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社保審―医療保険部会 資料1
第9回 (H16.7.28)

基本方針に基づく医療保険制度改革に関する論点案

事項 論点案 当面の検討の方向性(案)
1.基本的な考え方
安定的で持続可能な医療保険制度の構築
給付の平等・負担の公平
良質かつ効率的な医療の確保
 
2.高齢者医療の在り方
若年からの保健・疾病予防の充実強化
前期高齢者、後期高齢者の特性に応じた医療の在り方
保健・疾病予防や介護との連携・役割分担
心身の特性を踏まえた高齢者医療の在り方という観点からみて、75歳で制度を分けることをどのように考えるか。
後期高齢者については、地域において医療サービスと介護サービスとの適切な分担が行われ、高齢者に相応しいQOLが確保されるようにすべきではないか。
一方、前期高齢者については被用者本人として働いている者も多いことなどから、従来の医療保険制度での加入関係を残すことをどのように考えるか。
前期高齢者については、生活習慣病の外来受療率が、65歳の前後で途切れることなく壮年期から一貫して増加しているという傾向がみられる中で、制度設計に当たっては、むしろ予防に重点を置くためにも、医療保険制度での加入関係を残した上で、保健事業をはじめとする保険者機能を強化すべきではないか。
3.高齢者医療制度
<基本的な考え方>

社会保険方式の維持

我が国の医療保険制度においては、社会保険方式の下で、被用者保険加入者以外の者を全て国民健康保険でカバーすることにより「国民皆保険」を達成した。
老人保健制度創設以前においては、「国民皆保険」の下で地域や職域における「連帯」を基礎として形成された保険集団(保険者)ごとに医療費を賄い、また、高齢者については、その医療費や所得の実態から見て、同世代内だけで医療費を支えることは困難であり、保険原理の下で、個々の保険者の内部において「世代間の連帯を含めた保険集団全体の連帯」に立って、医療費の負担が行われていた。
しかし、高齢化の進展や税財源による老人医療費無料化等により医療費全体に占める高齢者医療費の割合が高まるとともに、産業構造の変化により国民健康保険に加入する若齢者が相対的に減少する一方、退職により被用者保険から国民健康保険に移行する者が増加したことから、
1)  老人加入率の格差によって生じた、被用者保険と国民健康保険の間での老人医療費の負担の不均衡を是正することを目的として
2)  医療保険からの拠出金、老人医療費に着目した公費負担、患者一部負担で賄う
老人保健制度を創設した。
 以上のように、老人保健制度は従来よりあった「保険集団ごとの世代間の連帯」を国民皆保険という、より大きな枠組みで維持したものといえる。
 さらに、全人口に占める70歳以上の者の比率が将来の75歳以上の者の比率の水準であることから後期高齢者への重点化を図るため、平成14年制度改正において75歳への対象年齢引上げと公費負担割合の5割への引上げを段階的に行うこととした。
65歳以上の者を対象とし、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度
老人保健制度・退職者医療制度の廃止
医療保険給付全体における公費の割合を維持
世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化
新たな高齢者医療制度の創設に当たって、後期高齢者については、
1) 生理的能力等が低下していることに起因する医療・受療行動の特性を考慮し、国民皆保険の枠組みを堅持しつつも後期高齢者をそれ以外の集団と分けた上で、後期高齢者に相応しい負担の仕組みを採るとともに、
2) 給付面においても、地域において医療サービスを介護サービスと連携して提供することにより生活の質(QOL)の向上を図ることが必要であることに着目して、
独立した保険制度とする。(これにより、医療費負担における財政責任を担う主体(保険者)が明確化される。)
 この場合、後期高齢者については、保険制度としてみた場合定型的にリスクが高い集団であることから、その特性に相応しい負担の仕組みとして、
公費負担を5割としつつ、
後期高齢者自ら現役世代との均衡を考慮した適切な水準の保険料を負担した上で、
若齢者から「社会連帯的な保険料」としての支援を求める。
 65歳以上75歳未満の前期高齢者は、
1) 医療のあり方から見て、重症化予防を含めた「予防」の観点を重視しつつ、QOLの向上や医療費適正化を図るべきであるとともに、
2) 経済的にみても現役世代と遜色のない負担能力を有することに着目し、
現役世代と区分することのない被保険者として従来通りの保険集団に属することが妥当である。
 これまで老人保健制度に達しない高齢退職者(退職に伴い被用者保険から国民健康保険に移行する者)については、医療費が高まる年齢層となる一方で、その医療費については国民健康保険の若齢者に重い負担となるという問題を解決するため、被用者保険OBについては被用者保険が支えるとの考え方に基づき退職者医療制度において負担を行ってきた。
 しかしながら、今後の退職年齢である65歳以上の前期高齢者については、雇用の流動化を背景として被用者保険が支えるグループとそうでないグループの境目が曖昧になっていることから、医療費が高い点に着目し健康づくりや効率的で適切な医療サービスの在り方を求めつつ、当該年齢層で被保険者がいずれの保険制度に加入・移行しようとも、公平な負担の下に医療が保障されるよう調整を行う制度に移行する。この場合、各保険制度において高齢被扶養者を含め保険料負担を求める。
 併せて、前期高齢期に達する前から、個々の保険者が保健事業を実施し健康づくりに努めることやそれによる医療費適正化の成果が、調整に際して有利になる仕組みを検討する。
<保険料>
保険料の水準
現役世代との均衡を考慮した適切な負担
低所得者への配慮
保険料徴収の在り方
 年金制度が成熟する中で、一般的に高齢者も現役世代と比べて経済的に遜色のない負担能力を持っていることから、前期高齢者、後期高齢者ともに、新たな体系で現役世代との均衡を考慮した適切な水準の保険料負担を求める。この場合、
1) 後期高齢者医療制度においては、まず後期高齢者自身が一定の保険料を負担することを前提とした上で現役世代から支援を求めることから、保険料負担については、受益に応じた負担(応益)と負担能力に応じた負担(応能)を組合わせることが適切ではないか。
2) 前期高齢者についても、これに準じた保険料負担を求めることが適切ではないか。
3) なお、前期高齢期の被扶養者は、国民皆年金制度の下で、年金という定型的な収入があることから負担を求め得るものであり、高齢被扶養者の取扱が子供を含めた若齢期の被扶養者に対して保険料負担を求めることにつながらないのではないか。
<社会連帯的な保険料>
「社会連帯的な保険料」の性格
「社会連帯的な保険料」の費用負担の方法
後期高齢者医療制度における「社会連帯的な保険料」の保険料としての性格をどのように考えるか。
 1) 従来から、「世代間の連帯」を含めた「保険集団全体の連帯」により国民皆保険制度が成立している。したがって、その中で、医療・受療行動の特性に着目しそれ以外の集団と区別して後期高齢者を独立させたとしても、国民皆保険を成立させる中では、同様の連帯が成り立つのではないか。
 2)  国民皆保険制度を採る我が国において、後期高齢者は、自らが現役世代であったときに、当時の高齢者の給付を確保するために保険料を負担しており、いわば順送りで後期高齢者以外の世代の負担が充てられることによって給付が確保されている。
 3) したがって、後期高齢者の医療・受療特性に着目し、公費負担5割の下で高齢者自身の保険料を先充てするとともに、2)を踏まえ、後期高齢者に対する給付を確保するためのそれ以外の世代からの拠出を「社会連帯的な保険料」と位置づけることができるのではないか。
 4) この場合、あわせて医療保険における滞納問題についても考えることが必要ではないか。

「社会連帯的な保険料」を負担する現役世代の理解・納得を得られためには、次の点を満たす仕組みとする必要があるのではないか。
 1) 老人医療費が世代間でどのように負担されているかについて、考え方を分かりやすくする。
 2) 国民健康保険・被用者保険の保険者が何らかの形で関与できる。
 3) 医療費適正化に向けた保険者の努力が自らの制度の医療費負担を軽減するのみならず、高齢者医療制度における負担に反映される。
後期高齢者医療制度の保険者>
国保の保険者との関係
地域を基盤とした生活実態
安定的な保険運営の確保
保険者の再編・統合の進捗状況
後期高齢者については、生理的能力・生活機能の低下に起因する医療・受療行動の特性がみられるが、そのような特性を有する高齢者にふさわしい生活の質(QOL)の確保や医療費の適正化を図る観点からは、医療サービスと介護サービスとの適切な役割分担と連携を図ることや、地域を基盤として生活している高齢者に対して密接な働きかけができるよう、後期高齢者医療制度の保険者については地域で担うことが適当ではないか。
また、後期高齢者医療制度を担う保険者については、
(1) 後期高齢者にふさわしい生活環境の中で介護サービスとの密接な連携を図りつつ、被保険者に対して良質・効率的な医療サービスを確保し、さらに、保健事業や受療に当たっての患者への情報提供などに取り組むこと
(2) 被保険者に対して(1)のような取組みを通じて医療費適正化を図り、安定的な財政運営を果たすこと
(3) 地域の医療費水準に応じた水準の保険料を設定し、給付に見合った公平な負担を求めるなど、医療保険保険者(国民健康保険及び被用者保険)の再編・統合の基本的な考え方に合致したものであること
を基本として、保険者として期待される機能・役割を明らかにすることが必要ではないか。
<財政方式>
財政方式に関する基本的な考え方

老人保健制度の廃止

現行の老人保健制度は、保険料を財源とした各保険者からの拠出金、公費、患者の一部負担により老人医療費をまかなう制度であり、
1) 実施主体(市町村)に対して、医療費の多寡にかかわらず、現にかかった医療費に見合う拠出金と公費が投入される仕組みであり、
2) 保険者の負担する拠出金については、各保険者に医療費適正化の動機づけを与えることをねらいとして、その算定に当たり各保険者ごとの老人医療費(自己医療費)の水準を用い、
3) 公費については、国、都道府県及び市町村が4:1:1の割合で、給付費に対して定率の負担をしている。
このような現行老人保健制度については、
1) 老人医療費が世代間・保険者間でどのように負担されているか分かりにくい
2) 実施主体と財政主体が分かれており、保険料徴収も行わず財政責任がない実施主体には医療費適正化の動機づけが働かない
3) 老人医療費の適正化のためには若齢期からの予防が重要であるが、各医療保険制度に加入する現在の老人の医療費の水準のみを評価の対象としているため、医療費適正化の動機づけが十分に機能していない
4) 老人医療費の水準に大きな地域差がみられるにもかかわらず、実施主体に対して拠出金・公費が一律投入されている
という問題点が指摘されている。
新しい高齢者医療制度を設計するに当たっては、
1) 後期高齢者の医療費の負担について、誰がどのような考え方によりどれだけの負担をしているかが明らかになり、負担について理解・納得がしやすい仕組みにできないか
2) 後期高齢者医療制度の保険者が、保険料の徴収などの財政責任を果たす中で、介護サービスとの適切な連携を図ることなどを通じて自ら積極的に医療費適正化に取り組めるようにし、その取組が現役世代からの支援に反映される仕組みにできないか
3) 併せて、連帯保険料による支援金を負担する医療保険保険者についても、後期高齢者医療制度の保険者と連携しつつ、現役世代からの健康づくりを通じた後期高齢期に至るまでの医療費の適正化に努める動機づけが与えられるような仕組みにできないか
といった点を考慮することが必要ではないか。
後期高齢者医療制度の財政方式
保険料、被用者保険・国保による支援、公費により医療費をまかなう制度
高齢者の保険料と現役世代からの支援金の配分
新たな高齢者医療制度では、後期高齢者について独立した保険制度を設け、高齢者本人の保険料と現役世代からの支援を区別することにより、高齢者の医療費が世代間でどのように負担されているかが明確になるが、同時に、高齢者と現役世代の間の負担の割合(高齢者本人の保険料と現役世代からの支援金の割合)を明示的に決定することが必要となる。この割合については、
1) 高齢者と現役世代の双方とも、各世代全体の負担能力が向上した場合、少なくともそれぞれに見合う負担をすべきではないか。
2) 一方、負担能力を上回って高齢者医療費が伸びた場合、その部分をどのように評価し、負担すべきか。
被用者保険・国保による支援金負担の在り方
負担を配分する基準
保健事業など医療費適正化努力の評価
後期高齢者医療保険の運営に対する被用者保険・国保の関与
後期高齢者医療制度に対する支援金の負担については、医療保険保険者の間で負担を配分することになるが、その際には、以下の点を考慮することが必要ではないか。
1) 被用者保険と国保の間は、共通の所得捕捉が困難である現状を考慮すれば、加入者割とせざるを得ないのではないか。
2) 被用者保険・国保が保健事業など将来における高齢者医療費の適正化努力を行っている場合には、支援金の負担配分の算定に当たり、その努力や成果を評価する仕組みが考えられないか。
3) 支援金を負担する医療保険保険者が高齢者医療制度の運営について意見を申し述べるなど高齢者医療制度の運営に関与する場が設けられることが必要ではないか。
後期高齢者に公費を重点化するという平成14年改正法の考え方を維持
後期高齢者については、生理的能力等の低下に起因する医療・受療行動の特性のもと、医療費が一般的に高く、保険制度としてみた場合定型的にリスクが高い集団であることを踏まえ、後期高齢者自らの保険料を後期高齢者医療制度に充てることを前提とした上で、後期高齢者に公費を重点化するという平成14年改正法の考え方を維持することが必要である。
現行老人保健制度においては実施主体に対して公費が一律に投入されているが、新たな高齢者医療制度を地域保険として設けることとする場合には、保険者間の財政力の格差、医療費水準の格差(被保険者構成の違いによる部分とそれ以外の部分)や保険者による医療費適正化の努力や成果の相違などに着目した調整を行うべきではないか。
後期高齢者医療制度の保険者に対する支援金の交付の在り方
医療保険保険者の負担する支援金を後期高齢者医療制度の保険者に交付する際にも、公費の投入と同様の考え方による調整を行うべきではないか。
前期高齢者の医療費の調整
国保、被用者保険の費用負担の在り方
これまで老人保健制度に達しない高齢退職者(退職に伴い被用者保険から国民健康保険に移行する者)については、医療費が高まる年齢層となる一方で、その医療費については国民健康保険の若齢者に重い負担となるという問題を解決するため、被用者保険OBについては被用者保険が支えるとの考え方に基づき退職者医療制度において負担を行ってきた。
しかしながら、今後の退職年齢である65歳以上の前期高齢者については、雇用の流動化を背景として被用者保険が支えるグループとそうでないグループの境目が曖昧になっていることから、医療費が高い点に着目し健康づくりや効率的で適切な医療サービスの在り方を求めつつ、当該年齢層で被保険者がいずれの保険制度に加入・移行しようとも、公平な負担の下に医療が保障されるよう調整を行う制度に移行する。
前期高齢者については、医療のあり方から見て予防の観点を重視しつつ、QOLの向上や医療費適正化を図るべきであるとともに、経済的にみても現役世代と遜色のない負担能力を有することから、現役世代と区分することのない被保険者として従来通りの保険集団(国保・被用者保険)の加入関係を残したまま、制度間の前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を調整してはどうか。
この場合、調整金の負担・交付については、以下の点を考慮することが必要ではないか。
1) 前期高齢者の医療費を公平に負担する考え方としては、被用者保険と国保の間は75歳未満の加入者数の割合に応じて負担することが適切ではないか。
2) また、被用者保険・国保が保健事業など医療費の適正化努力を行っている場合には、調整金の算定に当たり、その努力を評価する仕組みが考えられないか。
前期高齢者に対する公費負担の在り方
 
保険者の再編・統合
(1) 基本的な考え方

保険者の財政基盤の安定
保険者機能の発揮
都道府県単位を軸とした保険運営の意義

医療保険は、現物給付を中心とする傷病の治療のための医療サービスを提供するとともに、予防のための保健活動等を行う仕組みであり、現下の各保険者の状況にかんがみると、その機能を十全に発揮していくためには、財政基盤の安定性を確保していくことが何よりも重要であり、そのためには、次のような取組を推進していくことが必要ではないか。
 1) 保険者規模の拡大(小規模すぎるためにその機能の発揮に問題を抱える保険者の場合)
 2) 保険者の財政安定化のための制度的対応
 3) 医療費適正化に向けた様々な関係者の取組
医療保険は、医療費の発生リスクを被保険者間で分かち合う仕組み。偶発的な高額医療費の発生などの医療費の変動に安定的に対応するためには、被保険者数の規模を大きくすることが有効な手段ではないか。
小規模な保険者においては、十分な職員数を配置できない、事務費が相対的に高いといった問題がある。規模を拡大すると事務処理体制の整備や事務費の効率化ができるのではないか。
医療保険制度については、以下の理由により、保険者の再編・統合を進めて、都道府県単位を軸とした保険運営を目指すべきではないか。
(1)  保険者として安定的な運営ができる規模が必要であること。
(2)  各都道府県において医療計画が策定されていること。
(3)  医療サービスはおおむね都道府県の中で提供されている実態があること。
(4)  上記を踏まえ、都道府県単位で医療計画、介護保険事業支援計画及び健康増進計画との整合性を図りつつ、地域の実情に応じて質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進し、医療費の適正化に取り組む必要があること。
(2)市町村国保
都道府県における国保運営の具体的な在り方
市町村国保の再編統合を進めるに当たっては、財政調整交付金の配分方法の見直し等により、「医療費(年齢構成の差を勘案後)の水準が同程度である保険者の場合には保険料も同じにする」(保険料の平準化)との基本的な考え方によるべきではないか。
現状では、都道府県によって市町村間の医療費の格差の状況が異なることを踏まえ、当面は、以下の理由により、二次医療圏の区域を基本に再編・統合を行い、医療費の適正化及び保険料の平準化を進めてはどうか。
(1) 二次医療圏は医療に関する通常の需要がその中でほぼ充足されるような区域であることから、医療費水準の平準化がしやすいこと。
(2) 実際に二次医療圏単位での市町村ごとの医療費水準の格差は、離島等一部の地域を除けば大きくないこと。
都道府県内の二次医療圏間の医療費格差が大きくなく、保険料の平準化も比較的容易である等の状況にある場合には、都道府県を単位に再編・統合を行い、医療費の適正化及び保険料の平準化を進めてはどうか。
その際、市町村保険者を指導する立場にある都道府県は、都道府県内及び各二次医療圏内における医療費の適正化及び保険料の平準化の実現に向けて一定の役割を果たす必要があるのではないか。
都道府県が医療費の適正化及び保険料の平準化の指導に取り組む際の財政、権限の位置付け等について検討する必要があるのではないか。
国保組合の在り方
 
(3)政管健保
都道府県を単位とする財政運営の具体的な在り方
政管健保に関する現状の問題点として、保険料率が全国一本で設定され、地域ごとの医療費の状況が保険料率に反映されていないため、受益に応じた保険料負担となっておらず、また、保険者による、地域の特性に応じた医療費の適正化に向けた取組や保健事業の展開が不十分ではないか。
以上のような問題認識に立った上で、今後、以下の事項について検討すべきではないか。
1) 受益に応じた適切な保険料負担や保険者努力の促進
保険料率を都道府県単位で設定することにより、都道府県ごとの医療費の状況や保険料収納率といった保険者努力が保険料率に反映される仕組みとする。
都道府県単位の保険料が都道府県ごとの医療費の状況を反映したものとなるよう、年齢構成及び所得水準の格差については、政府管掌健康保険の中で全国的に調整する。
2) 被保険者等の意見を反映した自主性・自律性のある保険運営
保険料率、保健事業の内容等について、一定のルールに従い、都道府県単位で被保険者等の意見を反映しつつ決定する仕組みとする
3) 効率的な事業運営
事業運営の効率性を考慮し、保険適用や保険料徴収について、厚生年金保険との一体的な処理を維持する。
(4)健保組合等
小規模・財政窮迫組合の再編・統合の具体的な進め方
都道府県単位の地域型健保組合の具体的な在り方
共済組合の在り方
健保組合に関する現状の問題点として、以下の事項が指摘できるのではないか。
産業構造の変化、経済の低迷などの影響から、財政面等で運営が厳しい状況になっている健保組合が多く見られるのではないか。
きめ細かい保健事業を行うために必要なノウハウや人的資源・施設を十分に有しない健保組合が多く、個々の健保組合では対応が限定的なものに留まる場合が多いのではないか。
規模の小さい健保組合においては、事務処理の効率性が低くなっているのではないか。
以上のような問題認識に立った上で、今後、以下の事項について検討すべきではないか。
全国展開や都道府県単位の健保組合で、健全かつ安定的な運営が確保されているものについては、引き続き自主性・自律性のある保険運営が行われるようにする一方で、財政面等で運営が厳しい状況になっている健保組合について再編・統合をいかに進めていくか。
地域において複数の健保組合が、保健事業やその他の保険者事務を共同して行うことにより、保険者としての機能をより効果的に発揮できるのではないか。
地域ごとに企業・業種を超えた保険者として健保組合を形成することも、選択肢の一つとして考えられるのではないか。
(5)地域における取組
保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者の役割分担・連携
医療費の地域特性の把握・分析・評価
関係者の協議の場
医療費適正化に向けての取組
医療計画、介護保険事業支援計画、健康増進計画との整合性
今後医療費の適正化を進めるに当たっては、
1) 後期高齢者の生活機能(地域における生活)を重視した医療サービス・介護サービスの提供
2) 生活習慣病予防を中心とした若齢期からの健康づくり
に関する取組みを促進し、QOLの向上を図ることを通じて、医療費の適正化を実現するという考え方を基本とすべきではないか。
そのためには、地域の医療特性(疾病構造・受療行動・医療費など)について保険者・被保険者・医療提供者・行政など広く関係者の参画を得て十分な把握・分析を行った上で、下記の点に留意した医療費の適正化に向けて取り組むための計画を策定する必要があるのではないか。
医療機関の機能分化と連携
介護サービスとの連携のもとでの地域における高齢者の生活機能を重視した医療サービスの提供
保険者と地域が連携して実施する効果的な手法による保健事業
また、上記計画の策定に当たっては、保険者・被保険者・医療提供者・行政など関係者が果たすべき役割・責任を明らかにすることが必要ではないか。
上記計画は、医療計画・介護保険事業支援計画、健康増進計画と相互に整合性を確保する必要があるが、特に都道府県の役割が重要ではないか。
都道府県ごとに医療費の地域差(年齢構成の違い以外の要因による格差)が生じており、これには医療・介護のサービス提供体制や地域の健康水準が深く関わっており、これらの事項に関し、都道府県は、医療計画、介護保険事業支援計画、健康増進計画の策定等といった事務を所掌している。
都道府県は、市町村の行政の広域的な調整を行うこととされている。
都道府県は、各医療保険加入者たる地域住民の福祉の増進を図る責務を有している。
国は、以上のような総合的な医療費適正化の体系を明らかにし、地域における医療費適正化の取組に対し、国としての推進組織体制を整備しつつ、必要な支援を行うべきではないか。
増大する高齢者医療費の適正化
地域における、一連の流れとしての質の高い効率的・効果的な医療サービス・介護サービスの提供と健康づくり
地域における医療提供の機能分化・連携の促進
保険者による保健事業の推進
生理的能力・生活機能の低下が進む後期高齢者については、その心身の状態に相応しい医療サービスの在り方を検討するとともに、介護との役割分担を明確にした上で連携を強化すべきではないか。この場合、介護保険導入後のサービスの移行状況やいわゆる「社会的入院」についてどのように評価するか。
既に要介護認定を受けている後期高齢者が心身の状況に応じた必要な医療を受けるため、医療・介護の間で一層連携がとられ、地域において生活機能を重視した形で総合的にサービスが提供できるようにするなどの仕組みが必要ではないか。また、このためには、とりわけ在宅でサービスを受ける後期高齢者に対して地域で主治医やケアマネージャーが一層協働できるようにする必要があるのではないか。

前期高齢期・後期高齢期を通じて患者のQOL向上や医療費の適正化を図る観点から、地域における医療提供の機能分化・連携を促進すべきではないか。具体的には、地域の医療資源の状況をより詳細に明らかにし、変化する患者の状態に応じ、急性期から退院後の在宅等に至るまでのサービスが確保されるよう、介護サービスとの適切な役割分担と連携のもとで、医療提供(医療機関・病床)の機能分化と連携を強化することを検討すべきではないか。
良質で効率的な急性期医療
急性期後の患者について適切な医療サービスが途切れなく確保されるための地域における医療機関の連携
自宅以外の住まいで生活する場合を含めた在宅における適切な医療サービス

加入者の健康度やQOLを向上させるとともに、医療費の適正化に資するよう、生活習慣病対策を中心とする効果的な健康づくりを、地域(市町村による老人保健事業)と保険者が一体的に取り組む体制を構築し、両者の役割分担と連携を明らかにしつつ、保険者自らがより積極的に推進できるようにすべきではないか。
生活習慣病の症状の進行は血圧や血糖値など一定の指標の変化により把握し得るものであることから、個々人の健康時からの健診データを活用すれば、より効果的な予防が可能である。今後、現役世代から前期高齢期については、発症・重症化予防や医療費適正化について一定の成果を上げている事業・手法を検証しつつ、地域・保険者あげて、より効果的な保健事業を展開すべきではないか。
また、医療保険制度においては、保険者のこのような保健事業への努力や医療費適正化の成果が高齢者医療制度の医療費の負担に反映される制度を構築すべきではないか。
また、保険者は互いに連携・協力し、次のような取組を推進することとしてはどうか。
被保険者教育、指導等
先進的な保健事業についての情報交換
物的・人的資源の共同利用
その他保険者の連携・協力による取組


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