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資料3

スキャンした診療関連文書の原本性に関する論点整理メモ


<スキャナー読み込みによる電子保存の必要性>
1.平成11年の通知で電子保存の対象となっている文書に関して、医療施設等で電子化・電子保存の対象とした文書の電子保存開始以前の情報の取り扱いが困難。
2.院内で発生する情報は電子化できていても院外から発生する文書(診療情報提供書等)が物理媒体であるために取り扱いが困難。
3.平成11年の通知で署名または記名押印が必要なために電子化・電子保存の対象とならなかった文書のうち、処方箋以外の文書の保管等に関する現場サイドからの問題意識の表明。
4.保険薬局において受理・調剤をおこなった後の処方箋・調剤記録(再利用等の可能性のないもの)の保管等に関する現場サイドからの問題意識の表明(薬局内以外の場所での外部保存を認めていない)。

<スキャンした診療関連文書を原本とすることの問題点>
1.スキャン時に情報が故意または偶然に改変される可能性がある。スキャンノイズや、読み取りエラー、不都合な部分を削除・改ざんしてのスキャンなどの可能性を排除できない。
2.本質的にスキャンによって情報量が低下する(アナログ撮影X線フィルムのスキャン、捺印の陰影など)。
3.スキャン後の原本の廃棄で問題が生じないか(患者が自らの情報の取り扱い状況を知ることの保証を含む個人情報保護の確保の問題など)?
4.電子署名技術を用いる場合、署名の厳格さの水準と署名有効期間をどう扱うか。

<問題点に対する対応>
0.医療機関の保存スペースへの負荷を軽減するために物理媒体の外部保存は認めており、一方、運用上診療に差し支えない範囲でスキャンした情報を診療に用いることは妨げていない。
また、確立した紙文書の処分に要する負担の発生も勘案する必要がある。
この点を十分説明して可能であれば、紙媒体を残しつつ必要な範囲でスキャンを行い運用していく(e−文書法案は電子保存を義務付けるものではない)。

1.生善説にたてば、医療機関の責任を明確にして、すなわちスキャン後の情報がスキャン前の情報と診療の遂行上問題が生じない範囲で同一とみなすことができることを確認し、電子署名等で責任の所在を明確にしてスキャンすることで対応できる。大部分はこれでよい。しかし、痕跡を残さずに故意に改ざんを行うことが容易になること等が指摘されており、これらをふまえた最善の情報セキュリティ対策の実施が求められる。
過去の蓄積情報をスキャンする場合は所轄行政機関等に事前に実施計画や管理運用規定を提出した上で(文書の性格に応じ承認性を採用)、一定期間内に行うものとする。さらにオリジナルの紙媒体の情報の保存を1年程度は義務付ける。
常時発生する情報をスキャンする場合は、情報発生後、すみやかにスキャンする。
一定期間スキャンされなかった情報はスキャン情報の原本化は認めない。
スキャンによる情報作成責任者を限定することも検討(一定の研修を受けた診療録管理士など)。
スキャン作業後には、第三者による監査を実施する。

2.確かにスキャンによって情報量は低下するが、例えば銀塩フィルムも経時的に劣化し、情報量の低下の度合いがスキャン情報の原本化を妨げるレベルかどうか判断が必要。スキャンする場合は、診療への利用に問題が生じないための精度管理は必須で、技術的基準の設定が必要であろう。

3.情報の確度に影響を及ぼす書類等の保存方法の変更は、個人情報保護の観点からは重要な事項であり、既に診療が終了している場合で緊急に情報が必要になることのない過去の診療録等を除き、あらかじめ情報の当事者である患者に対し、スキャナによる電子保存を行っている旨を周知し、その安全性やリスクを含めて書面等により説明し、同意を得る必要がある。ただし、同意を得られなかった場合でも、医師法等で定められている診療の応召義務には何ら影響を与えるものではなく、それを理由として診療を拒否することはできないことを十分に説明しておく必要がある。

4.電子署名の有効期間が保存対象期間を下回る場合の対処
タイムスタンプは必須とする。
署名の延長に関してはさまざまな方法で対応可能であるが、第三者監査への対応や証拠性を考慮すれば一定の指針が必要。

5.スキャン後の情報を原本化する場合、元の紙媒体については、十分注意を促し、廃棄方法の例示が必要。


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