(1) |
発育過程で獲得した知能、記憶、判断力、理解力、抽象能力、言語、行為能力、認識、見当識、感情、意欲、性格などの諸々の精神機能が、脳の器質的障害によって障害され、そのことによって独立した日常生活・社会生活や円滑な人間関係を営めなくなった状態をいう。多くの場合、非可逆性で改善が困難であるが、ときに治癒可能なこともある。 |
(南山堂 医学大事典による)
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(2) |
生後の発達の過程で獲得され、認知、記憶、判断、言語、感情、性格などの種々の精神機 能が減退、または消失し、さらにその減退または消失が一過性でなく慢性に持続することに よって日常生活や社会生活を営めなくなった状態をいう。痴呆は、脳損傷によって生じるこ とが多く、改善することはきわめて困難であるが、場合によっては治癒しうることもある。 |
(都立松沢病院 松下正明病院長による)
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(3) |
アメリカ精神医学会による分類
■DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
アメリカ精神医学会(The American Psychiatric Association, Washington D.C.)が発行する精神疾患の分類と診断の手引書。精神・神経疾患の定義及び診断基準として、多くの臨床家が利用している。
A |
記憶(短期、長期)の障害 |
B |
次のうち1つ
(1) |
抽象的思考の障害 |
(2) |
判断の障害 |
(3) |
高次皮質機能の障害(失語、失行、失認、構成障害) |
(4) |
性格変化 |
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C |
A、Bの障害により、仕事、社会活動、人間関係が損なわれる |
D |
意識障害の時には診断しない。 |
E |
病歴や検査から脳器質性因子の存在が推測できる |
(A) | DSM−IV(1995年から採用、DSM−IVでは、痴呆そのものの定義ではなく、個々の疾患別定義に変わっている。) |
アルツハイマー型痴呆の定義
A |
以下の2つによって明らかとなるさまざまな認知障害
(1) |
記憶障害(新しいことの学習障害と以前に学んだ情報の想起障害) |
(2) |
以下の認知障害のうち少なくとも1つ
(a) |
失語(言語障害) |
(b) |
失行(運動機能が正常にもかかわらず運動活動を遂行することができない) |
(c) |
失認(感覚機能が正常にもかかわらず物体を認知同定することができない) |
(d) |
実行機能の障害(計画、組織化、筋道をたてること、抽象化の障害)
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B |
緩徐な発症と持続的進行 |
C |
認知障害による社会・職業上の働きの障害、また以前の社会・職業上の機能水準からの有意な低下 |
D |
Aにみる認知障害は以下のものにはよらない
(1) |
進行性の記憶や認知障害をきたす中枢神経系の状態(脳血管障害、パーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、正常圧水頭症) |
(2) |
痴呆をきたす身体状態(甲状腺機能低下症、ビタミンB12や葉酸の欠乏症、ナイアシン欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症) |
(3) |
物質惹起状態 |
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E |
この障害は、せん妄の間にのみ生じるということはない |
F |
他のT軸障害によっては説明されない |
脳血管性痴呆の定義
A |
以下の2つによって明らかとなるさまざまな認知障害
(1) |
記憶障害(新しいことの学習障害と以前に学んだ情報の想起障害) |
(2) |
以下の認知障害のうち少なくとも1つ
(a) |
失語(言語障害) |
(b) |
失行(運動機能が正常にもかかわらず運動活動を遂行することができない) |
(c) |
失認(感覚機能が正常にもかかわらず物体を認知同定することができない) |
(d) |
実行機能の障害(計画、組織化、筋道をたてること、抽象化の障害) |
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B |
局所性の神経徴候と症状(深部腱反射の亢進、伸展性足底反応、仮性球麻痺、歩行障害、四肢の筋力低下)、脳血管障害を示唆する検査所見で、それが病因的にその障害と関連があると判断されるもの(皮質や白質を含んだ梗塞巣) |
C |
認知障害による社会・職業上の働きの障害、また以前の社会・職業上の機能水準からの有意な低下 |
D |
この障害は、せん妄の間にのみ生じることはない |
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