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I 働くことを巡る現状と課題

1.働き方の意識

(生活面の意識)
 物質的な豊かさが実現される中で精神的な充足が求められている。また、豊かさの基準が多様化するとともに、集団主義的な傾向から個人の生活を重視するようになり、安定志向も強まっている。
 社会の変化が激しく、また、この10年間は経済も停滞したため、生活面での不安が高まっている。特に、収入の不安、雇用の不安、老後の不安などに高まりがみられる。
 自殺者も年々増加し、人口当たり自殺者は世界でもトップクラスになっている。50代が多く、経済的要因によるものが特に増加している。

(働き方についての意識)
 働く目的については、収入を得るためとするものが多いが、同時に壮年層では、才能や能力発揮をあげるものが多く、高齢者層では、社会の一員として務めを果たす、生き甲斐をみつけるため、が多い。
 理想の仕事については、収入の安定している仕事をあげる者が最も多く、自分の専門知識や能力が生かせる仕事も全般に高い。自分にとって楽しい仕事を希望する者は、壮年層や女性に多い。
 組織との関係では、若年層において、一社長期勤続より能力を活かして転社を希望する者が多く、また、中高年層でも、近年のリストラにより組織に対する信頼感が揺らいでいる。

2.生き方、働き方の歴史的転換

(歴史的転換期にある日本社会と新たなパラダイムの創造)
 戦後の経済発展により、日本の平均寿命は、男女とも世界一になり、一人当たりGDPも世界でトップクラスになっている。日本社会は、基本的には、戦後社会が目指した豊かな長寿社会を達成したと言えよう。
 しかしながら、働く者の生活に眼を向けると、雇用面での不安、収入・収益の減少による生活不安、老後の不安等が高まっている。
 経済のグローバル化や技術革新の進展に伴い、市場競争が激化する中で、長時間労働や仕事に追われることによるストレスが生じ、仕事に充実感や生き甲斐を感ずる者の割合も高くない。
 他方、自らの才能や能力発揮できる働き方や能力を生かせる仕事を希望する者も多く、時代の閉塞感を打ち破ることが待望されている。
 現在は、「工業社会」から「ポスト工業社会」への移行期にあるととらえることができ、明治維新や第二次世界大戦の敗戦に匹敵する大きな転換点を迎えている。日本社会は、いわば「第三の歴史的転換期」の中にあると言えよう。
 「ポスト工業社会」では、基本的には、労使間の格差や規模間格差が解消するとともに、個人も組織に依存した拘束的な働き方から解放される。
 こうした意味において、現代は、ヒトの能力が経済社会の主役となり、一人一人の労働者が、それぞれの意欲・能力に応じた仕事を得て、その能力を存分に活かしながら生きていくことが現実に可能な社会になってきた。
 したがって、国民全体が、「第三の歴史的転換期」をヒトが主役の時代へと変える好機として捉え、こうした社会の実現に向け、新たなパラダイムをつくりあげていくことが国民の希望に応えることになるのではないか。


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