◆ | 企業は、人や物、金といった経営資源を活用して、財を生産したりサービスを提供し、社会的な価値を創造する主体であり、価値を最大限創造し社会に貢献していくためには、経営資源を効果的に投入していくことが不可欠である。
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◆ | その際、企業は社会の一員であり、社会と無関係であり得ない存在であることにかんがみると、社会の多様なステークホルダーへの影響を十分に考慮しながら活動を行っていく必要がある。そうした取組みは、環境負荷の軽減や消費者の安全対策など多岐にわたるが、従業員をはじめとした「人」に関する取組みについては、他とは異なる特別な考慮が必要になるものと考えられる。
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◆ | 例えば、環境負荷を軽減するに当たっては、経営資源を別な物に置き換えることによって対処できる場合があるが、従業員は多様な個性と能力を有しており、従業員の健康が損なわれ、消耗したからといって必ずしも代替がきくものではない。
また、職業能力の蓄積なしに失業するようなことになれば、さらなる職業能力の低下を招き、無業期間が長期化しかねないが、これは従業員本人の職業生涯に取り返しのつかない損害を与えるのみならず、社会全体でみても悪影響を及ぼす。すなわち、限られた資源である労働力については有効に活用していく必要があるが、職業能力の減退を招くことは、貴重な労働力の「浪費」につながる。こうした事情は少子化が進行し労働力供給が制約される今後、一層顕著になろう。
したがって、従業員の働き方等に十分な考慮を行い、かけがえのない個性や能力を活かせるようにしていくことは、「社会的公器」としての企業にとって、本来的な責務であるということができる。
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◆ | しかしながら、近年、企業間競争の激化等によって長時間労働やストレスが増大したり(注3)、女性の登用が十分に進まないなど(注4)、働き方の持続可能性や公平性に照らして懸念される状況が多くみられる。
こうした中、「人」の観点からも持続可能な社会を形成していくことが重要となっており、社会的基盤の損失にもつながる行き過ぎた利益至上主義に対し、従業員、求職者等のステークホルダーに対する考慮を強調するCSRの考え方は、企業や市場のあり方を変革し、社会の持続可能性を保持していく上で重要性を増してきている。
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◆ | 特に、従業員等に対し責任ある行動を積極的にとっている企業が、市場において投資家、消費者や求職者等から高い評価を受けるようにしていくことは有益と考えられ、CSRを果たしている企業に対して投資するSRIのあり方については、こうした観点からも検討を深めていく必要がある。
加えて、市場で適正に評価されるためには、現状では情報が外部に開示されにくい「労働」分野についても、企業は「社会的公器」としての姿を世に示していく必要がある。CSRは、従業員等のステークホルダーに対して説明責任を果たすことをも意味しており、こうした取組みの重要性は高まっているといえよう。
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◆ | CSRはあくまで企業の自発性に基づいて進められるものであるが、それぞれの企業が、社会的公器としての認識を深め多種多様な取組みを積み重ねていくことで、「人」の観点からも持続可能な社会が形成されていくことが期待される。国においても、こうした企業の取組みを支援していくことが求められよう。 |