0. | 医療機関の保存スペースへの負荷を軽減するために物理媒体の外部保存は認めており、一方、運用上診療に差し支えない範囲でスキャンした情報を診療に用いることは妨げていない。
また、確立した紙文書の処分に要する負担の発生も勘案する必要がある。
この点を十分説明して可能であれば、紙媒体を残しつつ必要な範囲でスキャンを行い運用していく(e-文書法案は電子保存を義務付けるものではない)。
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1. | 生善説にたてば、医療機関の責任を明確にして、すなわちスキャン後の情報がスキャン前の情報と診療の遂行上問題が生じない範囲で同一とみなすことができることを確認し、電子署名等で責任の所在を明確にしてスキャンすることで対応できる。大部分はこれでよい。しかし、痕跡を残さずに故意に改ざんを行うことが容易になること等が指摘されており、これらをふまえた最善の情報セキュリティ対策の実施が求められる。
・ | 過去の蓄積情報をスキャンする場合は所轄行政機関等に事前に実施計画や管理運用規定を提出した上で(文書の性格に応じ承認性を採用)、一定期間内に行うものとする。さらにオリジナルの紙媒体の情報の保存を1年程度は義務付ける。 |
・ | 常時発生する情報をスキャンする場合は、情報発生後、すみやかにスキャンする。
一定期間スキャンされなかった情報はスキャン情報の原本化は認めない。 |
・ | スキャンによる情報作成責任者を限定することも検討(一定の研修を受けた診療録管理士など)。 |
・ | スキャン作業後には、第三者による監査を実施する。 |
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2. | 確かにスキャンによって情報量は低下するが、例えば銀塩フィルムも経時的に劣化し、情報量の低下の度合いがスキャン情報の原本化を妨げるレベルかどうか判断が必要。スキャンする場合は、診療への利用に問題が生じないための精度管理は必須で、技術的基準の設定が必要であろう。
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3. | 情報の確度に影響を及ぼす書類等の保存方法の変更は、個人情報保護の観点からは重要な事項であり、既に診療が終了している場合で緊急に情報が必要になることのない過去の診療録等を除き、あらかじめ情報の当事者である患者に対し、スキャナによる電子保存を行っている旨を周知し、その安全性やリスクを含めて書面等により説明し、同意を得る必要がある。ただし、同意を得られなかった場合でも、医師法等で定められている診療の応召義務には何ら影響を与えるものではなく、それを理由として診療を拒否することはできないことを十分に説明しておく必要がある。
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4. | 電子署名の有効期間が保存対象期間を下回る場合の対処
・ | タイムスタンプは必須とする。 |
・ | 署名の延長に関してはさまざまな方法で対応可能であるが、第三者監査への対応や証拠性を考慮すれば一定の指針が必要。 |
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5. | スキャン後の情報を原本化する場合、元の紙媒体については、十分注意を促し、廃棄方法の例示が必要。 |