04/07/14 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第14回議事録    社会保障審議会福祉部会 第14回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年7月14日(水)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 5階共用第7会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、岡部委員、京極委員、後藤委員、      鈴木委員、田中委員、根本委員、布川委員、八田委員、松浦委員 議題  :(1)母子加算の在り方について      (2) その他 (岩田委員長)  それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第14回「社会保障審議会福祉部会  生活保護制度の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。  大変お暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。もう大分、議論が 進んでまいりました。タイムリミットもだんだん近づいてまいりましたが、積み残しの 議題もまだ幾つかあります。本日もう一つ新しいと言いますか、前半に議論を少しペン ディングにした部分についての御提案がございますので、今日も時間いっぱい御議論い ただきまして、なるべく実り多い成果につなげたいというふうに思います。どうぞよろ しくお願いします。  それでは、事務局から、本日の委員の出席状況及び資料について、御説明いただきま す。 (事務局)  本日の委員の出席状況でございますが、全員出席となっております。事務局ですが、 災害救助対策室長の中井川は所用により席を外しております。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。  上から順番に  「議事次第」  「座席表」  資料1「説明資料」  資料2「大川委員提出資料」。  資料3「岡部委員提出資料」。  資料4「布川委員提出資料」。  第13回議事録(案) となっております。  資料は、以上でございます。お手元に以上の資料がない場合には、事務局に御連絡い ただければ、別途お渡しいたします。  なお、議事録につきましては、これから各委員の御確認をいただくために、委員のみ の配付とさせていただきます。  以上でございます。 (岩田委員長)  それでは、ただいまの議事次第に沿って進めたいと思います。  本日の議事である母子加算につきましては、前半の議論のときに老齢加算と並びまし て議論したところでございます。そのときに母子加算については、母子世帯全体の実体 や母子に対する他の所得保障、あるいは福祉サービスの施策全体の状況との関係で、も う少し慎重に議論した方がいいということで留めております。そこで、この後半の議論 の最後にその点について、事務局の方から少し突っ込んだ資料を用意していただいてお りますので、それについての御説明をいただきまして、議論をしたいと思います。  前回、級地の御説明がありまして、皆様方はお手元に前回の資料があると思います が、それについても全然議論しておりませんので、この級地の問題と母子加算の問題を まず先に議論したいと思います。その後、今日新しい御提案もあるようですし、労働能 力の活用問題、あるいは保護施設の問題等、幾つか議論がちょっと中途半端になってい る点もございますので、時間のある限り、それらの議論をしたいと思います。  それでは、まず事務局より、御説明をお願いいたします。 (岡田保護課長より資料1「説明資料」に基づいて説明) (岩田委員長)  どうもありがとうございました。  それでは、お手元の前回の資料にございます級地の問題と今の母子加算の問題は、生 活保護水準について議論した前半の議論に関連しています。前半の議論のときに、すで にかなり根本的な議論もいたしました。水準均衡方式という現行の方式を前提にして、 その均衡がなされているかを検証いたしました。級地の問題は、若干御報告はしていた だきましたが、具体的な検証はせずに、級地をどこかでそろえて、級地問題はこちらに 置いた議論でこれまで進んだということになります。  前回の御報告にありましたように、生活保護制度が想定しているような格差が現実に どの程度あるかを検証した資料が前回出ております。いろいろ細かいわけですが、例え ば、特に第2類費の公共料金のような光熱水費、保健医療については比較的地域格差が 小さく、生活保護の格差の方が大きくなっています。全体的に生活扶助に相当する費用 は地域間格差が縮小する傾向にあり、住居費等はかなりまだ地域間格差があるという御 指摘があったと思いますが、いかがでしょうか。  根本委員、どうぞ。 (根本委員)  級地あるいは生活保護基準における地域差という観点で見た場合に、事務局は随分御 苦労されてこの資料を作られたのだろうと思いますが、一般世帯における消費支出に平 準化傾向が見られる中で、現行の生活保護の最大格差22.5%というのは大きすぎるので はないか、とはっきり言えると思います。今委員長が御指摘のとおり住宅費や教養娯楽 費等には相変わらず格差がありますが、このような費目については、例えば、僻地・離 島のように使いたくても使えないような状況のあるときには、当然そういうふうな状態 が出てくるのは明らかです。そういう部分は別途置いて対応することといたしまして も、今の22.5という格差は大きいのではないかと考えます。  また一方、国民の一般的な消費生活圏域が拡大してきておりますし、例えば、通信販 売などに見られますように、消費については全国単位ないしは非常に広い圏域で営まれ る中で、現行の市町村という単位でいいのかという問題も出てくるのかもしれないとこ ろであります。  一方で、この級地というのは、市町村に一種の格付けをするという何らかの政策的な 意味合いみたいなものがあり、その社会的、地位的な部分での悩ましさみたいなものが あるという状況もあると思います。  そういう中で、国が市町村を単位としてある種一方的な形でランク付けをするのでは なく、もう少し緩やかに国がある程度の標準を定める。そして、場合によっては現行 22.5%の格差を、例えば、今の中間値くらいのところに標準値を定めて、プラスマイナ ス10%であるとか、厳密に言えば11コンマ何がしということになるのでしょうが、そう いうような形で県などと協議していき、決定をしていくのはどうか。もちろん、決定す るのは厚生労働大臣でしょうが、協議しながら決定していくという手法もあり得るのか なと思います。  あともう一つ級地の問題と併せて、地域差のある基準として県を単位としている冬期 加算もあるわけですが、いろいろと矛盾と申しますか話題の多い加算でもあります。そ ういう地域差の問題を含むほかの基準についても併せて一定の方向性で見直しを検討す る必要があると思います。ただいずれにいたしましても委員長が言われましたように、 この級地というのは非常に日常的な課題と申しますか、日々の生活に直結する問題でも あります。市町村合併がある程度落ち着いた段階で、より直近のデータでできるだけき め細かい頻度できちんと検証していき、なおかつ、生活保護から脱却する方の生活によ り合った形での基準設定が大事かなと思います。 (岩田委員長)  京極委員、どうぞ。 (京極委員)  前回休みましたので、級地の議論がかなりされたと思いますが、一言述べます。介護 保険施行時に介護報酬の単価について、若干地域差がありますので、基準をどうするか が問題となりました。介護保険は市町村単位ですので、生活保護の級地同様市町村ごと の差がなじむという意見もあったし、他方で給与という点では国家公務員のその差もあ るわけで、たしか結論的には国家公務員の方を取ったような気がします。この辺、国の 施策においても、級地に相当する地域差がいろいろな制度であると思いますので、横並 びでほかにあるかどうかわかりませんが幾つか比較してみて、現在の段階で何が妥当な のか。これまで市町村ごとの級地だったからこれを参考にするのがいいのか、それとも もう少し全体的に他の制度と比較してそういう地域差みたいのを標準化することをした 方がいいような気もいたしますので、ちょっと調べていただきたい。  今、根本委員から出ました冬期加算について、国家公務員も冬期加算というか燃料手 当みたいものは北海道など寒冷地にはあるのですが、北海道から国立大学を辞めてこち らに来ますと、給料が相当減ります。実際確かに北海道ではストーブをたいています が、東京その他の地域においても冷房あるいは暖房を使っており、果たしてそれほど戦 後のある時期までのような差が現在もあるかどうかというのを少し検証する必要があり ます。公務員の方も問題ではないかという気もいたしますので、実態に併せて少し調べ てみる必要があるのではないかと思っています。 (岩田委員長)  八田委員、どうぞ。 (八田委員)  この級地については、2つ問題があると思います。一つはそもそも地域によって差を 付けるべきかどうか、もう一つは付けるべきだとしたら、市町村単位でやるのがいいの かどうかということです。  ずっと前にお話ししたことがあると思いますが、戦後、アメリカで各州まるっきり違 った生活保護水準になったために、南部のゲットーにいた黒人の人たちが、どんどん東 部に移住してきました。そして、それまで貧困というのは実際に国全体としてあったの に、それが目の前に現れてきた。そして、東部に移って来たから東部で生活保護を改善 すると、ますます人々が移ってくる。そういう現象がありました。そういうことをかん がみると、基本的に人々は、生活保護に反応して移動し得ると想定すべきだと思いま す。  そうなると、生活費が高いところにどんどん移住を促進するようなシステムというの は望ましくない。社会全体の観点からしますと、生活費が安いところで十分な生活保護 を支給できるという仕組みの方が、生活費が高いところで抱えるよりは望ましいと思い ます。とは言え、生活保護費を全国一律にしてしまい地方への移住を促進して全体の費 用を安くするなどということは、即座にはできません。しかし、少なくとも今のような 大きな差は縮めるべきではないかと考えます。そして、実際の生活費に比べると、東京 には若干きつく、地方には若干甘くというシステムにすると、財政的には平均的な生活 保護受給者にとって高い給付を可能にするような措置だろうと思います。それが第一点 目です。  第二点目は、現在地域間を超えて移住可能であるだけではなく、同じ都市圏の中で移 動するということは非常に簡単で、今後ますます移動しやすくなると思います。例え ば、武蔵野市で介護がいいとなると、中高所得者層がどんどん武蔵野市に住み着く現象 が起きています。それに相当することが低所得者層にも起こり得ますから、当然、少な くとも一つの都市圏の中では扶助を均等にすべきではないかと思います。  では、都市圏の概念として何を使ったらいいのかということですが、アメリカでは長 いこと、SMSAという統計的な概念が使われてきました。日本でそれに該当するもの はこれまでなかったのですが、応用地域学会で東大の金本先生を中心にそういう非常に スタンダーライズされた地域というものが現在確定しています。これは、どのくらいの 通勤の頻度かなどを基準にして地域割りをしたものです。そこで割り出したデータを使 うことが可能ではないかと思います。そのような都市圏以外のところは、県別のように かなり広い範囲均等な級地にすることが、移住とか移動のことを考えると必要なのでは ないかと思います。 (岩田委員長)  ありがとうございました。そのほか、この問題について、御意見ございますでしょう か。  大川委員、どうぞ。 (大川委員)  前回の資料を読ませていただいて、そもそも級地基準がどういう数値を使って決めら れているかがはっきりしていないと思いました。前回いただいた資料も級地に格差があ るということについての説明としてはよくわかったのですが、どうして何県何町が2級 地の2で何県何市が2級地の1なのかが、我々も含めて一般の国民にとって非常にわか りにくい面があります。これについて、何らかのオープンなデータに基づき裁量があま り入らない形で級地を決めていくことが可能なのかどうか、是非検討する必要があると 思っています。  もう一つは、地域の問題ですが、実は私、先週、離島・僻地に行きました。そこは船 の欠航が当たり前のところで、人口200 人ぐらいの規模の島ですが、私どものような観 光客が時には100 人単位で来ることがあって、その場合、船が来ないと本当に食べ物が なくなってしまいます。そういう状況がごく日常的に起きていて、特に冬場は当たり前 になるそうです。あるいは、北海道とか、やはり寒冷地の暖房にかかる経費というの は、私たちのように東京都内に住んでいる者の想像を超えるものがありまして、石炭を 毎年秋になると大量に裏の倉庫に買い込んでストーブに当てるそうです。石油も買い置 きをするそうです。そのようなかなりの工夫があると思います。  そういった工夫が通常の経済生活をしている人にとっては、ある程度の貯金であると か、いろいろな社会的な環境の中で維持できるということがあると思うのですが、やは りそういった、船が来ないとか暖房費がものすごくかかるということは、低所得者に一 番直撃します。したがって、私は、生活保護制度において、級地という形でその地域差 をある程度勘案していることは、それなりに合理性があるだろうと思います。あと、問 題はそれが適切かということと、更に言えば、その基準が誰しもわかりやすいものにな っているかどうかです。そんな簡単に決められないというのはよくわかるのですが、是 非考慮の中に入れていただきたいというのが、私の意見です。 (岩田委員長)  そのほか、ございますか。  どうぞ。 (八田委員)  今の、差を付けなくてはいけないということは、ある程度必要なのはわかります。し かし、実際の生活費そのものの差を生活保護費に付けてはまずいと思います。つまり、 離島や東京からもっと安いところに移住していただくインセンティブを与える必要があ ると思います。べったりそこに居りたくなるというようなことをしてはまずいと考えま す。 (岩田委員長)  移動の問題は、少しこれと話がそれますが、以前に田中委員がおっしゃった、保護施 設やそのほかの住宅の条件が移動をむしろ促進する場合があって、この問題はすごく大 きいというふうに思います。ただ、そのことと級地とは、またちょっと違うとは思うの ですが、いかがでしょうか。級地問題に関しては、この御提出いただいている資料です と、全体的に今の最大格差22.5%というのは、いかにも少し大き過ぎると。そして、全 体的な消費生活の環境というのが非常に大きく変化しているということを前提にして、 しかし、根本的に言えば、地域格差を設けるというのはどういうことか、また、仮に設 けたとして、どういう地域の考え方をすると、一番合理的な地域設定になるのかという ことを含めて、この問題は、生活保護基準の合理性を常に検証するというような御提案 が前にちょっとあったと思うのですが、もし格差を設けるということになると同じよう に一定の期間で常に検証すべきです。そうすれば、八田委員がおっしゃったように、何 かある設定によって人為的な移動の阻止みたいなものが起こっているのではないかとい うことも少し検証できるかと思いますし、それが級地のような形であった方がいいの か、それとも、部分的に加算のような形であった方がいいのかという議論もあり得ると 思います。  この委員会で今、どちらがいいかということを議論するには、余りに時間が足りませ んし、やや専門的な知識やデータ操作が恐らく必要になると思います。保護基準委員会 のようなものが常設あるいは一定の間隔で招集され、そこでいろんなデータをきちんと 比較して、さっき京極委員がおっしゃったように同じ地域格差を設けているほかの制度 も比較検討しながら、何が一番適切かを検討する場を設けてはどうかという提案を、こ の委員会ではしておく形ではいかがでしょうか。  それはもちろん、各都道府県、市町村の方も交えて、その実態をよく反映して、齟齬 のないような形にしていく。したがって、中間の取りまとめのときにどの辺まで表現し たか忘れてしまいましたが、生活扶助水準についてのきちんとした定期的な検証も、そ ういう場で行うことにしてはどうかと思います。水準については、何となく日常生活に おける実感が大変大きく、そこから高いとか低いとかという議論をするわけです。その ことは決して間違っているとは思いませんが、やはりそれに対して、こうした制度は、 常にきちんとした検証を踏まえて、妥当だとか、あるいはこれを変えようとかいうよう な方向で持って行くというふうにしなければなりません。何となく高いから下げよう、 あるいは、低いから上げようというわけにはちょっといかないと思いますので、そうし た場を設けるという提案をこの専門委員会でするということでいかがでしょうか。恐ら く今の御意見はそういう意見だったと思いますので、この級地問題については、そのよ うな方向で提案していくことにさせていただきたいと思います。                (「はい」と声あり) (岩田委員長)  ありがとうございました。  それでは、続いて、母子加算の方に移ります。これは母子世帯だけでなくて、生活保 護の場合は先ほどの御説明にもありましたように、どちらか一方が欠けている、ないし は両親ともいない子供を、例えば、おばあさんが養育しているとか、おばさんが養育し ているとか、おじさんが養育しているとか、そういうケースも無論入ってまいります。 生活保護の場合は、いろいろな事情でいろいろな世帯類型で生活するということが出て まいりますので、そうした、むしろ両親が揃っていない世帯で子を養育している場合の 加算として、ずっと置かれてきたわけです。  どうぞ、御意見いただきたいと思います。  大川委員、どうぞ。 (大川委員)  今までの母子加算については、いろいろ事務局に御説明いたただきました。今までの 論議の中でも出ておりましたが、その比較の方法について、1つは母子加算が、今話が ありましたが、いわゆる母子だけに限らず、シングルペアレントあるいは、その祖父母 養育も含めて対象として設定されている中で、単純に母子世帯だけの比較をした上で、 その必要性の論議をしてしまっていいのだろうかということ。  それと、統計的な話は余り詳しくないのですが、一般世帯の比較の中には、確か生活 保護世帯がかなり含まれている。そうすると、当然一般世帯の水準が相対として下がる 可能性があるので、そことの比較においてもどうなのか。だから、そういった意味で は、むしろ水準均衡方式の考え方がもし妥当であるという整理であれば、母子加算の廃 止というよりも、その一般のシングルペアレント世帯の水準と今の母子加算も含めた保 護世帯の水準の均衡が保てるかどうかという点で検証すべきなのかと思っています。  そういった意味でいくと、母子加算の廃止というのはちょっと違うのではないか。母 子加算の額が適切かどうか、あるいは母子世帯も含めた最低生活水準が適切かどうかと いう論議がされるべきではないかと思っています。ですので、私は、今までの論議の中 でにわかに母子加算が高いから廃止すべきだという結論は導き出せないというふうに考 えています。  あとは、これも過去の専門委員会で私も発言しましたが、自立助長の関連です。今 後、母子に限らず、シングルペアレント全体で話をしていきたいというふうに思ってい るのですが、基本的には父子家庭も含めて、働き手が少ない世帯ということで理解でき るわけです。そういった世帯というのは、当然何か生活上の事故、失業であるとか疾病 が起きたときに、当然、夫婦2人で働いているよりも1人で働いている方が、通常でい くと貧困に陥る可能性が高いといった意味で、早めに防貧的な意味合いも含めて、シン グルペアレントの世帯の生活保護水準を若干高めにしておくということはそれなりに意 味があるだろうというふうに私は考えています。  出口の問題ですが、今回いただいた資料の10ページに母子世帯の保護基準別に見た保 護廃止世帯数というのがございます。この読み方は、受給世帯に2〜4年の人が一番保 護の廃止になる確率、つまり経済的自立をする確率が高いということでいいのでしょう か。2〜3年で保護を廃止する人が多いという意味なのでしょうか。確認させてくださ い。 (岩田委員長)  どうぞ。 (事務局)  2〜4年の保護を廃止する割合が高いという読み方です。 (大川委員)  高いということですね。だから、単純に読むと、2〜4年の人が一番保護廃止になり やすいということです。これは一見すると、生活保護を長く受けていると、なかなか保 護が廃止しにくくなると読めてしまうのですが、実態は、生活保護の申請あるいは開始 の段階で、母子世帯の状況によって保護する期間が長くなる人と早めに自立できる人 は、大体見当が付いてしまうのです。最初に配られているカードが違うというと変な例 えですが、多問題を抱えた世帯は、保護の期間が長くなればなるほど廃止できなくなる というよりは、スタートの困窮の中身によって長い世帯と比較的早く自立できる世帯に 分かれると思います。  比較的早く自立できる世帯は、つい最近まで就労していて、一時的な事故で保護にな って、比較的子供も少ないか、うんと小さいか、あるいは既に子どもがある程度大きく なっていて、すぐに就職できるというケース。  逆に、長くなるケースは、母親に何らかの大きな就労阻害要因や養育していく上での 困難があって、しかも子どもが多い世帯、複雑な多重債務、あるいは、いろんな問題を 抱えた世帯です。  だから、生活保護を長く受けているからといって母子世帯が自立しないということ は、現場ではほとんど言えない。中には結果として、そういなっている人が全くゼロで はありませんが、彼らに対して長いからといって母子加算を廃止すれば、保護費が少な くなることで母子世帯が自立していくということはあり得ないだろうと思っています。  更に言えば、先ほども言いましたが、1人で働くということは大変です。例えば、生 活保護受けていて何らかの仕事が決まったとする。そのときにある程度、収入の高い仕 事に就いてもらった方が、改めて生活保護に帰ってくる確率が小さくなります。そうい った意味で自立助長という観点からいっても、シングルペアレントの場合は、生活保護 の要否判定、廃止のときの要否判定を少し高めに設定しておいて、ある程度の所得水準 のところまで到達してはじめて経済的自立とみなすとしておいた方が、再度、生活保護 に戻ってくる可能性が低い。だから、それだけの収入を得られるまで、本人にも頑張っ てもらうし、周りもそれだけの収入が得られるような就職を援助する。就労支援でより 高い所得のところに返していくというような考え方として、加算という表現を使うかど うか別ですが、母子加算のような一人親家庭に対するプラスアルファの基準というの は、私は必要であるというふうに考えています。長くなりまして、すみません。 (岩田委員長)  今の御意見は、むしろシングルペアレントなどいろんな条件で両親が揃わない世帯に 対する加算は、何らかの根拠づけによってあった方がいいと。だけど、今のような形で ある必要は必ずしもないということです。どちらかと言うと、その就労自立というか、 出口の近い方で上積みのような形であった方がいいという御意見ですか。 (大川委員)  入口も出口も、最初になるべく早目に救うという意味です。入口の要否判定でも当然 そうですし、逆に出口を高くしてしまうと、逆転現象が起きてしまいますので、そうい った意味で従来の要否判定の考え方を維持するという意味で主張しています。 (岩田委員長)  そのほか、いかがでしょうか。  布川委員、どうぞ。 (布川委員)  大川委員がいろいろ言われたのですが、ちょっと問題を戻してしまうかもしれませ ん。「中間取りまとめ」はどういう議論から始まったかというと、一般の低所得の母子 世帯と保護を受けている母子世帯の比較で、生活保護を受けている世帯の方が高いので はないかという議論だったと思います。年明けから要件の議論をしたという意味を考え ますと、それは、私の見方からしますと、生活保護の水準が高いのではなく、多くの低 所得の母子世帯の方が生活保護以下の暮らしをしているからなのではないか。何らかの 要因で、要件との関わりで生活保護を受けることができないでいるということなのでは ないかと思います。  ですから、「中間取りまとめ」までの母子加算の議論と、要件を議論した後とでは、 議論が違ってくると思うのです。その辺の実態がどうなのかをしっかり確認しないとい けないと思います。先ほど、委員長が言われたような基準の検討する場を設けるという ことになるのでしたら、その場でやはり要件との関わりで、どれだけ生活保護で捕捉で きているのかとか、また、要件を本来は満たしているはずなのに受けないでいらっしゃ る方というのがどれぐらいいるのかとか、その辺の検討も踏まえた上で見直すとか、議 論をするというのが必要なのではないかなと思います。先ほど言われたような場を設定 する場合には、そのような議論、検討もされるように、是非お願いしたいと思います。 (岩田委員長)  京極委員、どうぞ。 (京極委員)  最近は研究していないのですが、四半世紀前に母子世帯のことを調査したことがあり ます。そこでは一般論として、ワンペアレントファミリーとして、特に母子家庭を固定 的に捉える見方というのは、余り正しくないと思います。これは社会学的にも経済学的 にも、片方しかいないから経済的に厳しいという見方は成り立たず、実態を調べてみる と非常に格差があるということで、生活保護を受けていようと受けていまいと、客観的 基礎が相当違います。  もう一つは、私は最近のデータはわかりませんが、その当時いろいろ調べていたとこ ろを見ますと、特に離婚とかその他いろんな原因で母子家庭になる要因があるわけで す。だから、死別もありますが、特に最近では離婚あるいは未婚の母が多い。そういっ た状況があり、母子世帯そのものの経済状態と言っても単純ではない。私が意識してい るのは、特に貧困な母子世帯の中で、母子家庭になって直後の期間に危機的ないろんな 問題が起きていて、最近は余り見られませんが、当時は母子心中とかそういうのがあっ て、ある一定の危機的状態について、対応策はそれなりにお金もかかるし、必要な措置 があっていいのではないかなと思います。しかし、母子世帯だから、未来永劫にずっと 加算を続けていくという考え方が、本当に成り立つかどうかは疑問です。むしろ、必要 な教育扶助とかをもっと手厚くするとか、その他いろんな他法他施策、例えば、ヘルパ ーの派遣などいろいろありますので、その辺りはちょっと母子世帯の一般論として議論 しない方がいいのではないかと思っております。 (岩田委員長)  では、岡部委員、どうぞ。 (岡部委員)  一人親、とりわけ母子世帯の場合については、やはり養育関係と労働環境が非常に厳 しい状況に置かれているということをまず考えなければいけないと思います。最近の母 子世帯の場合、死別ではなくて、やはり離婚と非婚の割合が非常に高くて、多分この傾 向というのはこれからも続くと考えられると思います。  一人親の方が、母子世帯の方が生活保護に来られた状況下がどういう状況なのかとい うふうに考えたときには、相当心身ともに、また経済的には厳しい状況の中で来られて いると。  そうなったときに、まず何をするのかを考えると、福祉事務所のサイドからすると、 養育環境の整備というのをまず優先をして、その後に就労支援を考えるという形です。 そうすると、養育環境の基盤整備において、対人サービスの福祉サービス等が充実する ということは当然のことですが、そのときに一定の養育のコストを加算するかどうか は、議論があるかと思うのですが、やはり厚くすべき、積極的に優遇するべきではない かと思います。これが将来の例えば、安定した後の就労であるとか、子どもの能力開発 だとか、そういうことにつながってくるのではないか。ですから、加算という形で取る かどうかというのは論議が必要としても、何らかの形でやはり一人親の方については、 加算に代わるような積極的な優遇策を取るべきだということと、一定の期間を限定した としてもいいと思っているのですが、そこのところは、やはり慎重にすべきではないか と考えます。 (岩田委員長)  八田委員、どうぞ。 (八田委員)  すべての生活保護の問題について言えることですが、この問題に関しても3つの議論 があり得ると思います。第1は、予算が無尽蔵にあると想定して、ここにもお金付けた らいい、あそこにも付けたらいいと言って行う議論です。第2は、一定の予算の範囲内 でもっとうまい使い方があるのではないかという議論です。第3は、どうやったら予算 をカットできるかという議論です。  私は、今1番目と3番目は除外して考えようと思います。すなわち、今使っている母 子加算のお金をもっと有効に使える方法を考えたいと思います。今、基本的に大川さん や岡部先生がおっしゃったことはよくわかりまして、母子には特殊な事情があると思い ます。だからこそ母子に対しては、現在使われているお金を特に就労支援に役に立つよ うな使い方をすべきであると思います。  生活保護全体で見て、病気の方だとか老人の方だとかは、将来働く可能性がそれほど ない。ところが、この母子家庭というのは、働くことができる可能性があるわけです。  まず、大川さんがおっしゃったように、もともと働く予定の人で一時的な困難さえ乗 り越えたら働けるという人の場合には問題ないだろうと思います。  次に、就労阻害要因がある人もいるとおっしゃるのですが、それも必ずしも、絶対に もう働けないから何も就労支援しなくてもいいとはならないと思うのです。例えば、私 の知っている方で漢字がほとんど書けないというハンディキャップを持つ方がいらし た。初めからシングルペアレントで、2人の子供は父親が違う。彼女は結構働き者なの で、働こうと思えば働けるわけですが、2つ困難がありました。  第1に、働けば働くだけ生活保護を減らされるわけです。彼女が就けるような職業の 収入水準では、これは働くだけ無駄ということです。だから、基本的に今の生活保護の システムというのは、かなりハンディキャップを持った人にとっては、進んで働こうと いう意欲を起こさせないような仕組みに最初からなっているわけです。それが第1の問 題。  第2の問題は、やはり子どもが小さいときは、とにかく保育所に預けても病気したら 預かってくれないということです。前にも繰り返し申し上げましたが、今の母子加算の お金を保育所で病室を持っているところに振り向ければ、随分働きやすくなるのではな いかと思います。  8ページに母子福祉施策のことが書いてあるのですが、例えば、お母さんが病気のと き、一番最初のところにありますように、家庭生活支援員が派遣されます。これはいい システムだと思うのですが、子供さんが病気のときというのが書いていない。下から2 番目のところは、病気の回復期にある子どもです。例えば、風邪を引いたときとか、お なかを壊したときに保育園で預かってくれないのはどうするのか。あるいは、学校に行 っている子を家に置かないといけないのはどうするのか。私は、そういうところに集中 的にお金を使って、それを母子加算の新しい形にしてはどうかと思います。 (松浦委員)  今、八田委員が3つのケース、すなわち、1番目は理想像をつくっていくのか、2番 目は財源が限られた中でいかに効果的に使っていくのか、3番目はいかに圧縮していく のかについておっしゃられ、また、3番目はのけて考えるとおっしゃっていましたが、 現在の地方自治体の財政状況は3番目にあると私は思っています。ですから、その3番 目と2番目、その圧縮されていく財政、限界がある財政の中で、いかにそれを効果的に 使っていくのかということになるのだろうと、私はそういうふうに思っています。  今、母子加算が必要ないのではないかという意見について、12ページの1の上の○2 つ辺りがあるようですが、特に2番目の意見については、生活保護は税金で運営してい ますから、周りの人たちの納得が得られないことは、下げていかなければならない。そ うしますと、やはりこの1の○2つが、私はどうしても頭に引っかかってきます。やは り必要のないものについては、財政が非常に圧縮されておりますから、この際、廃止を してもやむを得ないのではないか。  もう一つは、その生活保護自体の考え方ですが、よく最後のセーフティーネットだと 言われております。その考え方と、もう一つは、入りやすく出やすいという考え方です ね。これがちょっと引っかかるところがあります。やはり最後のセーフティーネットだ と言うのであれば、私はうまく説明できませんが、特に年配の方々などの場合には、生 活保護を受けたらいいのではないかというと、それだけはもうこらえてくれ、それだけ はもう受けたくないと、こう言われる人もあるのだそうです。それは言ってみれば、人 間の誇りだと思いますが、何でもかんでも、すっと入りやすくて出やすいということが いいのか。本当に最後のセーフティーネットだから、それについては、かなり考え方も シビアにしておくのがいいのか。私は、この辺の議論も併せてしておかないといけない と考えます。ある程度シビアに考えても、これはやむを得ないのではないか。  特に母子加算の中で母子家庭について、現場の職員の話として、確かに離婚はされて おる母子家庭で別々に住んでいるが、実際は経済的にも雰囲気的にもそうでもないので はないかというケースがちょくちょくあるとのことです。そういうことが起こらないよ うにすることも、法律的に言えば完全に別なのでしょうからどういう具合にしたらよい か難しいし、やむを得ないと言って済ませることもこれまた難しい。かといって、強制 調査権もない役所の人間が行って、根掘り葉掘り聞くわけにもいかない。人権侵害にも なりかねないという問題もありますから、できるだけそういうところは触らずにおこう とします。ですから、そういった問題についても、ある程度、わかりやすくなる方法が 何かないかということを感じます。  以上です。 (岩田委員長)  かなり根源的な話に思えます。 (大川委員)  ちょっと反論めいた言い方になってしまうのですが、最後におっしゃっていた、母子 世帯にパートナーがいるのではないかという問題。これはちょっと加算の問題と別かな という感じはします。その前段のところでセーフティーネットとして、なるべく入りや すく出やすい方にするのがいいのかということと、逆に少し厳しくしておいて、最後の 最後にというふうにしておいた方がいいのかというお話があったのですが、日本の生活 保護は非常に間口の狭い厳しい制度で、今、松浦委員がおっしゃったような最後の最後 まで生活保護だけは勘弁してくれとおっしゃる方は、これは実は多数いらっしゃいま す。生活保護を受けている方も、母子世帯の方も含めてできれば受けたくなかったと。 こういう認識でいる方が、現状では多分、私は圧倒的多数だったと思います。それでず っとやってきて、それがどうもうまく行かなくなってきた。つまり、一点目は、生活保 護の間口を低くしておくことによって本当に真に困っている人だけが救われるという仕 組みになっていたかというと、必ずしもそうでもなくて、こぼしてしまう人が出てきて しまったということです。二点目は、前回もお話しましたが、ぎりぎりのところまで、 要するに、状態がかなり悪くなってから保護をすることによって、結果的に自立の意欲 まで削いでしまって、あとはもう最後の最後まで生活保護になるというケースを、つま り保護受給の長期化を生んでしまったという実態を生じさせています。そういった意味 で私は、今の生活保護制度は非常に間口の狭い厳しい制度なので、それはむしろ少し緩 めるという形で、入りやすい、出やすいということについては、私は意味があると思い ますし、そういった説明をむしろ国民に対してしていくべきではないかなと思っていま す。  あと、国民に対する説明ということで、一般母子世帯と比較して保護基準が高いと指 摘されているというお話ですが、確かに申請があって保護を開始して決定額を伝えたと きに、比較的多くの方がこんなにもらえるのですかというふうにおっしゃいます。それ でしばらく何か月か経って生活保護でどうですかと聞くと、いや、随分楽にはなりまし たと。でも、やはり厳しいという御意見をおっしゃる方がいます。  さっき養育関係の整備とか就労支援というお話もありましたが、それだけでカバーで きない子育てにかかるさまざまな経費、特に1人でやるわけですから、これに伴う手の 届かない部分をお金で済ませなければいけないことは多数あるのです。母子世帯は外食 が多いという話が出ていますが、まさにこれが象徴です。こういったものに対して、や はりその家庭の養育者あるいは働き手として期待される者が少ないということは、私は 生活上のハンデをより多く生んでいると思いますし、そう思えるデータもこの間の調査 に出ていると思います。  また、逆に国民に対する説明と言ったときに、こういう考え方もできると思うので す。つまり、被保護世帯の母子家庭の基準が一般の母子世帯より高いのではなくて、一 般の母子世帯の生活費が被保護世帯より低い。さっき布川委員がおっしゃったことだと 思うのですが、これをどう考えるかという方が、むしろ重要であるのではないかと思う のです。だから、私はその単純な比較だけで母子加算の問題だけを論じてしまうという のは、本当にどうだろうかと。むしろ、先ほども言いました、基準の在り方も含めた常 設委員会をつくるという話も出ていましたが、母子世帯については、かなりいろんなハ ンデというか、私たちの想像を超えるしんどい部分がたくさんありますので、やはり単 純に所得水準の比較だけで加算を削ってしまっていいのか。むしろ先ほど、布川委員が おっしゃっていたように、保護を受けていない世帯の生活実態を比較した上で、そこで どこに人間としての最低生活の線を引くのかという論議をするべきではないかというふ うに思っています。  以上です。 (岩田委員長)  どうぞ。 (松浦委員)  ある程度厳しくして、今、日本が非常に厳しいから、なかなか抜け出られないと。 今、生活保護を受けていた人たちが自立をしていく傾向を見ますと、この前何かの資料 にありましたが、景気がよくなってくると減っているわけです。景気が悪くなると、生 活保護世帯が増えている。むしろそっちの方に影響されるのではないかという気がして います。 (京極委員)  私の発言の結論めいたことはサジェスチョンしたつもりですが、言葉が足りないとい けないので補います。  現状の母子加算というのは、母子である限り加算が続くということですが、母子家庭 になってからの期間とか、内容とかいろんなことをよく精査して、短期給付みたいな形 もあり得るのではないかということを申し上げたつもりです。しかし、その短期給付を やるのだったら、少し手厚くして、ある時期の危機を乗り越えるというやり方も考えら れるのではないか。そうしないと、母子家庭でいた方が有利だというような保護の仕方 というのは、果たしていいことかどうか。戦後のある時期まではわかりますが、今日の ような状態の中で果たしていいかどうかということであります。 (後藤委員)  最初に確認すべきことは、就労支援を行うということと、生活保障、所得サポートを するということは、決してオールターナティブな代替的な関係ではなくて、恐らくこれ は別個に両方用意しなければならないのではないかと思います。  それはなぜかというと、就労支援、自立支援をしていけば、そのまま市場賃金で十分 なお金が稼げて、そして、十分に自分で所得を稼いで生活費を賄っていくことができ る。それがスムーズにいくのでしたら、前者だけでいいのですが、実際、女性の今の就 労状況は非常に厳しい状況にあります。  それから、これは母子という言葉を使うか、あるいは一人親という言葉を使うかとい うところにも関わるもので、目的としては、養育手当という目的ですが、やはり女性の VULNERABILITY、今までいろんな意味で傷つきやすさを持ってきていた養育、教育、就 業、結婚、離婚というプロセスの中で考えたときに、やはり今ある制度を切るというこ とは、よほどの理由がないと私は積極的にやるべきではないと思います。  確かに9ページで書かれているさまざまな施策というのは、非常にきめこまやかで立 派なものだと思います。ただ、これが本当に市場賃金で十分なお金を稼ぐのにつながる までには、まだまだ時間がかかるわけですから、その間は今、性急にカットするという ことには私は反対です。  むしろ最初の方で、今日出していただいた資料2ページは非常に面白い統計で、先ほ ど大川委員の方からもコメントがありましたように、なぜ自分自身の小遣いやら交際費 やら教養娯楽費を削って、衣服費や外食費にお金をかけているのか。ここの理由を読み 取る必要があります。子供はどんな家庭、どんな世帯の下で生まれようと同様に扱われ るべきだというのは、恐らくだれもが納得することであろうし、それは親も願っている ことだろうし、そうだとすると、自分が母子家庭であろうと、あるいは生活保護受給家 庭であろうと、子供は同様に扱われたいというという願いが、恐らく私はこの消費構造 の中に表れていると思います。  そうなると、就労支援を実施しつつ、他方で女性自身が被ってきたVULNERABILITY、 傷つきやすさというものをカバーするような形のものを安易に削るべきではないと思い ます。  それから、松浦委員に非常に感謝したいのは、八田委員に続いて、非常に論点、生活 保護を議論するときの一番根本的な問題をクリアーにしてくださったと思います。です から、私も今こういうふうに議論ができるわけで、それで国民の納得の問題ですが、私 自身は一応経済学を学んではいるのですが、バジェットというのは配分を変え得るもの だと思っています。  つまり、私たちがどういうことに納得しながら働く、私自身はたまたま働ける能力を 持って市場賃金を稼ぎ税金を納めることができていますが、どれだけ働くインセンティ ブを持つかというのは、私自身がどれだけ税金の使われ方に納得するかということによ って変わり得ます。そして、国民がどういう理解を持つかということは、恐らくこの委 員会を含めたこういう専門的な場での意見というのが影響を及ぼすと思っています。  ですから、国民の理解、あるいはバジェット、予算の大きさというものを所与として 議論するのではなくて、私はそれらを変えていく気構えで議論をしていけば、他法も優 先するという規定がある限り、やはり他法をもっと充実してくれということは、同時に 言っていきたい。  長くなりますのでもうやめますが、カテゴリー別の、女性だからという京極委員のお 話は非常によくわかるのですが、1つはVULNERABILITYがあるという事実と、もう一つ は、他方をきちんと優先できていない現状では、まず生活保護の方を変えるということ の恐ろしさの方、リスクの方を強調したいと思います。  以上です。 (松浦委員)  論点は整理されたようですが、大分意見は違うようです。私のように行政を預かって いますと、根本にどうしても財源というものがあるのです。今度三位一体改革がどうな るのかわかりません。3兆円を先に税源移譲するから、3兆円の補助金のカット、その 補助金のカットが3兆円で済めばいいかなと私たちは思っているわけで、非常に警戒感 を持っているのです。  と言いますのは、今年度4,500 億くれて1兆円削られたわけですから、我々の市も現 実には、ここでもお話ししましたかもしれませんが、220 〜230 億くらいの予算ですが ずっと減額していって、なおかつ貯金を6億取り崩さなければ今年の予算は組めなかっ たのです。これは幹部だけですが、実際にどういうことをやっているかと言いますと、 税収が我々の町も平成元年の水準まで落ちましたから、三役の給料は平成元年まで落と しているわけです。そういうことをやりながら、今、実際に財政運営をやっているのが 現状で、もっと効果的に使ったらいい、効果的に使うべきだとおっしゃったから、た だ、今申し上げたように、母子加算にこういう見方があれば廃止して、別の見方がどこ かであれば、それはそれでいいと思います。しかし、ねたみとかを受けるような場合に は、全部カットはしたくないのです。選挙する人間は特にしたくないのです。したくな いが、やむを得なくなっているのが現状だということも御理解をいただきたい。裕福な 町もあるかもしれませんが、ほとんど全国でそうなっていると思います。 (岩田委員長)  この委員会の議論の途中で三位一体の話が出てきて、補助率の引下げということがあ りましたので、ずっと松浦委員が当然市長さんとしては、この点を憂慮されるのはもっ ともだと思います。それにもかかわらず一方で生活保護制度というのは、もともと財源 がどうだからと言って変えてはいけないという前提があるのです。そこがジレンマだと 思います。国民が生活保護はなるべく使わないようにしようというのは、なかなかけな げなことではありますが、生活保護制度というのは、一方で受けるかどうかという問題 は別として国民の最低生活とは何かを規定する制度でもありますので、こういうふうに 感じる人がいるから下げようとはなかなかならない。その辺が大変難しいところです が、逆にそういうふうに思っている人にとっても最低というのは、ここだよと示すよう な機能を持っているのだろうと思うのです。それが以前、松浦委員がおっしゃった社会 秩序の維持と言いますか、安心した社会の底をきちっとつくるということだろうと思う のです。  にもかかわらず、今、財政問題を無視して議論できないというのはおっしゃるとおり だと私は現実的に思います。  そこで母子加算の問題ですが、これは老齢加算もそうですが、加算の議論をやったと きに、同時に私たちは生活扶助基準の展開の問題についても随分議論いたしまして、例 えば第1類費の年齢別展開とか、第1類費第2類費の関係ということをやりました。  それから、世帯人員ですね。この母子世帯の場合、かなり子どもの数が多い世帯につ いては、この世帯人数のところを少し多人数世帯のところは圧縮していこうという結論 になっているわけです。  それから、老齢加算については、老齢加算の廃止だけちょっと先行していますが、こ れは私としては正直言って大変残念でして、これは単身モデルを作ろうということをこ こで皆さん合意したわけです。ですから、単身モデルをきちっと作っていけば、また別 の水準が実態として出てくるはずですので、どう作るかという問題はありますが、なる べく合理的で一般の人も、自分がもしも生活保護を利用するときになったら、これで納 得できるという水準にきちっと設定して、そこで実は加算の問題を改めて議論してもい いのではないかなと私も思うのです。  もう一つ、仮に加算というものを置くとすれば、どういう根拠づけがなされるかとい う議論として今の皆様方の議論を少し整理させていただきます。  一点目は、特に子育てと言いますか、養育の問題があります。これは、もちろん両親 揃っても、生活保護世帯の場合、どっちが傷病だという可能性が非常に高いので、私は この一人親だけ付けるというのはどうなのかという気もしますが、子どもを養育してい く環境としては、被保護世帯は最も厳しい。この問題は余り議論されていませんが、貧 困と虐待というのは非常に深い関係がございます。ですから、こういうものを、もしか してわずかなお金で防止できるようなことが本当にあり得るかどうかわかりませんが、 そういうことができるのかどうかといった、養育的な観点が1つです。  二点目は、さっき八田委員がおっしゃったことですが、就労そのものというよりは、 就労の前提条件を整えるものかなと私は思います。これはさっき漢字が書けないとおっ しゃったのですが、実は偶然にこの間調査した母子世帯の就労についての調査という、 分厚い報告書を読んだばかりですが、日本の母子世帯は、非常に高い、各国に類を見な い就労率、8割を越えるという信じられない就労率を保っているという指摘とともに、 しかし、すこし両極ではあるのですが、下の方は低い学歴、つまり教育機会に十分アク セスするチャンスがなかった人たちが相当程度含まれているという指摘がありました。 これは私がやった女性と貧困の調査の中でも、学歴が大変よく利いていまして、相対的 に低い学歴の場合に、貧困になる率が非常に高いという結果が出ております。学歴とい う変な言い方かもしれませんが、学歴そのものよりも、学歴は義務教育終了だが、実際 上就学できなかったという人たちが何らかの理由で、例えば未婚の母になるとか、いろ んな問題を抱えて、生活保護を利用するに至るという可能性は非常に高いわけです。  そうなった場合に、就労支援というのは、多分就労条件の整備、つまり少しきちっと した就労ができるような支援が必要ではないか。これは実はホームレス問題もそういう ことがありまして、今いろいろ相談に乗っているある市では、算数・国語教室を開こう かという非常に面白いことを言っていらっしゃる市の職員の方がいらっしゃいます。お 金をつぎ込む場合に、所得でぽんと渡して、子供にお菓子を買って上げるというのもい いかもしれないが、もう一回就労条件を整えるためにお母さんに再学習してもらうとい うやり方はかなり根本的な問題だろうと思うのです。  それから、子育てサービスではさっき言った養育の方で、お金とサービスというのは 必ずしも交換できないものがあるということを踏まえた上で、しかし、どっちの方がも しかしてより長期的なサポートになるかということも考えた上で加算というものを考え るしかないのではないかと思うのです。  ですから、根拠としては養育と就労条件の整備という名目をつくっていくというか、 もう少し精査していくという方向があり得ると思うのです。それにもかかわらず、全体 として生活扶助基準がどう展開するかということと抱き合わせてやってみないと下がる のか上がるのか、ちょっとわからないところもあるかなと私は思っています。  ただ、加算はそれとは別ですので、プレミアを付ける必要があるとすれば、これは松 浦委員がおっしゃる財政問題も非常に大きいですから、一律にやるのか、やれるところ がやるのか、ある期間を設定するのかわかりませんが、今日のお話では、現実的にはか なりやる実態はあるのではないか。  その根拠としては、養育への加算ともう一つは、生活保護を利用するに至るような、 つまり多くの母子世帯は何か児童扶養手当のサポートは非常に大きいと思いますが、そ れと非常にこま切れの就労で何とか踏ん張っていられるのは、一定の就労条件が、それ でも相対的に被保護世帯よりはましな可能性はあると思うのです。  一方、生活保護を利用した方がいい世帯が入ってこないという問題はあると思います が、そうだとすると、就労条件のかさ上げとして、生業扶助などを利用できるというこ とも一方であると思うのですが、それ以前の問題ですね。識字の問題等などで言います と、履歴書を書いてきちっと就労活動できるまでに引き上げるべき層も実は存在してい て、このような点では生活保護は非常に信用が高いわけですから、生活保護制度の中で それをやらないと、ほかの制度ではそこまでは手が届かない可能性はあるかもしれな い。  これは加算とは関係ありませんが、今、御報告いただいたように、児童扶養手当がや や短期型に展開していくとすれば、むしろ生活保護がその圧縮された部分をカバーしな ければならない可能性は相当ある。  一般母子と被保護母子と比較されますが、一般母子の方にも税金は投入されているの だということを忘れないようにしないと、被保護世帯だけが税金の恩恵を受けていて、 こっちは受けていないと思ってしまいます。一般施策との関係で生活保護は出たり入っ たりしますので、さっき松浦委員が言った失業問題が一つ。  それから、ほかの社会保障が引っ込んでしまうと、生活保護が出ざるを得ませんの で、そういう中で一緒に引っ込むわけにはいかなという側面も考慮しなければならない という気はいたします。  その辺りをこの報告書では、ある程度書いた上でどういうふうに加算を存続させ、あ るいはどの程度の額が妥当かということは、さっき言ったようなもう少し専門的な委員 会で精査する。あるいは保護課の方で精査されて、提案されるということでいかがでし ょうか。この委員会ではこれ以上のことはできないのではないかと思います。  しかし、加算を巡っては大変根本的なジレンマと言いますか、難しい問題があって、 実際上、生活保護の実施を預かっている自治体においては大変苦労されておりますか ら、現実的な路線も同時に考えていかなければならないと思います。  また、報告書の中では三位一体改革についても、是非触れて、国の責任ということも 言っていかなければならないとは思います。 (京極委員)  委員長の意見に賛成です。  それから、松浦委員がおっしゃったところでちょっと誤解を与えるといけないので、 私なりに補います。生活保護は法定受託事務ということですが、もともと制度発足のと き、国が10分の10でもいいということでスタートしたので、本来補助金ではないので す。しかし、地方自治体の責任も一部あるということで、10分の2を地方自治体に負担 させ、10分の8を国が出すという形になったので、いわゆる補助金というのは、措置制 度みたいな形を言うわけですが、生活保護を補助金としてとらえるのは正しくないと私 は思います。国民の最低限の生活を守るというのが生活保護制度です。単純な補助金と 一緒にしてしまいますと一般財源化になって、市町村ごとにやっていくださいというこ とになるとこれは全く違った制度でございます。ここは特に生活保護の研究会でありま すので、生活保護の財政的な意味づけについては、再確認する必要があります。  その上でどういう方向で合理的にしていくのか。また、市町村の役割というのもあり ますので、その辺の兼ね合いと言いますか、さっき根本委員もおっしゃいましたが、県 の役割は、基本的には国民年金に匹敵するような補完するような制度だと思います。し かし、そういう性格を踏まえた上で、地方自治体の役割をどの程度加味するとか、地方 の特性をどう加味するかということを議論すべきだと思っています。 (岡部委員)  これは先ほど松浦委員から、実態としてはそうだと、そういうところもあるかと思う のですが、生活保護制度が誇りをなくすような制度という形は実態としてそういうふう なことも考えられるとおっしゃられました。しかし、この制度は誇りを保つためにある わけですので、そういう方向でないような形であるためにはどうしたらいいのかという ことが、この議論だと認識しております。そこのところは再度確認をさせていただきた い。 (松浦委員)  それはわかります。いわゆる生存権なのか、幸福を追求する権利なのか、この前も委 員会でいろいろあったのですが、実際にその人たちが誇りを保つための制度というと、 どちらかというと、憲法13条の方ですかね。幸福を追求する権利とか何だそうですが。 (後藤委員)  『経済のブンベース』というものを書いたブランニーのある一説があるのですが、人 が軽蔑されるのは貧しいからではなくて、不安定な意思とか不安定な状態に翻弄される からだと。だから、いつも何か足りない、何か足りない、どうやってやりくりしたらい いかがよくわからない。そういう不安定さの中に自分のきちっとした趣旨に合う目的を 立てていくことができないということ自体が人に誇りを失わせるという話があるので す。 (松浦委員)  誇りは何かということになると非常に難しいのですが、我々が通常考えていますの は、世の中の規範に従って、自分で生きていく。これが私は通常持っている人間の誇り だと思うのです。そこのところを生活保護に行きたくないという人たちの心理状況とい うのは、多分それは全部他人の御厄介になるわけですから、そこは自分のプライドが許 さないと、こういうことではないのでしょうか。私はそういうふうに思っています。 (後藤委員)  済みません。1つだけ。先ほどの消費支出の2ページのところでもう一つ顕著だった のが、医療費が少ないですね。生活保護世帯と母子世帯の低所得者を比べると、母子世 帯の方が病気がちであるという、母親自身が不調を訴える人が非常に多い。ですから、 先ほどからお話にあるように、私自身の聞いている範囲では、やはり生活保護は受けな いというふうに踏んで張っている母子世帯は非常に多いのです。でも、それはよく見る と、理由はやはり教育上よくないとか、自由がきかないかという理由がいろいろあるの ですが、それを支えている客観的条件というのが必ずあって、それが、親の支援であっ たり、自分自身の体の調子が今はまだもつことであったり、そういうことです。  恐らくそこら辺はケースワーカーの人たちの方が詳しいと思いますが、最後の最後に ケースワーカーの人たちがこの人は要保護と決めるときには、もう既に体が非常に厳し いとか、親とか身近な人で支えてくれる人がいないとか、そういうところで後の不安定 な収入状況の中で子どもと不安定に向き合ってしまっているという、人間の誇りを保っ ていくための客観的条件の整備の段階を見ていく必要があると思います。  そういう条件が整備される中で、私は働こうという、自分の子どもに背中をきちっと 見せようという気持ちを人は失ってはいない。そこは信じるべきだと思います。 (岡部委員)  一言だけよろしいですか。私の言っているのは受けたくないような制度にしてはいけ ないということです。制度としてそういう誤解を招くように取られたくないので、ここ でそういう議論をしていることを再確認させていただきたいとお話をしたということで す。これ以上はお話ししません。 (根本委員)  京極委員に続きまして、委員長の先ほどのまとめに賛成なのですが、今のこの委員会 で、非常に限られた時間の中で、今のこの段階において、決定的な判断をするだけの材 料がまだそろっていないのだろうと思います。  先ほど委員長が言われたように、非常に多くの意見が、しかも多彩な意見が、ある意 味から言うと仮説的な形で出されてきているわけですから、それをあるところできちん と集約をするという確認をここでして、次に進んでいただいた方がよろしいのではない かと思います。 (田中委員)  私は施設の立場しか知らないものですから、余り難しいことはわかりませんが、た だ、この委員会での生活保護制度の検討の問題で、私自身も申し述べたいこともありま す。一つ期待していた面です。  今の生活保護の制度がもう50年近く前にスタートしたわけで、その当時は日本の国全 体がかなり戦後の貧しい時代の制度からスタートいたしました。そういう受け取り方が いいかどうかわかりませんが、今の日本は、それこそ世界ナンバーワンになるような経 済的な豊かな時代だと言われているわけです。  ですから、かなり今と違った時代からスタートした生活保護制度が、今の時代に改め て抜本的な検討ということなので、私はこの時代にふさわしい生活保護制度が一体どう あるべきかということを私なりに、施設の知識しかありませんが、期待しながら、ま た、何らかのときに発言できたら発言したいなというふうな考えで今日まで来ました。 当然先ほど申しましたように、保護施設の立場なものですから、私は余り深いことはよ くわかりませんが、先ほど来、いろいろな御意見の中で「入りやすい生活保護制度、そ して、出やすい保護制度」と言われています。入りやすいというのは何となくわかるの ですが、出やすいというのは一体具体的にどういうことを指すのかというのが、まだ私 にはよくわからないです。言葉としてはわかるのですが。  そこでこんな例を私は1つ申し上げたいと思うのです。私は長い間、救護施設も、そ れから身体障害者の施設も両方ともずっと行ってきました。その中で視覚障害が中心に なるのですが、こういう例があります。視覚を持っている人がいろんな事情でまだ仕事 ができない。それで仕事をするときに、地域に出ます。収入がその段階でありませんの で、当然まず考えるのは、生活保護のお世話になるということです。それから、私は2 つの例を体験してきたのです。  一つのケースは、最初から生活保護を受けると、多分あなたはずっと生活保護の収入 が予定に入って、仕事が入ってある程度できても、多分、そこから脱却するのはかなり 難しいのではないか。だから、どんなことがあっても、生活保護を考えないで、最初か らゼロでやるようにと助言した場合、鍼とかマッサージをやる人は必死になってやりま す。1年か2年くらい経ってから、その人が「最初は田中さんをちょっと恨んだけれど も、そのときに生活保護の世話にならずに、今は本当によかったと思う」とおっしゃい ます。それは自分が必死になって働いて、今は全く生活保護ということを考えたことは ないと。かなり成功してきているのです。  もう一つのケースは、やはり最初から生活保護を受けていた人は、そこから脱却する のが本当に難しいのです。生活保護の収入が予定に入ってしまうのです。今月は生活保 護の収入はそのくらい、自分でお客さんを取って収入はこのくらい。このくらいやれば 大体いいなというふうに決めてしまうらしいのです。そうすると、なかなか脱却できな い。  やはり生活保護から出やすいということは一体どうなのかということを考えたとき に、生活保護制度は人間の最低生活の保障ということですが、一つは、先程から議論し ておりました人間としてのプライドの問題。私はプライドという言葉は余り使いません が、人間としての尊厳を維持するのが、まず生活保護制度の根本だと思っているもので すから、私は施設の人たちにも、人間の尊厳というのはどういうところにあるのかとい うことを常々申し上げます。やはり生活保護の中にもう一つの大切なものとして、そこ から脱却とか、余りそういう言葉は好まないのですが、自助努力と言いますか、自分で 生きていくという精神に、私は人間としての尊厳があるような気がするのです。人間と しての尊厳がなければ、どんなに経済的な保障で生活保護を受けて、この加算だ、あの 加算だと受けても、何となくむなしいような気かいたします。  そこで「出やすい」というのは具体的に今の時代ではどういうことを指すのか。就労 もあるでしょうし、それから先ほどから、委員長からも御発言のありました前提条件も あるだろうと思います。もう一つは、人間としての尊厳はどこにあるかということと同 時に、生活保護のお世話になっている方々に、絶えずそういうことを指導していくと言 いますか、これも大事であるという感じがいたします。  そういう意味で、それなりの時間があるだろうと思って私は考えてきたのですが、い つも時間がないのですが、いろいろなお話を伺いながら、これだけ豊かになった時代に おける生活保護の根本的、基本的な精神は一体どこにあるべきかということを、是非何 かのときに確立していただきたいということでございます。 (岩田委員長)  ありがとうございました。大変基本的な、そして大変難しいと言いますか、この委員 会報告の冒頭に生活保護の性格とか機能ということについて改めて書く必要があるなと いうふうに今、議論を拝見して思っています。  今、伺って、社会規範との関係でどういうふうに生活保護を位置づけるかというの は、恐らくこの委員会の中でも対立した意見があるだろうと思いました。しかし、生活 保護がどういう機能を果たさなければならないかということについては、一致していま すし、それはさっき京極委員がおっしゃったように独自の位置がある。国が国の責任と して、そして国民の権利としてあるというようなこととか、他法との関係でも、出れば 引っ込むし、向こうが引っこめば出ていかざるを得ない。そういう形で最低生活を守っ ていく。尊厳の考え方は二種類あるだろうと思いますが、最低生活を維持することによ って、人間の尊厳を守っていく。しかし、自助という規範は他方でありますから、そう いうものとどういうふうに折り合いをつけていくかという基本的な問題があると思いま す。  しかも、日本の生活保護制度は、田中委員おっしゃったように、貧しい時代にすべて の国民の生活困窮を一般的に引き受けるという非常に包括的な制度としてあるのですか ら、今のような議論を、何が出やすいかという議論をやろうとすると、さっきの大川委 員の話ではありませんが、最初から態度の違う人たちがいっぱい入っているわけです。  それから、生活保護世帯には全く収入がゼロで全部生活保護という方もいらっしゃる と思いますが、多くの場合はむしろそうじゃなくて、補足的なものです。年金の補足と か、母子世帯の方の場合も、働いている世帯の比率が諸外国と比べたら圧倒的に多いわ けです。ですから、全く自助努力をしていないというわけでもないですから、その辺り のことも考えながら、一方で他法との関係で長期になってもしようがない人たちもいる わけです。これは年金の補足みたいものが別途あるとか、失業扶助があるとかというこ とであれば議論は簡単ですが、そうなっていない。何もかもごっちゃにして生活保護で 議論するということは大変難しい問題があると思います。今日は田中委員がおっしゃる ように、いつも時間がないので、私も大変その時間のなさにストレスを感じているので すが、いずれにしても、もう時間が来てしまいました。その辺も最終報告もにらみなが ら、次回、労働能力活用の問題、施設の問題、それから今日また新たな御意見、資料が 出ておりますので、少し積み残しの問題との根本的な問題について議論したいと思いま す。できる限り、タイムリミットがありますから、延々とやっているわけにいかないの で、議論できた範囲のことで報告するしかないと思いますので、次回にということで御 勘弁願いたいと思います。  鈴木委員、今日御発言いただいた方がいいですか。 (鈴木委員)  できれば1、2分いただければと思います。  前任の麻生部長から人事異動で4月に栃木県の保健福祉部長になりました鈴木でござ います。  議事が戻って申し訳ないのですが、前回議論をさせていただいた預貯金と手持ち金の 保有容認等について、松浦委員ではありませんが、財政的な立場から、新しいデータが ありましたので、若干補足させていただきたいと思います。  一点目は、栃木県の所管のある福祉事務所で、昨年度1年間の申請件数を分析してみ たところ、今0.5 ヵ月ということになっているのですが、0.5 ヵ月以下が59%、0.5 ヵ 月から3ヵ月というところで31.2%ということでありました。もちろん、これで支出が 増えるというわけではないのですが、松浦委員の御発言にありましたように、財政的な 影響を受けるということは無視できませんし、ここをどう考えていくのかというところ がなかなか難しいと思います。  二点目は、これはもしかして私の聞き損じかもしれませんが、入口のところは恐らく 0.5 ヵ月から3ヵ月とかの議論があったかと思うのですが、出口のところできちっと議 論をしたのでしょうか。つまり、入口をもし広げるのであれば、出口もきちっと自立支 援しやすいような形で整理するということが必要だろうと思います。  そういう意味ではどの額であれば認めるのか、どの支出であれば認めるのかというの は、やはりきちんと議論すべきだと思いますし、もし、自立支援のための額というふう に認定をするのであれば、万が一、支出を受けられている方で亡くなった場合に、その 額が相続されてしまうということについてもやはり考えるべきではないかと思います。  三点目は、最後になりますが、世帯間のバランスで、どの世帯でも同じ月数を考えて いいのだろうか。例えば先程母子家庭についてはいろんな事情で支援する仕組みが必要 だろうということもありましたし、恐らく高齢者については、働くということは余り考 えにくいということもあろうと思いますので、その一律性についてもやはり議論が必要 なのかという気がします。  以上です。 (岩田委員長)  そのうちの幾つかについては、かなりもう議論がされていまして、特に相続について は、もちろん、容認しないような方向で何らかの制度的な措置をすべきだというのがこ こでの合意です。資産の蓄積に関してはですね。これは不動産の所有についても同じよ うな方向が考えられないかという意見で一致を見ています。  自立についても相当な議論はしてきましたので、0.5 を3か月にすると、3割くらい の人が参入してくる可能性があるということは大変具具体的なデータで、やはり運営す る場合に、当然そういうことを配慮しなければならない。  ですから、その点も踏まえて、そうしましたら、次回は資産についてもある程度の、 0.5 なのか3なのか、あるいはその間くらいなのか、議論をもう一回することにしたい と思います。  その場合、0.5 になってはじかれた0.5 から3の人はどうしているというのはまたデ ータでありますか。 (鈴木委員)  その中で認められた人もおられるので、そういうデータはあるのですが、そうではな い方はなかなか難しいかもしれません。 (岩田委員長)  例えばどういう制度にそういう人は結び付いたとか。ちょっと時間を取って申し訳な いのですが、入りやすく出やすいという話は、一つは、最初から出やすい人を入れよう という話です。つまり、最初から二つある。短期型で余り丸裸になっていない人が厳し くすると排除されるので、本当に大変な人が入ってくる。それは一つの機能ですから、 大事なことですが、したがって、そんな簡単に自立できないというのが現状である。  そうだとすると、もう一つは、割合短期に、ちょっと手を貸せば自立できるような人 を入れて回転を早くしていくと、同じお金がたくさんの人に回ることになりますね。長 期にずっと続けているのではなくて、もっと小刻みに続けていくイメージです。  そういうような感じの議論が出やすいというのが、もう一つの考え方としてはある。 今まで出にくいと思った人にもどうやって自立支援を働きかけるかという問題は、さっ きのような議論としてはあり得ると思います。  ですから、全然自立の議論をしていないというか、ずっとしてきたというふうに私は 思っています。その点も含めて、労働能力の活用、資産といった補足性の原理のところ が、全体的な包括的な、無差別平等の生活保護制度と社会規範との言わば接点になると ころなので、大変難しいところです。次回の議論で、ここでの完全に一致できないとこ ろはそういうふうに書くしかないので、どういう御意見でできるかということを大体ま とめの方向に行くということを、皆様是非念頭に置いて議論していただきたい。また、 全く触れていなかった問題ですが是非取り上げてほしいということが恐らくあるだろう と思います。その辺も含めて、少しまとめの形で次回、労働能力の活用と、この資産問 題について議論したいと思います。それから田中委員、保護施設についてはどういった ことが論点ですか。 (田中委員)  お願いしようと思ったのですが、せっかくのいい機会ですので、この委員会で委員の 先生方が救護施設等の保護施設に対して、どういう御意見を持っておられるのか。ある いはどういう期待をしておられるのか。あるいはどうあるべきかということを是非、日 程ももう一回、8月に予備日があるようですが、この趣旨が入れば大変ありがたいと思 っておりますが、よろしくお願いいたします。 (岩田委員長)  はい、わかりました。それとさっきの地域移動の関係で言うと、何回か田中委員の方 から出ていた保護施設やその他、ある種の住宅との関係で保護世帯が地域的に集中する という問題についての問題が、実際上、いろいろな地域ルールができてしまっていま す。こういうことをどう考えるかというのは、実は現実的には非常に大きな問題がある のですが、そういうことにもしも触れられれば、意見として幾つかいただきたいと思い ます。  申し訳ありません。時間がもう超過してしまいましたが、今日の議論はこの辺までに させていただきたいと思います。  前回、お認めいただきました起草委員会の設置ですが、そのメンバーとして、私と根 本委員と岡部委員ということでやっていきたいと思いますが、よろしいですか。               (「結構です」と声あり) (岩田委員長)  御承認いただければ、この起草委員会で、まだ議論の途上なのですが、非常に膨大な 議論がありますので、少し取りまとめの作業をしていきたいと思います。そのやり方な どについては、これから事務局の方で御説明いただきますが、全体としては今の生活保 護の位置づけ、理念、先ほどの難しい話もどのくらいまで入れるかわかりませんが、や はり社会保障の中での生活保護制度の特徴ということを是非強調して、それから水準の 問題と制度の在り方の問題、それから議論が出たが、十分議論できない問題ということ も最後に幾つかまとめておきたいと思っていますので、是非また御意見をいただきたい と思います。  では、事務局より意見の取りまとめまでの今後の進め方についてお願いします。 (事務局)  今後の取りまとめについてですが、起草委員会につきましては、御了承を受けまし て、早急に開催をさせていただきまして、最終的な意見の取りまとめの案を作成する段 取りに入りたいと思っています。  次回の専門委員会におきまして、今回の積み残しの議論とともに、その報告の内容に ついても、御議論いただくということを考えています。  先ほど御紹介もありましたが、8月の上旬にも一応予備日という形で議論する機会を 設けているところでございます。  以上でございます。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。何か今のことについて御質問とか御意見ありますか。 (事務局)  それでは、予備日の件も含めまして、今後のスケジュールについて御説明いたしま す。次回の委員会の日程につきましては、7月26日月曜日、15時〜17時におきまして、 この部屋におきまして、開催したいと考えております。予備で儲けております次々回に つきましては、8月2日月曜日の15時から17時を予定しております。詳細につきまして は、追って御連絡を差し上げたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 (岩田委員長)  それでは、ちょっと忙しいことになりますが、よろしくお願いしたいと思います。  それでは、時間超過で申し訳ございませんが、本日の委員会はこれで終了いたしま す。 ありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)