研究事業 | 研究領域 | ||
5)長寿科学総合 | 長寿科学総合、痴呆・骨折臨床 | ||
6)子ども家庭総合 | 6−1)子ども家庭総合 | ||
6−2)小児疾患臨床 | |||
7)第3次対がん総合戦略 | 第3次対がん総合戦略、がん臨床 | ||
8)循環器疾患等総合 | |||
9)障害関連 | 9−1)障害保健福祉総合 | ||
9−2)感覚器障害 | |||
| 10−1)新興再興感染症 | ||
10−2)エイズ対策 | |||
10−3)肝炎等克服緊急対策 | |||
11)免疫アレルギー疾患予防・治療 | |||
12)こころの健康科学 | |||
13)難治性疾患克服 |
事務事業名 | 長寿科学総合研究事業 |
担当部局・課主管課 | 老健局総務課 |
関係課 | 老健局内各課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
高齢社会を迎えた今、社会全体で高齢者を支える、国民が安心して生涯を過ごすことができる社会へと転換するため、高齢者に特徴的な疾病・障害の予防、診断及び治療並びにリハビリテーションについて研究を行う。また、高齢者を支える基盤としての介護保険制度にも着目し、介護ケアの確立、介護支援機器の開発、権利擁護等の社会科学的検討及び保健・医療・福祉施策の連携方策に関する研究を行うことにより、総合的な長寿科学研究に積極的に推進する。 特に、平成18年度を目途とした介護制度改革や「健康フロンティア戦略」の趣旨を踏まえ、効果的な介護予防プログラムの開発、痴呆・骨関節疾患の予防・治療・リハビリテーション技術の開発、介護支援器機の開発等に重点的に取り組むこととする。 主な研究分野は下記の通り。
|
H13(※) | H14(※) | H15(※) | H16 | H17 |
2,310 | 2,311 | 1,972 | 1,831 | (未確定) |
平成16年度までに長寿科学総合研究事業として、高齢者の保健・医療・福祉に関する総合的な研究を実施し、特に要介護状態の大きな原因である痴呆及び骨折の臨床研究を重点的に進めてきた。 これらのち、高齢者に特有の疾患・病態において痴呆や骨折、摂食・排泄障害に関する診断法や治療法に関する研究が進んできたが、これらの疾患を有する高齢者に対する総合的な医療と介護を提供する体制が十分でない。また、老化のメカニズムや老化予防については、遺伝的要因の解明は進んでいるが、環境要因の解明が途上である。また、これらの基礎研究の成果を臨床応用につなげるトランスレーショナル・リサーチを推進していく必要がある。 また、介護や保健福祉分野では、高齢者に対する看護技術や在宅ケアの質の評価、高齢者の健康増進施策に関する研究が進んできた。しかし、介護予防サービスの開発と評価、生活機能低下を重視した保健事業のあり方、痴呆性高齢者に対するケアモデルの必要性、介護サービスの評価、高齢者虐待を含めた高齢者の権利擁護、終末期ケアのあり方などといった新たな課題に対応する研究を開拓・刷新していく必要がある。 これらは、官民の研究機関で鋭意進められてきているが、新しい高齢者介護や高齢者医療制度を検討する上で必要不可欠な政策的研究分野であり、国としてさらに推進していく必要がある。
|
わが国は世界の最長寿を享受しており、世界保健機関(WHO)が発表している「健康寿命」においても世界最高を維持している。このように世界に類例を見ない超高齢化社会を迎えつつあるわが国にとって、高齢者がその尊厳を維持しつつ、健康で豊かな生活を送ることを可能とするため、老化や老年病に関する基礎、臨床両面からの医学的知見を集積し、疾病の予防及び治療方法を開発するとともに、介護技術、介護予防サービス、リハビリテーションの確立、地域における保健・医療・福祉の連携方策等、老化・加齢に関する研究として、基礎的研究から社会的研究まで広く包含する横断的研究として我が国でも数少ない研究事業である。このため、本研究事業は厚生行政を所管する厚生労働省が主体的に実施する必要がある。また、介護制度改革や老人保健事業の見直しに伴う介護・保健サービスの充実や高齢者医療との連携を促進が喫緊の課題であり、また重点施策として要介護状態の主要な原因である痴呆や骨関節疾患への対策が急務であり、これらについての臨床・行政的研究を緊急に行う必要がある。 本研究事業では多方面にわたる研究成果が得られ、我が国の高齢者保健福祉の向上に加え科学技術の振興にも大きく寄与してきた。なかでも、平成13年度からの「メディカル・フロンティア戦略」に基づき、痴呆及び骨折に係る臨床研究が重点的に進められてきた。今後は、これらの成果を踏まえ、「健康フロンティア戦略」や介護制度改革、新たな高齢者保健福祉計画や老人保健事業の推進に資する研究を継続し、介護予防や痴呆・骨関節疾患に関する研究を重点的にすすめることにより、尊厳ある健康長寿社会の開拓に資することが期待される。 |
本研究事業の実施にあたっては、基礎・臨床・社会医学及び社会福祉の専門家による事前評価を行った上で採択を決定することとされており、また、中間評価及び事後評価を行うことにより、個別研究課題の継続の必要性が評価されることとなっており、客観的かつ公正な実施が期待できる。 |
研究計画期間を原則2年以内と規定しており、遅滞なく研究成果を見定め、漫然とした研究継続の抑制に努めている。これは、研究者自身の自律的チェックにも繋がるものであり、本研究事業自体の計画的な実施が期待できる。 |
医学的分野では老化や老年病発症の機序の解明、骨折予防やリハビリテーション技術の開発が進み、介護分野においては、介護予防事業やケアマネジメントの評価、要介護認定や介護サービスの検証、高齢者の権利擁護等に関する科学的根拠の蓄積に大きな成果が見られた。また、ゴールドプラン21、対がん10か年戦略、メディカル・フロンティア戦略など、様々な行政計画と連動しつつ研究成果がこれらの施策に反映され、本業の目的が十分達成されつつあるが、高齢者介護やリハビリなど発展途上の分野もあり、今後の研究の促進が期待される。 また、推進事業や臨床研究事業により、若手研究者の育成、研究者間の連携及び国際交流が図られており、引き続き我が国の長寿科学を担う人材の確保及び育成に寄与して行くことが期待される。 |
「高齢者介護研究会報告書」(平成15年6月:老健局長の私的研究会)において、介護予防・リハビリテーション、痴呆ケアモデルの確立、地域包括ケアシステム等介護サービスの見直しに係る研究及び科学的知見の集積を行う必要があると提言がなされており、また、「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」(平成16年1月・高齢者リハビリテーション研究会中間報告)において、高齢者筋力向上トレーニング等の介護予防事業の検証、リハビリテーションに係る科学的根拠の整理、高齢者の生活機能の実態について調査研究等を行う必要があるとの提言がなされている。 |
本研究事業における基礎・臨床的な研究成果により老年医学及び高齢者医療の進展がみられ、また、介護や看護技術、保健福祉政策及び社会科学的側面においても研究成果がその前進に大きく寄与してきた。今後とも高齢者の保健・医療・福祉の全般にわたり本研究事業が重要な役割を果たすことが期待される。また、介護制度改革を含む社会保障制度改革により、今後の高齢者保健福祉に係る制度の見直しが行われることになる。 また、「健康フロンティア戦略」において、老化機構の解明、介護予防や痴呆・骨関節疾患、介護支援器機の開発に係る研究開発の推進が提唱されている。これらを円滑に実施するため、行政施策や医療・介護現場のサービス提供への応用が可能な研究に重点投資しつつ、高齢者の保健・医療・福祉に関する研究開発を今後とも推進していく必要がある。 |
事務事業名 | 子ども家庭総合研究経費 |
担当部局・課主管課 | 雇用均等・児童家庭局 母子保健課 |
関係課 | 大臣官房厚生科学課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
心身ともに健やかな子どもの育ちを支援する社会基盤を整備し、乳幼児および生涯を通じて女性の健康を守るための効果的かつ効率的な母子保健サービスの提供に資する総合的研究を推進する。世界で最も少子化が進んだわが国の最近の社会状況を見据え、児童を取り巻く社会環境の変化やこれらが児童に及ぼす影響について検証し、適切な対応を行うための政策提言型研究に取り組むことにより、次世代育成支援を推進し、子ども家庭福祉の向上に資することを目的として本事業を実施する。 本事業においては、このような観点から、母子保健・児童福祉施策を講じる上で必要な基盤研究について公募を行い、専門家及び行政官による評価に基づき採択された研究課題に対して補助金を交付している。また、研究により得られた成果については、行政施策に適切に反映されている。平成15年度終了課題の成果の定量的評価においては、本事業の研究あたりの施策への反映件数は、全厚生労働科学研究事業中トップレベルであった。 |
H13 | H14 | H15 | H16 | H17 |
648 | 798 | 698 | 738 | (未確定) |
|
(5)事業の概略図
本研究事業は、子どもの心身の健康確保、母子保健医療体制の充実、多様な子育てサービスの推進、児童虐待への対応など、多様な社会的課題や新たなニーズに対応する実証的な基盤研究を行い、母子保健医療・児童家庭福祉行政の推進に大きく貢献しており、研究あたりの実際の行政施策への反映件数も非常に高い。少子化対策や次世代育成支援の効果的推進の基盤となる知見を集積し、対応方策を提言することが求められ、今後一層重要な研究事業となるものと認識される。 |
本研究事業においては、研究班を構成する研究者から幅広い全国的及び国際的情報・データが収集されており、これら知識を集約した先導的な研究を効率的に進めることが可能である。研究評価方法については、外部の専門評価委員で構成される評価委員会が多角的な視点から評価を行い、その結果に基づいて研究費の適正な配分が行われており、効率的に事業を進めている。研究事業全般を通じた成果主義の徹底を目指していることも評価に値する。 |
子どもを取り巻く社会、家庭環境の変化により、取り組むべき課題も変化し、多様化してきているが、本研究事業においては、「健やか親子21」、「新エンゼルプラン」、「次世代育成支援対策推進法」などに基づく次世代育成支援の推進をはじめとして、その時代の行政的課題の解決及び新規施策の企画・推進に資する計画的な課題設定が行なわれている。また、行政ニーズに即応した検証研究及び政策提言型研究により汎用性のある成果が得られており、今後の研究成果も期待される。 |
本研究事業においては、子どもの健康確保と母子医療体制等の充実、多様な子育て支援サービスの推進、児童虐待への対応などの要保護児童対策などの充実等、母子医療保健及び児童家庭福祉に係る行政施策の推進に資する基盤的研究を実施しており、新たな社会的課題やニーズに対して、具体的かつ施策への実際的応用が可能な研究成果が得られているところであり、総じて本研究事業の目標達成度は高いものと評価される。 |
該当なし |
先進国の中でも最も少子化の進んだ「超少子化」国であるわが国においては、急速な少子化の進行が社会や経済、国の持続可能性を基盤から揺るがすことも憂慮されている。このような危機的な状況を克服し、健康で活力ある社会を実現させるためには、「子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会」の社会基盤の整備を効果的に推進することが急務であり、子どもの心身の健やかな育ちを継続的に支えるための母子保健・児童家庭施策の基礎となる知見の集積、介入方法の開発やその評価体系の確立を含む、実証的かつ成果の明確な総合研究を推進する子ども家庭総合研究事業の必要性は極めて高い。本事業においては、これまでに、研究成果を継続的に行政施策に適切に反映してきており、平成15年度終了課題の成果の定量的評価においては、本事業の研究あたりの施策への反映件数は、全厚生労働科学研究事業中トップレベルであったことは注目される。 子どもを取り巻く社会、家庭環境の変化により、取り組むべき課題も急激に変化し、多様化してきているため、本研究事業においては、「健やか親子21」、「新エンゼルプラン」、「次世代育成支援対策推進法」などに基づく次世代育成支援の推進をはじめとして、その時代の行政的課題の解決及び新規施策の企画・推進に資する計画的な課題設定が行なわれている。今後、このような時代のニーズの変遷を先取りした、一層包括的な検証研究及び政策提言型研究により汎用性のある研究成果が期待される。 |
事務事業名 | 小児疾患臨床研究経費 |
担当部局・課主管課 | 医政局研究開発振興課 |
関係課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
現在、小児科領域の現場では、医薬品の7割〜8割が小児に対する適用が確立されていない状況で使用されている。小児疾患のように企業が開発し難い疾患分野にあっては、行政的にその研究を支援していく必要があり、根拠に基づく医療(EBM= EvidenceBasedMedicine)の推進を図るため、倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験の実施を目指す必要がある。 このような状況をふまえ、本研究事業は、小児科領域における倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験を実施し、根拠に基づく医療(EBM)の推進を目指している。さらに、平成17年度からは、当初からの事業内容に加え、小児への適応が未確立な医薬品について、安全性・有効性の確認、用法・用量の検討・確立等を内容とする研究事業を行うこととし、小児科領域の標準的医療技術の確立及び医薬品の適正使用の推進を目指す。 |
H13 | H14 | H15 | H16 | H17 |
240 | 199 | 194 | (未確定) |
|
(5)事業の概略図
小児疾患臨床研究事業 |
不採算等の理由から医薬品の7割〜8割が小児への適用が未確立。 小児に対する薬剤のように企業が開発し難い分野は、行政としての研究支援が重要 |
現在、小児疾患に関しては、医薬品の7割〜8割が小児に対する適用がなく、医療の現場では適応外使用がなされているのが現状である。小児疾患のように企業が開発し難い疾患分野にあっては、行政的にその研究を支援していく必要があり、根拠に基づく医療(EBM=Evidence Based Medicine)の推進を図るため、倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験の実施を目指す必要がある。 |
厚生労働省においては、本研究事業について、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」を踏まえ、本研究事業に関する評価指針を策定し、小児疾患に係る根拠に基づく医療(EBM)の実現を図るため、研究課題を専門家等により、厳正に評価(事前評価、中間・事後評価)を実施しているところである。 |
本研究事業は、小児科領域における倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験を実施し、エビデンスを収集して根拠に基づく医療(EBM)の推進を目指す公募型の研究事業である。 さらに、平成17年度においては、当初からの事業内容に加え、小児への適応が未確立な医薬品について、安全性・有効性の確認、用法・用量の検討・確立等を内容とする研究を行うことを予定しており、従来から実施している事業と併せて、小児分野の標準的医療技術の確立及び医薬品の適正使用の推進を目指すこととしている。 |
小児領域における倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験を実施し、エビデンスを収集して根拠に基づく医療(EBM)を推進することによって、患者へのより安全・安心な医療技術の提供に結びつけることを目標としており、これらの目標に対する寄与によって達成度が示される。これにより、効率的な運営がなされていると考えられる。 |
特になし |
現在、小児科領域の現場では、医薬品の7割〜8割が小児に対する適用が確立されていない状況で使用されている。小児疾患のように企業が開発し難い疾患分野にあっては、行政としてその研究を支援していく必要があり、根拠に基づく医療(EBM=Evidence Based Medicine)の推進を図るため、倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験の実施を目指す必要がある。 海外に比べ日本の治験環境は、スピード、費用、質の面で劣っているという指摘があるが、本研究事業を実施することにより、小児疾患分野について根拠に基づく医療(EBM)が推進され、小児分野の標準的医療技術の確立及び医薬品の適正使用、患者へのより安全・安心な医療技術の提供が図られることを強く期待する。 |
事務事業名 | 第3次対がん総合戦略研究経費 |
担当部局・課主管課 | 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 |
関係課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
これまでの「対がん10カ年総合戦略」及び「がん克服新10か年戦略」の成果として、病態の理解が遺伝子レベルで進む等がんの本態解明は大きく進み、また各種がんの早期発見法・標準的な治療法の確立等、診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げた。その一方で、発がんの要因やがんの生物学的特性等については、不足部分を補完するなどその全貌解明に尚、一層の研究の充実を図ることが求められている。 このため、我が国の死亡原因の第1位であるがんについて研究、予防及び医療を総合的に推進することにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指した「第3次対がん10か年総合戦略」を策定し、平成16年度からスタートしたところである。 「第3次対がん10か年総合戦略」に基づく本研究事業においては、がんの臨床的特性の分子基盤等の研究を行うことにより、がんのさらなる本態解明を進めるとともに、その成果を幅広く応用するトランスレーショナル・リサーチを推進する。また臨床研究・疫学研究の新たな展開により革新的な予防、診断、治療法の開発を進めるとともに、根拠に基づく医療の推進を図るため、効果的な医療技術の確立を目指し質の高い大規模な臨床研究を推進する。 さらにこうした研究事業の基盤整備を進めるため、若手研究者育成活用事業、外国人研究者の招へい、外国への日本人研究者等の派遣、外国への研究委託及び研究成果等の啓発などの推進事業を実施する。また研究補助者を活用することにより研究効率の一層の向上を図るため研究支援者活用事業を実施する。 具体的には、
|
H13 | H14 | H15 | H16 | H17 |
2,185 | 2,186 | 1,831 | 4,633 | (未確定) |
昭和56年以来がんは日本人の死亡原因の第1位を占めており現在では死因の約3割、医療費の1割弱を占める我が国最大の健康上の問題となっており、厚生労働省として緊急に研究をさらに充実させなければならない分野である。死亡率については、大腸がん、前立腺がん、乳がんなど多くのがんでは上昇傾向にあり、胃がんや子宮がんが著明に低下しているものの高齢化の進展に伴い適切な研究・支援が実施されない限りがんの死亡数が上昇することが予測され、増加する欧米型のがんや難治がんへの重点対応が望まれている。 米国においては、国立がん研究所を中心として、ニクソン大統領主導で1971年に策定されたNational Cancer Actにより継続的に大量の資金ががん研究に投入され、欧州においても、EORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)という組織のもとに研究が進められている。このような国際情勢の中で、過去の対がん戦略に基づく我が国のがん研究は高い評価を得ており、我が国の果たすべき役割は年々大きくなってきている。 このため、我が国の死亡原因の第1位であるがんについて研究、予防及び医療を総合的に推進することにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指した「第3次対がん10か年総合戦略」を策定し、平成16年度からスタートしたところである。 「第3次対がん10か年総合戦略」に基づく本研究事業の計画は、昨秋の総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価において、最高ランクのS評価を得ている。 また「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の中でも平成16年度に引き続き重点事項に位置付けられた。 さらに先般、閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に位置付けられた「健康フロンティア戦略」において、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病対策の目標値が示され、それを達成するための科学技術の振興が提言されたところである。 本研究事業の実施に当たっては、総合科学技術会議の指摘を踏まえ、がんの本態解明に迫る基礎研究の充実を目指すとともに、応用・臨床研究に一層の重点をおいた研究を行う。疫学的研究に基づく生活習慣の改善、効果的な予防のための研究や単なる有効性の検討に留まらない医療経済性の観点を含めた革新的な診断・治療法の開発研究に重点をおいて行う。トランスレーショナル・リサーチにおいては、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)等のネットワークを最大限活用し推進することとしている。なお「第3次対がん10か年総合戦略」に基づき実施される本研究事業及び文部科学省の研究事業が整合性をもって推進されるよう両省合同の会議を設けるべく協議を開始している。 またがんの正確な情報に基づく施策を推進するために、がんの実態把握(がん登録)及びそれを用いた分析研究を一層充実する。 また全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう均てん化を図るために、地域がん診療拠点病院を核とした全国的な体制を整え、その機能が十分発揮できるように、均てん化の妨げとなる問題点を明らかにし解決法を提案する研究を進めることとしている。 |
(5)事業の概略図
がん対策の過去・現在・未来
平成16年度予算:46億円
昭和56年以来がんは日本人の死亡原因の第1位を占めており現在では死因の約3割、医療費の1割弱を占める我が国最大の健康上の問題となっており、厚生労働省として緊急に研究をさらに充実させなければならない分野である。死亡率については、大腸がん、前立腺がん、乳がんなど多くのがんでは上昇傾向にあり、胃がんや子宮がんが著明に低下しているものの高齢化の進展に伴い適切な研究・支援が実施されない限りがんの死亡数が上昇することが予測され、増加する欧米型のがんや難治がんへの重点対応が望まれている。 米国においては、国立がん研究所を中心として、ニクソン大統領主導で1971年に策定されたNational Cancer Actにより継続的に大量の資金ががん研究に投入され、欧州においても、EORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)という組織のもとに研究が進められている。このような国際情勢の中で、過去の対がん戦略に基づく我が国のがん研究は高い評価を得ており、我が国の果たすべき役割は年々大きくなってきている。 このため、我が国の死亡原因の第1位であるがんについて研究、予防及び医療を総合的に推進することにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指した「第3次対がん10か年総合戦略」が策定され、平成16年度からスタートしたところである。 |
第3次対がん総合戦略研究事業においては1研究課題あたりの金額は10,000千円〜70,000千円程度であり、研究期間は原則として3年程度を限度とし、事前評価委員会、中間・事後評価委員会およびそれらを統括する企画運営会議において外部評価を毎年行う。評価委員会はがんの研究分野の専門家と専門家以外の有識者からなり委員は10名から15名程度で構成する。評価委員会においては以下の評定事項に基づいて厳正な評価を行う。
このように評価方法についても各評価委員会の評価委員がその分野の最新の知見に照らした評価を行い、研究費は評価結果に基づき配分されることから効率性、妥当性が高いものと考えられる。限られた予算の中で研究課題を公募し研究を実施することにより必要性、緊急性が高く、予算的にも効率的な研究課題が採択されて事業が実施される。また研究期間は原則最長3年であり、研究課題の見直しに反映されるため事業の目的達成に対する有効性が高いと考えられる。 |
「第3次対がん10か年総合戦略」に基づく本研究事業は、10年後の目標を目指して計画的に総合的に実施するべきものである。 実際の研究の推進に当たっては、目標を達成するために最も必要性の高い課題に対し効率的に資金を配分し、しかも計画的に総合的に推進することが必要なことから、過去の戦略の推進と同様、10年をI期(3年)、II期(3年)、III期(4年)に分け、各期毎に戦略の推進状況を総合的に勘案し、必要な見直しを行いつつ計画的に推進するのが適当と考える。 また事前評価委員会の業務のひとつとして研究課題案の作成の機能をもたせており、専門的・学術的観点及び行政的観点から、第3次対がん総合戦略研究事業及びがん臨床研究事業における研究として重要性、緊急性及び必要性の高い課題を明らかにし、優先順位をつけて課題案を作成し、親会議にあたる企画運営会議において課題として設定し、プロジェクトを組むないしは公募を行い最も実行可能な班構成によりなされるように工夫されており、計画性が高いと考えられる。 |
事業目標が達成された場合、10年後に実現されるがん研究・がん医療の姿として以下のことが期待される。
|
「第3次対がん10か年総合戦略」に基づく本研究事業の計画は、昨秋の総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価において、最高ランクのS評価を得ている。また「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の中でも平成16年度に引き続き重点事項に位置づけられたところである。 また先般、閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に位置付けられた「健康フロンティア戦略」において、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病対策の目標値が示され、それを達成するための科学技術の振興が提言された。 |
これまでの研究により、遺伝子レベルで病態の理解が進む等がんの本態解明は大きく進んだ。また、各種がんの早期発見法の確立、標準的な治療法の確立等診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げた。その一方で、発がんの要因やがんの生物学的特性は、がんの多様性と複雑性の故に、世界的にもその全容が依然解明できていない。がん細胞の浸潤能、転移能やがんに対する免疫応答など、生体内でのがんと周囲の細胞との相互作用も、その全貌が十分に解明されていない。今後は、進展がめざましい生命科学の分野との連携を深め、また、ミレニアムゲノム研究で得られた成果を統合させ総合的な基盤研究を推進することにより、がんの本態をより深く解明し、個々のがんの多面的な要因や複雑な病態を掌握し、早期発見のための新しい診断法の開発や有効な腫瘍マーカーの開発、新しい予防法・治療法の開発等のいわゆるトランスレーショナルリサーチを重点的に推し進める必要がある。また、医療技術のさらなる向上を目指すためには先端的な科学技術を積極的に取り入れた研究が必須であり、文部科学省と厚生労働省の連繋のみならず、産学連携の取り組みをさらに強化することが必要である。また先端的研究により開発される新しい治療技術につき大規模な臨床研究を進め、効果的かつ効率的で質の高い標準的な医療として確立したものにつき、全国にあまねく普及する必要がある。これらの取り組みにより、膵がんやスキルス胃がんなどの難治がんを含めたがん治癒率の一層の向上とがん発生率の減少を達成することができ、ひいては国民の医療費負担低下も実現可能となると考えられる。 疫学的研究に関しては、大規模・長期にわたる疫学研究を実施可能にするための国家的な体制作りを進め、がんの環境要因を把握するのみでなく、遺伝子多型の分布など、遺伝的要因(ゲノム情報)も取り入れた分子疫学的研究を積極的に推進する必要がある。 がん情報の基盤整備に関しては、診療技術の全国への普及、国民へのがんに関する適切な知識と最新情報の提供、とりわけ、がんの発生・死亡等に関わる情報の一元管理(がん登録)は、まだ十分に行われているとは言えず、今後、さらに整備・充実していく必要がある。 緩和医療に関しては、痛みや息苦しさ、倦怠感などを克服する新しい手段を見出すとともに、精神・心理的な苦悩や負担の軽減をはかる医療環境を充実する必要がある。 がん医療の均てん化に関しては、厚生労働省が指定を進めている地域がん診療拠点病院を核とした全国的な体制が整いその機能が十分発揮されるように、均てん化の妨げとなる問題点を明らかにし解決法を提案する研究を進める必要がある。 以上の観点を踏まえ、本事業をより一層強力に推進していくことにより、がん対策を有効に推進し、「がんの治癒率の向上、がんの罹患率・死亡率の減少、がん患者の苦痛の軽減」に効率よく繋げていくことが重要である。 |
事務事業名 | 循環器疾患等総合研究経費 |
担当部局・課主管課 | 厚生労働省健康局生活習慣病対策室 |
関係課 | 厚生労働省医政局指導課 |
基本目標11 | 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること |
施策目標 2 | 2研究を支援する体制を整備すること |
I | 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること |
活力ある長寿社会の構築は我が国の経済発展の観点からも重要な課題となっており、特に働き盛りの国民にとって脅威となっている心筋梗塞等の「心臓病」や寝たきりの主な原因となる「脳卒中」に対し有効な対策を立てることは極めて重要である。 これらの疾患に対する治療法には薬物療法、手術療法等があり、さらにその中でも昨今の様々な工夫により多くの薬剤、術式等が存在し、医療現場では、これらの治療法が医師の裁量により組み合わされ、多種多様な治療法が適用されている。しかし、それらの治療法についての効果や効率性等について、科学的な視点からの比較が必ずしも十分には行われておらず、最適な治療法というものが明らかになっていないことが多い。また進歩の著しい画像診断法等についても標準化や精度評価・管理が十分なされないまま臨床応用されていることが多い。そこで、心疾患、脳血管疾患、それらの背景疾患である糖尿病、高血圧、高脂血症等の分野について、効果的な医療技術を確立するために必要な臨床研究を公募型の競争的資金により推進するとともに、これらの臨床研究の実施に関して、多くの研究者・研究施設の参加のもと科学的な視点から厳密に有効性等の評価を行う、質の高い大規模な臨床研究を実施する体制の重点的整備を推進する。 本研究の成果により、効果的かつ効率的で質の高い治療法等の医療情報が集積され、最善かつ標準的な医療技術が確立されることとなる。 |
H13 | H14 | H15 | H16 | H17 |
1,820 | 2,372 | 2,023 | 1,298 | (未確定) |
日本人と欧米人は体格や遺伝的背景をはじめいろいろな点で異なるが、我が国の循環器系疾患等の治療において、欧米の臨床研究による科学的根拠に基づく医療(EBM)が有効と思われていた面が多々ある。我が国で真に有効な医療の構築には、我が国におけるエビデンスを是非とも確立する必要がある。しかし従来我が国では、複数の研究者小グループが独自に研究を行っているのが実状であり、臨床的研究において集まるサンプル数等に限界があり、十分な結論が得られないため研究結果の信頼性(バイアス、精度、再現性)が低いことが指摘されていた。 この要請に応えるため、本研究事業では循環器系疾患等について全国規模で質の高い臨床試験が行える体制を整えることを目標のひとつとしており、実際、大きな研究目的毎に全国規模の臨床研究体制が整いつつあり、この臨床研究体制を基盤として循環器系疾患等について質の高いエビデンスが得られ始めている。 研究成果の主なものとして、(1)糖尿病、高血圧、高脂血症と生活習慣の関係や合併症予防に関して、大規模多施設共同研究によって、従来の通説とは異なる日本人の新たな知見が明らかとなってきた。(2)虚血性心疾患に対する内科的治療、外科的治療の現状やその治療法の選択に関して、初めて全国規模の二次医療圏レベルの調査研究が行われ、新しい狭心症治療ガイドラインの作成に資する重要な知見が得られた。(3)冠状動脈バイパス手術に関しても、人工心肺非使用心拍動下冠状動脈バイパス手術が虚血性心疾患の外科治療の第一選択になることが期待される重要な知見が得られた。(4)難治性腎疾患のデータベースが構築され、腎疾患対策に活かすための環境が整ってきた。(5)急性期脳梗塞に対する局所血栓溶解療法が患者の社会復帰率を改善する可能性が示唆される結果が得られた。 このように本研究事業は、循環器系の疾患に関して、厚生労働行政に貢献する多くの成果を上げてきており、今後さらに数多くのエビデンスが蓄積されることにより、日本人のエビデンスに基づいた日本人に最適な治療法等が確立されることが重要である。 また先般、閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に位置付けられた「健康フロンティア戦略」において、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病対策の目標値が示され、それを達成するための科学技術の振興が提言されたところである。 |
(5)事業の概略図
日本人と欧米人は体格や遺伝的背景をはじめいろいろな点で異なるが、我が国の循環器系疾患等の治療において、欧米の臨床研究による科学的根拠に基づく医療(EBM)が有効と思われていた面が多々ある。我が国で真に有効な医療の構築には、我が国におけるエビデンスを是非とも確立する必要がある。しかし従来我が国では、複数の研究者小グループが独自に研究を行っているのが実状であり、臨床的研究において集まるサンプル数等に限界があり、十分な結論が得られないため研究結果の信頼性(バイアス、精度、再現性)が低いことが指摘されていた。 この要請に応えるため、本研究事業では循環器系疾患等について全国規模で質の高い臨床試験が行える体制を整えることを目標のひとつとしており、実際、大きな研究目的毎に全国規模の臨床研究体制が整いつつあり、この臨床研究体制を基盤として循環器系疾患等について質の高いエビデンスが得られ始めている。 今後さらに数多くのエビデンスが蓄積されることにより、日本人のエビデンスに基づいた日本人に最適な治療法等が確立されることが重要である。 |
循環器疾患等総合研究事業においては、課題毎に以下の方針で事業を行っている。
評価委員会(事前、中間・事後)は10名から20名程度の委員で構成され、専門的・学術的観点および行政的観点から評点し、厳正な評価を行う。 これらの評価結果に基づき、研究課題の採択・継続の可否及び研究費の調整を行っており、評価結果を適切に反映させている。また研究の実施体制についても、広く全国から公募し全国的な臨床研究実施体制の確立に資するように配慮されている。 |
事前評価委員会の業務のひとつとして研究課題案の作成の機能をもたせており、専門的・学術的観点及び行政的観点から、循環器疾患等研究事業における研究として重要性、緊急性及び必要性の高い課題を明らかにし、優先順位をつけて課題として設定する。このようにして設定された課題につき、公募を行い最も実行可能な班構成によりなされるように工夫されており、計画性が高いと考えられる。 |
本研究事業の推進を契機として、循環器系疾患等で効果的な医療技術の確立を推進するため国内外のエビデンスの整理等が行われ詳細なガイドラインが多数公表されるに至った。また各疾患の医療手順は具体的にクリニカルパスの形でまとめられ順次公表が始まっている。これにより病院在院日数の短縮や医療事故の減少にも貢献することが期待されている。 また従来我が国において循環器系疾患の診断・治療等に関する臨床研究が実施されてきたが、科学的根拠を確立するために必要な医師主導の質の高い比較試験が十分実施されてきたとは言い難い。しかし本研究事業を契機として、EBMの推進に対する研究者の意識が高まると共に臨床研究支援のための人材も育ちつつあり、我が国でも質の高いエビデンスが得られる大規模完全無作為割付試験を行える体制が整いつつある。 この臨床研究体制をもとに、本研究事業では具体的に以下の様な厚生労働行政に貢献する多くの成果を上げてきている。
|
先般、閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に位置付けられた「健康フロンティア戦略」において、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病対策の目標値が示され、それを達成するための科学技術の振興が提言された。 臨床研究の倫理性の確保に関する重要性は論を待たないが、本事業では「疫学研究における倫理指針」(文部科学省、厚生労働省)、「遺伝子解析研究に関する倫理指針」(経済産業省、文部科学省、厚生労働省)、「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働省)等の遵守についても厳正な審査を行い、研究の倫理性の確保に努めている。 |
心疾患、脳血管疾患は我が国の3大死因のうち2位と3位を占め、総死亡の3割を占める重要な疾患である。近年の診断・治療法の著しい進歩により循環器系疾患等の急性期死亡率は減少してきたが、救命されても再発と後遺症のために生活の質(QOL)が低下することが多いのが現状である。 近年、これら循環器疾患の原因として重要な「境界型を含めた糖尿病患者」が急速に増加している(平成14年糖尿病実態調査)。糖尿病は自覚症状のないまま発症することが多く、治療することなく放置すると、腎症、網膜症、神経症などの合併症を引き起こし、生活の質(QOL)の低下を余儀なくされることが多い。さらには脳卒中、心筋梗塞といった大血管合併症に進展することが多く、糖尿病予防対策を強化することが喫緊の課題となっている。 この糖尿病患者の増加傾向を減少に転じ、QOLの低下を余儀なくする合併症を予防するためには、最近、徐々に明らかになりつつある我が国における糖尿病と生活習慣の関係や合併症予防に関する大規模多施設共同研究の成果に基づき糖尿病予防対策を立案実行すると同時に、これらの研究を引き続き推進するとともに、新たに革新的な予防法・診断法・治療法の確立に関する研究を強化推進していく必要がある。 また脳卒中、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患等の研究においては、近年特にメタボリックシンドロームに注目が集まっている。このメタボリックシンドロームにおいては、肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能異常といった個々の異常は軽度であっても、これらのリスクが重なることによって脳卒中、心筋梗塞の発症リスクが非常に高まることも明らかになってきている。しかし日本人におけるこれらの実態は未だ明らかになっておらず、一層の研究の強化が求められている。 また、特に心室細動等の不整脈による突然死について、除細動等による早期の治療が注目されている。今後は、傷病者に居合わせたバイスタンダーによる早期介入・治療のあり方が重要であり、その効果的な介入・治療について一層の研究の推進が必要である。 このような社会的要請に応えるため本研究事業では、全国規模で質の高い臨床試験が行える体制を整え、この臨床研究体制を基盤として日本人のエビデンスが集積され、日本人に最適な効果的かつ効率的で質の高い治療法等の医療技術が確立されることを目指している。研究の実施体制においても、広く全国から公募し全国的な臨床研究実施体制の確立に資するように配慮しており、厚生労働省の政策医療を推進する上でも貴重な資料を提供するものである。 高齢者が高血圧、糖尿病をベースとして反復する心筋梗塞などで入退院を繰り返したり、脳梗塞の後遺症で寝たきりになったりすることが、平均寿命と健康寿命の差(6〜8年)を生む大変大きな原因となっている。この循環器疾患に起因する差を小さくすることが高齢化社会を迎える我が国にとって重要な政策医療となり、これに取り組む循環器疾患等総合研究事業は大変重要である。 以上、本研究事業を一層推進し、これまでに得られた成果の普及・啓発をはかることにより、合理的で患者の満足度が高くしかも医療費の抑制につながる医療が進むものと期待される。 |