスクヘッジをどう考えるかという問題はありますが、いまの財形制度が 金融界の変化に応じた弾力的な現代的な制度になっていないために入るのを拒んでいる のだろう。こういうことを再三繰り返して申し上げています。ですから、周知は本当は どこまでが周知かがわかりませんが、ちゃんと制度を選べる立場にある人は自分なりに 自分の収入をどう使おうか、将来にどう投資しようか、自分に投資しようかということ は考えていると思います。問題なのは、大事なポイントは先ほどからの繰り返しになる のでまた皆さんの意見をお聞きしますが、財形制度が自分の将来の財産形成なり老後の 資産形成なり、そういったものに意味がある制度かどうかというところで若い人は判定 していると思います。その辺のところがきちんと、みんなが利用しやすい、安心して利 用できる制度になれば加入率は自ずと上がるだろうと思います。 ○齋藤分科会長  私の感想を言わせていただきます。1つはこれからの勤労者像に関連して、これから の労働力の流動化は止まらないと思います。止まらないどころか、もっと大きくなると 思います。流動化というのは、雇用を不安定にすることになるかどうかとは別問題で、 流動化する際に失業という期間がどれくらいあるかということと流動化とは、話が別な のだろうと思います。だから流動化する際に失業という期間を経ずして流動化すること もあるでしょうし、その期間が非常に短くなってすぐに移ることもあるだろうし、流動 化自身は止めようがないし、それはこれからも一旦その道に踏み込んだら同じことはな いとみんな思うと思います。  もう1つは、非正規労働力の割合がこれからももっと高くなるのも必然だろうと思い ます。それは別にさっき言われたように、安い労働力を手に入れようという観点だけで はないし、労働力コストというのはそのときの需要と供給で決まってくる話だろうと思 うから、そういう意味でいけばお隣の韓国の例を見れば一目瞭然で50%を越えていると 思いますが、あれも景気絶好調になってもどんどん上がる一方になっています。それも ある程度止めようもない話だろうと思うから、あるべき勤労者像をどう描くかなんて大 層なことを言わなくても、少なくとも4、5年先のことを考えればもう少し進んでいく だろうという感じがどうしてもします。 ○篠原委員  私は臨時の委員ですが、いまおっしゃっていただいたように厚生労働省から添付で付 いている「仕事と生活の調和に関する検討会」の中でも、働き方云々の提起も非常にあ るようです。いちばん初めの論議に戻ってしまうかもしれませんし、この財形制度を検 討するに当たっての視点という中の頭書きのところには書いてありますが、いま分科会 長がおっしゃられたように、今後あるべき勤労者像とは何かというよりも、いまの変化 の中でどういうふうにこの財形の貯蓄というものがあったほうがいいのか、勤労者をベ ースに見るような形の論議のほうが合っているのではないかと思いました。先ほど新村 委員や宮野委員もおっしゃっていたように、そういう視点から論議すべきものではない かと思います。 ○齋藤分科会長  ありがとうございました。この件でほかにありますか。 ○勤労者生活部長  藤田先生の話で気になったのは、今後企業のほうが雇用の安定についてどう考えてい るのか。これは制度に直にではないのですが、背景としてどうも必要だという気がした ものですからお答えがあれば。無理であればいいのですが、言われたように流動化と雇 用の安定を切り離すというのも1つでしょうし、そうすると流動化しながら安定化を図 るときに財形がどうなるか。そこでポータビリティや強行法規定はないけれども積立て をするという制度でいいのかとか、そんなところに常に結び付いてくるとても重要な視 点かなと思いまして、知りたいと思います。 ○松井委員  おそらく流動化は避けられないことは、企業側からすれば当然だと思っています。た だその場合、そこで流動化しても次にトランスファーがすぐにできる仕組みというの は、さまざまな形で政策として持っておくべきことだろうと思います。派遣労働もその 1つであろうと思うし、財形も転職先に財形制度がない場合はどうするのかとか、そう いうことももちろんあろうかと思います。ただ先ほど奥村委員から申し上げたことは、 長く勤めている人であったとしても、この硬直的な財形制度をずっと利用していきたい かと問われたら、それは違うという点も忘れていただきたくないと思います。  これは私自身の経験で申し上げると、この委員をやっているからとりあえず財形貯蓄 はやっていますが、いかにこれが駄目かということを知っておくためにはやっておけば いいと思っているくらいで、本当に預け替えができないような今の制度で年金とか住宅 などをやるのは非常に危険だと思います。住宅なら何か危ないときに無理矢理に買えば いいのでしょうけれども、年金はある一定の年齢にいくまで要件外払い出ししかできま せんので、いまの財形制度は金融情勢に追い付いていない点もあって、なおかつ雇用の 流動化という視点もある。その両方を合わせて、考えていただければと思います。 ○新村委員  雇用の安定化を企業のほうにだけお聞きになられましたが、多分若い労働者の意識が 変わっているのだと思います。私たちの世代は会社に入ると、多分定年までいると思っ ていた世代だと思いますが、私の息子たちの世代のアンケート調査なり声を聞くと、ず っとそこにいるという意識があまりないです。実際に3年目までにかなりの大卒生が辞 めている。辞めたから失業しているわけではないのですが、これはバブルの前後からで すので、いまの長期停滞だけが原因ではなくて意識としてそうなっていると、両面から 捉えたほうがいいのではないかと思います。 ○齋藤分科会長  一当り皆さんからご意見を伺いましたので、またご議論があれば元へ戻ってかまいま せん。この前の基本問題懇談会で財形制度に関する政策評価について積み残しになって いましたので、これについて説明してください。 ○企画官  ご説明します。資料3、政策評価についての資料を用意しました。平成15年度の実績 評価を厚生労働省全体のものから抜粋したものです。財形制度については、勤労者の財 産形成の促進を図ることということを施策の目標として挙げています。この施策目標に 関する実績目標ということで、いちばん上にあるように勤労者財産形成の制度の活用促 進を図ることというのを実績目標として挙げています。この実績目標を実現するための 手段として、その下に書いてあるように制度の普及促進のため取扱金融機関、労使団体 等へ協力を要請し、周知・広報を行うこととしています。こういった実績目標が達成で きているかどうかを評価する指標として、真ん中あたりの表にあるように財形貯蓄残高 と財形融資残高の2つの数字により、評価することとしています。財形貯蓄残高につい ては、平成12年をピークにやや減少していますが、これは低金利などによる貯蓄率の減 少や雇用者数の減少などの外性的な要因によるものと考えられます。また財形融資残高 については、平成11年に融資利率の制度改善を行った結果として、平成11年を底に最近 急激に増えてきている結果になっています。  これに基づく「評価結果」についてです。「政策手段の有効性」についてですが、取 扱金融機関、労使団体等への協力を要請し、こういった機関を通じて勤労者に対してき め細かに制度説明や加入勧奨を行うことを政策手段としてやってきていますが、その結 果として財形融資の実績が伸びてきているなど、この政策手段は有効なものであると評 価しています。2頁は、「政策手段の効率性の評価」です。効率性についても、関係機 関の協力を得ながら勤労者に対して個々に加入勧奨を行うという政策手段を通じて、財 形融資の件数が急激に伸びてきているなど、こういった政策手段は効率的なものである という評価をしています。最後に総合的な評価としても、最初に掲げたような施策目標 をほぼ達成したという評価としています。  3頁は、雇用保険の三事業による事業目標の設定を今年の4月に行っています。この 雇用保険の三事業については、昨年4月の雇用保険法の改正の際の国会の付帯決議や昨 年12月の規制改革会議の答申などで、雇用保険三事業について政策評価を適切に行うこ ととされています。これを受けて厚生労働省においては、平成16年4月にこの目標を設 定して、雇用保険三事業について各個別の事業ごとにその性格を踏まえて目標を設定す ると共に、年度終了後にその実績を公表し適正な評価を行った上で、必要な見直しなど の措置を取っていくということとしています。平成16年度の雇用保険三事業の中で、労 働基準局の部分を抜粋したのが3頁の資料です。財形の部分については真ん中あたりに あるように、財産形成の促進などを通じて勤労者生活の充実を図るという目標を立てて います。この目標を実現するための手段として、この表の左側の欄の事業を実施するこ ととしています。左の欄の事業を実施するために、右側に事業ごとの目標を立てていま す。財形の事業については2つ立てています。1つ目は持家転貸融資の新規決定件数 を、平成10年度から平成14年度までの5年間の平均以上とすること。2つ目は事務代行 団体数を平成14年度末の実績以上のものとすることを目標として掲げています。  最近、財形に関して報告書が2つ出ているので、それも併せて説明します。資料4が 「仕事と生活の調和に関する検討会議」の報告書です。この検討会議は、仕事と生活の 調和を実現する上でどういった課題があるかを整理すると共に、今後必要となる具体的 な方策について先月末に報告を取りまとめたものです。この報告においては、今後のあ るべき働き方として仕事と仕事以外の家庭や地域や学習などの活動、「仕事」と「仕事 以外の活動」を組み合わせて、バランスの取れた働き方を選択していけるようにするた めの環境整備が必要だとされています。そういった生活と仕事の調和の取れた環境整備 を行っていくための具体的な方策として労働時間の面、就業の場所の面、所得の確保の 面、均衡処遇の面、キャリアの形成の面といった関係の施策について提言が行われてい ます。その中で所得の確保の中の一環として、財形制度についても少し触れられている ので、そのあたりをご紹介します。  2枚目に所得の確保についての抜粋があります。財形に関連する部分を多少ご紹介し ますが、最初の○に「育児、教育、介護、住宅などの職業生涯の各段階で、さまざまな 活動が円滑に行われるためには、資金の裏付けが必要となります。そのための資金は、 まずもって働く者自らが用意することが重要であり、そのための環境整備は欠かせませ ん」とされています。このため、一定の所得を確保するために若年期からさまざまな資 産形成の道が開かれていることが重要であるとされています。それを受けて2つ目の○ の下のところで、退職金に相当する額を現在の賃金に上乗せして受け取る形を選択した 上で、その中から必要と考えられる額を積み立てて運用することを容易に行うことがで きるように、個人による積み立てについても税制上の優遇を認めることも考えられると されています。そういったことを実現するための方策として、3つ目の○で企業型確定 拠出型年金において企業のみならず、従業員による拠出も認める、いわゆる「マッチン グ拠出」を認めることを前提とする方法も考えられるとされています。また「なお」の ところで、従業員拠出型の制度については既存の制度のあり方を見直すことが考えら れ、例えば個人型確定拠出年金と財形年金貯蓄の統合の可否も検討することが考えられ る、という指摘もありました。  4つ目の○は、資産形成の過程で育児、教育、介護などのまとまった資金需要が生じ た場合に、資産形成を継続しつつも必要に応じた資金の融資が受けられるような仕組み を検討することが考えられる。こうしたことは財形制度にも当てはまり、また年金制度 についても当てはまるとされています。こういった形で、仕事と生活の調和の取れた働 き方ができるようにするための環境整備を実現するための施策の一環として、所得の確 保の面で財形制度についても触れられているのでご紹介しました。  資料5は、先月6月末に報告書として出されたものです。この研究会は、職業生活の 活性化のための年単位の長期休暇制度の導入の意義や、その可能性について検討が行わ れたものです。ここでいう年単位の長期休暇制度というのは、職業生活を始めてから一 定期間経過後に人生を再設計し、今後の生き方や働き方を活性化する機会としての休暇 制度ということで、休暇の期間は1年以上のもの。対象者としては、10年以上などの一 定期間以上の継続した勤務のある人。そして休みの使い方としては、社会活動への参 加、自己啓発など、そういった目的のために休暇を与える制度ということで、年単位の 長期休暇制度の導入を企業に対して今後図っていくとされています。そういった年単位 の長期休暇制度の導入促進策の1つとして、財形制度の活用も検討することが必要であ るとされています。  2枚目に、具体的に財形制度について触れられている部分を抜粋しました。アンダー ラインを引いていますが、長期休暇の取得に向けて勤労者が計画的に資金を積み立てて いくことのできる制度、あるいは勤労者に長期休暇時の生活費を融資する制度を創設す るなどの環境整備について、財形制度等の活用を含め今後政策的に検討することも必要 と考えるとされています。以上、財形制度に触れられている研究会の報告と政策評価に ついて説明しました。 ○齋藤分科会長  最初に質問しますが、「厚生労働省実績評価書から抜粋」と書いてある利用促進を図 ることというのと、3頁の三事業の「勤労者財産形成促進事業費」は、対象は同じなの ですか。それとも全く別な事業ですか。目標となっている事業は、「勤労者財産形成促 進事業費」と書いてあるでしょ。それは、ここでこっちの厚生労働省実績評価書で言っ ている事業費と同じことですか。それともまるで違うのですか。 ○勤労者生活部長  前者は単に政策そのものの課題を立てて、どの程度その政策を実現したかということ を実績別で見ようという話です。最後の3頁はまた全然切り口が違って、三事業のほう で福祉事業などでお金を出しますね。そちらのほうは出しているお金について、きちん と使われているかどうかを予算面からちょっと切り込んでチェックする。要するに、別 口でいろいろ切り込んで確認しながら。 ○齋藤分科会長  その切り口が違うのはわかるけれども、ただこの利用促進を図ることというのも、裏 付けとなる経費はこれのことでしょ。全く違うのですか。経費も違うのですか。 ○勤労者生活部長  経費はほとんど一緒のところがあるのですが、見ていただくとわかるように前者はほ とんど貯蓄のほうに重きを置いていて、後ろに融資団体がありますが融資に絡んだ費用 がどうこうということは、あまり言っていないです。後者はその中で、実際に転貸融資 の件数がどれくらいガイドラインを使ってやったか。こちらにどれくらいの金をかけて やっているかを拝見して、そちらの切り口で見ています。ですから、1つの制度を行政 客体面でどれくらい成果が上がったかを見るのが最初で、2枚目はそれを実施する上で どれくらいの金をかけてやっているかを勘定面で見ようといったような切り口です。い ま言われたように制度は1つですが、見る切り口が違うということで、いろいろとあれ これ切り込まないと我々が事業実績でしっかり反省しないから、こういうことを。 ○齋藤分科会長  いまこんなことを言っては悪いけれども、これは政策評価かな。要するに、政策のお かげで貯蓄残高や融資残高がいかにも増えているような感じに書いてあるけれども、別 に利用促進のための周知・広報活動をやらなくても。そういう意味で、政策評価の手法 はものすごく難しいと思います。こちらのほうも同じことだけれども、こういう政策を やらないとすれば本来どういうことになったか。それと比較してこの政策をやることに よって、どうなったかということをやらなければいけないのだけれども、実際はそれは 不可能に近いという話でもって、やろうがやるまいが、これだけできましたという話に なるわけですよね。 ○勤労者生活部長  いま言われたのは正論ですが、政策評価を政府でやるという大方針の下にいろいろと やったのですが、定量的な計量ができづらい。例えば、いま言われたように、この政策 無かりせばどうかの検証がほとんどできないので、やっている実績をまず示すことでそ れにコメントを付け加えるのが政策評価に変わってしまっています。したがって2頁に あるように、効率的であったという過去形でありまして、これを続けるとかどうかとい う言い方は避けています。それは、ここでこういう政策を今後取るかどうかを議論して いただいて、それを実施したあとに後追いでチェックするというものに成り代わってし まっているし、3頁の予算も福祉事業そのもの、雇用保険特別勘定の中でどれくらいの 予算を捻出してどれくらいの実績を上げたか止まりで、そのときに予算の総額をある程 度イメージするためにどれくらい件数を上げるかという、仮置きの目標値というぐらい のものに変わっています。ですから、これが今後の政策展開にどういった形で生かされ るか。政策評価をした上で政策展開を図るという目標でいろいろと仕組んではいます が、まだ完成していないという代物です。こういったところでむしろこういうものをこ なしながら基本的な議論をしていただかないと、政策というのはなかなかできないとい うことです。 ○松井委員  分科会長がもう指摘されているくらいですから、皆さんお気付きになっていると思い ますが、例えばこの政策評価で貯蓄残高、融資残高が増えた、それでいいのだというこ とをまず言ってしまうと、そうならばここで議論をする必要があるのかないのかという ことまで思わざるを得ないのです。そうなると、こういう政策評価をするときに、先ほ どの資料2が示すように契約件数は減ってきているわけですから、こういう書き方をす ると役所は全く反省していないと思わざるを得ないのです。最後の三事業についても、 今日の議論ではなくて今後の議論だと思いますが、融資の決定件数ではなくて融資をす るに当たって、どのくらいオペレーションに費用がかかってきているのかがまず重要 で、それをやるに当たってこれだけの三事業のお金を使ってやる意味があるのかないの か考える必要があります。目標を立ててこれでいいですという問題ではないと思いま す。もう1つは目標を立てるならば、ほかに行われているような民間も含めてあまた融 資があるはずですが、それとの比較をもってみてどうなのかを考えないと、これで目標 を立てたからこれをクリアしたからいいなどと考えるのは、もう本当にお門違いだと思 います。ですから次回以降の議論のときには、こういうところにどのくらいの費用が現 実にかかっていて、それが本当に効率的なのかどうかをもう少し示してもらえればと思 います。  それから先ほど長期休暇と仕事と生活の2種類の報告書の説明がありました。新村委 員が先ほどおっしゃられたと思いますが、それこそ財政が限られているならばどこを支 援するかを考えたとき、長期休暇を取得できる人がとても気の毒な方だから国として支 援をしなければいけないと考えるのか、それはまだ恵まれているから国としての支援は いるのかいらないのか。今後とも考えるときには、そういう視点も取り入れて考えてい ただかないと、おそらく財形でいろいろとやれるのではないかという議論は今日最初の 議論の過程のペーパーにもありましたが、まずいまの段階で何が駄目なのかをよく精査 して、さらに本当に必要なものと不要なものの仕分けをした上で、次の議論のステップ として何か本当に付け加える必要があるのか。議論の仕方としてはそんなやり方をしな いと、何でも突っ込めと言われてもちょっと違いすぎるなというのが感想です。 ○奥村委員  我々の800人の企業でも、毎月の財形貯蓄の金融機関にお渡しする額は100万円を越え ていて、ある程度やめなければ残高はどんどん増えます。そういう資金を本当に安心し て運用に任せられるかどうかがいまのいちばんの心配事で、そういう意味でちょっとこ の指標は違うのではないか。既に発表されているものですからあえて申しませんが、次 の機会でも結構なので、次の年度の政策評価をする際は、どういったことを目標に、実 際に活用されて普及されたと見るのかを教えていただけませんか。こういったものとい うのは、ちゃんと目標があって活動があって、成果があって評価があるので、こういう 目標があるということはこの資料をいただいて初めて知りました。非常に残念です。  それから、この転貸融資制度ですが、本当に財形が広くいろいろな勤労者に利用でき るようないい制度になってほしいと願っています。5年間の平均でいうと、いままで以 上普及はしないのではないかと事務当局が推定されているとすると、非常に悲しいなと 思います。我々で知恵を出して、普及するように努力することが大事だと思っているの で、これが本当に目標になるとはちょっとわからないので、またの機会にお考えを聞か せていただきたい。  いろいろな就労形態等があって、パートタイマーやフリーターなどが財形制度をどう 利用できるかという問題がありますが、先ほど松井委員がおっしゃった転貸融資で、本 当にパフォーマンスとしてその事業が成り立つのかもさることながら、実はこういった 制度を利用できるのは大企業のかなり一部の人間ではなかろうかと思っています。こう いった制度があるがゆえに、企業はパートタイマーは対象としないということがあるの ではないかと思います。パートタイマーが貯蓄が必要ないということはないですよね。 むしろ、こういった余計な制度ではなくて、余計な制度をどうするかを真剣に考えて、 本当に財形制度の持つ将来の財産形成、資産形成といったパートタイマーの利用しやす い制度にしていくことが大きいテーマだと思います。ですから、ここにあるようなこう いう制度があるから財形はいいのだではなくて、本当にいろいろな形で仕事を一生懸命 になさっている方の財産形成に資するような制度にすべきではなかろうかと思います。 それの目標設定についても今後どういう考え方でなさるのか、機会があれば教えていた だきたいと思います。お願いします。 ○齋藤分科会長  政策評価はそれなりの目標というか、現在の制度、予算なり仕組みを前提にして作る ものだから、それはそれなりに限界はあるし、しょうがないというところはあります ね。 ○勤労者生活部長  いま言われたことはご尤もな点はありますが、少なくとも財産形成促進制度をいまま でのスタイルで展開するという前提で、要は延長線上で予算上の仕組みとかを徹底して います。それでは基本的な議論ができないから、それを越えてこういう場でそれと違う 切り口で分析していただくのが使命だと思います。ですから、ここでの評価会があって 初めて政策評価への切り口ができるのだと思います。それを抜きでやってしまうと、ま た役所が勝手にこうやりたいからこう評価したという議論になるので、そこはいままで のところできていない。むしろ、こちらでの議論が先行すると思っています。 ○新村委員  政策評価は逆でいいと思います。やはり自己評価をして、何かうまくいっていないぞ ということがあって、それではこういうところで議論をしましょうというスタイルに政 策評価が機能しないと意味がないと思います。いま、なるべくそういう方向に政策評価 を持っていこうという議論をみんなでしているところですので、こういうところで議論 をしないとこちらではとりあえずうまくいっているよというのを書いておいて、方向が 決まってからきちんと評価するとちょっと逆のような気がして、いまのは発想としては おかしいのではないでしょうか。結果としてどうなるかはもちろん同時並行部分はある と思いますが、万々歳でこの評価を見て、みんな良くなっているのだったらこういう検 討をする必要はないではないかみたいな持っていき方に政策評価が位置づけられては、 折角すごい壮大な制度を導入したわけですから意味がないと思います。だから是非、も うちょっとうまく政策評価を使って、ここで頭出しといいますか、そもそもの制度の目 標が何で、それが本当にうまくいっているのかどうかというのを内部できちんと議論を なさった結果がある程度出てこないといけないと思います。 ○勤労者生活部長  おっしゃるとおりだと思いますが、そこはそれで認めながら現行がうまくいっていな い理由は、いままでの財産形成促進制度について、具体的に何十年も経っていますが、 その制度に厳格な目標を作ってそれに向けて動くというコンセプト作りをしないまま来 ているのです。財産形成の基本計画もできていなくて、そのまま来ているわけです。そ うすると、そこに評価を噛ませるといってもどういう視点かというのが確立していない ところがあって、そういう意味ではすべく観念はしていますが、その操作が十分でない からまた知恵をお借りしながらと。言われたように、同時並行で少しずつでも良くして いきたいと思っています。 ○奥村委員  これは、政策的評価と読めばいいのではないですか。 ○勤労者生活部長  まだ政策評価まではいっていないですね。 ○齋藤分科会長  まだご議論があるかと思いますが、それは次回にして、時間が来ましたので、今日は これくらいにします。  どうもありがとうございました。 ○企画官  次回は9月に開催する予定にしていますので、後日事務局から日程調整のご連絡をい たします。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課企画係 (内線5353)