04/07/26 労働政策審議会職業能力開発分科会第17回議事録           第17回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成16年7月26日(月)14:00〜 場所:経済産業省別館 第1014会議室  議題(1)日本版デュアルシステムの実施状況及び雇用保険法施行規則の一部を改正す      る省令案要綱について   (2)平成15年度職業能力開発施策の実施状況について   (3)平成16年度勤労青少年福祉行政運営方針の策定等について   (4)その他 配付資料  No.1   労働政策審議会職業能力開発分科会委員名簿  No.2   日本版デュアルシステムの実施状況について  No.3−1 雇用保険法施行規則の一部改正(案)について  No.3−2 雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱  No.4   平成15年度における主な職業能力開発施策の実施状況について  No.5   平成16年度勤労青少年福祉行政運営方針 〔参考資料〕  参考1 厚生労働省設置法(抄)  参考2 労働政策審議会令  参考3 労働政策審議会運営規程  参考4 労働政策審議会職業能力開発分科会運営規程  参考5 労働政策審議会委員名簿 出席委員 公益代表   江上 節子             玄田 有史             佐藤 博樹             若菜 允子      労働者代表  大江 拓実             小栗 啓豊             長谷川 祐子             中村 正武             西原 浩一郎      使用者代表  篠木 利史子             鈴木 正人             中村 紀子 ○ 総務課長  定刻となりましたので、ただいまから「第17回労働政策審議会職業能力開発分科会」 を開催いたします。初めに、本分科会の分科会長であった古郡会長が労働政策審議会委 員をご退任になっております。本日、後ほど新たに分科会長が選出されるまでの間、 私、総務課長が議事進行役を務めさせていただきます。また、委員の交替がありました のでご紹介いたします。新たに、公益代表委員として若菜委員にご就任いただいており ます。専門委員の龍井委員と臨時委員の和田委員はご退任されました。鈴木委員には従 来、専門委員をお願いしておりましたが、専門委員をご退任され、今回臨時委員にご就 任いただき、本日ご出席いただいております。  それでは事務局を代表いたしまして、職業能力開発局長の上村からご挨拶申し上げま す。 ○ 職業能力開発局長  今日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。3月の異動でこ の局に参りまして、何人かの委員の方には研究会等ですでにご挨拶をさせていただいて おりますが、改めまして前任者同様よろしくお願いいたします。今日はこの4月からス タートしたデュアルシステム等の進捗状況といった施策の実施状況をご報告させていた だきますが、その前に、本来の審問事項についてご議論いただきます。現在、来年の重 点施策について検討しているので、進捗状況等の報告をさせていただき、ご意見を伺 い、予算編成まで僅かですが、皆様方のご意見を反映していきたいと思っております。 よろしくお願いいたします。引き続き、ご支援ご指導をお願いいたしまして、簡単です がご挨拶とさせていただきます。 ○ 総務課長  続きまして、前回、本分科会を開催させていただきました後に、事務局側で人事異動 がありましたので、3人ご紹介させていただきます。能力評価課井上課長。基盤整備室 三上室長。特別訓練対策室平野室長。このような事務局体制で臨んでいきたいと存じま す。  次に、当分科会の分科会長の選出について説明いたします。お手元の資料に、労働政 策審議会令を参考にということで入れてございます。労働政策審議会令第6条第6項に 規定されておりますが、分科会の会長は分科会に属する公益を代表する労働政策審議会 の委員のうちから選出することになっております。本分科会においては、公益を代表す る労働政策審議会本審の委員でいらっしゃいますのは若菜委員のみです。したがって、 規定上、若菜委員に分科会長にご就任いただくことになります。ご了承の上、よろしく お願いいたします。 ○ 若菜会長  若菜でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ここから議事進行役を務めさ せていただきます。  本日の議題の1番目は「日本版デュアルシステムの実施状況と雇用保険法施行規則の 一部を改正する省令案要綱について」、2番目が「平成15年度職業能力開発施策の実施 状況について」、3番目が「平成16年度勤労青少年福祉行政運営方針の策定等について 」です。議題1、日本版デュアルシステムの実施状況及び雇用保険法施行規則の一部を 改正する省令案要綱についてから始めます。日本版デュアルシステムについては、これ までの分科会で皆様に活発に意見交換をしていただき、平成16年度からスタートする新 たな施策なので、その進捗状況についてまず報告を受けるということです。それに関連 して、雇用保険法施行規則の改正について、本日厚生労働大臣から諮問を受けておりま す。今回の諮問案件の内容も含めて、事務局から説明をお願いいたします。 ○ 基盤整備室長  まず、資料2の日本版デュアルシステム実施状況の説明をした後、育成支援課長から 雇用保険法施行規則の改正等についてお話をしたいと思います。このシステムに関して は、冒頭、局長から申し上げましたとおり、若年者を取り巻く雇用情勢が非常に厳しい ことを踏まえ、昨年来、4省連携した「若者自立・挑戦プラン」の一環として、若年者 のフリーター化、無業化を防止しながら、企業の求人の高度化に対応した、いわゆる実 践能力を修得させるために、若年者を対象として、新たな実務・教育連結型の人材育成 システムとして、本年度から導入、スタートさせたことはご承知のとおりです。  その内容については、会長からお話があったように、この分科会において非常に活発 に意見交換もなされたとのことですが、その趣旨、定義、類型、枠組み、支援措置等に ついては別途教育訓練機関等の関係者に集まっていただき、資料2の1頁にあるよう に、本年3月26日に開催された「第2回日本版デュアルシステム協議会」において報告 がなされているところです。本日は1、2頁を中心にして説明いたしますが、3頁以降 30頁まで、報告書が添付されております。この別添の報告書も折に触れて参照いただけ ればと思います。  3〜9頁が概要です。10〜23頁はこの概要の別添の資料で、この部分は割愛いたしま す。24頁から最後までが参考で、三部構成になっております。特に参考については、デ ュアルの今後の進め方、戦略についても述べておりますので、まず概要の4、5頁と参 考の24頁を中心に、システムについて説明したいと思います。本年度においては、訓練 計画数(約4万人)を対象に実施しようと進めてきております。誰に対して、どんなこ とを、どのようにという大枠ですが、当面のターゲットについては概要の5頁の2「定 義」の最終パラグラフにあるように、(1)35歳未満、(2)安定的な就業につながっていな いが、(3)訓練を受ける意欲がある人という3つのポイントを押さえながら、当面の対 象者を絞り込んでいるところです。  24頁、参考1の右枠、「デュアルシステムの基本的仕組み」の中で対象者は、高校卒 業者(予定者を含む)で、未就職者である者を中心として、無業者、フリーター等を含 めるものと考えております。左枠2の「デュアルシステム導入の目的」の2つ目のポツ にもあるように、高卒未就職者のフリーター化、無業化を防止する仕組みを作り上げる ことが非常に大きな課題ではないかと思っております。理念上の軸足は高卒の未就職者 等にあると考えておりますが、現在、200万人のフリーター、100万人の無業者・失業者 についても、当然、当該システムについては非常に大きな意味を持つものと考えてお り、このようなもののうち、後でお諮りする困難な状況にある若年者に対して助成措置 を講じつつ、当該システムの普及を図りたいと考えております。  次に、仕組みですが、まず第1に訓練計画を立てる。2つ目に、企業内での企業実習 (OJT)。3つ目に、教育訓練機関でのoff−JT。4つ目に能力評価。このよう な4つの大きな仕組みがあって、それを一体となって行うシステムであることが理解い ただけると思います。冒頭、実務・教育連結という言葉で述べましたが、それを並行的 に実施する。5頁の中でも掲げられているように、教育訓練中の一定期間、この数カ月 の間に、実務と教育の両方が非常に密接に連結した形で組み込まれていることがデュア ルの味噌だと思っております。我々としては、働きながら学ぶ、学びながら働く制度と いう言い方をしております。  企業と教育機関が並行的に示されていますが、5頁3の、システムの「類型」として は、主導するものが教育訓練機関なのか、企業なのかということで、大きく2つに分け ることができると思います。この基本類型をモデルの図で示したものが24頁右枠の基本 的仕組みの中の斜線が入っているものです。「教育訓練主導型」と「企業主導型」とし て掲げてあります。今後の戦略という点においては、当面、1つは教育訓練機関が主導 であること、2つ目に既存の職業訓練の仕組みを有効に活用することを考えているとこ ろです。戦略の最後にあるように、平成16〜18年度の3年間で新しい仕組みを社会に定 着させたいと考えております。  1頁に戻り、このようなことを踏まえて、平成16年度においては、「公共職業訓練機 関」、「専修学校等民間教育訓練機関」といった2つのものを活用したデュアルシステ ムを現在進めてきております。1頁の1の(1)専門課程の活用型に関しては、6月に内 部的な実施要領等も作成し、職業能力開発大学校の専門課程と同じレベルの出来上がり 像を目標にし、2年間の訓練を実施することにしております。独立行政法人の雇用・能 力開発機構の職業能力開発大学校等5施設ということで、1施設20名で100名を対象と し、10月から開講の予定となっております。代表的なものとして、住管理技術科、IT ものづくり科、といったものがあり、総合的な科目を設定し、実施していきたいと思っ ております。  2つ目の普通課程活用型についても実施要領を策定し、大体1〜1年半程度の訓練を 実施する。普通課程修了と同様の技能士補、または職業資格の取得ができるように進め てきているところです。23都道府県の県立職業能力開発校と、機構の10のポリテクセン ターで10月から順次開講の予定にしております。代表的な予定訓練コース等々は、資料 に書かれているとおりでございます。  3つ目も公共職業訓練を活用した形ですが、委託訓練を活用するシステムとして、安 定所の求職者を対象に、専修学校等の民間の教育訓練機関に委託し、訓練をしておりま す。独立行政法人の雇用・能力開発機構からの委託によって、4月から順次開講してお り、4〜6月の3カ月間で約7,000人が受講し、年度内に2万5,000人の実施を計画して おります。2頁目に代表的なコース例等を掲げておりますが、ビジネスパソコン、コン ピューター関係、介護サービスといったところは非常に求人も多く、関心を持つ若年者 も多いことから、多くの都道府県で進められております。石川県のフラワーコーディネ ーター等々は、若年についていろいろな求人を念頭に置きながら、これに対応した新規 分野の訓練といった観点を持って、委託された例として掲げております。  公共訓練型を主体とした実施状況はこういったものですが、2つ目の専修学校等の民 間教育訓練機関を活用したデュアルシステムの関係においては、日本版デュアルシステ ムをコーディネートする事業を現在推進しているところです。これは民間訓練機関主導 型、企業主導型など、最終的にこういったものを定着させることが目的です。現在10都 道府県にコーディネーターを配置しつつ、コーディネート事業について進めてきており ます。  3の「キャリア形成助成金関連等」ですが、キャリア形成助成金に関しては、先ほど 来述べた、民間訓練主導型、企業主導型のoff−JTに関わる部分になってくると思 います。さまざまな企業や民間訓練校等々から問合せもいろいろ来ていますが、キャリ ア形成促進助成金については、いままでの助成金に高率な助成措置をするということ で、就職困難な状況にあると認められる若年者に対するデュアルシステムに限定するこ とになっております。  平成15年5月、日本経団連、日商連名で若年者を中心とする雇用促進、人材育成に関 する共同提言、9月の4大臣協力要請等々もありました。また、中小企業団体中央会と して若年対策に協力するという決議もなされております。今回の構造改革に関する基本 方針2004年も踏まえると、さらに民間の活力を活用し、デュアルシステムの普及、定着 を図る必要がある。そのような意味では、戦略ということで参考のところでも述べまし たが、企業への導入という第2段階にいま来ているのではないかと思っております。支 援策である助成金についての諮問ということで、詳細については育成支援課に説明を譲 りますが、どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 育成支援課長  引き続き、資料3−1で雇用保険法施行規則一部改正について説明いたします。基盤 整備室長から話があった、「キャリア形成促進助成金の拡充に係る整備」です。キャリ ア形成促進助成金は事業主が従業員に対し、計画的に職業訓練を実施した場合、訓練期 間中の訓練経費と賃金について、国から助成するものです。デュアルシステムですが、 若年者のエンプロイアビリティを高めるために、これは有効だということで、特に厳し い状況にある若年者に対して、デュアルシステム訓練を行った場合について、通常のキ ャリア形成の助成内容より手厚い支援をしていこうというものです。  具体的な内容は2にあるように、事業主が対象若年未就職者を雇用して、デュアル訓 練実施計画を策定し、デュアル訓練を実施した場合について、大きく2つ支援を行う予 定にしております。1つが訓練経費と賃金の助成率について高率にするものです。現行 の助成率は大企業4分の1、中小企業3分の1となっていますが、これを3分の1、2 分の1にしたいというものです。  2つ目は、訓練計画策定費の助成です。このような方々は、特に社会的な適応性が乏 しいこともあるので、計画を立てる場合にも特別な配慮が必要だという考え方に立ち、 計画の策定費を一事業所当たり15万円出していくという内容です。内容の中の※1の対 象若年未就職者ですが、「その者の就職に係る状況から見て、デュアル訓練を受けるこ とが望ましい者として、厚生労働大臣が別に定める若年者に該当」ですが、具体的には 3頁目のような枠組みで考えたいと思っております。1つ目は、基本的な要件として、 雇われる前3カ月間が無職という状況にある15歳から34歳までの方。このような大きな 枠組みの中で、なかなか定着が困難である等の理由がある者ということで整理したいと 思っております。  大きく3つを考えており、1点目が(1)の定着困難者で、学校卒業後、1つの事業主に 6カ月以上継続して雇用されたことがない。つまり、まともに就職して、きちっと働い た経験がない方です。2つ目が、複数回、離転職を繰り返す場合を考えております。一 応、目安としては3回を考えており、年齢が増えると、通常でもその分、離職回数が増 えていくことを加味し、実態等も調べながら回数は決めていきたいと思っております。 年齢が上がれば、少し回数も増やす必要があるのではないかと考えています。3つ目は 長期継続未就職者で、学校卒業後、雇い入れられた日までの間に1年間以上無職という 状況にある者です。このような方を念頭に置いて、実際にキャリア・コンサルティング を受けてもらい、デュアル訓練の実施が望ましいと考えられた場合、高率助成の対象者 として考えていきたいと思っています。  ※2はデュアル訓練実施計画です。先ほど基盤整備室長から説明があったとおりです が、デュアル訓練の指導体制あるいは訓練期間中の労働条件の内容、能力評価の方法、 就労後に予定されている雇用の取扱い等の所定の記載事項が定められていることを省令 上規定することを考えております。※3のデュアル訓練ですが、これについても先ほど 説明があったとおりですが、OJTとoff−JTが適切に組み合わされながら、訓練 期間がおおむね1年、700時間以上の訓練であること、厳しい状況にある若年者の特性 にも配慮した訓練であることを要するという旨を省令上規定していきたいと考えている ところです。そのような内容を省令案要綱にしたものが資料3−2以下です。  3−2は諮問文で、次頁から省令案要綱となります。1は高率助成等の内容について 規定したものです。先ほど述べたとおりですが、事業主が対象若年未就職者を雇用し、 デュアル訓練実施計画を策定するとともに、デュアル訓練を実施した場合について、そ れぞれキャリア形成促進助成金における訓練経費と賃金の助成率について引き上げるこ と、及びデュアル訓練実施計画策定費として、一事業所当たり1回に限り15万円を支給 するというものです。2は高率助成等の対象となるデュアル訓練の範囲を定めたもので す。その範囲については、(1)〜(4)にあるように、それぞれOJT、off−J Tが適切に組み合わされたものであること。訓練期間はおおむね1年以上、時間は700 時間以上、対象若年未就職者の特性に配慮した職業訓練、このようなことを規定したい と思っております。  3は高率助成等に係るデュアル訓練計画の記載事項です。訓練の内容、実施される期 間、指導体制、労働条件の内容、能力評価の方法、訓練を修了した場合において予定さ れている雇用の取扱い、訓練の内容と期間中における労働条件の内容に係る変更手続、 その他ということで規定したいと思っています。施行期日は平成16年10月1日からと考 えております。 ○ 若菜会長  ただいまの説明について、ご質問ご意見があればお願いいたします。 ○ 江上委員  資料3−1の2の内容の(1)では、訓練経費や賃金の高率助成に関して、「キャリア 形成促進助成金による訓練経費及び賃金の助成については、デュアル訓練に係る部分に つき、その助成率を以下のとおり引き上げる」と書かれてあります。資料3−2の2頁 1の(1)では、その記述が特になく、文言が若干変わっているのです。賃金の助成率 というのがどこに係るのかが、省令案要綱と資料3−1の一部改正案の表現とちょっと 違うので、正確に理解することができないのです。 ○ 育成支援課長  デュアル訓練の対象者に係る部分で、計画が必ずしもこのような形で定められていな い場合であっても、通常のキャリア形成促進助成金の対象になる場合があります。その ような意味で、資料についてはそのようなことを明らかにするために、わかりやすく書 くためにということで、デュアル訓練分については特に高率助成になると書かせていた だきました。一方、省令案要綱については、わかりやすくする必要もないので、デュア ルに係るキャリア形成促進助成金の助成率については簡単に書かせていただきました。 特にここは違いがあるわけではなく、他意はありません。 ○ 江上委員  助成率を引き上げることにおいて、デメリットは何かということは検討されたのでし ょうか。このことが及ぼすデメリットです。賃金と訓練経費の助成率を引き上げるこ と、特に賃金部分について引き上げることのマイナスの影響面はどのようなことを考 え、検討し、今回の案に至ったのかを伺いたいと思います。 ○ 育成支援課長  今回、キャリア形成促進助成金の高率助成を検討した契機は、対象者が非常に定着困 難な方、社会的な適応性が低いと思われる方ということがあるので、通常の、いわゆる 周知、ノウハウの伝授といったものでは事業主がそのような方々を雇い入れて、デュア ル訓練までなかなかもたらしてはくれないのではないか、やってくれないのではないか ということを想定し、特に厳しい状況にある方を雇い入れ、そこまでやっていただける 場合にはインセンティブが必要だということで、高率助成を考えました。そのような意 味では、助成をやらなければ、本当に厳しい人たちがデュアル訓練に接する機会がなく なるのではないか、こちらのデメリットのほうが大きいのではないか。このようなこと で我々は今回こうした助成を考えたわけです。 ○ 江上委員  助成金がある間はインセンティブが働き、何とか教育的な努力を事業主にやってもら えるかもしれませんが、助成金が終わった段階で、結局、雇用の定着は難しいし、能力 的、あるいはそのような指向性の育成も難しいということで、そこで雇用が終わるとい う結果が、現実には多くもたらされる危惧はないかどうかと考えます。 ○ 育成支援課長  今回のデュアル訓練については、必ずしも雇わなければいけないということではあり ませんが、訓練終了後の雇入れの取扱いはどうするのかということまで定めていただき ます。そのような中で、訓練をしていただいた方については、できる限り雇入れまで結 び付けてほしいと強く働きかけをしていきたいと思っております。今回のデュアル訓練 がOJT、off−JTを効果的に組み合わせた形で、実践力を付けようという訓練で すから、これを1年かけてじっくりやれば、それなりのエンプロイアビリティは付いて くるのではないかと思っており、そのようなことを通じて、できる限り就職に結び付け ていくことができるのではないかと考えております。 ○ 佐藤委員  27頁についての確認ですが、いまの助成金のところで、企業に雇用されてパートタイ ムで仕事をする、逆にパートタイムで勉強するわけですが、企業の中でOJTが3日 間、off−JTが2日間というと、上の2日について、企業は働いていないから給与 は払わなくていいが、ここも払えばその部分をということですか。 ○ 育成支援課長  そうです。 ○ 佐藤委員  上の部分について、週5日のうち3日しか会社に来なくて、2日間は学校へ行くのだ が、この2日間分についての給与を払っている場合については、中小企業は2分の1と いうことですか。 ○ 育成支援課長  はい。 ○ 佐藤委員  そうすると、訓練費用のというのはどこの部分ですか。 ○ 育成支援課長  訓練費用はoff−JTの部分です。 ○ 佐藤委員  学校の費用を企業が見てあげた場合ということですか。 ○ 育成支援課長  そうです。通常は企業が雇い入れて、off−JTに行ってもらう形が最も望ましい と考えております。その他、そうではなくても、いま委員が言われたように、off− JTの部分について経費を払ってもらった場合も対象になります。 ○ 佐藤委員  もし、訓練生が受講料も払うという場合は、助成金はなしということですか。 ○ 育成支援課長  そうです。 ○ 佐藤委員  つまり、全部が助成されるのではなく、授業料も行った2日間についても、一定割合 の賃金を払った場合について、その金額の2分の1、3分の1を助成するということで すね。 ○ 育成支援課長  そうです。 ○ 佐藤委員  受講生本人の負担を減らすという発想ですか。 ○ 育成支援課長  そのとおりです。 ○ 佐藤委員  これは1年程度以上なので、いま始まっている5カ月は対象にならず、秋から始まる 1年以上のものが対象になるということですね。その1年というのは、上の2日ではな くてトータルの期間、1年でも実際に仕事をしているのは、何を期間で考えるかです が。 ○ 育成支援課長  訓練はトータルで1年の期間があればいいと考えています。 ○ 佐藤委員  off−JT、OJTを足して1年以上のものですね。 ○ 育成支援課長  そうです。 ○ 佐藤委員  5分の2というといくらぐらいになりますか。5分の2の賃金はどのくらいを想定し ているのですか。これは2日分ですね。1週間のうち2日仕事をしない分を出すことに なります。18万円とすると、それの5分の3、それの2分の1とか3分の1ということ ですね。 ○ 育成支援課長  そうです。 ○ 佐藤委員  わかりました。 ○ 長谷川委員  例えば、今回の施行規則の改正を見た場合、大企業が4分の1〜3分の1、中小は3 分の1〜2分の1の助成金ということですが、ニートとかフリーターと呼ばれている若 者をデュアルで雇ったとき、この助成金で本当にやれる、やってみようという気持にな るかどうかを使用者の方にお聞きしたいのです。なぜかと言うと、これは企業がやって みようと思わない限り、絵でしかないわけです。我が国のことを考えて、若者はこのよ うな状況では大変問題だから企業も努力をしなければならないので、デュアルで入れて みようか、やってみようか。若者に対して働くことについてきちっと動機づけさせてい こうというものがあって、企業が積極的に取り組めば、日本版デュアルシステムは有効 に働くと思うのですが、企業がこのようなことはとてもやれないということであれば、 これは失敗策に終わると思います。誘導策として助成金を引き上げることについて、4 分の1〜3分の1、3分の1〜2分の1で、企業がそうだなと、自分の会社でもやって みようかという気持になるかどうかをお聞きしたいと思います。 ○ 中村(紀)委員  日本版デュアルシステムの導入に関して、戦略としてデュアルシステムコースが豊富 に存在することが必要だと書いてあります。職業訓練校でいままでやっていたこととい うのは、どちらかと言うとハードの、ものづくりを手に付けるという部分で盛んにやっ ていたのです。保育、介護といったサービス業、いま日本全国で待機児童がかなり出て おり、保育士不足が叫ばれております。仕事をするのは嫌だが子どもが大好きだという 若者はまだたくさんいると思うので、そのような人たちを我々としては次世代の育成支 援として、デュアルシステムとして受け入れようということは積極的にやりたいと思っ ています。  ところが、受け入れて、1年間トレーニングして、企業がデュアルシステムの修了書 を出したときに、彼らが再就職で子どものところに行きたいと言ったとき、いまの日本 の認可保育所というのは、最低基準の中で保育士資格を持っている者を80〜90%雇うよ うにとなっていて、デュアルシステムの修了書を持っていながら、再就職で引っかかっ てしまう。要するに、修了書は一体どの程度の価値があるのか、もしくは彼らの就職先 がまだ規制のある分野で、彼らを受け入れるような余裕がなければ、結局私たちがいく らトレーニングをしても、そのあとのところを同じように改革していかなければ彼らの 行き先がなくなっていくと感じるのです。補助金をいくらもらう、もらわないの話では なくて、ものづくり以外のサービスのほうで、自分の力を試したいという若者に対する その後の動きにちょっと問題がありはしないかと感じています。  ご質問に関しては、弊社としては人不足の折で、外国人を採用するかどうかというぎ りぎりのところまで来ていますので、どんどん若者が入ってきてくれることはウエルカ ムです。 ○ 佐藤委員  助成金について、教育訓練機関主導型も同様に出るわけですね。それとも企業主導型 だけですか。 ○ 育成支援課長  企業主導型はまず企業から雇ってという形になります。教育訓練主導型は、まず専修 学校の学生が企業でOJTを経験して、そこから企業に雇用されていくという形を取り ます。雇用された段階で対象になります。 ○ 佐藤委員  OJTの段階で、企業が教育訓練側のoff−JTのところを見る場合は無いのです か。それはあり得ないのですか。 ○ 育成支援課長  専修学校の学生のままでということですか。 ○ 佐藤委員  それだと企業が雇い入れてしまうことになるからということですね。 ○ 育成支援課長  そうなのです。最初に学生の身分で企業のOJTを経験する場合は、雇用保険の枠組 みの中では対象になりませんので、企業のほうで雇用するに至った場合について、教育 訓練主導型も対象になるという考え方です。 ○ 佐藤委員  教育訓練主導型で受け入れたほうが、企業としてはコストが安くなるということにな りますね。 ○ 育成支援課長  取りあえずはそうなります。 ○ 篠木委員  長谷川委員の質問に対して、使用者側としての話ですが、私は自分の職業や業種とい うことではなく、一般的な考え方を述べたいと思います。佐藤委員が言われたように、 デュアルシステムは企業にメリットがあるかないかということと、もう1つ、理解した いと努力する労働者側がどれだけ噛み合うかというマッチングの問題が非常に多いと思 います。企業側が受けるか受けないかというときに、企業は働く人をより良くしたい、 より使いたいし、働きたいという意思のある人に対していろいろなことを教えたい、そ のような環境づくりだと思っております。この中で取り上げられているのは、いままで 定職がないなど、いろいろな方々が問題になってきて、その人たちを助けたいというこ とが結構あるのです。そのためにはどうしたらいいかについて、この中では教育やトレ ーニングの他に、我々の意思を伝達したりするといったことになっています。甘えの構 造のように、行政側はとにかく環境が悪いと決めつけていますが、我々は働くというこ と、それによって労働に対する報酬があること、それがペイなのだということがはっき りわかるような方向で取り扱うだろうと思っています。私の所にも若者は何人もいるの ですが、フリーターでお金がなくて困っている人たち、すぐ嫌になってしまう人たち が、再生工場ではないのですが、責任者がマンツーマンで教えていくと、結構仕事に楽 しみを持っていく。補助金はもらっていませんが、そのようなことがかなりあるので、 労働組合側も、いろいろな意味で一体になった協力の要請を、これを取り組む前提とし て考えていただきたいと思います。中村委員も言われたように、企業側は人手不足だか らそうするのではなく、多くの人が働く意欲を持つことができるように努力していると 思います。受入れについて、損だから得だからという以前に、協力することだけはやぶ さかではないということです。 ○ 鈴木委員  資料3−1の3枚目に、それぞれいろいろな種類の定着困難者がいるようですが、キ ャリア・コンサルティングを受けて、デュアル訓練の実施が望ましいと認められた者と いうのがあります。このキャリア・コンサルティングということがポイントだと思いま して、ここできちんとした動機づけをすることによって、いま篠木委員が言われたよう に、いままでとは違った、きちんとした働く目的や意識を確立して仕事に就くという方 向であれば、いまのような話もうまく進むのではないかと思うのです。やはり、そこが ポイントではないかと思います。1つ伺いたいのは、資料2、1の(1)(2)はこれから始 まるのですが、(3)の委託訓練活用型のデュアルシステムはすでに始まっているわけで す。4月より順次開講して、4〜6月の3カ月間で7,000人が受講されていますが、こ のような人たちが果たしてどのような形で実際の就職、雇用に結び付いているのか、そ の辺は大事なポイントではないかと思うので、この辺の実態がわかれば教えていただき たいと思います。 ○ 育成支援課長  1点目のキャリア・コンサルティングの関係ですが、まさに鈴木委員が言われるとお りで、キャリア・コンサルティングの中で、デュアルシステム訓練を受ける本人の意欲 といったものも評価する必要があると思っています。実務経験を付与することが、実際 の就職につながるということをそこできちんとつかんだ上で、そのような方を認定して いく形を取っていきたいと思っています。 ○ 基盤整備課長  委託訓練関連の結果ということですが、4月からスタートして訓練期間は5カ月です から、結果がどのようになったかはまだこれからということになると思います。結果を 押さえていくということは重要だと思っております。 ○ 佐藤委員  教育訓練主導型の場合でも、やはり就職に結び付くということは非常に大事だと思う ので、鈴木委員が言われたように、企業側のニーズに合った訓練科目は大事だと思いま す。そのようなときに、学校によって、普通では生徒が集まらないような所をこれで集 めて、極端に言えば、就職には結び付かないが企業に受け入れてほしいということがで きてしまっていると困るわけです。求人ニーズがある科目を選んでいると言われます が、例えば、自動車整備、一時車検が延びたことで余っていることがありましたが、い ま、それほど人が足りないかどうかは私にはわからないのです。いまの訓練校での科目 がニーズに合っているとも言えない側面があり、訓練校がすべてデュアルをやればいい わけでもないわけです。この7,000人についても、どのような科目を受講したのか、あ る専門学校などでも、どのような科目でやっているのかがわかる情報がほしいと思いま す。 ○ 下境(小嶋委員代理)  埼玉県の中小企業団体中央会で専務理事をしております。日ごろ、ものづくりの企業 の社長の皆さんから、いまの高校生の無気力ぶりには困ったものだという声を大いに聞 いております。実際に採用して半年も訓練すれば、嫌になって逃げていく。当然、訓練 費は企業主が払って、結局無駄に終わってしまう、これからというときに逃げられてし まう。そうであるならば、高校生よりもすでに出来上がった人間を採用するほうが楽で あるという声を聞くわけです。今回、要件の中にキャリア・コンサルティングを受けて デュアル訓練実施が望ましいと認められた者、1つの事業主に6カ月以上継続雇用され たことがない者、一定かつ3回以上離職経験がある者、1年以上無職であった者。これ を見た限り、私どもの傘下の企業の社長が嫌がるケースです。そのような人たちはとて も雇う気がしない、気力がない、働く意欲がない、働く意味がわかっていない、そのよ うな声を聞くわけです。先ほどの3分の1が2分の1になったという次元よりも、この 要件を見ただけで、果たして乗ってくるだろうか、そのような疑問を私は感じました。 ○ 育成支援課長  ご案内のとおりですが、キャリア形成促進助成金は、書いてある方だけが対象ではな く、通常の助成率である限り、また若年者を一定の要件で事業主が計画的に訓練してい ただければ、当然対象になります。確かに、いまおっしゃるようなことがあって、社会 的適応性が乏しいと思われる方の場合については、私どもがデュアルはいいものだと宣 伝して、かつ、いろいろなノウハウをこのような形で示しても、事業主にとっては難し い部分があるだろうということで、高率助成ということに踏み切ったという経緯があり ます。これで本当に雇用が進むのか、訓練が進むのか、実績が上がるのかといったこと は、正直言って、まだ始まってはいないのでわからないところがあります。そこについ ては、今後実績や施行状況をきっちり見た上で、議論をする必要が当然あると思いま す。 ○ 総務課長  補足的に説明いたしますが、いずれにしても、デュアル訓練を受けていただいた結 果、就職に結び付くということがいちばんのポイントだろうと思っております。そのた めに、今日説明した助成金なども用意しながら、事業主の方にもご協力いただきたいと 思っています。先ほど佐藤委員から指摘がありましたが、どのような科目で訓練を受け ていただくか、本人がキャリア・コンサルティングを受けていただいた上で、その適性 なども見ながらということも1つのポイントだろうと思っております。どのような訓練 科目でやっているかについて、いま手元にあるのは、この6月に委託訓練として始まっ たものの一覧表です。全部で194科目ぐらい始まっております。全部を紹介するわけに はいかないのですが、ざっと見た限り、やはり情報処理関係が多い。いまの社会的なニ ーズを反映しているのだろうと思いますが、その他に目につくのは、医療事務、ネイル アートのような美容関係の科目もあるようです。そのように多岐にわたっており、それ ぞれの地域の労働市場や求人などの状況を見ながら、科目設定に務めているところで す。半年、1年経って、訓練の結果の就職状況がわかりましたら、審議会などで報告さ せていただき、改善する余地があればご議論いただくことにしたいと思います。 ○ 玄田委員  先ほどの下境さんの発言の趣旨は大変よくわかります。なぜ、このような人たちのた めに助成をしなければならないのか。いちばん雇いたくない人のために、なぜ社会はお 金を出さなければならないのか。逆に言えば、このような人たちをほっておいて本当に いいのだろうか。原則は個人の負担であります。難しいと思うのは、もしこれが本当に 過度に利用されるようになると、定着困難者、3つの条件に該当しない人から、たぶん 不満の声が上がるだろうと思います。真面目に働いている自分たちや、働こうとしてい る自分たちには何の助成もなく、転職を繰り返したり、無職を続けている人間ばかりが 優遇されるのはということになると思います。ただ、それが可能であれば定着困難者、 3つに該当する人たちが実際どのぐらいいて、この人たちがどういう厳しい状況にある か、もう少しご説明があるといいと思います。たぶんこの3つの条件で考えると、数十 万人とか数百万人という段階ではないと思います。  社会の中でいまの段階では少数派であり、なおかつ非常に就業に困難のある人に対し ては社会全体がセーフティネットを引くということに関しては、合意形成できると思い ます。そういう状況にある人たちの現在の状況を、ある程度国民全体に理解してもらえ るような説明がないと、やはりなぜこの人たちばかりを優遇するのですかという声にな る危険性があると思います。これをうまくいってほしいですが、うまくいきすぎると社 会全体から非常に不満の声が上がるだろう。ただ現状からいくと、変な言い方ですが、 大きな社会的なインパクトがあるほど、これがすごく利用されることはたぶんないと思 います。まず最初の一歩としては、このぐらいが妥協点ではないかという感じはしま す。 ○ 育成支援課長  まず、どのぐらいいるかを申し上げます。これは統計資料ですが、いま15歳〜34歳の 失業者は164万人いらっしゃいます。失業期間が3カ月が67%程です。そのうち失業期 間が3カ月以上の方のうち、いわゆる定着困難者(1)、6カ月未満しか働いたことがな い人は18%程です。定着困難者(2)ということで、一定回数以上、これは一応3回離転 職を繰り返したということにすると、大体4割方です。1年以上の長期継続失業者は 33.7%程です。その中でキャリア・コンサルティングを受けた方は30%程です。大体37 万人か38万人ぐらいは母集団としては対象になるのではないかと考えています。この方 たちは非常に厳しい状況にあると我々は考えていますので、こうした方々を対象にして いろいろ手厚い支援を行っていきたいという状況です。 ○ 篠木委員  離職者の2番目の例で、有職・無職や離職になるわけですが、これは業種別、もしく は企業がまずくなったから辞めざるを得なかったのか、本人たちが勤まらないだけで、 自分の意思だけでこうなってしまったのか、そこはおわかりになりますか。 ○ 育成支援課長  数としては離職の理由は問わず、いわゆる転職をした人という形でとらえています。 ○ 篠木委員  社会の問題や企業の問題ではなく、本人の問題であるかという、そこもわからないの ですね。 ○ 育成支援課長  そうです。転職回数として理由を問わずに。 ○ 篠木委員  ただ辞めたから、その係数に載っているだけですね。 ○ 育成支援課長  はい。ですから、やはり複数回数といった場合、2回では少ないだろう、3回ぐらい は必要だろうと。場合によってはそうした理由もあるかもしれません。そういうことも ありまして、大体3回を基本にした上で、例えば30歳を過ぎると、リストラなども含め て離職回数が増えてきますので、その部分は全体の統計資料等、また実態を見た上で、 少し回数は考えていきたいと思います。 ○ 若菜会長  他にご意見はございますか。ないようですので、雇用保険法施行規則の一部を改正す る省例案要綱については、妥当であると報告をしたいと思いますがよろしいですか。特 段のご発言はございませんので、ご了承をいただいたものとして、事務局から報告文案 を配付していただき読み上げさせていただきます。 ○ 育成支援課長  「雇用保険法施行規則の一部を改正する省例案要綱について。平成16年7月26日付 け、厚生労働省発能第0726001号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記について、 本分科会は、審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。 記 標記について は妥当と認める」。以上です。 ○ 若菜会長  ただいま読み上げていただいた報告案のとおりで、よろしいですか。ご異議もないよ うですので、ただいまの内容で本日付けで労働政策審議会長宛に報告を行います。次 に、議題2、平成15年度職業能力開発施策の実施状況について、事務局から説明をお願 いします。 ○ 総務課長  お手元の資料4、平成15年度における主な職業能力開発施策の実施状況についてで す。従来、本審議会において、各年度ごとの予算が決まったタイミングで、予算の内容 についてはご説明してきたわけですが、その予算を受けて、各年度ごとにどういう事業 を実施してきたかについて今回ご報告するものです。その関係で、平成15年度、去る3 月に終了した年度について、それぞれの予算に対してどういう事業を実施したか、その 成果なり、アウトプットがいかなるものであったかという点についてご説明していきま す。  資料4を順次ご覧ください。平成15年度の予算総額は1,946億円でした。その予算に ついて、3つの柱立てで事業を実施してきたところです。最初の柱立てが、「若年者の 総合的な職業能力開発対策の推進」ということです。平成15年においても、若年者が重 要な課題であったということです。最初の○が、学校等と連携した中高生の職業体験の 促進ということで、13億円の予算でした。この事業は、最近も言われていますが、中学 生や高校生が職業に対する意識が低い。在学中からもう少し職業に関して目を開かせる 必要があるという判断から、学校等と連携して、総合的な学習の時間がカリキュラムに ありますが、その時間を活用して、中学生が、例えば自ら職業情報を集める、あるいは 職業体験を行うという活動を通して、職業に対する理解、職業観を養ってもらおうとい う事業です。平成15年度においては16都道府県、196校において実施いたしました。196 校での実績については、モデル的なケースということで冊子を作り、各県の教育委員会 なりに逆にお配りをしています。平成16年度は、対象地域を拡大し32都道府県で実施す る予定です。  2番目、学卒早期離職者、フリーターに対する職業訓練の推進については34億円の予 算です。フリーター等に対するグループカウンセリングを行い、訓練に対する動機、あ るいは職業に対する意欲を喚起するということを行ったものです。デュアル訓練と銘打 ってはいませんが、企業実習を含めて、職業訓練を実施したところです。実施状況はグ ループカウンセリングなり、事前の意欲喚起などをプレ訓練と言っていますが、プレ訓 練を3万人に対して行いました。そのうち職業訓練1万2,000人に対して実施しました。 その結果、就職率は、職能開発大学校などで訓練を受けていただいた方は75.1%の就職 率、専修学校等での委託訓練という形での訓練を受けた方は62%の就職率でした。いず れも比較的高い就職率が達成できたのではないかと考えています。平成16年度からは、 プレ訓練のすべてのコースに企業実習を盛り込むという形に、訓練を手厚くした上で、 デュアルシステムの一貫として行っています。  3番目、職業意識を高めるグループ活動等を支援する体制の整備は10億円の予算で す。これはフリーターなど、職業に関する意識が不十分な方を対象として、そういう方 たちがお互いに相談をし合ったり、ピアカウンセリングのような活動を行えるような拠 点を設けようというものです。「ヤングジョブスポット」と呼んでいますが、フリータ ーなどが多い都市部に設置して、お互いの間での情報交換なり、職業体験といったグル ープ活動をしてもらおう、という活動を支援するための場所を設けているものです。ヤ ングジョブスポットは16カ所設置しています。2頁に16カ所の地名を記載しており、東 京が2カ所、大阪が2カ所です。16カ所設置した結果、それぞれの設置時期に多少の遅 い、早いがありますが、全部を平均すると、1日当たり23名のフリーターが利用したと いうことです。平成16年度は利用者数、8万6,000人を目標にしています。  次に「私のしごと館」の運営です。運営費として24億円を平成15年度は用意しまし た。私のしごと館については、十分ご承知かと思いますが、若年者、特に中学生なり高 校生に対して仕事というものを理解させ、キャリア形成の支援を行うもので、関西の文 化学術研究都市に平成15年3月から運営を開始しています。平成15年10月に本格オープ ンということでした。その間の実績は、平成15年3月30日から平成16年3月31日までで 29万人に私のしごと館を利用していただいております。お蔭様で、利用者のアンケート などを見ても、非常に職業に対する理解が深まったという結果を得ています。しごと館 については、今後各事業のサービス利用者を年間40万人以上を目標にしています。独立 行政法人雇用・能力開発機構の中期目標の中に、利用者数40万人以上という目標を掲げ ています。  2本目の柱として、「変化に対応できる能力開発システムの構築」というものを平成 15年度は挙げています。その1つ目、キャリア・コンサルタントの養成・活用の推進は 38億円になっています。キャリア形成について相談をし、支援を行う。キャリア・コン サルタントは能力開発を進める上で重要だということです。そのキャリア・コンサルタ ントの養成をわが国においても進めようということで、民間の教育訓練機関、あるいは 職業能力開発大学校などでキャリア・コンサルタント養成のための講座を推進している ものです。養成した後のキャリア・コンサルタントについて、現実に能力開発の場面で 活躍していただこうということで、公共職業安定所への配置を進める、あるいは民間企 業での活用の促進をしているところです。また、キャリア・コンサルタントの資質の向 上を図るために、養成されたキャリア・コンサルタント等を対象にしたシンポジウム等 も開催しました。  実績については、職業能力開発大学校においては1,100名、養成講座を修了していた だいています。民間の養成講座の修了者なども併せて、平成16年3月現在で約2万人を 養成いたしました。うち公共職業安定所等の機関に1,300名のコンサルタントの配置を お願いしています。年間で150万件に及ぶ求職者等からの相談件数があったという報告 を得ています。  3頁のシンポジウムについては、本年の3月21日にキャリア・コンサルタントの全国 大会を初めて開催しました。その中で種々のプログラムを設けて、資質の向上を図って いただきました。16年度は、公的な養成施設、行政機関においては、若年者向けのキャ リア・コンサルタントを1,100名養成する予定です。なおかつ、受講者から「役に立っ た」という評価を8割以上の方から受けることを、雇用・能力開発機構の中期目標の中 で明言させていただいています。  次は労働者のキャリア形成を支援する企業の育成です。企業内におけるモデル的なキ ャリア形成システムを開発して、社会的に普及させていただいています。併せて、事業 主の方が教育訓練の内容及び目標を明記した「事業内職業能力開発計画」に基づいて行 っていただく職業能力開発の場合、助成を実施しています。先ほどデュアルシステムの 関係でもご議論いただきましたが、キャリア形成促進助成金です。120億円の予算を平 成15年度は組んでいましたが、支給金額の合計が58億円です。予算に対して半額程度の 支給実績でしたが、支給人数として36万人、支給件数として1万7,000件という実績が 上がっています。なお、平成15年度は予算と実績がやや乖離していた点がありました。 平成16年度は、予算見合いの額でキャリア形成助成金については予算を組んでいます。  民間教育訓練機関、企業、大学を活用した職業能力開発の推進については、218億円 の予算を組んでいます。これは離職者の方を対象に、公共職業訓練施設以外の民間の教 育訓練機関で、専修学校や企業への委託、大学での訓練といったものを活用し、能力開 発を進めようというものです。実施状況については、速報値ということですが40万人に 対して訓練を実施しました。うち民間の訓練機関なり、企業にお願いをした委託訓練が 32万人です。そのうちIT関連の短期訓練などが21万人程実績として挙がっています。  就職率については、公共職業訓練でじかに実施したものが68.5%、教育訓練機関など に民間への委託という形でお願いしたものが52%程度の就職実績です。主な訓練コース としては情報システム、経理事務、介護福祉などです。平成16年度は訓練計画上、25万 人を予定しています。うち民間への委託という形で17万人を予定しています。訓練の仕 上りとしての就職率は、これも中期目標の中で書いていますが、公共訓練、公共施設で 行ったものが75%以上、委託訓練という形で行ったものが60%以上の就職率を達成しよ うという目標を設定したものです。  創業サポートセンターについては、起業なり、新しい分野へ展開していこうという方 たちをサポートする意味で、創業サポートセンターを現在2カ所に設置しています。平 成14年1月に港区に1カ所、平成15年7月、大阪市に1カ所設置しています。両方併せ て相談件数として4,920件をこなしています。うち実際に創業にまで結び付いたものが 209件でした。  次に教育訓練給付制度の推進については、雇用保険の被保険者の方、あるいは被保険 者だった方が自発的に教育訓練を受けた場合、その要した費用の一部を助成しようとい うものです。現在、実施状況としては、講座の指定数、どういう訓練でもいいというわ けにはいきませんので、職業に役に立つ、能力開発に役に立つという講座を指定してい ますが、その指定講座数が1万4,368講座あります。支給件数が47万人、898億円を給付 金として支給しました。  3つ目の柱として、「職業能力の評価分析と情報提供の推進」を平成15年度は掲げて います。最初のポイントは包括的な職業能力評価制度の整備ということで、4億3,000 万円です。労働者の方が自分がどの程度の能力を持っているか評価し、その結果を求職 活動に活用していただく。これによって就職が容易になるだろうという観点で、包括的 な職業能力評価制度の整備を業界団体のご協力などにより進めております。13業種で検 討を開始していただいています。平成16年度6月になりますが、事務系職種と電機機械 器具製造業で基準が完成しました。現在も引き続き検討を進めています。  2点目の技能検定の実施についてです。技能検討制度は現在137職種について実施し ています。5頁、技能検定137職種で、平成15年度には45万人の方が受験しており、う ち18万人が合格しております。累計で661万人が受験し、296万人が検定に合格していま す。それぞれの方の技能水準の向上という点で多くの実績を上げているものと考えてい ます。  次は、ビジネス・キャリア制度、職業能力習得制度です。先ほどの技能検定がどちら かと言えばブルーカラーを対象としているのに対しホワイトカラーの労働者の職務遂行 に必要な専門的知識の内容を認定基準として体系化し、当該基準に該当する教育訓練を 大臣が認定するという制度です。さらに習得状況を確認するための認定試験も実施しま す。これによりまして、ホワイトカラーの分野の労働者も、それぞれの専門分野、職種 分野において、どの程度の能力を獲得しているかを公証しようという制度です。平成15 年度は講座の受講者数が4万8,000人、試験の受験者数が2万3,000人という実績を得て います。以上が、平成15年度の主な施策分野についての実施状況報告です。こういうも のを見ながら、キャリア形成助成金のところで申し上げたように、実績を見極めつつ、 さらに今後の施策運営、あるいは予算要求に反映していきたいと考えています。 ○ 若菜会長  ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○ 西原委員  2点お聞きします。1つは、ヤングジョブスポットは、経済産業省ではジョブカフェ ですが、中長期的な施策目標というか、最初のねらいどころはそんなに大きな差異があ るように思えないのですが、これはそれぞれ併存することの意味はどういうことなので すか。  2つ目は、キャリア形成促進助成金の支給実績が予算に対して半分程度という話です が、いわゆる支給金額の率が予算に対してかなり下回った要因について、いまどのよう に分析されていますか。 ○ キャリア形成支援室長  まず、ヤングジョブスポットとジョブカフェの件で説明します。大きな観点の違い は、ジョブカフェのほうは、啓発から職業紹介、最終的な就職まで包括的にお世話をし ていくワンストップサービスというのがポイントです。それに対して、ヤングジョブス ポットのほうは、基本的にフリーター、無業者の方々を対象としており、先ほど来何度 か話題になっていますが、若い方々の中には職業意識が非常に低い人が多く、こういっ た方々の意識を高めてもらおうということで設置しています。ということで、一部、概 念的にはダブっていますが、やはりジョブカフェの実態を見ておりますと、最終的に求 職、就職をお世話するということで、実態的には比較的意識の高い方々が多いです。ヤ ングジョブスポットのほうはやはりフリーター、離職経験が多い方が多いわけです。そ ういうことですみ分けてやっていますが、今後のジョブカフェの進み方なども見ていき まして、ヤングジョブスポットのあり方も必要に応じて見直しをしていくと考えていま す。 ○ 総務課長  キャリア形成促進助成金の実績が予算に比して低いということです。そこはご指摘の とおりですが、要因分析として、現在私どもが考えているのは、1つには実はこの給付 金が平成14年度から支給が開始された給付金で、平成15年度の場合には、新制度なりの 周知、あるいは制度を理解してもらうことが少し足りなかったと思います。平成15年度 の予算設定を要求する際には、前年度、平成14年度の実績もわかっていない段階での要 求であったわけです。その実績に応じた予算要求額の設定が、結果的にできなかったと いうことです。そういうような点から、予算要求額に対して実績が低かったということ です。  それに対して、平成16年度予算の中では実績に応じた制度の理解を進めていただくと いう、私どもの努力はもちろんですが、実績に応じた予算、近づける予算ということで 設定しております。そう分析しています。 ○ 西原委員  ヤングジョブスポットとジョブカフェの関係は、本当に意識の高い人というのは、例 えばハローワークということになるわけで、こういった形で縦割り的な、省庁ごとにな って、十分整理されていないような感じがします。本当にその施策に対してうまく効果 が上がるような形であれば、これは省庁の垣根を取ってある程度推進する必要があるの ではないか。  もう1つは、キャリア形成促進助成金の関係ですが、それは申請の推移が高まってき てて、もう少し周知徹底し、このトレンドでいけばこのぐらいになるというのであれば いいのですが、そいう中で突然130億円というのは。取りあえず1回実績が120億円出て いて、周知徹底が足りないから、やはり要因の部分を分析して、それに対応する背景の 部分の分析がきちんとあった上で、予算を立てていかなければ、我々から見るとラフの ような感じがしますので、評価の部分といいますか、そこはシビアにもっとやるべきで はないかという感じがします。 ○ 総務課長  さらに補足的にご説明しますと、平成14年度と平成15年度を比較すると、キャリア形 成促進助成金の支給実績なり、件数は伸びてはいますが、平成15年度はそれでも予算に は届かなかったという状況です。トレンド的に利用が進んでいますので、さらに広報な ど周知には努めたい。場合によっては、その制度自体ももう少し使いやすくなるよう な、あるいは実績が上がるようなことも必要だと考えております。  ジョブカフェとヤングジョブスポット、それからハローワークもありますが、ジョブ カフェの事業は基本的に都道府県がやっていますが、垣根を設けて縦割りにならないよ うに留意はしております。現実にはいくつかの県で、ジョブカフェ、ヤングジョブスポ ット、ハローワークとで、利用者の方々がうまくそれぞれの施設を段階的に進んでいけ るような連携もしていますので、縦割りというご批判のないように運営には努めたいと 思います。 ○ 西原委員  キャリア形成促進助成金の関係は、事業所内における能力開発ということで、非常に 意義が高い活動であると思いますので、逆に1つの大きな目玉でもあります。それが本 当に実行につながるような形で分析、周知徹底であれば周知徹底の部分の活動に対し て、予算措置をきちんと取った上でやるとか、これが本当に有効に活用できる形でやっ ていただきたいと思います。 ○ 総務課長  そこは配慮していきたいと思います。数字を申していませんでしたが、平成15年度の 実績61億に対して、平成16年度は約77億の予算額にしています。 ○ 玄田委員  先ほど西原委員がおっしゃったことに関連すれば、ハローワークには無理だと思いま す。ジョブカフェとヤングジョブスポットの役割は全く違い、もっと言えば先ほど出た 定着困難者のいつくかの累計はハローワークにはいきません。ジョブカフェでギリギリ です。来るとすればヤングジョブスポットです。そういう面でいくと、先ほどの助成金 をどこかでうまく、3日会社に行って、1日実務訓練とか、1日ヤングジョブスポット に行くようなことをやらないと、たぶん現実には難しいと思います。それが本当に機能 するためには、ジョブカフェもそうですが、ヤングジョブスポットもそれぞれ機能しな いと難しいので、ハローワークに一元化することができればいいですが、現実には無理 だと思います。  今年は金額は少ないですが、とても評価しているのは、いちばん上の13億円の「中高 生に対する仕事ふれあい活動支援事業」というもので、私の理解する限り、教育委員会 と労働局の人が一緒に会って話をしたという、非常に画期的なもので、こういうことが 増えていかないと、たぶん困るだろうと思います。それまで同じ合同庁舎にいながら、 労働局と教育委員会の人たちが一緒に話をするなんていうことはほとんどないのです。 こういう事がどんどん増えていかないとうまくいかないのです。この中身についてはど のぐらいうまくいくかわかりませんが、結局、この金額がそれぞれ何億円で、どことど こが連携しているか描けるのがいちばんいいと思います。ハローワーク、ヤングジョブ スポット、ジョブカフェを別個に縦割りにしているのではないか、という印象を当然持 つと思います。どこのお金が、どこにどうつながっているかを1枚の絵に描くのはとて も難しいと思いますが、うまく描かないと普通わかりませんから、そういう工夫は必要 だと思います。そういう意味では、2,000億円近くのうち、どのぐらい連携のためにお 金が使われているかがいちばん知りたいところです。  そういう意味ではジョブカフェの画期的なところは、もしかしたら民間の企業とハロ ーワークが一緒にお酒を飲んでいるというところです。それはとても大事で、やはりみ んな連携が大事だと言いますが、それならば連携って一体何なのか、というところに踏 み込んでいないので現実にはそういうことができる場を作るしかない。ある種、社会実 験としてこのぐらいお金がかかるのは、いまのところしようがないかなと思います。今 日は随分行政寄りの発言をしてしまいました。教育訓練900億円というのは、改めて見 るとすごいですね。半分ですものね。 ○ 下境(小嶋委員代理)  私もその1頁のいちばん上の「中高生の職業体験の促進」というのは大変素晴らしい 制度だと思います。16都道府県の選定方法はどうやったかわかりませんが、次に32に拡 大するというのは、16はもうすでにやったのだから、その他の県を優先するのか、それ とも継続性のために16を主体にして、16の都道府県の196校がまたやりたいといった場 合には、それを優先してプラスアルファにするのか、その辺を知りたいのです。 ○ 総務課長  16都道府県を引き続きやった上で、さらに新たな16県を加えて32県ということになり ます。 ○ 下境(小嶋委員代理)  新たな県は16しかないのですね。 ○ 総務課長  はい。 ○ 玄田委員  この希望はたくさんあったのですか。学校側はあまり好まないのではないかと思うの ですが。 ○ 総務課長  おっしゃるように、現実ではなかなか県側、あるいは学校側と連携するのは苦労して いるようです。受けた生徒は評判がいいようですが、教育委員会側なり、学校側との連 携には苦労して、対象校を選定するのに苦労しているのが現状です。 ○ 下境(小嶋委員代理)  その拡大の方向が、16都道府県プラスになるというのは、継続するというか、先生方 の考え方と、我々の考え方に食い違いがある。というのは、まず学校は教育をすること が先決で、職業には関心がないというか、あまり力を入れていないのではないかという 印象を私は受けたのです。そうした中で、これを希望するといった所が本当にどのぐら いなのか。たくさんあれば32に拡大するのは楽なのでしょうが、逆なことが起こると、 32に拡大するのは難しいという結果が出てしまうと思ったのですが、その辺の見込みは どうですか。 ○ 総務課長  32都道府県の拡大というのは、イージーかどうかは別にして、達成はできるようで す。本来この事業は、いわばモデル的にやっているもので、いろいろな困難なり、セッ ティングのアレンジの難しさはあるにしても、モデル的にやってみて、その結果非常に いいものだということを各県、各学校に広めたい。いいものだ、非常に役に立つという ことが広まれば、あとはおのずと自立的に広がっていくことを目指している事業です。 平成15年度分についても、事例集みたいなものを作り、教育委員会などにも配付してお りますし、それが広まり、定着してもらいたいと思っているわけです。 ○ 玄田委員  ちょっと尻切れ蜻蛉みたいになったので、教育訓練給付制度についてダメもとで要望 して、雇用保険業務統計を再集計して、教育訓練給付金制度利用状況がどう影響を与え たかというのをやはり出してほしいのです。この制度を利用することによって賃金がど のぐらい上がったか。経験者と非経験者で定着率がどう違う。求職期間がどう変わって きたか。1万5,000講座近くのうち、比較的うまく賃金上昇や定着に影響を与える講座 と、そうでない講座がどうあるか、そろそろ結果を出していかないと。金額の大きさの 割に効果はどうなのかというのは、定着したからもう必要ないということになるかもし れませんが、やはり政策評価としてこのぐらいの規模の金額を使うことがどれだけ影響 があったのかということです。雇用保険業務統計を使う以外は手がないので、それを何 とか活用して将来的にこの効果がどれぐらいあるかを出していかないといけないのでは ないでしょうか。やはり、七五三転職みたいに雇用保険業務統計というのは非常に重要 な情報源であるし、その結果を開示することも政策の重要な仕事だと思うのです。それ は是非中期的課題ぐらいにして取組を考えていただきたいと思います。 ○ 総務課長  承っておきます。 ○ 長谷川委員  先ほど玄田委員から、「ハローワークではそんなことはできない」というお話があり ましたが、そういう意味で言ったのではなく、仕事を探そうと思ったときは市販されて いる雑誌などで探したり、もう1つはハローワークだと思うのです。そこが一般的だと 思います。いまニートと言われている人たちはそこにも行かない。自分の経験から言う と、弟が過労死に近い状況になったときに、さて、どこからどういうお金が来るのかと か、それに対してどう相談しようかとすごく迷って、ハローワークに行ったときに、ま ず労働基準監督署に行って相談しなさいと言われたのですが、そこで、「それは違いま すね」と言われたり、結構何カ所か、たらい回しにされたというか、自分で歩いたので す。  やはり人の行動というのは、仕事を探そうと思ったときに、どこがあるのかなと、そ ういう所に行くのだと思うのです。そこで訓練に対して、コンサルティングしてくれる 人がいるとか、いろいろな情報も集まる。私も縦でハローワークでやれと言うのではな く、その場所の意味で、そういう所にワンストップサービスでできればと思います。  私たちはたまたまこういう審議会に出ていますので、これもある、あれもあるという ことで知識として持っているわけですが、普通の人はあの雑誌とかこの雑誌、あとハロ ーワークだと思うのです。ハローワークもなかなか複雑で、1階は職業を探す所、2階 が雇用保険になっていますが、これも行かなければわからないことで、私もハローワー クに行ってどこにどうやって行けばいいのかわからなかった経験があります。  行政があちこちではなく、どんな人でも仕事を探している、自分は訓練を受けたいと 思うのだが、どういう所に行けばいいのだろうか、お金がないのだけれどもどうすれば いいのだろうか、という人のために1つの所でサービスとしてやってほしい。それは県 の仕事だからそっちに行きなさいとか、これは市の仕事だから市役所に行きなさいと か、これはハローワークでしょうということではなく、若者の所にターゲットを当てる とすれば、ワンストップサービスみたいなものが必要なのではないかという意味です。 これは経済産業省ですね、これは文科省ですね、これは厚労省ですね、ではなく、そこ はお互いにお金を持ち出しながらサービスをやることは必要なのではないか。行政サー ビスのあり方としてワンストップサービスは必要なのではないか。  先ほど玄田委員が非常に評価した13億円です。若者のさまざまな能力開発が、新聞や マスコミで評価されていますが、よくわからないのは、196校で13億円というのは、1 校当たりどのぐらいで、そもそも何に使うのかと思うのです。そうするともっと拡大し てもいいのだろうと思っています。いまこの訓練がいちばん成功しているのではないか と言われていますが、それはもっとメディアを通しながら、それから学校、文科省を通 しながら、厚労省が施策を誘導していくことも必要なのではないか。学校の先生は大学 を卒業して、ずっと学校の中にいるわけです。ハローワークの本を見て、「世の中には こんな職業があったのか」と思ったと思うのです。それは私の従兄弟たちが教師をして いるのでわかるわけで、やはり先生たちはそこは苦労しているわけで、企業や労働組合 も協力すればいいと思いますが、厚労省も、もう少しかかわり方を強めながら、これを 拡大していくことは非常に重要なのではないかと思いますので、私はもっと拡大するこ とと、13億円でいいのかなと。わが国の政府はこれからこの問題が重要だと言っている 割には、来年度はもっと増やすことが必要なのではないかと思います。  いろいろな施策が行われていて、そこに助成金や補助金が入っているのですが、本当 にその効果は出ているのか。私もいただいて訓練をしたことがあるのですが、本当に効 果があったのか疑わしいところがあるので、もう少し勤労者から見て、やはりこういう 制度が実に役立っていることを見える形で示すことが必要ですし、就職率がよくないも のに対して、どうしてなのかという分析もしてほしいと思います。 ○ キャリア形成支援室長  先ほどのワンストップサービスの考え方は、まさにそのとおりだと思います。そうい う考え方でジョブカフェが構想され設置されているわけです。経済産業省のみならず、 民間も参画し、厚生労働省の中でも安定局、能力開発局、それぞれ協力して進めている ところです。  ただ長谷川委員にご理解を賜りたいのは、実はハローワーク、あるいはヤングワーク プラザ、ヤングハローワークが若者のためのハローワークとして設置されていますが、 ヤングジョブスポットに来ている若者の中には、こういった所ですら、「敷居が高い。 なかなか行けなかった。」、「ヤングジョブスポットができて、同じ世代の人たちと自 由に話ができて、意見交換ができる場ができてよかった。」、「安堵した。」、こうい うことを言っている若者もおります。先ほど西原委員が意識の高い、低いとおっしゃっ たのは、そういったところを指しているので、ヤングジョブスポットは、必ずしも職業 意識の高くない方々が利用されていることはご理解いただきたいと思います。いまのま まのヤングジョブスポットでいいのかどうか、それはジョブカフェの動向も踏まえなが ら、意見として見直すべきところは大きく見直しをしていきたいと考えています。是非 ご理解をいただきたいと思います。 ○ 玄田委員  細かいことですが、ジョブカフェ分の20数億円はどこに入っているのですか。 ○ 総務課長  入っていないです。 ○ 玄田委員  これは職業能力開発と別だからですか。 ○ 総務課長  職業能力開発局としては、ジョブカフェに対してキャリア・コンサルタントを派遣す る場合はあるのですが、それは個別には出てきていない、全体予算の中に紛れていま す。ジョブカフェ自体に能力開発局の予算が流れる仕組みにはなっていないのです。 ○ 鈴木委員  キャリア形成促進助成金は、雇用保険3事業から出るものですよね。先ほども要因分 析の話がありましたが、制度が変わって、より使いやすくする、中身を見直すというこ とでいったのですが、こういうような結果を見ると、その辺は不足の部分もあるのでは ないか、もう少し考えなければいけない点もあるのではないかと思いますので、この点 は十分に考えていただきたいと思います。 ○ 総務課長  それはよく考えたいと思います。 ○ 中村(紀)委員  創業サポートセンターの開設で4億円ということでしたが、どういった方々がご指導 をされているのかが1つの質問です。2つ目は、創業サポートというのは経済産業省と リンクしてしかるべきだと思いますが、その辺のリンクはきちんとされていて、欲しい 情報はワンストップでそこに行けば入るのか。もしくは、それはこっちへ行ってくださ い、あっちへ行ってくださいのたらい回しがそこで行われているのか。 ○ 総務課長  創業サポートセンターは、私ども能力開発行政は、会社なりを起こすに当たって、そ れに必要な能力開発や新しい製品を作るために必要な能力開発に特に力を入れてご支援 しましょう、という趣旨で創業サポートセンターは作っています。ですから、そういう 点の訓練というか、指導が中心なのですが、もちろん創業するために他にいろいろな条 件があります。例えば資金の確保や会計上の手続の問題もありますので、そういうもの はうちでは知らないとは言っているのではなく、それもちゃんと1つの講座というか、 セミナーの情報提供の場は設けていますので、創業サポートセンターにおいでいただけ れば、取りあえずひと通りの情報は持って帰っていただける仕組みにはなっています。  ただ、都道府県なども創業のためのいろいろなツールを持っていますし、あるいは国 民金融公庫や経済産業省が持っているツールのご紹介は当然しております。繰返しにな りますが、他の情報はあっちへ行けということはしていません。 ○ 中村(紀)委員  それはどなたが指導されているのですか。 ○ 総務課長  職業能力開発に関する部分は、雇用能力開発機構の専門家がやって来て、ここの場所 に来て説明をしています。その他の会計的な面、あるいは資金確保などの面では、外部 の専門家にお願いして、講師として来て説明をしていただいています。 ○ 長谷川委員  今年の6月のILO総会で、ILOの155号勧告が決まり、155号勧告で能力評価シス テムの他に、能力開発についての団体交渉や生涯の全体の全労働者に対しての能力開発 の必要性などについて謳われています。今日、唐突に出したわけですが、155号勧告に 対して、わが国の政府としてどのような展開をしていくのか。本日困難でしたら、次回 までにお考えを聞かせていただければと思います。私どもは非常に評価しています。 ○ 総務課長  その勧告は、今年の総会で成立したわけですが、政府としてその内容についてはもっ ともな勧告であったと思っております。細かい文言上、多少疑義がないわけではないの ですが、そういうように評価しております。 ○ 若菜会長  それでは特にご意見がなければ、もう1つの議題が残っていますので次に進みたいと 思います。議題3の平成16年度勤労青少年福祉行政運営方針の策定等について事務局か ら説明をお願いします。 ○ キャリア形成支援室長  勤労青少年福祉法という法律がございまして、これに基づき5カ年計画、勤労青少年 福祉行政基本方針が作られています。平成13年度を最初として、第7次方針が作られて います。この方針に基づき、毎年、行政運営方針を出しています。今回、平成16年度の 勤労青少年福祉行政運営方針を、前回の勤青部会でお諮りし、それを踏まえて新しい方 針を出していますのでご報告します。  勤労青少年福祉行政運営方針の中では、国、地方公共団体、事業主等々がそれぞれ若 年労働者のために職業指導を行うとか、訓練に努める、余暇活動の推進といったことに ついて書かれています。過去、6次にわたる計画の中で、主として余暇活動の適切な過 ごし方、そういったことについて支援、指導していく、この辺りが勤労青少年福祉の重 点課題としてとらえてきたところです。  いま若者をめぐる問題として、いちばん大きな問題は、「適性なキャリアを積み上げ ていく。これをいかに支援していくか。」ということではないかと考えられています。 つまり、若年労働者、あるいは若年労働者になるべき若者に対して、適切にキャリア形 成ができるような支援をやっていこうではないか。これこそがいま求められている若年 者に対する福祉ではないかという考え方に立ってきています。そういった観点から、種 々の施策、予算上の施策なども見直してきていますが、いま申し上げた観点を明確に打 ち出すことで、平成16年度の勤労青少年福祉行政方針というものを策定してお示しして います。  資料5の第1に、いま申し上げた趣旨が書いてあります。実施事項として、1職業生 活の充実、2国際交流の促進、ワーキング・ホリデー制度などについて書いてありま す。3番目に、若年者支援のための拠点としての勤労青少年ホーム、指導体制、こうい ったことについて私どもの原案を示して、3月10日勤青部会にお諮りしたところです。  そこでご議論いただいた主なポイントは4頁にまとめてあります。基本的に私どもの 方向をご支持いただき、基本的な方向としては、キャリア形成支援に重点を置くことに ついて、これは適正である、勤労青少年ホームについても、私どもはこの中でキャリア ・コンサルティング技術を指導員の方々に身につけていただくように計らっていきたい ということについても、これは適正であるというご判断をいただいています。もう1点 追加してご意見があったのは、勤労青少年ホームの最初の点ですが、従来の勤労青少年 ホームの活動は余暇活動が中心であったかもしれませんが、これをうまく活用すれば、 若年者の社会参加を促すきっかけとして十分使えるのではないか。そういった観点から も、こういった取組を一概にやめる、やめる、ではなく、継続していったらどうかとい うご指摘がございました。私どもはそういった面を踏まえて、平成16年度の施策、平成 17年度施策と展開していこうと思います。  5頁のワーキング・ホリデー制度に関しても、これも勤労青少年の海外での適正の余 暇活動を推進するという観点でしたが、むしろ、海外体験を通じたキャリア形成支援と して位置付ける、という考え方を是としていただきました。さらに突っ込んだ話とし て、ワーキングホリデー制度を利用した人については、計画を立てるなどして、もっと 国として強力に推進していくべきではないかといったご指摘がありました。  若者全般に働き方のルール、労働法の基本的な知識などが十分浸透していない。賃金 の問題、労働時間の問題に対する権利、義務といったことをもう少し周知していくよう な意味での指導、援助は必要ではないかというご指摘をいただきましたので、そういっ たことを踏まえて、若干の修正を加えて、資料5に示したような運営方針を各都道府県 を通じて、市町村にお示ししているところです。 ○ 若菜会長  時間がなくなりまして申し訳ないのですが、ご質問、ご意見がありましたらお願いし ます。 ○ 長谷川委員  資料5の1頁の(1)の「また」のところで、「また勤労青少年ホーム指導員が若年 者に対して云々」と、質の向上が、ここで謳われていますが、私もよく書いていただい たと思っています。是非、勤労者青年ホームの指導員になることが「しまった」とか、 そういうことにならないように、ここに行ったら、「僕は、私はここで一生懸命若者の ために頑張れる」という、意欲をみんなが持って、こういうホームの指導員になれるよ うなものを、是非行政の中で働かせていただきたいと思います。耳が痛くて嫌かもしれ ませんが、一言申し上げました。 ○ 若菜会長  他にご質問、ご意見はありますか。特にないようでしたら、本日の議事はこれで終わ りにします。議事録について、本日の署名委員として小栗委員と篠木委員にお願いしま す。次回の分科会の日程は未定ですので、おって連絡いたします。本日はどうもありが とうございました。 紹介先  厚生労働省職業能力開発局 総務課 総括係 内線(5738)