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平成16年度第3回目安に関する小委員会議事録


1 日時 平成16年7月16日(金)10:30〜

2 場所 厚生労働省第二共済組合宿泊所茜荘

 出席者
 【委員】(公益委員)古郡委員長、今野委員、岡部委員、中窪委員
(労働者側委員)加藤委員、久保委員、中野委員、山口委員
(使用者側委員)池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員
【事務局】(厚生労働省)大石審議官、麻田賃金時間課長、
上岡主任中央賃金指導官、
山口副主任中央賃金指導官、長課長補佐

 議事内容

(第1回全体会議)

○古郡委員長
 それではただいまから第3回目安小委員会を開催いたします。前回の小委員会で労使各側から今年の目安について基本的な考え方を表明いただきましたけれども、まだ他に何か追加されたいこと、あるいは強調しておきたいことがございましたら、お伺いしたいと思います。まず使用者側から何かありましたらどうぞ。

○川本委員
 では、私の方から。先般、景気の状況につきまして中小零細はまだ厳しいという話をさせていただきましたけれども、それを数字的に補っておきたいと思いますので、いくつか申し上げさせていただきたいと思います。いろいろ中小企業のデータというものがあるわけでございますけれども、一つに中小企業の景況調査というものがございます。これは中小企業基盤整備機構の発表で、6月30日付けでございますけれども、約1万8千の企業の調査でございます。これでですね、平成16年の4から6月が最新で発表になったわけでございますが、この数字を見ましても、業況判断、それから売り上げ高、資金繰り等全部マイナスの数字でございまして、つまり悪化をしているという数字が大きくなっているわけでございます。特に製造業ですと、大体、業況判断がマイナス14%、売り上げもマイナス11%、資金繰りもマイナス15%ということで、資金繰りは苦しい、売り上げは減少している、業況先行き現在も苦しい、とこんな数字なわけでございますが、特に建設、卸売り、小売り、そしてサービスというこちらの非製造業の分野が非常に厳しくなってございます。例えば小売業ですと、業況判断もマイナス35.7%、要するにマイナス36%、売り上げもマイナス30%、資金繰りもマイナス28%ということでございまして、非常に厳しい状況が続いております。この調査では過去3年間のこの業況のD.I.を時系列に見てございますけれども、数字的に読み上げますと、平成13年の頃はマイナス40%ぐらいで動いていたものが、多少はもちろん改善してございますけれども、この非製造業は大体マイナス20%ぐらいのところまででありまして、やはり厳しい状況が続いているということでございます。それから、同じく経済産業省の中小企業庁の調査でございますが、これも同じく6月30日付けで発表になってございますが、こちらは全体の集計だけでなく、エリア別ということで、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州とエリア別の数字で調べてございますけれども、これを見ましても実は2002年のときからこの業況判断、2003年、2004年の4月から6月までということでございますが、全部▲、すなわち悪化という数字でございまして、こんな表でございますけれど、真っ黒の状態がずっと続いてるわけです。従って、これだけ苦しい状況、ずっと悪化という状態が続いているということを分かった上で対応する必要性があるのかな、と思っております。それから、本当は、では具体的にどんな決算の数字になっているのかというところを見たいわけなのですが、残念ながら零細小企業まで見ようと思いますと、法人企業統計というのが財務省にありますが、小さいものまで把握できるのは、年度のものしかないわけです。それで、今最新の数字というものが2002年の数字でございまして、今年10月頃にまた2003年分が集計されるわけでございますけれど、この2002年付加価値分析というのをしてみますと、付加価値に占めます人件費の割合というのが、資本金が1,000万から2,000万未満で大体84%くらいでございまして、いわゆる課税前利益、税金が課される前の利益というのが大体1%でございます。それから、資本金が1,000万未満になりますと、人件費いわゆる労働分配率は87%から90%くらいになるようでして、実は課税前利益は全部赤字でございます。この状態がずっとバブル崩壊後、厳しい状況が続いてきているわけでございますが、これが10月に出ます2003年になって改善するかというと、先ほど申し上げましたこの業況判断、そして売り上げ等の時系列の流れを見ましても、改善しているとは思えませんので、やはりこれだけ分配率が減って、課税前利益が出ない状況というのは、多分2003年の数字になっても変わっていない状況だろうと、こんな風に思っている訳でございます。一応数字的なことを申し上げたかったので、以上お伝えさせていただきます。

○原川委員
 すいません、資料を一つお配りしてよろしいですか。それでは、今4枚紙でございますけれど、配っていただきました。今、川本委員からいろいろと中小企業調査の数字をご披露したわけですけれども、私からは前回も申し上げましたが、私ども全国にブロック別・業種別に情報連絡員という景況モニターを、業界に精通している人たちに委嘱をいたしまして、全国3,000人ぐらいのモニターをおきまして、毎月景況について報告を受けているのですけれども、その最新の5月の状況を、この景況、2枚目が売り上げ、3枚目が収益、4枚目が雇用というこの5つのカテゴリーで表したものでございます。D.I.値でございますけれども、D.I.値というのは例えば1枚目の景況で見ますと、これが下の方にございますが、増加の率から減少の率を引いたものとなるわけですけれども、その引く前のもとの数字を表してD.I.値というものの性質といいますか、そういったものから景気の状況を見てみようという試みをしたものでございます。例えば1枚目の赤い帯がございますが、これは下の注にございますように前年同期、これでいきますと平成15年の5月現在の景気と比べて、悪化をしているというところが多い、そういう指摘が多い業種を赤で塗ったものでございます。好転の方が多いというのは黄色で示しております。これを見ますと、昨年の同期よりもむしろ景況は悪化しているというのは、例えば北海道・東北ブロックでいいますと、一般機械、電気機器以外の全ての業種で、悪化している方が好転しているという回答より多いということになっております。一番下に合計が、例えば北海道・東北でいきますと、緑の帯で合計が書いてあるわけでございますが、これが回答数、1業種に1モニターということになっておりますので、これが回答数になりますが、割合が、悪化が40.5、好転が9.2ということで、これはここには書いてございませんが、全国のD.I.値は平均でマイナス27.1です。北海道はこの下の割合40.5から9.2を引いたものでございます。こういったことで、良くなっているというのはごく一部の業種でありまして、ほとんどは前年同期よりも悪いという回答です。3枚目を見ていただきますと、収益のところでございますけれども、これもやはり一般機械とか電気・輸送機器と、自動車・電気関係を中心としたもの以外はほとんど前年度同期よりも悪化しているということになります。これを、一番下の割合を見ますと、悪化した割合というのはほとんど4割を超えています。中国地方は35.5でございますが、それ以外は46、42、45ということで4割を超えているということでございます。それに対して好転というのは、ほとんど一桁で、近畿、中国、九州は一割強ということになっておりますけれども、大体上限はそのくらいでほとんど一桁ということでございます。従ってD.I.値が水面上にだんだん景気が良くなって上がってくるというようなことの内訳というのは、好転してD.I.値が良くなっているということよりは、むしろ悪化の度合いが普遍、変わらずのほうに移動して、数値自体はマイナス値が少なくなって、水面上に近づいているという、そういった繰り返しが毎月行われているということで、好転以外の、去年と同じである、あるいは悪化しているというところは、前年と変わらず、あるいはそれ以上悪くなっているということを表しているわけですから、好転が増えない限りは、この実態、D.I.値が少し上がっても実態は変わらないというようなことが言えると思います。これがひとつのD.I.値のからくりといいますか、示すところであるというふうに考えております。売り上げは少し良くなっていますが、好転・増加のところが2枚目を見ますと20%超え、あるいは3割近いところもございます。しかしそれ以上に悪いというところも赤帯で示したようにあるということでございまして、非常に実態は厳しいということでございます。それから、最後に雇用人員の地域別状況、4枚目でございますけれども、これを見ても大体、先ほどから機械関係あるいは鉄鋼金属以外は赤帯が多いということになるわけでございますけれども、これを見ますと大体去年と雇用人員が変わらないというのがほとんどでございまして、しかし増えたというのはごくわずかで、増えた、減ったというところを比較すれば減ったというのが多いというのが現状でございます。例えば雇用人員でいいますと、労働力調査の5月結果というのがございますが、この労働力調査、総務省の統計局が出しているものを見ますと、第6表というのがございまして、非農林業の従業上の地位及び企業の従業者規模別雇用者数という表がございますが、企業規模別で雇用者数の変遷を見ますと、30人以上の規模、特に500人以上の規模においては、雇用者数はここ1年ぐらいずっと増えております。ところが、1から29人のところを見ますと、9月にはゼロというのがありますが、それを除いては、ここ1年ずっとマイナスが続いております。今年に入って、1月32万人マイナス、2月は56万人マイナス、3月は67万人、4月は67万人、5月が38万人それぞれマイナス、ということで小規模企業の厳しさ、地域経済の厳しさというのがこういうところで出ているものと考えます。それから、先ほど労働分配率の話が出ましたけれども、大企業はかなりリストラが進みましたけれども、中小企業はむしろ雇用者を抱えて、人件費を抑えるということでコスト削減に対応しているわけでございますけれども、そういう意味で雇用の維持に関して、結果としてかもしれませんが、非常な貢献をしているということでございます。地域の中小企業はそう簡単には従業員の首は切れないということで、そのかわりに賃金を抑えながらも雇用を維持するというところで苦労をしているということでございます。そういった雇用面からの配慮というのも重要であると考える次第であります。以上。

○古郡委員長
 他に使用者側からありますか。

○池田委員
 私から商工会議所の調査結果をご報告しておきます。地域の景況アンケートを全国の403商工会議所からいただいております。まず景気の状況の認識は、どうなったかということの中では、下げ止まりというのが一番多いです。部分的にも下げ止まりというのが、状況としては一番回答数が多くなっておりまして、回復の見込みについては、しばらく見込み無しというのが一番パーセンテージが多くなっております。それから商工会議所の方で、B・C・D地区につきまして、1県ずつサンプル調査をしました。B地区は千葉県なのですが、千葉県に関しましては50社の回答でしたけれども、一般社員で実施するところは2%、これに対して改定しないが80%ということでした。それからパートタイム労働者・アルバイトに関しては実施するのが8%、本年度は改定をしないというところは44%。なお、雇っていないところが30%ございますので、実質的には雇っているところの過半数が実施しないということです。これがB地区の千葉県の状況であります。それから、C地区は福島県のサンプルをとっているんですけれども、これも40社でありますけれども、今年度は一般職員については改定しない、凍結というのが72.5%、賃上げをしたというのが12%となっております。それから、パートタイム労働者・アルバイトにつきましても同様に賃上げ改定しないというところが40%、雇っていないところが32%でございます。実施をしたところが0%ということになります。それから熊本県、D地区でありますけれども、これについては46社の回答をいただきました。実施しないところが一般社員が54.3%、それからパートタイム労働者・アルバイトにつきましては、賃上げを実施したところが13%、実施しないところが50%、まだ雇っていないところが32%。Aを除きまして、B・C・Dの3ブロックの状況の調査をしておりますけれども、今年に関しては実施しないというところが7割方占めているという数字が出ております。なお、景気の状況につきましては、今ご報告いただきいたのと同じような状況でありますので、大企業と中小零細企業が95%を占めております商工会議所としては、やはり景気認識はまだ厳しいということでございます。結果的には今、非常に今年の夏は海外旅行が盛んだとか、それなりに動きは出ているようですが、未だにデパートなどの売り上げは対前年度比マイナスです。レジャー産業は一般的にマイナスであります。ただ少しずつ動いているのは、相対的にデフレの今までの流れの中で、物が安くなったというところの中で、実態賃金は下がっていないというところが多いという、この3年間の認識の中で、多少今の賃金の中で余裕が出てきたところに動きが出てきた、という認識でいるようです。以上です。

○古郡委員長
 いかがですか、使用者側。

○原川委員
 もうひとつ言わせていただきたいと思います。厚生労働省の資料ですが、5月の雇用・失業情勢ということで、先ほどの労働力調査の完全失業率、それから有効求人倍率、また、これは別の調査ですが、これを見ても景気の状況が非常に厳しいということが分かると思いますので、申し上げたいと思います。完全失業率でございますけれども、この資料によりますと平成16年の1から3月、3ヶ月の平均は5.0ということになっております。それで、この1年前の、ちょっと平均は分かりませんが、平成15年の1月が5.5、2月は5.3、3月は5.4ですから、まあ5.3から5.5くらいの間の完全失業率でした。今年の1から3月の完全失業率を地域別に見てみますと、北海道が6.9、東北が6.2、それから近畿が6.0、九州が5.5ということで、昨年の完全失業率を上回るような地域が、まだ今申し上げたように多くあるということでございます。それから有効求人倍率を見ますと、昨年の5月の有効求人倍率は、季節調整済みで0.61でございます。有効求人倍率の今年の5月は0.80に上がったわけですけれど、昨年の0.61を下回っている地域というのは北海道は0.52、東北は0.60、九州は0.58ということでございまして、特に県別で見ますと、全国で一番低い有効求人倍率は青森の0.32でございまして、これは今年の5月時点のものでございますけれども、その次が沖縄で0.39ということになっています。北海道が0.52、岩手は0.51、千葉は0.60、それから高知が0.45、佐賀が0.55、長崎が0.48、熊本が0.58、宮崎が0.59、鹿児島が0.50という風になっておりまして、この有効求人倍率は景気の現状を表す指標として使われているということでございますから、いかに地域の現状が厳しいか、地域によってばらつきがございますけれども、厳しい地域がまだ相当あることを示していると思います。完全失業率も、景気の後を追いかける、遅行指数ということが言われておりますので、これもかなり厳しい状況の地域がまだまだたくさんあるということでございます。昨年を下回るような地域がたくさんあるということを今申し上げたかったということでございます。

○杉山委員
 要するにばらつきが拡大していて、このばらつきの悪い方がいかに多くの地域と業種にあるかということをご説明したと思うのですが、私はそれでは良いところ、大きいところがどうであったかという面もやはり見ておく必要があると思います。今年のベースアップはご承知の通り、ほとんど要求をしませんでした。したがって、回答ゼロということも当然あり得ません。その影響を受けてか独自でか分かりませんけれども、中企業も要求をしないというところが多かった。その結果として、この1表の調査対象のところでどういう状況がでてきたか、ということなのですが、58%が今年は賃金改定をしないということになっております。これはむしろ大企業の要求をしないという比率に比べれば少ないくらいの比率であろうと思います。従って単に厳しいところだけではなくて、全体のベースアップに対する考え方が非常に厳しいというのが今年の特徴であろうと思います。その理由を考えてみますと、やはり大企業においてすら経営状況が悪い、従って要求をすべき状況にないという判断がされたというのが一つです。そしてもう一つはやはり国際競争力、雇用の維持、これが結びついておるわけですけれども、賃金を上げることが国内の生産の海外移転、要するに空洞化ということにつながっていくと、従って値段は上げられないということが大・中・小ともにその判断であります。これは端的に6月の日銀短観で業況判断自身は大企業というのは少し良くなってきておるわけですけれども、販売価格判断D.I.というのがございますけれども、これは大企業、中小企業、製造業、非製造業とも、全部▲、一番悪いのは当然のことながら中小企業の非製造業ということになっております。これはやはり雇用の維持、これを何とかするためには価格を上げられないという切羽詰まったものが現れておるように思います。従って、大企業とか大きいところですら、けして良くはありません。まして、と言えるかどうかというのが今日のテーマだろうと思いますけれども、これをやはり頭に置く必要があると思う次第でございます。

○古郡委員長
 ありがとうございます。それでは、労働者側からお願いします。

○加藤委員
 杉山委員のほうからお話のありましたベア要求に関連しまして、状況なり考え方なり申し上げておきますと、見方はいろいろとあると思いますが、この何年かデフレですので、この経済状態のなかで、労働組合もベースアップ要求を見送ってきたという経過がございます。大手を中心にであります。その背景としては大企業の場合にはそれだけ賃金制度がきちんとしておりまして、定昇なり、あるいは定昇とは言わなくても制度的な昇級がございますから、賃金表を書き換えるというベースアップ要求はしない、見送るという形になっても、定昇あるいは制度的な昇級が実施されるということでございまして、概ね金額で申し上げますと、一人平均6,000円程度、2%はいかないにしても、1.8%か2%くらいの賃金の引上げがここ何年か行われているということは申し上げておきたい。中堅、中小、とりわけそういった定昇制度などが無いところについては、連合ではやっぱり賃金カーブの維持をきちんと図りなさい、大企業はベースアップというのはそもそも賃金表の書き換えであるから、ベースアップ要求はしないけれども、定昇なり制度的な昇級がきちんと実施されるので、それに見合う取組をしないと現行の名目賃金が下がる、これを避けるためには、賃金カーブの維持をしなさい、あるいは賃金体系の維持をしなさいという要求をしてございます。そうした中堅、中小の取組のなかでは、これも確か前回お話をしたと思うのですが、今年は、連合のベースでありますけれども、連合の中小企業組合における平均賃金上昇額は、昨年に比べて明らかに上昇しております。平均賃上げ額で、確か300円近いアップをしていて、2003年とは異なる傾向が見られるということだけ付け加えておきます。

○中野委員
 私のほうからは二点ほど申し上げたいと思います。一点目は昨年、一昨年と目安の引き上げ改定ができなかったという状況の中で、影響率が非常に低下をしているということに関わってでございます。この前の資料によりますと、1回目の資料だったと思いますけれども、1.9%から1.6%に影響率が下がったと思いますが、このことと関わって、様々な場所で最低賃金のセーフティネットとしての有効性についての議論が行われているように思っております。最低賃金の水準自体が社会的有効性を持つかどうかという意味で問われているという点においては、今年の改定については非常に重要であって、かつ社会的にはセーフティネットとしての有効性を発揮する水準を確保しなくてはならないという風に考えております。これが一点目でございます。二点目はそういう立場で賃金改定状況を見ましたときに、私たちはJAMという労働組合でございますけれども、今年の賃金改定状況を見ましたときに、昨年との比較で言いますと、全体計で750円程度、昨年の引上げ額を上回っております。ところが規模別に見ますと、1,000人以上の企業で言いますと529円しか上回っていなかったのに対しまして、100人未満、1から99人のところでは、780円昨年を上回った引上げ額を実現しているという調査結果になってございます。私ども交渉の結果などを踏まえまして、判断したところでございますけれども、確かに昨年・一昨年と、中小企業における賃金改定は非常に困難であったということは残念ながら事実でありますけれども、そのことが続いたがために、逆に従業員を引き留めるためにはこれ以上賃金を改定しないでは留まらない、という状況が生まれて、大手と比べても高い引上げ額を実現をしたというのが今年の状況だろうと思います。そういう意味で言えば、雇用を安定化させるという意味でも、ある一定の賃金の確保が必要でありますし、その意味においても今年の目安改定においては適当な水準の引上げが必要ではないかと考えているところでございます。以上でございます。

○山口委員
 使用者側の委員のみなさんがいろいろな数字をおっしゃられましたし、それは間違いない数字だと思っておりますけれども、加藤委員が言ったように、そういう中でそれぞれの一般労働者・パートタイム労働者の賃金上げができている、だから、少し話がパートタイム労働者比率なり、パートタイム労働者だけではない派遣なり、特別社員的な、非熟練社員の増加というのが、それはこないだ新聞にもそれがデフレの原因だなんてことも書いていましたけれども、やはり賃金の下支え、底上げというのは、我々こういう立場に携わる人間としてやはりきちんと見なければいけないのではないかと思っております。地域のばらつきについて言われていますけれども、私も地域のばらつきなり厳しいところを念頭において議論するのは当然だと思っていますが、ただ目安については、昭和53年、1978年の答申の中では、目安は都道府県の地域格差、産業格差を一切考慮しない、各都道府県の低賃金層の平均状態を前提として全国的な整合性を考慮して描かれた最低賃金の水準を念頭におき示されるもの、地方最低賃金審議会においては目安を参考にするものであって、この目安は地方最低賃金審議会の決定を拘束するものではないとされております。そうは言っても大企業なり、いいところだけ取っていいというわけではまいりません。ただ結果としてはそういうのを示すのだということになっています。その点ではわれわれは大変厳しい中でも平均的にあえて、前回私は言いましたけれども、30人未満のパートタイム労働者の賃金が、2002年、2003年、ここで議論しましたけれども、大変厳しい状況であったけれども、結果として見れば3円上がっているのです。ということは、そういうところの賃金は、それなりに経営者の方は大変苦労しながら上げていらっしゃる。そこで最低賃金が上がっていないから、そこに悪のりして上げない人たち、そこはどういうことかというと、影響率・未満率が下がっています。ということはそこでは賃金格差が拡大している、要するに本当に底上げ、下支え、セーフティネットとして支えなくてはいけない、底上げしなくてはならないというところが置き去りにされています。まさに生活をするという大変厳しい状況に置かれている、そういう仕事をやらざるをえなかった人たちにとっての賃金の格差が拡大していくというのは、私は一般労働者の賃金格差が少々、ある一定の時期なり、いろいろな状況の中で、労使の選択によって結果から言って拡大していくことはあったとしても、生活さえも大変苦しい、あえて言えば生活が本当にできるのかな、という中で実体上の賃金の格差が拡大している中で、最低賃金の持つ意義、これからすれば引き下げになどなるわけでもないし、きっとそれは支えていかなくてはいけないし、最低賃金に携わるものとしてはその責任を果たしていかなくてはいけないのではないかと思います。

○久保委員
 いくつかですが、昨年も同様の議論があったかと思いますが、賃上げと雇用維持のトレードオフの議論というのがあるのですけれども、これは昨年申し上げたように、これが完全にトレードオフになっているかというと、例えば賃上げを我慢したところ、賃下げをしたところでもやっぱり企業倒産というのはいろいろ多くあるわけですね。賃上げをしたからと言って失業者が増えるという単純な図式にはなっていません。やはりそういう見方をする必要があるのではないかと思ったのです。それが一点であります。それともう一つは凍結事業所割合がいくらあるかということは最低賃金を上げることができるかできないかということとは別の話とみるべきでしょう。ある程度の水準があるところが凍結ができるという話だと私は思っておりますから、凍結事業所割合が何割あるから最低賃金を上げられないという話とは別の話ではないかということであります。もう一つは賃金を見るときに、企業全体の労務コストとしての平均賃金が今どうあって、だからどうなのだという話と最低賃金をどう考えたらいいのかということとはやはり切り離して考えるべきではないかという、この中央最低賃金審議会の段階では昨年も一昨年も、最低賃金を引上げるべきという目安を示していないということですけれども、そのときに今年度どうするか、ということを考えた場合に、やっぱりその平均的な労務コストをどう考えるか、ということではなく、最低賃金をどう考えて、どうしたらいいのかという議論をするべきではないかと思います。以上です。

○加藤委員
 今、久保委員のほうからおっしゃたことに関連して一つだけ言っておくと、最低賃金を議論するときには、目安制度のあり方に関する全員協議会でも議論されておりますけれども、やはり水準が果たして適正なのかということも念頭においた決め方、議論をするべきなのだと思います。果たして全国加重平均額の664円というのが適正な水準なのかどうかということを念頭に置く必要があるのではないかということでありまして、この2年間はこうした経済環境の中で、事実上、引上げ目安を示すことができませんでした。その結果として影響率が極端に落ちているという状況は、最低賃金の存在意義が非常に問われる、今年はそういった転換期というか節目の時に当たるのではないかと思いまして、最低賃金に携わる者としまして、最低賃金の意義をきちんと認識して、水準論議も念頭に置いた議論を是非していただければと思います。

○古郡委員長
 それでは、意見交換をお願いしたいと思います。

○川本委員
 前々回のこちらの小委員会で配られました資料において、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の結果として、時間当たり所定内給与ということで、8頁でございますけれども、第1回資料の10人以上、10から99、5から9という形で、お出しになったものということで言えば、前年比マイナスという数字が出ているという資料もあるということは確認しておきたいということが一つでございます。それから、今いろいろお話があった中で、一つは私どもは日本経団連の限られた数ではございますけれども、大手・中小企業それぞれ交渉の結果を集計してございますし、連合も集計されておりますけれども、あくまでもこれは、要するに定昇とベアを分けるのが限界があるものですから、定期昇給相当分、または定昇制度がある場合は定昇分を含めた数字としての賃上げ率であって、ベアに特化したものではないということは申し上げておきたいと思います。それから影響率のお話が出ておりましたけれども、昨年、一昨年と実質的に引上げ目安が出なかったという状況でございますので、影響率イコール未満率ということでありまして、当然低くて当たり前です。未満率が高いということは違反が多いということなのだから、そういう意味で言えば、今の状況で目安が出てきたことでは、低くて当然であると考えられます。従って労働者側委員が申し上げられているのは、要は水準を引上げることによって影響率を上げるべきだというご発言だろうと認識しております。影響率が低いからおかしいという話にはならないと思っている次第であります。とりあえず以上であります。

○加藤委員
 別に川本委員に反論する意味ではないのですが、私の言った趣旨は、影響率の問題については、影響率に低下傾向がずっと続いているわけでありまして、確かかつては4%台だったのが、影響率がだんだん落ちてきています。去年は確かに最低賃金を引上げなかったから影響率が落ちたということはおっしゃるとおりなのですが、最低賃金の水準が、やっぱり実勢賃金、実態の賃金に対して、あまりにもかけ離れている、乖離が大きくなっているということが影響率の低さにつながっているということは確かに申し上げたかったわけでありまして、こうやって議論をしながら目安を決めて、地方最低賃金審議会で最低賃金額を決定するわけですけれども、最低賃金水準そのものが適正な水準ではないのではないか、ということを申し上げたかったのです。未満率のこととは切り離して申し上げています。未満率は違反率ですから。未満率はゼロが望ましいわけなので。

○川本委員
 委員がおっしゃっているのは、去年、一昨年は未満率イコール影響率ということになっている、と。

○加藤委員
 昨年はです。昨年は。

○杉山委員
 先ほど、要するにレベルとして、賃金がどうあるべきかということを考えて最低賃金は決めるべきだというお話がありました。私も基本的にそれを否定するものではありません。しかし、これはどういう状況であるかによって、そういう全体的な引き上げができる状況なのかどうかというふうに考えると、現在の状況ではまだ企業の体力は全体として、そういう改善にまで立ち入る状況には無いということであろうと思います。ただ、もう一つ全体水準というのを考える必要があるというのは、消費者物価が上がって、生活水準が下がっているときにはこれは確かに生活が悪化しておるんだから、名目の賃金額というのは上げざるを得ないという面もあろうと思います。ただ、そういう面で見てみますと、平成12年を基準とする消費者物価指数で、この示された資料の主要指標の推移のところにでておりますが、この4月で97.4%になっております。ということは12年をベースにして考えると、その間実質賃金という意味では、2.6%アップしたということに実はなっておるわけです。私も大昔の狂乱物価時代に交渉した覚えがありますけれど、あのときには極めて高いベースアップをしたにもかかわらず、実勢賃金は下がりました。結局物価に追いつかないわけです。ですから、これは不幸中の幸いで、生活ダウンというものを見る指標としてはやはり消費者物価指数、ひいては実勢賃金ということを頭において考えると、まあなんとか維持もしくはアップをしているという状況であれば、耐えていただける状況ではあるまいかということでございます。

○山口委員
 物価との関係は、労使交渉、賃金交渉の中でも大変労働者側にとってもこのごろの状況というのは悩ましいのですけれども、ただ言えることは、それでもコスト加算分を考えれば、そのようなものではないということは、前回お示しした生活度合いというところでも私は明白なのでないかと思っていますし、まして普通の生活をやられている人たちと、そういう最低の人たちとの影響っていうのはどういうものかということを考えた場合には、やはりそこは先ほど言ったような低賃金層レベルの立場に立って、そこの改善というのを念頭にわれわれは対応しなければいけないのではないかな、と思います。

○中野委員
 一つ質問が使用者側委員のご意見に対してあるのですが、定性的に経済の状況がこうだったというお話はたくさんお伺いしました。最低賃金を例えばいくらかあげると各企業にとってどういう影響が出てくるのでしょうか。定量的に出していただかないと、最低賃金引上げの議論にはなかなか分からないといいますか、難しいところが見えてきません。従って、定量的にどういうふうな影響になるのか。例えば、1円でも2円でもいいんだけれども、例えば、今、全国加重平均の664円を1円あげると、どういう影響が出てきて、経営がおかしくなるのか、お出しをいただければ有り難いなと思います。10人ぐらいのところで、一人のパートタイム労働者を雇っていて、1円上げますと、月に160円ぐらいであります。年間にしますと、2,000円弱ということになりましょうか。それで、この方が社会保険とかそういうことに入っていても、おそらく1.5倍にもならないでしょうから、年間コストで3,000円弱でしょうか。これがどういう経営的な影響になるのか、定量的に一つお示ししていただければありがたいな、と思います。2点目は平成7年から、目安の改定率と消費者物価上昇率、実質GDPの上昇率との相関を調べてみました。ほとんど相関ございません。例えば昨年2003年度は目安はゼロでしたけれども、対前年との物価上昇率との関係でいいますと、1.1%上昇してございます。引き上げ率が0.2%ですから、目安との関係でいきますと、0.9%上昇しているということになりますし、物価との関係では常に目安は、対前年度の物価を上回っているという関係になっているようでございます。GDPとの関係で申し上げましても、対前年との比較で言いますと、マイナスの年もあればプラスの年もあるということでございますので、GDPの上昇率と景気の動向というのにはある一定の相関があろうと思いますけれども、そこであまり相関性が考えられないということで言いますと、やはり経営の状況でありますとか、生活の状況、あるいは類似労働者賃金という中で、類似労働者を重視した相関というものの中で目安が改定されていくということであれば、類似労働者、特に最低賃金の影響を受けやすいパートタイム労働者の賃金動向というものを考えていただきたいな、と思っているところです。

○古郡委員長
 ただいまの中野委員の発言に対しては使用者側委員はどのようにお考えですか。

○池田委員
 正直今、数字で表すのはすぐにはできないと思います。私は三つのことについてお話したいのですが、一つは、格差の問題ですけれども、最近の新聞でパートタイム労働者の戦力化という記事が出ていましたが、これからの小売業において、パートタイム労働者を大きなパワーとして考えていきたいという中において、具体策がいろいろ出ていましたが、一番多いのは、正社員への登用、これが約6割くらいありました。2番目が能力・実力給の導入、それからパートタイム労働者の接客技術強化のための研修制度、実績に応じた特別賞与の設定、パートタイム労働者の表彰制度、パートタイム労働者の職域の拡大、店長・副店長への抜擢というのがありまして、パートタイム労働者の組合員化というのも5%ありますけれども、実質的にはパートタイム労働者の中でも、能力に応じた格差をつけていこうという企業の流れがございますから、今の実勢賃金との差を、大企業がパートタイム労働者を戦力化していくために、最低賃金を基本としてそこに付加価値の能力をどんどん付けていくという時代の流れがありますから、そのために最低賃金を上げる必要があるかどうかというのは一つ観点があると思うのです。最低賃金をあげたことによって、パートタイム労働者の戦力化をあまり考えていないと。むしろそういう能力に応じた支払い体系をどうしていこうかということを、企業はほとんど考えているということを一点申し上げたい。それから、もう一つは、地域の格差の問題、一つの格差としては先ほどは能力的なものということと、もう一つは地域の問題がありまして、先ほど申し上げましたように、日銀短観のなかではやはり大企業のD.I.がプラス22、それに比べて中小企業はマイナス18で厳しいというのがあるとともに、業種別に見ますと、製造業は賃金調査のなかでもプラスだけれども、サービス業はマイナスということです。業種別においても、非常に格差が出ているということでありますので、私は目安自体を今ほとんど日本の中小企業、零細企業が6、7割方は上げないという状況の中で、ベースラインを上げることが必要なのかと思います。これはあくまで私どもがしているのは、中央の目安でございますので、そこに今後は都道府県における状況、それと業種における状態によって、都道府県が全部決めていくわけでございますから、そこで実勢賃金が上げられるところは上げるでしょうし、上げられないところは上げられないという状況がありますので、中央としての目安を今上げる必要があるのかな、ということを申し上げたい。それからもう一つは格差の問題と、先ほどお話がありましたけれども、国際競争の問題がありまして、これもこないだ新聞に出ておりましたけれども、ドイツのシーメンスが、労働時間を今度40時間に逆に延ばす、と。これはヨーロッパにおける大企業でさえも、ヨーロッパ、ユーロの中で、やはり今のままでは競争できないということで、逆に労働時間を延長してやはり賃金を下げていこうという傾向が出てきています。それに対して、日本はこれからどうしていくのか。今若者が随分中国に勤めているという記事も出ておりましたけれども、日本の7割も安い賃金で、日本の若者たちがそこに求めていっている、これは賃金以上に将来性を見込んだ何かそこに魅力があるのかどうか知りませんけれど、これからまだまだ中国は日本の7割ぐらいの賃金でやっているわけですから、日本を国際的に見た場合に本当に今の日本の賃金が国際競争ができうる賃金かどうかというところを、これは大企業中心に今はまだまだ考えている時期だと思います。それからもう一つはやはりフリーターの問題が今ありますけれども、若者たちが就職しないというのは今の賃金である程度食べていけるのだと。親のすねをかじっているのかどうか分かりませんけれど。今の賃金で一般社員にならなくても、とりあえずそれなりのいい職を見つけるまで、フリーターでいいのではないかと、これは労働構成の中で問題になっているわけですけれども、そういう社会情勢の中で、果たして今の賃金が安いのかどうかということも一つ考えるべきだと思います。基本的には今回の選挙で現れているように、今の日本の経済政策がいいのかどうか、これは私は良くないと思うのですけれども、そんなに人々は豊かになっていない。だけど、一面では先ほどお話がありましたように、ここ何年かのデフレの中で実勢賃金は上がっているというところで、多少余裕が出ているとありましたけれども、繰り返しになりますが、私どもがやろうとしているのはあくまで目安と思っておりますので、都道府県は都道府県の格差、それから実態としてこれからお決めになるのでしょうから、中央は中央で、あくまで目安として今の社会情勢、経済情勢、国際情勢の中で、まだまだもう少し上げるべきなのか、多くの経営者なのだと思います。そこがやはり1円なのか、2円なのかという論議より前に、金額より以前の問題が私どもとしてはやはり、凍結なり、むしろ引下げるという意見が大勢ではないかということだけ申し上げておきます。

○中野委員
 少し誤解があってはいけませんので。先ほど1円、2円と申し上げたのは、1円、2円上げろと申し上げたのではなくて、1円がどれだけ影響があるのかということを教えていただきたいということでございますので、水準の議論であって、引上げの水準の議論をしたつもりではないので、そこのところをちょっと誤解のないようにお願いします。

○山口委員
 労働者側の方から言っておかなくてはいけませんので言わせていただきますが、パートタイム労働者の戦力化、まさにそうです。私は講演に行ってこう言うのですけれど、能力主義、成果主義というのであれば、高卒採用給とパートタイム労働者の賃金が違っていいのか、そのようなことはないでしょう。連合調査では890円です。890円をもとにそこから能力なり成果なりいろいろ加算されます。ただ、一生890円でいいわけではないです。だからそういうことには昇級インセンティブでいろいろな昇給制度も考えると。890円のラインからの出発。最低賃金の660円とは全く違う世界だということが一つ。それと、地域格差と業種格差の話をされましたけれども、これもサービス業、大変厳しい状況になっていますが、5月の毎月勤労者統計調査のパートタイム労働者比率が一昨年に対して5%程度。一年前と比べて製造業はパートタイム労働者比率が下がっております。でも小売業・サービス業はものすごく上がっています。これがあそこの賃金に影響している度合いの方が大変大きいのではないかと思いますから、その業種が逆にそういうパートタイム労働者比率を高めているという厳しさのなかで、そうされているということも一面そういう見方もあるのでしょうけれども、パートタイム労働者の戦力化というのが進みやすい、そういう中で結果としてああいうことになっているのではないかと思っています。そして国際競争力の話とフリーターの話をされましたけれども、これも一緒で、国際競争の関係でいけば我々の中核部隊である賃金というのは、もう賃上げどころか賃金構造そのものをどのようにしていくかという真摯な労使の交渉がなされてますし、その中でこれからそういう秩序はできてくるのでしょうけれど、これも先ほど申し上げましたけれど、我々は一般労働者なり、そういうところの賃金は当該労使なりそういうところにお任せすればいいことであって、最低賃金の関係でいけば地域が議論できる余地というのはあるわけです。だから平均状況で目安を示す、制度そのものがそういう仕組みになっているということ。だから、逆に実勢賃金が高いのだから、低いところは任せて、何もせずに地方にお任せして下さいという制度ではないし、我々が水準を上げていくためには目安で示さない、なかなか目安の今までの経過の中では、中央では目安が示されないときに、地方独自の審議会の中で、公益の先生方がどんどん上げていけるような、そういう仕組みにはなっていない。目安というのは、立場は違いますけれども、そういう水準論議の中で示していくのだ、ということになっています。

○久保委員
 平均賃金ではなくて、最低賃金は最低賃金として議論すべきだと申し上げました。現実にフリーターで生活をしている人たち、それはそれでその通りだろうと思いますけれど、いわゆる近年でいえば、正社員として働きたくても正社員として雇用されなくて、結局はフリーターとして、もしくはパートタイム労働者としてでしか働けない人たちがいて、かつそれが最低賃金水準でしか賃金を得られない人たちが現実にいるということをちゃんと考えるべきでないかということでして、例えば加重平均の最低賃金の664円かける法定労働時間でめいっぱい働いたとして170時間としたときに、10万円強ぐらいの水準で所得税を払って、社会保険料を払って、手取りはというと、多分8万円か9万円までいかないのではないでしょうか。これで最低賃金というのは、働いて最低限の生活が成り立つ水準と考えると、例えばその人たちがアパートを借りて、生活をせざるをえないという状況にあるとしたときに、この水準で本当にいいのでしょうか、というのを考えなくてはいけません。ですからそれから上で十分に生活ができている人たちはそれはそれでいいのではないかと思いますけれども、ただ現実に最低賃金で守らなければいけない人たちというのは、どういう生活をしている人たち、どういう仕事をしている人たちなのかというところを念頭において考えなくてはいけないのではないか、そういうことを申し上げたところです。平均賃金がどうであるかということを考えるより、最低賃金が誰に適用されていて、その人たちはどんな人たちなのか、ということを念頭におくべきと思います。以上です。

○池田委員
 890円というのは、どこから出てくるのか分からないのですけれども、実勢の賃金で都心で言えばコンビニでも800円が最低ラインですから、890円というのはものすごく高いです。パートタイム労働者の賃金としては。それは大企業ベースなのではないかと。実際の中小企業なり、ベースのところは、今都内の学生アルバイトでも大体800円切ったら来ないかなというような気がしますけど、ただ沖縄とかDランクでいきますと、600円台がたくさんあるわけです。だから890円というのは基本からべらぼうに高いと。それは、実勢賃金と非常にかけ離れているのではないかなというところが一つ。同様に地域格差が非常にあります。それから業種によって格差があるというところに今は目安、こういう状況のまだまだ社会情勢も厳しい、企業も厳しい、やはりひとつのものを作るのにも、人件費の比率は20%から30%押さえようと。それからやはり全体の売り上げ、決算の中でも人件費比率は20%、30%以下にしなくては企業が成り立っていかないという状況の、バランスシート上はやはり一つの原則がありますから、企業はそうすると経営者も高く賃金を払いたいのだけれども払えないという実態が、これ以上上げたら人はこれ以上増やせない、それから原価が上がれば大企業から要請されている値段でものが作れないという、そういう競争の中で、中小企業は一生懸命それを押さえながら、大企業の注文に応じて、中国に注文をとられないように国内で作りましょうという中で、実態は今、中小企業というのは一生懸命努力しているのではないかと思うのです。だから全体として100が120、130というふうに物が上がってくれればその中の人件比率も当然上げられますから。バブルのようにどんどん上げていけた、と。だけど今は物価はどんどん下がっています。けれど下の中小企業のほうに来る要求は、毎年毎年やはり国際競争力なり、どんどん落とされている実態が先ほどのこの、ほとんど赤の中で、景気はいいと言われてもやはり下はまだまだ業種別では苦しい。実態がまずあるなかで、それで地域格差も200円はあるなかで、どうしてこう中央のところで上げましょうという、1円か2円か分かりませんが上げましょうという声を出す必要があるのか。上げられるところは上げるでしょうが。産業別最低賃金もあるのだから。上げられるところは上げていく。だけれども、一つ今の社会情勢、労働情勢、賃金情勢の中で、今はまだまだ上げる時期ではないのではないかな、というのが私どもの主張でございます。

○山口委員
 890円というのは池田委員が、戦力化なり、実力成果主義とかいう話をしましたけれど、中小企業でやっているところなんてはっきり言ってないです。全国平均の連合初任給が16万6,000円ですから時給換算して890円です。結局は能力主義という限り、そこに正社員がいたときに、正社員と均衡を図らないと、無垢の労働力は、高卒で入ってくる人より、パートタイム労働者の方が基礎能力は高いと思うのです。ところが今はパートタイム労働者なり実勢賃金が大変低いです。その底辺が地域別最低賃金です。だからそこに引っ張られて、変な構造になっています。そこはきちんとしていかなくてはいけません。きちんとしていくためには均衡なり均等処遇をやっていかなくてはなりません。これは国のこれからの大きな目標だと思いますけれども。ただ、地域の実態なり、市場価格の実態があるから、我々で言えば、全国平均で840円、食べるためにはこれだけ必要だと試算を出していますけれど、実際には明日からしてくれというわけにはいきません。だからこういう中でこうやって当事者同士が集まってやっていくのだ、と。最後の方の厳しい実態、確かにそうです。我々も地方にいろいろな組合を抱えていますから。中央でも状況なんかの電話相談をみても、まだまだ回復なりいろいろな問題が発生していますから、そこは分かっていますが、では僕らは、2002年、2003年そういう厳しい状況という我々共通認識の中でああいう結果をだしました。でも、30人未満のわれわれ連合の結果は、組織労働者の賃上げを言っているわけではないのです。30人未満でもきちんとそれぞれ個別でみたら賃金を上げているではないか、それは苦労をされているだろうけれど、上げているのだと、上げるというのは上げられるだけのまだ全体的には、水準が低いから上げるのだというのもあるかもしれません。だからわれわれはそこをきちんとしていくためには、格差が広がらないように最低きちんと歯止めとして食べる賃金をまだ上げていく、そこを毎年の上げ幅については、いろいろあるでしょうから、こういうところで上げていきましょう。そこで示すべきなのであって、示さないとますます経営者は悪のりして、目安も上がらない、地方最低賃金審議会でも上がらない。だからいいのだ、そういって利益を出していく。やはりそういう状況が、社会的にこういう制度というのはそういうところを上げることによって、大変厳しい企業がないわけではないです。でも、最低賃金を払えないような経営者はある意味では経営者としては失格です。そこの兼ね合いというのは、これは立場が違うから、額の関係とか開き方とかは違ってくるでしょうけれども、だから示さなくてはいいのだということでは決してないです。

○古郡委員長
 いろいろとご意見いただきましたが、非常に考え方に隔たりがあるようですので、もう一度全体会議で話し合うよりも、公労、公使と、これからは公益委員と会議を開催いたしますので、よろしくお願いします。それではお昼になりましたので、休憩をいたしまして、午後1時10分から公労会議を開催いたします。ではこれで終わります。


(第2回全体会議)

○古郡委員長
 それでは第2回全体会議を開催します。先程お伝えしたとおり、公益委員見解を提示いたします。事務局は公益委員見解を配布してください。

(公益委員見解配布)

○古郡委員長
 では、事務局より読み上げてください。

○長課長補佐
 読み上げさせていただきたいと思います。
 平成16年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。 1(1)平成16年度地域別最低賃金額については、現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当との結論を下すに至った。
 (2)目安小委員会審議の中で、賃金改定状況調査結果の「第4表 賃金の上昇率」が、パートタイム労働者比率の増加のため押し下げられていることをどのように勘案するかを巡り、労使の意見が分かれた。パートタイム労働者比率の増加等の就業構造の変化を踏まえるならば、平成7年の目安制度のあり方に関する全員協議会で合意された現在の計算方法は限界にきており、見直しが急務となっている。この問題は、昨年10月に設置された目安制度のあり方に関する全員協議会の場で検討されているところであり、同協議会の場で年内に結論を得ることが必要である。
2(1)目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成12年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。
(2)目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
(3)地方最低賃金審議会での審議に当たっては、わが国の景気が回復基調にあることを踏まえ、地域の経済実態を考慮しつつ、自主性を十分に発揮されることを希望する。 以上でございます。

○古郡委員長
 公益委員と致しましては、これを審議会総会に示したいと思います。よろしいですか。

(了承)

○古郡委員長
 続いて、本小委員会の報告を取りまとめたいと思いますので、事務局から案の朗読をしてください。

(小委員会報告案の配布)

○長課長補佐
 それでは、小委員会報告(案)を朗読させていただきたいと思います。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(案)。
1 はじめに。平成16年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
2 労働者側見解。労働者側委員は、現下の経済情勢について景気や企業業績の回復が明確になってきていることを今年の目安審議の共通の土俵とすべきであり、景気回復の流れを勤労者の所得改善・生活改善に結びつける政策対応が肝要であると主張した。
 2004年5月の完全失業率は4.6%とやや低下してはいるものの、雇用環境は依然として厳しい状況が続いており、そのなかで、非典型労働者に対する公正な処遇が担保されないまま雇用形態の多様化が進んでいるため、賃金・所得格差の拡大に結びつき、経済的に自立することができない人が多くなっており、従来にも増してセーフティネットとしての最低賃金の役割が重要になってきていることを指摘した。
 現在の最低賃金時間額の全国加重平均は664円であり、若年単身労働者の必要最低生活費を大きく下回っており、パート・アルバイト賃金や初任賃金と比べても遥かに低い実態にあるが、こうした実勢賃金がいずれも上昇傾向にある今日の状況を踏まえれば、制度の実効性を確保するうえで、最低賃金の確実な引上げが必要、また、春闘における賃金引上げ額は明らかに上昇傾向にあり、これを最低賃金に反映させる必要があると主張した。
 賃金改定状況調査結果の第4表については、労働者構成の変化によって平均賃金が低下している点を指摘した上で、そういう状況も勘案すべきと主張した。また、最低賃金を引き上げることが、直接、全体の賃金コストの上昇に結びつくわけではなく、水準改善のためにも引上げ額の目安を示すべきであると主張した。
 加えて、わが国における最低賃金の影響率は諸外国に比べかなり低い実態にあり、最低賃金に関する基礎調査で推移をみると1990年の4.5%から2003年の1.6%と大きな低下を示しているが、こうした影響率低下の要因は、最低賃金が引き上げられてこなかったことによるものであり、最低賃金を存在感のあるレベルに改善すべきと主張した。
 以上の点を踏まえれば、過去2年間と明らかに異なる対応が求められており、存在感の持てる最低賃金とするため、生計費・各種賃金指標の現行水準や変化の動向を踏まえつつ、明確な水準の改善に寄与する目安提示が必要であると最後まで強く主張した。
3 使用者側見解。使用者側委員は、現下の経済情勢について先行きに明るさが見え始めていると言われているものの、地域、業種等によって大きく差がみられ、大部分の地域や中小・零細企業はより厳しい状況が続いているとし、また、為替や金利の動向、原油など国際商品市況の高騰など先行きに不透明な要素を多く抱えており、一部の良いところだけでなく、悪化しているところにも目を向けるべきであると主張した。
 昨年度の各経済指標をみると、回復基調にはあるが、安定感のある回復・成長とはいえず、依然として予断をゆるさない状況にあるとした。物価については、今年に入って国内企業物価が上昇傾向を示している反面、消費者物価は引き続き下落傾向を示しているが、これは石油、非鉄、鉄鋼などの原材料価格の上昇を、企業が生産性を向上させるなどして内部で処理し、最終財への価格転嫁を回避する努力をしていることの現れであると指摘した。
 業況判断DIについては、中小企業では、製造業では回復傾向にあるものの、非製造業では依然として厳しい状況が続いていることを指摘した。中小企業の賃金交渉については、日本経団連の調査において、7月7日現在でアップ率は1.44%(433社)となっており、昨年の結果とほぼ横ばいで推移しており、初任給についてみると、大手企業では凍結した企業がほとんどであり、平成14年以降、伸び率が0.0%となっていることを指摘した。
 加えて、賃金改定状況調査について、第1表の凍結・引下げ事業所が約6割に達していること、および第4表がマイナスの結果であったことにふれ、厳しい情勢を反映したものであり真摯に受け止めるべきであると主張した。
 以上のことを総合的に判断し、経済状況の厳しい地域に配慮し、さらに、中小・零細企業の存続と雇用維持を第一に考えると、据え置きに留まらず、引下げの目安を出すことも念頭において真摯に議論をする必要があると最後まで強く主張した。
4 意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。
 下記につきましては、さきほどの公益委員見解と同じでございますので、読み上げを割愛させてていただきいと思います。

○古郡委員長
 この案を報告としてよろしいでしょうか。

(了承)

○古郡委員長
 どうもありがとうございました。それでは、26日の総会に私から報告することとしたいと思います。また、目安審議に用いた資料については事務局より地方最低賃金審議会において活用できるよう送付していただいているとは思いますが、どのようになっていますか。

○長課長補佐
 目安小委員会で使用した資料は、全て地方局に送付しております。

○古郡委員長
 分かりました。ほかに何かありますか。

○加藤委員
 少し申し上げたいと思います。大変難しい、しかも長時間にわたる審議となりました。取りまとめにご尽力いただきました小委員長をはじめ公益委員のみなさま、そして使用者側のみなさまにも私どもの方から大変感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○杉山委員
 私どももほぼ徹夜に近い状況まで真摯にご努力いただいた結果として、このような見解になりました経過について、公労使それぞれが努力した結果であろうと考えております。本当にいろいろとありがとうございました。

○古郡委員長
 外もだいぶ明るくなって参りました。どうもお疲れさまでございました。以上をもちまして本日のといいますか、翌日になりましたが小委員会を終了します。議事録の署名は、中野委員と池田委員にお願いします。どうもありがとうございました。



(照会先)
厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


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