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【布川委員提出資料】
社会保障審議会−福祉部会
生活保護制度の在り方に関する専門委員会
第14回(平成16年7月14日) 資料4

2004年7月14日 布川日佐史

 生活保護制度の改善のためには、利用者からの意見や批判を受けとめられるようにする事が重要です。先に、利用者の権利と義務、不利益変更などに関わる改善の提案をいたしましたが、今回は、不服申し立てや訴訟など、権利救済に関する改善の提案をいたします。生活保護法にとどまらない内容となっていますが、現状の改善に必要なことでもありますので、問題提起させていただきます。

生活保護に関する権利救済制度への提案

1 不服申立てについて
(1)  執行停止、仮救済制度を積極的に運用する
 生存権保障という極めて重要な役割からして、保護の停・廃止などの剥権処分については執行停止を、また、保護申請の拒否などの拒否処分については、仮救済制度の積極的運用を行なう。

(2)  第三者機関が審査請求、再審査請求を担当すべき
 年金と同様、生活保護の審査請求及び再審査請求について、第三者機関に審査請求、再審査請求を担当させることとし、その迅速性と公正化を図る。

(3)  裁決期間の遵守
 法定の裁決をなすべき期間(50日以内)を遵守する。

(4)  裁決の拘束力について
 審査請求や再審査請求で福祉事務所等の行為が取り消されたり、裁決前に福祉事務所等が処分を取消したりしたことにより、実質的に市民の請求が正しかったことが明らかとなった場合、まず、その裁決内容の実現を徹底したうえ、これらの裁決例を公表し、通達を出すなど、同種ケースについて再発を防ぐための行政運用の徹底を図る。

2 裁判について
(1)  執行停止、仮の義務付け、仮の差し止めの積極的運用が必要
 生存権保障という極めて重要な役割からして、裁判についても、保護の停・廃止などの剥権処分については執行停止、保護申請の拒否などの拒否処分については、仮の義務づけの積極的運用を行なう。

(2)  訴訟費用を生活保護制度が負担する
 生活保護裁判についての費用に関して、生活保護制度における給付の対象とする。

(3)  訴訟承継
 生活保護裁判について、訴訟継続中に被保護者が死亡した場合の訴訟承継を認める。

(4)  証拠開示の徹底
 裁判における市民と行政の手持ち資料の不平等性からして、行政庁の持つ証拠の開示を徹底する必要がある。

(5)  判決の拘束力について
 判決で福祉事務所等行政機関が敗訴した場合、判決内容について、行政庁内部での広報を徹底するとともに、同種ケースについて再発を防ぐため必要な通達を出すなど、判決を尊重した行政運用の徹底を図る。

3 その他権利実現のための制度
(1)  オンブズパーソン制度を制度化する
 不服申立て制度の救済の遅れという実態からして、審査請求、再審査請求の外に、オンブズパーソン制度の制度化を図る。

(2)  制度の周知徹底義務を明示する
 生活保護制度の周知徹底を図るため、福祉事務所など行政に制度の周知徹底義務があることを明確にする。

(3)  後見扶助の制度化
 契約による福祉の利用と言う掛け声にもかかわらず、被保護者の成年後見制度の利用は、経済的負担の困難性、市町村長の申立ての消極的運用からして、実質的に困難なままである。このため、後見扶助を制度化すべきである。

(4)  外国人の不服申立ての権利の明確化
 1954年5月8日付け社会局長通知(社発382号)では、「外国人に対する保護は「保護の準用」であり、権利ではないので不服申し立てをすることは出来ないとしているが、仮に準用であっても外国人への保護の決定に処分性があることは明らかであり、不服申立ての権利があることを明らかにすべきである。

参考文献:
 ・ 日本社会保障法学会編『社会保障法』第16号(2001年、法律文化社)所収、井上、 竹下、土屋、尾藤論文。
 ・ 日本社会保障法学会編『講座社会保障法第6巻 社会保障法の関連領域』(2001年、法律文化社)所収、尾藤、竹下論文。
 ・ 尾藤廣喜他編著『これが生活保護だ』(2004年、高菅出版)所収、尾藤論文。


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