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II その他

 保護の要件(稼働能力の活用)の在り方について

 稼動能力の活用については、(1)稼動能力を有するか、(2)その能力を活用する意思があるか、(3)実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かの要素により判断することとされている。

 例えば求職活動を行っていても現実に働く職場がない場合には保護を受けることができ、よって、申請時において、単に稼動年齢層であるのに就労していないことをもって申請を却下することは適当ではない。

 一方、稼働能力の活用に関する判例(平成9年8月8日名古屋高裁判決。平成13年2月13日最高裁判決も同判決の内容を支持。)では、紹介された就業先への就業のための努力や自己の稼働能力に応じた就業場所を開拓しようとする努力がなければ保護の要件を充足しないとされており、稼働能力の活用については、本人の就労に向けた努力により客観的に判断することが必要。

 したがって、保護開始時において調査をしなくてもよいとするのではなく、保護開始決定までの時間的制約の中で、要保護者の病状、資格、職歴、就労阻害要因等の把握に基づいて、より客観的に判断できるようにするとともに、保護開始後には十分なアセスメントを行いフォローアップすることが重要。

 なお、保護開始時において、申請者から稼働能力を活用する意思を確認するだけでよいとすることについては、意思の確認のみでは、稼働能力の「活用」をしているとはいえず、また、すべての申請者が「稼働能力を活用する意思がある」と申告することが考えられ、事実上、制度が形骸化するおそれがある。

  (参考)

   現行の生活保護法は、生計の維持に努力しない者等を絶対的な欠格者とせず、急迫した事由があれば保護の適用を可能とした点で弾力的になっているが、保護の受給中と比較して、保護の開始時の要件を緩和するという考え方には立っていない。

◎生活保護法の施行に関する件(昭和25年5月20日厚生省発社第46号)
 なお、旧法の下においては、生計の維持に努めない者又は素行不良な者は、保護の絶対的欠格者として取り扱われ保護を実施する余地がなかつたのであるが、これは国民の最低生活保障法としての理念からみて好ましくないので、新法においてはこれを改め、急迫した事由がある場合には、一応先ず保護を加え、然る後、適切な指導、指示その他の措置をすべきこととなつている


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