04/06/25 第3回障害者雇用問題研究会議事録              障害者雇用問題研究会(第3回)                    議事録 1 日時   平成16年6月25日(金) 10:00〜12:00 2 場所   経済産業省別館 8階 827号会議室 3 出席者  ○委員 :諏訪座長、北浦委員、倉知委員、高橋委員、舘委員、中村委員、畠山委員、       松矢委員、箕輪委員、輪島委員  ○事務局:太田高齢・障害者雇用対策部長、深田企画課長、谷中障害者雇用対策課長、       今井調査官、赤松課長補佐、平川課長補佐 4 議題  (1) 在宅就業に対する支援策について  (2) 精神障害者に対する雇用率の算定について 5 資料  資料1 在宅就労に対する支援  資料2 精神障害者の雇用をめぐる状況  資料3 精神障害者に対する雇用率の特例適用について  資料4 短時間精神障害者に対する雇用率の特例適用について 6 議事 ○座長  ただ今から、第3回障害者雇用問題研究会を開催いたします。本日は、関委員がご欠 席です。  では、議事に入らせていただきます。本日の議題は、まず「在宅就労に対する支援策 について」、二つ目に「精神障害者に対する雇用率の算定について」ということで、二 題ございます。  はじめに、「在宅就労に対する支援策」について議題といたします。まずは事務局か らご説明をいただき、皆様とご議論したあと、精神障害者に関する議題に移りたいと思 います。  それでは、事務局からご説明をお願いします。 ○事務局(平川課長補佐)  それでは、在宅就労支援策についてご説明をいたします。資料1でございますが、色 刷りの横長の図の書いてある資料でございます。まず、在宅就労支援策につきまして、 「障害者の在宅就業に関する研究会」報告書の中ではどのように位置付けられていたか ということなどについて簡単におさらいをしていきたいと思います。  報告書では、在宅就業につきまして「通勤など移動に制約を抱える障害者にとって多 様な働き方の選択肢が準備されることは、仕事を通じての自己実現、職業的な自立を図 る上で大きな意義を持つ」と述べられており、障害者の在宅就業について支援策を講じ ることは極めて重要であるというご提言をいただいております。  支援策のあり方といたしましては「雇用支援策を基本としつつ、これに多様な働き方 に対するニーズに対応するための支援策を組み合わせることによって、就業機会の拡大 を図ることが適当である」といった考え方の整理がなされており、雇用形態である在宅 勤務、また、仕事を受注して請け負うという在宅就業のそれぞれにつきまして支援策を 講じていくことが必要であるということでございます。  次に、配付しました資料1の図をご説明したいと思います。図は点線でいくつかに分 けられておりますけれども、右側が企業、左側が在宅就労者となっており、それらの間 に両者をつなぐコーディネート機能と書いてございます。それから、図は上下にも分か れてございまして、上の段が企業に雇用されて働く在宅勤務の場合、下が企業から仕事 を請け負って働く在宅就業の場合とに区分されております。  まず、企業の欄を縦に見ますと、上段は在宅勤務の欄でございますので障害者の方を 雇用している企業という意味で、下段の企業は在宅就業を行う障害者の方に対して仕事 を発注する企業という意味になります。  それから、左の在宅就労者も上下に分かれてございまして、どちらも在宅で仕事をさ れていることに変わりありませんけれども、上段は企業に雇用されながら在宅で仕事を されている障害者の方、下段は企業からの仕事を受注して家で仕事をされている方で す。どちらも在宅就労者ということになりますが、そのような違いがあるということで ございます。  そして、コーディネート機能についてでございますが、上段の在宅勤務の部分には 「在宅勤務コーディネーター」というイメージを書いてございます。在宅勤務を導入し ている会社におきましては、在宅で仕事をされている方が円滑に仕事が行えるように支 援を行うためにコーディネーター役を配置しているケースが多いという実情がありまし て、支援の具体的な内容としましては、(1)(マル1)(仕事の分配)、(2)(マル2) (能力開発機会の提供)、(3)(マル3)(相談助言(技術面、健康面等))と、コー ディネート機能のところから左側の在宅就労者の枠に向かって矢印が伸びております。 在宅勤務の場合において(1)(マル1)の「仕事の分配」とはどういう場合かと申しま すと、企業内で在宅でできるような仕事を見つけてきて、それを再構成いたしまして、 障害者の方が在宅で働けるようする、といった役割になるかと思います。(2)(マル2) の「能力開発機会の提供」については、例えば、在宅で働いている方に「e-ラーニン グ」の機会を提供するといったようなことがあろうかと思います。また、(3)(マル3) の「相談助言」ということにつきましては、企業内におきまして、在宅勤務コーディネ ーター役の方が在宅で働いている障害者の方に対して、技術面から健康面などに至るま での諸々の相談を受けて助言あるいは社内的な調整などのコーディネート機能を果たし ているということでございます。「在宅勤務コーディネーター」と一応書いてございま すけれども、現状においては、特段こうした制度があるということではございません。 一般名詞としてこのように表現してございます。  それから、下段の外注で仕事を発注して請け負うところについてですが、まず、発注 の形態といたしまして、右側の企業から左の障害者の方に直接発注をされているケース がございますが、もう一つは、企業から支援団体に一旦発注が行われまして、その支援 団体を経由して障害者の方に仕事が分配されるというケースがございます。そして、支 援団体のコーディネート機能といたしましては、上段と同じように左側の在宅就労者の 枠に向かって矢印が(1)(マル1)、(2)(マル2)、(3)(マル3)と三つございまし て、やはり、「仕事の分配」、「能力開発機会の提供」、「相談助言」という機能が示 してございます。こちらにつきましても在宅勤務の場合と同じようなコーディネート機 能を果たしているということでございます。  この図は、現在こうした形で在宅就労が行われている例を整理したものでございます が、それぞれの部分にどういった支援を行うべきか、あるいは現在行われているか、と いうことが「雇用率適用」、「発注奨励策」、「在宅勤務への支援」、「支援団体の育 成」の四つの囲い文字でございます。  まず、上段右側の「雇用率適用」につきましては、企業で雇用されている障害者の方 は実雇用率に算定されるという当たり前の話ではあるのですが、そういったことが在宅 で働くことを希望する障害者の方の雇用のインセンティブにもなっているということ で、雇用率適用を現在ある支援策の一つと位置付けております。  それから、下段右側の「発注奨励策」でございます。これは前回三案お示しし、ご議 論をいただきました。仕事そのものを増やすという意味での発注奨励策でございまし て、企業側に対する働きかけの部分でございます。  そして、コーディネート機能の部分に対する支援として、上段が「在宅勤務への支援 」、下段が「支援団体の育成」とあり、どちらもコーディネート機能の強化に向けた支 援策でございます。  少し具体的にご説明したいと思います。まず、上の段の在宅勤務への支援ということ で別紙1にまとめてございます。  「在宅勤務コーディネーター(仮称)の配置支援」という標題が付けてございますが、 まず、上の点線の囲みが研究会報告書における在宅勤務の支援について書かれている部 分の引用でございます。二段落目に「障害者の在宅勤務は、事業主にとっては一般の事 業所勤務以上に雇用管理負担が大きいことから、障害者の在宅勤務の雇用管理に当たる 者を配置するに当たっての助成措置を手厚いものとしていくことが考えられる。」とい うご提言をいただいてございます。そのご提言を踏まえた支援策として現在考えている ことでございますけれども、先ほど少しご説明しましたが、企業におきまして、在宅勤 務されている方との日常的な連絡ですとか、社内関係部門や取引先との連絡調整、ある いは、在宅勤務の方の労務管理・業務管理に係る制度の設計等が必要になっておりま す。現在、在宅勤務の方を雇用されている企業では、こうした仕事を担っている方が実 際にいらっしゃるということでございます。このような企業側の負担、つまり、企業が そのようなコーディネーター的な役割を担う方を配置する時に、何らかの支援を行って いく必要があるのではないか、ということでございまして、具体的には、助成金の支給 という方法を考えてございます。  そして、下の方に「在宅勤務コーディネーター」という方がどのような方かというイ メージについて書いてございます。まず、一定の実務経験や研修を終えられた方という こと、さらに、その方が行う業務といたしましては、在宅勤務障害者の労務管理、勤務 時間管理等です。社内で働いている場合であれば勤務時間の管理というのはそれほど難 しくないわけですが、在宅の場合ですと、いつ仕事を始めていつ終えたか、ということ などの確認に非常に手間がかかるといったようなことがございます。ですので、こうし た労務管理、業務管理、業務進捗管理ですとか、業務連絡等を行う。あるいは、在宅勤 務の制度の設計ですとか、就業規則の整備等が別途必要になってくる時に、それを行 う。そういった仕事をするコーディネーター役を企業が配置する時に、それに対する支 援を行うという案でございます。  次に、下段にありました外注の請負という形で働く場合についてのコーディネーター 役に対しての支援ということで、別紙2に「在宅就労支援団体の育成」という標題のも のがございます。上の方の点線枠が研究会報告書の引用でございまして、在宅就労支援 団体は、障害者の方、事業主の方等、双方にとって有益な存在であるということが書か れてございまして、「今後とも在宅就業にノウハウを有する支援団体を育成していく必 要がある。」というご提言をいただいております。  点線枠から矢印が出てございまして、まず、「現状」でございますけれども、実は私 どもで、既に在宅就労支援団体を支援する事業を平成14年度から実施しております。現 在、全国に9団体を委託先として指定いたしております。  そして、その下に「今後の方向性」と書いてございます。私どもといたしましては、 この事業を今後さらに充実・拡充したいと考えておりまして、それに加えて、「バーチ ャル工房(仮称)」に対する支援を実施する予定でございます。「バーチャル工房」とい うのは何かということなのですけれども、資料1に別添図がございます。  まず、中央に四角の枠がございまして、「9団体(重度在宅就労推進事業)」と書いて ございます。この事業の委託先として現在指定されている団体が9つあるということで ございます。それから、周りに楕円で「バーチャル工房」と書いてございます。9団体 以外にも障害者の方の支援、相談・助言ですとか、IT作業の受注分配を行っている支 援団体が各地にございます。それを「バーチャル工房」というふうに名付けまして、そ の育成・支援していこうという事業を考えているものでございます。既に委託・指定し ている9団体とそれ以外のバーチャル工房という団体とはどのように違うのか、という ことですけれども、これは、どちらも在宅就労の障害者を支援する団体という点では同 じでございますし、実際に障害者の方に対する相談・支援ですとか、仕事の受注分配を 行っているという点でも一緒でございますけれども、現在指定されている9団体は、支 援の経験も長く、ノウハウが既にある団体でございますので、これら9団体に各地のバ ーチャル工房に対する技術的な指導、支援をお願いをいたしまして、全体的なレベルア ップを図っていこう、また、全国的にこうした団体を普及させていこうという趣旨のも のでございます。説明は以上でございます。 ○座長  どうもありがとうございました。それでは、ただ今説明のありました在宅就労に対す る支援策に関しまして、ご質問、ご意見がありましたらお願いします。では、輪島委 員、どうぞ。 ○輪島委員  大きく分けて二つでございます。  まず第一点目ですが、労働基準局が今週発表された「仕事と生活の調和に関する検討 会議」報告書がございますけれども、その17ページに「身体障害、知的障害又は精神障 害を有する者が、障害の特性を含めた自らの個性に適った働き方を安心・納得して選択 し、仕事と生活の調和を図りつつ、その人らしさを発揮して積極的に社会に参加してい くことができるようにするという視点も欠かせない。」とありまして、次のところで 「なお、在宅勤務者については、在宅就業について何ら規制を設けないでおくならば、 在宅勤務に係る規制とそれに伴う費用負担の回避を意図した本人の意に反する在宅就業 者への代替が誘発される可能性があり、こうしたことを防ぐため、在宅就業についても 有効な対策を講じていく必要があるとの指摘があった。」という記述がありますが、諏 訪先生や森戸先生もこの検討会議で座長や委員でいらっしゃいましたので、今申し上げ た部分に関連して、どういう議論、どういう方向性があるのか、ということについてご 指摘いただければと思います。  もう一つは、「在宅就業」と「在宅就労」、それから「在宅勤務」という用語があり ますが、ワーディングを整理するために事務局からご説明をお願いします。  それから、テクニカルの面で教えていただきたいのですが、資料1の別紙1の「在宅 勤務コーディネーター」を配置するというのは、企業の中に新たに雇用するという意味 合いなのかどうかということと、「在宅勤務への支援」というのは、先ほど事務局から 「助成金によって」というご説明があったわけですけれども、それはどういう形の助成 金なのか、財源はどう考えているのか、月額いくらという形で支給されることになるの か、それから、多分、雇用管理がずっと続いていくわけですけれども、その助成金とい うのは、どれぐらいの期間のことを考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思 います。  それから、在宅勤務コーディネーターのイメージですけれども、資料1の別紙1に 「実務経験や研修を修了し」との要件が示してありますが、この「や」というのは、 「and」と「or」のどちらで理解すればよいのかについて教えていただきたいと思 います。  また、別紙2の「在宅就労支援団体」ですが、これは既に「重度障害者在宅就労推進 事業」があり一団体当たり年間720万円程度助成しているわけですけれども、その財源 は何なのかということと、在宅就労支援団体が育成されていくことについて、これは以 前申し上げたように、私自身はそれほど制度的にメリットがあるようには思えないので すけれども、本当にこれを育成していくメリットがあるのかどうかということについて 教えていただきたいと思います。以上です。 ○座長  それでは、最初の「仕事と生活の調和に関する検討会議」の記述に関するご質問は後 ほど私からお話しますが、まず、それ以外のご質問に対するご説明を事務局からお願い します。 ○事務局(平川課長補佐)  在宅勤務コーディネーターの具体的な形についてのご質問でございますが、まだ詳細 については詰まってございません。ただ、私どもが今のところ考えてございますのは、 企業の方が新たに雇うという形以外に、今現在、企業でそういうコーディネーター役を 担っている方に対する助成を行うという形もあると考えてございます。それから、財源 でございますけれども、こちらもまだ未定ではありますが、障害者雇用納付金が一つの 案になろうかと考えてございます。期間、月額いくらということについても、未定でご ざいますが、大体の形としましては、現在ある職業コンサルタントに近い形になるので はないかと考えてございます。  それから、在宅就労支援団体を育成するメリットは何かということでございましたけ れども、「障害者の在宅就業に関する研究会」報告書でも書かれてございますように、 障害者の方、事業主の方双方にとって有益な存在であるということは間違いのないとこ ろでございますので、そのような観点から支援していきたいと考えているところでござ います。財源については一般会計で支弁してございます。 ○事務局(赤松課長補佐)  ワーディングについて一言触れさせていただきたいと思います。確かに委員ご指摘の 通り、「在宅就労」であったり、あるいは「在宅勤務」、「在宅就業」、用語の使い方 は混在しているところでございます。基本的な考え方の整理としまして、一般に「就労 」という言葉は広い意味で「労働」、「働くこと」という意味で使われております。こ の場合には、雇用という働き方であったり、自営という働き方であったり、あるいは、 福祉の関係で働く、そういった場合にも「就労」という言葉は使っております。雇用関 係にある場合か否か、トータルな意味で働くことに着目した表現でして、雇用対策基本 計画でも、在宅で働く場合には、この「在宅就労」という表現を使っているところでご ざいます。  一方、「在宅勤務」ですが、こちらは、まさに雇用関係に着目した働き方ということ で、使い方としては一番範囲が狭い用語なのではないかと思っております。  「就業」でございますが、こちらも一般企業で雇用という形で働く場合、それから、 自営という形で働く場合、実態を調べますと混在して使われています。  そこで、本日お出ししました資料につきましては、企業雇用、企業で雇用されて働く 場合を「在宅勤務」という言葉にいたしました。また、非雇用、請負という形で働く場 合には、「在宅就労」という言葉を用いさせていただきますとともに、単に在宅で働く という場合についても「在宅就労」という用語で統一させていただきたいと思います。 ○座長  それでは、輪島委員の一点目の「仕事と生活の調和に関する検討会議」報告書の記述 の部分ですが、検討会議の中では、障害者を含めた全ての働く人々とどう関わるか、男 も女も、身体障害者も高齢者の方も、働き方の多様化、働き方の選択肢の多様化を図ろ うではないか、また、制度がひたすらに一定の選択肢をとらないと、伝統的な選択肢に 従わないと、非常に不利になることがあるというのはよろしくないのではないかという 議論がございました。制度を中立化する、それから、新しい働き方が出てきますと、イ ンフラが整備されておりませんので様々な問題が発生する可能性があります。そういう 意味では、必要な措置をとるべきである。そのようなスタンスで議論したわけですけれ ども、ご質問にありました、雇用と就労以外の働き方の関係では、やはり、雇用という ものの持っている社会経済的な意義というものを考えると同時に、雇用というのは、既 に20世紀、とりわけ日本の場合ですと、戦後様々な制度的なインフラの整備がなされて きましたけれども、雇用に乗らない人たちは、たちまち様々な不都合なり、あるいは、 不利益、日常の不利益があることが多いわけでありまして、そういうことを考えます と、雇用というものから、そのような様々な、現在は制度的な整備が進んでいない部分 に、いたずらに人を誘導するような政策というのは、これもまた中立的ではない、よろ しくないというという意味がそこの趣旨であります。  在宅就労ということをそこに乗せて考えてみた時、何が問題になるかということは、 既に我々も議論したことでありまして、検討会議の場では、「内職詐欺」のような情報 の非対象性からくる問題が多々発生しているということが出されておりまして、そうい った問題を含め、インフラの整備をしていくべきだろう。その書き方については、規制 という言葉を使いますと大変刺激的な言葉のようになりますが、要するに、インフラの 整備をしていくべきではないだろうかということ、労働に限ったインフラの整備、こう いうニュアンスでございます。 ○輪島委員  ありがとうございました。事務局からの説明の件で二つだけ。職業コンサルタントの イメージというご説明なので、現状の職業コンサルタントに係る助成金がどういう状況 になっているのかということを教えていただきたいのと、できれば箕輪委員にフォロー していただきたいと思います。事業主に支給される助成金ならよいのでしょうけれど も、個人に入る助成金ということになりますと、なかなか複雑な問題になるのではない かと思うのですが、現状はどのようになっているのでしょうか。教えていただければと 思います。 ○事務局(赤松課長補佐)  職業コンサルタントにつきましては、納付金に基づく助成金の一つで「重度障害者介 助等助成金」のメニューの一つでございます。この職業コンサルタントを企業が配置し た場合に、配置一人当たり月15万円を支給しております。また、配置に限らず、企業が 委嘱という形をとった場合には、一回につき1万円、年間150万円までといった形で支 援しているところであります。個人にではなく企業に対する助成金でございます。 ○箕輪委員  当社も職業コンサルタントの助成金を古くから受給しています。会社側には営業外収 益という形で入ってきているのですけれども、一つ、これはお願いしたいと思っていた のは、障害者が5人以上とか10人以上そろわないと、この職業コンサルタントの配置に 係る助成金の対象とはならないということがあります。特にこういう在宅就労などをや っていきますと、多分、資料やご説明にあったような想定される様々な仕事は、一人で も発生してきますし、これだけを専門でやらなければいけないというような指摘がある のですけれども、これに付随して、他の社員のこともやりながら、必要に応じて在宅の 方をという関わり方をしていくと思いますし、現実的には、当社もそうなのですけれど も、外からの人を雇い入れるというよりは、中にいる人をその担当者として位置付け て、取り組んでもらっています。その辺りを、現実的に、実際の職場というのは、どん なところなのかをイメージしていただきながら、要件については十分にご配慮いただけ ればありがたいと思いますし、今、職業コンサルタントは、対象が5人から10人といっ たものの、最初の2年間だけは、定年で辞められた方が抜けたりすると、そこを補充し て、新たな対象者、障害を持った方を加えていくことができるのですけれども、3年目 以降は、最初の2年間に雇用した方を固定で継続しなければいけないことになっていま す。そうすると、10年もあるうちには、定年で抜けていく方がかなり多くなってきます ので、9人になってしまったところで、もう助成金の対象ではなくなるということが起 こってしまっております。ですから、非常に使いづらいと言いますか、現実にどの程度 活用されているのか常に疑問を感じていましたので、要望になりますが、その辺りを今 の制度よりもっと使い易く、現実的なものにしていただく方向で検討いただきたいと思 います。 ○座長  それでは、中村委員、どうぞ。 ○中村委員  今の「在宅勤務コーディネーター」の件で、輪島さんの質問で私も考えたのですが、 まず、職業コンサルタントというのは、一部契約と言いますか、その都度というお話も 出ましたけれども、いわゆる直接雇用される、社員の方が入るという場合もある。これ は両方とも一応あるという理解をいたしましたけれども、そもそも、いわゆる職業コン サルタント自身の、いわゆる評価というか、そういう中期的なパフォーマンスをどうい うところでみるかという指標について、どのような総括というか、位置付けをされてい るのか。類似した要件を考えているということであれば、そこは明確にしておく必要が あるのではないかと思います。  それと関連しますが、別紙1の資料で、在宅勤務コーディネーターのイメージで、 「一定の実務経験や研修を修了し」と書いてあって、以下行う業務が書いてあるのです が、ここでは、平たく言うと、実務経験は問わないでもよいという理解でよろしいのか どうか。「や研修」ですから。実際上、労務管理をやっているという部分では、それは 当然在宅の人がいるから労務管理が発生しますが、下のところの、労務管理、雇用制度 の設計及び就業規則の整備というのは、これは多分、在宅就業以前の段階でも入ると思 っていますから、その点で、在宅勤務の場合の要件の関係がどうなのかということにつ いても整理ができていれば少し教えていただきいと思います。 ○事務局(赤松課長補佐)  職業コンサルタントの中・長期的なパフォーマンスをどのように考えているか、とい うご指摘がございました。職業コンサルタントについては、助成金の中では、約2億円 相当の予算措置を講じておりまして、件数については、概ね300件台の後半で推移して いるということで、特に大きな上下変動はございません。ですから、使っていただいて いる企業については、その10年間という期限ではございますけれども、その間、障害者 の雇用のために、引き続き活用していただいているのではないかと理解しているところ でございます。 ○事務局(今井調査官)  在宅勤務コーデイネーターの要件等に関してのご質問でございますけれども、これ は、今申し上げましたように、職業コンサルタントという助成の形をある程度参考にし ながら、これからということになりますが、例えば、実務経験との兼ね合いでいえば、 実務経験の長さの要件を研修である程度補うというような、いくつか組み合わせた要件 の付け方があってもよいのではないかと思っております。  就業規則等につきましては、「障害者の在宅就業に関する研究会」でご検討いただい た際に、在宅勤務に先駆的に取り組まれている沖電気さんなどからもヒアリングを行っ ていますが、そこでは在宅勤務ということで別途特に就業規則は設けておりませんでし たが、いつかそういうことを整備される企業も出てくる場合があるのではないか、在宅 勤務をこのようにやっていく中で、さらに発展した形で、そういう整理を行うというと いうことも、あるいは想定されるのではないかということで、この在宅勤務コーディネ ーターの業務の例として入れた次第です。 ○中村委員  私の聞き方が悪かったかもしれません。資料の中で「在宅勤務コーディネーター(仮 称)のイメージ」ということで、「労務管理」、「業務管理」、「労務管理・雇用管理 制度の設計及び就業規則の整備等」と、○が三つありますけれども、率直に申し上げ て、かなりやる仕事は違いますよ。実際の労務管理、それから、規則上の整備、それか ら、実際の業務管理を含めた部分とあり、職業コンサルタントがそれらを統合的に一括 して何かやるというイメージをされていながら、各バラバラにやってもいいのですよ、 という話をされています。そこは、多分、実際に職場で働いている障害者の環境を整え るという意味では、素人考えですけれども、これは統合的にやる人が非常に重要だと考 えます。バラバラにやっていたのでは、逆に意味はないのではないかと懸念をしたもの ですから、そのイメージのところをお聞きしているのです。 ○事務局(今井調査官)  実際に沖電気等からヒアリングをした場合に、やはり、こういう場合、お一人の方が 担っているような例がありまして、その辺に委員の皆様も非常に重要性というものを注 目されて、こういった人を配置するための支援の必要性をご提言いただいたということ でございます。そういった意を受けて制度をつくっていきたいと思っております。 ○座長  畠山委員、どうぞ。 ○畠山委員  資料1の図を中心に感じたことを少し申し上げたいのですが、仕事の多様化と言いま すか、働き方の選択肢の多様化と言いますか、これを豊富にするというのは、総論とし ては大変よく分かるし、否定するものでもないわけですけれども、この資料1の図で考 えますと、やはり、企業に雇用される、雇用関係につながっていくというのが、やはり 最終的に望ましい姿であって、そのような目的を考えますと、雇用率適用、発注奨励策 等、二つ並べてあるのですが、実は、企業に雇用されて働くという方が極めて単純明快 に雇用率カウントもできていくということになるわけです。  ただ、現実に今、「在宅就労」、「在宅就業」に対する企業の制度がないわけです。 沖電気さんのケースは確かにあるようですけれど、これは普遍的にあるわけではなく て、むしろ、こういう雇用につながるような在宅就労のあり方、それについて、例え ば、就業規則の問題とか、雇用契約の問題だとか、あるいは、労務管理、業務管理、い ろんなところで、雛形的なものが提示されて、企業からみて「なるほど」と言えるよう なものが必要なのだろうと思うのです。  その場合に、いろいろコーディネーターの役割、あるいは、制度のあり方が問題にな っていますが、これは、やはり社員から選任するという仕方が一番自然なのだろうと思 うのです。そうしますと、その人の給料は企業が払うわけです。ところが、在宅就業す る障害者一人のために会社がある意味では社員を一人特別に手当をする必要がある。企 業にとっては、その分負担になるということになりますので、そこに助成金を支給する という意味が出てくるのだろうということもありますし、ITに特化してということで すと、企業によっては、ITに精通した社員がたくさんおりますと、その分野について は解決できるのですが、そうではない企業については、配置した「在宅勤務コーディネ ーター」が、そもそもITのことがあまり分からないということですと、なかなか業務 管理ができないことにもなりますので、そういう意味では、この発注奨励策の下の図の 方、企業から請け負って働く在宅障害者に対する発注奨励という部分へも、ややつなが りがあっていいのではないかと思うのです。そういうコーディネーターのノウハウを高 めていくという意味で、先ほど9団体がバーチャル工房の関係でありましたけれども、 そういうコーディネーターのレベルアップにお役に立つような道を用意するとか、そう いう方がはるかに効果的なのではないかなという気がいたします。  そこで、発注奨励策の下の図の方は、働き方の多様化ということでは大変結構なので すが、費用対効果ということからいきますと、結構この仕組みはお金がかかるような気 がいたします。ですから、なるべくなら、企業が社員の中から「在宅勤務コーディネー ター」を指名して、そして、雇用関係の中で、在宅勤務を運営していく。そうすれば、 雇用率にもダイレクトにつながってくる。それに対して側面から支援していくという方 が、非常に分かり易くてよいのではないかと思います。ただし、これしかないというこ とではなくて、多様化すること自体は意味がないわけではないと思います。 ○座長  質問がいくつかあったように思いますので、事務局より説明をお願いします。 ○事務局(今井調査官)  在宅勤務のパターンについてのモデルということに関して申し上げれば、障害者の在 宅就労については雇用管理マニュアルを作成・配布してございます。また、最近、労働 基準局で在宅勤務に関する法令関係の適用、それから、テレワークのガイドラインが作 成されております。そうしたことを通じて在宅勤務というものを普及していく。その際 に、法令等の適用に関し疑義のあるところは明確にしていくということで取り組んでい るわけでございます。「障害者の在宅就業に関する研究会」の中でも、やはり、在宅で 企業での雇用を希望される方は、その希望がかなうように在宅勤務の普及を進めていく ことが重要ということで、やはり、雇用の促進ということを基本にして、そこに必要に 応じて多様な働き方の形態としての在宅就業というものに支援を行うべきであるという ご提言をいただいているところでございます。 ○座長  倉知委員、どうぞ。 ○倉知委員  別紙2の今後の方向性のことで、私自身整理するという意味で、ちょっとお聞きした いのですが、重度障害者在宅就労推進事業の充実というのが今後の方向性として出てい るのですが、これは、在宅就労コーディネーターというのが出てきまして、先ほど説明 があったのかもしれないのですが、これは、在宅勤務コーディネーターのように、納付 金会計で手当していくものをイメージされているのか、それとも、重度障害者在宅就労 推進事業は一般会計で運営されている事業ですけれども、この一般会計で手当している 分の額をもっと増やした形で配置していくということを考えていらっしゃるのか、その 辺りを教えていただきたいと思います。私自身としては、ここにはあまり納付金は入れ ない方がいいのではないかなという考えはあります。  それと、もう一つ、バーチャル工房の支援事業ですが、これから検討中ということ で、多分これも一般会計だと思うのですけれども、どのぐらいの数のイメージをされて いるのか、その辺りを教えてください。 ○事務局(今井調査官)  重度障害者在宅就労推進事業の充実ということで、これから来年度に向けた概算要求 の過程で検討していきますが、この事業は一般会計でありまして、こういった形で充実 を図るとすれば、それを何か増額していくというような形態が考えられるのではない か。つまり、一般会計ということであります。  それから、バーチャル工房ということに関しましては、これはまだ事業としては実現 していないわけですが、実は昨年度もそうした試みがされております。ですから、これ も、来年度どうするかというのは、これからなのですが、昨年度の例で申し上げます と、20カ所要求しておりました。先々の展望ということで申し上げれば、都道府県、政 令指定都市に1カ所ぐらいというイメージを持っていたということでございます。 ○座長  輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  バーチャル工房については、確か去年要望はしたけれども、落ちてしまったと認識し ています。ですから、実現可能性ということからすると、かなり努力をしていただかな いといけないのではないか、そのことだけ一言申し上げておきます。 ○座長  松矢委員、どうぞ。   ○松矢委員  先ほど、このコーディネーターの経験と研修ということが少し出ておりましたが、研 修の方をどのように考えておられるか少しお伺いしたいと思います。私としては、この 在宅就労支援団体と在宅勤務コーディネーターというのは、それぞれが在宅就労者に対 して行う(1)(マル1)から(3)(マル3)の矢印で示されている機能が同じものになる としたら、在宅就労支援団体の方にも、基本的には、そこには何人かそういう方はいら っしゃると思いますが、そこでの指導者というのは、同じようなコーディネーターとし ての資質というか、能力を持っていなければいけないだろうと思います。そうすると、 これは一体的に考えられますので、そういう人がいなければならない。  さらに、施策全体から考えてみますと、私はこの間の雇用支援施策というのは、就業 と就労、あるいは就業と雇用との境界が段々と連続してきた、つまり、福祉と雇用とい うことが連続するようになってきている、ということが言えるだろうと思います。それ は、短時間雇用とか、今回もその、在宅勤務とか就労も、そこの差を無くしていくと、 限りなく雇用に近い方に移行できるし、また、場合によっては、雇用から就労という か、より福祉の方に近い形への移行が可能であるというような、全体として言えば、多 様な働き方というか、先ほどから出ているようなことを包括して、障害者の働く権利を 守っていくというシステムをつくっていくのだろうと思っているのですけれども、そう なりますと、このコーディネーターの育成というのが、やはり新たな視点から検討され ていかなければいけないのではないかなと思います。  そこで、雇用が基本的な課題ですので、こういうコーディネーターがどういう専門性 とか資質を持ったらいいのかというのは、やはり、かなり企業の方々のノウハウを生か すような形での新たな研修の仕組みとか、あり方というようなことを踏まえて、施策化 していく必要があるのではないかと思っております。  この10年間ぐらい見てみますと、例えば、特例子会社がこのように普及したというの は、特例子会社をつくった会社の方々が、自社ということではなくて、経験を共有化し ようということで、例えば、「らくしょう会」というものを組織して、雇用管理者が集 団になって自ら研修を重ねてきた。そういうノウハウが非常に大きかったと思うので す。ですから、やはり、このコーディネーターをどのように養成していったらよいのか ということについては、少し、新たな視点で考えてみることがあってもよいのではない かと思います。例えば、企業での経験者、OBがたくさん参加する形で、NPOと企業が 連携してコーディネーターを育成していくといったことも考えられるのではないかと思 いますが、事務局としては研修をどのようにイメージされているか、お聞きしたいと思 います。 ○事務局(平川課長補佐)  研修についてですが、「在宅勤務コーディネーター」からまず申しますと、例えば、 今、職業コンサルタントなどの助成金等で研修の要件が課せられているものにつきまし ては、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構で研修が行われておりますので、そうい ったものをイメージをしてございます。  それから、「在宅就労コーディネーター」の方でございますが、確かに、先ほど(1) (マル1)、(2)(マル2)、(3)(マル3)と在宅就労者に対して提供されるコーディ ネート機能については意味的には共通するという面があると申し上げました。もちろ ん、共通する部分もかなりあると思いますが、ただ、具体的な中身の部分でちょっと違 うところもあるのではないかと思います。例えば、仕事の分配と申しましても、社内で の仕事の分配といいますと、会社内で在宅の方にしていただけるような仕事を見つけて くる、あるいは、社内の連絡調整を行う等といったことでございまして、他方、在宅就 労支援団体における仕事の分配と言いますと、まず発注していただく企業を開拓すると ころから行う必要が出て参りますので、企業から仕事を受注して障害者の方に分配する ということでは在宅勤務の場合と共通する部分もありますし、具体的に細かく見ると違 う部分もあると思います。したがいまして、研修のやり方につきましては、共通の部分 とそうでない部分とを勘案しながら、何か工夫をした形で研修の機会も考えなければな らないのではないかという感じがしておりますが、まだ、研修の具体的なイメージは固 まってございません。  なお、既に「重度障害者在宅就労推進事業」において支援団体として指定している9 団体がバーチャル工房を指導するという形になっておりますので、当該9団体がバーチ ャル工房に対する研修を行うという意味合いもあるのではないかと思っております。ま た、9団体の中に配置される在宅就業コーディネーターの育成ということについては、 現時点で一番ノウハウが蓄積されているのが、その9団体の方ということもございまし て、そこの在宅就業コーディネーターの方につきまして、例えば、さらにその方たちよ りも高いスキルやノウハウを持つ人から研修を行うことが必要なのかという考え方も出 てくるわけでございますが、そのような形がとれるかどうかというのは、少し考えてみ なければいけないと思っておりまして、例えば、連絡会議のような形でそれぞれの支援 団体が有する様々なノウハウを相互に交換し合い共有化していくというやり方もあるの ではないかと思っております。 ○座長  では、そろそろ、もう一つの議題に移らないといけないと思っておりますが、最後に 館委員、どうぞ。 ○館委員  本当に基本的なことなのですけども、この在宅就労の仕組みというのは、例えば、こ の在宅勤務に準ずるものとか、あるいは、在宅勤務への移行の機能を持つものとか、そ ういうものではなくて、全く独自の雇用機会を保障する新しい働き方の提供だというよ うに理解していいのでしょうか。 ○事務局(今井調査官)  雇用を基本としつつ、多様な働き方の選択肢の一つを準備する中で、この在宅就業と いうことの必要性が提言されております。在宅就業と在宅勤務との関係でいうと、「障 害者の在宅就業に関する研究会」報告書の内容で申しますと、在宅就業支援団体が発注 企業と付き合っていく中で、障害者を雇用する場合の相談なども受けながら、在宅就業 を行う障害者を在宅勤務という形で企業の雇用に結び付けた例もあるわけでございまし て、このようなことも非常に大事であるということです。逆に、例えば、高齢化等で企 業内での働き方から在宅就労の方にという場合もあるだろうし、あるいは、もう少し積 極的に考えて、キャリア形成を図って、自営で独立していくというようなことも考えら れるというご提言をいただいております。 ○座長  それでは、また報告書等の作成の過程でもこの問題に関するご意見を出していただく 機会もあろうかと思いますので、もう一つの方の議題に移りたいと思います。  議題2ですが、「精神障害者に対する雇用率の算定について」です。この問題につき まして、まず事務局からご説明をいただきたいと思います。 ○事務局(赤松課長補佐)  資料の2をご覧ください。精神障害者の雇用をめぐる状況というデータでございま す。  これは、厚生労働省が5年毎に実施しております障害者雇用実態調査、資料2の上の 表でございますが、これは従業員規模5人以上を対象とした調査でございます。平成5 年度と平成10年度のデータを比べておりますけれども、表を見ていただきますとお分か りの通り、平成5年度におきましては、雇用されている精神障害者の数は23千人でござ いました。こちらの調査における精神障害者の定義は、精神分裂病、そううつ病、てん かんにかかっている者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にある者で、医師の 診断書があり、かつ、本人がその旨を申し出た者という方を対象としております。  一方、右側の平成10年度をご覧ください。こちらの調査では、雇用精神障害者の数は 51千人に増えております。内訳が、採用前精神障害者が38千人、採用後精神障害者が13 千人。若干定義が異なっております。平成7年度に精神保健福祉手帳制度が創設されま した。また、平成9年に障害者雇用促進法の改正を行っておりまして、その際、精神障 害者及び精神障害者である短時間労働者について助成金の対象といたしました。その時 に、従来の三疾患に限定した取扱いから手帳所持者も加えるということにいたしました ので、平成10年度の調査についても、三疾患の方に加えて、手帳所持者であって、症状 が安定し、就労が可能な状態にある者というものが加わった次第でございます。  また、雇用されている障害者の数の全体数でございますが、平成5年度が427千人、 10年度が516千人と、この間、89千人の増加、約21%の増加になっております。  一方で、表にはございませんが、身体障害者、知的障害者の動向についても併せて申 し上げますと、身体障害者の数は344千人から396千人と、52千人の増加、15%の増加に なっております。  一方で、知的障害者の方については、60千人から69千人と、こちらは9千人の増加、 約15%の増加になっております。  また、下の表でございますが、公共職業安定所における精神障害者の職業紹介状況に ついてご説明申し上げます。  障害者の有効求職者数が平成15年度、153,544人である中で、精神障害者については、 そのうちの9.3%を占めておりまして、14,333人、有効求職者全体のうちの約1割という 状況になっております。ご覧いただきますと、手帳制度が創設されました平成7年度と 平成15年度を比べますと、9年間空いていますが、精神障害者の求職者は約4倍に増え ております。  一方で、就職件数、右側をご覧いただきますと、平成15年度の障害者就職件数の総数 が32,885人であるのに対しまして、そのうち、精神障害者の方は2,493人、7.6%です。 そして、この平成7年度と15年度を比べてみますと、約2倍という伸び率でございま す。総じて、身体障害、知的障害の方と比べると、雇用状況は相対的に厳しいというこ とが窺える結果となっております。  2ページをご覧いただきたいと思います。一番上の四角でございますが、平成14年12 月24日に閣議決定されました障害者基本計画というのがありますけれども、平成15年度 を初年度とする政府全体の10カ年計画でございます。それに基づく前期5カ年計画とい う性格をもっている新障害者プランをご紹介しております。  この中身を見ますと、精神障害者の施策に関しまして、条件が整えば退院可能とされ る約72千人の入院患者について、10年のうちに退院、社会復帰を目指すというふうにさ れているところでございます。  その下でございますが、こういった中で、その精神障害者の求職者が今後ますます増 えていくのではないかと、働く機会を提供していく必要性があるのではないかと考えて おりまして、環境整備を図るという要請を様々な方面からいただいているところでござ います。  その一つとして、平成14年4月10日、平成14年4月23日、二つ目、三つ目の四角でご ざいますけれども、障害者雇用促進法の一部改正法案の衆・参附帯決議におきまして、 精神障害者に対する障害者雇用率制度の適用については、雇用支援策の展開を図り、関 係者の理解を得るとともに、人権に配慮した対象者の把握・確認方法の確立等の課題を 早期に解決し、実施されるように努めることという決議をいただいております。  また、最近では、一番下の四角になりますけれども、去る5月28日、障害者基本法の 一部を改正する法律案に対する参議院附帯決議におきまして、精神障害者の雇用率の適 用、復職支援、在宅就労支援を積極的に推進するため、これらについて、法的整備を含 め充実・強化を図ること、という決議をいただきました。  続きまして、資料の3をご覧いただきたいと思います。  上の囲みの中は、「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」、高橋先生に座長を 務めていただきました研究会の報告書を引用したものでございます。  報告書の17ページの記述をそのまま抜いておりますけれども、読み上げますと、「現 在の雇用率制度では精神障害者を雇用しても実雇用率に算定されないが、これを算定す ることとするとともに、納付金制度も身体障害者、知的障害者と同様の取扱いとするこ とにより、採用後精神障害者を含め、精神障害者を雇用している事業主の努力を評価す る形とする必要がある。」、ということでございます。  このことを踏まえまして、真ん中の矢印の下でございますが、精神障害者保健福祉手 帳の所持者を実雇用率に参入いたしますと、真ん中のような数式で表すことができま す。現行の実雇用率の算定式は分母に雇用する常用労働者の数、分子が雇用する身体障 害者及び知的障害者の数となっておりますが、これを改正後のように、分子の方に雇用 する精神障害者の数を加えるということになります。  一方で、そもそも法定雇用率につきましては、身体障害者、それから知的障害者につ きまして、一般の労働者と同じ水準において常用労働者となり得る機会を与えるため に、除外率によって控除した常用労働者の数に対する割合、障害者雇用率を設定しまし て、事業主に障害者雇用率の達成義務を課しているという法定で定めた割合でございま すけれども、こちらについては、研究会報告書でも触れられておりまして、当面は精神 障害者の実雇用率の算定を行い、雇用支援策の充実を進める中で、精神障害者の雇用に 対する企業の理解と雇用管理のノウハウの普及を図ることにより、身体障害者や知的障 害者と同様、雇用義務の対象とする必要がある、とされておりまして、当面は実雇用率 の方に参入するということが書かれております。  続きまして、資料の4をご覧いただきたいと思います。短時間精神障害者に対する雇 用率の特例適用についてでございます。こちらにつきましても、研究会報告書の16ペー ジに記述がございます。  短時間労働者に対する支援としては、中略、精神障害者の雇用率適用を行うに当たっ ても、短時間労働者の雇用に係る特例を設けることが適当であるというふうにされてお ります。このことは、精神障害者については、身体障害者あるいは知的障害者の方と異 なりまして、精神疾患と障害を併せ持っているという特性があるということ。また、長 期的な治療を要するケースがあること。就業面においても、最初から長時間勤務するこ とが困難な場合が多いこと。また、職場の環境に慣れるまでに時間を要すること。この ような特性がございますので、雇用率制度の適用に当たっては、その特性を踏まえた配 慮が必要だということでございます。  このために、週所定労働時間が通常の労働者よりも短い短時間労働者につきましても 雇用率の特例適用の措置というものが考えられます。この場合に、一体どのような割合 で短時間労働者を雇用率カウントするのが適当なのかという問題になるわけですけれど も、現在雇用率の特例措置が講じられている範囲というものを表で見ていただきたいと 思います。  この表では、重度の身体障害者、それから、重度の知的障害者の方について、一人の 障害者を実雇用率の算定上二人分の労働者としてカウントするダブルカウントを行って おります。また、重度の身体障害者、それから、重度の知的障害者である短時間労働者 につきましては、実雇用率の算定上それを一人分としてカウントしているというふう に、重度障害者について特別の配慮が現在なされているところであります。  そこで、今、おひとりの精神障害者を実雇用率の算定上一人分というふうにカウント いたしますと、そのようにした場合に、仮に短時間労働者である精神障害者をこれと同 じような評価をするとした場合にどういうことが起きるかといいますと、一つは、短時 間労働からフルタイム労働への移行を妨げるのではないか。もう一つが、精神障害者に ついて、重度概念というものが位置付けられていない中で、他の障害との均衡の観点か らいかがであろうか。そういった問題が考えられますので、ここでは、短時間労働であ る精神障害の方を0.5人分としてカウントしてはどうかというふうにご提示させていた だいております。  このような措置を講じますと、例えば、就職が困難な、例えば採用前の精神障害者の 方にとって雇用の促進が図られるというメリットがあるのではないか、また、採用後の 精神障害者の方が職場に復帰される際に、フルタイムではなく、短時間労働者という形 で雇用継続を図る可能性があるということもメリットとしてあげられるのではないか、 そのような検討をしたところでございます。  資料につきましては、以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。ただ今のご説明に関しまして、ご質問、ご意見をお願いし ます。北浦委員、どうぞ。 ○北浦委員  私の属している社会経済生産性本部もメンタルヘルスの問題に取り組んでおりまし て、やはり今、精神の健康という問題が企業にとって大変大きなテーマになっていると 思っております。平成10年度の障害者雇用実態調査では、採用後の人数が採用前よりか なり少ない状況ですが、採用後に精神障害を有するに至った人の数は、その後、おそら く、相当増えてきているのではないかと思います。しかも、この調査で把握された雇用 障害者全体数から見ても、精神障害者の割合が平成10年度で既に1割に達しておりまし て、そのことからしても、障害者の雇用問題を考える時に、企業にとって精神障害者の 雇用が非常に切実な問題になってきているということが分かるのではないかと思いま す。  一方で、これから新たに雇用に就かれようという有効求職者の方も激増しております が、平成7年度における状況と平成15年度を見比べますと、明らかに就職率が全体とし て下がっているということが懸念されるところとなっております。全体的に大変厳しい 状況であるわけですが、それだけ求職者が多くなっている中で、就職率が下がっている ということについての担保は必要であると思います。ですから、こうした外からの就職 の困難状況を解決することと、もう一つ大きいのは、特に企業の中で増えていってしま うという問題がありますので、その方々の適切な復職支援ということで、いかに雇用を 継続していくかということ、その雇用の安定という観点からも、この問題は考えていく べきではないかと思います。  加えて、平成19年度までに、72千人もの精神障害者を社会復帰させていくという計画 があることを踏まえますと、今、精神障害者を実雇用率に算定していくという考え方は 非常に妥当な選択だと思っております。  もう一つ、短時間の問題についてですが、事務局のご説明では、精神障害者の特性を 踏まえた配慮として、仕事に慣れるまでに時間を要するなどのご指摘がございますが、 今の就業機会そのものが全体として短時間勤務のウェイトが高くなっております。産業 や職業によっては、かなり短時間勤務のウェイトが増えているものも多く、そういった 産業や職業を働き方の選択肢として選ぶという方も多くなってきていると思うのです。 ですから、一方では、障害の特性に着目した配慮という雇用管理上の問題もございます けれども、他方においては、働く側の立場から、積極的に短時間勤務を選んでいくとい うこともあろうかと思いますので、その両面から、この短時間適用というものの必要性 を考えていったらよいのではないかと思っております。  ただ、ハーフカウントというのは、おそらく初めての試みではないかと思いますの で、テクニカルな問題がいろいろある。ご説明いただいた理由はもっともだと思ってい るのですが、その場合に、例えば、他の障害の方とのバランスをどうするか、といった ようなところも考慮する必要があるのではないかと思っております。  この表を見ますと、バー(−)になっているところをどう考えていくのか。その辺は 課題かなと思っております。あと、関連して、やはりこれには相当支援策が必要だろう と思っておりますが、今回の議論ではないと思っておりますので、その点だけ申し上げ ておきます。 ○座長  他にいかがですか。箕輪委員、どうぞ。 ○箕輪委員  今のことに関連して私も感じているのですけれども、職業紹介状況に示されているニ ーズの中には、もともと企業に雇用されていた方が離職して求職者となったケースが非 常に多く含まれていると思いますし、実際に当グループの中でも、現在休職しており、 復職できるかどうかというような懸案の対象になっている者が少なくない状態にありま す。ですから、新たに雇い入れるという場合も当然あると思いますけれども、まずは、 こうした在職者の方を企業側が離職をさせなくて済むような復職支援策の厚みというも のを検討していただく必要があるのではないかと思っています。この研究会に関わるよ うになってから、改めて精神障害、会社でいうと、手帳を持っていなくても、精神障害 者に当たるだろうと思われるような繰り返し何年も症状が出ている人もいれば、まだ精 神疾患の状態の方など様々ですが、職場では全く同じような労務管理が発生しているの です。そういった中で、やはり、発症の理由にもよるのですけれども、復職した場合 に、最初からずうっと短時間ではなくて、ある一定の期間だけ短時間で働くというケー スもありますし、また、全く簡単な仕事ばかりということではなく、ある程度責任を与 えつつ、ただし、ゆったりとした環境づくりには月次のものとかはなかなか与え難いの で、長期的な納期の仕事を持ってきたりなど、職場の中では、こうした調整を行うこと に非常に苦戦しているだろうということがありますので、そういった部分での離職しな いための支援方策については、たくさんの課題があると思います。その辺りの問題を併 せて検討していっていただくとありがたいと思っております。 ○座長  それでは、森戸委員、どうぞ。 ○森戸委員  資料4の短時間についての説明のところなのですが、最初に勉強不足で恐縮なのです けれども、20時間と30時間とでそんなに違うのかということをまず思ったわけです。雇 用保険の40時間が基本で、4分の3とか、短時間被保険者とか、そういうものに乗っか っているという話を確か聞いたのですが、ただ、法定雇用率を出すときに、全障害者数 とか求職者数などの実態の数字から一定の計算をして設定しているとすると、切れ目の 20時間とか30時間というのも、たまたまある今の制度に乗るというのはもちろん一番楽 なのでしょうけれども、そういうのよりも、本当は、短時間勤務の障害者の、精神障害 者なり他の障害者の短時間勤務の実態とか、どのぐらいの時間数の人が多いのかという ことを調査・検討して、短時間の範囲の基準を決めるべきなのではないかと。私は知ら ないだけなのかもしれませんけれども、あるいは、そのような仕方で決まっているかも しれません。質問としては、ともかく、切れ目の時間のところを20時間、30時間という ところで切っているのはどういう理由になるのか教えていただければと思います。以上 です。 ○座長  それでは、事務局からお答え願います。 ○事務局(今井調査官)  20時間、30時間の切れ目のお話でありますが、この雇用率の適用に当たっては、雇用 保険の制度に乗っかった形で適用しておりまして、雇用保険の短時間被保険者扱いと、 それから、それ以外のいわゆる一般といいましょうか、そうではないところの切れ目 で、30時間という線が引かれているところでございます。  それぞれ、今ご指摘があったような、4分の3の取扱いとの関係とか、やはり若干就 労のステージとしての質の差異があると思います。  実態をよく踏まえた上でとのご指摘もございましたので、その点はよく調べて、また ご提示をしたいと思います。 ○座長  では、輪島委員、お願いします。 ○輪島委員  それでは、私どもの基本的な考え方をお話しさせていただきたいと思います。  まず、現在検討されている精神障害のある方を雇用率の算定の基礎に加える、もしく は今提示をされている方法を適用していくという考え方の基本的な流れについては、全 く否定するものではございません。ですから、高橋先生におまとめいただいた「精神障 害者の雇用の促進等に関する研究会」報告書における方向性については、これは是であ ると思っております。  ただし、その方向性を実現するためには、まだ残されている課題がかなり多い。私ど もとしては、それをある程度解消した上でないと、ということを申し上げたいと思って おります。  特に、精神障害者の雇用の促進に関する議論というのは、ここ数年間にも何回か行わ れたわけですけれども、そこでクリアになったことは、箕輪委員もご指摘になった在職 の問題、それから、新規雇用の問題とがあり、先ほど北浦委員もご指摘のあった就職率 の低下というのは、労働市場とリンクしているわけなので、精神障害者だけが相対的に 下がっているというようなことではないのではないかとも思っているわけです。  まず、在職の問題ですけれども、やはり職場復帰のための支援プログラムというもの がまだ明確に企業の中に確立されていないのではないでしょうか。つまり、休職してい る人がある時期に診断書をもって職場復帰をするわけですけれども、原職復帰をした り、職場の環境が変わったり、又は、現在の大変厳しい経済環境や企業の組織の再編等 々によって、せっかく職場に復帰したけれどもなかなか定着をしていかないという問題 があって、企業の中でも、そこに大変大きな課題を抱えている現状である、ということ でございます。  それから、もう一つ、これは資料4とも関連するのかもしれませんが、新規雇用に関 しては、やはり短時間勤務というのが中心になってくるのではないかなということ。そ れから、森戸委員ご指摘のように、短時間勤務ということになると、この20時間という ハードルはかなり高い、おそらくは、就労支援のプログラムに乗って最初の段階での働 ける条件として1日2時間を週5日間とか1日2時間を週3日間とかというようなとこ ろから入りますと、週当たりの労働時間は10時間がせいぜいのところなのではないか、 ということです。そうしますと、雇用率に関係してくるところまでにはなかなか引き上 がってこないわけでありまして、今回事務局から示されている雇用率の考え方からする と、10時間程度の短時間しか働くことができない人に雇用の場の提供をしていくような インセンティブにどれだけなるのかということも、なかなか難しいのではないかと思っ ております。  それから、資料2に、衆議院とか参議院の附帯決議がありますが、ここのところに、 人権に配慮した対象者の把握・確認方法ということがありますが、人権に配慮するとい いながら企業が労務管理上において精神保健福祉手帳を取得している人を把握すること はなかなか難しいだろうと思っています。それは、第一回目に箕輪さんもご指摘になっ た点だと思いますけれども、報告書の中では、企業に対して参考になるガイドラインを 示すということになっていますが、企業側としては心配な点があると思っております。  何度も繰り返しますが、こういう方向性というのはあり得べき問題だと思いますが、 しかしながら、現状で企業の直面する問題というものががあるのではないかと思ってい るところでございます。  それから、テクニカルにいくつか質問をさせていただきたいと思います。資料3のと ころで、現行の法定雇用率は1.8%のままでいきますということが書いてありますが、 将来的に、精神障害者の方が法定雇用率の算定の基礎に入った時に、何%になるのかと いう試算はお示しをいただきたいと思っております。法定雇用率の算定基礎に実際に入 った時に何%になるのか何も分からずにその方向に踏み込むというのは、なかなか厳し いと思っております。  それから、資料4の精神障害者のハーフカウントのところでございますけれども、こ れは意見ですが、雇用奨励策という観点からすれば、できれば20時間のところも「△」 ではなくて「○」にしていただいて、企業のインセンティブになるような形にするべき ではないかというふうに考えております。とりあえず、以上でございます。 ○座長  それでは、質問にわたる部分がありましたので、事務局からお願いいたします。 ○事務局(今井調査官)  まず法定雇用率に仮に算定をした場合の値ということでございますが、昨年、精神障 害者の社会復帰サービスニーズ調査というものが行われました。これは全国の外来患者 を対象に、7千人ぐらいの方を対象に行った大規模な調査であります。それと、定例的 に行われております指定統計の患者調査というものがあります。それを組み合わせて、 その中に就労の有無とか、手帳の所持の有無といったようなものの質問をきちっとした 形でお聞きしまして、推計した結果で申し上げますと、法定雇用率に入れた場合の影響 というのは、最大で2.01%です。最大でそういった値が出ております。  それから、短時間の算定のことについてでございますが、これは先ほどもご説明申し 上げましたように、精神の障害特性に鑑みますと、やはり短時間の雇用に係る特例を設 けることが適当であるというご提言をいただいております。そうした中で、現在、特例 適用という段階において、どのようなことができるかということを検討したわけでござ います。  障害者雇用促進法の中にもやはり短時間労働者が常用であることを希望した場合に は、事業主としてそれが実現するように配慮するというようなことがありまして、30時 間以上と20時間以上30時間未満というところについては、やはりステップアップするよ うな工夫が必要なのではないかという観点から、0.5という案でお示しさせていただい ているところでございます。以上です。 ○座長 はい。倉知委員、どうぞ。 ○倉知委員  この研究会の基本的なスタンスについて確認しておきたいと思います。私は、輪島委 員に別に喧嘩を売っているわけではないのですが、この研究会の前にやった「精神障害 者の雇用の促進等に関する研究会」の中で、精神障害者を実雇用率に算定するという方 向性を決めたわけです。それと、短時間労働者の雇用に係る特例を設けることが適当だ と決めたわけで、それをどう具体化していくのかというところがこの研究会の役割なの ではないかと思っています。けれども、先ほどの輪島委員の意見をお聞きしていて引っ かかってしまったものですから、その内容をまたここで検討するのかなと思ったわけで す。  そうなってくると、この前の「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」で決めた こと、それから、もう一つ前にも精神障害者の研究会をやっていますが、そこでは時期 尚早という結論が出て、今回は時期尚早ではなくやるということが決まったわけで、そ こでこの障害者雇用問題研究会で、また時期尚早という言葉が入ってくると、「何だっ たんだろうな。」という感じがするのです。その辺り、この研究会は、前に出た報告書 の具体的なところをどうするのかというところを議論していかないと、何かどんどん前 後していってしまうような気がしているのです。それを一つ、整理をしておきたいと思 っております。  それと、先ほどの輪島委員のご発言に関してなのですが、職場復帰プログラムがない と雇用率算定が難しいのではないかという指摘は違うのではないかと思います。算定し ない理由ではなく、逆にプラスになるのではないかと思っているのですけれども。要す るに、これがないままで雇用率に算定することが、今よりもマイナスではないというこ とです。もちろん、これから職場復帰プログラムをどんどんやっていかなければいけな いのですが、だからといって、これができない限り実雇用率に算定しないというのは、 私は違うのではないかなという気がしています。  それから、20時間に達しない人がたくさんいるのではないかというご指摘は私も同意 見です。私が以前現場にいたときの実感として、週当たり20時間から30時間の人という のは結構たくさん雇用されておられたのですが、この人たちをまず救うというやり方が 考えられないといけないのではないかなということとともに、やはり、20時間未満の人 のことも当然考えないといけないわけで、例えば、20時間未満の人が何人かいたら、足 して20時間以上になったらカウントしていくという方策も、当然今後は考えていってよ いのではないかという気がしています。  それから、精神保健福祉手帳を取ることのインセンティブということも、まさに輪島 委員のおっしゃる通りだろうと思っています。ただ、実雇用率に算定することがメリッ トになって手帳を取っていくということも否定できないと思っているのです。手帳が増 えないと算定されないのではなくて、算定されることによって逆に手帳取得者が増えて いくインセンティブになっていくのではないかと思っています。以上です。 ○座長  箕輪委員、どうぞ。 ○箕輪委員  今のご議論と関連しているのですが、実際に何人かの障害者を募集した時に、精神障 害保健福祉手帳を持った方の応募があったということをどこかでお話ししたかもしれま せん。そのご本人は、就職に有利だと思ってあえて取ってオープンにしている、という ことをおっしゃっていました。実際にはまだ実雇用率のカウントにはならないので、障 害者枠では採れなかったのですけれども、そういう方がまた増えてきて、実際能力のあ る方が雇われていけばよいと思っています。  にわか知識で申し訳ないのですが、障害者雇用促進法に則って企業が法定雇用率を達 成するために、また、この精神障害の分野にも取り組んでいくと思うのですが、他の身 体障害者や知的障害者と大きく違うところは、障害を確認するための手帳が2年毎に見 直されて、精神障害から精神疾患にまた変わることになった時に、雇用率に関係なくな る人が出てくる可能性があるわけです。働いてくれればそれでよいという企業ももちろ ん多くあるとは思うのですが、雇用率のために一生懸命取り組んで、そこの時点で、ま た雇用率が落ちたから外から指導が入ったために、その人には残念ながら辞めていただ いて、他の手帳を持った人を雇い入れるなどという例が出ないとは言い切れないと思う のです。精神障害者の場合の確認手段となる精神保健福祉手帳というのはそのような特 徴があるので、それを十分に理解した上で雇い入れていかないと、後から気づいて今申 し上げたようなトラブルが起こってくるのではないかという心配をしています。そのよ うなことも表にどんどん出していただいた上で、理解を促した方がよいのではないかと 思います。 ○座長  高橋委員、どうぞ。 ○高橋委員  ただ今箕輪委員が指摘された点ですが、精神保健福祉手帳の2年毎の見直しで、障害 が疾患になって手帳が取り消されてしまうことがあるのではないかということですけれ ども、実際には、そういうことはあり得ないだろうと思います。と申しますのは、やは り疾患の状態も、障害と同じように、生活上の困難さというのは伴うわけで、実際、そ この時点で、今まである程度症状が安定していたけれども、妄想や幻覚が起こってき た、そのために、また治療を強力にやらないといけないというようになった場合に、主 治医が、だからといって手帳をストップするということは絶対しないと思います。むし ろ、その障害が続いている、その辺が非常に精神障害者の難しい点であり、また特性で もあると思うのですけれども、障害と疾病が表裏一体の関係であるという点が特徴なの でありまして、疾患という状態も一種の障害とみてよいのではないかと思います。すな わち、障害というものを、生活する上での困難さというように考えればです。  ということから、見直しをして、病気が重くなったために、疾患が表面化したために 手帳を取り消すということは、まずないだろうと思います。手帳が取り消される場合 は、むしろ障害が改善されて、生活上の困難さがかなり軽減して、もうその必要がない のではないかということで、手帳が取り消されるということはあると思いますけれど も、前者の場合は、まず実際には考えられない、そのようにご理解いただきたいと思い ます。 ○座長  輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  前回の「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」の中で私自身も委員となり1年 半議論をしてきました。その中で、一貫して私が申し上げてきたことが、倉知委員に十 分ご理解いただけていないということは大変残念に思っていますが、そこは、私どもの ご説明の仕方が悪いのかとも思っております。ただ、基本的に、このテーマは、踏み出 すのに勇気が要ると思っているわけでして、身体障害者もしくは知的障害者の方々とい うのは、基本的には企業の外にいて、外から中に対して、1.8%雇用しなさいと障害者雇 用促進法上言われていて、実雇用率が1.48%でバランスしていると申しますか、押し返 しているのではないかと思います。ただ、今回の精神障害者の問題の性質として重要な ことは、先ほどご指摘があったように、既に企業の中にいらっしゃる方も対象としてい くということであるわけです。研究会の中でも、10社のヒアリングをしましたけれど も、その問題をクリアしなければ新規雇用などとても考えられない、という反応が8社 あったように、企業にとっては、在職の問題をクリアにしなければ新規雇用は考えられ ないわけです。そういう現実があるにも関わらず、「えいや」とやってみたらどうか と、10何人いらっしゃった委員の皆さんがおっしゃっていたと思っておりまして、そこ が私どもと立場が違うのかもしれません。 ○座長  高橋委員、どうぞ。 ○高橋委員  「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」にお出になっていらっしゃらない先生 方が多数おられますので、ご存知かとは思いますけれども、全体的な雰囲気を今の輪島 委員と倉知委員の議論も含めてお話ししたいと思います。  私の理解では、その研究会が始まった時に、一番大きかったのが在職の精神障害者の 問題であって、そういう障害者を抱えた企業の不安とか負担とか、そういうものをいか にして解消するかということが一番大きな議論であったと思います。  19人の委員がおられ、私は座長として、一人ひとりにご意見を伺ったのですけれど も、そのうち3人は、もう雇用率に踏み切るべきだという意見でした。それから、あと のほとんどの人が、本来はそうであるべきだけれども、やはりまだ解決すべき課題が多 いということで、特例を設けて実雇用率にカウントするのが順当ではないかということ でした。それで、実雇用率にカウントするということが、最初にお話しした、企業側の 不安を取り除くことにつながるのではないかということが、おおよその理解だったと思 います。  例えば、社会復帰の問題、離職してまた就職する、あるいは、疾患のために職を離れ ると、そういったものへの対策もそうですし、それから、実際に在職しながら働く機能 を失っているような状況、そのようなことが非常に企業にとっての負担になるわけです けれども、それが障害者としてカウントされれば、それだけ、かなり負担感は減るので はないか、それから、さらにリワークプログラムなどが進んで、そういう障害者がどん どん職場に復帰すれば、今度は職場での障害者に対する対応のノウハウも蓄積されるの ではないか、さらに、企業とその外側のサポーター、産業医も含めていろいろな、主に 精神科医あるいは障害者職業カウンセラー等が中心になると思いますが、そういうもの との連携も行えると。そういった、いろいろな支援策を議論しましたけれども、そうい うものがスタートする。そして、さらに充実する一つのきっかけになるのではないか と。そういうことをやっていけば、企業が抱えている問題のある部分は解決するし、そ ういうことが進まなければ、いつまでも同じ問題が残ってしまう。  ですから、結論として、ここで雇用率にカウントするという特例を設けることによっ て、企業の負担感、不安感、それの解消につながるのではないか。そういうことで、研 究会は結論を出したように、私は理解をしているのです。ですから、今、輪島委員が、 課題が多すぎるからまだ時期尚早といった意味でご意見を言われたのであれば、それを 解決するためにも一歩進まないといけないという、そういうスタンスがあったのだろう と思います。 ○座長  館委員、どうぞ。 ○館委員  私は精神の方の研究会のメンバーだったのですけれども、在職者、新規に入っていっ た方も含めて、働いていらっしゃれば在職者なのですけれども、そういう方々というの は、比率からいうと、基本的に小さい企業が多いと思うのですね。そういう問題を小さ い企業だけに全部というか、多くをもっていただいていてよいのか、やはり、大きな企 業も一緒に問題を解決していくべきだろうという気がします。  それから、短時間勤務ですけれども、確かに先ほど輪島委員がおっしゃった10時間と いうのは要求が高いものなのですが、20時間以上で働ける人はたくさんいらっしゃるん ですね。ただし、今その対象になっていないために、隠して就職せざるを得ない。そう しますと、いろんな雇用管理上の配慮がないものですから、そこでドロップアウトせざ るを得ない。やはり、そういう状況をこれ以上放置しておけないのではないかなという 気がします。それであっても、先ほどの統計から見ますと、かなりの数の方が就職され ているという現実を、やはり直視すべきだろうと思います。  それから、10時間程度の方は、将来的には、グループ就労といった形態の働き方とい うものを雇用体系の中にどう入れていくかという議論が、多分出てくるのではないかな と思います。 ○座長  先に箕輪委員、それから北浦委員という順でお願いします。 ○箕輪委員  会社がこういったいろいろな障害の方を雇い入れる時に不安に思うのは、やはり未知 のものというか、分からないから不安なわけです。これまでも、身体障害者から知的障 害者が適用になった時に、今では知的障害者の特例子会社が増えてきていますけれど も、当社に年間を通じて多く訪れる企業の人事の方というのは、知的障害者に対して、 ものすごく不安とか、働ける人なのかどうかということを思っている方がまだまだ多い のです。  それは何かというと、世の中に普及している雇用に関するマニュアルに、否定的とい うか、不安を抱かせるような事柄が目立つような形で載っているものが多いのです。も ちろん、良い面ばかりを言っていては後から「えっ」ということになってしまうのです が、こういうことはできないから、こうしてくれとか、こういうことで会社は忍耐しな ければいけない、といったようなことが、つらつらと書いてあるものが多い。最近出て きているものの中には、雇用の好事例というか、例えば、知的の方も100人いたら100人 パターンがあると思うのですけれども、すごく集中力が持続して、同じような、例えば ベタ打ちの入力だとか、そういったことにすごく強かったり、こだわりが強いために、 入力後のチェックとか、そういうものがすごく正確にできて一般の方よりも能力を発揮 しているパターンとかということが表にどんどん出てきたために、そうであれば、仕事 をある程度選んで配置していけば、かなり活躍していただける場があるのではないかと 気づいて、雇用が進んできた部分もあるかと思うのです。  精神障害の方も、私自身もほとんど分からない。今、社内に抱えている方のことは分 かるのですが、もしも短時間で、朝が強いとか夜が強いとか、何かこういう時間帯なら ばこういう能力を発揮するという、今までの好事例みたいなものがどんどん表に出てい けば雇い入れを検討できるようになる。職種も、例えば、会社によっては食堂みたいな ところ、お弁当屋さんみたいなところで、朝だけを短時間で欲しいのだけどといったこ とがありますが、そのような条件で募集してもうまくいかないというようなお話も聞き ますので、そういう条件に対応できる人が多くいるならば、そういう方を紹介していた だく。雇用率を適用していくのと併せて、精神障害の手帳を持っている方の雇用の好事 例、具体的な働き方や職種というものを、もう少し表に出していただくと、それならば 雇用も検討しましょうということも出てくる。これは、復職の場合も同じだと思うので すけれども、具体的なイメージがあまりにも見えなさすぎるために、企業としては不安 が募る一方です。  精神障害者を実雇用率にカウントするということが制度化されることになれば、ガイ ドラインや雇用マニュアルが出されてくると思うのですけれども、障害による制限や配 慮ばかりを強調したものではなくて、それと併せて、企業が安心できるような部分を出 していっていただければよいと思います。 ○座長  それでは、北浦委員、お願いします。 ○北浦委員  確かに企業の立場にたってみると、いろんな不安感があることは事実だろうと思いま すし、その点では理解できるのですが、法定雇用率として決めるということでの議論と 実雇用率に算定するという場合の議論とは、分けて考えた方がよいのではないかという 気がします。  先ほど高橋委員がおっしゃったこと、あるいは、「精神障害者の雇用の促進等に関す る研究会」報告書の中でも書かれているように、事業主の努力を評価するという意味で の奨励策としての意味合い、これは、在宅就業の場合も実は雇用率をどう手段化するか ということで議論があったのと同じだろうと思いますが、むしろ、そういった奨励策的 なものをとらないと雇用の場が広がらないというスタンスから出ている議論と、本来事 業主が雇うべきなのだという議論とはやはり分けて考えないといけないのではないでし ょうか。確かに、先ほど倉知委員がおっしゃったように、プラスなのかマイナスなのか という議論の時に、やはり、プラスの要素の方を評価していく、そこのスタンスは重要 なのだろうと思います。  それから、10時間の問題について、二つの方向があるのだろうと思います。グループ 就労の方向もあるし、あるいは、20時間に至る過渡期として考える場合もあると思うの ですが、その部分についてどう扱うかは、私はもう少し議論した方がよいだろうと思い ます。私自身は、雇用率の適用に関してこの20時間というバーを下げるというのは逆に 問題なのではないかと思います。ただ、それに満たない形で働くことが当面望ましい人 の問題を放置しておいてよいのかというと、おっしゃる通り問題があるわけでありまし て、それはグループ就労的なところで解決をしていくのか、あるいは、プロセスであれ ば、いかに円滑に20時間に移行していくのかということになるかと思います。その辺り の整理も、今回の提案のような考えが出てくれば、見えてくるのではないかという感じ はいたします。  いずれにしても、私はこのように資料No.4のような表が出来上がるということにおい て、意識として、やはり障害者の範疇というものを、明らかに精神障害者にもターゲッ トを置いて雇用管理しなければいけない、あるいは、障害者というのは、今までの知的 障害と身体障害だけではないのだという意識を事業主に十分持っていただくという意味 においても、私はこの効果が非常に大きいと思うわけです。だからこそ、障害者の範囲 というのは、少しずつ広げてきた経緯があったのだろうと思いますので、その意味で、 今回のような提案は是非前向きに受け止めていったらよいのではないかなと思っていま す。 ○座長  最初に松矢委員、それから、畠山委員の順でご発言をお願いします。 ○松矢委員  輪島委員から原則論的な点の指摘がありますけれども、私は前にも述べさせていただ いているように、とにかく現在、精神障害者を雇用している事業主、特に写真の貼付の ことをめぐって一つの進展が見えたように、本人の方々が積極的に働く領域に参加する という意味で、やはりオープンにしていくということが重要だろうと思います。それ が、就職後に発病した方々も、病気を持ちながら働いていくところに、人にインパクト を与えるのではないかというような趣旨で賛成したわけですが、特にそういう好事例が 増えていくということを期待しているわけです。  しかし、資料4のように整理していただいたのですが、これは考え方としてはよく分 かるのですけれども、やはり、精神障害者の特性ということを考えると、実際に30時間 以上だけど、病状との関係で20〜30時間に落ちていく。場合によっては10時間というこ ともあるかもしれません。そういうことでは、身体障害者、知的障害者の場合と違っ て、個別支援計画が伴っていた方がいいのではないでしょうか。つまり、30時間でカウ ントされていて、しかし、今の段階では実際20時間ぐらいにして調整しようではないか というようなことが、実態としてはおそらく出てくるのではないかと思われます。その 辺のところの判断や調整ということが事業主には負担にもなります。ですから、精神障 害者の場合には、そのための個別支援計画ということをより多く考えていく必要がある のではないかと思います。先ほど高橋委員もおっしゃったように、精神障害者の場合 は、病気との関係で健康管理はどうしても続いていくわけです。また、うつ病の場合な どでは治るということもあるかもしれませんが、逆に再発するということもあるわけで す。そういうことを考えると、これからずっと精神障害者の雇用ということを考える場 合には、そういう個別支援計画、特に、健康管理の面の問題をめぐってはあるというこ とを、しっかり踏まえて、この表を見ていく必要があるのではないかということが、一 つ感じているところです。それから、実際、こんなふうに切り分けられるかどうか、と いう懸念はあります。そういうことを一応述べておきます。 ○座長  先に畠山委員、その後、輪島委員にご発言をお願いします。 ○畠山委員  先ほども個別にはお話が出ていますけれども、私は新規の雇用と在職者ということを 考えた時に、やはりこれはきちんと考えないといけない。つまり、この問題は延ばす必 要もないわけでして、ここまで煮詰まってきたわけですので、具体的にどうするかとい うことがこれからの大きな進め方になるだろうと思います。  ただ、現実には、先ほど事業所ヒアリングの件がございましたが、確かにヒアリング の結果をみますと、現に精神障害を持った方を抱えている企業というのは、新規雇用の 意欲はほとんどないということがあります。やはり、それだけ企業にとっては負担があ るという受け止め方なのです。だから採りたくないということにつながってしまうので す。企業規模というのもある程度関係あると思いますが、大企業ですと、とかく在職障 害の方が多いと言われていますし、事実そうだと思うのです。そういう人たちが現にど ういう状況かといいますと、たいていは長く休職しているわけです。そして、その休職 中の人がしていた仕事はなくならないわけですから、結局、それを誰か他の人がやらな ければいけない。新しい人がやるのか、あるいは他の人が残業でカバーするのか。やり 方はいろいろでしょうけれども、ともかく仕事はやらなければいけない。一方で、休職 している人には給料は払っていかなければいけないということですから、企業にとって は明らかに負担になってくるわけです。  では、辞めてもらいたいかというと、そう簡単にはいきませんので、当然復職して欲 しいということなのですが、あまり長く続くともう限界ということで、2年とか3年経 つと、残念ながらもうお辞めいただくという選択をせざるを得ない。ですから、現実に は、そういう苦労を抱えているということがある中で、なかなか新規雇用は難しいとい うことになってしまうのですが、そこのところは、見方を変えますと、研究会でも専門 の先生方に教えていただきましたけれども、やはり障害の特性というのが絡んできまし て、長時間労働はなかなか難しいというのも事実ですし、一方で、結構優秀な人が多い ということもお聞きしましたし、確かにそうだと思います。  ただ、そういう人が今度職場復帰をする時に、やはり本人の側に問題もあると思うの です。今までやっていた仕事がかなりレベルの高い仕事だった場合、残念ながら採用後 障害を持つに至り、そして休職になった、今度ようやく復職という時に、かつて自分が やっていた、ある意味でレベルの高い仕事のところへ戻りますと、戻ればフルタイム勤 務を期待されるわけですけれども、それも難しい。それでは他の職場にということで、 もう少し短時間でやれるような職場にまずは配属ということにしますと、自分はこんな 仕事ではつまらないということになりかねない。そういうような、なかなか雇用管理が 難しい世界ですので、やはり在職の人にどのように対応していくかというところは、避 けて通れない問題になるわけです。  ですから、そういう人たちをどう雇用率にカウントしていくか。現に、既に雇用して いますので、その人はカウントされていくわけですけれども、それと新たに新規の雇用 を生み出していくことも考えますと、どういうつながり方が必要なのかというところが 大事ですし、それから、本人もオープンでいくかクローズでいくかというのは、ある意 味では、本人の自己責任で、自分はオープンでいくというぐらいの気持ちになっていか ないと、やはり職場の中できちんとした勤務になり難いのではないかと思います。  また、全く別の視点で、もう一つは、先ほどまで在宅勤務の論議がなされていました が、精神障害のある人でも在宅勤務というのはあり得ると思うのです。人間関係が非常 に難しくて、企業の中ではやはり難しい。だけれども、在宅でならやれるという形での つなげ方もあるのではないかと思いますので、もう少し具体的な対応がどうなるのかと いうことを詰めていきながら、検討を進めていくべきテーマなのではないかと思いま す。 ○輪島委員  資料4の件に関する意見がもう一つと、次回に向けて資料を事務局にお作りいただけ ないかというお願いが一つございます。  20〜30時間のところの身体障害者と知的障害者のところに、棒線が引いてあるわけ で、精神障害者のところに特例という形をなぜ設けるのか。それが、なぜハーフカウン トなのか。そういうことに疑問があると申し上げているわけですけれども、であるとす れば、身体障害者の20〜30時間、知的障害者も同じところを○にすべきではないか。こ れは、多分、雇用率全体に関わりますので、そのところでの試算が必要になるかもしれ ませんし、また、第1回目に雇用率の見直しの時期と今回の法改正の時期がずれていく ことについて懸念を示したわけですけれども、ここをもし今回手当てするというような お話になるとすると、法改正時期と次回の法定雇用率の見直しの時期がずれてくるとい うことにならざるを得ないわけで、そこでまた、大きな根元的な問題になるのではない かと思いますが、資料4の点について、この身体障害者と知的障害者の20時間のところ をもし○にした時に、法定雇用率上どのような影響があるのかということを資料として お示しいただきたいと思います。  それから、先ほど、今井調査官が精神障害者の方を法定雇用率に入れた時に2.0%と いうご報告があったわけですけれども、それも資料としてご提出をいただければあり がたいと思います。 ○座長  資料の要請がございましたので、これについては、次回事務局の方でご用意いただく ようにお願いします。では、館委員、どうぞ。 ○館委員  一つお願いなのですが、決して採用前の精神障害者の方々を忘れていただきたくない ということです。その方々の数も多いのです。採用後の人がまず解決できなければ、採 用前の問題は討議できないというのは、私はおかしいと思うのです。採用前に発病した 方は、かつては会社の有能な人材であった方がたくさんいらっしゃいますし、その再起 をかけてトライしていらっしゃるわけで、その人たちをバックアップするということ も、この研究会での大きな議論の目標だと思います。  それから、ご本人あるいは関係者もそうなのですけれども、今一番雇用率を望んでい るのは、ハローワークの担当官や障害者職業カウンセラーなどの、精神障害者の雇い入 れを日々企業に働きかける努力をしている現場の実務者たちなのです。それは、前回、 統計をとりましたら、非常に高い。それは何かというと、結局、雇用率がないために助 成金などだけではインセンティブが企業に対しては効かない。本来、雇いたい人がいて も、雇用率の対象となっていないために雇えない、こういうこともあります。  かつて、第二岡上研究会の時に、企業ヒアリングの主査をさせていただいたのですけ れども、ある印刷会社の方で、輪島委員も確か同席されていたのですけれども、ある方 を採用するといった時、その方が精神の方であるという。その時、みんな、「精神の方 は雇用率適用されませんよ。それは、知的障害の間違いではないのですか。」と要らぬ お世話をしたのですけれども、そうしたら、「ちゃんと、精神障害であることは知って います。働けるから会社としては雇っているのです。」とおっしゃっている企業があり ました。精神障害だからどうだとかというのではなくて、企業としては、働けるか働け ないか、よく見た上で判断されていると。私はとても敬服したのですけれども、逆に、 我々の議論がずいぶん観念的で、言葉に縛られているのではないかと思いました。 ○座長  はい。輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  言葉が足りないので、誤解を与えているのかもしれませんが、私どもは在職の問題が すべて解決しなければ、新しい問題に踏み込んではいけないというふうに言っているわ けではなくて、次のことを考えるべきだというふうに申し上げているので、在職の問題 をすべてクリアするということが大前提だというふうに申し上げているわけではないの です。そのことはご理解をいただきたいと思います。  それから、ハローワークや職業センターのニーズというのは、それは行政職のニーズ でございまして、そこが一番ニーズが高いから適用するべきだという話は私どもとして は納得がいかないと申し上げておきたいと思います。 ○座長  では、中村委員、お願いします。 ○中村委員  今までの議論の方向性は理解しているつもりではあります。ただ、在職中の精神障害 者ということだけが、かようにことさら議論されていることについて、一つの違和感を 覚えます。それは、精神障害に認定されるかどうかというのは、そもそも今の企業でこ ういう、広く水面下でメンタルヘルスの問題、それは障害者にいく以前の問題、復職と いうか、企業でやらなければいけない部分が非常に大きいわけです。それを直接精神障 害者の雇用率の話にまでもってきて、インセンティブを与えたい、という議論は、本来 おかしな問題なのではなかろうかと思います。メンタルヘルスは、この議論以前の問題 として、企業としてきちんと行うべきことだと思います。  ただ実際に発病してしまって、そういう症状が固定化をして、障害者になられた場 合、それは、不幸にして、努力されても退職される方はどうしてもいると思いますし、 それから、復職にチャレンジして頑張っている方もいる。これこそ、まさしく雇用率の 問題なのであって、メンタルヘルスとこうした問題とはきちんと分けて、本来は議論す べきです。  そういう意味では、今までの議論で、経過がありますが、何かどうも。雇用率で、し かも、現行の1.8%という率の算定をして、これはインセンティブだということは非常 に分かります。で、なおかつ、実際の現場としては、やはり復職の支援のための、そこ のノウハウとか不安感を取り除く。とりわけ在職者によっては、畠山委員が指摘された ように、不安もあるところが多いと思いますし、在職者であろうとそうでなかろうと、 精神障害の方をきちっと雇用して、位置付けていくノウハウ、そういうのをつくって、 普及するのも一つです。そういうのを力を入れてやっていくべきだと思いますけれど も、そのために、20時間、30時間だと、短時間のものを一律にとらえて、雇用率算定す るというのは、どうも、いかにもバランスを失しているような気がいたします。  一人前として○として扱う。ハーフカウントは一つの、これもいろいろな考え方だろ うと思いますけれども、○にするのであれば、一気に精神障害も含めて、全部同じよう に位置付けるというぐらいのことをきちっとやっておかないと、あまりにもインセンテ ィブ論だけでいくのはおかしい。  また、現場では、やはり復職支援プログラム、それから、実際の地域をつなぐプログ ラムでしょうか。そういう意味では、在宅の方では、コーディネーターの育成というこ とを中心にやって、インフラをつくろうと言っているわけですから、その全体の構図を きちっと見た上でやるべきで、一定の方向性、一番現場のためになるのかということを 考えて議論していくべきだろうと思います。  そういう意味では、最初から1.8%ありきというのもどうなのだろうという気もいた しますから、将来的なことも含めて、一定の見通しというものが、ある程度の合意が前 提となるのではないだろうかという感じはいたします。 ○座長  予定の時間も過ぎておりますので、議論の方はここで終わらせていただこうと思いま す。先ほど輪島委員から資料の要請がありました。その他にも、他の先生方からも要望 があったと思いますので、事務局におきまして、次回の研究会までに準備の方をよろし くお願いいたします。  次回の研究会では、「手帳による適用の仕組み」、それから「精神障害者の雇用支援 策」について、この2つの課題について検討を行うこととしたいと思います。  なお、次回研究会の会議の公開についてですが、これも今回と同じように、公開とし ても特に差し支えない議題だと思いますので、公開の取扱いとしたいと思います。ま た、本日の議事につきましても、議事録を公開しても差し支えないと考えますが、よろ しいでしょうか。  (「異議なし。」の声)  ありがとうございます。そのようにさせていただきます。  では、次回以降の日程等について事務局からお願いいたします。 ○事務局(平川課長補佐)  次回の第4回研究会は、7月9日(金)10:00〜12:00で、場所は経済産業省別館9階920 号会議室です。 ○座長  それでは、以上をもちまして、本日の研究会は終了いたしたいと思います。お忙しい 中をわざわざご参集いただき、大変活発なご議論をいただきました。ありがとうござい ました。         照会先:職業安定局障害者雇用対策課 雇用対策係(内線5854)