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資料 No.3

脳・心臓疾患の発症と睡眠時間に関する疫学調査の概要(2002年以降)


A Prospective Study of Sleep Duration and Coronary Heart Disease in Women
Najib T Ayasら(2003)

○背景
 長期的な睡眠不足は現代社会において一般的である。最近の研究により、健康面において短期間の睡眠不足は耐糖能の低下や血圧の上昇を含む有害な生理的変化を引き起こすことが明らかになった。しかしながら、長期間の睡眠不足の長期健康影響は明らかでない。本研究の目的は睡眠時間(自己申告による)の減少が冠動脈疾患の発症リスクの増加に関係があるかどうかを確認することであった。

○方法
 本研究は、看護婦健康研究会に登録された、当初には冠動脈疾患(CHD)のない71617人の米国女性医療保健職(45〜65歳)のコーホートを調査したものである。対象者には1986年に毎日の睡眠時間についてアンケートを郵送し、その後、1996年6月30日までCHDに関連する疾病の発生について追跡調査を行った。そして、自己申告の睡眠時間とCHDとの関係の評価を行った。

○結果
 合計934例(うち271例が死亡)のCHDが、追跡調査を行った10年間で発生した。毎日8時間の睡眠をとっている対照群に比べ、CHDの年齢調整後の相対危険度(95%信頼区間)は、5時間以下、6時間、7時間の群では、それぞれ1.82(1.34−2.41)、1.30(1.08−1.57)、1.06(0.89−1.26)であった。また、睡眠9時間以上の群の相対危険度(95%信頼区間)は、1.57(1.18−2.11)であった。いびき、BMI、喫煙など様々な因子を調整後の、5時間以下、6時間、7時間の群のCHD相対危険度(95%信頼区間)は、1.45(1.10−1.92)、1.18(0.98−1.42)、1.09(0.91−1.30)であった。また同様の睡眠9時間以上の群の相対危険度(95%信頼区間)は、1.38(1.03−1.86)であった。

○結論
 短い睡眠時間、長い睡眠時間は、有意に冠状動脈疾患の発生リスクの増加に関係している。


Overtime Work, Insuffisient Sleep, and Risk of Non-fatal Acute Myocardial Infarction in Japanese Men.

Y Liuら(2002)

○目的
 本研究の目的は、労働時間及び睡眠時間と急性心筋梗塞(AMI)との関係、これら2つの因子の相関影響を評価することであった。

○方法
 日本における症例対照研究である。症例群は1996年から98年にAMIで病院に搬送された40〜79歳の260人である。対照群は住民登録から募集された年齢及び住居地の一致したAMIの症状していない445人である。最近または前年の一週間の平均労働時間及び一日の睡眠時間とAMIのオッズ比を算定した。

○結果
 週61時間以上の労働は週40時間以下の労働に対して2倍のリスクの増加を認めるとともに、過去1ヶ月と同様過去1年についても一週間の労働時間はAMIのオッズ比の増加に累進的に関係していた。短時間睡眠(1日5時間以下)と頻繁な睡眠不足(週2日以上の5時間未満睡眠)についても2〜3倍のリスクの増加を認めた。最近の頻繁な睡眠不足と少ない休日は、前年のこれら因子に比べてより高いオッズ比を示した。

○結論
 時間外労働と睡眠不足はAMIのリスクの増加に関係する可能性がある。


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