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第4回抗がん剤併用療法に関する検討会 議事要旨


厚生労働省医政局研究開発振興課
厚生労働省医薬食品局審査管理課


○日時 平成16年6月25日(金)10:00〜12:00
○場所 KKRホテル東京 孔雀の間


出席者
(有識者)
有吉  寛 県立愛知病院名誉院長
黒川  清 東海大学教授/綜合医学研究所長、日本学術会議会長
西條  長宏 国立がんセンター東病院副院長
佐々木 康綱 埼玉医科大学医学部教授(臨床腫瘍科)
谷川原 祐介 慶應義塾大学医学部教授・薬剤部長
堀田  知光 東海大学医学部教授
堀内  龍也 群馬大学医学部付属病院薬剤部長
渡辺  亨 国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

(オブザーバー)
米国研究製薬工業協会
欧州製薬団体連合会
日本製薬工業協会

(事務局)
岩尾總一郎 医政局長
鶴田 康則 大臣官房審議官
安達 一彦 医政局研究開発振興課長
岸田 修一 医薬食品局審査管理課長


議事
1.開会
2.前回の検討会で審議された療法に係わる報告について
3.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(報告書案)
(1)骨・軟部肉腫 シスプラチン
(2)子宮体癌 AP療法
4.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(リストの変更について)
5.その他
6.閉会


配付資料

 座席表
  資料1抗がん剤併用療法に関する検討会 名簿
  資料2抗がん剤併用療法に関する検討会 運営要綱
  資料3抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループ作業の進行状況
  資料4―1 骨・軟部肉腫 シスプラチン
  資料4―2 子宮体癌 AP療法
  資料5 抗がん剤併用療法に関する検討会WGの第1バッチの対応について(案)
  参考資料1 都道府県宛 通知
  参考資料2 関係学会宛 通知



議事要旨
1.開会
事務局より、開会の挨拶が行われた。

2.前回の検討会で審議された療法に係わる報告について
【事務局よりの説明】
 ・前回(5月7日)の検討会において了承された、乳癌AC療法、乳癌骨転移へのパミドロン酸ナトリウム、骨・軟部腫瘍へのイホスファミド、ドキソルビシン及び小児固形癌へのイホスファミド、ドキソルビシン、エトポシドの7つの療法について、5月21日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において事前評価が行われ、了承された。
 ・これまでの検討会及びワーキンググループにおける議論を踏まえ、各都道府県知事等宛に、これらの療法等に関する注意事項等について通知を発出したところである。 (参考資料1)
 ・また、適正使用の推進の観点より、関係学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)の理事長宛に協力を依頼する旨の通知を発出したところである。 (参考資料2)

【有識者よりの意見】
 ・本検討会に関する通知が発出される際には、事前に本検討会の委員にも情報提供をして欲しい。また、通知の記載をもっとわかりやすい表現にして欲しい。→(事務局回答)今後通知を発出する際は、事前に本検討会の委員へ情報提供を行う。また、通知の記載に関しては、検討したい。
 ・薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の事前評価で了承された時点より特定療養費の対象になると説明されていたが、その点についてはどのようになっているのか。保険請求の事務手続き等を行う際、どのように請求してよいか分からず、医療現場が混乱することが考えられる。→(事務局回答)本検討会で了承された抗がん剤併用療法等については、保険局より特定療養費に関する通知が発出される予定である。通知が発出されるまでは、従来どおり保険局が昭和55年に発出した通知(保険診療における医薬品の取扱について)に基づいて対応されるものと聞いている。
 ・薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会で了承された品目についても適応外使用になるのか。→(事務局回答)全ての医薬品について、薬事法上承認されるまでは、適応外使用となるので、医師の責任のもと十分注意を払い使用していただきたい。

【関係学会より抗がん剤併用療法等の適正使用への取り組みについての説明】
(日本癌治療学会)
 ・現在日本癌治療学会認定の臨床試験登録医が全国で919名いる。
 ・名称を臨床試験登録医より癌治療専門医と改称し、実地臨床や臨床経験のウエイトを高くし、専門医制度を目指している。
 ・今年10月に日本癌治療学会にて教育セミナーを開催する準備を行っているところであり、本検討会で了承された抗がん剤併用療法等の適正使用に関する教育講演を行う等、適正使用の推進を学会として支援していく。
(日本臨床腫瘍学会)
 ・臨床腫瘍専門医を2年後に発足させるためセミナーを年に2回開催している。
 ・現在専門医を指導するための暫定指導医を約500名認定している。また、教育指導病院をここ数ヶ月のうちに認定する予定としている。
 ・第3回教育セミナーにて、抗がん剤併用療法等に関する適応外使用について講習会の開催を予定しており、本検討会で了承された抗がん剤併用療法等の適正使用について教育講演を行う予定。尚、今後も新しい併用療法が了承されるごとに、教育セミナーを開催し、適正使用を推進していく考え。

3.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループ(WG)からの報告について(報告書案)
【WGでの検討内容について】
 事務局より以下の説明があった。
 ・21候補品目の第1バッチのうち、前回の検討会にて7候補品目が了承され、残りの14候補品目について、報告書の作成作業を継続して行ってきた。
 ・5月7日以降、5月17日、25日の2回ワーキンググループを開催し、内容等の検討を行い、報告書の整備状況から見て2候補品目について本検討会に上程することとした。

【子宮体癌AP療法 ドキソルビシン(ADM)+シスプラチン(CDDP)について】(資料4−2)
 岩手医科大学医学部の杉山参考人より以下のような説明があった。
 ・AP療法は、欧州において子宮体癌に対する標準的な化学療法とされているが、我が国においては、CDDP及びADMについて子宮体癌に対する薬事法上の承認が無いため、本邦では、薬事法上承認されているシクロホスファミド(CPA)を含む併用療法であるCAP(CPA+ADM+CDDP)療法が広く行われている。このような現状を踏まえ、シスプラチン、ドキソルビシンの効能追加及びドキソルビシンの用法・用量の変更について報告書を作成。
 ・子宮体癌治療の主体は手術療法であり、化学療法の対象となる再発例は非常に少なく、国内をはじめ海外においても大規模臨床試験の数は少ないが、4つの無作為化比較試験の結果より、AP療法の有用性は医学薬学上公知と判断した。
 ・主な毒性として、悪心・嘔吐、脱毛及び白血球減少があるが、化学療法を熟知した医師が十分に注意を払うことで、管理できるものであると考えられる。
 ・安全性については、国内においてCAP療法が、既に十分な使用経験があることから、AP療法に関しては、特に問題ないと考える。ただし、心毒性回避の観点より、ADMの総投与量は現行の添付文書の記載と同様500mg/m2以下とする。

【質疑応答】
 ・(質問)子宮体癌に使用できる薬剤が非常に限られているのは深刻な問題であると考えるが、海外の報告等から見て、本療法は本当に有用であると言えるのか。   →(回答)現在、進行再発子宮体癌に対する単剤での奏功率が20%を越えている薬剤は、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル及びパクリタキセルの6薬剤あり、これらの薬剤で奏功率が最も高いドキソルビシンがキードラックとして使用されている。海外においてもドキソルビシンが有効な薬剤として報告されている。シスプラチンの併用については、再発例では有効性は劣るが、初回治療においては有効性が認められている。
 ・(質問)進行再発がんに対して、生存率やQOLについて有効であるというデータは無いと理解しているが、本療法を標準療法として良いのか。→(回答)海外においては術後補助療法として放射線治療を行うのが一般的であるが、日本人では欧米人より重篤な副作用が起こるとされており、QOL及び毒性の観点より、日本においては化学療法を標準的におこなっている。
 ・(質問)本療法が薬事法上承認されれば、AP療法を含む比較試験等が実施される可能性はあるのか。→(回答)薬事法上承認されれば臨床試験が組みやすくなるので、実施される可能性は高いと考えられる。

【骨・軟部肉腫 シスプラチンについて】(資料4−1)
 国立がんセンター中央病院の中馬参考人より以下のような説明があった。
 ・シスプラチンに対する悪性骨腫瘍の効能追加について報告書を作成。用法・用量については、現行の添付文書G法と同じである。
 ・悪性骨腫瘍に分類される骨肉腫と悪性繊維性組織球腫は、同様な薬剤感受性を有する疾患で、大量メトトレキサート療法、シスプラチン、ドキソルビシン及びイホスファミドの併用療法がガイドラインで推奨されている。
 ・投与量の妥当性については、骨肉腫、悪性繊維性組織球腫に対して行われた代表的な研究で、シスプラチンの投与量を120mg/m2及び150mg/m2で行ったが、いずれも副作用にて減量されており、現行用量である100mg/m2より増量する妥当性は見られなかった。
 ・シスプラチンとドキソルビシンの併用時に、8割の患者でWHOグレード3,4の白血球減少が見られる。また、シスプラチンと他剤の併用において、重篤な副作用が5例、骨髄抑制、肺塞栓及びドキソルビシンによる心毒性による死亡例が各1例報告されている。以上のような副作用の発現は認められるが、化学療法を熟知した医師が十分な副作用対策をとって行うのであれば、安全性は担保できると考えられる。

【質疑応答】
 ・(質問)ドキソルビシンの用法が3分割となっているが、その理由は。→(回答)添付文書の用法が3日間投与となっており、それに準じて3分割とした。
 ・(質問)悪性繊維性組織球腫の発生は、高齢者に多いが、高齢者においても投与量を100mg/m2とするのか。→(回答)基本的には、投与量は100mg/m2で行う。高齢者への投与量については、今後の課題。尚、実態として適宜増減の記載があれば、安全性の観点より少ない量で使用する傾向がある。
 ・(質問)整形外科領域では、がん専門医が少ないと思うが、どの程度の悪性骨腫瘍患者が専門医の基で治療を受けているのか。→(回答)整形外科領域の化学療法に関しては、症例数が少ないためほとんどのケースが、がんセンター等の専門医がいる施設で行われており、一般の整形外科では治療は行われていないのが現状である。
 ・(質問)骨肉腫等を対象とした化学療法は、術前、術後及び再発進行のいずれを想定しているのか。→(回答)組織学的評価が必要となるため、術前化学療法における研究が進んでいる。
 ・(質問)術前療法については、副作用等で患者にかなりの負担がかかり手術に影響を及ぼすことはないのか。→(回答)米国で行われた術前療法と術後療法の比較試験においては、術前に化学療法を行うデメリットは否定された。
 ・(質問)シスプラチンの投与量を100mg/m26コースで行った場合、完遂率はどのくらいなのか。→(回答)骨肉腫に対しては若年者が多いため8割程度の完遂率が得られている。高齢者については5割程度となっており、安全策として減量等を行っている。

【まとめ】
 ・本日上程された2候補については本検討会の了承が得られた。
 ・本検討会での意見を踏まえ、事務局及びワーキンググループで再度修正を行い、7月ないし8月の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において事前評価をいただく。修正後の報告書については、座長に一任する。

4.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(リストの変更について)資料3、資料5
【抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループの第1バッチの対応について】
 ワーキンググループで報告書の内容等について検討し、資料3のリストを見直した結果について、国立がんセンター中央病院の藤原参考人より以下のような説明があった。
 ・いくつかの療法について、第1バッチのリスト作成後の承認状況の変化により、適応範囲内と解することができるようになったこと、また、その他の理由から検討の対象を見直すこととなった。
 ・平成16年5月末に胚細胞腫瘍に関するBEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が承認されたことに伴い、中枢性の胚細胞腫瘍に関する療法(表中番号27,28,29)は必要性の判断が変わったため、検討を終了した。
 ・平成16年2月のM−VAC療法の承認に伴い、泌尿器領域のMEC(表中番号49)について、必要性の判断が変わったため、検討を終了することとした。
 ・悪性黒色腫に対するIL-2療法(表中番号39,40)は、米国で悪性黒色腫瘍の効能で承認され、文献報告において使用されたIL-2と我が国において承認を取得しているIL-2には組成上の違いがあり、また外国での用量と国内の承認用量にも大きな開きがあることから、その違いが安全性、有効性に影響を及ぼす恐れがあること等の理由で、悪性黒色腫に対するIL-2療法を見直しすることとした。
 ・メトトレキサートの中枢神経性リンパ種への効能拡大(表中番号25)については、科学的な議論として現行の「悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解」の効能の範囲内とされ、適応外使用とは考えられなくなったので、ワーキング・グループにおける報告書作成作業を終了した。

【まとめ】
 ・今後、第1バッチの残りの療法について、報告書の作成作業を続けていく。
 ・がん緩和療法の薬剤については、本検討会の対象とならないのか。→(事務局回答)ワーキンググループにて検討する。なお、第1バッチについては、生命予後に係わる薬剤を中心に選定をおこなった。

5.その他
承認されるまでは添付文書の改訂は行われないので、厚生労働省のホームページへ掲載されている抗がん剤併用療法等に係わる報告書を参考にし、安全性確保に努めていただきたい。
第5回検討会は、第1バッチの残りの品目について、WGより提出される報告書の審議等を議題に、7月23日に開催する予定。


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