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社保審―医療保険部会 資料3
第8回 (H16.6.23)

後期高齢者医療の保険者


現行の医療保険制度における保険者・行政の機能・役割


1.適正な被保険者管理 [適用]
  市町村国民健康保険 健康保険 老人医療(市町村):実施主体
被保険者たるべき者の存在の把握 ・市町村における住民基本台帳情報を基礎として把握 ・適用事業所事業主の届出を基礎として把握 ・市町村における住民基本台帳情報を基礎として把握


2.適切・良質・効率的な保険医療サービスの確保 [給付]
  市町村国民健康保険 健康保険 老人医療(市町村):実施主体
(1) 給付内容(範囲・率)の決定
・法定
・ただし、条例又は規約による傷病手当金その他の保険給付が認められている(法58条)
・法定
・ただし、健保組合には規約による付加給付が認められている(法53条)
・法定
(2) 保険医療機関・保険医の指定等
・健保法の保険医療機関を国保の保険医療機関とする(法36条)

・健保法の保険医を国保の保険医とする(法40条)

・保険医療機関・保険医に対する指導、報告徴収等は厚生労働大臣(地方社会保険事務局長)又は都道府県知事が実施(法41条、45条の2)
・保険医療機関の指定は厚生労働大臣(地方社会保険事務局長)の権限(法65条)
・保険医の登録は厚生労働大臣(地方社会保険事務局長)の権限(法71条)
・保険医療機関・保険医に対する指導、報告徴収等は厚生労働大臣(地方社会保険事務局長)が実施(法73条、78条)
・健保法の保険医療機関を老人医療の保険医療機関とする(法25条)
・健保法の保険医を老人医療の保険医とする(法25条)

・保険医療機関・保険医に対する指導.報告徴収等は厚生労働大臣(地方社会保険事務局長)又は都道府県知事が実施(法27条、31条)
(3) 報酬の設定
・健保法の規定による厚生労働大臣の定めるところによる(法45条)
・ただし、上記の額の範囲内において別段の定めをすることができる(法45条)
・中央社会保険医療協議会の議を経て厚生労働大臣が設定(法82条)
・ただし、(健保組合は)上記の額の範囲内において別段の定め(一定の条件を満たした場合に健保組合自ら保険医療期間と診療報酬に関する個別契約を締結)をすることができる(法76条)
・中央社会保険医療協議会の議を経て厚生労働大臣が設定(法30条)


3.適切・安定的な財政運営の確保 [財政責任]
  市町村国民健康保険 健康保険 老人医療(市町村):実施主体
(1) 保険料の賦課・徴収
・政令による基準に基づき、各市町村の条例で定めた保険料を賦課(法76条)(市町村税情報を利用して被保険者の負担能力を把握)


・保険者は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料の減免等を行うことができる(法77条)

【滞納者対策】
・保険者は保険料滞納者に対して、資格証明書の発行、給付制限を行うことができる(法9条、63条)
 保険料率については、
・政府管掌健康保険は法律で規定(法160条)
・健保組合は法定の範囲内において厚生労働大臣(地方厚生(支)局長)の認可を受ける(法160条)

(注:一部負担割合や高額医療費の支給額を決定するため、市町村税情報を利用して加入者の負担能力を把握)
(1) 審査・支払
・国民健康保険団体連合会に委託(法45条)している
・国保連が委託を受けたもののうち、高額レセプトについては国保中央会に委託することができる
・また、保険者による国保連への再審査が認められている
・社会保険診療報酬支払基金に委託(法76条)している
・なお、一定の条件を満たせば健保組合自ら審査支払をすることができる
・また、保険者による支払基金への再審査が認められている
・国民健康保険団体連合会(国保分)及び社会保険診療報酬支払基金(被用者分)に委託(法29条)している

・また、保険者による国保連及び支払基金への再審査が認められている
(注) 各医療保険制度には、以下のように個々の保険者の財政を安定させるための支援の仕組が設けられている。
市町村国保:保険基盤安定制度、保険者支援制度、高額医療費共同事業など
健保組合:高額医療費共同事業など


4.加入者(被保険者)に対する保健事業、情報提供
  市町村国民健康保険 健康保険 老人医療(市町村):実施主体
(1) 医療費分析等を通じた「医療の地域特性」の把握

(一部の国保連などにおいては、レセプト情報をもとに医療費分析を実施)

(一部の保険者において、レセプト情報をもとに医療費分析を実施)
・老人医療費適正化指針を規定(法46条の22)
(一部の市町村、国保連などにおいては、レセプト情報をもとに医療費分析を実施)
(2) 保健事業の実施
・努力義務として法定(法82条)(健康増進法により健康増進事業者として健康増進事業についての責務あり) ・努力義務として法定(法150条)
(健康増進法により健康増進事業者として健康増進事業についての責務あり)
・老人保健法に基づき40歳以上の住民を対象に保健事業を実施(法20条)
(3) 医療サービス情報の提供
 
(健保連などにおいて、病院等の医療情報の提供を実施)
 



(参考)
介護保険における保険者(市町村)の機能・役割


1.適正な被保険者管理 [適用]
○被保険者たるべき者の把握 ・市町村における住民基本台帳情報を基礎として被保険者を把握

2.適切・良質・効率的な介護サービスの確保 [給付]
(1) 給付内容(範囲・率)の決定
・法定
・第1号被保険者(65歳以上)の保険料を財源とした区分支給限度基準額の上乗せが認められている(法43条)
・種類支給限度基準額の設定が認められている(法43条)
・第1号被保険者の保険料を財源とした市町村特別給付が認められている(法62条)
(2) 事業者・施設の指定等
指定事業者に係る指定取消事由の都道府県知事への通知(指定等は都道府県知事の権限)
(3) 報酬の設定
社会保障審議会(介護給付費分科会)の議を経て厚生労働大臣が設定(法41条、46条、48条、53条、58条)

3.適切・安定的な財政運営の確保 [財政責任]
(1) 保険料の賦課・徴収
・政令による基準に基づき、各市町村の条例により第1号被保険者の保険料(基準額及び各段階の料率等)を設定(法129条)
・なお、市町村税情報を利用して被保険者の負担能力を把握
【滞納者対策】
・保険者は保険料滞納者に対して、支払方法変更(償還払い化)、支払の一時差止、給付額減額を行う(法66〜69条)
(2) 審査・支払
国民健康保険団体連合会に委託(法41条ほか)している
不正請求の疑いがあるときは、国保連が審査支払を行わず、保険者が審査支払することが可能
(注) 介護保険制度には、以下のように、個々の保険者の財政を安定させるための支援の仕組が設けられている
財政安定化基金制度、市町村相互財政安定化事業

4.加入者(被保険者)に対する保健事業、情報提供
(1) 給付費分析等を通じた「地域特性」の把握
・国保連との連携の下、保険者においてレセプト情報をもとに給付費分析を実施
(2) 保健福祉事業
・第1号被保険者の保険料を財源として実施することができる(法175条)
(3) 事業者情報の提供
(国保連の「介護情報・苦情処理センター」機能の強化を推進中)



高齢者医療の財政方式


後期高齢者への国保及び被用者保険からの支援

後期高齢者への国保及び被用者保険からの支援の図


老人保健制度における老人医療費の負担構造(1)

老人保健制度における老人医療費の負担構造(1)の図


老人保健制度における老人医療費の負担構造(2)

老人保健制度における老人医療費の負担構造(2)の図


前期高齢者の医療(給付)費の負担

前期高齢者の医療(給付)費の負担の図


制度間の前期高齢者医療費負担の不均衡の調整

制度間の前期高齢者医療費負担の不均衡の調整の図



後期高齢者の心身の状況に
ふさわしいサービスのあり方


地域における後期高齢者の生活機能の重視

<着眼点> 医療機関の機能分化と連携


・在院日数 ・紹介、逆紹介 ・退院時の指導
・「かかりつけ医」 ・在宅の重視



地域における後期高齢者の生活機能の重視の図




(参考実例1)

尾道市医師会・長期支援ケアマネジメントプログラム(CC to CC)

高齢障害者の長期フォローアップとケアカンファレンスの継続(長期フォローアップの方法論)


尾道市医師会・長期支援ケアマネジメントプログラム(CC to CC)の図




(参考実例2)
熊本市地域における急性期から慢性期に至る医療機関の連携
〈地域の属性〉
 
(1)  熊本市(人口:65万人、病院数:95(うち200床以上:20)診療所:550)は熊本2次医療圏と同範囲
 人口当たり病床数、医師数が多く、1人当たり医療費も高い
(2)  市内に4つの急性期特定入院加算を算定している病院(うち2つは地域医療支援病院)、その他公的病院2、大学病院1。回復期リハビリテーション病棟は市内282床(6病院)。
 急性期特定入院加算算定病院間で自ずから特徴の違いが生じ、地域の医療機関(開業医等)にとって患者の病状により適切な連携先を見つけることが可能
 地域において、情報の共有や連携に向けた課題への対応のため、長年、医師会・病院関係者の連絡会議等を開催。さらに、いずれの急性期特定入院加算算定病院においても、地域の医療機関との勉強会、研修等を通じて自院の特徴や機能連携の方針を周知したり意思疎通を図っており、紹介・逆紹介の増加等により地域において医療機関の連携が進められている。

地域の病院

診療所
∧かかりつけ医機能∨
←→
急性期特定入院加算算定病院
A病院






400床(うち開放型10床)
救急(1次〜2.5次まで対応)
平均在院日数12.3日
病床利用率97.5%
1日平均外来患者491.5人
初診紹介率53.7%







(1)  救急医療の積極的展開と積極的な逆紹介
 モービルCCUの配備や混合外科(救急)病棟の運用

(2)  病診連携会議・連携施設情報共有誌の活用や病診連携科を通じた開業医との連携の促進

(3)  地域医療支援のための各職種によるカンファレンス・研修会
B病院






361床
救急(呼吸器、循環器領域中心)
平均在院日数12.7日
病床利用率91.6%
1日平均外来患者473.5人
初診紹介率64.8%







(1)  急性期病院(入院)機能への特化
 外来機能を縮小し、「かかりつけ医」からの初診紹介を増
 診断、治療機器(CT、MRIなど)の充実による検査紹介の増
 高度急性期に必要なマンパワー、設備の確保

(2)  月例勉強会の開催などによる開業医との連携機会の拡充
C病院(地域医療支援病院)






227床(全床・開放型病床)
救急(1次救急、小児2次救急)
平均在院日数12.1日
病床利用率89.6%
1日平均外来患者190.8人
初診紹介率93.0%







(1)  開放型病院としてかかりつけの家庭医と病院の常勤医が共同で患者の治療を行うシステム
 原則として、かかりつけの家庭医(開業医)からの紹介や検査依頼を受けて診療等を行うとともに、月例勉強会を開催

(2)  病院と検査センター、ヘルスケアセンター、在宅ケアセンターが一体
 救急急患医療の充実(小児2次救急拠点病院)や在宅ケアセンターとの連携による在宅医療中の急変時の受入れ
D病院(地域医療支援病院)






550床(うち開放型110床)
救急(1次〜3次まで対応)
平均在院日数15.5日(精神含)
病床利用率89.7%(精神含)
1日平均外来患者809.5人
初診紹介率88.5%







(1) 地域医療機関との共同による「連携クリティカルパス」の開発・使用
 入院時に退院後の地域医療機関までを視野に入れた連携パス(患者用、医療機関用)を作成
 医療情報連携室を通しての逆紹介の推進

(2) 地域医療研修センターにおける連携医療機関との共同研修
 
※数値データは平成15年度
↓
←→
回復期リハビリテーション病棟 等
  ↓
←
療養病棟、老人保健施設 等



(参考実例3)

介護サービスとの連携〜東大病院における退院支援活動〜
東大病院では、患者の状況に応じ家庭や地域の病院・施設など適切な退院先で安定した療養生活が送れるよう、対象患者を医療、看護、介護、社会福祉など総合的な視点からとらえて退院支援を実施している。
退院支援に当たっては、退院後に地域において総合的サービスが受けられるよう、入院中から要介護認定申請手続を進めるなど介護ニーズをも踏まえた総合的なアセスメントが行われている。

介護サービスとの連携〜東大病院における退院支援活動〜の図
資料出所:柳澤愛子:地域医療連携室の役割と課題,看護展望,27:136-141,2002より一部改変


東大病院における介護保険制度下での退院支援の流れ
東大病院における介護保険制度下での退院支援の流れの図
資料出所: 長野宏一朗、柳澤愛子、五十嵐雅哉 介護保険と高齢者の退院支援:ジェロントロジーニューホライズン Vol.15 No.4 2003-10


保険者協議会に関する取組み状況


1. 「保険者協議会」の設置について
地域及び職域の医療保険保険者の連携・協力については、
(1)  被用者保険の被扶養者は日常の活動は地域を中心としており、被用者保険の保健事業も地域保険(国保)との連携が不可欠
(2)  地域保険(国保)にあっても、職域との連携・協力により職域から地域への連続した健康づくりが可能
(3)  各保険者が有する施設や人材等を相互に利用し合えるメリットがある
(4)  保険者間で地域の医療の特性を共同して調査・分析し、医療費適正化に取り組むことが効果的
このような観点から、厚生労働省として、地域・職域の医療保険保険者が都道府県単位で連携・協力して保健事業等を共同実施する取組みを平成16年度から宮崎県と新潟県の2県でモデル実施

2.モデル実施の2県における取組みの状況
(1) 宮崎県における取組み
保険者協議会は、県内の保険者(政府管掌健康保険(宮崎社会保険事務局)、健康保険組合(3組合)、市町村国保)により構成
平成16年5月に第1回協議会を開催し、以下を内容とする平成16年度モデル事業計画を承認した。
(1) 保健事業等の現状把握及び各種勉強会の開催
(2) 医療費分析の実施
(3) 被保険者等の教育・啓発事業の実施
(4) 健診後の個別保健指導の実施状況の調査 等
なお、実施の具体的な日時・方法等については、今後、専門部会で協議していくこととされている。
(2) 新潟県における取組み
平成16年6月中に第1回目の協議会を開催(予定)


「老人医療費の伸びを適正化するための指針」に関する取組み状況


1. 「老人医療費の伸びを適正化するための指針」(平成15年9月 厚生労働大臣告示)
 都道府県・市町村が関係者との連携の下に展開する老人医療費の伸びの適正化に向けた取組を支援し、もって地域における良質かつ効率的な医療を確保することを目的として策定(老人保健法第46条の22)
 都道府県等に対して、
(1) 学識経験者、保険者・被保険者、医療関係者等から構成される推進体制の整備(既存組織の活用含む)
(2) 老人医療費の地域特性の把握、施策の基本的方向・重点課題の設定、関係施策の実施、評価
に関する取組みを促している。

2. 各都道府県における取組みの状況(平成16年5月時点)
(1) 推進体制を整備済み   4県 (※)
(2) 体制整備のための予算を平成16年度に措置 20県
(3) 既存組織の活用などを検討中 23県

(※) 北海道 既存の「北海道総合保健医療協議会地域保健専門委員会」の小委員会として「老人医療費対策検討委員会」を設置(平成16年5月)
富山県 既存の「富山県高齢者保健福祉計画等推進委員会」において老人医療費に関する議論を開始(平成15年11月)
香川県 「老人医療費適正化に関する検討委員会」を新設(平成16年2月)
福岡県 平成14年度に「福岡県老人医療費対策問題協議会」を設置


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