04/07/01 労災保険制度の在り方に関する研究会第9回議事録           第9回労災保険制度の在り方に関する研究会                    日時 平成16年7月1日(木)                       17:30〜                    場所 経済産業省別館825会議室(8階) ○島田座長  第9回「労災保険制度の在り方に関する研究会」を開催したいと思います。なお、本 日は土田先生と水町先生が欠席されています。欠席の方からは、「中間とりまとめ(案 )」については、特段のご意見はいただいておりません。  それでは、本日の議題に入ります。今回の議題は、「労災保険制度の在り方に関する 研究会中間とりまとめ(案)」についてです。まず、事務局から資料について説明をお 願いします。 ○労災管理課長補佐  通勤災害保護制度の見直しについては、前回、「論点とそれに対する考え方(たたき 台)(2)」について議論をしていただいたところです。前回の研究会の最後に、座長か ら、これまでの研究会の議論を踏まえて、概ね方向性が出せる事項については方向性 を、そこまでいっていないものについては問題提起を行うという形で、中間的とりまと めを行うという話がありましたので、事務局において資料1の「労災保険制度の在り方 に関する研究会中間とりまとめ(案)」を用意しました。  また、前回、二重就職者の事業場間の移動の場合に、就業との関連性、あるいは逸脱 ・中断について、どのように考えるべきかという議論がありましたので、資料2「二重 就職者の事業場間の移動中の行動について」を用意しました。さらに資料3として、同 じ厚生労働省の労働基準局の勤労者生活部で開催している研究会で、「仕事と生活の調 和に関する検討会議」の報告書が6月23日に公表されており、そこに複数就業者の問題 についての記述があり、労災保険を含む社会保障制度の側での対応にも言及があります ので、資料として用意しました。これらについて説明をさせていただきます。  まず資料3から説明させていただきます。「仕事と生活の調和に関する検討会議」と いうことで、山川先生もご出席されていますが、「仕事と生活の調和」という観点か ら、幅広く議論をして、問題提起をした報告書です。その中で、「複数就業」について の考え方が記述されています。1つ目の○では、「多様な働き方の選択肢を整備する」 という観点からは、複数の仕事を同時並行的に行っていく形態についても、合理性を有 する働き方の1つとして認知していくことが考えられるのではないかということが書か れています。  2つ目の○では、複数就業を合理性のある働き方として認知した場合には、働き方の 選択について、少なくとも、関係する公的な施策や制度についての中立性の確保が必要 となるのではないかということが記述されています。  「中立性の確保」という観点から、制度を見直す必要があるのではないかという問題 提起があり、その中に労災保険制度については、保険給付の給付基礎日額の算定は現 在、二重就職者については被災した当該事業場の平均賃金のみを基礎にして行っている という問題、また通勤災害保護制度における通勤が、住居と事業場との移動に限定され ているために、事業場間の移動は、現状では保護の対象となっていないという問題があ る。これらの点について検討を行うことが必要であるという問題提起がなされており、 これが6月23日に公表されている状況です。  その他、労災以外でも、社会保障制度全般にわたって、中立性といった観点から検討 を進めていくことが必要だということが、この検討会議の報告書の中に記述されていま す。これに対応して、まさにこういう問題意識に対する一定の回答を、この研究会でま とめることになるわけで、本日はその中間とりまとめということで、一定のまとめの案 を用意いたしました。とりまとめの案のご説明の前に、前回の研究会の議論にありまし た「二重就職者の事業場間の移動中の行動」についてということで、資料2を用意して いますので、こちらのほうから先に説明をさせていただきます。  前回の議論でも、二重就職者について、事業場間を直行する場合、すなわち第一事業 場で長くいる場合と第二事業場へ行って長くいる場合を、就業関連性においてどう評価 するかという問題と、事業場間で逸脱・中断を行う場合に、その特例的取扱いについ て、二重就職者についてどのように取り扱うべきかという問題提起がなされたわけで す。そこで、二重就職者が実際に事業場間の移動中どのような行動をとっているかとい うことについて、以前提出しました「二重就職者に係る通勤災害保護制度創設のための 調査研究報告書」から、関連の部分を抜き出しています。  実態としては、まず移動中直接移動するか、食事等の移動以外の行動をとるかという 点については、「移動以外のことを行うことがある者」が41%です。したがって、6割 が直行、4割が他の何らかの行動、逸脱・中断を行っているという状況です。「移動以 外のことを行うことがあるという者」を対象にして、具体的に何をやっていることが最 も多いかということを聞いた結果ですが、食事と答えた方が6割、日用品の購入が14.2 %、ショッピングが13.3%、喫茶飲酒5%、映画・パチンコ3.3%となっています。  こういう実態を踏まえて、2の「論点」で整理をしています。前回、座長に整理をし ていただいたように、(1)「事業場間を直行する場合」で、第一事業場に長くいるとか、 第二事業場に行ってから長く滞在しているのは、就業との関連性の問題として整理でき るだろうということです。また、(2)「事業場間を直行しない場合」は、逸脱・中断の 問題として処理できるだろう。そういう整理をして考えたときに、それぞれについて二 重就職者の事業場間移動について、特別に考慮すべき点があるのかどうかということ で、現行の解釈と特に考慮すべき事項を踏まえて、どう考えていくかということについ て、3で整理しています。  まず、「就業との関連性について」、第一事業場で長く滞在したり、第二事業場に行 ってから長く滞在したりという場合ですが、これに関連して、例えば現行どういう解釈 がされているかということです。現在は、運動部の練習に参加する等の目的で、例えば 午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず朝から住居を出るというように、所定の就業 開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合は、当該行為は当該業務の目的以外の目的 のために行われるものと考えられるので、就業との関連性はないと認められる、という 解釈がなされています。  また、業務の終了後、事業施設内で囲碁、マージャン、サークル活動、労働組合の会 合に出席した後に帰宅するような場合については、社会通念上、就業と帰宅との直接的 関連性を失わせると認めさせるほど長時間となるような場合には、就業との関連性が失 われるという解釈を出しているわけです。  それに対して、二重就職者についてどういう考慮すべき事項があるかというのを考え た場合には、事業場間の移動については、2頁の上に書いていますように、第一事業場 の終業時刻と第二事業場の始業時刻については、これは所与のものですので、大きく離 れている場合が当然あるわけです。そういう場合に、第一事業場から第二事業場の間を 直行するという前提に立つ限りは、どちらかの事業場において長い時間滞在することは 不可避であり、直行しているにもかかわらず、単に長時間滞在している、あるいは長時 間滞在する見込みになっているということをもって、就業との関連性が失われるという 評価をするのは不合理であると考えられます。  そういうことから考えて、「対応の方向性(案)」として整理していますが、これに ついては二重就職者については、第一事業場の終業時刻とかけ離れた時刻に出発したこ と、あるいは第二事業場の始業時刻とかけ離れた時刻に到着する見込みであったという ことのみをもっては、就業との関連性は失われないという解釈をすることが適当ではな いか、ということで整理をしています。  2つ目、逸脱・中断をする場合です。「特例的な取扱いの範囲の問題」として整理さ れるわけですが、現行では、逸脱・中断については「日常生活上必要な行為であって、 省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のもの」である場合は、逸脱 ・中断の間を除いて「通勤」とされているわけですが、特に逸脱・中断をする方の6割 を占めている食事については、現在、独身者が食堂に食事で立ち寄る場合については、 「日常生活上必要な行為」の最小限度のものに該当するという解釈がされています。妻 帯者については、その人が通常自宅で夕食をとっていて、通勤所要時間が短い場合につ いては、「日常生活上必要な行為」に該当しないものという整理を現在はしているわけ です。  二重就職者の場合に、特に考慮すべき事項はどのようなものになるかということです が、事業場間の移動の場合は、時間帯によっては移動の途中で食事をとらなければなら ない場合が当然あるわけで、移動途中で食事をとらなければいけないという必要性につ いては、特に独身者と妻帯者で扱いを変える合理性はないだろうと考えられます。  一方、事業場間の移動の中で、例えばショッピング、喫茶飲酒、映画・パチンコなど については現在、「日常生活上必要な行為」という枠組みの中では、特例的な扱いに含 まれないものですが、こういうことを行っているのは比較的少数であるということを踏 まえると、これを逸脱・中断の特例的取扱いの範囲に、二重就職者の場合にだけ含める ということについては、少なくとも住居と事業場間の移動の場合との均衡を失すること になりますが、それを正当化するだけの合理的な説明は難しいのではないかということ で整理をしています。  それを踏まえて、「対応の方向性(案)」として考えられることは、基本的には、現 在の逸脱・中断の特例的取扱いの大枠は踏襲しつつ、事業場間の移動の場合には、食事 については独身者あるいは妻帯者を問わず、「日常生活上必要な行為」として取り扱う ことが必要になるのではないかと考えられます。さらに、住居と事業場間の移動の場合 も含めて、逸脱・中断の特例的取扱いの範囲そのものについては、引き続き検討を行う という整理にしてはどうかということです。これが資料2です。  資料1「中間とりまとめ(案)」について説明させていただきます。全体の構成は目 次のI「検討の経緯」、II「通勤災害保護制度の概要等」ということで、発足の経緯と 内容、給付基礎日額についての現状を書いています。III「問題意識」ということで、 二重就職者の事業場間の移動の問題、単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動の 問題、また二重就職者に係る給付基礎日額の問題についての問題意識です。IV「二重就 職者や単身赴任者に係る移動の実態」ということで、実態調査からその実態について整 理をしています。V「見直しの方向性」では、事業場間の移動、赴任先住居・帰省先住 居間の移動、給付基礎日額について方向性の整理をしています。VI「引き続き検討すべ き課題」で、逸脱・中断の特例的な取扱いの範囲の問題等について記述しています。  内容について説明します。1頁のI「検討の経緯」。特に二重就職者、単身赴任者に ついてです。二重就職者については、ワークシェアリングの推進、企業における副業解 禁の動き等の変化により、数が増加しているということを挙げています。単身赴任者に ついても、子供の教育への配慮、持ち家の取得の増加、経営環境の変化に応じた企業の 事業展開等によって、単身赴任者の数も増加しているという現状をここで書いていま す。その下に、数字として二重就職者の数と単身赴任者の数を挙げていますが、単身赴 任者については、昭和62年時点で、統計上男性のみの数しかなかったということで、昭 和62年と平成14年の男性のみの数を比較をしています。  2番目、このような変化を踏まえて、労災保険制度としてどう対応すべきかという課 題について、これまでこの研究会で検討を行ってきたわけで、検討事項のうちの、二重 就職者と単身赴任者に関する部分については、一定の結論を得るに至ったので、とりま とめを行うということを書いています。また、検討事項のうち結論を得るに至らなかっ た事項、具体的には逸脱・中断の特例的な取扱いの部分については、引き続き検討を行 うものとする、という整理を最初のところで出しています。  II「通勤災害保護制度の概要等」は、第7回に提出した資料2から概要をまとめてい ます。1は「発足の経緯」ですが、(1)では、労災保険法が、そもそも労働基準法上 の災害補償責任についての保険の方式で始まったということから、当初は業務上の災害 のみが対象で、通勤災害は対象にはなっていなかったということを書いています。  (2)では、昭和48年に通勤災害保護制度ができたときの考え方はこういうものであ った、ということを書いています。1つには、企業の都市集中、住宅立地の遠隔化等に より通勤難が深刻化しており、通勤途上の災害が増加しているという実態があったとい うこと。2つ目としては、通勤というのは、労働者が労務を提供するために不可欠な行 為であって、単なる私的行為とは異なったものであるということ。3つ目としては、通 勤災害を社会全体の立場から見たときに、産業の発展、通勤の遠距離化等のために、こ れはある程度不可避的に生じる社会的な危険となっているということから、労働者の生 活上の損失としては放置されるべきではなく、何らかの社会的な保護制度の創設によっ て対処すべき性格のものであるという考え方で作られた、ということをここで書いてい ます。  2「通勤災害保護制度の内容」は、第7回の資料3をベースにして作ったもので、 (1)では、通勤災害についてはこういうものであると書いており、必要な給付の部分 については、別紙11頁と12頁に給付の内容を付けています。(2)では、通勤の定義と いうことで、「住居と就業の場所との間を往復する」ということを書いています。(3 )では、現在の制度について、逸脱・中断の取扱いはこうなっている、具体的に省令に 定められているのはこの4つの類型であるということを書いています。  3「通勤災害の場合の給付基礎日額」については、原則として労働基準法第12条の平 均賃金に相当する額とされている、という現状を書いています。平均賃金に相当する額 を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、省令で定めるところによ って算定する額という制度になっているということ。また、「適当でないと認められる とき」というのは、保険給付の趣旨、内容等からいって、平均賃金をそのまま給付基礎 日額として用いることが適当ではない場合をいうと、そういう現状について整理をして います。  3頁のIII「問題意識」ですが、まず1の「二重就職者の事業場間の移動について」 です。ここは、「論点とそれに対する考え方」の1−1の部分の記述をベースにして書い ていますが、第1パラグラフは、二重就職者が増加しており、また今後も増加すること が見込まれると。第2パラグラフは、二重就職者の場合は、事業場間の移動を行わなけ ればならない場合があり、これは二重就職者の増加に伴い増加するものと考えられると いうことを書いています。第3パラグラフは、そうではあるが、通勤災害保護制度の対 象とされる通勤というのは、住居と就業場所の往復に限られているということから、現 状では事業場間の移動は保護されないということになっていて、そのような取扱いを続 けていることが適当かどうか、という点について検討が必要である、という形で問題意 識をまとめています。  2の「単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動」です。第1パラグラフでは、 単身赴任者が増加傾向にあることと、通常、単身赴任者については家族のいる帰省先住 居に月に数回戻っていることが多いということを書いています。第2パラグラフでは、 現在の取扱いとして、直接就業の場所から帰省先住居に移動を行う場合においては、帰 省先住居を労災保険法7条第2項の「住居」と解して、通勤災害保護制度の保護を受け る。その一方で、就業の場所から一旦、赴任先住居に戻った後に帰省先住居に移動する 場合については、現在は通勤災害保護制度の保護の対象になっていないという現状を書 いています。  次のパラグラフは、関係する判例について簡単にまとめています。(参考3)として 添付しています秋田地裁の判決は、赴任先住居と帰省先住居の間の移動で、就労日の前 日に帰省先住居から赴任先住居に移動する間に被災した事案です。工事現場と一体とな った付帯施設である赴任先宿舎は「住居」である一方で、「就業の場所」と同視し得る という考え方をとっています。さらに、業務に備えて体調を整えるために、就労日の前 日に赴任先宿舎に移動することは、業務に密接に関連するものであると解すべきである と、秋田地裁の判決はいっています。こういう裁判例があるということを、ここで紹介 しています。  ただ、この裁判例については、「住居」が「就業の場所」と同視できるような場合で あったということで、このような判例の考え方に立つとしても、赴任先住居と帰省先住 居の間の移動が、一般的に保護されるわけではない。単身赴任者の赴任先住居と帰省先 住居の移動については、現在の原則保護されないという取扱いを続けていくことが適当 であるかどうかについての検討が必要である、ということで最後に問題意識の整理をし ています。  3番目の「二重就職者に係る給付基礎日額」ですが、ここでは最初のパラグラフで現 状を記述しています。労災保険は労働基準法上の災害補償の事由が生じた場合に、保険 給付を行うものとして発足したことから、保険給付の基礎となる給付基礎日額について は、原則としては労働基準法の平均賃金により算定されているという現状を書いていま す。第2パラグラフから後は、「論点」ペーパーの3−1に対応するものですが、二重就 職者については業務災害に遭った場合、あるいは通勤災害についてもそうですが、給付 基礎日額は二重就職者であっても、1つの事業場から支払われていた賃金を基にして算 定されるという現状をここで記述しています。第3パラグラフについては、二重就職者 の事業場間の移動について、保護の対象とした場合には、いずれの事業場から支払われ る賃金を基礎として算定すべきかが問題となるということを記述しています。第4パラ グラフでは、そもそも労災保険制度というものが、稼得能力の填補を目的としていると いうことからは、給付額の算定において、稼得能力をできる限り的確に反映させること が必要だということを記述しています。最後の「したがって」以降で、二重就職者につ いての給付基礎日額をいかに定めるかについての検討が必要である、ということで問題 意識を提示しています。  IVの「二重就職者や単身赴任に係る移動の実態」、これは第8回に資料3として提出 したものをほぼ引用しています。1「二重就職者について」です。(1)では、二重就 職者のうち事業場間の移動を行う者が、かなりの程度いるという実態を記述していま す。(2)では、事業場間の移動の経路や交通機関については、一定の移動経路や交通 機関によって移動している場合が多いという実態を記述しています。  2「単身赴任者について」です。(1)の帰省の頻度は、大半の方が月1回以上は帰 省している実態があるということを記述しています。(2)の帰省の経路は、直接仕事 場から帰省先に行く場合は、現在でも保護の対象になっているわけですが、現在保護の 対象になっていない一旦赴任先住居に戻ってから、帰省先住居へ移動する者が一定程度 いるという現状について記述しています。(3)は、逆に帰省先住居から勤務に戻る際 に、一旦赴任先住居へ移動する者が多数を占めているという実態を記述しています。 (4)は、帰省の際に一旦赴任先住居に戻る者が、帰省の出発まで何を行っているかと いうことで、このように日常生活に必要な最小限度のことを行っているという実態が窺 われる、ということを記述しています。  (5)は、帰省直後の自宅から出勤するまでの行動ということで、これは結局、帰省 先住居から赴任先住居に戻ってから出勤するまでの行動ということなのですが、このタ イトル自体が誤解を招くようなタイトルかもしれません。もともと調査のタイトルをそ のまま引用してきていますが、おそらく帰省直後の自宅というと、帰省先の自宅をイメ ージさせるようにもとれますので、この表現は考えたいと思います。これについては、 赴任先住居で何をしているかということですので、多数の者が日常生活に必要な最小限 度のことを行っているという実態が窺われる、ということを書いています。  (6)は、帰省に要する時間です。2時間以上を要する者が8割、4時間以上を要す る者が3割を超えている、長くかかるという実態です。(7)は、赴任先住居に戻って から、帰省先住居に出発するまでの所要時間です。大半の人が勤務日当日に出発する が、翌日に出発する者も一定程度いることが窺われる、ということを記述しています。 (8)は、赴任先住居に戻ってから出勤時間までの時間については、多くの人が勤務日 の前日に赴任先住居に戻り、翌日の勤務に備えるという実態がある、ということを記述 しています。  V「見直しの方向性」では、以上のことを踏まえて、それぞれについてどのような方 向性で考えていくべきかを整理しています。1の「二重就職者の事業場間の移動」につ いて、(1)の保護の必要性では、前半については「論点」ペーパーの1−1の2を引い ています。第1パラグラフでは、二重就職者についての第一の事業場から第二の事業場 への移動については、第二の事業場へ労務を提供するための不可欠の行為であるという ことと、第一の事業場から第二の事業場に直接向かう場合は、私的行為が介在せず、住 居から事業場までの移動に準じて保護する必要性が高いと考えられる、ということを記 述しています。  第2パラグラフでは、今後とも二重就職者が増加することが見込まれる中で、二重就 職者の事業場間の移動が、ある程度不可避的に生ずる社会的な危険であると評価できる もので、労働者の私生活上の損失として放置すべきものではないのではないか、という ことを書いています。第3パラグラフでは、二重就職者の事業場間の移動は自宅間の移 動と同様に反復継続性があるので認定も容易である、ということを書いています。以上 のことから、二重就職者の事業場間の移動についても、通勤災害保護制度の保護の対象 とすることが適当である、ということでまとめています。  「なお」以下については、前々回、兼業禁止についてどう考えるかという整理がなさ れていますので、それについても加えています。第一の事業場あるいは第二の事業場の 就業規則等で、兼業禁止が定められている場合にどう考えるかということです。前々回 の議論でも、基本的には労災保険としては兼業禁止規定があろうとも、原則どおりに扱 うべきだということでした。  ここでの議論を整理して、理由づけとして書いたのですが、1つには、民事上の問題 を公的保険である労災保険の保険給付に当たって考慮することには疑問があるというこ と。これは前回、西村先生がおっしゃっていた、自動車通勤を禁止している会社におい て、自動車で通勤して通勤災害を起こした場合の扱い、一般化して書くと、こういうこ とになるかということで書いています。もう1つは、兼業禁止の効力について、裁判所 による最終的な判断が確定するまでには時間がかかるという、これは水町先生のご指摘 だったと思うのですが、「最終的な判断が確定するまでに時間がかかるので、その判断 を待っていたのでは、被災労働者や遺族の迅速な保護という労災保険の目的に支障を来 すおそれがあるということで、特段異なった取扱いを行うことは適当ではない」という まとめ方をしています。  (2)保険関係の処理は「論点」ペーパーの1−2に対応している部分で、第一の事業 場と第二の事業場のいずれの保険関係で処理すべきかということですが、基本的には第 二の事業場で就業しなければならないがために、その移動が生じていることからする と、第二の事業場での就業のために生ずる性質が強いことから、第二の事業場の保険関 係によって処理することが適当であるということを記述しています。  2の「単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間からの移動について」です。(1)保 護の必要性は、「論点」ペーパーの2−1に対応する部分です。第1パラグラフでは、単 身赴任という形態について、事業主側の業務上の必要性と、労働者側の事情を両立させ るためにやむを得ず行われる場合が多いということを記述しています。第2パラグラフ では、その場合に単身赴任者については家族と離れているわけですので、赴任先住居と 帰省先住居の間を移動することは必然的に行わざるを得ないということ。また事業主と 労働者の双方の事情から、単身赴任という形態を選択すること自体は不可避であると考 えられることから、赴任先住居と帰省先住居間の移動は、ある程度不可避的に生ずる社 会的な危険である、という評価ができるということで、労働者の私生活上の損失として 放置すべきではないと考えられる、ということを記述しています。  第3パラグラフは、これも反復継続性の問題ですが、一定の反復継続性があると考え られるので、認定も容易ではないかということを記述しています。これらを踏まえて、 単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居間の移動についても、業務との関連性を有するも のについては、通勤災害保護制度の対象とすることが適当であると考えられる、という ことでまとめています。  (2)は、このような移動を保護の対象とする場合の移動の範囲の問題です。8頁で は、赴任先住居から帰省先住居への移動について、どの範囲で保護すべきかということ についての整理を記述しています。(1)として勤務日の当日または翌日に移動が行われ ることが大半であるということとともに、赴任先住居では日常生活に必要な最小限度の 行為を行って出発していることが多いという実態があるということ。(2)業務終了時間 あるいは交通事情等によっては当日の移動ができない場合があるということ。(3)現行 制度で直接事業場から帰省先住居へ向かう場合については、保護の対象とされている。 このようなことから、勤務日の当日またはその翌日に行われる移動については、原則と して保護の対象とすることが適当であるという整理をしています。  また、帰省先住居から赴任先住居への移動についても、(1)当日あるいは前日に移動 が行われることが大半ですし、特に前日に移動が行われることが多いという実態があ る。(2)移動時間は2時間以上かかることが大半であることから、勤務日の前日に赴任 先住居へ戻って、翌日の勤務に備えるという行為には合理性があると考えられること。 (3)現行制度において、帰省先住居から直接に事業場に向かう場合は対象にしていると いうこと。これらを踏まえて、勤務日の当日またはその前日に行われる移動について は、原則として保護の対象とすることが適当であるとまとめています。  「ただし」以下ですが、原則として前日または当日という整理をしたとしても、例え ば「急な天候の変化により交通機関が運行停止になるといった外的要因(外的要因以外 の場合も考えられる)等」で、勤務日の当日あるいは翌日、当日または前日に移動がで きない場合については、例外的な取扱いを検討することが必要であると考えられる、と いうように整理をしています。  3「二重就職者に係る給付基礎日額」についてです。(1)給付基礎日額等につい て、第1パラグラフでは、二重就職者についても、災害発生の事業場、要するに1つの 事業場から支払われていた賃金を基に給付基礎日額の算定がされるという現状を、また 繰り返してここで書いています。第2パラグラフでは、その結果として、稼得能力とい うこととの関係で考えたときには、失われる稼得能力は2つの事業場の賃金の合算分で あるにもかかわらず、実際に労災保険から給付がなされて、稼得能力の填補がなされる のは片方の事業場において支払われていた賃金に見合う部分に限られるということ。特 に賃金の高い本業と賃金の低い副業を持つ二重就職者が、副業の事業場で被災した場合 には、喪失した稼得能力と実際に給付される保険給付との乖離が顕著になるということ を記述しています。  第3パラグラフでは、厚生年金保険法や健康保険法においては、すでに複数の事業場 から報酬を受ける被保険者を想定した合算の規定があるということを記述しています。 最後に、労災保険制度の目的が稼得能力の填補にあるということからすると、保険給付 額の算定については、稼得能力をできる限り給付に的確に反映させることが適当である と考えられることから、二重就職者についての給付基礎日額については、複数の事業場 から支払われていた賃金を合算した額を基礎として定めることが適当であるという整理 をしています。  (2)は、仮に給付基礎日額について、そういう整理をした場合に、労働基準法の平 均賃金をどう考えるかという問題です。これについては、以前提出した「論点」ペーパ ーの3−1の4の部分で、(1)の部分、労働基準法の災害補償は、個別の使用者の無過失責 任に基づいて行われるものと書いているのですが、無過失責任ということで言うなら、 労災保険法も無過失責任ですから、ここは若干表現を改めて、「個別の使用者が現実に 支払いの義務を負うものであり、その違反には刑罰が科されるものである」ということ で書いています。(2)は以前の記述と同じで、平均賃金は災害補償だけではなく、解雇 予告手当や休業手当等の基礎にも用いられるものであるということで、平均賃金につい ては従来どおり、業務災害の発生した事業場の使用者が支払った賃金を基礎に算定する ことが適当であるという整理をしています。  (3)二重就職者についての給付基礎日額と平均賃金の関係の整理としては、二重就 職者に係る給付基礎日額については、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすること が適当でない場合ということで整理をすることとして、上記の考え方を踏まえた算定方 法を規定することが適当であると記述しています。  (4)メリット収支率の算定の際の取扱いです。これについても「論点」ペーパー 3−2の考え方をそのまま引いてきています。基本的にメリット制については、メリット 収支率を算定する際に、給付基礎日額を合算することによって、現在よりも災害発生事 業場の事業主が不利になることは避けるべきである。要するに、当該事業場以外の事業 場の賃金については、メリット収支率算入の基礎にしないことが適当である、という考 え方で整理しています。  10頁のVI「引き続き検討すべき課題」は、逸脱・中断の特例的取扱い等の話です。 「論点」ペーパーの4をまとめています。背景としては、労働者の働き方の多様化、各 種労働時間制度、裁量労働制やフレックス制を想定していますが、そういう制度の導入 と、これは付け加えましたが、能力開発等のために働きながら教育機関に通学する労働 者が実際に増加しているという実態があるようです。また、ボランティア活動等の社会 的に有益であると考えられる活動に参加する者の増加といった中で、一日における労働 者の活動範囲が拡大しているということが考えられるということ。  第2パラグラフでは、社会の変化に伴って、労働者の生活自体も、通勤災害保護制度 が創設された当時(昭和48年当時)とは大きく変化しているものと考えられること。こ ういう中で、逸脱・中断の特例的取扱いに係る考え方や具体的な範囲についての取扱い が、現在でも妥当なものであるかどうかが問題になるということを書いています。  次のパラグラフは、仮に取扱いを変更することが必要な場合の対応として、3つぐら いの考え方があるのではないか。(1)逸脱・中断の事由を問わずに、元の経路に復して 以降は通勤として保護するという考え方。(2)特例的取扱いの対象を「日常生活上必要 な行為」以外にも広げるという考え方。(3)「日常生活上必要な行為」として、省令に 追加して定めるという考え方。これらが考えられるわけですが、いずれにせよ、労働者 の行動の実態等を踏まえて、逸脱・中断の特例的な取扱いの考え方と具体的な範囲につ いては、引き続き検討を行うことが必要だということ。併せて、逸脱や合理的な経路と いったものの捉え方についても検討することが必要である、ということで整理をしてい ます。  以下、資料の別紙として、労災保険給付一覧を本文との関係で付けています。(参考 1)は二重就職者と単身赴任者数の数の推移、(参考2)は二重就職者と単身赴任者の 移動で、現状ではどこが保護されていて、どこの部分が保護されていないか。点線の部 分が保護されていないわけですが、そういう資料を付けています。(参考3)は秋田地 裁の判決の概要、(参考4)は二重就職者についての実態調査からのグラフ、(参考5 )は単身赴任者の実態調査結果のグラフ、(参考6)は参集者の名簿です。以上が「中 間とりまとめ(案)」です。 ○島田座長  ただいまの事務局からの説明を踏まえて、先生方にはご自由に議論をしていただきた いと思います。 ○保原先生  中身に入る前に、これは「中間とりまとめ」となっていますが、「最終とりまとめ」 というのは別にあるのか、また労災保険部会との関係、さらには法律改正の問題など、 差し支えない範囲で教えていただきたいと思います。 ○労災管理課長  「最終とりまとめ」の有無の問題については、現在のこれは「中間とりまとめ」です ので、引き続き検討すべき課題として、残された部分については当研究会として検討を 続けていく、もう1回とりまとめが必要になると考えています。ただ、一方で二重就職 者や単身赴任者については、概ね考え方の方向性が出ていますので、この部分について は、「仕事と生活の調和に関する検討会議」の報告書の中でも、いろいろな提言がなさ れているわけで、そういうものも含めて、こういう内容について実現していくための手 続が必要になると考えています。そのときに、例えば審議会の場において、どういう形 で検討していくのかということについては、今後、「仕事と生活の調和に関する検討会 議」を担当しているところとも話し合いながら、また考えていきたいと思っています。 ○保原先生  大体の方向性は出ているということだと思います。あとは、多少技術的な詰めがある とは思いますが、基本的な方向は妥当な線で出ているのではないかと思います。 ○島田座長  前回の議論との関連で申しますと、二重就職者の事業場間の移動のときに、実態との 関係でどの範囲まで認めるかということについては今日、実態調査を踏まえて一定の提 案がされていますが、この点はいかがですか。最初のほうの、第一の事業場にとどま る、あるいは第二の事業場に早目に行くということについては、就業との関連性で考え るという、これはあまり異論はないかと思います。途中で逸脱・中断がある場合につい てどう考えるかは実態調査を踏まえて、資料2に出ているような食事等、大体こういう ことでよろしいということであれば、そのようにしたいと思いますが、いかがでしょう か。 ○保原先生  やはり、「日常生活上必要な行為」という限定をすれば、数字の上からも食事に限定 される。日用品の購入を入れるかどうかですが、これはショッピングとの関係が難しく なる。ファッションの服を買うことを毎日やっているということになると困る。 ○労災管理課長補佐  一応、食事についてはこういう取扱いということで書いていますが、その他の日常生 活上必要な日用品の購入や、診療治療などについては、原則どおりに取り扱ってはとい う意味で書いています。 ○島田座長  それは具体的判断のときに、マニュアルにありますから。 ○保原先生  普通の通勤災害のときに、例えば女性の労働者が、勤務の帰りにおかずを買うという ことがよくあります。そういうことは考えなくていいのですか。例えば、二重就職者で 空いた時間に何か買物をするということになると、この日用品の購入に当たるわけです か。あるいは、あまりそこまでは考えなくてもいいのか。 ○労災管理課長補佐  もし、第一の事業場から第二の事業場へ行って、それで戻って食事を作ろうとしてい る方がいて。 ○保原先生  そこまではいかなくても、1つ目の仕事と2つ目の仕事の間が空いている。その間に 必要な買物、例えば食事の材料を買っておこう。それで第二の勤めが終わったら、すぐ 家に帰ると。 ○労災管理課長補佐  基本的には、「日常生活上必要な行為」の範囲と同じに考えていいのではないかと思 います。 ○山川先生  いまの点で、現行の質問ということになるのかもしれませんが、独身者であれば、食 事に立ち寄る場合は該当するということの趣旨は、これは中断であるが、「日常生活上 必要な行為」とみなすことになるのかもしれませんが、そのように取り扱うのか、ある いは合理的経路の問題として取り扱うのでしょうか。 ○労災管理課長補佐  「日常生活上必要な行為」の解釈の問題として取り扱っているわけで、独身者につい ては、食堂に立ち寄るということも「日常生活上必要な行為」で。 ○山川先生  いわば、日用品の購入に準ずるというか、買って食べるというのも購入の一環のよう なことだという感じですか。 ○保原先生  つまり中断。 ○島田座長  中断の例外で、合理的経路に復帰すれば、もう一度通勤になるのではないですか。 ○山川先生  そうすると、現行の解釈を二重就職者の場合に若干変えるということに位置づけられ るわけですか。ほかの本格的な検討はともかくとして、とりあえず食事に関しては変え るという方向ですか。 ○労災管理課長補佐  当面、二重就職者については、それを措置する必要があるだろうということで、その 他の一般論の問題は、おそらく住居と事業場の移動の話と同列に論じてもいい話ではな いかと思います。 ○加藤先生  ただ、食事の問題は二重就職者以外のほうに影響してこないですか。いまは妻帯者と 独身者とに分けていますが、二重就職者については分けないわけですね。そうすると、 それは今度は普通の就労形態の人で、なぜ独身者と妻帯者を分けるのかということにな る。 ○島田座長  一応、日常的に妻帯者については、自宅に戻って食事をするのが常態であるというこ とで書いているのでしょう。 ○加藤先生  それは、仕事と何かの調和というのに合うのかどうか。 ○山川先生  この資料の説明では、妻帯か不妻帯か両方あるのかもしれない。通常は自宅で夕食を とっていて、通勤所要時間が短い場合についてはということで。通常自宅で夕食をとら ないような妻帯者の場合はまた別なのでしょうか。 ○島田座長  それは別。 ○労災管理課長補佐  実際に、事例として判断がされたのは、たしか通勤所要時間が20分ぐらいで、通常は 家に帰って夕食をとっている人なので、その間で立ち寄るということは、特に「日常生 活上必要な行為」とまでは言えないのではないかという考え方に基づいて、判断をされ ている例があるということです。 ○西村先生  この「中間とりまとめ」は、これでいいのではないかと思います。ただ、対象にして いる二重就職者にしても単身赴任者にしても、行動というのは非常に多様ですよね。で すから、いま加藤先生が言ったような事柄は、単に食事だけの問題ではなくて、例えば 資料2の2頁で示された「第一の事業場の終業時間と第二の事業場の始業時間が大きく かけ離れているような場合」にいろいろ問題がある。  例えばBさんは副業を持っている。AさんにBさんが、自分は2時間半あるから、A さんに、付き合ってくれと言って、事業場で碁を打っていた。副業を持っているBさん は、そこから第二の事業場へ行ったときには通勤災害で保護される、しかし2時間半碁 を打っていたAさんは、もう就業関連性はなくなって、通勤災害で保護されないです ね。こういうことを考えると、問題は常に出てくるので、何か悩ましいと思うのです。 しかし、どこかで割り切らないといけないとは思いますが。第二の事業場へ時間がある からと早く行って、そこでゆっくり、普通の人なら許されないような、例えばテニスを していた。AさんはBさんに付き合ってテニスをしていた。Aさんは早く来すぎている から通勤災害ではない、Bさんは時間が空いているから行った、これは通勤災害だとい うわけでしょう。こういうのは、どこかで見切らないとできないと思うのですが、いま 加藤先生が言ったような問題は、常に出てくると思いますね。  もう1つ、今回の最後の所で、「引き続き検討すべき課題」ということでいくつか書 かれているのですが、フランス法についても、これは立法で、例えば昼休みに外へ出 る、レストランに行くという行為は通勤災害で保護されますね。ドイツの場合もそうい う考え方があるのですが、日本はレストランに行く場合は保護されなくて、自宅に帰る 場合は保護される。そういう取扱いですね。自宅に食事に帰って戻ってくる、その間は 通勤災害で保護される。昼、食事に帰るという場合は駄目なのではないですか。 ○保原先生  前に通達で載っていたのですが、最近の役所の出版物には載っていない。通勤災害の 立法をやったときに、事業場の中に然るべき食事をする場所がない場合について、労働 者がしょっちゅう行く事業場の外のレストランとの往復というのは、業務災害でいくと いう通達があったと思うのです。 ○島田座長  業務災害ですか、休憩時間中の事業施設内と同じような。 ○保原先生  事業施設内を拡大したというように見ようと。たしか昭和48年12月1日の通達か何か があったと思うのですが、最近は載っていない。その通達はやめたのかもしれない。そ れは分かりません。 ○労災管理課長補佐  やめたということはないですね。いまでも生きている。 ○保原先生  その通達は通勤災害ではなく、業務災害という判断だったのです。 ○補償課課長補佐  載っているかどうか確認はとれませんが、たぶん局長通達だと思いますが、そういう 解釈を示したことはあります。 ○保原先生  事業場の中の食堂に行くのと同じに考えましょうということでしたね。しかし、それ は限定がいろいろ付いていて、結局、事業場の中に然るべき食事の場所がないとか、労 働者がいつも通っているとか、そういう条件つきです。 ○西村先生  イタリアと同じような考え方ですね。この際、そういうのはちゃんと保護されている のだということを明らかに、どこかに書いておいていただけるとありがたいですね。細 かい話なのですが、資料2の2頁で、食事については妻帯者も独身者も、「日常生活上 必要な行為」として保護される。喫茶飲酒と並べていますが、酒を飲むのとお茶を飲む のとは随分違う。この暑いときに、食事はいいけれど、ちょっと潤すということで喫茶 に入るというのは、こういう季節だと当然のような感じがするのですが。 ○島田座長  これは、たまたまこういうアンケートをとったときの項目がこうなっていたというこ とで、絶対的に食事をとっていなければ駄目、喫茶は駄目ということでは、必ずしもな いのだろうと思います。 ○労災管理課長補佐  それは調査項目との関係です。 ○保原先生  フランスの判例では、食事はいいが喫茶は駄目というのがありました。 ○西村先生  フランスも、あんなに暑いときが続いたら変わるのではないですか。 ○保原先生  去年あたり変わったかもしれない。 ○島田座長  ここから先は微妙なところがありますね。たまたま何か食べていればいいのかという ことも問題になるだろうとは思います。 ○保原先生  サンドイッチでも食べればいい。 ○山川先生  Aさんは食事を食べていて、Bさんはお茶だけだったとか。 ○島田座長  そこをどう考えるかですね。 ○西村先生  お酒は駄目だと思いますが、そこをあまりシビアに食事、食事といわないほうがいい かもしれない。資料1の9頁に、「メリット収支率の算定の際の取扱い」というのがあ って、突然ここで、「二重就職者に係る業務災害の発生云々」というのが出てきます ね。今までは全部、通勤災害の保護制度ということで出てきたのに、「二重就職者に係 る業務災害」というのが突然出てくる。要するにこれは、二重就職者がAならA、Bな らBの事業場で労働災害にかかった場合、業務災害を被った場合ですね。そういったこ とを文章としてどこかに入っていたほうが分かりやすいと思う。そうでないと、「通勤 災害」の所に何で突然業務災害の話が出てくるのかということになる。 ○保原先生  賃金を合算するということに関係してくるわけですね。 ○西村先生  業務災害については従来の取扱いを維持する。 ○保原先生  いや、業務災害についても給付は合算でしょう。 ○労災管理課長補佐  その辺は書き切れなかったのです。本来であれば、4頁のIIIの「問題意識」の所で、 この辺を少し丁寧に書いたほうがよかったのかもしれません。「稼得能力の填補」とい う考え方は、通勤であれ業務であれ同じですので、そういう観点から両方とも同じく合 算することが適当だという考え方です。ここは「問題意識」の所でもう少しきちんと整 理をしたいと思います。 ○西村先生  9頁の所も、業務災害がなぜ出てくるのか。これは通勤災害ではなく、二重就職者に 係る業務災害の問題なのだということを書いていただきたい。 ○山川先生  8頁の(1)がそれに関わる部分ですね。 ○西村先生  そうですね。ここの考え方でいけば、Aの事業場で働いていてBで兼業している人 は、Aの事業場へ行く途中での事故についても、Bの賃金が合算されるということです ね。 ○労災管理課長補佐  そうです。 ○山川先生  非常に細かいことなのですが、7頁の下から5行目で、単身赴任者の場合ですが、 「業務との関連性を有するもの」というのは、就業関連性という趣旨で、あとは解釈の 問題ということですね。 ○労災管理課長補佐  はい。 ○島田座長  この点は、この間の議論を踏まえて、表現をすっきりさせて整理をしたわけです。ほ かにいかがでしょうか。 ○加藤先生  すでに議論済みかもしれませんが、簡単に「二重就職者」という言葉を使っています が、この言葉について、何か限定をはめる必要性はないのですか。統計をとられている ので、そのときの概念規定があるのかもしれません。もしそれがあるのであれば、それ をどこかに入れたほうがいいのではないですか。 ○島田座長  定義ですか。これは調査の資料が、前提があるのです。 ○労災管理課長補佐  調査においては、本業が雇用者であり、かつ、副業が雇用者であるものとして数字な どのベースとしてはとらえているわけです。 ○島田座長  総務省の統計をとるわけですね。それでよろしいですか。多分そういう計算をしたの だと思います。 ○山川先生  特別加入も通勤災害の適用があるので、二重就職というのは現実にどれだけそういう のがあるのか分かりませんが、特別加入で入っていた場合も含むということですか。 ○労災管理課長補佐  おそらく、厳密な議論としては、特別加入の場合は雇用はされていないわけですが、 労災保険でカバーしているわけですので、そこと適用事業場との移動は当然対象にす る、という考え方になるのだろうと思います。そこまで細かな記述はしていませんけれ ども。 ○島田座長  その辺は、一応その定義をしておいて、より厳密に整理をしなければいけない段階 で、少し例外的な場合も整理をしておいていただくということでよろしいですか。 ○労災管理課長補佐  実際の問題としては、おそらく特別加入であれば雇用ではないわけですが、労災保険 でカバーしているということから考えていくということになります。 ○島田座長  それは到底、数は出てこないですからね。大体議論も出尽くしたのではないかと思い ます。本日の議論を踏まえて、必要な修正をし、本研究会の中間とりまとめとして公表 したいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○保原先生  賛成です。 ○島田座長  本日の議論は、8頁、9頁の「二重就職者に係る給付基礎日額等について」という部 分については、突然「業務災害」という言葉が出てくるので、この辺は表現を修正する ということが、具体的な内容に関わるいちばんのポイントになるかと思います。あるい は「二重就職者の定義」についても、多少付け加えるという方向で修正をしたいと思い ますが、いかがでしょうか。                   (了承) ○島田座長  それでは、こういう方向で修正をしたいと思います。とりまとめにおける最終的な表 現あるいは報道発表の方法、その際の資料等については、座長一任ということでよろし ゅうございますか。                  (異議なし) ○島田座長  どうもありがとうございました。それでは、必要な修正の上、近日中に公表したいと 思いますので、よろしくご了承いただきたいと存じます。最後に事務局から挨拶をいた だきたいと思います。 ○労災補償部長  委員の先生方には一昨年以来、当研究会で、この通勤災害保護制度を中心に、幅広く ご意見をいただき、また精力的なご検討をいただいたわけでございまして、本日、ただ いま座長のとりまとめにございましたとおり、中間的な形で報告をとりまとめていただ いたという運びになったわけで、改めてこれまでのご検討、ご苦労に対し感謝を申し上 げる次第でございます。  とりまとめていただいた中には、なお引き続いて検討を要する事項もあるわけでござ いますが、しかし二重就職者ならびに単身赴任者それぞれの移動に係る通勤災害保護制 度への拡充ということについて、一定の方向性をとりまとめていただいたわけでござい ます。今後、このとりまとめていただいた内容につきまして、具体的な施策として実現 していくべく、引き続いて私どもも必要な検討、手続といったことをとらせていただく べく努力をしていきたいと考えている次第です。  なお、この通勤災害保護制度に関わっての引き続き検討すべき事項はまだございま す。そのほか、幅広く労災保険制度に関わるさまざまな課題について、当研究会におい て引き続いて幅広くご検討をいただきたいと考えているところですので、今後とも皆様 方にはよろしくお願いを申し上げたいと思っております。  本日は、大変ご苦労様でございました。長い間のご検討に改めて感謝を申し上げまし て、ご挨拶に替えさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○島田座長  どうもありがとうございました。これをもちまして本日の労災保険制度の在り方に関 する研究会を終了させていただきます。次回については、事務局で日程調整をしていた だいた上、別途ご連絡をさせていただきたいと思います。本日はどうもご苦労様でござ いました。                照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                    電話03-5253-1111(内線5436)