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第5回抗がん剤併用療法に関する検討会 議事要旨


厚生労働省医政局研究開発振興課
厚生労働省医薬食品局審査管理課


○ 日時 平成16年7月23日(金)10:00〜12:00
○ 場所 九段会館 真珠の間


 出席者
(有識者)
有吉  寛 県立愛知病院名誉院長
黒川  清 東京大学先端科学技術研究センター 客員教授、日本学術会議会長
西條  長宏 国立がんセンター東病院副院長
佐々木 康綱 埼玉医科大学医学部教授(臨床腫瘍科)
谷川原 祐介 慶應義塾大学医学部教授・薬剤部長
藤村  重文 東北厚生年金病院 院長
堀田  知光 東海大学医学部教授
堀内  龍也 群馬大学医学部付属病院薬剤部長
渡辺  亨 国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

(オブザーバー)
米国研究製薬工業協会
欧州製薬団体連合会
日本製薬工業協会

(事務局)
岩尾 總一郎 医政局長
阿曽沼 慎司 医薬食品局長
安達  一彦 医政局研究開発振興課長


 議事
1.開会
2.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(報告書案)
(1)悪性リンパ腫 シスプラチンを含んだ化学療法
(2)骨髄腫 VAD療法
(3)頭頚部がん 5−FU
(4)脳腫瘍 プロカルバジン
(5)脳腫瘍 ビンクリスチン
(6)大腸がん 5−FU及びアイソボリン
3.今後の検討対象について ワーキンググループからの報告について
4.その他
5.閉会


 配付資料

 座席表
  資料1 抗がん剤併用療法に関する検討会 名簿
  資料2 抗がん剤併用療法に関する検討会 運営要綱
  資料3 抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループ作業の進行状況
  資料4―1 悪性リンパ腫 シスプラチンを含んだ化学療法
  資料4―2 骨髄腫 VAD療法
  資料4―3 頭頚部がん 5−FU
  資料4―4 脳腫瘍 プロカルバジン
  資料4―5 脳腫瘍 ビンクリスチン
  資料4―6 大腸がん 5−FU及びアイソボリン



 議事要旨
1.開会
事務局より、開会の挨拶が行われた。

2.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(報告書案)
【WGでの検討内容について】
事務局より以下の説明があった。
21候補品目の第1バッチのうち、残りの8つの療法について継続してワーキンググループにおいて、報告書の作成作業を行った。
ワーキンググループにおいて、報告書の内容等の検討を行い、整備状況から見て7つの療法の報告書について本日の検討会に上程することとした。
悪性リンパ腫に対するESHAP療法、DHAP療法については、シスプラチンを含んだ化学療法として1つの報告書とした。

【悪性リンパ腫 シスプラチンを含んだ化学療法】(資料4−1)
愛知県がんセンターの小椋美知則参考人より以下のような説明があった。
悪性リンパ腫に対するESHAP療法、DHAP療法については、シスプラチンを含んだ化学療法として一つにまとめ、再発、難反応性悪性リンパ腫への効能拡大について報告書を作成。
報告書に記した海外の公表論文、教科書等において、シスプラチンを含むDHAP療法が再発難治性悪性リンパ腫に対する代表的な救援化学療法とされている。
投与量については、DHAP療法、ESHAP療法とも既に他の適応症に対して承認されている用法・用量(添付文書のF法、G法)とほぼ同様であり、妥当であると判断できる。また、臨床試験の有効性、安全性からみても用法・用量は妥当であると判断できる。
安全性については、主な副作用として骨髄抑制、腎毒性、消化器毒性があるが、化学療法を熟知した医師が十分な副作用対策をとって行うのであれば、安全性は担保できると判断できる。
質疑応答
(質問)リンパ腫の初発治療においては、CHOP療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)が標準的化学療法として確立されているが、再発時の救援療法に再度CHOP療法を実施することはないのか。→(回答)CHOP療法ではドキソルビシンを極量近くまで使用するため再発時の救援療法には通常使用しない。本療法が承認されると、シスプラチンを含むレジメンが実施可能となり救援化学療法の幅が広がり、患者にとってプラスとなる。

【骨髄腫 VAD療法(ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキザメサゾン)】(資料4−2)
(財)癌研究会附属病院の畠清彦参考人より以下のような説明があった。
ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキザメサゾンの骨髄腫への効能拡大及びドキソルビシンの用法・用量の変更について報告書を作成。
VAD療法については多くの報告論文があり、報告書には代表的な大規模臨床試験をあげた。これらの結果よりその有効性は、医学薬学上公知であると判断した。
国内での使用については、繁用されており使用経験は多いと言えるが、新規性がないため論文報告は少数である。
安全性については、主な副作用として骨髄抑制があるが、化学療法を熟知した医師がG-CSF製剤及び抗生剤を使用し、十分な副作用対策をとって行うのであれば、安全性は担保できる。
質疑応答
(質問)報告書のビンクリスチンの用法・用量の記載が“1回量2mgを越えないものとする”となっており、誤解を招く恐れがあるため“1コース(4日間の総投与量)2mgを越えないものとする”と変更した方がよいのではないか。→(回答)薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の事前評価には修正したものを提出する。

【頭頚部がん 5−FU】(資料4−3)
栃木県立がんセンターの藤井博文参考人より以下のような説明があった。
フルオロウラシルの用法・用量の変更について報告書を作成。
報告書に記した海外の公表論文及びガイドライン等より、5−FUの1000mg/m2/日 4−5日間持続静注の有効性は医学薬学上公知であると判断した。
安全性については、化学療法を熟知した医師が口内炎、下痢、悪心・嘔吐等の管理に十分注意を払い行うのであれば、安全性は担保できる。
国内での使用については、海外と同じ用量(1000mg/m2/日)での論文報告は少ないが、通常の診療で既承認の用量を大きく超えて使用されており、使用経験はあると判断できる。また、現在厚生労働省の班研究で、5−FU+シスプラチン+放射線療法の臨床試験が行われているところである。
質疑応答
(質問)5−FU1000mg/m2/日 4−5日間投与の安全性についてはどうか。→(回答)食道がんでは1000mg/m2/日 4日間投与の例があり、特に問題は生じていない。しかしながら、かなり重篤な口内炎が発生するので、適切な管理が必要であり、本領域の化学療法を外科及び口腔外科の医師が行う際に、これらの副作用管理が確実に出来るかについては問題があると考える。
(質問)口腔外科医については癌学会等に所属しておらず、本検討会で了承された抗がん剤併用療法等の適正使用について講習等を受ける機会がないため、口腔外科医への情報提供のあり方については検討する必要があるのではないか。→(回答)口腔外科医への情報提供については、行政としても検討する。
(質問)ロイコボリンの併用について検討しないのか。→(回答)ロイコボリンと併用で有効性は高くなるが、毒性も強くなる。
(質問)用法・用量について、国内では1000mg/m2/日 4−5日間での論文報告が少ないので、報告書に記載されている“通常成人1000mg/m2/日 4−5日間持続静注で”という表現については変更した方がよいのではないか。→(回答)“最大成人1000mg/m2/日 4−5日間持続静注で”と修正し、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の事前評価に提出する。

【脳腫瘍 プロカルバジン及びビンクリスチン】(資料4−4、資料4−5)
埼玉医科大学の西川亮参考人より以下のような説明があった。
プロカルバジン、ビンクリスチンの悪性星細胞腫及び乏突起膠腫成分を有する神経膠腫への効能拡大について報告書を作成。
悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫とも発生頻度が非常に少ない疾患である。
報告書に記した海外の公表論文、教科書及びガイドラインにおいて、PCV療法(プロカルバジン+ロムスチン(本邦未発売)+ビンクリスチン)が悪性星細胞腫及び乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する標準的化学療法として報告されている。
安全性については、PCV療法の主な副作用として骨髄抑制、悪心・嘔吐、神経毒性、皮疹等があるが、化学療法を熟知した医師が十分な注意を払い行うのであれば、安全性は担保できる。
投与量については、プロカルバジン、ビンクリスチンとも既承認の用法・用量の範囲内であるため妥当であると考える。ただし、プロカルバジンについては、1カプセル50mgの製品しかなく、報告書に記載されている60−75mg/m2/日で投与量を求めると端数が出る場合がある。
国内での使用については、熊本大学がPCV療法のロムスチンをニムスチンに変更したPAV療法(プロカルバジン+ニムスチン+ビンクリスチン)の無作為化比較試験の報告があるが、プロカルバジン、ビンクリスチンとも適応外使用であるため、多数症例の報告はこの1編のみである。
質疑応答
(質問)プロカルバジン製品は、海外においても50mgカプセル製剤しか販売されていないのか。→(回答)海外においても50mgカプセルしか販売されていない。投与量については、端数が出た際には医師の判断で適切に使用していただきたい。

【大腸がん 5−FU及びアイソボリン】(資料4−6)
静岡県立静岡がんセンターの朴成和参考人より以下のような説明があった。
フルオロウラシル及びアイソボリンの用法・用量の変更について報告書を作成。なお、海外ではロイコボリンとの併用で臨床試験が行われているが、我が国では承認を取得していないため、既承認のアイソボリン(L−型ロイコボリン)との併用療法として報告書を作成。
報告書に記された海外の公表論文、教科書、ガイドライン等より5−FU持続静注及びアイソボリンを含むde Gramont療法、AIO療法が既承認の5−FU静注・アイソボリン療法より有効性・安全性において優れていることが、医学薬学上公知であると判断できる。
海外においては現在5−FU持続静注での臨床試験が中心に行われており、今後それらの化学療法を国内で行おうとする際、持続静注の用法がないと支障をきたす可能性がある。
国内での使用についてはde Gramont療法、AIO療法とも一般的には行われていないが、現在国立がんセンターで臨床試験が行われている。
質疑応答
(質問)現在行われているレジメンで5−FUをワンショット静注した後、さらに5−FUを持続点滴するものがあるが、総投与量において保険査定されることはないか。→(回答)最大投与量を3000mg/m2としておりその範囲内で使用していれば査定されることはないと考える。
(質問)レジメンを決めて報告書を作成することは出来ないのか。→(回答)海外で行われている臨床試験の結果で、今後標準化学療法が変わっていくことが考えられるので、レジメンを決めて報告書を作成するのは現実的でない。
(質問)各レジメンでアイソボリンの投与量にかなり幅があるがどのような根拠で決めたのか。→(回答)海外で報告されているロイコボリンはアイソボリンと比較して、効力が約50%であることから、アイソボリンの投与量はロイコボリンの投与量の半量とした。

【まとめ】
 ・本日上程された6候補品目については本検討会の了承が得られた。
 ・海外で標準的に使用されている療法を国内で行う際、海外で使用される投与量より少ない量で使用するケースが多く見られるが、それでは期待される効果が得られない。今後がん専門医を養成し、適切な治療が行えるよう環境を整備していく必要がある。
 ・本検討会での意見を踏まえ、事務局及びワーキンググループで再度修正を行い、修正後の報告書については、座長に一任する。

3.今後の検討対象について ワーキンググループからの報告 資料3
国立がんセンター中央病院の藤原康弘参考人より以下のような説明があった。
第2バッチの候補品目について、ワーキンググループで選定中であり、選定においての基本的考え方は第1バッチ同様、臨床的に必要性が高い療法としている。
医学薬学上公知の水準については、ほぼコンセンサスが得られつつあるので、そのクライテリアに合致するエビデンスがあるかについて考慮し、ワーキンググループで選定作業を行っていく。
21候補品目の第1バッチのうち、残りの1候補品目である泌尿器科領域のTIP療法は、救援療法として効果を期待するものであり、今まで本検討会に上程してきた療法のように国際的に標準療法として使用されているものとやや趣を異にするものである。
TIP療法のようなものを第2バッチ以降において積極的に取り組んでいくかについて、ワーキンググループで考え方を整理しているところであり、救援療法の取扱全般を視野に入れて、本検討会の有識者の先生方に意見をいただきたい。→(有識者意見)脳腫瘍領域、泌尿器科領域、整形外科領域等については、症例数が少なく臨床試験が実施できない状況にあるので、このようなものについては、本検討会で取り上げていくべきであると考える。

4.その他
事務局より以下のような説明があった。
【今後のスケジュールについて】
 ・6月25日の第4回検討会及び7月23日の第5回検討会で了承された報告書については、8月の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において事前評価をいただく。
 ・第1バッチの残りの品目である泌尿器科領域のTIP療法は、第6回検討会に上程する予定。
 ・第2バッチ以降の候補品目について、ワーキンググループで精査し第6回検討会でリストを報告する。
 ・第6回検討会は、8月25日に開催する予定。

【社会保険診療報酬支払基金宛 医療課長通知について】
 ・7月9日付けで、保険局医療課より「薬価基準に収載されている医薬品の適応外投与について」の通知が発出された。
 ・薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において事前評価が行われた抗がん剤併用療法等については、特定療養費の対象とせず、薬理作用に基づいて処方した場合、昭和55年に保険局医療課より発出された通知(保険診療における医薬品の取扱において)に基づいて対応する。


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