04/06/16 第12回仕事と生活の調和に関する検討会議           第12回 仕事と生活の調和に関する検討会議             日時 平成16年6月16日(水)                9:30〜             場所 厚生労働省共用第7会議室 ○ 諏訪座長  ただいまから、「第12回仕事と生活の調和に関する検討会議」を開催します。早速議 題に入ります。本日の議題は報告書の取りまとめに向けた検討です。今回もいろいろ示 唆に富んだ御議論をお願いしたいと思っております。前回、報告の構成や総論部分につ いて御意見を主としていただいたわけですが、今回は前回の皆様の御議論を踏まえた修 正部分と、前回十分に議論が尽くせなかった部分について、集中的に御議論いただけた らと考えております。  それでは議論を開始するに当たり、最初に報告書(案)の修正箇所等について、事務 局から御説明をしていただきます。 ○ 勤労者生活部企画課長  前回の御議論を踏まえ修正した点ですが、お手元の資料1の報告書案に修正点を赤線 で示しております。1頁から順次説明いたします。  まず1頁目。4つ目の○、前回の会議の中で非正社員としての補助的業務については 女性が就いている場合が多いという御指摘があり、そうした旨をここで盛り込みまし た。5つ目の○、正社員と非正社員の働き方は実際としてそうなっているのか、あるい は、理念としてそういうことなのかという御指摘がありました。これは理念的なものと 考えておりますので、そういった旨の記述を書き加えました。併せて正社員と非正社員 が分かれているということですが、分かれているということだけではなく、それぞれが 固定的であるという御指摘もあり、その旨をここに入れたところです。  2頁目。3つ目の○、ここは若干書き方が不正確であるという御指摘があり修正しま した。  3頁目。いちばん下のほうに、これまで主流であった雇用管理については企業のほう にもデメリットがある。例えば、「新しい人事労務管理の導入の隘路となる」といった デメリットがあるという御指摘により加えました。  4頁目。4つ目の○、労働時間の格差です。これには年齢間での格差があるだけでは なく、男女間にもその差があることを書き加えるべきである、という御指摘を踏まえ修 正しました。いちばん下の所ですが、元の案では「自由度の高い非正社員」となってい ましたが、書き方が不正確であるということで、「拘束度の限定的な」非正社員という ような書き方にしました。  5頁目。3の(1)の2つ目の○、サービス産業化に伴うこれからの働き方の所です が、こういったことに対応して、生涯学習をし職業能力を高めていくことが非常に重要 であることを加えるべきだ、という御指摘があり、その旨を追加しております。  3つ目の○以降、ここはやや大きめの修正になっております。原案に、仕事と生活の 調和についての理由付けについての記述がないという御指摘があり、ここで整理をして 書き加えました。6頁にかけてですが、こうした仕事と生活の調和が実現しない社会で は、まず働く者について心身の健やかさを損なう。あるいは、その者の能力発揮ができ ないといった問題がある。次の○になりますが、企業の雇用管理も正社員と非正社員と いう固定的な当てはめに基づく雇用管理になっていることの非効率性、といったことを ここで書いております。  併せて、この文が長くなりましたので5頁からの3「問題に対する解決の方向」を2 つの項立てにし、6頁の真ん中以降から、(2)「仕事と生活の調和を実現する上での 主要な課題」としました。  7頁目。2つ目の○、総論部分で時間についてはいろいろ触れているが、もう1つの 就業場所についての記述がないということで、ここで加えました。その下になります が、こうした生活を重視した働き方を選択した場合に、世帯としての収入が下がる場合 もあるので、働く者の側からの留意が必要であることを書き加えるべきであるという御 指摘に対応し、こういった書き方にしました。  8頁目。2つ目の○、仕事と生活の調和について良い面ばかりではなく、コスト面も 書き加えるべきであるという御指摘に対応して○を加えました。企業にとっては時間当 たりの固定費が上昇する、働く側からは賃金額の減少するといった様々なコストがある ということで、これらに対応しております。  14頁目。3ですが、原案では「自主的な労働時間管理」となっていましたが、書き方 を正確にすべきであるという御指摘により、「労働時間規制にとらわれない働き方」と いう書き方にしました。  20頁目。3の表題である社会的な諸制度とは、具体的には退職金税制と企業年金制度 です。それを中心に論じている所ですので、これをもう少し明らかにすべきであるとい う御指摘により、その旨を書き加えました。  23頁目。1つ目の○、これも同様の趣旨で、「賃金の後払い」の中身が不明確である という御指摘がありました。明確化するという趣旨で「退職金・企業年金の形で」とい う文言を加えました。その下になりますが、確定拠出年金における個人支出、マッチン グ拠出の問題についての御指摘があり、ここで加えました。  25頁目。2つ目の○、賃金等の処遇の決定に関する問題です。原案では「労働時間や 契約期間を理由として差を設ける」ということでしたが、「正確には、労働時間や契約 期間の違いのみを理由として」というべきとの御指摘があり、その修正をしました。3 つ目の○、雇用保障に加え処遇という面であれば有期契約の人については、仕事とか勤 務地の限定もあるのではないか、そういったことも加えるべきではないかという御指摘 があり、処遇の中身として、「仕事、勤務地等の限定」といった文言を加えました。併 せてその下の所、仕事とか勤務地に限定されるような働き方の場合は有期雇用にならざ るを得ない面があるということを書き加えるべきであるという指摘があり、その旨をこ こで書き加えました。  27頁目。キャリア形成・展開について、この中で生涯学習について書き加えるべきで あるという御意見があり、キャリア形成・展開については、全体的にそういった趣旨の ことを加えました。  29頁目。全体の報告書の最後に、結語的な部分を入れるべきであるという御指摘があ り、それに従い、こういった「結語」を加えました。  本検討会議では個々の働く者にとって選択できる働き方が少ないと同時に、それが固 定的であることから働く者の能力発揮や、企業における付加価値の創造が制約されてい る、といったことで議論をしてきたわけです。その上で、働く者が生涯にわたり安心・ 納得して自らの働き方を選択できる環境を早急に整備することが、働く者と企業の双方 にとって不可欠である、そうした環境を整備するための方策について検討を行ってき た。  その結果、今後我々が目指すべきは、個々の働く者が労働時間と生活時間に場所を加 え、これを様々に組み合わせ、バランスのとれた人間的なリズムのある働き方や生き方 を実現し、その意欲と能力を十分発揮できる社会の実現である。  こうした社会は、個々人が「仕事と生活の調和」を図りつつ自らの夢を追求し、志を 貫くことのできる社会であり、同時に個々人が生涯を通じ、様々な場において学び自ら を高めることが当然のこととして行われる社会でもある。  そして、働く者、企業、政府が、こういったことについての共通の認識を持つととも に、その実現に向けて、それぞれの立場から積極的かつ継続的に取り組むことが必要で あるという結論に至ったと。  個々の働く者については、職業キャリアを含めた人生キャリアの展開・形成について 主体的に考え、責任感を持って自律的な選択と、その研鑽を重ねること。  企業については従業員の生活に配慮した雇用管理を行い、各人の多様な人生キャリア の展開を認めることが、やる気や創造性を引き出し、生産性を向上させることに目を向 けて、こうした人生キャリアを形成・展開することを支援することが求められる。  最後に、政府においては、この報告書を基に、「仕事と生活の調和」の実現に向けた 環境整備に早急に着手することを期待するということで、法的整備を要するものについ ては、速やかに適切な措置を講じていただくよう要請するということで結びとしており ます。  報告書の修正は以上ですが、併せて、若干付属的な資料を添付させていただきたいと 考えており、その案をお付けしております。それは34頁以降になります。  35頁は「今後の仕事と生活の調和の在り方のイメージ」、36頁は「今後の方向」、37 頁は「諏訪座長作成・配付資料」、38頁は「報告書案の概要」を図面にまとめたもの で、39頁は「仕事と生活の調和の実現」の図面です。これらについて若干説明いたしま す。  まず39頁。この図面は、ここで議論してきたことについて、仕事だけでなく、生活を 含めた意味での全体の調和を表しております。左側に現状の社会の図を描いており、議 論されてきたように「二極分化した社会」ということで、片方(上方)に「仕事中心の 生活」があり、下方に「家庭中心の生活」がある、これが現状だろうということであり ます。これらの具体的な図は36頁の図に対応しております。  36頁の図は、御議論をいただいたところではありますが若干修正したいと考えており ます。現状では二極分化した社会がある、それを39頁の右側の「社会のビジョン」のと ころにある形に変えていきたいということで、仕事と家庭と地域活動を様々に組み合わ せて、仕事をしたり、家庭のことをしたり、地域活動をしたり、そうしたことを柔軟に 選択できる社会を目指していくということです。そのことにより、いちばん右側の3つ の○ですが、企業の活力が向上し、家庭生活が充実し、地域社会を活性化していくとい う効果を生んでいくということです。こうしたことが、その下に「個人のビジョン」と ありますが、こうした「仕事」「家庭」「地域」の組み合わせを個人という目で見ます と、生涯のいろいろな段階によって組み合わせがいろいろあるだろうということで書い たのが個人のビジョンの線グラフです。  ある時は仕事に多くの時間を振り向け、ある時は家庭のために時間を使い、またある ときは地域活動のために時間を使う。こうした個人のライフステージを様々な段階に応 じ、いろいろな組み合わせをしていくのが個人にとってのビジョンだということで、こ ういった図面を描いております。そのための政策展開を書いたのが左下で「職場」「家 庭」「地域」ということですが、まず「職場」ではこれまで議論されてきましたよう に、多様かつバランスのとれた働き方ということで、そのための労働時間・就業場所・ 賃金制度・均衡処遇・キャリア形成といったいろいろな施策が必要だろうということで す。「家庭」「地域」においては、自立・自助・協同・共助が必要である。例えば生涯 学習、資産形成、あるいはボランティアなど地域活動を政策的に展開していくべきだろ う、ということをここで書いております。そのための基盤となるものが、その下の台形 の図です。社会保障制度、税制といったものが持続・安定的で、安心・納得を得られる ようにしていくことで職場だけでなく、全体のもう少し広い意味での政策展開をここで 整理しております。  その上で、当面労働政策ということになりますと、職場での仕事と生活の調和が課題 になるわけで、その面での整理を38頁の「報告書案の概要」で整理しております。「今 後のあるべき働き方」ということで左上の緑の枠にあるように、『働く人一人ひとりが 職業生活における各々の段階において「仕事」と「仕事以外の活動」(家庭、地域、学 習)を様々に組み合わせ、バランスのとれた働き方を安心・納得して選択していけるよ うにすること、すなわち「仕事と生活の調和」の実現が重要』ということであり、その ための施策の方向性として、仕事と生活の配分についての選択肢の整備と、そうした働 き方の選択肢相互間において公正な処遇の確保が必要だろうということが、大きな政策 の方向性ということで整理をしております。  その上で、「具体的な施策の提言」ということで、労働時間、就業の場所、所得の確 保、均衡処遇、キャリア形成について、それぞれ御指摘をいただいたことを簡単に整理 をした図です。37頁は座長からこの会議の場でお示しをいただいた図で、いま申しまし たような政策展開を図るアプローチとして、現在は時間も場所も不自由な体制ですが、 将来的には時間とか場所、相互について裁量度の高い自由な働き方が求められるわけで す。そこに直ちにいくことは難しいので、まず1つのルートとして時間の自由度の確 保、その上で2段階目として場所についても自由度を確保していく行き方。もう1つの ルートとして、場所の自由度を確保した上で時間の自由度を次に確保するといった段階 的な手法を使い、理想とする裁量度の高い働き方に到達すべきである。そういったこと で進めるべきだということで、その過程の資料をここで付けることにいたしました。  報告書案についての修正点と資料についての説明は以上ですが、もう1つ、これまで 何回かの会議の中で幾つかの資料を整理するように求められていたものを、少し遅くな りましたが今回まとめて整理しておりますので、これについて課長補佐から説明をいた します。 ○ 勤労者生活部企画課長補佐  資料2「関係図表等」について御説明いたします。今課長が申しましたように、委員 の先生方からご示唆をいただいたり、一度試算をしてみるようにというご指示をいただ いたものを、それぞれ取りまとめたものですが、資料2を頁の順に説明いたします。  1頁目。これは第7回のキャリア形成の会、その後の取りまとめの御議論において、 我が国の民間企業における人材育成に向けた教育訓練投資の水準が、やや落ちているの ではないかという危機感を何人かの先生からお示しをいただき、そして、一度こうした 点から振り返る作業を行ってみるとよいのではないか、という示唆を事後的にいただき ましたことから、統計を時系列で拾ったものです。四角の中にありますように、民間企 業における現金給与を除く労働費用に占める教育訓練費は、具体的には括弧の中に書い てありますように、教育訓練施設に関する費用、指導員に関する手当等、委託訓練に要 する経費等で、この割合の推移を見たものです。  これを見ますと、グラフにあるとおり、1990年代の初頭まで2%前後で、かなり長期 にわたって推移してきたものが、1990年代半ば以降、1.5%前後の水準に落ちており、 これは先生方御指摘のとおりです。ちなみに金額で申しますと、直近の平成14年「就労 条件総合調査報告」では、1ケ月平均で現金給与を除く労働費用が1人当たり8万2,200 円余のうち、教育訓練費は1,256円で、これを割り戻して1.5%となっております。  2頁目。1頁目と同様の議論の延長線の中で、企業における能力開発の取組と雇用の 増減について、人材育成をしっかりやっている所においては、雇用面で、さらに言えば 経営面で非常に好循環が起きているのではないか、その辺を少し検証してみるようにと いう示唆を事後的にいただいたところです。平成11年に非常に大規模に全国の民間企業 を対象に実施した調査結果から見たものです。四角の中の上の○ですが、「いわゆる正 社員の増加率が高い企業ほど能力開発を積極的に実施している企業の比率が高い」と書 いてあります。上にエクセルのグラフがありますが、左側にあります雇用変化率は、言 ってみれば2年間における雇用の増減と見ていただければと思いますが、大きく減少し ている企業では従業員の能力開発に「消極的」とか、「あまり積極的ではない」という 比率が比較的高く、下のほうの大きく伸びている企業では、従業員の能力開発に「非常 に積極的」「積極的な方だと思う」という企業の比率が高いということが出ておりま す。  次に下の表ですが、逆に、今後は従業員の能力開発に「非常に積極的」とか、「積極 的な方」というところについては、雇用変化率はプラスで、一方「あまり積極的でない 」さらには「消極的」というところについては、▲(マイナス)です。そうしたことか ら、いわゆる雇用増と人材育成・投資の好循環ということが言えるのではないかという ことです。紙幅の関係上、あまり詳細に引用できなくて申し訳ありませんが、これは当 然業績が好調だから人材育成・投資等ができて、雇用増の問題とは独立ではないかとい う疑問も出てくるところかもしれませんが、この著作の中の分析では、売上げの状況な どもコントロールした上でも、こういった傾向が言えると論証されているところですの で、併せてご紹介をいたします。  3頁目。ここは上記の詳細ですので割愛いたします。  4頁目。労働時間の回のときに所定外労働について、その抑制の方策等について様々 な御議論をいただきました。割増賃金等の在り方等について様々な御議論をいただきま したが、その議論に当たり、改めて割増賃金の存在意義等について、もう一度立ち戻っ て考えてみるべきではないかというご提起がありました。具体的には、かつて『労働白 書』でやった試算、均衡割増賃金率の試算をやってみて、やはり時代は少し変わって、 水準が少し変わっても、そもそも割増賃金がどうして必要なのかというのを、そうした 理屈の面からも精査してみるべきではないかというご示唆がありました。  四角の中にありますように、所定外労働がどうして存在するかという理由のひとつ に、人を新しく企業が雇うときに、当然様々な固定費用がかかります。そうしたことか ら、企業は新しい労働需要に対応して、同一量の労働投入を行うに当たっては、固定費 用の増加を伴う雇用者数の増で対応するよりも、既存の従業員の所定外労働時間増で対 処するほうが低いコストで済むという実情が存在するからです。ここで新たな労働投入 に対し、雇用者数、人数の増加によった場合の1時間当たり労働費用(下の計算でマル A)と、時間外の割増賃金がないという前提で、既存従業員の時間外労働によった場合 の1時間当たり労働費用(下の計算でマルB)をそれぞれ算出し、AとBがどれだけの 割増賃金率があれば均衡するかを試算したものが「均衡割増賃金率」です。近年この率 は若干低下しているものの、現実の法定時間外の、例えば割増賃金率などは大きく上回 っていることが分かるところです。  具体的な数字としては、委員の御指摘にありました『平成4年労働白書』の数字は 69.3%です。平成14年を「暫定値」としておりますのは、少し手当の関係の試算、具体 的に言うと、労働基準法第37条第4項及び関連の省令で、割増賃金の基礎となる賃金額 の算定から除かれる各種の手当の試算のところなどが、かなりの推定をおいているとこ ろや、使用統計間のギャップ修正などの手法において、まだ詰めるべき点が残っている ということで、今回は暫定値で52.2%となっております。若干この数字が低下している 理由としては、いちばん下の参考の所にありますように、そもそも現金給与以外の労働 費用の額が、最近大きく落ちているという実情があるのかと考えております。  5頁目。これはいま申し上げたことを別の角度から整理したものですので、説明を省 略いたします。  6頁目。労働時間の会議で、短時間労働者の方々の所定外労働の抑制の議論を、いろ いろいただきました。その前提として実態はどうなっているのかというご質問が会議の 事前に、先生方の関心としてお示しされたものですから、「パートタイム労働者総合実 態調査」の特別集計を行ったものです。したがいまして、この調査との関係で平成13年 9月という時期の限定が付いた数字であることを、ご理解いただきたいと思います。  四角の中に書いてありますように、平成13年9月に所定外労働を行った短時間労働者 の割合は22.7%であり、所定外労働を行った者の平成13年9月、1カ月間の平均所定外 労働時間は8.9時間です。具体的にその所定外労働の時間の状況は、2つ目の○、ある いは下の表に数字が出ておりますように、所定労働時間が週20時間以上の短時間労働者 の方々だと、所定外労働を行われた方の数が大体2割を超える水準で一定の水準が認め られます。  7頁目。同じ特別集計を少し違う角度から見たもので、分布の状況を見たものです。 四角の中の上の○ですが、短時間労働者で所定外労働をしている方のうち平成13年9月 の所定外労働時間が5時間未満の方が、全体としては40.8%で、短時間労働者といいな がら20時間以上という長い所定外労働をしている方々の比率も一定程度あり、約15%と なっています。この15%という数字は、下の表のいちばん上の欄の20〜30時間未満、30 〜40時間未満、40時間以上の3つを足すと大体14%強ですので、約15%と表記している ものです。  8頁目。この会議で二重就業(複数就業)を取り上げた際、その際のデータとして 「就業構造基本統計調査」における二重就職者の方々の数の推移をお示ししたところで す。その際、先生方からの御指摘として、一口に就業構造統計調査の二重就職者といっ ても、その中には能力発揮をし非常に高所得をいろいろな場で得ている方もいれば、一 方で、相当の数の方が生活のためやむを得ずそうした状況にあるということから、所得 面あるいは意識の面で大きな差があるのではないかという宿題をいただきました。そこ で統計上可能なところで、本業が雇用者である二重就業者の本業からの所得についてと ったものです。これは本業が雇用者であって、副業のほうは、雇用者である場合、被雇 用者である場合と様々でありますが、統計上の制約でこれしかとれないものですから、 このようにしております。  四角の中にありますように、本業が雇用者である二重就業者の本業からの所得の分布 と、その他の雇用者の仕事からの所得の分布と比べると、分布は両側が高くなっていま す。グラフでいいますと、実線(A)のほうが二重就業者の分布で、低い所と高い所 が、それぞれ一般的な分布よりも高くなっていて先生方の御指摘のとおりであります。  9頁目。前回、調和のとれた働き方について集中的な御議論をいただきました。その 中で、調和のとれた働き方は、安心・納得したライフスタイルにつながり、言ってみれ ばストレスなどが非常に少ないというところを強調すべきではないかというご示唆があ り、そこのところのバックデータを少し拾ったものです。  四角の中は、各種のゆとりを感じているか否かとストレスが多いか少ないかの関係を 見たものです。下にありますように、「経済的ゆとり」「時間的ゆとり」「精神的ゆと り」のいずれにおいても「ゆとりがある」と感じている方のほうが「ゆとりがない」と 感じている方よりも、代表的な抑うつ尺度であるCES−D得点が低い。すなわちスト レスが少ないということが分かります。CES−D得点は、例えば普段は何でもないこ とが煩わしいと感じたとか、独りぼっちで寂しいと感じたとか、いくつかストレスのこ とが分かるような質問をして、それが週に何回ぐらい現われるかを伺い、それを足し上 げた数字で、少ないほうがストレスが少ないということです。  特に、3つのゆとりを分野別に見ますと、お金があるかないかの「経済的ゆとり」 や、単なる「時間的ゆとり」と比べても、「精神的なゆとり」がストレスが多いか少な いかということと、非常に高い相関を示していることが見てとれます。その意味で、先 生方御指摘のとおり、安心・納得できるライフスタイルの選択の重要性をうかがわせる 結果となっているのではないかと存じます。  以上、何点か説明申し上げましたが、これらの点について、先ほど課長から説明申し 上げました資料1の報告書(案)の内容に反映し、本日お示ししているところです。 ○ 諏訪座長  それでは最初にいつものように、いま説明をしていただきました資料2、あるいは報 告書(案)の下線部等について、ご質問があれば最初にお受けいたします。  特にないようですから、後ほど思いつかれたらご質問を出していただくことにいたし まして、御意見をいただきたいと思います。  前回は少し総論的な話、全体的なことを御指摘いただきましたので、今日は全体的な ことよりは個々の部分について、順番に御意見をいただきたいと思っております。その 上で、最後に全体なことについても、改めて御指摘、あるいは、お気付きの点がありま したら、御意見をいただこうと思います。  この報告書(案)の目次に沿って各論の部分を主として検討したいと思います。まず 各論の1、労働時間の部分についてはいかがでしょうか。 ○ 森戸委員  12頁です。所定を超えたところに割増賃金を払わせるとか、短時間労働者の場合だけ それを考える、という議論をあまりした記憶がないのですが、そこのところは本当に皆 さんのコンセンサスはあるのでしょうか。技術的なことは置いておいて、特に短時間に ついては、後のほうで均衡処遇といって労働時間の長短に関係なく均等な扱いをという ことと、パートタイマーだけが割増賃金が上がるということは、理念的に言うとものす ごく矛盾すると思います。そこは何か、ポジティブ・アクションではないですが、こち らのパートについては、こういうふうにすべきなのだ、という積極的な説明が必要だと 思います。それは書いてあるのですが、皆さんは本当に同意されているのかをお聞きし たかったのです。 ○ 諏訪座長  非常に重要なポイントだろうと思います。事務局から補足的に御意見をいただきたい と思います。 ○ 勤労者生活部企画課長  確かに所定外労働についての割増賃金の話と、後では、特に均衡処遇と2つのことが 書かれているわけです。この間の整合性ということですが、趣旨としては、全体の流れ のストーリーとして、短時間の人であっても、また、短時間でない普通の方であって も、あるいは正社員でも非正社員であっても、出来る限り生活との調和を図るという意 味で同等の取扱いを受けるべきであるという趣旨から、所定時間外の労働について割増 賃金を設けるべきである、といった流れになっているのではないかと思っております。  併せて、労働時間別による均衡処遇の問題ですが、その企業の中で短時間の方も、短 時間でない方もおられたときに、それぞれ納得できるような処遇(賃金など)を受ける ことが、その能力をフルに発揮できるといったことにつながる。そのようなものである ということで、そういった均衡ということが、併せて多様な働き方に対応するものとし て書かれているものだと考えております。均衡処遇は、時間だけが異なる場合につい て、それに比例的にすべきであるとここに書かれています。加えて、後のところに書い てありますが、そうは言っても目的は各労働者が安心・納得して働けるということです ので、それが外枠による取り決めというより、それぞれ企業の中で納得できるいろいろ な仕組みを作る必要もあるのではないかということで書き示されております。そういっ たことで、所定時間外の問題と均衡処遇の問題は、双方に調和するような書き方がとら れていると考えております。 ○ 勤労者生活部企画部長  補足説明します。11頁をご覧いただきますと、労働時間が正社員、一般社員を含めて 長い傾向にあると。これを政府の目標であるトータル1,800時間でやらなければいけない 中でどうするかというと、所定労働時間そのものが決まっている中で、所定外労働を抑 えることが総労働時間抑制につながるというのが11頁の下のロジックです。これは一 般、パート関係なく、所定外労働を抑制しようということで提起しております。  その上で12頁では、所定外労働を抑制する際に、抑制の仕方、つまり12頁の2つ目の ○を仮に義務化することを考えるときに、短時間労働者については特に問題を提起する 必要があるのではないかというのが私どもの提言です。すなわち、所定外労働を義務化 し、パート労働者と一般労働者の均衡を考えるというときに、パート労働者の方は生活 を重視して労働時間を仮に短いと決めていると、所定外労働をするときに、その方のバ ランスを考えますと、一般の労働者の方よりも割増しを高くすることもあるのではない か、そういうバランスのとり方があるのではないかという問題提起の仕方をしているわ けです。  そこ止まりであり、ここで所定外労働を抑えるというのは、パート労働者だけをやる という論理ではありません。つまり、義務化を考えるときのバランスをここで考えたら どうかということで、後ろとの関係をつなげているというロジックです。 ○ 佐藤委員  12頁の2つ目の○については、「割増率に差を設ける必要があるか否かも検討してお く必要がある」と書いてありますから、いいかなと思っていたのです。しかし、残業割 増しは何のためにあるのか。法律はよく分かりませんが、個人的には契約して働くわけ です。私は20時間働く、30時間働くと決めたにもかかわらず、これは36協定があるわけ ですが、事業主の都合で長く働く。そういう意味で、初めの約束と違うから、単純に考 えると割増しかなと。基本的に法定内残業は割増しがなくてもいいわけですから、これ については割増しをかけたほうがいいだろうと思っています。それでは短い人は割増し を高くするかということについては、それはしなくてもいいだろうと思います。  大企業の通常労働者には38.5時間とか39時間といった短い人がたくさんいるわけで、 組合のある所は大体割増しを払っている所が多いです。短時間勤務は生活重視だから割 増しを高くする、という別のロジックを入れる必要があるのかどうか。そうではなく て、基本的には所定労働時間を超えて働くようにする場合は割増しを払うという趣旨を 一貫させる。別の基準を立てて、どこからは割増しが高いというのは、ちょっとテクニ カル面では難しいのではないかと思っています。 ○ 森戸委員  いま佐藤委員が言われたことですが、確かに検討する必要はあると思います。トーン としては、この人は拘束度が高くてこの人は拘束度が低くてという極端な二極化はいけ ないですよという流れだから、短時間だけ割増しが高いというのは、逆に、ここにも書 いてあるように拘束度が低いことが前提だからということで始まっている気がしたので す。つまり、現状は確かに問題があるのだろうけれども、報告書の流れとしては、むし ろ二極化はやめて、もうちょっと平均化していこうという流れだから、後半のほうは慎 重であるほうがいいのかなという感じを受けました。ただ、確かに「そうすべきだ」と 書いてあるわけではないので、そう言われてみれば検討するのは面白い点もあるので、 別に大きな文句ではないのです。 ○ 北浦委員  いまの点は各委員の論議と同趣旨です。もし割増率に差をつけるという議論であれ ば、まさにバランス論から法定の割増率をどうするのかという議論が必ず出てくると思 います。やはり、法定内において差をつけるというところも、ただいまの議論の中に ちょっと苦しさはあったように感じます。  そういう中で、逆に、現在の短時間というのは通常の労働者より短いという、相対概 念的に作っているところもあります。そういった考え方からいくと、極めて短い会社の 場合と長い会社の場合との不均衡という問題もあります。そういったものもすべて考 え、検討ということであれば私も結構ですが、勘案しながらいくべきではないかと思い ます。 ○ 山川委員  そこは論理的には両様あり得ると思います。いま皆さんが言われたテクニカルな観点 も無視できないと思います。  もう1つはこの文章自体の問題です。「これにより現在法定労働時間を超えて残業し なければ割増賃金を受けることのできない短時間労働者が割増賃金を支払われるように なる」と、「これにより」の「これ」というのはどれかというと、割増賃金を高くする ことではなく、その前の○にある所定外賃金を払わせることであって、これによって、 ある意味では十分ではないか。十分ではないかというのは、この文章の結論を導くには 十分ではないかということです。あとは「検討」ということで結構です。 ○ 諏訪座長  それでは、これはいろいろ検討してみる必要があるのではないか。それは本来の目標 に向けて、なだらかなというのでしょうか、いまのようなはっきりした二分法のような 形でないようにしていく方法として、どうしていったらいいかということで1つの問題 提起なのだと。ただ、いまテクニカルな点とかバランス論がありましたが、もう1つは 実効性の点からいくと、法定外の賃金、そして、法定外の割増しの部分で線引きが40に なって、例えば30時間労働の人が40になるまでの間を何とかしようという考え方は、実 は実効性ではちょっと問題があります。それはなぜかというと、40まではOKですか ら、労働契約上みんな40にしてしまって、そこから時間を割引く処理の仕方をする可能 性があるわけです。つまり、今週は30時間でいいよとか。そうなったときどうするかと か、実は実効性という点ではいろいろ議論しなければいけない点があります。ここでは そういう問題ではなく、問題提起として受け止めておきたいと思います。 ○ 北浦委員  別の観点ですが、14頁の労働時間規制にとらわれない働き方で趣旨が鮮明になりまし たので分かりやすくなったと思いますが、私もこの必要性はあるのだろうと思っており ます。ただ、論理展開のところで、最後の所に出てくるのですが、やはりフレックスタ イムとか弾力化の問題です。これはこの研究会でも、果たして弾力化と労働時間の短縮 は両立するのかという議論がずっとあったわけです。それについては、理念的にはある と言ったり、しかし、実態的にはそうでないと言ったり、両者の関係を導くのは難しい 面があった。だけど、弾力化という流れの延長に、この規制にとらわれないと捉えるの か、それとも全然違う概念でとるのかによって、この書き方はちょっと違うなと思って いたのです。  ただ、これをよく読んでみると15頁の所に、フレックスタイムとか、裁量労働も途中 で出ていますが、そういったものとの関係で、それらはまだまだ時間管理を要するが、 その枠ではいろいろな意味で仕事と生活の調和に阻害的であるという考え方から、これ を出したのだという論法になっている。とすれば、フレックスタイムや裁量労働制とい うのは弾力的でないのかと、一方においてそのように捉えられてしまう危険があるわけ です。現実にそれは、そもそも論のような問題なのか。これは山川委員からいろいろ御 指摘があってここに出ているのだと思いますが、やはり運用において運用のしづらさが あって、そこに問題があったと考えるべきなのか、ここのところを考え方として整理し ておく必要があるのではないかと思います。  私は後者であったと思っており、そこのところに弾力化の余地がまだまだあるのでは ないか。ただ、それをやっていくことに限界がある。それを一歩超えた規制にとらわれ ない働き方を目指さなければいけないし、次の類を考えていかなければいけない。この ような延長で、これを考えていったほうが整理しやすいと思います。ただ、既存の中の 定義との関係でいくと、目指すのは何かということから考えていけば、確かに規制にと らわれないという打ち出し方は賛同できます。そういった書き出しから説き起こしてい くのはよろしいと思っています。  併せて、これに触れられておりますが、やはりフレックス、裁量労働といったところ の範囲内においての活用について、あるいは運用の見直しについても、もう少し勉強し ていただくとバランスのとれた論法になるのではないかと思います。そのこととの関連 でいくと、ちょっと気になるワーディングとしては15頁の最後の○の「また書き」にあ る所です。「自ら時間管理を行う必要があるとまでは言えない」という言い方になって います。これはどういう範囲を指すのか。  つまり、裁量労働制の場合でいけば、ある程度時間管理を自分で考えていかなければ いけないということになるわけです。それから、フレックスタイムは、確かに時間管理 はあるのだけれども、フレックスタイムの部分においては、やはり時間を自ら意識せざ るを得ないところがあります。管理を行う必要があるとまでは言えない、という決めつ けたような書き方になっており、ここの部分は、整理の仕方としてどうなのかなという 感じがいたしました。  いずれにしても、この必要性については私自身は、全くそのとおりだと思っておりま すので、ロジックをもう少し固めることで、これをもうちょっと浮び上がるようにした ほうがいいのではないかと思います。 ○ 諏訪座長  今北浦委員から御指摘のありました規制の弾力化とワークライフバランスとの関係に ついて、関連して御指摘があればお願いしたいと思います。 ○ 山川委員  フレックスタイム制等の活用については私も同感です。ここで書くとすると、ここで 述べられているような新たな仕組みとフレックスタイム制等がどういう違いがあるのか という。それはおそらく14頁の3の2つ目の○に趣旨として書かれているのではなかろ うかと思いますが、具体的に書くほうがよかろうという気もいたします。それはどうい うことかと言うと、フレックスタイム制も、みなし労働時間制等も、一定の労働時間の 量的規制を前提にしているといいますか、みなす手法をとるということですので、例え ば「労働時間の量的規制を前提としており」など。規制にとらわれない働き方として は、それとは別の枠組ということでしょうから、そう書けば趣旨が明らかになります。  先ほど北浦委員から御指摘のありました「また書き」の所も、例えば、以上のような 新たな枠組をとることが必要とまでは言えないとか、ここでの自主的管理は、おそらく 定性的なものというより、新たな枠組までは適用できないとか、そういう趣旨かと思い ますので、より具体的に示したほうがいいと思います。 ○ 森戸委員  同じ所で、「規制にとらわれない」という所に関連しますが、ここに赤線があるので それに目をとられてしまい、うっかりしていました。山川委員が言われたのと少し違う かもしれませんが、この赤線の前の「希望するものについて」とか、「自らの意識に基 づく」というところは結構すごいことを言っています。労基法の原則には、集団的に労 使協定などがあれば規制を外すというものがごく例外的にはあるのです。ここでは、後 ろのほうに「本人同意」と言っていますから、要するに、「私は外してください」と言 ったら外してもらえるというような枠組のことを、少なくとも言っているのかなと思い ます。これは結構、大袈裟に言えば、労基法の体系を非常に大きく変えるというか、そ ういうことを書いているのかなと思うのです。全面的に書くのかどうかは分からないの ですが、そこは、実は非常に重大なことを言っているのかなと思っております。 ○ 武石委員  私もいま森戸委員がおっしゃったところを非常に気にしています。上のほうは「研究 技術者」とか限定したイメージできているのに、3つ目の○になると、いきなり「希望 するものについて」となっていて、時間規制にとらわれない働き方というのは、どうい う職種を対象とするイメージなのか。それで、下にイロハニホとあって、職種をどこか で決めるということもないので、この辺の範囲が非常に分かりにくい。希望したものは 全部できてしまうのかというのは、非常に疑問になりました。 ○ 諏訪座長  ここは質問に当たる部分がありますので、事務局からお願いします。 ○ 勤労者生活部企画課長  武石委員からのご質問からまいりますと、これは範囲無限定ということではなく、最 初の所で押さえているつもりです。すなわち3の1つ目の○の所に書いてありますが、 ベンチャー企業を創設する場合の研究開発者、あるいは、研究機関で高度な研究を行う 者ということで、非常に高度な、技術者的な人をイメージしていること。また、その後 に少し補充してありますが、そうしたものは一定期間は集中的に働き、まとまった休暇 をその後で取る、といった働き方をするタイプの研究開発者について外すという趣旨で す。  森戸委員の希望するものについて外すような新しい仕組みではないかというご質問で すが、確かに3つ目の○の所はそういうふうに書いてありますが、他方、4つ目の○の イロハニホの中を見ていただければ。これは山川委員の御指摘もあったところですが、 本人同意ということの前に労使代表といった制度をかませることとしておりますので、 その上での本人同意という理解をしております。原案を書いた意図は、希望する者とい うことが非常に特徴的である、という書き方をしたという考えではないと思っておりま す。  それから北浦委員のご質問ですが、私どもがここに原案を整理させていただいた考え 方というのは、今いろいろ御指摘がありましたように、労働時間規制にとらわれない新 しい働き方というのを、新たなカテゴリーとして設けるわけですから、まずそのことを 中心的に書くということで、それを重点的に整理させていただきました。今あるフレッ クスタイム制などの制度が不十分だという趣旨ではなく、むしろ新しい制度を設けるべ きだということを特に強調したいがために、こういう順序で書いたということでご理解 いただきたいと思っております。 ○ 勤労者生活部長  労働時間規制を排除することを希望する者というのが、いちばんの問題提起です。そ れを外形標準化するということで、1つ目の○を書くという構成にしたかったのです が、それではあまりにもインパクトがないものですから、入れ替えて先ほどの説明にな っています。  労使決定による基準法の枠組脱退というのも、多少の迷いがあります。1番目の要件 を限定できれば、いきなり本人同意で外すということまで、さっと書いたのですが、14 頁のホで、やはりよく検討してもらわなければいけないということで、労使代表による 話合いでどうかと。ここもいま言ったような御議論もあり得るということで、検討事項 にしているという整理です。  北浦委員が言われた順番の流れは、今までやった流れと違う形で、手続的に労使合意 でなく、個人単位で抜け出せるという意味でも、全く新たな提言ですので、こういう流 れで整理させていただきました。こちらはある意味で今まで使用者が望んでいるような 部分があり、組合の立場としては問題意識があるということを、大胆にこちらで提言 し、先ほどの所定外労働時間では、逆に使用者の抵抗のあるものを労働者側の立場で大 胆に提案するという関係で、問題提起できないかと考えております。  さらに先ほどの所定外労働の話に戻りますと、法定時間超えも、パートやパートでな い方の法定労働時間を区分けできるセットにはなっています。つまり政令で定める率と いうことで、政令で調整できるようになっています。もう1つは、ここでは十分に議論 できませんが、もし新たに議論できれば、所定労働時間の概ね4分の3以上とか3分の 2以上働いたら、社会保障が適用されるという方と社会保障が適用されない方につい て、法定外労働時間をどうするかということも、現行整理でやってもいいと思うので す。その反射を受けて、法定外労働についてもというように、いろいろな検討の要素が ありますので、まさにそのインパクトを与えるために、12頁の○の2つ目をしっかり チェックしていただきたいわけです。このようなことで、相当議論していただく必要が あるという気持を込めて整理したわけです。 ○ 北浦委員  その説明でよく分かりました。ともかく新しい枠組であるということで、この点は私 も非常に評価できると思っております。ただし範囲の問題があります。これはそういう ものが非常に馴染みにくいところから入ってくるという御指摘ですから、どうしても非 常に狭くなるわけです。そういった意味で言うと、労働時間全体の体系の中で、労働時 間というのは短縮のところにかなりのウエイトが置いてあって、弾力化のところがあま り言及されないような形で、新しい枠組だけ出ているものですから、先ほどのようなこ とを申し上げたのです。しかし、この中の文脈を読んでいけば、そういったものが一つ の前提にあることは分かるでしょう。  もう1つは、ベンチャーの研究者だけでなく、その他の職種の人たち全般も含めて、 弾力化というものが仕事と生活の調和の背景にあると解釈しておけば、これについては 分かるのではないかという感じがしました。 ○ 佐藤委員  これでもいいのかなと思うのですが、14頁の希望する者についての最初の○で、適用 範囲を限定しているというお話でしたね。そうすると最初の○は狭すぎないかという感 じがあるのです。これだと現行の裁量労働制でも、専門職型のごく一部からという感じ ですが、いわゆる企画職型も含めて、もうちょっと広く考えてもいいのではないかと思 います。個人的にはいちばん困っているので、大学教員も入れておいてという感じで す。ちょっと狭すぎます。職種はここだけでなく、職種の性格で広げる範囲がわかるぐ らいに書いてもらったほうがいいのではないかというのが、個人的な感想です。 ○ 森戸委員  いまの話の前の頁の年休の所ですが、前に座長は、本当は使用者に与える義務がある という規制のほうがいいのだというお話をされて、私もそう思ったことがあります。そ れに対応するのが、おそらく年休取得促進の2つ目の○だと思うのです。関係するとす れば、例えば「労使協定に基づく計画的な付与を使用者側に義務付けることも」という 所が、比較的そこに当るのではないかと思います。つまり希望する者については外せと か、パートや所定外、いわゆる法内超勤については割増しせよというように、結構画期 的なことをいっぱい言っている報告書なわけです。ところが年休の所は、「現行法の基 本的枠組の抜本的修正につながるため、慎重な検討が必要」と言っています。ほかの所 はみんな基本的枠組の抜本的修正に、最初から最後まで並んでいるのに、ここだけもの すごく保守的で、ちょっと違和感があるのです。逆にここだけ、ものすごくやりたくな い感じが目立っていて、どうしてかなと思うのです。その点教えていただければと思い ます。 ○ 勤労者生活部長  大胆な提言をあまりたくさんすると、宿題が多くなって困るのではないかと思ったの です。この場の雰囲気ですと、ここがいちばん現状維持でもいいのではないかという雰 囲気だったものですから、そのとおり表現させていただきました。もっと過激にという か、いま言われたような提言をということであれば、報告書全体で重大な提言というま とめ方も十分あると思います。それはここで合意いただければ、そのとおり出来る話で す。 ○ 諏訪座長  森戸委員はもっと大胆な提言がありますか。 ○ 森戸委員  他の先生方はわかりませんが、私の感じでは、提案としては他のほうが、よほど過激 な感じがしたのです。ですから私は、個人的にはここももうちょっと書いてもらっても いいのではないかと思いますが、それはほかの方の御意見にもよります。 ○ 勤労者生活部長  事務的な裏づけを申し上げますと、年休をしっかり取るということについて、労使の 希望がどこまであるかです。先ほど言ったように、2つの点はそれぞれ労使が、片方は うんと要求し、片方はネガティブという関係があるのですが、年休については労働者側 の方々も、年休をもらっても給料がないと過ごしていけないというところで、まだまだ すごくわだかまりがあるのです。物的要求より質的要求や時間的要求と言ってはいるの ですが、どうも発火点に達していないのではないかと。ですから、もっともっとそうい うものを取得するという気運が、国民的な意識として高まることを待たないと、ここで 技術論を展開するのは非常に難しいのではないかという気がしました。  使用者側もそういったことを踏まえて、与えたとしても未消化ですから、年休消化の 1つ目の○にあるように、外国事例等々でやっている展開をまずはやっていただけない かということで、これ自体、相当の重みがある提言ではないかという整理をさせていた だいたのです。これでも足りない、もっと踏み込んでということであればいつでも書け るのですが、そういう力配分等も背景としてこのように整理したわけです。 ○ 諏訪座長  ただ随分おとなしいだけに、例えば年休を取ったら賞与や昇格など、いろいろなもの に反映するという部分に関して、もう一歩踏み込んで、不利益にならないようにすると いった周辺条件の整備というのも、まだまだ残っているような感じもしますね。これに は結局、鶏が先か卵が先かという部分があるわけです。欧米では使用者側が付与する義 務を負って、自ら時期指定するということをするから、本当は会社に来ていたい従業員 も、年休だから来られなくなる。ちょうど非番のときに会社に顔を出すのはおかしいの と同じような側面があるのかもしれないわけです。  しかし世の中のいろいろな温度というのもありますから、どこを優先にするかです。 我々としても優先と思う部分は大胆に踏み込み、それに比べれば今回はややという部分 が残っても、仕方がないのかなという感じはします。人間でもそうですが、何から何ま で奇抜なことばかりやっている人は、あまりいません。結構常識的な部分と奇抜な部分 とが組み合わさっているわけで、我々の報告書にもそのようなところがあるのではない かと思います。それではほかの点について、いかがでしょうか。 ○ 武石委員  10頁の2つ目の○の所ですが、文章を入れ替えたほうがいいのではないかという意見 です。「多大な効果が見込まれる。ただしマイナスの影響は避けられない」とあります が、これを逆にして、「マイナスの影響は避けられないけれど、多大な効果が見込まれ る」と言ったほうが、前向きになるのではないかという意見です。 ○ 諏訪座長  これは「高いけれどいい物ですよ」と言うか、「いい物ですけれど高いですよ」と言 うかの違いだろうと思いますので、ひとつよろしくお願いします。労働時間というのは 非常に重要なところですが、ほかにも各論でご検討いただかなければいけない問題が、 いくつもありますので、とりあえず労働時間についてはこのあたりに留めます。  続いて就業の場所の問題について、御議論いただこうと思います。これは従来の労働 政策では、そんなに踏み込んで考えてこなかった問題だと思います。その意味ではさら に御指摘いただくような点がありましたら、お願いしたいと思います。 ○ 北浦委員  細かいことを2つほど申し上げたいと思います。先ほどの労働時間の話のように、新 しい枠組をつくるというのは、選択肢を増やすことであって、これが今回の「仕事と生 活の調和」の会議の大きなミソだろうと思うのです。場所について選択肢を増やしたと いう意味では、在宅勤務についてかなりの書込みがあることは、私も評価したいと思っ ております。その意味で、事業場外のみなし労働時間制の適用の問題を言及されている のもよろしいと思います。  ただ、ちょっと気になるのは、なお書きにある非雇用型の部分です。タイトルが「勤 務」であって、雇用関係を意識しているので、これでもしょうがないかなという感じは したのですが、現実的には非雇用型の就業という、在宅勤務ではなく「在宅就業」とい うスタイルが、かなり広がっていく可能性がありますし、在宅勤務の者が在宅就業に転 換する可能性もあるわけです。より自由度を増していけば、そちらの方向へ進むことも あり得ます。そのときの対応としてここにあるのは、いわゆる家内労働に準ずる部分の 解釈で言っているのです。もちろん家内労働法の解釈の拡大、あるいはそれ自体に含め て考えるという見方もあるだろうとは思いますが、それに入らない部分もあるわけで す。ですから在宅就業そのものについての言及が、やや弱いのではないかという感じが いたしました。ただ、タイトルを「勤務」ということで限定して、限りなく雇用に近い 部分ということで、家内労働部分だけに言及したという解釈をするのであれば、それは それでもと思いますが、在宅就業というところでの重要性については、意見として言っ ておきたいと思っております。  もう1点は、複数就業の問題です。これについても縷々書いてありますね。特に労働 保険の適用上の問題は、すでに指摘されていますし、現実に起きているのでいいのです が、この前段で、現実の企業の中において、いわゆる兼職禁止規定の存在があるわけで す。これをどうこうしろとは言えないのですが、これが最大のネックになっていくわけ です。とりわけ知的財産権についての関心が高まっていく中においては、この部分はか なりナーバスな運用をされているところがあります。これについての解決策は書きにく いにしても、問題の所在としての兼職禁止規定に対する各界の提言の中には、そういう ものは廃すべきだという提言もあります。私もそこまで言えるかどうかというのは、ち ょっと自信のないところですが、そういうところを現実論として考えると、そこのとこ ろは大きな問題になりますので、問題点の指摘だけでもしてみてはどうかと思っており ます。 ○ 佐藤委員  複数就業のところで、時間管理ともかかわるのですが、雇用主が従業員の管理につい て、所定労働時間の範囲内だけ管理が及ぶのか、それを越えて管理が及ぶのか。先ほど の複業の禁止規定なども、8時間あるいは週40時間だけでなく、それ以外の生活につい ても管理したい、あるいは出来るというような暗黙の背景があるわけですよね。これを 変えていかなければいけないというように書くかどうかだと思うのです。仕事と生活の バランスと言ったときに、契約を結んだ範囲内だけ、企業のコントロールが及ぶのであ って、その後は雇用者というか、従業員ではなくなるわけですから、それについてはそ れぞれ自由に過ごせるというように考えていくかだと思います。ですから、ここで書か れていることは、いままであった単に競合他社で働くことを禁止するだけでなく、複業 禁止には、24時間コントロールしておきたいという意識がかなりあると思うので、これ からはそれを変えていくということを課題として書くかどうかというのが、ちょっと気 にはなっているのです。 ○ 諏訪座長  この点は、これまでも労働法学的にいろいろ議論が積み重ねられているところですの で、できましたら問題点の指摘等をお願いできればと思います。 ○ 山川委員  すでに判例等においても、兼業禁止が全くそのまま有効だと認められているわけでは ありません。先ほどお話のあった、知的財産や同業他社という関係での競業を規制した り、疲労等によって本業に影響を及ぼすような場合は、処分も可能であるという限定解 釈がなされていますので、それ以上に全面的に禁止というのは、ちょっと難しいのでは ないかと思います。ただ考え方としては、佐藤委員も言われたように、発想として業務 への具体的な阻害やおそれがあるから禁止するというよりも、何か哲学として押さえ付 けているという感じがしなくもないので、その点の問題意識がうまく書けるようでした ら、やってもいいのではないかと思います。 ○ 森戸委員  法的に言えば、複数就業をある程度合理的な働き方として捉えることになると、仕事 時間でないにしても、ほかで働いてはいけないという契約自体、法・公序に反するとま で言えるかどうかは分かりませんが、そういう考え方もできるかどうかという話ではな いかと思います。山川委員が言われた以上のことではないのですが、一応労働契約上は 就業時間外でも、おそらく従業員の身分というのはあって、誠実義務があるという考え 方をするわけです。  もう1つ思うのは、ここに書くかどうかは分からないのですが、公務員に関しては、 兼業は駄目というのがちゃんとあります。それを見直せと書くわけではないのですが、 それがどういう考え方でなされているのかという話に、多分戻ってくる話ではないかと 思っているのです。どこかの学校の先生が、司会をやって怒られたというニュースを最 近聞きました。司会で稼げるような先生は素晴らしいのではないかと思うのですが、公 務員の規定から言うと、もう駄目ということで懲戒みたいなものを食らったと。ほかの 問題もそうですが、一応民間の議論であっても、公務員の話に戻ってくるという意識は 必要なのかと思っております。 ○ 勤労者生活部長  これについて十分言及できていないのは、いま言われたように、すごく重要な問題を 含んでいるのではないかと思い、実は書けなかったというところがあります。すなわ ち、ここには労使関係に入ったときに、使用者に働く人の管理をどこまで認めるかとい う基本問題があります。いわゆる物理的に管理するということが、まず最初にあると思 います。週40時間の大半をある事業所で過ごすとなると、他の事業所で働くことを排除 するという意味で、兼業禁止というのがごく素直に出てまいります。しかし労働者の行 為態様の中でのいわゆる知識部分、外には見えないソフトの部分はコントロールできな いので、実際問題、訴訟等でどこまで使えるかという問題が、民間で起こっているわけ です。  そのように民間で起こる問題を排除するために、公務員については戦前からの特別権 力関係という議論を使って、一身専属で公務に従事するということで、物心の両面にわ たって兼業禁止ができているというところで、問題の解決を簡単にしております。とこ ろが民間はそうはいかないので、まずは知的部分からこの乖離が始まったわけです。そ して所定労働時間内で複数の事業所で働き始めると、まだ4分の3ということで、大半 を特定の企業でやっている限りにおいては、この管理は主要な生活を支える方にお任せ していくということでしたが、10時間、10時間というようにブツブツになりますと、管 理が分断されますから、その裏返しでここでの兼業禁止には疑問が起こってきます。そ の典型例が先ほど言われた兼職禁止なのです。ですから、この管理の在り方をどうする かという基本を押さえないと、この問題は解決しないので、例示的に書かれると非常に 苦しいのです。ですから多様就業の中でいろいろな問題が起こるということで、ごちゃ 混ぜに書かせていただきました。  さらに場所的には、多くの時間を同じ事業所の中で拘束するわけですから、非常にし やすかったのですが、事業場外ということで、みなし規定でそれを少しガス抜きしたの です。いずれにしても、それらを総合的に管理しています。もう1つは社会保障制度 を、4分の3という大層を占めるところだけで適用するのか、いろいろなところで適用 するのかというところで、管理という概念をきちんと整理しないと、この問題は解決し ません。それがキーワードで、まさに佐藤委員の言われた問題が横たわっておりますの で、変に言及すると、かえって混乱するのではないかというぐらいの問題意識です。た だ言われたような議論はありますので、問題提起的にはもう少し整理したいと思いま す。 ○ 諏訪座長  いまの点以外で、就業の場所に関してお願いします。 ○ 山川委員  「就業の場所の明示」ということになってしまったので、別の論点になるのかもしれ ませんが、配転・転勤等に関して、現実に生活と仕事の調和という観点では、かなり重 要な問題になっていると思うのです。それがここでは情報開示ということと、もし、そ ういう情報を開示されて嫌だったら、別の働き方を選択するというトーンが大きいよう な気がするのです。現実にはやはり転勤などはせざるを得ない場合も多いですし、それ をする対象になるような人にとっても、やはり仕事と生活の調和というのは必要である ような感じがします。「明示」と書かれているので、やや土俵を広げることになってし まうのではないかという気もしますが、1番目の○の単なる雇用管理区分の選択や変更 に加え、転勤がやむを得ない場合における不利益の緩和措置、また現在では育休法の第 26条というのもあるところですから、もしかしたら、これは労働契約法の問題なのかも しれないので、一応コンセプトとして、仕事と生活の調和という観点からも、必要な場 合でもその不利益を緩和するという視点があってもよさそうな気はいたします。 ○ 諏訪座長  今のような点について、ほかの先生方はいかがでしょうか。この部分はよろしゅうご ざいますか。それでは、そういう点を少し書き込んでいただくということにいたしま す。  次に、所得の確保という19頁以下の重要な問題、論点について、御意見をいただこう と思います。いかがでしょうか。 ○ 森戸委員  21頁の下から2つ目の○に、「離職理由による支給率の格差が縮小していること」と いうことで、ずっと書いてあって、最後の「転職理由ごとの支給率の格差縮小が合理的 であるといえる」というのは、どういう意味で書いてあるのかという質問です。いま起 きている傾向にありますが、それはそのとおりですねということなのか、こういう格差 があってはいけないと言っているのか。前者であれば、そういうように書く意味がどう いうところにあるのかをお伺いしたいのです。 ○ 勤労者生活部企画課長  多くの場合は事業主都合や自主退社の場合とで、退職一時金に格差を設けているわけ ですが、働く者がキャリアを形成していく上で転職とか、場合によっては仕事外のキャ リア形成といった人生キャリアを踏まえて考えるならば、縮小していくことが必要だろ うということで、むしろ前者の言葉で書いております。 ○ 森戸委員  ではそういう格差は本来、政策としてもないほうがいいという意味ですか。 ○ 勤労者生活部長  実はこの2番目の○は、1番目の○と大いに関係しております。あのときに清家委員 が言われましたが、賃金というものの中には、一部退職金に積み立てられるという性格 があります。自ら一旦賃金としてもらって積み立てていくというパターンでつくり上げ る資産と、事業主が外に置いて留保しながら積み上げる資産について、格差がなくなる ほうがいいのではないかということです。つまり退職金であれば、支給するまではまだ 使用者にコントロール権がありますから、気に入らないことで辞めた場合はそれを減額 するけれど、自分の納得いくものであれば100%出すとなると、給与を払っておいて自 ら積み立てていったものと差が出てくるわけです。  辞めるときに給与の前払いで退職金を自ら積み立てていて、あるとき使用者の意に反 して辞めたけれど、それを取り返す方法がないと。ところが退職金積立てであると、そ こで減額支給すると差が付くということになりますと。今後、転々と移動していく方に ついての資産形成の中立性を確保していくことを重視しようという、(1)の論理を展開 するならば、転職理由によって退職金の額に差を付けることは、だんだん合理性がなく なるのではないかという論理を書かせていただいたつもりです。それをポジティブにや るかどうかは、必ずしも言い切っていないのですが、それも合理性があるのではないか というぐらいで留めております。合理性ということになると、あまりにも突拍子もない ことと言われそうなので、実は離職理由による支給率の差というのは、現実問題として なくなっていますねということも言及しながら、何となく微かに匂わせるようにしたつ もりです。 ○ 森戸委員  そういうニュアンスであればいいのです。この点について2つだけ申し上げると、1 つ目は、結局これは気に入らない辞め方をした人には払わないということから言えば、 悪いことをした人には退職金を払わないというルールと同じことです。辞めた理由で差 が付くというのと、懲戒解雇した人には退職金を払わないというのとは、多分同じルー トにある、同じ土俵の上にあることだと思うのです。これだけだと何となくそうだなと 思うのですが、その先に結構大きな問題、それこそ現行法というか、現代の考え方の大 きな改革を迫るようなものがあるのではないかと思います。ただ、それはあえて書かな くてもいいでしょう。  もう1つは、やはりここにも技術的な問題があるのです。あまりそういうように言い 出すと、先ほどの労働時間で割り引くのと同じように、「では自己都合も会社都合も差 がなく、低い退職金にしておけばいいのね、それで逆に何か特別な人には割増しね」み たいな形に、おそらくできるのではないかという気がします。ただ、それはちょっと先 の話なのでいいと思います。しかし「合理的であると言える」という書き方は、もしか したらちょっと。一応方向として、政策として望ましいと思っていますということが分 かるような感じがいいのではないかという気はしますが、基本的には異論はありませ ん。 ○ 佐藤委員  最初の○はいいと思うのです。税制等が企業の退職金制度の設計に影響を及ぼすの が、問題だと思います。後者の○は、私はなくてもいいのではないかと思います。つま り、うちは長期勤続でいくのだという企業は、長期勤続奨励の退職金制度をつくるかも しれませんし、うちは中途採用がメインで、出入り自由にしよう、あまり長く勤めても らわなくていいということであれば、逆に2、3年で早く辞めたら、いちばん退職金が 高いような制度設計にしてもいいでしょう。そこは私は労使の自由だろうと思いますの で、そこに介入するのはいかがなものかという気がしています。ですから個人的に私 は、この○はなくてもいいのではないかと思います。そうしないと、いま森戸委員が言 われたように一律にしておいて、あとは特別に乗せるというようにすればいいだけの話 ですから、私はちょっとどうかなという気がします。 ○ 勤労者生活部長  いま言われた問題は、1に内包されております。退職金制度そのものが法律上強制さ れていないわけですから、任意の制度なのです。任意の制度をこの世の中に普及させる という思想を持って、もし退職所得控除といった形で、税制上優遇を与えるという思想 があるとすれば、この優遇措置を見直すことは、任意の制度について採用しづらいもの までしていいのか、それとも採用してもいいのか、中途半端な状況にするのかという問 題提起になると思って、2段目の問題がきたのです。  一応退職金を出す企業の中でも支給額に差を付けないとするならば、「退職金制度」 という名前は持っておりますが、給与の別払い方式、もう一遍1に戻って給与の事前払 い方式を、内部留保はほとんどできなくなる税制になりましたので、外部留保の形で積 み立てておくと。その外部留保で使用者が積み立てておくというのと、使用者が労働者 に1回所得で与えて、自らが形成するというのがあって、そちらのほうがどんどん強く なって、ついには退職金制度の支給率は、どんどん差がなくなってしまうという流れで はないか、ということで留めればと思うのです。それを言及しないと、ここで言われた 議論はなくなるということも書きましたし、佐藤委員が言われるように、退職金制度そ のものは任意だけれど、やはりあったほうがいいという立場から言うと、むしろ、ここ まで言及しないほうがいいという理屈ですね。「合理的」などというコメントを加えな いで、事実を押さえるだけにしたほうがいいのではないかという気もしますね。後ろの 段は削りましょうか。難しいでしょうか。 ○ 佐藤委員  私は退職金があったほうがいいという意味でもないのです。前払いでもいいのです が、いまは前払いにしてしまうと逆に不利になるのが、また問題だと思うのです。です から退職金で払うほうが生涯収入が得になるような税制も、問題だと思います。それも 含めて基本的には前払いにしてもいいですし、積んでもいいのですが、そういうものを 中立的な税制にした上で、企業や労使がどう選択するかというのが、いちばん理想的だ ろうと思います。 ○ 勤労者生活部長  おっしゃるとおりですが、同一次元で捉えますと、前払いにすると、いまの所得税法 上は不利になるかもしれないけれど、対使用者との関係では支配権を離れますから、当 該企業を離れたときに多分、減額措置はできないです。契約しておいて返すことはでき ないから、対使用者との関係では前払いが有利なのです。ところが税制上、それを優遇 するかとなると、いまの所得税の課税方式では難しいわけです。そこはオルターナティ ブなのです。その両方のいいところを取ろうというのは、なかなか難しいですねという 問題提起でもあると思うのです。 ○ 北浦委員  やはり「合理的」とまで書いた表現に、引っかかっているのだろうと思う のです。 退職金にはいろいろな効果があります。前段に書いてあるのは引止め効果ですね。ただ しこれこれの事情において、そういうものに引止め効果があるような形にしておくこと が、いろいろな意味で阻害をするとか抑制的になると。そのこれこれというところが、 まさに仕事と生活の調和の必要性を言っているわけです。そういうものに対して支給率 に格差があることが、やや抑制的に機能しているということを指摘すれば十分ではない かと思います。縮小が合理的というようにすると、佐藤委員がおっしゃったように、ど うすべきかは経営政策的な問題にかかわってきますので、事情が全然違ってくると思う のです。 ○ 森戸委員  21頁から22頁にかけてのトーンですが、公的制度として働き方の中立性を侵すような ものは好ましくないというのは、おっしゃるとおりだと思うのです。そこで私がいちば ん思うのは、ここでは現在の加入資格のことをおっしゃっていて、例えば所定労働時間 の要件をもっと低くしたらどうかということですが、そもそも厚生年金や社会保険の加 入資格と企業年金が連動していることがおかしいのです。もともと厚生年金基金があっ て、それが厚生年金の上に乗っていたから、そこは連動してなければいけなかったので しょうけれど、確定給付や確定拠出などのように、連動しない制度がだいぶ主流になっ てきているわけです。おそらく社会保険の加入資格と企業年金の加入資格をリンクさせ る必要は、全くないのです。それは政策的に厚生省がずっとそうやってきたので、それ に乗っているのだと思うのです。ですから私の希望としては、本当はそこは全然別でも いいというように書いてほしいのですが、無理なのかもしれません。根本的には所定労 働時間の要件を低くするのではなく、入れたい人を企業が入れればいいのではないかと いう話が本来だと、私は思っているのです。 ○ 勤労者生活部長  最後の説明だけいたします。お節介だと言われれば確かにそうですが、公的年金で国 民の老後の安心を支える枠組をつくる中で出てくる水準なるものを、国民の安寧秩序を 考えるという立場で、就業中の所得水準との関係も政府としてしっかり考えた上で、自 立自助のシステムの面倒をどこまで見られるか、という発想でアプローチしておりま す。そうすると自らの資産形成とその資産の取崩しを、年金支給開始年齢とフィットさ せていくということがあります。そのために、まず定年年齢等の働く時間を調整すると いうことと、働いている時間に、所得がある間に積立てをして取り崩すというものまで 考えるということは、まずオーケーだと思うのです。  そして、積み立てるというのは全く個人の自由だから、政府は知らないと言うかどう かが違うところなのです。その積立てを奨励しようということで、ギリギリの政策的な チョイスを考えると、結局、公的年金で優遇している範囲でのバランスを取って、どこ までの範囲で優遇策を考えるかということで、加入要件や企業年金と401k個人年金と の関係、公的年金ではないそういったものの仕組みも整理しようということで、要件化 されているわけです。ですから純粋論において、政府は自分で積み立てろと言うけれ ど、その優遇策について一切関与しない。すべて自分で勝手にやってくれという選択肢 も、全くなくはありませんが、多分日本においてはもう少し国民福祉を、ということに なると思います。名前も「厚生労働省」ですから、厚生労働についての積極的な提言を する中で、要件の整合性というものをある程度整えながらやるのが、この組織がある限 りの命題ではないかと思っています。 ○ 武石委員  21頁の上の○について、佐藤委員もおっしゃっていた、退職一時金と賃金で受け取る 場合の税制の問題ですが、やはりそれは書いておく必要があるのではないかと私は思い ます。原案のほうは、長期勤続を優遇する退職所得控除と賃金でもらった場合のアンバ ランスは、言及していないわけですよね。働き方に対して中立的な制度と言っているい 以上、そこが果たして中立かどうかという点を検討する必要があるという趣旨のこと は、入れておいていただいたほうがいいのではないかと思います。 ○ 勤労者生活部長  その部分は正確には言っていませんが、「また」の中小企業の所で、間接的に少し言 及しております。いまの大企業ではなく、中小企業の従業員の所得をうまくカバーして いるというのが、実は税制等の裏返しの関係なのです。ですから、こういった点も十分 配慮してくれということで、オブラートで包んだ言い方ですが、もう少しこういうこと をしっかり言えればと思います。 ○ 諏訪座長  いま「配慮する」とおっしゃいましたが、要するに込み込みで払われているパートタ イマーその他は、ある意味で退職金的な部分も、その中に含んでいるというように考え ますと、やはり税制の中立性という意味で、いま武石委員が御指摘になった点は、我々 としてもどこかで書いたほうがいいわけです。よく読めばどこかに書いてあるというよ り、やはりある所は書いておく。派遣労働者が出てきたり、契約社員が出てきたりとい うことで、これだけ多様化しますと、こうした制度を残しておくこと自体、中長期的に 見て、我々が目指す方向の全体をかなり歪めてしまうというのは、間違いないことなの で、やはりどこかに書いておいたほうがいいのではないかという気がしております。 ○ 勤労者生活部企画課長補佐  そういった意味では23頁のいちばん上の○に、前回の御指摘も踏まえて、また少し違 った角度から改めて取り上げておりますので、書く場所あるいは書き方も含めて、いま の御指摘も踏まえて再検討させていただきます。 ○ 諏訪座長  そうですね。確かにこちらのほうでは触れておりますから、少し再整理をお願いした いと思います。  この後、処遇の均衡待遇という非常に重要な論点がありますので、そちらに移行させ ていただきます。それでは24頁以下の部分について、さらに御指摘がありましたらお願 いしたいと思います。 ○ 山川委員  25頁の3番目の○で、今回新たに付け加えた、「併せて・・・指摘もあった」の意味 についてです。「指摘もあった」ということなので、特に意味を明らかにする必要はな いのかもしれませんが、勤務地や仕事に限定があると雇用期間が短くなるという意味 は、雇用期間の定めが置かれるという趣旨なのかと思います。指摘にせよ、このことと 処遇にどういう影響が出るかということまで、文脈の中で書いたほうがいいのかなとい う気がいたします。その後は指摘を超えてしまうのかもしれませんが、解雇権濫用法理 によって規制があるというのは、コストが高くなるので、純理論的に言えば有期契約の ほうが賃金が高くなってもおかしくはないと。例えば我々が任期制の教員に移行するの だったら、普通は「もっと給料をよこせ」と言うのですが、それが労働市場において適 用されないのはなぜかという疑問があります。ただ、それは報告書に書くようなことで はないのかもしれませんね。期間の定めがないほうが、かつ解雇制限したほうが賃金が 高くなるというのは、市場原理からすると何となくおかしいような気もするのです。単 なる感想です。 ○ 諏訪座長  いま赤の下線部分について質問がありましたので、お願いします。 ○ 勤労者生活部企画課長  今おっしゃったのは、雇用期間が短くなるという所についての御指摘かと思います。 確かにこの御指摘があったときは、有期雇用にするという御指摘だったと思います。こ れは事務局の誤りですので、直させていただきたいと思います。 ○ 諏訪座長  無期が有期ということでよろしいですね。ほかに御指摘はありませんか。 ○ 北浦委員  25頁の最初の1つ目の○が、たった2行だけで終わっているのですが、これには何か 深い意味があると考えるのか。どういう位置付けなのでしょうか。 ○ 勤労者生活部企画課長  いろいろな課題がある中で、絞っておこうということで書いてあるわけです。処遇や 労働条件にもいろいろあるわけですが、労使の関心事ということであれば、やはり賃金 だろうということで、ここに書いているところです。 ○ 佐藤委員  25頁に、「賃金について処遇の均衡を考える」と書いてあるので、それでいいと思う のです。3つ目の○の最後にかかわるのですが、後ろのほうは、全体はパート等の有期 と、フルのいわゆる正社員との処遇の均衡みたいなことがメインに考えられていると思 うのです。もう1つ大事なのは、正社員の中でも雇用区分が分かれてきて、例えば勤務 地を限定しない人と限定する人とがいます。この場合はここと違って、勤務地を限定さ れる人は無期なのです。特に組合などはそうでしょうけれど、勤務地限定の人とそうで ない人とで、企業が負担すべき雇用保障は一緒だと思っているのです。しかし本当にそ れでいいのだろうか、同じ無期だからといって、転勤のある人とない人とで雇用保障が 一緒ということがあり得るのかという気もしているのです。そういう意味では処遇の均 衡と同じように、賃金についてはある程度合理的な格差が認められるとすれば、転勤が ある人と勤務地限定をしている人とで、もしかしたら雇用保障の水準が違うということ があるのかもしれません。ですから本当は雇用保障の均衡というのは、結構大事ではな いかと思っていますが、書くのは難しいのではないかとも思っています。 ○ 勤労者生活部長  これについては私自身もわからないのですが、ごくごく素直に言いますと、勤務地を 動くときに、勤務地を動くかどうかはその会社の本社を中心にして考えますから、営業 戦略上拠点が出来上がったりなくなったりすると、そこに送り込む方は有期のほうが、 その方についても期待値が高まらないし、雇用管理も便利だと思うのです。それがごく 素直に労働者に受け入れられているのではないでしょうか。本拠地のように、自分の企 業が存続する限り必ず事業所があって、そこで働くとなると、逆に雇用保障をするとい う意味で無期にしたほうが納得がいくという、単にそれだけの話がベースになっている のではないかと思うのです。経済学的にいろいろプラス・マイナスを考えると、それが 本当に正しいかどうかは検証できておらず、雰囲気でやっているのではないかという気 がしています。 ○ 諏訪座長  この点も判例などが調整をしていますから。 ○ 山川委員  判例がそれほど明確に議論しているわけではないのです。特に整理解雇のとき、解雇 回避努力のところで議論されることが多いのですが、一般的に勤務地限定だからといっ て、直ちに解雇回避努力が全く必要でないとは言っていないと言いますか、やはり転勤 のための打診とか、そのくらいのことは要求しています。しかし現実的に受入先のほう で、なかなか受け入れる余裕がないという判断を行うことはあるので、実質は違い得る かと思いますが、どうも今の判例では、カテゴリカルに違うということではなさそうで す。ただ、そのことをどう評価するかは別問題だと思います。 ○ 諏訪座長  では、ここはよろしいでしょうか。ほかの点でいかがでしょうか。 ○ 北浦委員  均衡処遇については、ここに書いてあるとおりだと思いますが、その一つの前提とし て、異なる雇用の形の選択肢があるわけです。その選択肢相互の間が自由に選択でき る、あるいは移動できるというのが、まず前提にあるのだろうと思うのです。これは全 体的に書かれているので、多分そうなのだろうと思います。それがあるからこそ均衡だ というようにいかないと、今ひとつストンと落ちないなという感じがしたのです。つま り固定的な働き方があって、それとバランスを取ると言うと、いまの日本の現状のよう に、それぞれの壁がなかなか取れない。まさに移動させんがためなのか、あるいは移動 しようという人がいるための阻害要因としてこう考えるのだと、こういうように考えて いくといいのではないかと思います。ロジックの補強という意味で、そういうことが触 れられるのか、あるいは触れていればそれでいいと思っております。 ○ 山川委員  24頁の下から2番目の○です。「労使の積極的な取組を促すことが必要である」とい うことで、方向性は大変賛成ですが、その具体的な意味と言いますか。一応原則のよう なものを示すということと、それと今のお話とも関係があるのですが、結局企業におい て、どういう人事ポリシーを取っているかということだと思うのです。これはパートタ イム労働研究会でも出されていたところだと思います。例えば「企業の実情に合わせた 検討の場を設けることなど」といった形で、取組の具体的内容と企業ごとの実質化みた いな趣旨を、入れてもいいのではないかと思います。 ○ 諏訪座長  事務局として、この点はいかがですか。 ○ 勤労者生活部長  いまの御指摘は、全くそのとおりです。すでに日本経団連では、均衡処遇についての 基本的なガイドラインを、この5月に決めております。それを現場現場の事業場ごとで 取り組む体制にするということが、多分使用者側のほうにもフィットしている考え方だ と思います。 ○ 諏訪座長  それでは均衡処遇については、このあたりでよろしいでしょうか。  最後に、中長期的に非常に重要な問題であるキャリア形成・キャリア展開の問題につ いて、御指摘いただこうと思いますので、お願いします。いかがでしょうか。 ○ 山川委員  言われていることに異議はありませんが、キャリア税制のことが、退職金の所で出て きておりますね。21頁の1番目の○でしょうか。「長期勤続の者について、キャリア形 成の費用を所得控除の対象にする」とありますが、これは文脈で言うと、退職所得から の控除対象ということになります。しかも、そのものが要した費用というと、退職する ときに確定申告の際、キャリア形成の費用を計上して、所得控除の対象にすると、例え ば60歳くらいの人が30年前ぐらいに、こういうキャリア形成をしたというのも、経費と して算入できるのかといった問題がありそうな感じがするのです。そういう読み方自体 が間違っているのでしょうか。  つまりキャリア税制のようなものが一般的に導入されて、それがいわば退職金所得控 除の見直しの代償処置と位置付けられるのか、あるいは、ここは退職控除だけの話なの かという点が、質問としてあります。そのことと併せて、キャリア税制みたいなことが どこかに書いてあったのかもしれませんが、キャリア形成・展開についての所にも重複 するにせよ、一言あっていてもいいのではないかという感じがします。 ○ 勤労者生活部長  いまの委員の御指摘は、文章を正確に読んでいただいたために起こった話です。文章 の書き間違いです。こういった課税が強化されるのであればということを踏まえて、長 期勤続者が一般的にこういったものを優遇してはどうか、としたいと思うのです。いま の文書ですと、委員の言われたとおりになりますので改めます。そして御指摘のよう に、この考え方をキャリア形成のほうでもう1回言及いたします。 ○ 武石委員  文章ではなくて、全体に生涯学習というのを入れていただいて、とてもいいと思うの です。ただ39頁の全体を見る図が、「仕事」と「家庭」と「地域」という3つの分野に なっているのです。今回入れた生涯学習というのは、非常に重要な側面だと思うのです が、「職場」「家庭」「地域」と言ってしまうと、キャリアというニュアンスがなくな ってしまうのです。私も今にわかに何がいいかは分からないのですが、そこはちょっと 工夫したほうがいいのではないかという気がしています。 ○ 勤労者生活部企画課長  御指摘の点ですが、政策展開の中には「家庭」と「地域」の中に、小さな字で「生涯 学習」というのを入れております。では、いちばん下の「個人のビジョン」の「充実し た人生」のほうで補うような方法で、少し工夫してみたいと思います。そこに何らかの 形で書き加えるということでいかがでしょうか。 ○ 諏訪座長  こういう図というのは、非常にインパクトが強いのです。数字が独り歩きするのと同 じように、図も独り歩きするようなところがありますから、いろいろ工夫していただき たいと思います。先生方から何かいいアイディアがありましたら、お願いしたいと思い ます。 ○ 佐藤委員  1つは、「仕事・能力開発」としてしまうかですよね。ですから「地域」に入れるわ けではなく、「仕事と能力開発」というように1つセットにしてしまうという考え方も あるのではないかと思います。 ○ 勤労者生活部長  そこは迷ったのです。政策展開の所でも、生涯学習があるのです。実は若年対策とし て、地域で事業主と学校とが一体となって、職業教育もやろうとしているのです。です から「仕事」「家庭」「地域」というのは、物理的な区分のつもりなのです。キャリア 形成というのは、その上にずっと乗っかるのです。どこに行ってもやるというコンセプ トです。職場でもやりますし、自らも学習いたしますし、地域でも訓練するということ で、これを包む大概念だと思うのです。特化するというのは、どうも難しいのではない かと思っています。 ○ 諏訪座長  この点で少しいいアイディアはありますか。アメリカのコミュニティカレッジ的発想 からすると、おそらく「地域」の中に生涯学習も入るでしょう。しかし最先端の何かを 勉強することになると、やはりすべて地元でというわけにはいきません。ここら辺はキ ャリアブレークとか、いろいろなものともかかわってくる問題です。ここではにわかに いいアイディアも出ないと思います。我々のアイディアをここまで絵にしてくださった わけですから、さらに一層努力していただくよう、お願いしたいと思います。  もう1つ気になるのは、「家庭」がピンクで「地域」がグリーンというのは、非常に いいのですが、「仕事」がブルーになっているというのは、色彩心理学的にいいのかな という感じもします。 ○ 北浦委員  27頁について、文章は非常にいいと思っているのですが、施策として、時間の問題が 出ていますね。大体資金の問題と時間の問題の2つに集約されます。私は時間について というのが、非常に重要だろうと思いますが、「休暇の付与と短時間勤務の導入」とい う、従来言われていることしか書いていないのです。後は「など」で括られている。も うちょっとそこを広げて検討できるようにしておいたほうがいいのではないでしょう か。つまり時間管理をもうちょっとフレキシブルにすることで対応していく。例えば社 会人大学院などでも夜間だけでなく、昼間もやる場合があったり、いろいろあります。 そういうものを集団的規制の中で個別だけ認めるというのは、なかなか難しいのが現状 ですので、おそらくそこのところをやることで、労働時間管理の形を柔軟化していくこ とが、私はすごく重要な課題だと思っております。 ○ 諏訪座長  他にいかがでしょうか。よろしいですか。  それでは最後に、前回、もうちょっと結論的なもので押さえてくれという、皆様の要 望がありましたので、「結語」が29頁に付いています。この点はいかがでしょうか。 ○ 武石委員  結語と言うよりも、全体で「個々の働く者」という言葉が使われています。結語のい ちばん最初にも「個々の働く者にとって選択できる」とありますが、そこでちょっと気 になるのが、学生や再就職の主婦など、いま働いていない人が選択するというところ が、これだとあまりイメージできないのです。全体にかかわる意見を、今ごろ言って申 し訳ないのですが、3つ目の○には「個々が生涯を通して学び」とあります。「働く」 という形容詞を付けないほうがいい部分が多々あるような気がしたので、ひとつ申し上 げたかったのです。 ○ 諏訪座長  それでは時間になりました。今日は個別の部分で、改めていろいろと貴重なご示唆を いただきました。事務局には最終案作成に向けて、こうした御意見をよく反映していた だくと共に、さらに参集者の皆様は、まだ意を尽していない部分もあろうかと思います から、そういう部分を十分に確認する作業をお願いしたいと思っております。その上で 次回の資料の準備をお願いしたいと思います。その点について、事務局の方から連絡事 項をお願いします。 ○ 勤労者生活部企画課長  次回は6月23日午後3時から5時までです。場所はこの建物の9階の省議室でお願い したいと思います。いま座長からもありましたように、先生方から今日いただいた御意 見を踏まえ、できるだけ修正に沿って取りまとめ、事前にご覧いただくようなことで、 作業を進めたいと思います。そういうことで次回は報告書の最終的な取りまとめをお願 いしたいと考えております。当方でも今日の御議論を踏まえて修正いたしますので、追 加的な修正がありましたら、事前にお寄せいただければ、大変ありがたいと思います。 ○ 諏訪座長  随分お忙しい先生方に、朝な夕なに議論のためにご参集いただきました。大変ご無理 を申し上げましたが、次回を最終回、締括りと考えておりますので、ご協力のほど、ど うぞよろしくお願いします。それでは本日の第12回の会議は、以上をもって終了させて いただきます。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部企画課法規係(内線5349)