審議会議事録  厚生労働省ホームページ

平成16年度第2回目安に関する小委員会議事録


1 日時 平成16年7月9日(金)10:00〜11:40

2 場所 厚生労働省専用第13会議室

 出席者
 【委員】(公益委員)古郡委員長、今野委員、岡部委員、中窪委員
(労働者側委員)加藤委員、久保委員、中野委員、山口委員
(使用者側委員)池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員
 【事務局】(厚生労働省)大石審議官、麻田賃金時間課長、
上岡主任中央賃金指導官
山口副主任中央賃金指導官、長課長補佐

 配布資料

資料No.1 平成16年賃金改定状況調査結果

 議事内容

○古郡委員長
 ただいまから、第2回目安に関する小委員会を開催いたします。まず、事務局から、お手元の資料について説明してください。

○長課長補佐
 お手元に配付させていただいた「賃金改定状況調査結果」について、説明したいと思いますが、その前に、前回、目安小委員会の中で質問があった事項について説明させていただきます。前回の目安小委員会の中で、久保委員から、最低賃金法違反の事業所について、その後の改善状況がどうなっているのかというご質問がありました。この点について、当方でいくつかの主要労働局に問合わせをして確認しましたが、ほとんどすべての所で改善されているという状況でした。
 2点目として、中野委員よりパートタイム労働者の賞与等の資料はないかという質問がありました。この点については、賃金構造基本統計調査で賞与等の数字がとれるということで、平成15年の数字ですが、パートタイム労働者の年間賞与その他特別給与額は4万2,900円という数字が出ております。
 お手元の「賃金改定状況調査結果」の説明に移らせていただきます。「調査の概要」ですが、調査の地域として都道府県庁所在都市及び、都道府県ごとに原則として人口5万人未満の市より選定した1又は複数の市の区域となっております。調査産業としては、都道府県庁所在都市については、製造業、卸売・小売業、飲食店,宿泊業、医療,福祉、サービス業、地方小都市については製造業となっています。
 調査事業所ですが、平成16年6月1日現在の常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所で、1年以上継続して事業を営んでいる事業所から、一定の方法により抽出した事業所となっております。都道府県の県庁所在都市からは約3,000事業所、地方小都市からは約1,000事業所、合計約4,000事業所を調査して、調査労働者については約3万3,000人となっております。
 調査対象期日及び項目ですが、事業所の名称、所在地、企業規模、事業内容、労働者の性、就業形態などについては、平成16年6月1日現在における事実について調査しております。労働者の月間所定労働日数、1日の所定労働時間数、労働者の所定内賃金額については、平成15年6月分及び平成16年6月分における事実について調査しております。賃金改定率は、平成16年1月から6月までの事実について調査しております。年間所定労働日数は、平成14年度及び平成15年度の事実について調査しているとなっています。
 第1表は調査の具体的な結果ですが、産業計、製造業、卸売・小売業といった産業別に並べております。産業計のいちばん下の計ですが、1から6月に賃金引上げを実施した事業所が31.2%となっています。下の括弧で書いてある所は平成15年調査で、昨年の調査の数字です。引下げを実施した事業所は2.8%、今年は賃金改定を実施しない事業所は58.0%となっております。下の括弧内の数字と比較すると、引上げを実施した事業所が2.4%増えております。引下げを実施した事業所割合は1.2%減っております。賃金改定を実施しない事業所、凍結事業所割合は1.8%の減少となっております。産業別でも同様の傾向が見られているようです。ただ、サービス業は、1から6月に賃金の引上げを実施した事業所は38.0%、括弧内の数字は42.9%でしたので、こちらは引上げを実施した事業所は減少しております。また、引下げを実施した事業所についても4.2%ということで、昨年が5.6%でしたので、引下げを実施した事業所についても減少しております。一方、今年は賃金改定を実施しない事業所は50.1%となっております。昨年が42.6%でしたので、サービス業については凍結事業所の割合が増加しているといった状況になっております。
 続いて第2表です。これは事業所の平均賃金改定率で、平成16年1から6月までの間に賃金引上げを実施した、または引下げを実施した事業所について、各事業所ごとに1人平均引上げ、または引下率を記入してもらったものです。その各事業所で記入していただいた数字について、単純平均で1事業所当たり、いくら平均か見たものとなっております。
 左の箱ですが、賃金引上げ実施事業所について、産業計で2.8%の引上げとなっております。昨年は2.5%ですので、0.3%増えている状況になっております。真ん中の箱は賃金引下げ実施事業所の状況ですが、こちらの産業計では1人当たりマイナス5.3%で引下げとなっております。昨年マイナス5.7%の引下げでしたので、引下げの幅は0.4%縮小しているといった状況になっております。また、それぞれの伸び率、賃金引上げ実施事業所の1人当たりの引上率及び賃金引下げ実施事業所についての引下率マイナス5.3%、それぞれの伸び率について引上げ実施事業所と引下げ実施事業所の割合で加重平均したものが、いちばん右の箱の「賃金改定実施事業所及び凍結事業所の合計」になります。これは産業計の所が0.7%の引上げとなっており、昨年が0.5%でしたので、加重平均では昨年よりも0.2%の増加といった状況になっております。
 続いて、第3表です。これは賃金引上げを実施した事業所について、引上率の分布の特性値を見たものです。いちばん左の箱の産業計ですが、第1・四分位数が1.0%、中位数が1.8%ということで、昨年より0.1%低下が見られています。一方、第3・四分位数は昨年と同じになっております。分散係数は0.58で、昨年は0.53でしたので、昨年よりも若干ばらつきが拡大している状況になっております。この分散の傾向ですが、製造業、サービス業も同様の傾向が見られています。製造業については、分散係数0.62ということで、昨年の0.55から上昇しております。いちばん右の箱のサービス業ですが、この分散係数も0.66で、昨年の0.51から上昇しております。サービス業については、分散係数の左隣の箱に第3・四分位数ということで、引上げ実施事業所のうち上位25%の部分に当たる数字ですが、これが4.0%となっております。昨年が3.2%でしたので、引上げを実施した所で高い引上率の事業所については昨年よりもさらに高いといった状況で、このことが分散係数、ばらつきの拡大に影響しているものと考えられます。
 続いて第4表です。これは一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率を見たものです。いちばん左の箱が産業計ですが、左の箱の男女計のA、B、C、D計の計は賃金上昇率マイナス0.1%となっております。昨年マイナス0.1%でしたので、昨年と同様の数字となっております。ランク別では、Aランク、Cランク、Dランク、それぞれマイナス0.1%、マイナス0.2%、マイナス0.2%ということで、昨年と同じ数字になっております。Bランクについては0.0%で、昨年はマイナス0.2%でしたので、若干上昇しております。男性、女性では、男性の計でマイナス0.3%で、昨年はマイナス0.1%でしたので、こちらは昨年よりも低下しております。女性についてはプラス0.6%で、昨年は0.0%でしたので増加に転じているといった状況になっております。
 次に右の枠の産業別です。製造業ですが、男女計で賃金上昇率が0.5%の上昇となっております。昨年がマイナス0.1%で今年はプラスに転じているといった状況です。卸売・小売業はマイナス0.3%ということで、昨年のマイナス0.2%からマイナス0.1%の低下となっております。サービス業は、賃金上昇率がマイナス0.4%ということで、昨年はマイナス0.1%でしたので、マイナス0.3%の低下となっております。
 今回、産業分類が変更になった関係で、飲食店,宿泊業、医療,福祉というのを新たに取っております。昨年がありませんので、昨年との比較はできないのですが、飲食店,宿泊業については賃金上昇率は0.1%の上昇、医療,福祉については0.2%の上昇といった状況です。
 続いて参考1です。これは1から6月の間に賃金の引上げを実施した事業所に、その実施時期について、昨年と比較して「変わらない」、「早い」、「遅い」、「その他」ということで回答をいただいているものです。「変わらない」、「早い」、「遅い」とも、昨年の数字よりも下がっております。左端の計ですが、「変わらない」が88.6%ということで、昨年は92%でしたので低下しております。また、「早い」、「遅い」も1.7%、1.2%ということで、括弧内の昨年の数字よりも低下が見られております。「その他」が8.5%ということで、昨年より4.3%増加しています。「その他」の意味については、下の注の2にありますが、前年には賃金引上げを実施しなかった事業所とか、会社の設立が前年ということで、賃金引上げを行うのは今年が初めてであるといった事業所が該当しております。昨年、凍結事業所割合が高かったということもあり、前年賃金引上げを実施しなかった事業所が相当数ありますので、その関係で「その他」の割合が増えているのではないかと考えられます。
 続いて参考2です。これは賃金の改定を1から6月までに行っていなかった事業所について、その理由を見たものです。事由1から事由5まで分かれており、事由の内容については下の注に書いてあります。事由1、事由2、事由5については、7月以降には改定を実施する予定の事業所になります。事由3、事由4については、今年は実施しないということで、凍結事業所ということになります。事由3は、昨年は実施したが、今年は凍結、事由4は昨年実施していなくて、今年も実施の予定がないということで凍結事業所になります。産業計ですが、それぞれ事由1、事由2、事由3、事由4、事由5ということで、事業所割合を載せております。計ですが、事由3が11.5%ということで、昨年は11.6%ということで、割合が低下しております。事由3は、昨年は実施したが、今年は凍結の予定ということですので、昨年は改定したが、今年は凍結するといった所が減少している状況になっております。事由4、事由5については、昨年の数字よりも上がっております。これについては、事由4、事由5は昨年実施していなかった企業について聞いていることもあって、昨年凍結事業所割合が高かった影響が事由4、事由5の事業所割合の上昇に結び付いているものと考えられます。
 参考3ですが、県庁所在都市と地方小都市について、平均賃金改定率を見たものです。先ほどの第2表は全体を見ていますが、それを県庁所在都市と地方小都市で分類したものです。県庁所在都市の賃金引上げ実施事業所の状況ですが、産業計の計の所で2.8%の上昇となっております。括弧内は昨年、平成15年の状況で2.6%から0.2%の増加となっております。賃金引下げ実施事業所ですが、産業計でマイナス5.2%となっており、昨年はマイナス5.6%でしたので、昨年よりも下げ幅は低下している状況が見られております。地方小都市ですが、賃金引上げ実施事業所の状況は2.9%の増加となっております。地方小都市については、製造業のみで全産業では見ていないので、その辺の留意が必要です。製造業について地方小都市を見たときに2.9%の増加となっております。賃金引下げ実施事業所の状況はマイナス5.8%で、昨年よりも引下げ幅は低下しています。
 県庁所在都市と地方小都市を比較する場合は、県庁所在都市の製造業と比較することになりますが、県庁所在都市の製造業の賃金引上げ実施事業所は3.0%という数字で、地方小都市は2.9%ですので、大体同じぐらいの引上率となっています。一方、引下げ実施事業所は、県庁所在都市の製造業がマイナス7.0%で、地方小都市がマイナス5.8%ですので、引下げ実施事業所については県庁所在都市のほうが引下率が高かったという状況が見られています。
 参考4ですが、これは事業所の賃金引上率の分布の特性値を見たものです。これも県庁所在都市と地方小都市で見たものですが、産業計の計の所で分散係数が0.59となっています。昨年が0.54ですので、分散が増えている、ばらつきが増えているといった状況です。地方小都市については、分散係数0.58と出ております。昨年が0.45でしたので、0.13%の上昇が見られます。第3・四分位数は3.0%となっております。昨年は2.5%でしたので、第3・四分位数、つまり上位25%の事業所の引上率が上がっていることが分散係数、ばらつきの拡大に影響しているのではないかと考えられます。
 続いて参考5です。これは第4表の数字について、県庁所在都市と地方小都市で見たものです。産業計の男女計を県庁所在都市で見るとマイナス0.1%で、昨年と同じ数字となっております。県庁所在都市の製造業は0.6%で、昨年はマイナスだったわけですが、プラスに転じているといった状況になっております。これも地方小都市は製造業だけになってしまいますが、賃金上昇率0.3%で、昨年はマイナス0.2%でしたので、地方小都市の製造業もプラスに転じているといった状況が見られています。
 最後に付表ですが、パートタイム労働者比率は、平成15年が23.0%、平成16年が24.3%ということで、1.3%の上昇が見られています。男女別労働者数比率ですが、平成16年は男性が54.6%、女性が45.4%となっております。年間所定労働日数(事業所平均)ですが、平成14年度が262.7日、平成15年度が263.0日という数字となっております。

○古郡委員長
 ただいまの説明について、ご質問、ご意見などがありましたらお願いします。

○加藤委員
 ご説明いただいた印象を含めて申し上げたいと思います。4頁の第4表を見て強い印象を受けたのが、男女計では前年の平均時間額に比べて0.1%マイナスになっているものの、男女別に見ると昨年と違った傾向が少し見られており、パートタイム労働者比率が高く、賃金水準も相対的に低い実態にあると想定される、昨年に比べて、女性の平均時間額が各ランクとも0.4%から0.8%程度と、一定の上昇を示している点です。このことから、相対的に賃金水準が高い男性の平均時間額の低下傾向が、男女計の賃金上昇率に影響を与えていることが想定されるのではないかと考えられます。男性の賃金水準低下の一因としては、雇用構造の変化も考えられるのではないかと思います。
 また、男女計の賃金上昇率がマイナスになった原因としては、末尾の付表ですが、労働力構成の変化が大きく影響していると見たほうが素直な解釈ではないか。パートタイム労働者比率が1.3ポイントアップしたこと、それから、男女構成比では、賃金が相対的に高い実態にある男性の比率が若干減少し、賃金が相対的に低い実態にある女性の比率が若干増加したことなどによるのではないかと思います。
 なお、こうしたこととの関係でお願いですが、もし可能であれば付表のパートタイム労働者比率に関して、男女別のデータ、あるいは昨年と比べた変化などについて、もしわかっているのであれば教えていただければありがたいと思います。

○長課長補佐
 いま加藤委員から、男女別のパートタイム労働者比率の状況がどうなっているのかということと、比率の変化というお話がありましたが、当方で把握している数字としては、男性のパートタイム労働者比率が平成16年6月で9.0%、女性のパートタイム労働者比率が42.7%、全体で24.3%となっております。1年前の平成15年6月については、男性のパートタイム労働者比率が8.0%、女性のパートタイム労働者比率が41.3%、全体で23.0%となっております。ということで、男性については平成15年6月の8.0%から平成16年6月の9.0%まで、1.0%の上昇、女性については、平成15年6月の41.3%から平成16年6月の42.7%まで、1.4%の上昇が見られるといった状況になっております。

○杉山委員
 いま話題になっているパートタイム労働者比率ですが、同じように配られた昨年の賃金改定状況調査結果の付表の数字は、平成15年は22.1%ですが、今回はその数字が23%と自然に膨らんでいるのですが、その理由はどういうことですか。

○長課長補佐
 毎年、前年と今年の数字を聞いており、昨年の調査では、昨年の事業所の前年と当年の数字を聞いております。今年については、今年の事業所について、昨年の数字と今年の数字を聞いており、調査対象が違ってしまっている影響から、昨年の平成15年の数字と今年の平成15年の数字が違っているということになっています。

○杉山委員
 同じ平成15年6月という時点で捉えてみて、調査対象が違うことで、そんなに増えるものなのでしょうかね。

○長課長補佐
 その辺の可能性については、調査結果としてこういう数字になったということだけしか、申し上げることはできないかと思います。

○杉山委員
 数字が絶対的にどうかというのではなくて、そういう数字の信憑性を考える上で、毎年毎年、時系列で考えて意味のないようなものをどう考えるのかということだろうと思うのです。1年の比較はできるわけです。平成15年と平成16年、平成14年と平成15年という比較はできるのですが、平成14年と平成15年と平成16年ということになると、もうそこに断絶があるわけです。

○古郡委員長
 2年前は聞いていないわけですね。

○長課長補佐
 前年と当年を聞いておりますので。

○麻田賃金時間課長
 補足いたしますと、結局、賃金改定状況調査は、昨年と今年で、それぞれ事業所でどのような賃金の改定があったかを調べるのが目的の調査ですので、今年、調査表を送って、ある事業所で去年の賃金はいくら、今年の賃金はいくらと改定した、ということを調べる仕組みになっております。仮に、去年と今年それぞれの賃金を聞く事業所が違ってしまったりすると、今度は賃金の改定の状況を正しく捉えることができません。そのような調査の目的上の制約の中で、こういう数字が出てきているとご理解いただきたいと思います。

○池田委員
 この間も新聞に出ていましたが、流通業などでは9%ぐらいパートタイム労働者比率が上がって、社員は0.1%ぐらい減って、パートタイム労働者比率が9.1%と出ていました。ですから、平均してしまうと少ないのですが、実態として業種的にはもっとパートタイム労働者比率が上がっている。業績の良い所は大体パートタイム労働者比率が上がっています。

○古郡委員長
 資料のほうはこの辺でよろしいでしょうか。それでは、次に進みたいと思いますが、前回の小委員会でお願いしたとおり、本年度の目安について、労使双方の基本的な考え方を表明していただきたいと思いますが、最初に労働者側からお願いします。

○加藤委員
 いま資料を配付させていただいて、それから説明させていただきたいと思います。少し総括的な考え方を申し上げさせていただきたいと思います。私が説明するのは綴じてある文章のペーパーです。
 労働者側委員の見解ですが、第1点目は経済環境についてです。景気や企業業績の回復が明確になってきていることを、今年の目安審議における共通の土俵にすべきであると考えています。法人企業統計調査によると、2004年、1から3月期の決算は、製造業、非製造業とも、引き続き増収・増益基調で推移しております。こうした景気の回復傾向は、企業の景況感にも現れており、日銀短観による2004年6月のD.I.は、大企業・製造業でプラス22と、何と1991年8月以来、13年ぶりの高水準となっております。こうした改善傾向は、非製造業や中小企業にも見られており、中小企業・製造業ではプラス2で、約12年半ぶりにプラスになっております。
 これに対して、2004年6月に日銀が一人ひとりの国民を対象に行った「第19回生活意識に関するアンケート調査」によって、「ゆとりが出てきた」から「苦しくなった」を差し引いた、国民の「暮らし向き」D.I.を見るとマイナス44.4という数字で、この傾向はこの数年間ほぼ横這い状態にあります。つまり、依然として生活の悪化傾向が続いていることを示しているというように考えます。いま、こうした景気回復の足取りを確かなものとして、日本経済を内需主導型の安定的で、かつ持続的な成長過程へと導くことが求められておりますが、そのためにも景気回復の流れを確実に勤労者の所得改善・生活改善に結び付ける政策対応が肝要であるのではないかと思います。
 2点目は、雇用環境と最低賃金に関する点です。雇用環境は依然として厳しい状態が続いていると言えます。5月の完全失業率は4.6%と、昨年の5%台半ばの高止まり状態からやや低下してきてはいるものの、若年層における10%程度の失業率、中高年層における著しく低い有効求人倍率など、構造的な問題を抱えており、労働市場に関しては明確な改善傾向を確証することはできないと言えるのではないかと考えます。
 こうした中で、雇用形態の多様化が顕著になってきていることにも注視をしていく必要があります。近年、常用雇用労働者(正規型雇用)が大幅に減少して、パートタイム・アルバイトなどの有期雇用や派遣労働者が著しい増加を見せるなど、雇用形態の多様化が進展をしております。労働力調査によると、2004年1から3月期時点の非正規従業員割合は31.5%にも及んでおり、こうした傾向は近年ますます強まっています。雇用形態の多様化が非典型労働者に対する公正な処遇が担保されないまま進んでいるため、賃金、所得格差の拡大に結び付き、所得が十分でなく経済的に自立することができない人が多くなっていることも推察されるのではないかと考えます。いま、雇用政策とともに、セーフティネットとしての最低賃金の役割が従来にも増して重要になってきていることを、しっかりと認識して対応をする必要があるのではないかと考えます。
 3点目は、最低賃金の近辺の賃金データというか、初任給であるとかパートタイム労働者の賃金などの実態と最低賃金の関係についてです。現在の最低賃金時間額の全国加重平均は664円です。この水準は、法定労働時間を目一杯働いたとしても、月額11万5,500円程度の水準にほかならず、最低限必要な生計費をも大きく下回るレベルにあります。これまで何度か目安に関する全員協議会、あるいは昨年の目安小委員会などでご紹介をしてまいりました、連合が2003年に試算した若年単身労働者の必要最低生計費を担保する所得として報告した月額が14万6,000円ですので、現行の最低賃金はこの水準をも大きく下回っております。
 それから、賃金構造基本統計調査による2003年度の女子パートタイム労働者の時間給平均額は893円、パートタイム労働者全体では男女計で915円となっています。最低賃金の水準は、パートタイム労働者の賃金に比べても、著しく低い実態に置かれています。なお、パートタイム労働者の2003年度の時間給は、前年度に比べて女子で2円、男女計全体で4円上昇している点にも着目する必要があります。こうした賃金上昇の傾向は、学生援護会が調査をした関東エリアのアルバイト賃金にも現れており、2004年に入って1から5月まで、平均時間給は980円台で推移をしており、対前年同月比では5カ月連続で上昇を続けております。
 また、連合が集計した2004年度の企業規模計の高卒初任給は15万6,000円程度の水準となっております。この初任給も前年に比べて、いずれの銘柄もやや上昇傾向にあります。ちなみに、高卒事務技術職は、報告のあった80組合中20組合で上昇しており、引上げのなかった組合も含めた80組合平均では、360円程度のアップになっております。
 このように、パートタイム労働者・アルバイト賃金や初任賃金と比べても、最低賃金ははるかに低い実態にあり、かつ今年はこうした実勢賃金がいずれも上昇傾向にあるという状況を踏まえれば、制度の実効性を確保する上で、最低賃金の確実な改善が必要であることを明言しておきたいと思います。なお、連合集計における2004年の賃金引上げ状況も、前年に比べ明らかに上昇傾向にあり、企業規模100人未満の中小企業労組1,467組合の集計では3,314円、1.38%アップとなっており、前年に比べて292円高い賃上額が示されております。
 4点目は、最低賃金の実効性についての考え方です。前回の第1回目安小委員会で報告のあった、賃金構造基本統計調査の特別集計による影響率(推計値)ですが、これはわずか1.0%です。しかも、この数値は、前年に比べて0.2%も低下していました。また、100人未満規模事業所の最低賃金に関する基礎調査で、これまでの推移を見ると、1990年当時は4.5%程度あった影響率がその後低下傾向を辿り、1999年以降2002年までの4年間は、おおむね1.9%程度で推移してきておりました。これが2003年には1.6%となり、近年にない大きな低下を示しています。こうした影響率低下の要因は、最低賃金が引き上げられてこなかったことによるもので、私どもとしてはこうした状況は憂慮すべき状況とも言えます。このことは喫緊の対応として、最低賃金をもっと存在感のあるレベルに改善すべきことを示唆していると考えています。
 最後に、今年の目安決定に当たっての労働者側の見解を少しまとめて申し上げたいと思います。まず、景気は確実に回復傾向を見せていますが、一方で勤労者生活の改善は立ち遅れていること。また、雇用面では非典型労働者が増大するなど、雇用構造が大きく変容していること。こうした中で、最低賃金制度の果たすべき社会的役割が従来にも増して高まっていることを申し上げておきたいと思います。
 一般労働者の賃金はもとより、パートタイム労働者賃金や初任給などの実勢値に比べて、最低賃金水準はあまりにも低い実態にあり、その着実な改善が求められていること。また、最低生計費に比べても乖離が大きく、勤労者生活の維持・向上に寄与するためにも、最低賃金の改善が求められていることを主張しておきたいと思います。
 第3点は、一般労働者の賃金、パートタイム労働者やアルバイトの賃金、春闘における賃金引上額、いずれも明らかに上昇傾向にあることから、こうした実態を最低賃金に反映させる必要があることを申し上げておきます。こうした観点を踏まえた今年の目安決定に当たっての具体的考え方、結論部分ですが、このように考えております。「過去2年間と明らかに異なる対応が求められており、存在感の持てる最低賃金とするため、生計費・各種賃金指標の現行水準や変化の動向を踏まえつつ、明確な水準の改善に寄与する目安提示が必要である」というのが私どもの見解です。私のほうからは以上です。

○古郡委員長
 次に使用者側からお願いします。

○杉山委員
 我が国の経済は、昨年後半辺りから、先行きに明るさが見え始めていると言われているものの、地域、業種、企業規模によって大きく差が見られて、それが今年の最大の特徴と言えるのではないかと思います。とりわけ大部分の地域や中小・零細企業は、より厳しい状況が続いております。また、為替や金利の動向、原油など国際商品市況の高騰、さらにはイラク問題のリスクなど、依然として先行きに不透明な要素を多く抱えております。いずれにせよ、限られた所が良くなっているだけで、いわばばらつきが大きくなっているわけです。したがって、その一部の良い所を見るだけではなくて、さらに下落をしているという所にも目を向けるべきであると考えております。
 昨年度の各経済指標は、名目GDPは前期比0%、倒産件数は前期比マイナス14.8%、完全失業率は5.3%、有効求人倍率は0.64倍となっており、回復基調にはありますが、全体として失業率、有効求人倍率とも悪い数字で、安定感のある、回復した成長状態にあるとは言えず、依然として予断を許さない厳しい状況にあると考えます。また、物価については、今年に入って国内企業物価が上昇傾向を示している反面、消費者物価は引き続き下落傾向を示しております。これは内外の商品市況の高騰による石油、非鉄、鉄鉱などの原材料価格の上昇を、企業が生産性を向上させるなどして内部で処理し、最終材への価格転嫁を回避する努力をしていることを意味していると考えます。
 次に業況判断、D.I.についてですが、前回示された19頁です。中小企業では、製造業でマイナス3、非製造業でマイナス20となっており、昨年と比べ製造業では回復傾向にあるものの、非製造業では依然として厳しい先行きの不透明さを表していると思います。中小企業の賃金交渉については、日本経団連の調査において、7月7日現在でアップ率は1.44%、433社です。昨年の結果とほぼ横這いで推移をしております。しかし、日本経団連の調査は、各地方経営者協会の主要な中小企業会員を対象としていることに注意をする必要があると思います。
 また、初任給については、大手企業では凍結した企業がほとんどで、平成14年以降、伸び率が0%となっていることにも注意をすべきと考えます。賃金改定状況調査の第4表ですが、産業計でマイナス0.1%というマイナスの結果、去年の結果と横這いの結果になっております。これは端的に厳しい情勢を反映したもので、真摯に受け止めるべきであると考えます。
 もちろん、どのような目安を出すかについては、従来から主張しているように、この指標だけではなくて、前述したように経済全体の状況を踏まえつつ、特に最低賃金の影響を大きく受ける、中小・零細企業に配慮して判断しなければならないと考えます。景気回復が一部の地域、業種、企業に限られ、また中国など海外との競争も一層激しさを増すとともに、原材料費等の上昇を価格転嫁できない中で、中小・零細企業にとっては依然として不安定、かつ厳しい状況にあると言えます。
 したがって、使用者側としては、経済状況の厳しい地域に配慮し、さらに中小・零細企業の存続と雇用維持を第一に考えると、据え置きにとどまらず、引下げの目安を出すことも念頭に置いて、真摯に議論をしていく必要があると考える次第です。

○古郡委員長
 ただいまの労使のそれぞれの見解について、何かご意見、ご質問等ありましたらお願いいたします。

○原川委員
 いまの使用者側の考え方に関連して、資料を出させていただいておりますので、それを説明してよろしいでしょうか。お手元の「平成16年度中小事業所の賃金改定状況(速報値)」ですが、これは毎年、良くても悪くても提出しているものです。私ども中小企業団体中央会が毎年、7月1日を調査時点として、全国で約5万の300人未満の事業所、いわゆる中小企業事業所を対象として、労働関係の全般的な調査をしているわけです。その中に、7月1日現在の賃金改定を調査する項目を入れております。7月1日から昨日の7月8日までに全国で回収された分について、私どものほうに集めて集計をしたものです。その数は47都道府県すべてから集めて4,420事業所ということです。なお、これは対象労働者が常用労働者ということになっていますが、その中にはいわゆる常用パートタイム労働者も含むことになっていますので、申し上げておきたいと思います。
 2枚目ですが、厚生労働省の調査に比べて特徴的なことは、上の表で見ると、引上げが厚生労働省よりは若干少なめに出ているということです。「引き上げた」、あるいは「7月以降に引き上げる予定」を足したものが23.8%です。「引き下げた」、あるいは「7月以降に引き下げる予定」が7.2%あります。これは厚生労働省よりはかなり大きく出ております。それから、「今年は実施しない(凍結)」が41.2%で、ここは厚生労働省のほうが高めに出ております。そのほか「未定」というのが27.8%あります。去年の私どもの同じ調査によると、「未定」は17%でしたので、本年は未定が10ポイントほど大きくなっているということです。
 さらに、9人以下の最低賃金の影響を大きく受ける小規模・零細の場合ですが、同じく3つのことが言えます。1つ目は、引上げが17.5%と、零細の場合には29人以下よりも低くなっているということです。2つ目は、予定を含めて引下げが7.5%あるということです。3点目は、凍結が46.1%、未定が29.0%あるということです。凍結は46.1%で厚生労働省の調査より低くなっているわけですが、私どもの調査の場合には未定が昨年より10ポイント程度多く出ております。これは先行き不安、先行き不透明な中での事業者の不安というのがここに出ているということであろうかと思います。これは実際にいくつか確認をしましたが、そういうことで去年は今年よりも未定が多いというのが特徴です。
 ただし、先ほどの厚生労働省の資料の6頁、参考2にありましたが、事由3、事由4、その他という所で内容を見ると、凍結の方向を示す事業所が多いということです。参考2では、事由3が11.5%、事由4が76.5%ということで、8割以上、このケースでは引下げを強く意識しているデータが出ているということです。これに準じて考えると、未定をどうとるかということで、2番目の下の表の29%は、半分が未定ということでも凍結は6割ぐらいになるということで、8割では7割ぐらいは凍結という動向として読み取れるのではないかと思っております。前年と比べて、不確定要因が大きくなっているところが特徴であるということを強く訴えておきたいと思います。

○古郡委員長
 ただいまの発言は、使用者側の考え方ですか。統計資料の説明でご発言なさいましたか。基本的な考え方ということですか。

○原川委員
 はい。

○古郡委員長
 基本的な考え方はもうよろしいですか。資料の説明ではなくてお願いいたします。

○原川委員
 基本的な考え方という点で、もう1つ申し上げます。今年の目安の審議に際しては、景気認識ということが非常に重要であろうかと思います。先ほど労働者側から、景気が回復している状況について、いろいろと説明がありました。また、使用者側のほうからも、もちろん大企業も中小企業も同じことですが、ごく一部の地域、あるいは業種であるということを申し上げました。特に中小企業のデータをご紹介して、状況が昨年とあまり変わっていない、厳しい状況にあることをお話させていただきたいと思います。
 私どものデータを言う前に、第1回目の資料の23頁に、「中小企業景況調査による業況判断」というのがあります。これは中小企業庁が調べた調査で、サンプルは1万8,000企業余りを対象にしているもので、四半期に一度調査をするものです。この23頁では、平成16年3月の実績は、D.I.値でマイナス32.2ポイント、見通しがマイナス27.2ポイントということで、「良い」から「悪い」を引いた比率はまだ水面よりもはるか下にあるということです。今後の見通しも、まだ3割近くが水面下にあるということです。
 私どものほうで業界ごとに置いた全国に3,000人ほどの調査員がおり、その報告が毎月届くわけです。5月末現在で届いた状況によると、D.I.値で景況がマイナス27.1、売上高がマイナス20.1、収益がマイナス34.3ということで、日銀短観などの数字よりははるかに悪い状況を表す数字となっております。ここは中小企業の現在の実態です。政府統計では、全体的には良くなっているということを言っておりますが、実際には地域、あるいは規模というところで見ると、こういうばらつきがあることを是非ご認識していただきたいと思います。

○池田委員
 同じような話になると思いますが、商工会議所の全国各地の状況ですが、特に地域によってはまだまだ景気が悪いわけです。景気が明るくなってきたということが東京を中心に出ているわけですが、全国各地的には状況は非常に危機的で、先行きに対する不透明感が非常にあるということで、商工会議所のほうでも意見が出ております。それに絡んで賃金改定に関しても、今年は据え置きとか、是非とも引下げも検討していただきたいというところが特に地方から多く出ているわけです。いま多少生活が良くなってきたということはあるのでしょう。これはデフレが続いているということがあるのですが、親会社からのコストダウンの要請というのは相変わらず強いものがありますので、中小・零細企業を取り巻く環境は非常に厳しいということです。
 いま都内のコンビニで、あれだけ利益を出しているコンビニ業界でも1時間800円です。それ以上出したいのですが、それ以上出すと採算が取れない。また、800円以下では人が来ないという状況がありますから、実態賃金としても都内でも800円というのは1つコンビニの採算ラインですので、非常に実態賃金としては低いわけです。これが地方へ行くと、まだまだ最低賃金ぎりぎりでやっている所がたくさんあるわけです。上は利益を出しても、やはり末端の所は最低賃金の重要性が非常にあるわけで、地方なり末端の企業のことをもう少し考えていただきたいと思います。
 やはり何と言っても雇用第一ということで、いちばん末端の中小・零細企業は、そういう所で末端の維持を確保しているわけですので、石の上にも3年と申しますが、日本の経済が末端の消費活動と一般の所まで良い傾向が出てくるまで、もうしばらくかかると思います。最低賃金の考え方が、いままで景気が良くなってきたから一緒に上げようということにしていたのがバブルを招いたと思いますので、その辺のところは慎重に、もう少し日本経済全体が末端まで良くなるまで、もう少し我慢をしていただく必要があるのだろうと思います。
 同時に、もう1つパートタイム労働者の戦力化というのはどこの企業でもやっているわけです。それはパートタイム労働者の優秀な人をどんどん一般社員にしていこうという流れは当然出ているので、そういう最低賃金の所から上がっていって、付加価値がどんどん付いていくわけです。それなりの努力をして能力のある人は、一般社員並みに給料を上げることをやる中で、パートタイム労働者比率が上がると同時に、これからの企業は能力給、少数精鋭というのはどんどん出てくると思います。それはそれなりの賃金形態が出てくると思いますので、最低賃金も含める考えはまだ必要ないのではないかという感じがしております。

○山口委員
 いまの池田委員の話は、すとんと落ちないどころか、いろいろあるのですがそれは置いておきまして、我々も今年の春季生活闘争で、先ほど杉山委員が指摘された大変大きなばらつきを心配していましたし、方針のときにもいろいろな議論をしました。結果的には確かにその状況はある中でも、昨年とは違ってきました。昨今の新聞を見ても、おっしゃっているような論調ではないはずですし、先ほどの5月は4月に比べたらかなりD.I.は悪くなっていますが、昨年の同期と比べたときにはものすごい改善が見られているわけです。
 そういう中で、我々が言いたいのは、確かに昨年、一昨年のこの場での議論、不透明感なり厳しさというのは共通認識をしたと思っているのです。その中で、労務構成を変えながらコスト削減策なり、いろいろな手立てはそれぞれの経営者の皆さんはおやりになったでしょう。そういう中で、実勢賃金は確保して上げていっているという事実と、そこからひき出された人たちが大変な状況になっている。セーフティネットで池田委員が水準の話をしましたが、働いても食べられないような水準では駄目だというのは当たり前だと思うのです。800円がいいのか、1,000円がいいのか、これはいろいろな意見があると思うのですが、少なくともそういう中で適正な均等、均衡を求めた水準がいかにあるか、これは労使間でやればいいと思うのです。
 少なくとも最低賃金というのはセーフティネットですし、確かに経済状況を反映した中で後追い的なもので上げてきた結果、実勢に引っ張られて我々が言うように水準が低いと。去年、一昨年の厳しさの中でも改善されている中で、去年と比べても一昨年と比べても、今年は良くなっている。我々はそれを結果論として見ていますから、そういう点では昨年ときちんと違うような対応は是非お願いをしておきたいと思います。

○川本委員
 いま山口委員のほうから昨年と状況が違うというお話がありましたが、私どもは先ほど杉山委員のほうから見解を表明したとおり、全体的には平均値を見ると良くなってきた事情もあるのですが、実際は非常にばらついているということを申し上げたわけです。最低賃金の性格上、企業、特に地方の中小・零細企業の状況を見ながら、足を引っ張らないということを考えていかなければいけないと考えております。
 市場的に見ると、今日配られた資料でも、第1表では確かに引き上げた所が31.2%はあるわけですが、引下げ、あるいは凍結の比率は去年より少し良くなっていますが、それだけの企業が凍結しているという実態。それから、今後の予定の所は7.9%ですが、そのうち事由3、事由4のように、やはり凍結する方針が多いことを考えると、そちらに目を向けざるを得ないのではないかと思っているわけです。
 また、資料の第3表、引上率の分布ですが、これも分布係数が非常に拡大しているということです。もちろん、上げられる所は上げてもらうことはいいわけで、結構なことですが、ばらつきが拡大していることも事実として捉えて、その上で考えなければいけないのではないかと思っております。
 労働者側委員の方からペーパーを頂戴して、お話もありましたが、1つは生計費の問題、水準の話です。いま山口委員からもお話が出ましたが、これは実は目安に関する全員協議会の中でもいろいろお話を申し上げてきた経緯があります。生計費との関係も、資料等が事務局からも示されたところです。ここであえてあまり言うつもりはありませんが、先ほど労働者側から主張がありました、生計費を大きく下回っているという認識は、私どもとしてはいまのところ持っていないということはお伝え申し上げたいと思います。

○原川委員
 先ほどの説明で言葉足らずではありましたが、景気の認識状況のことで、去年よりは確実に良くなっていることを認めるべきだという趣旨のご発言がありました。先ほどご紹介したD.I.値というのは、例えば収益状況で言うと、前年同期に比べて好転をしているか悪化をしているか。好転しているという率から悪化をしているという率を引いて、その数字が出ているわけです。私どもの調査でいくと、先ほど申し上げたのは34.3ポイント。しかし、中を見ると、昨年同期よりも好転しているというのは9.4%しかありませんで、悪化が43.7%、変わらずというのは46.8%ありますから、差し引きでマイナス34ポイントになるわけで、半分近くが前年よりも悪化していると答えている。そういうところから判断して、昨年と大きく変わる状況ではない、依然として厳しい状況が続いているということを申し上げたかったということです。

○池田委員
 実際に会社の懐がどうなっているかということは、日銀などというのは上のほうしか知らないわけです。実際、いままで2、3年の会社がいかにひどかったかというのは皆さんもご存じのように、ここで少し景況感が出てきたといっても、完全に中小企業が立ち直ったわけではない。まだまだ借金を返して、どうやって過去を清算しようかというのが一様に多いわけです。良くなったからということで、本当に個々の会社の収支が良くなったわけではないので、まだまだバランスシートは赤字の所が多く、過去の清算に追われている企業が多いわけです。ただ、実際に物価が下がりましたから、いまの給与の中で少し生活にゆとりができたことは実態としてあるかもしれないのですが、決して会社の懐が良くなっているわけではないのです。その辺の認識が、経済が良くなってきたから、もう少し人件費を上げられるということは、まだまだその時期ではないのではないか。実際に経営している側からいくと、まだまだ苦しいという実態は是非ともおわかりいただきたいと思います。

○古郡委員長
 ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。私自身は効率の良い審議を望んでいるところですが、長時間労働の問題につながってくると思いますが、かけた時間ではなくて中身で評価されるべきだと常日ごろ思っています。それにしても、今年はちょっと大変で、長く時間がかかりそうに思います。労使の主張がだいぶ懸け離れておりますが、1週間後の目安の審議では、どうぞお互いに歩み寄るという姿勢を持って臨んでいただきたいと強く願うところでございます。まだご意見などありましたら、お願いいたします。
 特にご意見がないようでしたら、本日はこれで終了したいと思います。本日の議事録の署名は、杉山委員と久保委員にお願いいたします。第3回の目安小委員会は、7月16日(金)、午前10時半から茜荘2階の会議室で開催しますので、お願いいたします。本日はお疲れさまでした。



(照会先)
厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


トップへ
審議会議事録  厚生労働省ホームページ