04/07/07 薬事・食品衛生審議会血液事業部会 平成16年7月7日議事録         薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年7月7日(水) 10:00〜   KKRホテル東京 孔雀の間 2.出席委員(18名)五十音順   ◎池 田 康 夫、 大 平 勝 美、 岡 田 義 昭、 小 幡 純 子、    川 西   徹、 倉 田   毅、 白 幡   聡、 高 橋 孝 喜、    田 島 知 行、 田 中   滋、 中 村 雅 美、 花 井 十 伍、    比 留 間  潔、 幕 内 雅 敏、 三 星   勲、 宮 崎 久 義、    山 口 一 成、 吉 澤 浩 司 (注) ◎部会長  ○部会長代理    他 参考人6名   欠席委員(4名)五十音順    清 水   勝、 平 澤 博 之、 幕 内 雅 敏、 森  眞 由 美 3.行政機関出席者   阿曽沼 慎 司(医薬食品局長)、 鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、   吉 岡 荘太郎(総務課長)、 金 井 雅 利(血液対策課長)、   浦 山 隆 雄(血液対策企画官)   他 4.備  考   本部会は、公開で開催された。 ○血液対策課長 ただいまから平成16年度第1回血液事業部会を開催させていただき ます。なお、本日は公開で行うこととしておりますので、よろしくお願い申し上げます。 本日は委員22名中現在16名の御出席を頂き定足数に達しておりますので、薬事・食品 衛生審議会令第九条により本部会が成立しましたことを御報告申し上げます。  まず、委員に異動がございましたのでお知らせいたします。日本医師会の人事異動に 伴いまして、櫻井秀也委員から田島知行委員に替わりましたので御紹介いたします。 ○田島委員 田島でございます。 ○血液対策課長 よろしくお願いいたします。また、国立感染症研究所血液・安全性研 究部長の山口一成委員が新たに就任されましたので、御紹介いたします。 ○山口(一)委員 山口です。よろしくお願いいたします。 ○血液対策課長 よろしくお願いいたします。また、本日は説明員として当部会安全技 術調査会委員である国立医薬品食品衛生研究所の山口照英委員にお越しいただいており ます。よろしくお願いいたします。 ○山口(照)説明員 山口です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○血液対策課長 次に、事務局に人事異動がございましたので簡単に御紹介いたします。 4月1日付けで課長補佐として中山と佐藤が就任いたしました。  なお、今回は前部会長の溝口委員が退任され、後任の部会長が決まっておりません。 したがいまして、部会長が選出されるまでの進行につきましては水柿部会長代理にお願 い申し上げます。 ○水柿部会長代理 それでは暫時進行をさせていただきます。議題1の「部会長選出」 でございます。審議会令第七条第3項に基づきまして部会委員の互選により選任すると いうことになるわけでございますが、部会委員が池田委員お一人でございますので、池 田委員にお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。ありがとうございます。 池田委員、よろしゅうございますか。それでは部会長席にお移りください。 ── 池田委員、部会長席へ移動 ── ○水柿部会長代理 それではこの後の議事進行を池田部会長にお願いしたいと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ただいま皆様に部会長に御推薦いただきました、慶應義塾大学の内科の 池田でございます。御存じのように現在医療問題に関して社会の関心は非常に高いもの がございます。医療事故の多発を含めて安全な医療が我が国の緊急の課題だと私も考え ております。厚生行政の中でこの血液事業部会というのは非常に重要な位置を占めると 認識しておりますので、委員の先生方の御協力をもちまして何とかこの部会長を務めさ せていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは座って早速議事に入らせていただきます。本日はお手元にありますようにか なりたくさんの議題がございますので、手際よくやらせていただきたいと思います。最 初に議題2、「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NA T)の実施に関するガイドライン(案)について」でございます。この案については3月 19日に行われた部会で御説明いたしまして、その後特別な意見は頂きませんでした。そ の後本日お越しいただいております安全技術調査会委員の山口照英先生に付録の用語集 及び注意事項を作成していただきまして、6月1日に安全技術調査会でいろいろ議論い たしまして御承認いただいたという経緯がございます。そして事務局の方で6月7〜 21日にかけてパブリックコメントを求めておりまして、これに対して幾つかの意見が寄 せられました。その意見に対する考え方も含めて、山口先生の方から御説明を頂けたら と思っております。なお、安全技術調査会の岩本座長からは事務局に対して、山口委員 にパブリックコメントに対する回答は任せるという指示がございましたので、これにつ いて早速山口先生の方から資料を基にして御説明いただきたいと思います。よろしくお 願いします。 ○山口(照)説明員 ありがとうございます。それでは時間がございませんようですので、 資料B-2を見ていただければと思います。パブリックコメントで寄せられた意見につい て、すべてのコメントに触れることはできませんので、適宜かいつまんで御説明させて いただきます。  3ページを御覧いただけますでしょうか。もともとこのNATガイドラインというの は血漿分画製剤の安全性確保のための親ガイドラインがございまして、それを補完する ための技術的なNATガイドラインという位置付けでございます。その中に、標準化さ れた方法等を検証するための施設間の共同研究等を行いうんぬんという言葉があるとい うことで、その点についてはどうかというコメントでございます。このコメントに関し ましては小委員会あるいは調査会等で議論いたしまして、今様々なNATの手法が用い られていることから、技術そのものを共通化することはかなり困難であろうと。ただ、 その検出感度や検出精度そのものを統一した基準で見るということで、小委員会でHC V、HBV、HIVの国内標準品をNIBSCの標準品を用いて作製し、これらの国内 標準品を用いて検出感度等を担保することを目指すという方針でまいってきておりま す。これらの国内標準品はすでに完成しておりまして、後ほどちょっと触れますけれど も、それぞれHBV、HIV、HCVについてどのような共同研究を行ったかというこ ともいずれ発表する予定になっております。  次の4ページの下段を御覧いただけますでしょうか。ジェノタイプ、バリアント、サ ブストレインなどいろいろな定義があるのですけれども、その点について用語集で記述 していただきたいということです。これに関してはもともとFDAのガイドライン等も どういう表現をしているかといいますと、例えば「サブタイプ/バリアント」、要するに ウイルスの様々な遺伝子配列の違いをがん原性をもってどのように検出できるかという ことを説明しているということでございますので、その点で用語については統一させて いただきましたけれども、そういうことで御理解いただければと考えております。  次は5ページの一番上でございます。5行目に「適当な参照パネル」とあるけれども、 注意事項等で最低限「参照パネル」とはどういうものかを例示していただきたいという ことなのですが、国内的には今広島大学の吉澤先生が班長でこの3月までやっておられ た厚生労働科学研究費でHCV、HBV、HIVのパネルが今設定されようとしており ます。国内的にはこれが使用可能になると思いますので、これを適宜利用して担保して いければと考えております。ただ、国際的にはこのガイドラインに書いてありますよう に、「ウイルスパネルの選択に当たってはウイルスの分布と流行に関する地理的な疫学 データを参照すること」、すなわち海外メーカー、輸入メーカーの場合にはその地域の ウイルスの疫学的な点も含めてやるということから、今作っていただいている国内のも のがそのまま使えるかどうかはちょっと疑問ですので、そういう仕分けにしたいと考え ております。  次に6ページの真ん中、7行目で「適切な統計学的な手法」ということが書かれてお りますけれども、これに関しては今国立感染症研究所の岡田先生のところでHBV、H IV、HCVの国内標準品について論文をまとめていただいておりますし、その中でも 統計学的な処理については触れていただいておりますので、そのような形で公表されて いくものと理解しております。  次に7ページの一番上のところを御覧いただけますでしょうか。3行目に、標準物質 (参照品)設定の参考資料に資するために、国内標準品設定時の国際標準品との「データ の互換性の保証」に関する資料を開示願いたいということです。先ほどちょっと御説明 しましたように国内標準品を今HBV、HIV、HCVと作りましたけれども、それに ついては順次それぞれのレポートとして報告する予定になっておりますので、その時点 で開示されるものと理解しております。  次に8ページの一番下のところを御覧いただけますでしょうか。「注意事項*7」の 2行目ということで、「検出感度の設定に当たってコピー数での表示を求めるものでは ない。」について、「IU」、「コピー」、「ゲノム当量」の使用は許容されると考え てよいかということです。NIBSCの国際標準品もありますが、それを用いて国内標 準品を作ったわけでございますけれども、国際標準品もすべてIU表示でされておりま す。もちろん国際標準品のそれを用いて何らかの手法でコピー数を出して、それを用い てあるいは国内標準品を用いてそのコピー数で換算することも可能かと思いますが、今 作られている国際標準品、国内標準品もすべて基準をIU表示でされておりますので、 コピー数にすることが意味がないというわけではないのですけれども、そういう意味で はIU表示でされるのが一番妥当ではないかと考えております。ヨーロッパのEMEA はIU表示でございますし、FDAもIU表示に変わりつつあると聞いております。  最後の9ページを御覧いただけますでしょうか。「注意事項*8」ということで、4 課長通知ではHBV、HCV、HIVともプール血漿で100IU/mLという精度管理を求め ているという点と、HCVについては5,000IU/mLという、これは「通知されている」と 書いてあるのですが、通知されておりませんでして、小委員会、調査会等ではHCVに ついては標準を作った際に5,000IU/mLとするということが一応決められております。た だ、HBV、HIVの検出感度については、要するにミニマム・リクワイアメントとし ての検出感度については設定されておりませんが、いずれこれについては別途通知する ということになっております。ただ、この場合に4課長通知で出された5,000IU/mLとい うのは原料のプーリングの段階での話でございまして、このスクリーニングの話とはち ょっと異なっておりますので、この点について100IU/mLがそのまま使えるかどうかは分 かりませんけれども、もしこれが使えるとしても別途調査会あるいは部会等で議論して いただく必要があるのではないかと考えております。説明については大体以上でござい ます。 ○池田部会長 ありがとうございました。これについてかなりたくさんの質問が来てい たわけですけれども、山口先生の方で非常に詳しく御回答を用意していただきましたが、 ただいまの報告について委員の先生方で御意見、御質問がある方はいらっしゃいますで しょうか。吉澤先生、どうぞ。 ○吉澤委員 国内の標準品につきましては、WHOの標準品とのキャリブレーションが できるようにしてもう使える状態になっております。HBVとHCVについては既に完 成しておりまして、HIVについては最終の段階ですので、もう少しで使える状態にな ります。 ○池田部会長 ありがとうございました。標準品は非常に大事な問題ですので、ただい ま吉澤先生からお話がありましたように準備ができているということでございます。そ のほかどなたか御意見ございますでしょうか。3月の部会で基本的な考え方は原則とし て了承いただいておりました。そして補足、付録を新たに作ったことについて、もちろ んそれも含めてパブリックコメントを求めたわけですけれども、御質問について逐一お 答えいただいているということですから、いかがでしょうか。先生方特別に何か御意見 ございますか。もし特段の御質問がないようでしたらば、このパブリックコメントに対 する回答をいかした形で、山口先生と事務局に調整をお願いしたいと思います。  このパブリックコメントに基づいてガイドラインの修正も一部必要かと思いますの で、その点についても事務局と御相談いただいて、最終的には事務局と部会長の方に一 任させていただけたらと思います。最終案ができたところで関係各位に通知をするとい うことになると思います。一般的に言うと、ガイドラインというのは一度作ったら未来 永劫これで行くというものではございませんので、場合によっては逐一改訂していくと いう作業は必要かと思います。今回は安全技術調査会でも非常に議論されたところであ りますので、委員の先生方特段の御意見がなければこれで御承認いただくということで よろしいでしょうか。ありがとうございました。  なお、先ほど吉澤先生からお話がありましたように、標準品についての振り分け、そ れから品質管理のための定期的なコントロールサーベイについても、山口先生と事務局 で検討していただけたらと思います。引き続きよろしくお願いいたします。  それでは議題2はこれで終了させていただきまして、次の議題3に移らせていただき ます。これも非常に重要な問題でございまして、「輸血用血液等の遡及調査に関するガ イドライン(修正案)について」でございます。これについては皆さん御承知だと思いま すけれども、昨年8月に日本赤十字社が策定するとしていたことを踏まえまして、3回 にわたって安全技術調査会でも検討し、6月1日にやはり安全技術調査会で御承認を頂 きました。本日は6月9〜23日までに頂いたこのガイドラインに対する意見募集の結果 も含めて、御説明いただきたいと思っております。本日は日本赤十字社の方から参考人 としてお三方をお呼びしております。お一人は日本赤十字社事業局技監の田所憲司さん でいらっしゃいます。もうお一方は日本赤十字社事業局血液事業部長の白戸恒勝さんで ございます。もうお一方は日本赤十字社血液事業部次長の金光公浩さんでございます。 発言席の方へどうぞ。 ── 参考人着席 ── ○池田部会長 よろしいでしょうか。それではこの遡及調査の件について御説明いただ きたいと思いますけれども、田所先生お願いできますか。 ○参考人 それでは遡及調査のガイドラインについて御説明いたします。これは日本赤 十字社が遡及調査の方針として独自遡及調査自身が従来不備であったという指摘があっ た中で、その不備自体途中までは審議されておりながら最終的には審議会としても結論 が出ていなかったということで、日本赤十字社だけでなくて全体の不備であったという 具合に私は認識しております。しかし、実際に実施する我々がまずは具体案を提示しな ければいけないだろうということで出させていただきました。  昨年来案を出させていただきましたが、その中で幾つかの御意見を頂きました。その 中で大きく変わった点は、一つは梅毒の遡及調査の対象として新鮮凍結血漿は除外して いたわけですけれども、これについては必ずしも安全性が担保されていないことから、 除外するのは冷蔵保存されていた全血・赤血球製剤のみとするということに変えさせて いただきました。  それからHIVの50プールNATの陽転時の遡及に関しまして、核酸増幅検査だけが 陽性になった場合にそれが感染初期かという問題については、抗体が検出できない場合 もあり得るので必ずしも急性感染の初期とは言い難いという御指摘もありまして、HI Vの50プールNAT陽転時についても、ある一定期限を決めずに可能な限りさかのぼる ということにいたしました。  それからB型肝炎の遡及につきましては、急性期の初期のいわゆるウインドウピリオ ドについての遡及以外に、B型肝炎ウイルスの持続感染を起こされている方があり得る ので、そういう人たちを区別して遡及すべきであるという御意見が出されました。これ については、まず遡及調査自身はもともとは急性感染を想定して開始されたものではあ りますけれども、その過程で持続感染を起こされている方の検査で検出できない例があ りましたので、これについても新たに加えることにいたしました。持続感染があればず っと遡及するということがあり得るわけですけれども、当面可能な第一歩といたしまし ては、まずは可能な限りさかのぼって検査が陰性になるまで遡及するということにいた しました。  それからこれらの遡及調査というのは最終的に確定されたものではありませんので、 3ページの冒頭にありますように、研究的に必要な調査は並行して行うということがあ ります。同時にそうした2年間の遡及調査の実施と研究的な調査を併せて2年をめどに 見直すということにいたしました。  以上が御意見を頂いて修正された内容ですが、1ページの下段で「なお、医療機関か らの感染症情報により遡及調査を開始することは」ということで、医療機関における記 録の作成と輸血前後の検査の重要性について述べられている項ですが、これについては 当初我々の案では輸血前の保管検体の確保が必須であるということを述べておりまし た。これは昨今の事例でも分かりますように、輸血を受けた人の中では以前から感染し ている人がかなり多いと。輸血後あるいは輸血前後の検査を行っても、本当に輸血以前 からその方が感染しているかどうか不明であるということがありまして、その意味では 検体保管が必要であるということを述べさせていただいておりました。ただ、これにつ いては医療機関において現状ではなかなか実施不可能であるという中で、最大限輸血前 後の検査はしていただきたいという内容として書かれております。  ただ、保管検体が必要であるということについてはますますその重要性がいろいろな 例の中から出てきておりますので、今回はこの形で出させてはいただきますけれども、 今後においては輸血後の感染症に関する救済制度の中では保管検体の調査がどうしても 必要になってくるということを踏まえて、是非検討いただきたいと思います。また、医 療機関における遡及調査の実施というのは製造業から見れば医療機関への協力と、お願 いするという格好になるかもしれませんけれども、本来の目的である患者の安全という ことから言えば必須、ある意味ではやらなければいけないことだろうと思います。そう いう意味では、今後このガイドラインを出して医療機関に具体的な実施を求める際にお いては、協力を求めるということではなくて正に実施を求めるということで是非お出し いただきたいし、それができるために保険的にバックアップするということも含めて、 やはり今後の問題としては御検討いただきたいと思います。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま田所先生の方からこの遡及調査に関 するガイドラインの御説明を頂きました。どういうふうに遡及調査をやっていくかとい うこと、そして後半には医療機関の責務ということにも言及していただいたわけですけ れども、御意見、御質問をお願いしたいと思います。どうぞ、花井委員。 ○花井委員 遡及調査のガイドラインの位置付けについて、今田所技監の方からもちょ っとそれに触れた御発言があったように思います。遡及調査のこのガイドラインの案は 日赤が作ってきたものだということになっていると思うのですけれども、今田所技監も 言われていたように医療機関の協力によってということになっているわけです。これは 採血事業者のガイドラインであるからだと思うのですけれども、やはり遡及調査という のは例えば患者の輸血前輸血後検査、議論になっていますね。そういったものを含めて 患者が、例えば自分は感染していないということをきちんと医療機関が伝えるとか、そ ういったところで完結する部分があると思うのです。  したがいまして、現時点でこのガイドラインの中身についてはまた先生方の御意見を 頂きたいと思うのですが、あくまでこれは日赤が作ってきたガイドラインであって、や はり全体のいわゆるヘモビジランスという観点からいけば、部会としてはその医療機関 の責務というよりも、医療機関が遡及調査できる…、やはり責務ですね。各関係者の責 務も含めて、やはり全体のガイドラインという位置付けにすべきではないかと思います。 場合によってはそれが一つの基準となって、ガイドラインからまたそれは法令その他の ものにレベルが上がっていくということはいいと思うのです。ただ、これは日本赤十字 社と限定していますし、もちろん日本では唯一の採血事業者であるわけですが、行く行 くはこれはレギュレーションになることを考えれば、やはり部会としては採血事業者の 責務と医療機関の責務、包括的なガイドラインを策定すべきであって、どうも先ほどの 日赤の説明によりますと、このように頑張るけれども、医療機関にはお願いベースだか らそこはどうなっているのですかと。ちょっとそこは責任逃れとは言いませんが、結局 そこは採血事業者としてはお願いしかないのだというところも出てきたわけですから、 それはある意味で一面の真実を言っていると思うのです。ですから、そこの位置付けに ついてやはり明確にしておかないと、一採血事業者のガイドラインにここでお墨付きを 与えたのだと。日赤が作ったのだという日赤の主体性と、だけれどもお墨付きはこの正 式な場で与えているのだということになると、何か責任の所在若しくは位置付けについ て非常に不明確になるのではないかという懸念があるのです。そこをはっきりしていた だきたいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。このガイドラインの位置付けについて御意見 を頂いたわけですけれども、そのほか委員の先生方から御意見ございますか。どうぞ、 比留間委員。 ○比留間委員 全く花井委員のおっしゃるとおりで、この案が医療機関に出されてもか なりの責務という形でないとリアリティーがないという気がします。例えばこれだけ頻 度が低くなった既知のウイルス感染症の安全性を更に高めるという、かなり究極の取組 なはずです。それを実効性あるものとするとしたら、やはり田所先生がおっしゃったよ うに患者さんの輸血前の検体を検査するなり保管しない限りは、その目的は到達できな いのではないかというぐらい…。それを医療機関でやろうとすると、よほど責務という 形でない限り、病院に保管検体の冷蔵庫を買ってくれと言っても買ってくれるわけがな いということもありますので、花井委員がおっしゃるように、その辺を本当にどこまで 本気になってやるのかということを責務という形で病院に突き付けない限りは、実効性 が乏しいのではないかと思います。 ○池田部会長 そのほかいかがですか。どうぞ、大平委員。 ○大平委員 今のお二方の委員と同じような意見なのですが、血液の安全監視体制全体、 ヘモビジランスを考えていきますと、やはりこの遡及体制というのは大変重要で、日本 赤十字社の独自のガイドラインということで案は出ましたけれども、これについては国 がどういう方向性で責任を持ったオフィシャルなガイドラインを作るかということが大 切。やはり国内と海外との問題もそこでそごが起きてくるというところもありますので、 いろいろな観点からの日本案を頂いて、それを国がしっかりとガイドラインとして示す ことがやはり重要なのではないかと思います。また、遡及体制が機能するため先ほどの 医療機関での問題と、あと献血者の方たちに御協力をしていただくためいろいろなお願 いをしなければいけないということもあります。この献血者へのお願いの問題について も、日本赤十字社から出すお願いだけでいいのかどうかということもありますし、やは り国として献血者の方たちに何かあったときにいろいろな御協力をお願いするという問 題についても、遡及の問題としてここで取り組まないといけないと思いました。 ○池田部会長 分かりました。田島委員、どうぞ。 ○田島委員 先ほどから医療機関の責務とするというお話がございまして、これは大変 重要なことだと思うのですが、責務とするというよりはまずその保管検体が重要である というお話でしたね。確かに比留間委員がおっしゃったように、保管するための設備投 資などは実際問題なかなか大変だと思うのです。ですから、例えばそういうものは輸血 する前の検査が保険適用になれば、医療機関としては非常にやりやすいものが出てくる。 しかしながら、そうではなくてそれを取っておいてそれをいつということになれば、そ の保管の間の汚染の問題とか、それから紛れてサンプルがどこに行ったか分からなくな るような問題も実際的にはあると思うのです。そのときに別のサンプルを渡したりする 場合もあるということなので、その時点ではっきりとそういうことが分かるようなシス テムを採っていただければ、それは有り難いと思っております。 ○池田部会長 そのほかにございますか。どうぞ、吉澤委員。 ○吉澤委員 今までの各委員からの御意見とほとんど同じなのですが、私はこの点に関 しては今の議論をしていても先へ出ないだろうと思うのです。輸血を伴う医療の終着点 を、輸血を受けてからある一定期間後の検査をし、そして感染していなかったという確 認を可能な限り早く患者さんに返すというところに置くべきだと思います。このガイド ラインはそこへ到達するステップであるという位置付けがよろしいのではないかと思う のです。日赤が全数調査をやっておりますが、そのプロジェクトの中の一員として見て おりますと、疫学のバックグラウンドから見てもそうなのですが、現在60歳を超える人 たちについて輸血をした後のワンポイントでチェックしますと、HCVのキャリア率は 10%弱あります。これは新たな感染なのかキャリアなのか、我々から見れば新たな感染 でないということはすぐに分かることなのですが、その証拠を示すためには輸血前の血 清が必要になります。HBVについて見ますと大体2〜3%はキャリアです。ですから、 この遡及調査のガイドラインはそういうことを明らかにしていくステップであって、本 来からいえば輸血医療の終着点をどうすべきなのかというところは、やはり日赤にだけ 責任をかぶせてもなかなかうまくはいかないわけで、これは国の施策として考えるべき だと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま各委員から、我が国の輸血医療の中 でのヘモビジランスの位置付けについて非常に重要な御意見を頂いたと思います。この 遡及調査のガイドラインはもともと日本赤十字社がどういう格好でやっていくかという ことで作られたと理解しております。吉澤委員はその最初のステップとしてのガイドラ インであればいいけれども、もっとその先へ行ってほしいという御意見だったように拝 聴しましたが、事務局の方から何かございますか。 ○血液対策課長 まず輸血前後の感染症マーカーにつきまして、総合対策のところでま た御説明しますが、資料D-1の19ページを御覧いただきたいと思います。「7 輸血後 感染症対策等の推進」の(2)の在り方の検討で、次の20ページには「<関係部局等> 医 薬食品局、保険局」ということで、当然関係部局が一体となってこの件について検討し、 取り組んでいきたいと考えているところでございます。この日赤の作りましたガイドラ インの位置付けでございますが、昨年8月に安全対策7項目の一つとして日赤がやられ るということを宣言されたわけで、その線で今までここに来たわけでございます。そう いったことから、やはりこれは日赤のガイドラインとして位置付ける必要があると思い ますが、こういった審議会で御議論いただいたと。それを踏まえまして、やはり周知と いう面では当然国の方も大きく関与して、医療機関にも必要な協力を求めていきたいと。 その場合医療機関の協力というのも、例えば周知するときは通知を使いますので、通知 の中に何らかの形で御協力いただきたいと。ただ、今のところお金がないとなかなか協 力以上のことはないと思うのですが、先ほども申しましたように保険で何とかというふ うにも考えていますので、そのときにはやはり積極的にお願いしていくといいますか、 指導していくことになると考えております。 ○池田部会長 総合的な対策については後ほどの議題4でもまた議論が出るかと思いま す。非常に重要な問題をたくさん含んでおりますので、このガイドラインについては日 本赤十字社が採血事業者として作ったガイドラインをここで議論していただいたという 位置付けで、しかし、さりとてそれですべて終わってしまうわけではなくて、総合対策 の中で先生方から頂いた御意見を盛り込んでいくというお話だったと思いますけれど も、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうぞ、花井委員。 ○花井委員 総合対策の中でフォローアップするということなのですが、やはりこのガ イドラインについては、薬事法と血液法のいわゆる採血事業者の部分だけを切り抜いて いるという側面があると思うのです。この部会の機能から言っても薬食審ですので、そ ういった色彩を帯びることは仕方ないのですけれども、やはり先ほど吉澤委員が言われ たように、この採血事業者としての日赤のガイドラインを踏まえて、例えば今献血者へ のお願いということが先ほど意見で出ていましたが、献血者にあらかじめ何かあったと きに検査に来てくれるようなお願いをすべきではないかということも議論になっていま す。また、医療機関の方でもある程度環境整備ができなければ、責務とまでするのは困 難だという話もありますし、その環境整備も踏まえてそういう段階を踏んだ上で、やは り何らかの時点では国として全体の遡及調査のガイドラインを示すべきではないかと思 うのです。総合対策の中で受ける部分は受けるというやり方で、今回の段階ではともか くとして、今後部会としてやはり輸血医療の完結性をきちんと示す一段階であるという ことをはっきりしておいていただかないといけないと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま委員の先生方から頂いた御意見は非 常に近いものがあるのではないかと私はお聞きしましたので、ただいまの意見を踏まえ まして事務局は是非これについてまた考慮していただいて、多少医療機関への働きかけ の字句も修正をして、関係機関へ周知徹底していただけたらと思います。それでよろし いでしょうか。それではそういうことでこの議題は終わらせていただきます。  次に、今日先生方に少し時間を掛けて御議論いただきたい議題4でございますけれど も、「輸血医療の安全性確保のための総合対策報告書(案)について」です。これは3月 19日に行われたこの部会におきまして、総合対策の枠組みが了承されておりますけれど も、それをもう少し具体化する、進捗させなければいけないということで、既に4月の 運営委員会及び6月の安全技術調査会でこれを報告しておりまして、その後委員の方々 から別に頂いた意見も踏まえて一応この報告書を作成したというふうに理解しておりま す。それではまず事務局の方から資料D-1、「輸血医療の安全性確保のための総合対策 報告書(案)」の説明をお願いしたいと思います。その後先生方と議論したいと思います ので、よろしくお願いします。 ○事務局 それでは資料D-1に基づきまして説明させていただきます。ただいま部会長 から経緯については御説明いただきましたので、早速中身に入らせていただきますが、 時間の関係もございまして、また委員の先生方には1週間ほど前に資料をお送りしてお りますので、この場ではポイントのみを御説明申し上げたいと思っております。  それでは5ページを御覧ください。今回はこの5ページ以降五つの柱に基づく具体的 方針を合計で4省庁、12部局の協力の下取りまとめております。5ページに挙がってお りますのは、「3 健康な献血者の確保の推進」でございます。これが(1)から9ページ の(7)までございます。「(1)献血者に対する健康管理サービスの充実」について簡単 に申し上げます。「ア 背景及び課題」としましては、これまでは医療機関が日本赤十字 社に対して献血での検査結果を提供するよう依頼したケースもあるのですが、その手続 が煩雑なことから迅速かつ十分な対応ができておりませんでした。  こういった状況を踏まえまして、「イ 今後の方向性」にありますけれども、献血での 検査結果を健康診査、人間ドック、職域検診等で活用するとともに、地域の保健指導に も用いることができるよう、(1)本人の同意の上、日本赤十字社が関係機関の求めに応じ ていつでも当該情報を提供できる体制を整備するほか、(2)関係部局は地方自治体、医療 機関等関係機関に対し、周知又は必要な指導を行うとしております。  そして「ウ 実施に向けた具体的取組状況」として、平成17年度中の実施に向けて、 現在献血での生化学検査等の結果を日本赤十字社から地方自治体、医療機関等関係機関 へ円滑に提供できる体制として、本人を介して、紙媒体のほか、献血者カードの電子化 やフロッピーディスク等電子媒体を提供することなどによる手法を検討しているところ でございます。これらの体制が整った時点で、関係部局から関係機関へ周知等を行うこ ととなっております。関係部局とは御覧のとおりとなっております。  続きまして、「(2)献血制度の仕組みについての普及啓発」でございます。「ア 背景 及び課題」は割愛させていただきまして、6ページの「イ 今後の方向性」を御覧いただ きますと、下の方にある「<関係部局等>」にも挙がっておりますけれども、文部科学 省等の協力の下、若年者も含めて年齢層をより幅広く献血の意義(献血が命を助け合い、 支え合っていること等)及び血液の使用実態に関して効果的に普及するための方策につ いて検討することが望まれるとしています。また、日本赤十字社においては審議会等の 意見も踏まえて献血に係る交通費の償還の在り方などについて検討することとしており ます。  あとちょっと飛びまして、7ページの「(4)血液事業に関する年報の発行」でありま す。これについては別つづりになっておりますが、資料D-2を御覧いただきたいと思い ます。「平成16年版血液事業報告の発行について」という概要が一番上に付いているも のでございます。これについて簡単に経緯を申し上げますと、平成15年10月24日に開 催された血液事業部会において、血液事業の状況を総合的に取りまとめたいわゆる「血 液事業白書」が必要との意見を踏まえ、今般、平成16年版の事業報告をまとめたもので ございます。  これについては委員の皆様方には事前に御意見を伺っているところでございます。ポ イントはこの表紙に上がっている4点でございます。(1)でございますが、血液の安全 対策のための検査項目やウインドウ期、そして遡及調査等の解説を掲載し、血液事業の 状況をできる限り分かりやすくしたこと、これが13、16、17、26ページに載っておりま す。また、(2)でございますが、我が国の血液事業の概況について献血から輸血用血液 製剤等の製造までの流れを整理したこと、ちょっとページがまたがっておりますが、4、 5ページがこれに該当します。そして(3)でございますが、血液製剤の安全対策につい て、日本及び諸外国の輸血用血液製剤の検査項目・輸血後感染症のリスク等を明らかに するとともに、輸血用血液製剤の感染症報告の年次推移等を整理したこと。12ページに 我が国も含めた諸外国のリスクが載っております。また、18〜19ページに感染症報告の 年次推移等がまとめられております。また、(4)でございますが、血液製剤の安定供給 について、その課題等を整理したものが36ページに載っております。本日の血液事業部 会の了承を経て5,000部印刷し、日赤、都道府県等に配布するほか、厚生労働省のホー ムページに掲載し広く周知を図る予定でございまして、これについては毎年度更新して いく予定でございます。  もう一度資料D-1に戻っていただきまして、9ページを御覧ください。「(7)複数回 献血者の確保」が挙がっております。これは「ア 背景及び課題」にありますけれども、 複数回献血者は初回献血者に比べて献血による感染性ウイルスのすり抜けの危険性を理 解しているという報告もございまして、安全な血液を国内で自給するためには複数回献 血者のより一層の確保が必要であります。そのようなことからウにありますけれども、 具体的には平成17年度を目途に各血液センターに「複数回献血クラブ(仮称)」を設立し て、御覧のように(ア)〜(エ)までのサービス等を受けることができることとします。  続きまして10ページを御覧いただきますと、5本の柱の二つ目でございます。「4 検 査目的献血の防止」になります。これは13ページの(6)までが該当しております。まず、 10ページの「(1)無料・匿名の検査体制の充実」であります。これについては「イ 今 後の方向性」としまして、HIVについては保健所等を活用して、迅速検査や土日や平 日夜間も利用可能な無料・匿名の検査体制の充実を図ることとしております。具体的に は下にありますけれども、平成15年度から土日や平日夜間も無料検査所を開設している 「東京都南新宿検査・相談室」以外に、今年度は名古屋、大阪でも同様の施設を開設す るとともに、これらの状況を評価した上で順次拡大していく予定としております。また、 「イ 今後の方向性」にもう一つ挙がっておりますけれども、検査目的の献血者について は問診を強化することなどにより的確に検査目的か否かを把握するとともに、再度献血 ルーム等へ来所しないよう、問診医等が無料・匿名で検査を受けられる利便性の高い医 療機関、保健所等へ紹介する枠組みを構築する予定としております。  それから飛びまして12ページを御覧ください。12ページに(4)、(5)、13ページに(6) がございますけれども、これは一連でございまして、「(4)献血者の本人確認の徹底」 は10月には全国展開を図る予定としております。また、「(5)献血者手帳のIT化の推 進」については平成17年度の実施を目指しまして、ID機能を付与した磁気カードを献 血者手帳として用いること。また、13ページにございますけれども、「(6)問診医の一 層の資質向上(臨床研修必修化への対応を含む。)」については、平成17年度を目指して 諸外国の問診方法を参考に我が国独自のマニュアルを作成するとともに、全国の問診医 等に対して研修・講習会を定期的に開催する方向で検討するとしております。  続きまして、14ページについては後ほど日本赤十字社の方から説明がございます。  15ページを御覧いただきますと、これが四つ目の柱になります「6 医療現場におけ る適正使用等の推進」であります。これは18ページの(5)まで五つございます。15ペ ージを御覧いただきますと、「(1)輸血医療を行う医療機関における適正使用及び安全 管理に必要な体制整備の充実・促進についての検討」であります。これについては「ア 背 景及び課題」のところにありますけれども、平成15年7月に施行された血液新法で、「血 液製剤の適正な使用に努める」ことを医療機関の責務として明記していることなどによ りまして、血液製剤の使用量の一部は年々減少しておりますが、諸外国と比べますと新 鮮凍結血漿等の血液製剤の使用量が約3倍の状況にとどまっており、更なる縮減が可能 と想定されます。血液製剤の適正使用を推進することにより輸血量を減少し、これによ りウイルス感染等のリスクを減少させることができると考えられます。  そして「ウ 実施に向けた具体的取組状況」としましては、2行目になりますけれども、 本年度中には医政局、保険局、医薬食品局が協力して、輸血医療を行う医療機関に対し て適正使用に関する指導を徹底するとともに、都道府県や各血液センター等を通じて効 果的かつ効率的な先進事例(輸血医療アドバイザー制度など)を収集し、全国の都道府県、 血液センター、医療機関等関係機関に広く周知します。また、医学教育の中で適正使用 の必要性に関する教育の充実を促すとともに、医師国家試験の出題基準にも次期改訂時 の導入に向けて検討を行ってもらうことにしております。  また飛びまして17ページを御覧いただきますと、「(4)血液製剤の標準的使用等の調 査と結果公表」がございます。こちらの「イ 今後の方向性」としまして、輸血医療を行 う医療機関に対して、医療機関の特性に応じた血液製剤の「標準使用量」を提示し、当 該医療機関が実際の使用量と「標準使用量」を比較・検討し、血液製剤の使用に当たっ ては留意するよう求めていく予定としております。「ウ 実施に向けた具体的取組状況」 が18ページからございますが、現在研究班で調査中でありまして、報告ができ次第適正 使用調査会等へ諮って公表していく予定としております。また、平成17年度にはこれら 指標を踏まえた改善状況について評価するため、医療機関ごとの使用状況を把握するた めの調査を行う予定としております。  そして最後の5本目の柱が19ページ以降、「7 輸血後感染症対策等の推進」であり ます。先ほどお話にも出ましたけれども、「(2)輸血前後の感染症マーカー検査の在り 方についての検討」がございます。「ア 背景及び課題」としましては、「しかし」以下 ですが、現時点では保険診療としての裏付けがあるのはHIV、HBV、HCVの術後 検査のみであり、さらにはHIVを除いては回数、期間に関して明確な基準が設定され ておりません。「イ 今後の方向性」としましては先ほど課長の方からも話がありました けれども、20ページの上にありますが、血液製剤由来感染症が発生した際に因果関係を 把握するため、輸血前後のHIV、HBV、HCV検査の在り方について検討するとい うことで、医薬食品局、保険局が関係部局として挙げられております。今後保険局と調 整しながら安全技術調査会等へ諮って関係機関へ周知する予定でございます。  そして21ページを御覧いただきますと、一番最後に「(6)免疫学的な副作用対策の推 進」がございます。これまではウイルスを中心として御説明してきたのですが、22ペー ジの上の方にありますけれども、具体的には人為的過誤による血管内溶血、各種ショッ ク、循環不全、輸血関連急性肺障害等がございまして、これらの免疫学的副作用が目立 ってきており、早急な対策が求められるということです。「イ 今後の方向性」としまし ては、医療機関で適切な運用を図るための効果的な方策を検討していくことと、これま でほとんど調査・検討されてこなかった領域であることから、調査研究等による実態把 握が必要としております。一応先ほどの14ページ以外の説明は以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは引き続いて日本赤十字社の方から説 明をお願いできますか。 ○参考人 別紙1のところから説明させていただきます。日本赤十字社における血液製 剤に係る検査・製造体制の充実ということに関しましては、安全対策の8項目を既に述 べさせていただいております。「ア 遡及調査自主ガイドライン作成」については既にお 話を頂きました。  「イ 新鮮凍結血漿(FFP)の貯留保管」については最終180日の保管を目指しており ますが、この8月31日からは3か月の貯留保管を実施する予定でおります。成分献血者 等が今やや減少の傾向にはございますが、何とか実施してまいりたいと思っております。  次のページ、「ウ 輸血用血液の感染性因子の不活化技術の導入」に関しましては、現 在導入の可能性のある技術についてメーカーにも御協力いただいて順次評価を行ってい る、及び製造承認に当たっての審査期間の基本的な考え方も併せて問い合わせをしてい るところでして、本年度中には評価を終わらせて方向性を出していきたいと考えており ます。  「エ NATの精度向上」については50プールから20プールへの減少、精度向上を目 指しておりまして、ここには今秋を目途に実施しますということがありますが、準備が でき次第可能な限り早めて実施したいと考えております。秋の声を聞く前に何とか実施 したいと考えております。  それから「オ 医療機関での輸血後感染症に関する全数調査」については先ほど触れら れましたが、医療機関の協力を得て輸血前後の検査をしてその実態を調査し、その輸血 用血液の安全性についても評価を加えております。  「カ E型肝炎ウイルス(HEV)の疫学調査について」も、既に2,500本ぐらいの肝機 能異常のある血液について検査し、10数本の陽性血が出ておりまして、今後肝機能異常 のない方についても検討を進めてまいりたいと考えています。  それから「キ 保存前白血球除去の開始」については、成分採血由来の血小板製剤につ いてまず第一に始めようということで準備を進めてまいりました。この7月1日から既 にすべて白血球除去された製剤が出ております。そういう意味では出ているのですが、 その確認作業ということと、それから白血球除去するフィルターの医療機関における適 用についての考え方を変える、その通知をされるということもありまして、少し遅れて 10月ぐらいにはなるだろうと思います。確認作業が終わりましたという宣言は10月以 降になるという見込みでございます。  あと「ク 献血受付時の本人確認の実施について」は、既に3月から三つの地域で行っ ておりますが、10月からは全国的な実施をしていきたいと。その際にも本人確認の実施 に当たっては献血者の方の気持ちを損なわずに実施してまいりたいと思いまして、その 辺を十分評価した上で全国的な実施を行いたいと。また、持っていないから献血をして いただけないという状況については十分周知されたという時点まで、それを評価した上 で実施してまいりたいと考えております。  それから、それ以外の安全対策についてはnon-エンベロープ・ウイルスへの安全対策 ということで、パルボウイルスB19がない血液ということについて、今後適応と検査法 を併せて少し検討してまいりたいと思っております。また、細菌汚染の対策といたしま しては、日本においてどのような発生状況なのかということも評価しつつ、検査の在り 方についても今後評価、検討してまいりたいと考えております。  それから最後の別紙7、「(4)ヒューマンエラー予防対策」については今まで述べた 高度の技術的な改善と同時に、基本的な事業の実施に当たって人間が起こしがちな過誤 に基づいて重大な結果が起き得るわけでして、それらを想定して最大限予防していく方 策、あるいは起きてもそれを縮小するような形での方策を今後是非取り組んでまいりた い、そのことによって事業全体に対する信頼感を持っていただけるようにしたいと考え ております。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま事務局あるいは日本赤十字社の方か ら安全性確保のための総合対策として主に五つ、献血者の問題、検査目的献血の防止、 血液製剤の検査・製造体制、適正使用、それから輸血後感染症対策の推進ということで、 いずれも非常に重要な問題だと思います。項目ごとに御意見を頂きたいのですけれども、 委員の先生方にはあらかじめお配りしてありますので、この点について特にということ でまず御意見をお聞きしていきたいと思います。どうぞ、どの項目でも結構ですので、 その項目が出ましたらその項目を集中的に少し議論して、またほかの意見にというふう に行きたいと思いますけれども、どうでしょうか。どなたか御質問、御意見ございます か。どうぞ、田島委員。 ○田島委員 これは専門の先生に教えていただきたいのですけれども、別紙2の「エ N ATの精度向上」というところがございます。今まで50プールだと思っておりましたが、 今度これが20プールになると。これは確かに精度の向上にはなるけれども、遡及調査の 場合にはどうなのでしょうか。これでかなり有利になるプールの数字なのでしょうか。 その辺を教えていただきたい。 ○池田部会長 どうぞ、吉澤委員。 ○吉澤委員 これはスクリーニングをするときに可能な限り入るウイルスの量を減らそ うということでお考えになったと思います。単純に考えると、50本をプールしたもので NATをやるよりも20本をプールしてNATをした方が危険率が半分に減ると考えて しまいますが、そうはならないのです。ですから、これは可能な限りリスクを減らすと いう努力の表れということで、これをしたからリスクはこれだけ減るという関係にはな りません。遡及に関しましては従来どおり、1検体1NAT、これを個別のNATと言 いますが、そういう形でやる必要があると思います。 ○田島委員 では、遡及調査の場合にはそれはとにかく1検体ずつと理解してよろしい ですか。 ○吉澤委員 そうすべきだと思います。といいますのは、スクリーニングする検体の数 をちょっとお考えいただきますと、年間大体670万本献血されると言われています。そ の中で血清学的マーカーが陰性なものすべてについてNATをやるわけです。それを全 部個別でやるというのは物理的に現時点では…。 ○田島委員 経済的にも大変なことはよく分かります。 ○吉澤委員 これに対して、遡及に関してはそれほど数は多くないわけです。ですから、 そこのところは厳密に従来どおり個別の核酸増幅検査で、可能な限り微量のものも捕ま えながらルックバックしていくということが必要になると思います。 ○田島委員 どうもありがとうございました。 ○池田部会長 そのほかどなたか御質問、御意見ございますか。どうぞ、橋委員。 ○橋委員 検査目的献血の防止というのが非常に重要だと思いますが、何かすっきり しない…。確かにほかの無料検査所の開設ということも大切だと思うのですけれども、 実際に検査目的献血に来た人を問診を強化して排除すると。そして別のところに行って くださいというだけではなかなか問題が解決しないのではないかと思います。それから 通知をしていないという問題です。それからちょっと話が先へ行ってしまうかもしれま せんが、ボランティア情報というところに書いてある、「今改めて献血を考える」の「検 査で病気は分かりますか」というところに、少しエイズ検査目的の献血が増えて困って いるということが書いてあるのです。献血の現場で問診の最初に検査目的献血では困る のだということをかなりうたって、それは今後やめてほしいと。ただ、場合によっては これは日赤の体制で可能かどうか分かりませんけれども、今回検査目的で来たので検査 をしてくれという人用のシステムを作れないかと。そうやって別室を作ってしまった方 が、かえって献血の現場に混入することがなくなるのではないかと思うのですが。そう いうふうにしないと、別途方法があるからそちらへ行ってくださいというだけだと、私 は解決しないのではないかと思うのです。 ○池田部会長 いかがでしょうか。現在かなり安全性は高まってきたわけですけれども、 それを究極的にもっと安全にするためにはここの問題をということで、検査目的献血の 防止というところにかなり力点が置かれているわけです。今橋委員は、保健所を充実 させるのはもちろんいいけれども、それと赤十字で献血をする人とを全く別に考えて、 それでいいかどうかというお考えですね。いかがでしょうか。吉澤委員。 ○吉澤委員 今橋委員がおっしゃったことは、カリフォルニアのサクラメントの血液 センターでやられたそうです。ホランド所長から伺いました。廊下を長くしまして、問 診の段階で振り分けをされたそうです。ただし、その振り分けをされる方が極めて有能 なベテランのナース、若しくは医師である必要があるということで、やってはみたけれ どもなかなか難しい、でも何とかやっているということを伺いました。  ここで一つこういうことが考えられるかどうかということを少しお考えいただきたい のですが、各都道府県にはHIVの拠点病院というのがあります。保健所の無料匿名検 査の推進はもちろん必要ですが、拠点病院の検査システムの機能も併せて活用すること ができるかどうか。といいますのは、私たちも広島で日曜検査というものをやってみた のですが、検査の時間帯に採血をすることができる人と問診をする人をずっとはり付け ておかなければいけないのです。そうしますと現実にはなかなか難しいわけです。その 実体験を基にしますと、保健所に24時間体制を求めるのは簡単ですが、24時間採血す る人、問診をする人を保健所にはり付けるというのは果たして物理的に可能かどうか。 そういうところも含めて考える必要があるのではないかと思います。それは可能な限り 努力しなければいけないと思いますが。 ○池田部会長 事務局の方で何かございますか。ただいま保健所以外にも何か検査をす る場所を考えたらどうかという…、一つは橋先生の赤十字もそういう役割を担う、あ るいはほかの病院もそういう役割を担うという御意見ですが。 ○血液対策課長 橋委員の方から御指摘のございました、この総合対策の中で問診医 の充実だけではございませんで、本人確認の徹底、この中には磁気カード化、献血者手 帳のIT化の推進とか、あるいは必要に応じてですが、今後献血クラブのようなものを 作ってリピーターを確保すると。いろいろ合わせ技で検査目的献血者に御遠慮いただけ るかということを考えているところでございます。それで本来の検査をしたい人に日赤 の方で検査をしてあげるという御指摘ではないかと思うのですが、それは可能かどうか も含めて検討はしたいと思いますけれども、この場でまたいろいろ御意見を承れれば有 り難いと考えております。  あと吉澤委員から御指摘のございましたHIVの拠点病院の話については、健康局の 方とも意見交換をしないといけないと思いますので、宿題とさせていただきます。 ○池田部会長 この4項目めも関係部局に健康局が入っていますので、いろいろまた御 相談いただきたいと思います。どうぞ、橋委員。 ○橋委員 健康診断的な利用も推進するということがうたわれている一方で、HIV だけ通知しないのですよと、検査目的は困るのですよというふうに随分切り分けている のですが、そういう切り分けをただ整理するだけではなかなか難しいのではないかと思 うのですが。 ○池田部会長 そうですね。小幡委員、どうぞ。 ○小幡委員 私も検査目的を完全に防止するというのは非常に難しいことだと思うので す。実は今の橋委員と同じようなことを考えていたのですが、ただ多少違うのは原則 としてはどんどん保健所あるいは拠点病院等々を充実していって、そちらでやってくだ さいということを普及させていくこと。本人確認、それからデータとかいろいろカード を持っていただいてということはもちろん進めていく。その上で、それでも献血に来ら れた場合、その方はその場にもう来てしまっているので、要するに始めから分かってい れば来られないわけですから、そういう選択をして来てしまっている方には問診の過程 で、もし懸念があって多少そういう気持ちがあるのであれば言っていただいて、その上 で献血していただくという一つの選択があれば…。それはうまく問診医が引き出さない といけないという難しさはありますけれども、例外的な措置ですが、それでも言ってい ただいた方がよろしいかと思いますので、検査目的の方を分けて献血させるという可能 性はあるのではないか。完璧にこれをなくすというのは非常に難しいので、取りあえず 例外的な措置の可能性として考えてみてはと思います。  それから別の件ですが、先ほど5ページのところで健康管理サービスの充実、確かに これはせっかく献血していただくわけですから、献血の方のメリットにもなるというこ とで、私はこれ自身は進めていただいてよろしいかと思います。ただ、いろいろ他の医 療機関に提供ということになりますと、もちろん本人同意はとってやられるわけですけ れども、昨今の個人情報の問題がございますし外に出すわけですから、そこら辺のこと を非常に注意する必要がある。何か事が起きますと献血自身もかえってこれによって信 頼性をなくすということになりますので、個人情報保護の観点の充実を渡す先にもきち んと求めていくことが必要ではないかと思います。  それからもう一点は先ほどの輸血前後の検査の話で、これから検討ということになっ ておりますが、これは救済制度をきちんと動かしていくには必須ではないかという感じ がいたしますので、早急にやらないとうまく救済制度も働かないのではないかと思いま す。 ○池田部会長 ありがとうございました。三点いずれも非常に重要な御指摘だったと思 います。特に情報、プライバシーの確保という点をきちんとするというのが非常に重要 だと思いますし、救済制度の問題とリンクした感染症の調査というところも非常に避け ては通れない問題だと思います。どうぞ、白幡委員。 ○白幡委員 今の議論に関係したことなのですが、10ページの「4 検査目的献血の防 止」ということで検査体制の充実がうたってありますが、先日の読売新聞だったと思う のですけれども、九州、山口でエイズ関連の対策費が1996年か1997年に比べて半減し ていると。県によっては四分の一ぐらいまで削減して、逆に検査体制も以前に比べると 週に1回だとか制限されているという、逆の動きが出てきていると思うのですけれども、 そういうものに対して血液対策課としてはどのようにお考えかということを教えていた だければと思います。 ○血液対策課長 基本的には都道府県に対する補助等については健康局が行っているわ けでございますが、やはり地域保健の方でHIV対策を充実することによって検査目的 献血者が減るのではないかと我々は期待しておりますので、やはり地域保健の方でもっ と頑張っていただきたいという気持ちはございますし、そういったことはまた健康局の 方にもお伝えしているという状況であります。 ○池田部会長 ありがとうございます。先生方から非常に重要な御指摘を幾つか頂きま した。御意見ございますか。どうぞ。 ○田中委員 余り本質的なことではないのですが、役所の文書なので言葉もきちんとし ておきたいのです。一つは複数回献血者のところでまだ「仮称」と書いてありますが、 私もきっと会員になれると思うのですけれども、「複数回献血クラブ」というこんなや ぼったい名前は絶対に付けないでください。これは確かにそのとおりですが、極めて魅 力のない名前なので。  それからもう一つは、16〜17ページに「マネージメント・ガイドラン」と書いてあり ますが、今経済学や経営学の分野で「マネジメント」と言います。「マネージ」という 言葉は使いません。それに英語の発音からしても「マネジメント」です。そもそも厚生 労働省で言えば介護保険制度でも「ケアマネジメント」、「ケアマネジャー」と言って、 「ネー」と伸ばさないことになっていますので、統一をとるためにこれは棒を取ってく ださい。 ○池田部会長 御指摘ありがとうございました。先生方に本当に貴重な御意見を頂きま したので、その御意見を踏まえて部会長である私と事務局で少し修正をさせていただき まして、そして先生方にもう一度これをお送りいたしますので、持ち回りという格好で また意見を聴かせていただきたいと思います。どうぞ。 ○吉澤委員 二つあります。まず、5ページの「(2)献血制度の仕組みについての普及 啓発」というところですが、若い次世代の献血をする人たちの掘り起こしについて、学 校での教育のことが書いてあります。今ネックになっているのは、高校生の体験献血を してもらうときに200ccしか採れない。しかし、200cc採りますと各血液センターの費 用が足りなくなるということで、本当はそれをやらなければいけないのだけれども、で きないという状況があると現場から聞きました。ですから、これについては推進という 意味で国の方も考えて、お金が足りない分は国が少し補てんするようなことも検討の課 題として挙げていただけたらと思います。  それからもう一つ、20ページに「ウ 実施に向けた具体的取組状況」とあります。こ れは先ほどの輸血を受けた後の解析の問題ですが、ここで関係部局が医薬食品局、保険 局、つまり保険の問題という形で書かれていますけれども、迅速に因果関係を明瞭にす るためには日赤内でのラボラトリーワーク、つまり解析能力をアップする必要があるだ ろうと思います。解析能力には二つありまして、ウイルスの遺伝子の塩基配列をできる だけ早く決めるというのが一つ、決めた結果を適切に判断するというのがもう一つ。判 断は内科系のそれもウイルスが分かる医師でないと無理ですから、そういう具体的な中 身をここでまたお考えいただけたらと思います。そしてその結果を適切な形で、多くの 人に分かるような普通の平らな言語で広報するということもこの中に少し加えていただ けたらと思いました。 ○池田部会長 ありがとうございました。重要な御指摘だと思います。それでは先ほど 吉澤委員の御意見を伺う前に少し述べさせていただいたのですけれども、先生方から頂 きました非常に重要な御指摘を踏まえまして、この総合対策の記載を少し改めさせてい ただいて、その上で先生方にまた持ち回りで御審議いただくということで、その後先生 方に御異存がなければこの案を採らせていただいて、総合対策という格好で取りあえず スタートさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございま した。  それでは次に議題5、「ウエストナイルウイルス等の輸入感染症対策に係る採血禁止 期間の変更について(案)」です。事務局からこの変更についての案がございますので、 この提案については7月2日の運営委員会やその後の安全技術調査会での御了解を一応 頂いているということでございますけれども、事務局から説明していただけますか。 ○事務局 それでは資料Eに基づきまして簡単に説明させていただきます。経緯にござ いますけれども、平成14年11月5日の血液事業部会において、ウエストナイルウイル ス以外のウイルスによる感染も勘案して、「輸血用血液の安全性確保の観点から、国外 からの帰国者からの採血禁止期間(3週間とするのが適当)を設定」するということで御 審議いただいたところです。この度国立感染症研究所から、これまでのウエストナイル ウイルス対策では、潜伏期間2週間+ウイルス血症の期間を考慮すると3週間で十分で あると考えていたが、低ウイルス量でも感染する報告が出ており、従来考えられていた ウイルス血症期間が更に長くなる可能性があることから、念のためセーフティーマージ ン1週間を加え、北米から帰国後4週間は献血を禁止した方がよいのではないかという 御提案を頂いております。  そこで献血禁止期間の変更の案でございますけれども、この御指摘を参考に1週間延 長することとしますが、ウエストナイルウイルスの流行が北米以外のメキシコやプエル トリコ等の地域にも広がりつつあるため、更に安全サイドに立って、海外からのすべて の帰国者を対象としたいと考えております。手続としましては今部会長の方でお話があ りましたけれども、7月2日に運営委員会、また期間がなくこちらは夏に流行するおそ れがあるということでしたので、安全技術調査会の委員の先生方には持ち回りというこ とで御了承いただいております。本日の部会で御審議いただいた上、御了承いただけれ ば都道府県、検疫所、日本赤十字社、医療機関へ通知して、一定の周知期間を置いた後 実施ということで考えております。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいまの説明の経緯にあった国立感染症研 究所の岡田先生の方から何か補足、あるいは御説明いただけますか。 ○岡田委員 ウエストナイルの研究をやっているウイルス第一部の方から、CDCのレ ポートから従来考えられたよりも低ウイルス量でも感染が起こっているということがあ りまして、それで感染研を通して関係する先生方等と検討しまして、1週間延ばした方 がいいのではないかということで提案させていただきました。この根拠となったのは米 国では昨年度輸血用血液に関してウエストナイルウイルスのNATを実行しました。し かしそれをかいくぐった症例が何症例かありまして、それを詳しく解析しますと、従来 考えていた十分の一くらいの量でも感染していたということがはっきりしましたので、 このような御提案をさせていただきました。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。何か御質問ございますか。倉田先生、何か。 ○倉田委員 ただ、これはアメリカだけではなくて、昔からずっと中近東にはエンデミ ックにありますから、この4週間というのは適当だと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。どなたか特別に御意見ございますでしょうか。 よろしいでしょうか。もしないようでしたら、これは部会では先生方にお認めいただい たということで、事務局の方は関係者に混乱のないように周知徹底していただきたいと 思います。よろしくお願いいたします。  それでは議題6、「日本赤十字社の組織改革について」に移ります。この件について は日本赤十字社の方から6月15日と7月2日に運営委員会で説明を受けております。ま た、6月30日には同委員会からの意見書に対する回答が提出されました。運営委員会で は経営会議等が公開で行われること、あるいは検討委員会等に輸血の専門家や外部委員 を入れることなどの意見が出されたと私は聞いております。これらのことを踏まえまし て、日本赤十字社の方から御説明を頂けますでしょうか。 ○参考人 それでは御説明させていただきます。資料D-1の一番最後の方の3枚でござ います。始めに「別添」と書いた部分がございますが、これは後ほどまた御説明させて いただきまして、1ページの「血液事業本部制の導入等の本社の新たな実施体制につい て」というところでございます。読みながら御説明させていただきます。日本赤十字社 は血液事業の安全対策の充実強化に向けて本格的な取組を行うとともに、血液事業に関 する権限と責任を明確にした組織体制を構築するため、本社に血液事業本部制を導入し、 血液事業経営会議を設置する。現在日赤本社の組織というのは総務局と事業局とになっ てございまして、その事業局の中に五つの部がございます。その中の一つの部が血液事 業部でございますが、これを事業局の中から外しまして、血液事業本部というものを新 たに設定するということでございます。また血液事業の安全対策、血液に関する研究・ 開発を充実強化するために新たに中央血液研究所を設置すると。現在中央血液センター というものがございますが、これを廃止しまして中央血液研究所を充実強化するという ことでございます。  本社の事業の組織体制、今申し上げましたけれども、本部制の導入ということでござ いまして、民間企業等において導入されております事業本部制に準じた仕組みを導入す ると。この事業本部は何をするのかと言いますと、血液事業に関する企画・経営戦略の 策定実施、安全対策、研究・開発及び査察・指導、血液事業の市場調査、医薬情報に関 すること、それから血液事業の財務管理ということでございます。  この本部長は日本赤十字社の理事でかつ常任理事ということになります。日本赤十字 社の定款を変更いたしまして、日本赤十字社の代表権を付与するということでございま す。薬事法及び血液新法に基づく医薬品製造販売業等の許可・変更申請等は理事である 本部長が行うと。薬事法及び血液法上の責任者になるわけでございます。薬事法上の各 血液センターに対する指導監督は血液事業本部長が直接的に行います。  それから本部長の権限でございますが、本部長には血液事業の実施についての決裁権 限を与えまして、その決裁権限は私どもの社長の決裁権限と同様とするということです。 参考でございますが、例えば1億円未満の資金の借入れ、あるいは5,000万円未満の不 動産の処分、2億円未満の資本的収支予算の補正、組織・事業内容の変更を伴わない収 益的収支予算の補正と。組織・事業内容の変更ということになりますと、これは私ども に常任理事会というものがございまして、そこに諮らなければいけないわけですが、そ ういう分が伴わない収支予算の補正ということでございます。  それから本部長の下に血液事業経営会議というものを設置させていただきます。この 経営会議というのは日本赤十字者の関係職員のほか、民間の製薬企業経営経験者、ある いは厚生行政経験者などで組織しまして、血液事業本部の所掌事項について審議、決定 し実行するということでございます。この経営会議の方は本部長がすべて総理するとい うことでございます。  中央血液研究所の設置と本社の血液事業の安全対策の強化でございますが、中央血液 研究所は現在の中央血液センターの検査・研究開発部門を中央血液研究所と改組し、血 液事業の安全対策、血液に関する研究・開発を充実強化させていただくと。それから本 社の血液事業の安全対策の強化ということで、現在の中央血液センターの安全管理部門、 品質保証部門、情報システム部門を本社に統合し、本社の組織の中に組み入れまして、 本社の安全対策等の実施体制を強化させていただくと。  それから日赤には各都道府県に支部というものがございまして、この支部と血液セン ターの関係でございますが、都道府県支部は血液事業の実施に当たりまして、県、行政 当局との連絡調整及び赤十字奉仕団の協力要請等多様なかかわりを持っておりますの で、血液センターは従前どおり支部管下とする現状の取扱いは変更はいたしません。た だし、本社と血液センターの関係では実質的には次のような改革を行いますということ で、血液センターに対しての安全保証や品質管理を確保するための査察や技術的指導、 これは本社の血液事業本部が一元的に実施させていただくと。さらに本社におきまして 財政調整制度というものがございます。血液センターで保有している資金等の活用方法 等、各血液センターの安全対策費について支援をしていただくということで、財政調整 制度を強化させていただくということでございます。   次のページに組織図がございますが、社長、副社長の下に企画広報室、総務局、事業 局と。先ほど申しましたように事業局の中に血液事業部があったわけでございますが、 それを血液事業本部というものを別に取り出しまして、本部長以下、血液事業経営会議 (合議機関)を設けまして、その下に中央血液研究所及び副本部長を四つ置いたと、こう いう組織で事業を運営させていただきます。社長の横に血液事業審議会というものがご ざいますが、これは平成11年10月に作られて今日まで8回ほど、2年に3回ぐらいの 頻度で開かれておりますけれども、これはもっと開くべきではないかという御意見もご ざいまして、もう少し頻度を多くしていろいろな外部の方々からの御意見を賜るという ことで考えております。  それで「骨子」というところに戻っていただきまして、今申しましたような全体のこ とを書いているわけでございます。ダブることになりますのでここは割愛させていただ きますけれども、この実施については本年10月1日から発足するということでございま す。したがいまして、本部長なり理事の就任は10月1日ということで予定されておりま す。現在7月1日にこの血液事業本部発足の準備を行うために、血液事業本部設置準備 室を設けております。この準備室に血液事業本部設置検討委員会を置きまして、本部の 運営や経営会議の運営の在り方、あるいは本部や経営会議の発足までのいろいろな準備 を3か月間にわたって検討させていただくということで考えております。以上でござい ます。 ○池田部会長 ありがとうございました。10月からということでしたけれども、日本赤 十字社の組織改革についての考え方を御説明いただきましたが、何か御意見、御質問ご ざいますか。どうぞ、比留間委員。 ○比留間委員 医療機関の立場としてちょっとお聞きしたいことがあるのですけれど も、こういった総合対策にも関係して血液製剤のいろいろな安全情報を頂いたりすると きに、医療情報担当者から頂くことというのは非常に多いと思います。それと遡及調査 などをやるに関しましても、医療情報担当者との接点というのは非常に大きいと感じま す。ただ、日赤には公的な医療情報担当者の資格をお持ちの方がほとんどいないという ふうにもお聞きしています。また、この実施体制の中で1ページの本部制の導入のとこ ろに、「血液事業の市場調査、医薬情報に関すること」ということも今後取り組まれて いくと書いてあると思います。それからもう一点、例えば血液法に書いてある平成20年 度までに国内自給を達成するということもありますし、そういうことを考えると当然の ことながら医療情報担当者による日赤アルブミンの売り込みなどは非常に大事なことで はないかと思いますし、ほかの製薬会社ではそういうことはかなりやっていると思うの です。要するにこの医療情報担当部門をもう少し充実化するとか、あるいは医療情報担 当者の資格を持たせていくとか、そういうことに関してはどうなのか、老婆心ながらち ょっとお聞きしたいと思います。 ○池田部会長 お答えいただけますか。 ○参考人 御指摘のようにMR、医薬情報担当者の役割は極めて大きいと考えます。そ の意味では充実しなければいけないということがあると。次の事業本部の大きな課題で あろうと認識しております。現状いわゆるMRの資格というのは製薬業が決めているも ので国の資格ではございませんけれども、多くの会社はそれを取っているということが ございます。我々も検討はしてまいりましたけれども、今後最低限の資格という意味で は取ることを含めた検討をしてまいりたいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかどなたかございますか。どうぞ、吉 澤委員。 ○吉澤委員 先ほどの総合対策の中で、輸血を受けた後の感染の疑い例の解析の話を申 し上げましたが、解析を迅速に行う能力をこの組織の中のどこで持ち得るのか、それを どのように位置付けておられるか。それからもう一つは、やはりこれは国と相互にやっ ていくのだと思いますが、広報の体制は大丈夫なのだろうかとか、そういうことについ て伺いたいと思います。 ○参考人 結果の解析につきましては、従来医薬情報部の下にある研究二課というとこ ろで検討するのと、それから感染症に関する報告があった場合に各基幹センターにおい て保管検体の調査をしていたと。それを総合的に医薬情報部と本社が評価をしていたと いうことがございます。体制的には本社の研究部、医薬情報部、今後は医薬情報に関係 するところは安全管理課ということになりますが、そこに解析も含めてより権限を集中 していくことになると考えております。実際の解析は各NATセンターあるいは研究部 が実施いたします。  それからマスコミにつきましては、日赤自体この間広報が極めて重要であるという認 識をしております。それは個々の事例がいろいろマスコミに報道されていく中で、全体 像が見られないということもございますし、きちんとしたデータに基づかない情報も出 ていると考えておりますので、そういう意味では積極的に自ら情報を公開していくと。 自ら何をやろうとしているか、この間8項目についても我々の方針として述べてきてい るわけですけれども、我々が今やろうとしていること、今後どのような段取りでやろう とするかということについても、積極的に述べていきたいと考えております。その広報 の在り方については事業本部で行うのか、本社、トータルで行うのか、より詳細な検討 が必要と考えておりますが、重大な課題であると考えています。 ○池田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。どうぞ、橋委員。手 短にお願いします。 ○橋委員 池田先生から運営委員会での先日の議論の要約が紹介されたのですけれど も、特にこの血液事業経営会議なり審議会の議論が公開でないということと、輸血関係 者が入っていない、あるいは医療機関の輸血医療にタッチしている人が十分入っていな いということを非常に危惧しております。  それからもう一つは、「3.都道府県支部と血液センターの関係」というところで言わ れていることですけれども、現在の支部の体制を基本的には変えないということなので、 オールジャパンでの一番いい形の血液センターの運用が進んでいくのかということ、特 に人事等に関して非常に危惧しております。それから中央血液研究所が今後手放すと言 われている、今の中央血液センターのやっている安全管理部門、品質保証部門、情報シ ステム部門を本社に統合するというのですけれども、現在の本社の形でこういう極めて 重大な現場の品質保証等を管理することが本当に可能なのか、形を相当変えていただい た方がよろしいのではないかと思っております。  私がこのように申し上げたのは、今度の機構改革は緒についたばかりであって、検討 準備室が作られて会議も行われているということなのですけれども、それを時々はこう いう場でも御報告いただいて、いい方向にしていくように日本赤十字社としてもいろい ろな人の意見を聴かれる方がいいのではないかと思いますので、よろしくお願いします。 ○池田部会長 ありがとうございました。どこの組織でも大事ですけれども、情報の開 示ということを特に御指摘されたと思いますし、都道府県、地域によって血液センター の格差があるというのはこれまでも随分言われていたことで、橋委員が言われたよう に支部との関係もまた重要な問題になってくるのではないかと思います。ただいま委員 の先生方からかなり重要な御意見を伺いましたので、日本赤十字社の方々も一層の組織 強化に努めていただけたらと思いますし、折に触れてこの血液事業部会にその進捗状況 等も御報告いただければと思います。どうもありがとうございました。  それでは議題6はこれで終わらせていただいて、議題7に入ります。「血小板製剤の 保存前白血球除去について」ということで、これは6月1日の安全技術調査会で承認さ れております。まず、日本赤十字社の方から資料Gについて説明していただけますでし ょうか。 ○参考人 それでは日本赤十字社の方から御報告します。資料Gを御用意願いたいと思 います。先ほど田所が一部報告しましたように、かねてより準備を進めてきました成分 採血由来の血小板製剤については、白血球の低減化がなされているものが今月1日から 既に医療機関に供給されています。ただ、日赤としてすべてされていますという宣言を するためには、やはり品質を保証する必要があります。その品質が白血球数がバッグ当 たり1×106個以下であるということを保証していくためには、やはり品質のバリデー ションといいますか、検証が必要だと考えます。現在一つの成分採血装置についてキッ トの供給が止まりまして、その部分の評価が遅れているということがあります。これは 後で報告があるかもしれませんが、要するに今バクスター社のキットの供給が止まって おりまして、その機種に関しまして評価がなされていないということでございます。で すからその評価を行うということ。  それからもう一つは、現在の添付文書は臨床の現場でフィルターを使いなさいという 記載があるわけですけれども、やはり赤十字の方で全部白血球除去が行われているとい うことであれば、そちらの方を削除するという手順も必要ということで、現在その準備 を進めています。今のところ9月下旬を目途に鋭意努力しておりますけれども、現状一 番の問題は先ほど申しました、要するに成分採血装置の白血球除去の基準を保証するた めの評価が若干遅れているということでございます。ですから、先ほど言ったようにも う今月からなされているということ。それから9月下旬を目途にしていますが、若干遅 れる可能性があるということでございます。  後の方の資料は、例えば一番最後の5ページに「4.添付文書の『使用上の注意』の改 訂について(案)」が付いておりますが、そこに現在の臨床の現場では白血球の心配があ る場合はフィルターを使いなさいという記載があるわけですけれども、やはり将来はこ ういう記載を削除していくことが必要だと思いますので、そういうことも含めて9月末 に向けて今鋭意努力しているところでございます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明について御意見、御質問を 頂きたいと思います。いかがでしょうか。比留間委員、何かございますか。 ○比留間委員 ということは、この10月は遅れると考えた方がいいのでしょうか。これ はちょっと卑近なことですけれども、病棟での血小板用のフィルターをいつまで買って おいたらいいかとか、これは現場では非常に大変だろうと思います。血小板フィルター メーカーも非常に苦慮しているのではないかと思うので、その辺は遅れるなら遅れると はっきり言っていただいた方が、例えば11月からにするとか何とか言っていただくと有 り難いと思います。 ○参考人 予定どおりやりたいというのが日本赤十字社の考えでございます。努力した いのですが、先ほど言ったようにキットが今月の終わりごろに入ってくるということが 確実であれば一応予定どおりやりたいというのがあります。しかし、そこのところは私 どもも努力し切れないところがありますので。 ○比留間委員 分かりました。多分11月になると理解した方がよさそうですね。 ○池田部会長 そのほかにどなたかございますか。よろしいですか。それでは日本赤十 字社の方も御自分たちの基準をお作りになって、なるべく早い時期に実施していただけ るように御努力をお願いしたいと思います。それでよろしいですか。ありがとうござい ました。  それでは次に議題8、「血液製剤に係る報告事項について」でございますけれども、 昨年8月及び本年4月に運営委員会で諮ったアルブミン製剤に係る医薬品感染症症例報 告に関することのほか、昨年6月から実施されている遡及調査の進捗状況、前回の血液 事業部会などで報告された事例のその後の対応状況について、報告を頂きたいと思いま す。なお、資料H-1におけるアルブミン製剤に係る医薬品感染症症例報告につきまして は、バクスター株式会社の方からバイオサイエンス学術部次長の田中利明さん、安全性 情報部長の中村源州さんのお二人が参考人としていらしていますので、どうぞお席に着 いてください。 ── 参考人着席 ── ○池田部会長 それでは、まず最初に事務局の方から説明をお願いできますか。 ○事務局 時間の関係もございますので、簡単に御説明させていただきます。資料H-1を 御説明させていただきますが、まず1ページについてはこれまでも既に御報告している 症例でございまして、HIV感染が輸血との関係として指摘された例でございます。こ れについては現在8人の供血者から採血されたMAPを使っていたということが分かっ ておりまして、個別NATはいずれも陰性だったのですが、エイズ動向委員会の方で、 「HIVの感染が輸血用血液製剤によるか追求すれば、患者のプライバシーにかかわり 得るケースである」という御指摘もありまして、供血者の次回献血時の検査を待ってお ります。前回御報告したときは3名だったと思うのですが、今回7月1日現在では4名 が来訪しまして、いずれも感染していないことが確認されております。  続いて3ページを御覧いただきますと、これは先週の金曜日に運営委員会で検討させ ていただいて、新聞紙上にも出ているケースです。輸血用血液製剤でHBV感染が疑わ れた例でございます。事例としましては60歳の男性で、原疾患は胃癌でございます。こ の方が輸血前の血液検査ではHBs抗原検査は陰性だったのですが、輸血後6月8日に 実施した検査では陽性だったと。患者さんは劇症肝炎で6月10日に死亡しております。 これは4人の供血者から採血された赤血球製剤を使っておりまして、この保管検体につ いては個別NATを実施したところすべて陰性だったということで、現時点では輸血と HBV感染の因果関係は不明となっております。今後の対応ですけれども、先ほど申し 上げましたのと同じように4人の供血者の再献血時のフォローが必要になってくるだろ うと。あと一番最後にありますけれども、供血時の保管検体の個別NAT陰性時等にお ける供血者の調査の在り方について検討するということで、前回の先週金曜日の運営委 員会の中でも、今後については問診票にこのような場合は協力を求めることがあると記 載しておくなどの御指摘がございまして、これについて事務局と日赤の方で検討するよ うに考えております。  続きまして5ページになりますけれども、これは神奈川県赤十字血液センターでB型 肝炎ウイルス陽性の献血を誤って医療機関に供給してしまった例で、15日間業務停止の 処分が出されたものでございます。  7ページでございますけれども、これは後ほど詳細についてバクスターの方から説明 させていただきますが、アルブミンに係る医薬品感染症症例報告についてでございます。 これは昨年8月にやはり同様の報告があったのですが、今回はアルブミンと肝炎との関 連性を疑われる例として今年4月15日に厚生労働省に報告があった例でございます。こ れも術前検査ではHCV陰性だったのですが、その後アルブミンを使いまして、その後 別の手術をやったのですけれども、このときの術前検査でHCV陽性だったということ が分かっております。当該ロットについては有効期限切れだったということもありまし て、今回回収はしなかったということになっております。  その後の調査結果が2として上がっておりますけれども、国内外の副作用情報はこれ についてはなかったということと、同一の保存ロット、プールの原料血漿及び最終製品 試験サンプル、これは今までの委員会でも御説明していなかったのですが、こちらのサ ンプルの結果も出まして、いずれも陰性だったということになっております。また、患 児についてはRNA定量で+になっております。そして、これについては6月1日の安 全技術調査会で検討していただいた結果、今申し上げた例は原料プール血漿についてオ ーストリア政府からの結果が陰性であることから、アルブミンとの関連性は低いのでは ないかということ。また、ちょうど御説明したときにこちらの病院でも原因究明を行っ ているということでしたので、この結果を踏まえて判断することとしておりました。そ れがなお書きにありますけれども、結論としましては本件は病院側と患者側の問題であ り、検討結果を対外的には開示しないという連絡がバクスターの方にあったということ でございます。また1例目、去年の8月のケースはHCV抗体の第2世代のみ弱陽性で あったということもありまして、6月1日の安全技術調査会では検査精度の問題ではな いかという御指摘を頂いておりました。これは後ほどバクスターの方から説明がござい ます。  続いて9ページを御覧いただきますと、本当はRh(+)だったものが(−)として記載 されて医療機関に提供されてしまったというケースでございます。  そして11ページを御覧いただきますと、献血供給事業団の血液製剤供給遅延について でございます。これも新聞紙上に出ておりましたけれども、概要としましては平成15年 5月に東邦大学大森病院から献血供給事業団に対し、輸血用血液製剤の緊急要請が短時 間のうちに2回あったが、それを一度にまとめて供給したため病院到着が遅れたという 件について報告を受けました。当該事業団に対して過去に同様の事例がなかったか調査、 報告するよう求めたところ、平成13年2〜3月にかけて3件発生していたことが判明し ております。今後については平成15年6月以降、緊急要請があった場合は医療機関へ直 行するよう徹底したという報告を受けております。さらには、今後は全国における血液 の緊急要請に対する日本赤十字社等の対応について調査し、必要があれば改善等の指導 を行う予定としております。  それから15ページを御覧いただきますと、先ほどお話がありましたけれども、成分採 血キットの回収がバクスターの方でありまして、一応7月下旬に復帰予定となっており ます。  参考資料はちょっと割愛させていただきまして、続いて資料H-2の3ページを御覧く ださい。供血者からの遡及調査の進捗状況でございます。こちらの(3)を見ていただきま すと、実施率はほぼ100%になりまして、検査がほぼ終了した結果、(4)にありますけれ ども、陽性が判明した本数は御覧のとおり215本ということになっております。4ペー ジを御覧いただきますと、このうち受血者が陽転した例というのは前回御説明したとき と変わらず6件ということになっております。  あと15ページを御覧いただきますと、今度は血漿分画製剤の安全対策について、去年 11月に出しました四課長通知に基づきましてその後の進展を御説明申し上げます。(3)に ありますけれども、ウイルスクリアランス指数が9未満の製剤は、国内血漿を原料とし ている3製剤、海外血漿を原料として日本国内に輸入されている3製剤、あと輸入血漿 を原料とし日本国内で製造されている製剤も3製剤あったのです。しかし、23ページを 御覧いただきますと、株式会社ベネシスの方からフィブリノゲンについてまだ供給でき る体制は整ってはいないのですが、近々体制が整うということで、この3製剤のうち1 製剤は近く9以上となる見込みでございます。国内血漿を原料としている3製剤から近 々2製剤に変わるということ。あと21ページを御覧いただきますと、日本製薬株式会社 の輸入血漿を原料とし日本国内で製造されている3製剤がクリアしていなかったのです が、委員限りになっておりますけれども、22ページを御覧いただきますと、この3製剤 がいずれも9をクリアしたということで、15ページには「9未満の製剤はない」と表記 させていただいております。説明は以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは続いてバクスターの方から、アルブ ミン製剤に係る医薬品感染症症例報告のほか、もし追加があればアミカスのキット回収 の方もよろしくお願いします。 ○参考人 バクスターの中村と申します。バクスターでアルブミン製剤に関する感染症 の報告を過去2件させていただいております。1例についてはブミネート5%という製 品で、もう1例についてはアルブミン25%「バクスター」という製品であります。読後 回収と右上に記載している資料について御説明したいと思います。  まず、ブミネート5%は昨年8月に厚生労働省に報告させていただいたケースなので すけれども、こちらの症例で第二世代の抗体試験のみ弱陽性を示したという結果になっ ております。他の第一世代、第三世代、又はHCV RNA関連の検査はすべて陰性を示して いたということです。また、当該製剤はミニプール血漿、製造プール血漿でHCVを検 査して、その陰性が確認されたプール血漿によって製造されているということ。また、 保存サンプルのHCV検査もこちらの読後回収資料に書かせていただいているのです が、こちらについてもすべて陰性であったということから、この症例については第二世 代の抗体検査の感度の問題であって、実際にはこの患者さんはHCV感染がなくて、第 二世代HCV抗体試験の偽陽性症例であると考えております。  もう1例のアルブミン25%「バクスター」の症例なのですけれども、読後回収資料の 7ページから英文の資料を添付させていただいているのですが、アルブミン25%「バク スター」に使用された当該ロットのプラズマプールの検査結果を示しております。この 結果はオーストリア政府が実施したものであり、すべてのプラズマプールにおいてHC V検査は陰性であったという結果であります。つまり、バクスターで行っているミニプ ール血漿、製造プール血漿、及びオーストリア政府で行っている製造プールのHCV検 査において、すべて陰性が確認されております。また、当該保存サンプルについてもH CV検査を実施した結果、すべて陰性が示されております。この症例について病院の院 内感染症対策委員会が設置され、検討されているのですけれども、その委員会からバク スターに連絡がありまして、委員会が開催されて結論に至ったということです。しかし、 これは患者側と病院との問題であるために対外的に開示できないということを先日お聞 きしております。  アミカスアフェレシスキット回収についてはクラスIIの回収を実施しているわけなの ですけれども、この製品は7月末には問題ない製品を復帰させたいと予定しております。 以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。日本赤十字社の方から何か補足はございます か。田所先生、何かございますか。 ○参考人 先ほど述べましたように、これに伴って白血球除去の宣言が遅れることがご ざいます。 ○池田部会長 事後調査のことについても特に付け加えることはございませんね。あり がとうございました。それでは事務局とバクスターの方、今後も引き続き調査をお願い したいと思います。委員の先生方から特に何かございますか。 ○岡田委員 分画製剤を使った場合、感染が起こるとどうしても分画製剤に原因を求め られてしまうことが実際にあります。メーカーサイドとすれば自己防衛として最終製品 を調べて陰性であっても、正直言ってそれが本当に感染性がなかったかどうかというの は現実的に証明するのが難しいので、最低限原料血漿を保存してもらって、何か起こっ たときはそれを再チェックして陰性であることを示すということにしてもらわないと、 結局この最初の症例も検査をやって費用を使っている割には、原料血漿が全然検査され ていないために、本当かと言われるとなかなか…。いろいろな状況証拠から、一応この アルブミンからの感染はないだろうということは説明されると思うのですが、やはり直 接的なことを言うためには原料血漿のスタート時点で陰性であることを示す必要がある と思いますので、やはり今後のこともありますし、各メーカーの方は原料血漿を最低限 保存することが必要だと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。バクスターの方は特に…、よろしいでしょう か。そのほか何かございますか。事務局は何かございますか。 ○血液対策課長 幾つか御指摘頂いた点、今の岡田委員の御指摘も含めまして、我が方 として製薬メーカー等にお願いするのか、あるいは幾つか御指示のあった点についてど うするのか、検討したいと思います。 ○池田部会長 そのほか何か先生方の方から御意見、御質問ございますでしょうか。よ ろしいですか。ありがとうございました。本日非常にたくさんの議題がございまして、 最後にやっと議題9、「その他」になったのですけれども、何かございますでしょうか。 どうぞ。私の不手際で少し時間が過ぎましたので、手短にお願いします。 ○花井委員 日本赤十字社の組織改革について、先ほど運営委員会の方からの照会に対 して日本赤十字社からの回答がございましたけれども、この中身についてはやはり今後 の経営会議等で頑張っていきますということになっております。しかしながら、この課 長通知によってあらゆる事態に対処できる組織になるのだということがあるわけですか ら、10月以降しかるべき時期にはやはりこの中身について新しいこういう方向で行くと いうことを、事業本部長自ら来られてここで示していただくというのは大事なことだと 思うので、それをちょっと検討していただけたらと思います。 ○池田部会長 課長どうですか。 ○血液対策課長 10月には当然理事に就任されているはずですので、その辺はまた日本 赤十字社とも相談して、そういうことができれば実現したいと思います。 ○池田部会長 その辺は前向きに検討させていただきたいと思います。そのほか特にご ざいませんでしょうか。よろしいですか。それでは特になければ、本日の議題はこれで 終了させていただきたいと思います。次回の日程ですけれども、また先生方の御都合を お聞きして日程を組んでいきたいと思います。大体いつごろと考えていればよろしいで しょうか。何かございますか。またそれも含めて…。 ○血液対策課長 また事務局の方から開催の調整等をさせていただきますので、よろし くお願いいたします。 ○池田部会長 分かりました。それでは次回の日程はまた事務局の方から追って連絡す るということで、本日はこれで部会を終了したいと思います。御協力どうもありがとう ございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 血液対策課 課長補佐 中山(内線2905) - 1 -