戻る

社会保障審議会障害者部会(第13回・ヒアリングの実施について)意見発表要旨

団体名  日本障害者協議会
発表者  藤井克徳(常務理事)

 支援費制度と介護保険制度のいわゆる統合問題は、障害者を取り巻く厳しい社会・財政状況の中、本協議会としても重大な決断を迫られていると認識している。
 障害者施策の一般財源化の方向での議論が着々と進められており、それが現実になればますます介護サービスの地域間格差が増大する可能性が高い。今般の「統合論」は、こうした事態を少しでも緩和させ、財源の確保を行なおうとするものであろう。
 さる6月4日の社会保障審議会障害者部会において、3人の学識経験者連名による「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために〜支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性〜」という報告が出された。
 そこでは、「重要なのは、障害を有する人々がその自己決定にもとづいて、必要な福祉サービスを活用して地域で生活を営むことができるような支援の制度を良質かつ適切なサービスが提供できる持続可能な安定した制度として確立することが緊急の課題であると考える」と指摘しており、本協議会としても同意見である。しかし、各論においては障害種別ごとの、あるいはそれを越えた障害者施策全体の総括もなされないまま、介護保険制度との統合を前提とした内容となっているのは残念である。
 本協議会が基本問題として提起している一割負担の問題に関連する所得保障の確立や、要介護認定のあり方、とりわけ社会参加サービスをどのような形で提供していくか、あるいは上限問題をどうしていくかなどについては、具体的な明言を避けている。つまり8団体が行なった障害保健福祉部との勉強会の域を脱しきれない内容となっている。
 財源論的な視点に立った「支援費制度改革の方向性」という小項目がおこされているが、介護保険制度全体の改革についてはふれられてなく、障害者の不安を払拭しうるものにはなっていない。本協議会は、支援費制度を現状より効率的なものとし、客観性のあるシステムにすることには、決してやぶさかではない。この場合にあっても、24時間介護保障を含め、真に必要な人に対しては、必要なサービスが提供しうるシステムとしていくことが必須である。その具体的な担保は未だに確保されていない。
 本協議会は、将来的には高齢障害者と若年障害者との介護サービスを一本化させるべきであるという立場をとっている。しかし、上述したとおり、今回の場合は、制度の統合というよりも、支援費制度の介護保険制度への吸収(併合)という色彩が強い。また、扶養義務制度や所得保障制度の改正、総合的な障害者福祉法の制定、雇用・就労施策の確立、施設体系の再編、社会資源の基盤整備の推進、精神障害者・知的障害者の社会的入院・入所問題の解消などの基幹的な課題については、言及がない。繰り返しになるが、今回の「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために」は、障害者の自立を支援する真の改革からはほど遠く、財源論的な観点からの表層的な提言と言わざるを得ない。場当り的な政策変更ではなく、時間をかけながら関係団体との合意を図りつつ、しっかりとした理念とデータに基づいた真の改革を強く望みたい。
 以上の認識から、現時点で統合に賛成できる材料はなく、引き続き賛否の判断が可能となるような材料提供を政府に求めたい。


トップへ
戻る