04/06/14 医薬品産業政策の推進に係る懇談会第2回議事録           医薬品産業政策の推進に係る懇談会 第2回               平成16年6月14日(月)            於:東京會舘「ゴールドスタールーム」 1.開会 ○高倉経済課長  それではただいまより本年度の第2回の医薬品産業政策推進に係る懇談会を開催させ ていただきます。私は司会進行をさせていただきます医政局経済課長の高倉でございま す。よろしくお願いいたします。最初に大塚厚生労働事務次官より、ごあいさつがござ います。よろしくお願いいたします。 ○大塚事務次官  厚生労働事務次官の大塚でございます。皆様方には大変お忙しいところ、またお暑い ところ、御参集を賜りまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。御案内のと おりでございますけれども、医薬品の振興、そして国民への寄与を目的といたしまし て、一昨年になりますけれども、医薬品産業ビジョンというものを策定いたしました。 大変当時としては意欲的な試みであったというふうに認識しています。またそうした御 評価をいただけたものと考えていますけれども、課題はむしろそれをいかに実行し、実 質的なものにするかということだろうと考えております。  この医薬品産業ビジョンでは、特に当時から5年間をイノベーション促進のための集 中期間という位置づけをいたしました。まさに各般の取り組みをしたわけであります が、この中でやはり重要なのは、その進捗状況を逐一見直し、必要に応じて改定をする というローテーションの作業だろうと思っています。昨年度も1年間を経過した段階 で、アクションプランの進捗状況を取りまとめました。御報告し、昨年の懇談会におき まして御議論をいただきました。全体としては積極的な評価をいただく一方で、いくつ かの厳しい御指摘もございました。  私どもはそれらを受け止めまして、省としてできる限りできるものは前倒し、また新 しい課題は追加して取り組むという姿勢でやってまいったつもりでございます。  さらに1年を経過いたしまして、今般は15年度の実績をもとにアクションプランの取 りまとめを行いました。本日はこれをもとに御議論を賜りまして、その全体の評価と合 わせまして、今後の課題につきまして忌憚のない御意見を賜りたいという趣旨でござい ます。誠に限られた時間でございます。貴重な時間でもございますので、ぜひ忌憚のな い御意見と積極的な御提案を賜りまして、今後の医薬品産業の振興、国民医療の確保の ためにお力添えを賜ればと存じます。  なお冒頭のごあいさつをしたままで恐縮でございますが、ちょうど国会も本当の大詰 め終盤でございます。いくつかの案件が重なっております。私はごあいさつを申し上げ ましたら、誠に恐縮でございますが、ただちに失礼させていただきます。ごあいさつと 同時におわびを申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきたいと思います。ど うぞよろしくお願いいたします。 ○高倉経済課長  大塚次官ありがとうございました。それでは続きまして、本日御意見を発表いただく ためにお越しいただきました出席者の皆様方から、御紹介をさせていただきます。きょ うの議事次第の意見発表の順に御紹介させていただきます。  まず日本製薬団体連合会の理事であり、中外製薬社長でいらっしゃいます永山治様で ございます。次に日本製薬工業協会総括副会長であり、三共社長でいらっしゃいます庄 田隆様でございます。発表順ということで右の方に移らせていただきますが、欧州製薬 団体連合会EFPIAの在日執行委員会会長であり、アストラゼネカの社長でいらっし ゃいますマーチン・ライトさんでございます。次に米国製薬工業協会PhRMAの在日 執行委員会委員長であり、ファイザー製薬社長でいらっしゃいますアラン・ブーツさん でございます。通訳の席の関係で変則的になります。御容赦ください。続きまして5番 目に日本医師会副会長の櫻井秀也様でございます。続きまして日本薬剤師会副会長の漆 畑稔様でございます。最後になりましたが、健康保険組合連合会の専務理事でいらっし ゃいます対馬忠明さんでございます。  続きまして事務局厚生労働行政側を紹介させていただきます。冒頭ごあいさついたし ました大塚の隣の席で、厚生労働審議官の戸苅でございます。その隣が医薬担当の大臣 官房審議官の鶴田でございます。反対側の隣で医療保険と医政の担当の大臣官房審議官 の中島でございます。なお本日当局医政局長につきましては、現在国会対応中でござい まして、後ほどそちらが終了次第、かなり後ろの方になろうかと思いますが、駆けつけ る予定でございます。冒頭の欠席をおわびを申し上げます。  続きまして私の右側医薬食品局の審査管理課長の岸田でございます。その隣が医薬食 品局安全対策課長平山でございます。順次いきまして同局同課の医療機器審査管理室長 の山本でございます。その隣が保険局の医療課薬剤管理官の川原でございます。同じく 医療課の企画官の中村でございます。企画調整室長武田が若干遅れておりますことを、 おわび申し上げます。私の左側が医政局の研究開発振興課長の安達でございます。その 隣が医政局経済課の首席流通指導官市山でございます。隣が同じく医政局国立病院課長 鈴木でございます。同課の国立病院機構管理室長池永でございます。また同じく同課の 高度専門医療指導官の富澤でございます。よろしくお願い申し上げます。 3. 意見発表 ○高倉経済課長  それではお手元の議事次第に従いまして御出席の皆様方から順次御発言をいただいて まいりたいと存じます。医薬品産業ビジョンのアクションプランの進捗状況それ自体に つきましては、本来時間の余裕があれば、この場でポイントを説明してということかと 存じますけれども、非常に限られた時間でございますので、事前に各委員の皆様方には 資料を送付させていただいているということで、説明は割愛させていただきます。本日 の参考資料1、2、3として提出しております。もし内容等で御質問等があれば、後ほ ど意見交換の中などでも御確認いただければと思います。お許しをいただきたいと存じ ます。  進め方につきましてでございますが、お手元の議事次第の順番で順次お願いをいたし ます。御覧のとおりきょうは7人のスピーカーの方にお願いをしておりますので、でき るだけ後半の意見交換、ディスカッションの時間も多く取れた方がということから、大 変恐縮ですけれども、冒頭の一巡の御発表に際しましては、お一人5〜6分程度という ことを念頭に置いてお願いを申し上げます。以前に御連絡さし上げていますけれども、 そういうことでお願いしたいと申します。  またどういった点を中心に御意見をお伺いしたいということでお願いしたかというこ と、後ろの傍聴の方々の便宜もございますので、ポイントのみ御紹介しますと4点、私 の方からお願いしてございます。  1つが医薬品の産業ビジョンの国際競争力強化のためアクションプランの進捗状況、 それ自体についての評価。2つ目としましては、このアクションプランの中で今後特に 重点的に取り組むべきと考えられる事項は何か。あるいは新たに盛り込むことが適当な 事項は何か。そういったようなアクションプラン自体についての重点、追加、そういっ たような論点でございます。3点目としましては、こういった私どもで整理しています アクションプラン云々ということにかかわらず、より広くとらえて医薬品産業力の国際 競争力強化のための産業政策全般につきましての御意見。そして最後の4点目としまし て、これは該当する場合にはということでございますけれども、それぞれの団体あるい は傘下の企業などにおけます国際的な競争力強化に向けた具体的な取り組みで御議論い ただけるようなものがあれば、お願いしたいと。そういった4点を中心に。そうはいっ てもそれにとらわれる必要は全くございませんけれども、広く医薬品産業政策の進め方 についての、率直な御意見をいただきたい。こういった趣旨でお願いをさせていただい ております。  これから意見陳述に移ります際に、1点事務的な御連絡で恐縮ですが、御発言の際に お手元のマイクのスイッチを入れて御発言をお願いしたいと存じます。会場も広うござ いますのでスピーカーを通さないと、傍聴の方等も聞こえないということと、記録の関 係もございます。よろしくお願いします。また同時に御発言が終わりましたら、そのス イッチは消していただくよう、あわせてお願い申し上げます。  なお本日後ほど英語で発表されるゲストのスピーカーの方もおられますが、お手元の レシーバーで3チャンネルが日本語、4チャンネルが英語となりますので、必要に応じ て適宜御活用いただければと思います。冒頭の司会からの御報告と事務連絡は以上とさ せていただきまして、それでは早速最初の御発言、日本製薬団体連合会理事の永山様、 よろしくお願い申し上げます。 ○永山委員  ありがとうございます。資料の関係がございますので、大変失礼ですけれども、座っ たままやらせていただきたいと思います。まずはこの機会を与えていただきまして、日 薬連としても大変感謝をしているということを申し上げたいと思います。それから全体 にこのビジョンについて、我々は大変高く評価をさせていただいているわけですけれど も、医薬品の産業ビジョンということになりますと、バリューチェーンが非常に長いと いうことでございまして、それぞれの機能のところで大変重要性、緊急性が異なるとい う状況でございます。それではスライドといいますか、お手元の資料を見ていただいた 方が見やすいかと思います。  このスライドは上場大手の14社の業績でございます。全体の売り上げが大体5兆円で すから、市場の70%ぐらいを占めているという表でございます。ここに御覧のとおり大 変売り上げ面では厳しい状況が続いています。ほぼゼロ成長ということでございます。 しかしながら各社大変業界環境の厳しさを反映して、費用の削減等を行って、営業利益 あるいは経常利益は、順調に伸びたということでございます。  ただしこの売り上げ、あるいは利益の成長の源が、だいぶ海外にシフトしているとい うことです。現在14社の売り上げの中で、海外売り上げ比率が30.5という、かつては考 えられなかったような数字になっているという状況でございます。研究開発比率は、各 社費用削減の中でも研究開発については積極的に増やすということで、14.3%というこ とになっています。  これは医薬品市場の全体でございますが、先ほど申し上げましたように、この10年間 でもほとんど医薬品市場は売り上げとしては、金額でいきますと伸びていないというこ とでございます。薬価引き下げの年が、赤い○で書いてございますけれども、そういう ときにはマイナス成長という状況でございました。ほとんど10年前と総売り上げは変わ らないという図でございます。  この中から大手9社の連結の売り上げ、これは95年から2003年の期間の累積をいたし ますと、合計しますと連結財務諸表ですけれども、左側の緑で書いてあります7,685億 円、累積で売り上げが増えた。しかし海外が1兆1,593億円ということで、国内はマイ ナスであったということで、大変国内市場が厳しいという繰り返しのような図でござい ます。  それから研究開発面でございますけれども、研究開発費が大変コストがかかるように なってきているわけでございます。これはいくつかのワールドワイドWACCというの は資本コストのことですけれども、D・マーチンさんというアメリカの学者の方が発表 をしたものでございます。1つのものを上市するために大体8億200万ドルぐらいかか る。ただこれには失敗した分も全部含まれていますので、成功するには失敗も含めて8 億200万ドルいると、こういう数字でございます。  製薬協の方で千葉商科大学の山田先生と協力をしまして、日本企業の調査もしまし た。日本では300百万ドルですから、大体363億円という数字と資本コストを今6%で申 し上げたのですが、11%という国際水準でいきますと、大体5億8,200万ドルかかると いうものでございます。海外との差は主に欧米の大手企業の場合は、海外同時開発とい うことで、臨床開発を世界中でやるというような大変大がかりなことになっているわけ ですけれども、その差が出ているかなということでございます。  次のスライドを見ていただきますと、産業発展のための政策への要望ということで、 アクションプランも絡ませて申し上げたいと思います。1つは薬価制度の薬剤給付のあ り方につきまして、現行制度でいきますと2年に一度薬価引き下げという現行制度があ るわけです。これが大変各メーカーには厳しい状況でございます。ぜひこの2年に一度 必ず見直すということについては、見直していただきたいというふうに考えるわけでご ざいます。  それから類似薬効比較ということもございまして、かなり下がったものとの比較とい うことで、なかなか新しいイノベーションによる新しい薬剤の価値に見合った価格がな かなか出てこないということ。この辺についてもぜひ御検討いただきたい。  それから市場拡大再算定ルールの、再算定があるわけですけれども、これについては 毎度お願いをしているわけですけれども、ぜひ廃止していただきたいということでござ います。  それから市場の実勢価格に基づかない特定的な引き下げ、例えば後発品のある先発品 というようなケースがあったわけですけれども、保険財政状況に鑑みましてやむを得ず 受け入れたわけでございますけれども、基本的にこういうものについてはやめていただ けると大変ありがたいということでございます。  それから4月からいよいよ総合機構が発足したわけですけれども、中期計画は大変積 極的に前向きな計画でございますが、この実現をぜひよろしくお願いしたいということ でございます。特に気になりますのは、これからの創薬というのはバイオ、ゲノム、こ ういったものが出てきますので、こういうものを評価するレギュラトリ・サイエンスと いわれていますけれども、この点について審査員の質と量、これをぜひ充実していただ いて、科学技術、メディカルサイエンスの進歩に沿った形で、この機構の運営をお願い できればというふうに思います。  それから医薬品コード統一等のIT化、標準化の推進があるわけです。これが我々が 非常に心配していますのは、大変に費用がかかるということでございます。この点につ いては、何らかの措置をいただけると大変ありがたいということを指摘させていただき たいと思います。  最後になりますけれども、医薬品産業ビジョンの全体進捗の的確な把握と整合性ある 施策の実行ということでございます。先ほど申し上げましたように大変長いバリューチ ェーンの中で、重要度、プライオリティ、ウェイトづけをしていただいて、行っていた だくのがいいかなと思います。  またライフサイエンスという意味では、厚生労働省のみならずバイテクなどがそうで すけれども、いろいろな省庁でライフサイエンスに関するいろいろな新しい施策、予算 の手当がついているわけです。このバリューチェーンというのは全部カバーしておりま すので、ぜひ各省庁とのライフサイエンスがらみの施策については、整合性を持って御 指導いただけると大変ありがたいと思います。  時間もございませんので最後のスライドでございますけれども、左の方の上がいわば 医薬品産業の振興という形でポジティブな、車でいえばアクセル部分でございます。一 方で保険財政の厳しさ、逼迫というものをとらえて薬価の引き下げ等が行われるわけで すけれども、大変厳しいブレーキの部分があるわけでございます。この間をつなぐのが 薬価ということになるわけですけれども、先ほど申し上げたように価値に見合った価格 がないと、せっかく国も含めて投資をしても、この機会をとらえてチャレンジするとい う人たちが出てこないということでございます。  この価格については、先ほど現行制度については申し上げたのですが、新しいこれか らの制度を考える時期がもう近づいているのではないか。その中で指摘をさせていただ きたいのが、イノベーションというものが非常に新しい技術を使い、評価が難しくなっ ておりますけれども、ぜひこの機会に新しい討議の中で、薬価というものは新薬につい ては基本的にメーカーの希望価格をつける。そういうことを一度きちんと議論していた だく必要があるのではないか。そうしないと国が投資をしても、チャレンジャーも出て こないということになります。  またヨーロッパの一部の国を見ておりますと、大変厳しい薬価行政が行われた結果と して、かつては世界の中でもリーディングカントリーであったようなところからの創薬 産業というものが今や消えかかっているという状況でございます。やはり薬の新しい価 値、あるいはイノベーションの価値というものはつくったメーカーが一番理解できる。 それに加えて市場のメカニズムがあれば、いろいろ青天井になるのではないかという心 配もあるわけですけれども、現実にはそういうことはほとんど起き得ない。多少チェッ ク機能というものが必要であれば、何かの形で検討していただければ、それはそれで考 え方があるのではないかというふうに思います。  時間を過ぎてしまいましたので、私はこれで終わらせていただきます。ありがとうご ざいました。 ○高倉経済課長  永山様どうもありがとうございました。それでは続きまして製薬協からの庄田総括副 会長よろしくお願いします。 ○庄田委員  製薬協の庄田でございます。昨年に引き続きまして、アクションプランの進捗状況と 報告書が出されるとともに、私ども関係者の意見を聞いていただく場をつくっていただ いたことを、大変ありがたく思っています。日薬連の御発表に一部重複するところがご ざいますけれども、最初に我が国の製薬産業の現状について簡単に触れ、その後アクシ ョンプランの進捗状況などに関する評価、要望にお話をさせていただきたいたいと思い ます。  お手元の資料の1ページでございます。製薬協の医薬産業政策研究所の最近の報告書 によりますと、我が国の製薬産業は、この10年の間に付加価値を大きく増大させてお り、2002年度ではその付加価値額は2兆600億円、製造業におけます順位は第5位、 シェアは6.6%というふうになっています。国民の健康への寄与ばかりでなく、製薬産 業は、日本の経済を担う重要な産業の1つとなっていることが示されているかと思いま す。  資料の2ページでございますけれども、これは大手6社の売上高推移ございます。 1997年の売上高を100といたしますと、2002年度には海外売上高につきましては、205.2 と大幅に増加をしておりますのに対し、国内売上高は93.4とマイナス成長となっていま す。  御案内のとおりその理由は、日本の医薬品市場そのものが医療費抑制策等の影響で、 ここ数年はほぼ横ばいの状況にあるということにございます。一方で世界の医薬品市場 を見ますと、各国でもそれぞれ医薬品、医療費抑制策がとられていますけれども、有用 な新薬がより早く上市をされているということもあり、確実に成長拡大をしておりま す。  資料の3ページでございますけれども、日本の市場シェアは1993年の22%から、2003 年は11%にまで低下をしております。2008年にはこれが10%にまで低下をしていくとい うような予測もございまして、私どもとしても大いに懸念をしているところでございま す。  このような中各社それぞれ企業の努力によりまして、事業の再構築を進め、原価率の 低減、あるいは研究開発費を除きます販売管理費の圧縮などで、コスト構造の改善を図 ってきております。  資料の4ページがその概要でございます。こうしたコスト構造の改善を背景としまし て、大手14社の平均で、先ほどのと出典が違いますので数字が違ってきますけれども、 対売上高比率で約17%の研究開発費を投入して、国際競争に打ち勝つべく、有用な新薬 創出のための努力を行っております。  資料の5ページでございますけれども、世界の売上高トップ100の製品のうち、日本 企業がオリジンの製品は、13品目がランクされております。まだまだ十分ということは 言えませんけれども、世界に通用する新薬を生み出すという観点から言えば、日本の製 薬企業の国際競争力も着実に強くなっているのではないかというふうに思います。  それでは本題でありますアクションプランの進捗状況に関する評価、要望でございま す。詳細につきましてはお手元に資料2の2として製薬協の意見要望を取りまとめてお りますので、後ほど御参照をいただきたくお願いいたします。  全般的に申してアクションプランは、着実に進捗しているというふうに高く評価をし ております。しかしながら基礎研究基盤事業のように、成果を確認するには、ある程度 の長期の時間が必要である項目、治験環境の充実、あるいは承認審査の迅速化のよう に、比較的短期間に成果、効果を期待してよいものとに大別されるのではないかという ふうに思います。  特に短期間に成果を期待する項目については、取り組みのさらなるスピードアップを ぜひともお願いしたいというふうに思います。研究事業でございますけれども、トキシ コゲノミックス、プロテオームファクトリーなど官民の共同でのプロジェクトにつきま しては、企業各社が直接これらのプロジェクトに参画をしております。したがいまして 業界でもその経緯などをよく把握しておりますが、一方で企業が直接参画をしていない 国の基礎研究基盤プロジェクトについては、現在官から民への技術移転を進めるための TLOの設置推進など御努力をされているということで、大変結構なことであるという ふうに評価をしております。全般に言って具体的な進捗状況や研究成果が、まだまだわ かりにくいというふうに感じております。民間への情報提供のあり方、なおいっそうの 改善をお願いしたいというふうに思います。  次に治験体制の整備促進でございますけれども、資料の7ページ、我が国の治験届け 出数は、新GCPの施行以来、治験の総数、申請分数とも大きく減少しております。ま た次の資料8ページでございますけれども、日本の製薬企業によると近年の治験は、海 外が先行する、あるいは海外のみの治験というものの比率が増えてきております。これ にはいくつかの理由が考えられますけれども、医療関係者のインセンティブが不十分で ある。治験に対する国民の理解がまだ不足している。治験を開始するに当たっての要 件、あるいは実施の要件が日本では極めて厳格である。治験1例当たりのコストが高い ことなどが挙げられております。  全国治験活性化3カ年計画により、大規模治験ネットワークの構築、あるいは治験コ ーディネーターの養成や外来診療を行う治験実施施設の充実、これに取り組んでいただ いていることにつきましては、業界でも高く評価をしております。業界自らも医師に対 する研修事業の支援、あるいは治験に対する国民の理解を得るための広報活動など、さ まざまな対策を講じているところであります。  全国治験活性化3カ年計画の中で、医療関係者へのインセンティブのあり方、あるい は治験が日本で高コストであることの要因の分析などを実務担当者のレベルで、検討を 開始されるというふうに伺っております。これは大変結構なことではないかというふう に思います。治験の環境が改善されなければ、日本の患者さんが新薬のメリットを享受 するまでの時間が現在よりさらに伸びてしまい、ひいては我が国の医療水準の低下にも つながりかねない問題である。官と民が協力をして問題点の徹底的な分析と改善への取 り組みを特にお願いしたいというふうに思います。  資料9ページでございますけれども、総合機構につきましては、承認審査の迅速化や 安全対策の充実を目指した体制整備が進められているということは、大いに歓迎をして いるところでございます。総合機構の業務につきましては、中期目標及び計画が発表さ れております。まずはこれを着実に実行、お願いしたいと思います。審査手数料の値上 げという形で業界も応分の負担をしており、承認審査の迅速化が確実に図られるという ことを、大いに期待をしているものでございます。  そのためには総合機構と業界との間で定期的な意見交換、これを行って承認審査の迅 速化が促進できるような体制を御配慮いただけたらというふうに思います。  次に流通コードの新たな標準化という項目につきましては、流通の効率化並びに医療 安全の向上という2つの目的がございますが、業界自らも前向きに取り組んでおりま す。ただし実施に当たりましては、企業側でも相当な設備投資を要します。普及に当た っては利用者側である医療機関でも、情報を活用するためのシステム構築など、インフ ラ整備が必要になってくるかというふうに思われます、国の何らかの支援策も御検討い ただけたらというふうに思います。  知的財産につきましては、業界から8年間のデータ保護を要望しておりますが、現在 内閣府の知的財産戦略本部で検討が進んでいるというふうに承知しております。これが 確実に実現するように、厚生労働省からも積極的な働きかけを、ぜひともお願いしたい と思います。  最後になりますけれども製薬産業について我が国の戦略産業の1つとして、その国際 競争力を強化するということを、国の政策として取り上げていただいているということ は、私どもにとって、大変に力強いものでございます。日本の製薬産業自身も世界規模 で事業活動を行っていくために、日々最大限の努力を払っているところでございます。 ホームグラウンドであります日本において、研究開発の成果であるところのイノベーシ ョンの価値を十分に評価をする薬価制度、これの実現が強く望まれるところでございま す。  冒頭で述べました産業力の付加価値から見る、こういう意味で製薬産業が第1位を占 めておりますイギリスでは、省庁の垣根を越えて、政府と産業界でタスクフォースをつ くって製薬産業の競争力を具体的な指標を用いて、産業振興を図っているというふうに 聞いております。日本におきましても厚生労働省を中心に、省庁の垣根を越えて、関係 官庁と産業界によるタスクフォースをつくって、製薬産業の国際競争力を測る具体的な 指標、これを設定し、その指標に基づいて産業競争力が強化されているかどうか。この 進捗を見ていくということも、1つの方策ではないかと考えます。御検討をよろしくお 願いしたいと思います。時間を超過しましたが、以上が私の意見陳述でございます。 ○高倉経済課長  庄田様ありがとうございました。それでは続きまして欧州製薬団体連合会在日執行委 員会会長のライト様お願いします。 ○ライト委員  欧州製薬団体連合会のマーチン・ライトと申します。高倉さん、御招待ありがとうご ざいます。時間の問題がありますので、私はスライドを2枚お見せしたいと思います。 その中で、EFPIAが重要視する問題について、御説明したいと思います。  まず製薬産業というのは、国民の健康の向上にとって重要であります。これは日本に 限らず、どこの国においても同じであります。ですからこそ医薬品産業ビジョンを遂行 することは、非常に重要だと考えています。  このバリューチェーンを見ていただくとおわかりのように、非常に包括的なビジョン を厚生労働省は掲げておられます。そしてアメリカではこの医薬品産業を成長させよう とする環境は、もう既にあります。またG10医薬品レポートに沿って、欧州の方でもこ ういった方向に向かっております。つまり医薬品産業の競争力を高めようという方向に 向かっております。  このバリューチェーンの中で2つカバーしたいと思います。プライシング、それから 患者さんがどれくらい早く新しい医薬品にアクセスを持てるか、この2点に絞って述べ たいと思います。  まずプライシング、薬価制度です。日本において競争力のある製薬産業にするために は、この競争力というのはやはり革新によってもたらされると思います。成功裏に達成 された革新というのは、何によって促進されるかといいますと、やはりきちんと評価さ れるということによって引き起こされると思います。  そして前の2人のスピーカーもおっしゃいましたけれども、現在の薬価制度をある程 度見直して、新規医薬品が適正に評価されるような形にしていただきたいと思います。 現在のアレンジメント、現在の制度はあまりうまく機能していないと思います。特に新 薬、これは非常に異常なわけでありますけれども、例えばいわゆる小児用の適用、こう いったものを持った医薬品の開発も重要だと思います。  そこで問題になってくるのは再算定です。再算定というのは非常にいい医薬品である から売れた、だからその薬価を下げるということであります。まさに罰則を掛けるよう な問題がありまして、これは革新に逆行するものだと思っております。そういった意味 で政府に対してはヘルスケア、全体を見直して、それからGDPに対してどれくらいを ヘルスケアとして使うか、医療費として使うかということを、ここしばらく横ばいであ りましたけれども。例えばイギリスにおいては、これを理解いたしまして、GDPに対 する医薬品、あるいはヘルスケアルスケア、医療品、ヘルスケア産業で使う予算の割合 を増やしております。これこそが将来的な国民の健康に資するものだというふうに感じ たわけでございます。  そしてこの革新ということでございますけれども、8年間のデータ保護について述べ たいと思います。これは非常に重要だと思っております。ヨーロッパでも現在実行され ておりますけれども、日本にこれを導入することは、我々の日本における製薬産業の活 性化に重要だと考えております。ですからぜひ実行していただきたいと思います。  それから患者さんに新薬をどれくらい早く届けるかということですけれども、ここで はやはり我々がすべきことがたくさんあると思います。皆様方も同意なさると思います けれども、ヘルスケアシステムの向上というのは、患者さんの便益にかなうことであり ますし、国民の健康の向上に資するものであります。その中で最も重要なものは、非常 に新しい新薬を早く患者さんに届ける。これがとても重要になってまいります。  新しいPMDA総合機構ができましたけれども、審査期間を迅速にするということ は、かなり改善されてまいりました。ですから今後もPMDAがパフォーマンスターゲ ットという目標を掲げておりますけれども、それをさらに越えて迅速化していただきた いと思います。そしてさらにさまざまな資源を追加配分して、この目標達成に邁進して いただきたいと思います。初期目標の達成を願っております。  しかしながら次のスライドを見ていただきたいのですけれども、新製品の上市が遅れ る、その理由の1つは、申請の遅れがあるわけです。これは何とか今後展開していくに 当たって是正すべき点だと思っております。事前相談システムというのがありますけれ ども、一つ一つの薬剤ごとに事前相談は、行っていただいており、新しい統合機構にお きましても、どういった臨床試験が必要かということも相談に乗っていただいておりま すけれども、まだうまく機能しているとは言えないと思います。そういった段階で、現 在まだあまりうまく機能していないため、新薬が市場に出る時期が、やはり遅れてしま っているというということであります。  そしてこのバリューチェーンを見ていただいておわかりのように、確かに研究開発費 は非常に高くなっております。毎年毎年伸びております。そしてコスト管理する、理由 の1つは、世界的に管理していくことが必要だと思います。つまり世界的な開発パッケ ージを日米欧で同時に申請できるような体制にもっていくのが、非常にいいことだと思 っております。  そのために日本独自の要件というのを、やはり盛り込むことが必要だと思います。こ れはアメリカ、それからヨーロッパでもそうです。確かに世界同時申請、同時開発とい いますけれども、それぞれの地域の要件というのが、それぞれ盛り込まれております。  そしてこの問題の解決に当たっては、ぜひ日本でも同時申請を可能にしていただきた いということであります。アメリカ、ヨーロッパと同じ申請を可能にしていただきたい と思います。  それから3カ年の治験活性化計画でありますけれども、これも重要なステップだと思 います。そして治験の環境を整えていく、強化していくということは、新薬の開発にと って重要です。そういった意味で厚生労働省が、この計画の推進にぜひ邁進していただ きたいと思います。3カ年が終わった段階でさらに次の目標を目指していただきたいと 思います。  それからEFPIAからもう1点申し上げたいことがあります。私どもの考え方とし ては、この3つのページに示されておりますので、ぜひ後でまた読んでいただければ幸 いです。どうもありがとうございました。 ○高倉経済課長  では続きまして米国研究製薬工業協会のブーツ様、よろしくお願いします。 ○ブーツ委員  日本のファームを代表いたしまして、発表させていただきます。先ほどのスピーカー と同様に厚生労働省に対しましては、今回このような私どもの意見を発表させていただ くチャンスをいただくことができまして、ありがとうございます。こういった形で私た ちにチャンスが与えられるということは、業界の意見を取り入れることの重要性を認識 していただいているからだと思います。特にコスト削減ということは、非常に難しいこ とだと思います。またこれに対しまして実行するということは、非常に重要であるとい うことは、私どもも十分に知っております。  私は先ほどの同僚が言ったことをもう一度繰り返すつもりはありません。基本的には 先ほどのお話が全くそのとおりだと思います。細かい点についても、本当にそうだと思 います。最初の2人のスピーカーの方々もちゃんとお話が出ましたように、日本が世界 の製薬業界において、非常に重要な役割を果たして、日本市場だけでなく世界市場に対 して非常に重要な新薬を提供してきました。ところがいろんなところを見ますと、日本 の製薬の競争能力は、どんどん下がってきております。  それは先ほどの庄田様のプレゼンテーションの中に出ておりますように、イノベーシ ョン、新製品、創薬、いろいろな臨床の問題、こういった承認の問題、こういったもの を警告として見ていかなければいけません。何か非常に大きなことが起きなければ、状 況は変わりません。もし変わらなければ日本の製薬業界は、これから10年間、競争力が どんどん下がっていくという危険にさらされると思います。  そこで私としましては4つの点を中心に考えていただきたいと思います。その中でも ちろん厚生労働省に対します感謝の念を、私どもとしても表したいと思います。またそ の中でこれからどうしていけばいいかということをお話したいと思います。  まず治験環境の改善ですが、2ページ目です、これを御覧ください。既に全国で治験 活性化3カ年計画の中で、一連のさまざまな取り組みが着実に推進されておりますが、 やはりまだこれからも改善しなければならないところがあります。例えば治験コーディ ネーターのますますの増員、また治験参加医師へのインセンティブの向上、日本の医師 は、やはり治験に参加するのは、とても大変だということで、また十分なリウォードが ないということでなかなかドクターとかナースが、参加できにくい状況にありますの で、それに対するインセンティブの向上を目指したいと思います。  また治験実施施設の増加、及び質の向上が求められます。これに対しまして1つ提案 があります。次のスライドでも繰り返していることですが、これを改善する、簡単にで きる1つの方法があります。それは日本とそれから西洋のデータということを対比する のではなく、アジア横断的な治験を認めることによる競争の増加、このままにしておけ ば、プロトコルとかいろんな審査が増えるだけですので、今アジアの世界でいろいろな 申請のためにデータが得られておりますので、そういったものを十分に使うということ が考えられます。これは非常に難しいと思われるかもしれませんが、私のように多国籍 企業といたしまして、いろんなところで仕事をしておりますと、いろいろなところのサ イトの質は上がっておりますので、そこから上がってくる仕事の質も高くなっておりま す。この治験の中でもやはり競争ということが必要だと思います。ですから政府からの スティミュレーションでなく、競争ということも必要だと思います。  また新しい総合機構ができまして、私どもは大変喜んでおります。この機構によりま していろいろな新しいことが実行されると期待しております。短期的には非常に難しい ところもあるだろうと思いますけれども、私どもといたしましては、新薬の承認が遅れ ているのを大変心配しています。できるだけ早く審査員の方を訓練して、いろいろな設 定した数値目標を実行していただきたいと思います。  また先ほど申し上げましたように、このようなアジア横断的な治験を認めるというこ と、これは海外のデータを入れることになりますけれども、ただ部門の中にはやはり特 に外部のコンサルタントがこういった外からのデータを受け入れにくいと思われる方も いらっしゃるかと思いますけれども、やはりハーモナイゼーションの促進、また医療技 術の進歩や患者のニーズにて対応するため、欧米の承認基準とのハーモナイゼーション の推進が必要だと思います。  このハーモナイゼーションにつきましてですけれども、ここについては特に日本が遅 れているところが2つあります。1つは承認を、特にバイオ医薬の承認のプロセス、も う1つは配合剤についてであります。世界はもう配合剤については、もう20年前にやめ ております。また西欧ではもう一度それを逆の方向にして、動かしております。ところ が日本ではまだ承認のステージさえ至っておりません。それにつきましてできるだけ早 急に解決策を見たいと思います。  次に知的財産保護ですが、日本がやはり競争力を持つためにも、8年間のデータの保 護期間を設立することが必要だと強く考えられます。厚生労働省といたしましてもこの 8年間のデータ保護期間の設立のためにも努力していただきたいと思います。これはた だ単に厚生労働省の責任というだけではないのですけれども、特に日本における職務発 明の対価の問題に関しまして、これはリサーチベースの企業にとりまして、大変大きな 問題になっています。これに対しましても政府の適切な対応を期待しております。これ につきましてもいろいろな政府省庁に対しまして、もう一度よく見直すように要請を出 しております。これは特に日本におけます、特に創薬の力を維持するためにも必要です ので、これはパテントのローの31条のところに関しておりますので、これはぜひ早急に 解決、適切な対応をお願いしたいと思います。  次に薬剤給付制度ですけれども、特に薬剤の価格です。個々の価格設定につきまして は、私どもといたしましては、今のシステム、これは今とは違う時代につくられたもの であります。これは90年代の政策に基づいたものです。もしこれで先ほどの3つのこと も考えた上で、ここのところももう一度見直していただきたいと思います。今までのポ リシーを続けていけば、この産業は必ずつぶれてしまうと思います。  具体的ないろいろな要望がありますが、とりあえずとしましては現在のシステムを何 とか改善していただいて、できるだけダメージを減らしていただきたいと思います。P hRMAだけでなく皆様も同じだと思いますが、日本の新しい薬価制度、これを一から つくっていただきたいと思います。既にこのデザインのプロセスを始めていただいて、 例えば4年以内に新しいものをつくっていただければと思います。  コストを下げなければいけないという政府の考えとそれから業界政策ということもあ ります。いろんなジレンマがあることはわかりますし、また私たちといたしましてはそ のために厚生労働省のいろんな形態の中に、一貫性が見られなければならないと思いま す。GDPの中における薬剤費を例えば7%にするとか、あるいは薬事比率を20%にす るようなものが出ていますけれども、なぜそういったことをしなければならないのか、 合理的な根拠がなかなか見られないのです。  特にこれから日本におきましては、高齢化がどんどん進んでいきます。そのような中 でなぜこのような数字を出さなければならないのでしょうか。これは昔の人口動態の動 静を見たときに出てきた数字かもしれませんが、今はこれは全く当てはまらないと思い ます。やはり国のリソースを適切に配分するということになりますと、この高齢化社会 に何とかしなければならない。高齢者に対してのヘルスケア、これは一番大切な問題と なります。どの国におきましても、どの社会におきましても、いろいろなサーベイを出 せば、これが一番重要な問題だと出てくるものであります。ですから厚生労働省だけで なく、政府全体で考えていただきたいと思います。  やはり政策そのものをもっと前向きに、物事が起きる前に対処していただきたいと思 います。私といたしまして、お話したいポイントは以上でございます。 ○高倉経済課長  それでは続きまして日本医師会副会長櫻井秀也様、よろしくお願いいたします。 ○櫻井委員  日本医師会の櫻井でございます。実は昨年も同じ会に呼んでいただきまして、医薬品 産業ビジョンの進捗状況に対する、何か意見を言うようにということで、意見を申し上 げました。そのときに医薬品産業ビジョンということで、医薬品産業の皆様方が、国際 的な競争力をつけて、創薬をつくるというようなことも実現しながら、やっていく。そ のことは大変結構ですし、また今回の資料でいただいた進捗状況からいっても、いろん な面で努力されていることはわかるわけです。  そのときにも申し上げましたように、本来このビジョンの最終的な目的、それはもち ろん書いてあるわけですし、いろんなところにも言葉が出ましたが、よい医薬品を早く 患者さんへ提供する。これが最終目標なのであって、患者さんに届かない薬を一生懸 命、医薬品産業界がたくさんつくってみても、しょうがないわけです。最終的にはその ことが行わなければいけない。  そうなると1つの問題点は、いろんないい薬ができて、先ほどのいろんな治験の問 題、あるいは申請の問題はありますけれども、それが早く届くにしても、本当にそれが 必要な患者さんのところに、一言でわかりやすく言えば、平等に届いてくれるか。平等 という意味は医療として必要に応じて平等という意味でいいんですけれども、そういう 制度がなければいけないわけです。  これは医療の制度、つまり日本で言えば、日本の医療保険制度と非常に大きなかかわ りを持っているのではないかと思います。せっかくいい薬ができても、それが患者さん に届かない。わかりやすく言えば、ある制約があって、例えば日本の皆保険制度であれ ば、きちんとした医療上の必要があれば、全員に、どの患者さんにも平等に届きますけ れども、それが何らかの制約で、あなたの保険の場合にはこの薬は使えませんとか、あ るいはあなたはお金を出さなければこの薬を使えませんよというようなことが行われて は、意味がないと私は思っています。  したがって我々としてはこの医薬品産業ビジョン、産業界の活性化は日本においては 今の日本の国民皆保険制度という医療保険制度をきちんと守っていくという前提で、議 論をしてほしいというのが、一番のお願いです。現在一部のというか、特に規制改革民 間開放推進会議の人たちの意見は、もう公的なオフィシャルな国民皆保険制度は、これ 以上費用を増やすことは無理であり、あとは自由診療でお金を出した人だけに、医療を 提供することにして、公の保険は縮小していこうということを言っている人たちがいま す。そういうことが行われるということで、例えば医薬品産業界が活性化しようという ことをもしねらうのであれば、それは私たちは反対したいと思います。  当然今の4人の方々は、どちらかというと製薬、薬をつくられる方々のことで、いろ いろな問題点を指摘され、特に日本の薬価制度についての指摘がございました。これは 当然日本の今の医療保険制度の中において、医療費の抑制政策というのが、非常に強く 打ち出されているわけです。その中での議論になっているところに、確かに問題点があ ることは、私もそのとおりだと思っています。やはり根本の問題は、日本の医療保険制 度を守りながら、かつ医療費をもっと拡大できないかということにあるわけです。その ことの議論をきちんとしなければいけないのではないか。そのように考えています。  薬価の問題で、特に今のイノベーションというか、創薬をする、そのときの評価とい うことが出てきましたが、それはもうおっしゃるとおりです。私が申し上げましたよう に、日本の国民皆保険という医療制度を維持することを前提に議論すれば、今の医療保 険の費用というのは、保険料と税金と患者さんの一部の負担によって成り立っていま す。ですからその中に研究開発という大変重要な部分の費用を反映させろということ は、非常に難しい面があると私は思っています。  というのは今の医療保険制度は、例えば我々が行う医療においても、医療そのものの 研究開発は、認めていません。もう出来上がった治療、出来上がったものを国民に提供 することだけを認めているのであって、例えば予防的なものでさえ認めていません。当 然我々が、例えば皆さんがつくったあるAという薬が、その効果以外に、例えば何か循 環器の効果があるという薬を、消化器にも効くかもしれないから使ってみようというよ うなことの実験というか研究は、許されていません。  具体的な例をもっとちゃんと言えば、最近学会等でピロリ菌の除菌をするということ で、全然関係なさそうな血小板減少症が治るみたいだというようなことも発表されてい ます。では今の保険で、血小板減少症の人にピロリ菌の除菌をしようということを、我 々がやって、それを保険上やったら認められません。つまりそういう研究開発は、今の 医療保険制度の中では認められていないわけですから、当然薬の部分について、それを すべて研究開発を保険でカバーしろということに、難しい問題があると私は思っていま す。  しかしながらそれを認めなければ、新しくいい薬ができないという皆さんの御意見も よくわかるわけです。それをどうやってうまくやっていくかということが、非常に問題 点ではあると思います。  その部分で研究の部分の報告が、この資料の中に研究でこの辺が進んでいますという のが出ていますけれども、見ていきますと、簡単に言えば基本的な研究とか基盤となる ような研究、そういうようなことで国もそこにお金の追加、援助する形で産学連携の共 同研究等が行われていることが報告されています。大変この辺はすばらしいと思いま す。この辺の部分をもう少し拡大する必要が、国の努力としてはあっていいのではない か。  さらに一メーカーがいろんな創薬というか、新しい分野に取り組んだときの研究、そ れに対して何らかの形で、共同的な研究と同じような研究のその評価というか、補助と いってもいいのでしょうけれども、それができるようなシステムも、考えようによって はできるのではないかというふうに思っています。  これは私は内容はよく知らないのですけれども、同じ厚生労働省の厚生科学課という ところで、研究開発の推進戦略の案という報告を、この間出しました。その中に戦略的 な目標を指定する形の、成果契約型、アウトカムを契約するという意味なのでしょう か、成果契約型研究を創設する考えを打ち出したという報告書が出たので、これはどう いう内容なのか、私はよくわからないのですけれども、言葉からいうと、何かそういう 新しい成果をつくれるということを、1つの前提に新しい研究費を出す。つまりそれは ある意味ではイノベーションにつながるような研究助成ができるのかなと思っていま す。そういうふうな単に浅く広くというか、下の部分、基本の部分、基盤の部分だけで なくて、そういう部分にも何かそういうことができれば、メーカーさんたちというか、 皆さん方の新しい意欲につながるのだと思います。  さっき申し上げたようにすべてそういう研究開発のものを、保険制度の中で全部取り 入れると言われると、保険制度そのものがちょっと今のままでは難しいのではないか。 ただどちらにしましても、ブーツさんがまとめにも書いてくれたように、日本の政府は 医療費抑制のみならず、医療への投資を拡大することを検討すべきだと、ブーツさんが 言ってくださったのですが、まさにそのとおりだと思っています。  医療というのは、我々とすれば国民全体に必要に応じて平等に提供されるべきものだ ということを前提に、もしこれが産業であるとすれば、一番今必要な産業だと思ってい ます。一番成長する産業だと思っています。国はそこへ投資をすることによって、むし ろ経済は活性化するし、国民もそれによってその利益を受けることができるのではない かというふうに考えています。  そういうことで総論的なことで終わりましたけれども、そういうふうに思っていま す。以上です。 ○高倉経済課長  櫻井様どうもありがとうございました。続きまして日本薬剤師会副会長漆畑さん、よ ろしくお願いいたします。 ○漆畑委員  漆畑でございます。私の方も基本的には今お話されました、櫻井日本医師会副会長と 同じような考え方を持っています。医薬品はものでありますけれども、私はあちこちい ろんなところでお話をしておりますが、今医薬品は患者さんにとっては医療手段であり ますから、研究開発ももちろん大変重要なんですけれども、流通と、それから特に患者 さんの医療に必要なときに適時、それが医療機関あるいは患者さんが入手できるよう な、流通の仕組みまできちんと確保されて、全体として医薬品産業として、成り立つ し、あるいはそれで医療が向上するというふうに考えています。  医薬産業ビジョンでありますけれども、これについては、私は前回去年のこういうよ うな席でもお話させていただいたのですが、国がこういう考え方を、しかも年次計画を 持ってそれを公表して、関係者の意見を聞きながら進めている。特に進捗状況まで公開 しているという、こういうことについては、高く評価をさせていただきたいと思ってお ります。進捗の状況も予定の範囲でありまして、また積極的な姿勢については評価させ ていただきます。  前回のときも16項目ほど、具体的な考え方をと提案させていただいたのですけれど も、きょうの時点でも基本的には考え方は変わっておりませんので、きょうは特に用意 してございません。その中で特にそれ以後重点的にお願いしたいお話だけさせていただ きたいと思います。  特に私の方は流通に関係したことが多いわけでございます。全体の話でありますけれ ども、この医薬産業ビジョンの中身を見させていただきますと、どうしても大型企業の 集約化といいますか、大型化のような、そういう側面が非常に強い、結果的にそういう ふうになるようなことに、どうしても受け止めてしまうわけです。私としては大企業だ けではなく、医薬品産業、中小企業もございますので、中小企業の開発力とかあるいは 企業力とかをなおざりにすることのないような、産業政策を進めていただくと、具合が いいと思います。  特にオーファンドラッグにつきましては、もちろん大手の企業もですけれども、中小 企業の研究力を強化することで、市場規模の小さな医薬品開発がされたり、それが患者 の医療に供されることが促進されるというふうに、私は考えています。そういう点での 御配慮をいただきたいと思います。税制での優遇措置もありますけれども、特にそうい う点を強化していただくと、大変ありがたいと思います。  それからきょうも含めて、関係者の意見なりあるいは医薬品産業ビジョンそのもの は、どうしても医薬品先進国といいますか、日本、アメリカ、ヨーロッパのような医薬 品先進国を中心に考えられているわけですけれども、これはある意味ではやむを得ない と思います。医薬品産業という視点から見れば、アジアとか先進国以外のところの市場 も大変重要であります。先ほどアラン・ブーツ氏から、治験についてアジアとか医療先 進国以外のところのお話もございましたけれども、産業政策としてもそういうところに どんなふうに取り組んで、目を向けるかということを、少し御議論いただけるとよろし いかなというふうに聞かせていただきました。  それから前回からお話をしていることなのですけれども、医療医薬品の広告でありま すけれども、全面的に一般の商品のように、医療用の医薬品の広告を自由にするという のは、これまでできにくいかと思うわけですけれども、今これは情報提供の一環とし て、今よりもう少し一歩踏み込んだ、企業の医療医薬品の広告があっても、私はよろし いかなと思うわけです。  患者さんの利益になるような、患者さんが医薬品を選択できるような、そういう医薬 品の情報を選択できるような、そういう視点から医療医薬品の広告については、一定の 条件があるとしましても、もっと緩和していただくことが望ましいのではないか、こう いうふうに考えます。  お手元の参考資料の3のところの、流通のところをちょっとお開きいただきまして、 その中身で少しお話をしたいと思います。販売等という資料3の10ページからです。2 番目のところに中長期的な観点からとありまして、薬価制度、薬剤給付のあり方につい て検討と書いてあります。これは先ほどから関係者の方のお話にもありましたように、 薬価制度と保険給付について、さまざまな御意見があるわけです。ここにあります2002 年度からの医政局経済課の検討課題として2つございますけれども、今後の薬価制度、 薬剤給付のあり方について中長期的な観点から情報収集や意見交換等を実施ということ であります。  その意見交換していただくのは、ぜひやっていただきたいのですが、薬価制度と薬剤 給付がややもすると、ごっちゃ煮といいますか、ごちゃまぜに議論されているような、 そんな気もしますので、薬価制度、薬価の問題と薬剤給付の問題は、関連はありますけ れども、きちんと分けて議論をいただきたいわけです。  特にそういう意味では、先ほど櫻井先生もおっしゃいましたように、薬剤給付につい て私どもは基本的に現行の仕組みを維持して、少なくとも患者さんの手元に安価に、医 療の手段として提供される仕組みが維持されることを、これはぜひ続けていただきたい と思います。  薬価の問題で言えば、いい薬が、画期的な薬に限らず、医療上有益な薬が、高い薬価 がつく、よい評価をされるということに、基本的に私は反対ではございませんけれど も、医療者の立場から見れば、患者さんにいいものがより安くリーズナブルに、提供さ れるというのも、大事なことだと思います。そういう観点も含めて薬価の議論を進めて いきたいと、あるいは進めたいと思っているわけです。  それから後発品の使用促進のことが言われています。これは薬価の面でもあるいは医 療制度改革の中でも、大事なメニューとして位置づけられているわけです。これに私も 基本的には賛成させていただいているのですが、後発品の使用促進につきましては、薬 価政策とか、あるいは診療報酬、調剤報酬だけでなく、もう少し幅広に議論をしていた だきたいと思っています。  特に後発品の流通の面ですけれども、今多分きょう以外の機会に卸を代表する方の発 言があったと思うわけですけれども、後発品の使用促進がされますと、卸さんにとって は同じ医薬品が、いわば単価の安いものに切り替わっていくわけです。卸さんとしては 売り上げを落とすことになるわけです。こういう経済環境でありますと、大変重要な卸 さんの経営にかかわることであります。そういう意味では卸さんが、後発品の使用促進 については、流通面で一体どのように施策を打つかということが、大事なことになると 思います。  それから後発品の中の一部かもしれませんけれども、私ども医療者から見ますと現実 に入手が不可能な医薬品がございます。先ほど言いましたように患者さんの医療手段と いう観点から言えば、入手が不可能、あるいは流通しにくい薬というのは、大変問題で あると言わざるを得ないわけです。  それから合わせて小包装の御議論がございます。お手元の資料では小包装について、 薬価収載前後の流通の確認をするようなことが書かれているわけです。小包装につきま しては、前回のこのような席のときに包装形態の工夫で、小包装の流通が促進されるよ うなことができないかということ、例えば100錠、500錠、1,000錠、1万錠というよう な現行の包装形態があるわけですけれども、1,000錠というのは100錠包装の10倍という ような、そういう包装の仕組みをつくることで、企業、メーカーさんが改めて1,000錠 と500錠というような別々の仕様といいますか、そういう形の包装形態をつくらなくて も、安易に流通できるような仕組みを、ぜひ工夫をしていただきたいと思います。  小包装の流通は必須でありますけれども、そのために過剰な経費がかかることのない ような工夫をぜひ御検討いただきたいと思います。  それから11ページのところですけれども、国際的整合性に配慮した大衆薬の市場の活 性化というのがございます。大衆薬市場の活性化は、私どもとしてもぜひお願いしたい ところでありまして、今までもさまざまなところで、スイッチOTCの促進とか、ある いはダイレクトOTCの促進などをお願いしたところでございますけれども、特にここ の記述がセルフメディケーションを進めるという観点から、一般医薬品についてあり方 について研究をされたり、あるいはそれを促進するということになっています。  このセルフメディケーションということになりますと、これは薬というものだけで議 論するわけには、当然いかないわけですから、ものと同時に一般医薬品も流通しており ます薬局とか薬剤師と、医師、医療機関などの連携の仕組みをきちんと担保すること で、国民、患者のセルフメディケーションが推進するようなことをしていただきません と、単にものに関する施策だけでは、場合によっては問題が発生しかねないという、そ ういう認識を持っています。  それから付帯テーマのところの、国際的整合性に配慮したという、国際的整合性とい うのが、いまひとつ具体的にわかりにくいと思っております。この国際的整合性という タイトルをつけたところにつきましては、もし御説明いただければ大変ありがたいと思 います。  それから医薬品コードの統一化、IT化、標準化等の推進でありますけれども、これ はぜひ進めていただきたいわけですが、既にかなり進んでいるという認識を持っており ますけれども、特にここに書かれていることの視点で抜けていることは、医療安全対策 のことがございます。これは医薬品産業ビジョン全体で、特に医療安全対策というもの が載っておりませんけれども、それは個々のテーマで多分考えられていると思います。 医薬品コードの統一化、IT化につきましても、医療安全対策の観点から、流通確認が できるとか、あるいはそういうものをコードの中に盛り込まれるような工夫をぜひして いただきたい、このように考えております。  12ページでありますけれども、小包装のことは先ほどお話をしました。それから一番 下に患者向けの説明書の作成というのがございます。この検討の内容は具体的にどんな 状況なのか把握しておりませんけれども、先ほど言いました広告のこととあわせて患者 個別向けの情報提供と、それから医療用医薬品の広告といいますか、患者さんが理解し やすいインフラをつくるためにも、そういうものとあわせてお考えいただくと大変あり がたいと、こういうことであります。以上でございます。 ○高倉経済課長  漆畑様、どうもありがとうございました。それでは続きまして健保組合連合会専務理 事対馬様よろしくお願いします。 ○対馬委員  こちら側に座っておりますけれども、日本語でお話させていただきたいというふうに 思います。私は今回初めて出させていただいているのですけれども、医薬品の産業ビジ ョンを改めて読み直しましたけれども、問題意識、方向性ともにバランスもとれていま す。問題はこれをどうやって実行していくかということで、今回こういった場がまた設 けられたのかなと、こういうふうに認識しているわけでございます。  今お話を伺っていますと、最初から4人の方々が、やはりメーカー側といいますか、 産業界の方々でございましたので、特に薬価制度、医療保険制度等についての問題指摘 がさまざまなされたわけであります。  ただこの医療保険制度、もしくはこれが最終的には国民皆保険につながっていくわけ ですけれども、私どもの立場からしますと、特に大きいのは、昨年の3月に医療保険制 度改革、これは診療報酬制度も入るのですけれども、昨年の3月に閣議決定がなされて いるということが、私どもとしては1つの大きな指針になるのではないかと思っている わけです。  具体的に申し上げますと、やはり日本の医療保険制度、さらには櫻井先生も言われて いましたけれども、国民皆保険をいかにして堅持していくか。ここが最大のポイントに なっているということでございます。そういう中において診療報酬体系、それから薬価 基準というものがつくられているということです。  薬価基準等についても確かにいろんな意見があるわけです。私どもも耳を傾けて議論 をするには、やぶさかではございませんけれども、最終的には国民、患者にとって本当 にふさわしい制度になっているかということでございます。それは日本の場合には日本 のお国柄、歴史、社会保障全体に対する国民の考え方等もございます。それは恐らくア メリカ、ヨーロッパ等においても、それぞれごとに国の事情を背負ってきて、今の制度 ができてきているのではないかと、こういうふうに思うわけです。  そういう中においては私どもも改革の如何、ぜひ言っていただきたい。私どもも議論 に応ずる余地はあるというふうに思いますけれども、オールオアナッシング的な議論で すと、なかなか乗りにくいなと。抜本的に今の薬価制度というのはおかしい、全部変え ろ、一からやり直せ、こういう議論ですとなかなか入っていきにくいという感じがいた します。やはり現行をもとにした建設的な意見をぜひ戦わせたい、こういうふうに思う 次第です。  それから個別事項で2、3ございます。私は最後ですので、恐らく厚生労働省の方か らも、議論に移行していく、こういうつなぎ役も仰せつかっているかなと、こういうふ うに思いますので、2、3質問と意見をさせていただきたいというふうに思います。  ページの方は割愛させていただきますけれども、治験に関することが1点目です。治 験については、活性化の3カ年計画、大規模治験ネットワーク構築等々いろんな形で、 今回計画を立てられて、策定されて、それをチェックしていこうということで、それは それで大変結構なことだろうと思いますけれども、こういった施策をやっていけば、い わゆる治験の空洞化、非常に懸念されていますけれども、そこが本当に解消されるのか どうか。  治験の空洞化の1つの要因としては、患者にとってなかなか理解しにくいということ もあるかもしれませんけれども、一方では魅力が乏しい、こういったこともあるようで す。今申し上げたようなことがされていけば、結果的に治験の空洞化が解消されるのか どうか。こういうことが1点目の質問です。  それから2点目ですけれども、これは質問というよりもむしろ要望です。審査の事務 処理期間の短縮ということで、これもまた大いに結構なわけですけれども、短縮を図る というのはいいのですが、全体としての数値目標、例えば雑駁ですけれども1年の12カ 月を8カ月にするとか、全体を大きくとらえた目標、それからさらに言えば個別の項目 ごとの目標、こういうことで具体的に明示してやっていくのが望ましいのではないか。 これは組織で目標としてもそうですし、また国民的な議論を展開するということからも 望ましいのではないかと思います。  それから最後、やや辛口ということになるのかもしれませんけれども、確か新薬の3 分の1は、国内のみで供給されている。海外には使われていないということが書かれて いたと思います。そういったものについて本当に効能といいますか、科学的な根拠があ るのかどうかというところを懸念する次第です。といいますのは、時々マスコミ等に出 ますけれども、あまり効かないのではないか。例えば白内障の点眼薬とか、そういった ところが時々出てくるわけでございます。  私ども保険者としては、大切な保険料を預かっていて、あまり効果がないようなこと に使っているのであれば、大変被保険者及び事業主、さらに言えば国民に申しわけな い。こういうことでございますので、そういったことがないのかどうか。またそういっ たことが仮にあるとすれば、防止するためにどうすればいいのか。これは役所というよ りは、むしろ産業界の方にぜひいろんな御努力をお願いしたいと思うわけです。以上で ございます。 4. 質疑応答 ○高倉経済課長 対馬さん、どうもありがとうございました。それでは一通り皆様方から御意見をいただ きましたので、意見交換の方に移らせていただきたいと思います。せっかくきょうは行 政側と産業、あるいはまた医療提供側、また保険者、各方面おいででございますので、 行政側との意見交換のみならず、それぞれの御出席の方相互間での意見交換なども、可 能な限りできればありがたいと思っております。  大変話題が多岐に上っておりますので、若干進行としまして、整理させていただきま す。大きくいわゆる研究段階の問題、また次に開発段階では治験関係の問題、そして審 査関係の問題、そしてもう1つ薬価制度、保険制度といったような問題です。プラスそ の他、その他とくくると大変失礼ですけれども、いくつか今の4点だけではくくれない ような事項も含めてあったと思いますので、よろしければその順で、それぞれに出た御 意見に対するまず質問的な部分について、あるいは御意見に対しての行政側のコメント といったようなところから入らせていただきたいと思います。それでは最初にまず研究 段階の問題などにつきまして、何かありましたらよろしくお願いします。安達課長お願 いします。 ○安達研究開発振興課長  研究開発振興課長の安達でございます。私のところでは主に医薬品、医療機器の研究 開発及び治験をやっているわけです。治験につきましてもGCPそのものは医薬局の方 でやっていまして、私どもは治験の推進、いわゆる空洞化をいかに解消していくかとい うことを主に担当しております。  それでまず研究開発の方でございますけれども、いろいろと御指摘をいただいたかと 思います。医薬品、医療機器のいわゆる一社だけでは対応できないような、基盤的な研 究を中心に振興していこうということで、国の研究費を使って、官民共同研究を推進し ながら進めていくことにしております。  その中でいわゆる基盤研究、プロテオームファクトリーとかトキシコゲノミックスに ついては、いろいろと企業にも情報が流れてきているが、一方基礎的研究については、 なかなか結果等が見えにくいという御指摘でございます。この基礎的研究、基盤研究を 含めまして、来年4月には大阪に医薬基盤研究所を設立するということで、現在国会で 審議中、ほぼ大丈夫かなというめどがついたところでございます。  そういった中で御指摘の基礎的研究についても、研究成果がよりわかりやすく、また 企業の方にも、きちんと提供できるように努力していきたいというふうに考えていま す。  それから2点目の治験の方でございます。治験についてはいろいろと御指摘をいただ きました。既に御指摘いただいた点かと思いますが、治験活性化3カ年計画を策定し て、現在そのフォローアップを行っております。この3カ年計画をいかに実効性あるも のにしていくかということで、実務者レベルでの検討会議といいますか、勉強会といい ますか、意見交換会を、このたび設置して、より具体的に検討していこうというふうに 考えております。  例えば御指摘をいただいた患者さんについて、被験者の方々についての理解、あるい はインセンティブというようなお話も、例えば医薬品によっては全然ほかに代替の医薬 品がない医薬品を治験する場合もございます。また患者さんにとって、具体的なメリッ トがあるものから、こちらから見ると画期的な効果が上がっているが、患者さんから見 るとわかりづらいもの、いろんなものがあるという、そういうより具体の問題につい て、話し合っていけるように実務者レベルでの検討会を立ち上げて、進めていきたいと 考えております。  また、ドクターの方のインセンティブについても、何人かの方から御指摘をいただき ました。これにつきましても1つは、いい意味での競争が治験する側で出てくるという のが、ドクターに対するインセンティブを考える上でも重要かなと考えております。こ ういった問題は、大学病院、一つ一つでも違いますし、また国立病院が今回独立行政法 人化されて、いろんな取り組みをされている。そういった中でドクターに対するインセ ンティブのあり方も、いい意味の競争の中でいいアイデアやいい取り組みが出てくるの でないかというふうに考えています。いずれにしましても実務者レベル検討会の中で検 討していきたいというふうに考えています。  それから最後に対馬さんの方から、空洞化が本当になくなるのかというご指摘でござ います。この治験活性化3カ年計画の中で、幸いなことにといいますか、私にとって幸 いなことに、数値目標が設定されているのは、CRCの数だけでございます。何パーセ ントよくなるというのが、数値目標では示されておりませんが、本当に良くなるよう努 力していきたいと思います。  1つ私がいい兆候かなと思っていますのは、先ほど申し上げた国立病院の取り組みで あるとか、いわゆるこれまでの買手市場から、病院間、治験を実施する機関での少し競 争的な要素が出てきているのかなという点で、何とかいろいろ御意見をいただきながら 議論をして、空洞化の解消に少しでも努めていきたいというふうに考えています。以上 でございます。 ○高倉経済課長  安達課長ありがとうございました。ただいまの点についても、何かコメントあろうか と思いますが、一通り先ほど出た意見に対するコメントということで、次は岸田審査管 理課長よろしくお願いします。 ○岸田審査管理課長  審査管理課長の岸田です。まずは審査の迅速化についての御意見、御要望もあったか と思います。優れた新薬を早く患者のもとへと、そういうスローガンをもとに、今年の 4月に医薬品・医療機器総合機構が設立されました。やはり数値目標というものがあっ た方が着実にそういったことにこたえていけるだろうということで、中期計画で新薬の 審査期間、これについて現在標準的に行政側の持ち時間が、1年間というものが大体5 割を占めているわけなのですが、それを8割までやりましょうということで、審査の迅 速化を図ります。  また従来目標設定をしておりませんでした優先審査の対象品目、これについても行政 側の持ち時間を6カ月を50%達成しましょう、そういう数値目標を打ち出しておりま す。これにつきましては毎年業績をまとめまして、開示をする。そういうことで透明化 ということも図っていきたいと思っております。  また新薬が早く世に出るためには、申請の前に治験が円滑に実施される必要がありま す。そこで申請前の治験の段階から事前相談を機構の審査官と相談できる体制、こうい ったものも整備しようということで、その体制整備も図ったところです。特にまた優先 的な、つまり医療上必要性の高い品目については、優先的な治験相談も実施していこ う。こういう体制でございます。  なおPhRMAの方から総審査期間での目標設定という御要望がございましたけれど も、これにつきましては総審査期間というのは、行政側の持ち時間プラス申請者側の持 ち時間という意味であります。申請者側の持ち時間を規定、つまり一定期間定めなけれ ば目標設定ができないという宿命にございます。そういう意味で現在の目標設定では、 行政機関の持ち時間での目標設定となります。御要望の総審査期間の設定については、 やはり欧米でもつまりFDAでもEMEAにおいても、そこでの目標設定は難しい、こ ういうことでございます。今後の検討課題かなと、こういうふうに考えております。検 討課題と申し上げますのは、申請者側の持ち時間をどうやって短縮規定できるかという ところでございます。それにつきましては第1期の目標であります5年間の間にそれが 可能なのかどうか。それを検討していきたいと思っております。  それから審査員の増員、養成についての御要望もございました。やはり申請期間を短 縮するためには、それなりの審査員の増員を図らなければなりません。現在では5割増 員を計画しております。それによって優秀な審査員を採用し、養成をしていく。こうい うことでございます。その中には御要望のありましたバイオ、ゲノムについての専門家 といいますか、そういった方も採用していく。いろんな分野の専門家を審査員として採 用すべく、計画を掲げてございます。  またバイオ、ゲノムの審査体制をしっかりするといいう意味で、この総合機構では生 物等審査部というものを1つ設けまして、そこでしっかりとした責任体制を持って、審 査に当たっていただく、こういう体制でございます。  また申し遅れましたが、申請前の相談、それから申請後の審査、そこが一貫して行わ れるかということから、治験相談という事前相談から、審査というのは、同一のチーム で行うということで、その間の整合性がとれるような体制を組むこととしております。  それから海外の同時開発の取り組みについての御要望がございました。これについて は従来からICHという、日本、EU、アメリカにおいての規制をできるだけハーモナ イズしていこう。こういう取り組みが行われております。各地のガイドラインが、その 3局においてハーモナイズがされたわけです。近年においては申請の添付資料の様式に ついても、ハーモナイズがされたわけでございます。そういう意味で同時申請への環境 整備とこういったものが着実に進んでいるかと思います  さらに先週アメリカで開かれましたICHの会合においては、やはり同時開発のため のいろいろなテーマをもう少し考えて、3局で検討してはどうかと、こういったことも ございましたので、今後またICHの場においてその同時開発で向けたガイドラインと いいますか、そういったもののあり方の検討がされることと思います。  話は変わりますけれども、配合剤についての御要望がございました。日本では配合剤 の承認があまりないのではないかということでございます。配合剤を承認する場合の要 件として、やはり配合理由がなければならないでしょう。例えばAという成分とBとい う成分を組み合わせた場合に相乗効果がある。それから通常ABを組み合わせて使わな ければ、意味のないものであるとか。そういったような理由があればいいでしょう。そ れ以外にも特に必要性があればという、こういう医療上の必要性が認められれば、認め ましょう。こういう配合剤の基準になっています。  それにつきましてはやはり患者さんにとって、Aという成分とBという成分、必要が ないのにA、Bを両方のむ必要なわけはありませんので、そこは医者の裁量によって、 この患者さんはAという成分がどれくらい、Bという成分はどのくらい、その患者さん 独自の診断にのっとって必要な処方が決められるべきではないか。そういうことが難し い配合剤については、難しいかなと思います。Aという薬とBという薬の配合量がどの 患者さんにも当てはまるような配合剤であれば、差支えないわけです。一部の患者さん しか、その配合比率というものが該当しなければ、やはり必要性は乏しいと言わざるを 得ないのかなというところかと思います。  それから承認効能について、エビデンスに乏しいのではなかろうかという懸念が表明 されてございました。1つの例としてEBMに基づく診療ガイドライン、白内障とかそ ういったものにおいてエビデンスがないのではなかろうか、こういう指摘についての懸 念がございましたけれども、診療ガイドラインのエビデンスの集め方といいますのは、 一定期間の、それも一定の基準に基づいたエビデンスの収集方法をしております。そう いう意味では非常に部分的な、一面しか見ていないということでございます。  御指摘のところは、既に再評価もされていて、エビデンスも国内のエビデンスも相当 そろっているということでございます。ただやはりそういってエビデンスがそろってい るのだったら、もう少しちゃんとそれは医療機関に提供すべきではなかろうか。こうい う指摘かと思いますので、そういったものについては、添付文書等を通じまして、でき るだけそういった情報を提示していきたい。こういうふうに思っております。  それから大衆薬のところで、国際的整合性を配慮した医薬品市場ということについて の、国際的整合性の意味についての御質問がございました。これは日本の大衆薬が認め られている効能効果の範囲といいますものが、欧米に比べて狭いのではなかろうか。こ ういうところを基本認識に持ちながら、欧米で認められている薬効分について、やはり 日本でもできるだけセルフメディケーションを推進する意味から、そういう効能取得に ついて、前向きに取り組むべきではなかろうか。こういう検討会の御指摘と受け止めて おります。  私どもとしましては、そういう欧米への大衆薬の効能取得の状況を見ながら、そうい ったスイッチOTCですか、そういったものの推進に努めていきたいと思っています。 先ほど紹介しました総合機構においては、スイッチOTCの開発を、円滑に進めるため の事前相談制度、こういうものを設けたところでございます。急ぎで申しわけございま せんが、以上でございます。 ○高倉経済課長  ありがとうございました。私の方から1、2、これまで出された御質問的なことで未 回答部分について申し上げます。1つはIT化、漆畑さんからの御質問だったと思いま すが、IT化、標準化を検討していくに際しまして、医療安全という視点が不十分なの ではないかという指摘でございました。この横長表の11ページの右側に書いてある文章 では、確かにそんなに正面から医療安全という言葉が出ていなくて、そういった印象に つながったのかなと反省をしているわけでございます。  実際のところこのアクションプランにおきましても、長い文章で書いてある中では、 例えば「生物由来製品等の安全性確保のための」というキーワードで入って書いており ます。現に私どもの医薬食品局の、平山安全対策課長のところの課も一緒になりまし て、いよいよ今IT化、標準化に向けた検討を進める中で、今年度は医療安全のところ もまさに視野に入れて、標準化をどう考えようかという検討会を、5月の連休明けから 立ち上げて、動き始めたところでございますいということを、補足、御報告させていた だきます。  もう1点同じく漆畑さんから、前の10ページのところの薬価のところの検討につい て、薬価制度・薬剤給付のあり方ということで、何か混同して検討というような印象が 一瞬ある表現だったからの御指摘かとは思いますけれども、ここにつきましては、同じ ようにアクションプランの正式な長い文章の方で申しますと、要は産業の競争力の確保 と、公的皆保険制度の下での薬価制度との調和、これを図っていくためには現行の薬価 制度だけではなく、薬剤給付のあり方自体の見直しもを含め、中長期観点から検討して いく必要がある。こういうふうな整理で考えているところでございます。  当然ながら違うものは違うわけで、分けて、きちんと議論ということで、土俵はつく ってある。ただ現時点では先ほど御指摘いただいたページでも、具体的な案のところに は至っていないのは、御承知のとおりでございます。これからまた続けて検討という段 階にはございますけれども、そういう分けるものは分けての議論というのは、おっしゃ るとおりだというふうに考えております。  あと前半の方で随分たくさんあった問題で、まだディスカッションの方では取り上げ ていないのは、まさにこの薬価制度であり、薬剤給付の問題でございます。そこに関し ましてなかなかこれは、中医協の場ではございませんから、なかなかどこまで時間をと って本格的に議論できるかはわかりませんが、それぞれ関係行政が、あるいは委員の中 で、先ほどのやりとりを踏まえて、またおっしゃりたいこと等ございましたら、どうぞ 御自由にお願いしたいと思います。 ○櫻井委員  大変申しわけないのですけれども、僕はもう1つ会議があって、早く出なければなら ないので、さっき私の言ったこと、少し何かわかりにくく言っていたので、一言で言え ば、皆様方製薬メーカーの研究開発の努力、その結果として例えば大変いい薬ができ た。その評価をすべて薬価の中でやるのではなくて、それ以外の何かの方法で評価する ような研究費の制度とか何かが、このビジョンの中で考えられないかというようなこと を、一言で言えばそういうことを言いたかったのです。  すぐには無理だと思いますけれども、皆様方の努力が報いられなければならないと は、私も思っているわけですけれども、それをすべて薬価でやれと言われると、今の日 本の医療保険制度では難しい面があるぞということです。だから別の方法で何か考えて くださいということを申し上げたということであります。大変申しわけないのだけれど も、ちょっと席を外させていただきたいと思います。申しわけありません。 ○高倉経済課長  どうもありがとうございました。 ○庄田委員  先ほど私ども研究開発費が非常に高くなっているということで、若干誤解がある御発 言があったかと思います。研究開発費用をすべて保険で見てくれと、こういうふうにも し誤解をしてとられている面がありましたら、それはそうではなく、研究開発というの は、当然ながら非常にリスクの高い事業活動でございます。そこから出てきた成果であ るイノベーションを評価をする薬価をお願いしたいということです。研究開発費を何か すべて保険で見てくださいというふうに、もし誤解があるようでしたら、それは違いま すということを申し上げます。 ○ブーツ委員  庄田さんのポイントですけれども、実際にR&Dコストを使って製品を出しますけれ ども、実際に出たもの、その成果物に対して、ちゃんと評価してくださいということで す。  コンビネーション、配合剤についてでありますけれども、岸田課長がおっしゃいまし たこのルールは非常にわかっております。そしてこのルールというのは、長い間ありま すけれども、変わっておりません。そして理論的に日本では配合剤は確かに認めるとい うふうには言っておりますけれども、非常に保守的な立場で、まだまだ実際に認められ ているというのは、ほとんどないわけです。ですからここでやはり再考すべきだと思い ます。  厚生労働省の2つの目標があると思います。患者の便益を供給してコストを削減す る。そしてこの2つの目標というのが、現在の配合剤のクライテリアに入っていないと いうことです。ですから西欧社会を見てみますと、配合剤、2つが出たときに、2つを 足したものよりも低い、10〜15%、あるいはもっと低い価格で出ております。これはヘ ルスケアのコストの削減につながっております。それから技術料の削減にもつながると 思います。2つが1つになったわけですから。  そしてよくあることなんですけれども、患者さんの便益にも資するものであります。 2つ一緒にのむというよりは、のまなければいけない薬が1つになった方がいいわけで す。患者さんのコンプライアンスも向上すると思います。そしてこれをやはりコンプラ イアンスなどにつきまして、実際に患者さんに話してみてください。彼らは必ず言うは ずです。たくさんのむより少ない方がいいと。これはだれに聞いても同じ答えが返って くると思います。ですから規制緩和というのはやはり必要だと思います。  しかしながら規制をどのように解釈するかということも、問題になってくると思いま す。配合剤というのは西欧社会では、受け入れられております。そして日本の患者さ ん、日本の医師、日本の先生方、患者さんはまだこの非常にすばらしいコンビネーショ ン、配合剤にまだアクセスがないという状況であります。 ○岸田課長  配合剤の基準につきましては、先ほども申し上げましたが、必要性があると認められ る場合は、いいですという基準になっています。基準としては一応配合剤は否定をして いない。医療上必要性があると認めるかどうか。そこの立証をいかにするかというとこ ろは、企業側の方で、こういうAとBの薬を配合することが、患者さんにとってどうメ リットがあるのか。医療にとってどうメリットがあるのか。そういうことを立証してい ただいて、それが妥当であれば、配合剤として承認される、そういうことかと思いま す。 ○永山委員  別の視点になりますけれども。1つは主に対馬先生の御指摘について、ちょっとコメ ントさせていただきたいと思います。治験の空洞化の中で、魅力の乏しい治験薬という ような御指摘があったように思います。基本的に今の治験の問題というのは、いろんな issueがあるわけです。問題は非常に画期的なおもしろい薬でも、なかなか治験が日本 でうまく進まない。コストがものすごく高いというところに、問題があるわけです。  GCPの改定が行われて以降、御案内のとおり今日本の新薬の開発というのが、いわ ゆる昔言われたゾロ新であるとか、物真似的なものとかは、今はほとんど開発しても意 味がない状況に来ておりますから、それぞれ各メーカーは、大変これは意味があるとい うことで、これは実験をしてみなければ、最終ゴールまで行けるかどうかわからないで すけれども、やっている状況でございます。  したがいまして製薬協でも患者団体さんとのダイアログとかやっている中で、非常に 創薬といいますか、日本も含めた世界中のメーカーの開発に対する関心が非常に強く て、早く自分たちが使えるようにしてほしい。そういう中でやっているわけです。残念 ながらインフラの問題があってできないというのが現状ではないか。インフラの中で非 常に重要なのは、何人かの先生から御指摘がありましたけれども、やはりインセンティ ブが足りないということ。  これはもっと具体的に申し上げると、抽象的な話ではなく、アメリカの場合はドクタ ーの収入の中で治験にかかわる先生というのは、治験をやらなければ100という収入は 得られないという状況になっております。日本の場合は、医療機関に対しての支払いな りはあるわけですけれども、ドクター個人についてのインセンティブになるような仕掛 けになっていないということです。この辺が金もうけのために薬の開発に、患者さんを 見るのをやめて、そちらばかりに走られて困るというような議論も一時はあったわけで す。  そんなことよりも最低限といいますか、ある一定の収入というものをきちんとリワー ドとして受け取れるような方式というものが必要ではないか。  あとは治験については最初議論したころは、やはり国民性の違いといいますか。特に 米国などは、患者さんが非常に積極的に新しいものにチャレンジするというような、そ ういう社会的な受け止め方の違いもあるようです。この辺は業界としてもさっき申し上 げた患者団体さんとのダイアログなり、いろいろな形で治験の広告なども随分お金を使 って打たせていただいているわけです。この辺で何とか、それからドクターからのきち んとした説明なりというものを経て、患者さんがそういうものにトライをしようという ふうなところでは、努力をさせていただいているということです。  それからもう1つ審査期間全体の短縮化の御指摘がありました。我々としては確かに 企業側の部分をどうするかということは、なかなか難しいんですけれども、1つ感じて いますのは、例えば審査においていろんな議論が出る。その疑義が生じたときに、何が 本質的な問題なのか。これがどうもパブリックといいますか、非常に明確になっていな いということが多いのではないかということでございます。  問題の本質がどこにあるかということをきちんとレジスターした格好で、議論をする 必要があるのではないかという気がしております。この辺が今までは審査する立場の方 と、我々のプライベートな議論の中で行われてきているわけです。この辺の問題が本当 に普遍的な、本質的な問題なのかどうか。この辺がかぎになるのではないかというふう に、私は考えております。  それから対馬先生の御指摘に戻りますけれども、日本だけで売られている薬の是非と いうもの、これも随分昔私が一番嫌っているカントリードラックという言葉が使われ て、議論されたのですけれども、実際に薬がどういう、エビデンスの話はさっき出まし たけれども、意味があるかということについては、随分議論もされております。必ずし も外国で売れなければいい薬でないということは、もちろんないわけです。外国に出て いない理由というのは、その企業の国際的な展開力があるかないかとか。あるいは時期 的に遅れれば、なかなか海外で今から開発して売るということもできないわけですか ら。効くのか効かないかということとは、私は直結しないというふうに考えています。  エビデンスをきちんと積み上げて、やはり日本で積み上げたエビデンスが客観性があ るかどうかということではないかというふうに思います。  それから全部申し上げて申しわけないですけれども、薬価の問題で、先ほど櫻井先生 はお帰りになったのですけれども、今までも研究開発費を全部見てもらうような薬価と いうのはなかったわけです。類似薬効比較、もしくは原価計算方式という2つのメソッ ドでやってまいりました。原価計算の中には研究開発の原価というものが含まれてくる わけです。問題は原価のとらえ方が、我々が実際につくる立場、開発する立場からする と、あまり現実的な姿をとらえていないというところに、我々が希望する価格と、現実 に与えられる価格に格差がある。類似比較については、全く存在しているものとの比較 ですから、これは研究開発費をどう見るかという議論は、入る余地もないということだ と思います。  いずれにしても創薬というのは、研究開発がなければ、何も出てきません。ここのと ころだけ薬価から分離するということは、私は非常に難しいのではないか。そんなふう に思います。 ○ライト委員  時間がなくなってきましたので、簡単にお話します。岸田さんの先ほどのお話に戻り ます。情報ありがとうございます。これからもコンサルテーションをしていただくこ と、これは非常に意味があると思います。申請が遅れているということですけれども、 これは理論的に言えば、プロセスがある。それをプロセスに進めるということなんです けれども、実際にはそう言ってもなかなかうまくいきません。  この問題について私がコメントするのは、ちょっとユニークな立場になると思いま す。私どもの場合、このようなR&Dの関係のものを私のところに直接報告をしてくる わけなんですけれども、どういったスタディをするのか、どういったタイムラインにな っているのか、患者さんは何人いるのか。世界的にどういったプログラムが、どこでど うなっているのか、報告してくれます。それがうまくいっているなら、それから相談に なる。  日本でグローバルプログラムに入っていっていると、うまくいっていた。ところが結 果が出た。2番目のコンサルテーションにいきますと、日本では、どうもこのアウトプ ットがうまくいかない。日本のデータもある。北米のデータ、北アジアのデータも使え るのに、どうもうまくいかないということで、結局はフェーズ3のプログラムになっ て、ちょっと回り道をする。そうするとグローバルなタイムラインから遅れる。セミス タンダードのプログラムになったりして。それから何年も、4年ぐらい遅れてしまっ て。  では具体的にどうすればいいのか。厚生労働省の御協力等も考えてどうすればいいの かと考えますと、新しい総合機構も出てきましたので、こういったアクションをとるこ とによって、こういった承認の時間がどれくらい変わってくるのでしょうか。グローバ ルプログラムと考えて日本が遅れるというのは、どう理解すればよいのでしょうか。  PMDAの総合機構の方で安全性だけを確保していただければ、それでもいいのでは ないかというような感じがいたします。そうすれば時間を確保、時間を短くするために も、そういったドラスチックな考えも方も1つあるのではないかと思います。 ○高倉経済課長  時間が押してまいりました関係上、そろそろ今日の会合は、この程度とさせていただ きたいと思います。当然言い足りないこと、議論しつくしていないことばかりではござ いますけれども、本日のところは、最後に戸苅厚生労働審議官からごあいさつをいただ いてというふうにさせていただきます。よろしくお願いします。 ○戸苅厚生労働審議官  大変御熱心に御審議をいただき、ありがとうございました。医薬品産業は我が国にと ってもやはり戦略的な発展産業であります。厚生労働省、その産業政策を担っていると いう立場に立っているわけであります。とにかく国際化競争力をいかに高めるかという ことで、我々も一生懸命取り組んでいきたいというふうに思います。  時間が限られていたものですから、お話をさらにいろいろあったかと思います。まだ お話が足りない事項等がありましたら、事務局に別途御連絡いただければというふうに 思います。  本日で皆様方からいただいた貴重な御意見については、今後の医薬品産業政策のさら なる推進の参考にさせていただきたいというふうに思います。  お忙しい皆さん方に貴重な時間をとっていただきまして、大変ありがとうございまし た。今後とも厚生労働行政への御協力をお願いいたします。本日は大変ありがとうござ いました。 ○高倉経済課長  どうもありがとうございました。それではこれを持ちまして本日の懇談会を終わらせ ていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 照会先:医政局経済課 担当者:村松達也 連絡先:(代表)03-5253-1111 内線2524