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平成16年6月18日

社会保障審議会障害者部会 ヒアリング資料

DPI日本会議 常任委員
中西 正司


1.介護保険統合反対デモに1200名、480団体が参加
 6月9日、全国の地域の障害者の生活を支援している480団体1200名が、「6.9障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」として厚労省前で介護保険統合反対を訴え、厚労省に要請文を提出した。5月30日に行った短期間での呼びかけは一瞬のうちに広がり、翌日から参加申し出が絶えない状況で、全国の障害者のおかれている状況がいかに不安なものなのかを切実に感じさせるものであった。北海道から沖縄まで、大阪からは300名の障害者が手に手にプラカードを抱えて、参集した。精神・知的・難病のすべての種別の当事者団体や関連団体など予想を超える幅の広い参加者の熱気こもった集会となった。全国自立生活センター協議会が2004年3月に行った介護保険との統合の是非を問うアンケート調査(注1)においては精神・知的・身体の地域で暮らす障害者の85%が反対(資料1)、「サービスの理念が違う」「医者を含めた認定制度で本人のニードが反映されない」「サービスの上限(支給限度額)がある」「保険料や1割の利用料負担を払えない」「2階建て部分が不安だ」「国の責任ではなく保険でまかなうのは根本的な間違いだ」「介護保険の財源も将来的に行き詰まる可能性が高い」というように障害者は統合の中身について深く理解したうえで、単なる情緒的な判断ではなく、具体的な知識をもって反対していることがおわかりいただけると思う。6月9日の参加者は自分たちの現実の将来の生活の不安感から、やむにやまれず、車、電車、飛行機を使い全国から参加したものである。

2.高齢障害の比較調査にみる、求められている在宅サービスの違い
 2003年8月に実施された高齢者生活協同組合連合会と全国自立生活センター協議会の利用者意識調査(注2)によると、介助を入れても家族と共に暮らしたい高齢者が91%(図2―1)、障害者においては一人暮らしをしたいという希望が46%(図2―2)、このように自立、一人暮らしという生活が基調となっており、家族ケアが前提となっている高齢者との違いを表している。高齢者は介助時間1日4時間以内で済んでいるのはこのような背景があるためである。図2―3、図2―4は高齢と障害の自己決定の差異を表している。高齢者の50%は家族がケアプランを決定しており、本人決定は37%、ケアマネジャーの決定はさらに低く16.4%、サービスの依頼先決定は家族が47%、本人決定22.4%となっており、介護保険はその理念で唱えられた本人主体のものというより家族主体のものとなっている。一方、障害者は介助内容については78.2%、介護派遣サービス依頼先の決定は本人が78.7%、そのいずれにおいても本人自身が介助利用の主体者であるという意識をより鮮明に持っていることがおわかりいただけると思う。
 サービス利用状況をみてみると高齢者の90%が月3時間から90時間の間に分布しており(図2−5)障害者の場合30時間から740時間の間で広く分布し(図2−6)、1日3時間(月90時間)の介護保険サービス以内ではわずか20%の全身性障害者しかニーズを満たせず、80%の障害者は2階建て部分に頼らざるを得ない2階建て部分の方が大きくなる逆ピラミッドのような状況で、介護保険の基本部分との逆転現象が起こる。これらの状況を見てくると介護保険制度は根本的な見直しをしなければ障害者のニーズに応えられないことがおわかりかと思う。少なくとも支援費制度のもとで数年間の実施をして全国のデータを集積しなくては国の政策に耐える実態把握ができないことがおわかりかと思う。

3.迷走する制度、理念なき福祉−理念なき財源先行の議論への疑問
 支援費制度はその初年度、厚労省の予測した需要時間を上回って利用され、これまで障害者のサービスを提供していなかった自治体でも利用できるようになった。需要が増えたことは制度が良かったことであり、本来歓迎すべきことである。新たな制度を発足させるときにはこの程度のトラブルは当然のこととして読み込み、その後の財源の手当てを考えれば、良いはずである。
 介護保険の総額は5.5兆円であり、支援費の在宅サービスは1200億円と、象に蟻を引っぱらせるような規模の違う問題で、支援費の財源確保は介護保険統合以外の財源確保の方法も真剣に探っていくべきである。財源がないから他の制度にくっつけるという問題ではなく、どのような福祉理念を持ち、将来の福祉社会を想定して障害者福祉をどう位置づけるのかの視点をまず持ち、しかるのちに財源問題を考えることが先決で、他制度への統合はその場合の財源として何が適切かを考えて決定すべきものである。財源が先にたてば、理念なき福祉といわれてもしようがないであろう。

4.行き先のわからない船に白紙委任状を持っては乗れない
 障害部会では6月25日に中間とりまとめを行うと聞いている。そこで、今日の各団体ヒアリングの結果を踏まえて、介護保険統合の是非を論じるつもりであろうし、それを否定する声を厚労省から聞いたことはないので、そう仮定すると、今日この場で介護保険統合に対して、厚労省がいうところの新たな介護保険の中身をまったく知らされないまま、この会議のこの場で、統合賛成か反対かを述べよと迫られても、白紙委任状を持って介護保険に乗ることはできない。
 DPI日本会議は4月1日の常任委員会で介護保険反対の方針を確認した。5月17日に沖縄で開催された全国自立生活センター協議会の総会では目前の我々の世代の財源問題で安易に介護保険という障害者にとって使いにくい制度に組み入れて後世、数十年後の障害者にまで迷惑をかけるよりは、この支援費制度という今後運用しながらバージョンアップを図っていくべき制度を後世の障害者に残すという長期的視野に立った結論を出した。そして介護保険に白紙委任状をもって入ることはできないということを決議したところである。
 2000年の介護保険成立の前より、“世界中の高齢サービスと障害のサービスがどのように統合されてきているか、そのうちの成功例はあるか”をドイツ、イギリス、カナダなどに研修団を派遣し、我々も研鑽を重ねてきた。その結果、出た結論は、ドイツにおいても介護保険に統合すべきでなかったと障害者自身が判断しており、イギリス、カナダにおいても別立ての制度として運営する方法を編み出して、国の統合化の問題に対処してきていることがわかった。また、国内においても、イギリス、カナダの制度についての本(注3)を出版し、介護保険問題について「当事者主権」(注4)という本を出版するなど、いかに統合に無理があるかを7年間にわたり訴えてきたところである。
 今年1月より再三再四厚労省に対しても具体的な情報開示を求めるなどの、精一杯の努力をしてきたつもりである。それにもかかわらず、厚労省は今は言えないとの回答をくり返すだけであった。

5.障害者の介助は30年間の汗と涙の結晶
 地域での障害者の生活は、障害者自身による過去30年間の血のにじむような地域での生活実態を作る活動から始まっている。夜中じゅうボランティアに何十件も電話をかけまくって介助者を集め、翌朝の介助をみつけるような生活が70〜80年代に全国各地で行われていた。これらの生活実態作りが、都道府県を動かし、ひいては国を動かして高齢者のための在宅介護サービスであったホームヘルプサービス制度を重度の障害者や知的障害者の利用に耐えるような制度に徐々に変えていった。1年間かかってわずか1時間の介助時間のアップをしてもらうような涙ぐましい行政との協調関係を得ながら、これらの制度が作られ、それが当事者主体の支援費制度として実ったと地域の障害者は考えている。

6.精神、知的障害、難病の当事者はなぜ統合に反対しているのか
 「介護保険に入ることで、身体、知的、精神、難病が共通して利用できるシステムができる」と、「介護保険への統合議論」に伴ってにわかに言われるようになってきた。精神保健福祉法改正の際に、「医療と福祉を切り離した上で、精神障害者が自己決定してサービスを受けられるようにしてほしい」との当事者からの要望は無視されてきた。それが介護保険への統合の話が出ると精神障害者を入れる為に障害者の統合があるという厚労省からの説明があることに精神障害当事者たちは不信を感じている。精神障害当事者であり大阪精神障害者連絡会の塚本氏は「政策の都合で翻弄されるのではなくまず支援費制度に精神障害者を入れる議論があってしかるべきだろう」と発言している。
 知的障害者はホームヘルプサービスの中でも移動介護の利用割合が高く(利用時間数全体の約56%)、支援費が介護保険に統合された場合、移動介護がどう位置付けられるか非常に不安を感じている。また、これからも急速に増えていくであろう親元や入所施設から出て地域で自立生活をする知的障害者の場合、「見守り」を含めた長時間のホームヘルプサービスを必要とする人が多いが、介護保険では長時間のホームヘルプサービス利用は不可能である。
 人工呼吸器の管理や吸引などの医療的ケアや意思伝達方法や寝返りなどには個別性がもとめられる難病者の介護でも、1時間などの細切れの身体介護でしか派遣しない介護保険事業者が多く、すべてが介護保険になったら難病者のニーズに的確に対応してもらえなくなる。

7.2階建て制度は保障されたものなのか?
 6月4日の障害者部会で、「支援費制度も税金であり、2階建て部分も税金で、支援費制度で破綻したものが、2階建てで破綻しないのか」と問われて部長は“法律によって定められた方法によって2階建て部分を確保する。従来の裁量的経費という方法をとらない”と回答している。我々の知りうるところでは、特定財源を求められない場合、「地方特例交付金制度」を使う方法が唯一残されている。この地方特例交付金は市町村障害者生活支援事業が一般財源化されたときに一部使われたが、実際に市町村に降りてくると、一般の交付金と変わらない扱いを受け、市町村障害者生活支援事業に確実に回される保障は何もないということがわかった。表面上、国は自治体に算定根拠を示して特例交付金を交付したと言っても、市町村段階ではホームヘルパー制度に特定するような縛りはかけられないものだということを実体験した。国は、法律で保障された制度として他にいったい何を考えているのかお答え願いたい。
 もし、2階建てができるのであれば、全額国でもつような方法で財源確保を考えることが憲法25条の“健康で文化的な生活を保障する”の精神に沿った国の責任を明らかにしたものとなるであろう。

8.障害者の介助サービスは国家責任
 障害者の介助サービスは、国家責任としてまず第一にとり組むべき課題であることは、国民の生存権を保障する立場から当然のことである。介護保険は拠出制によるものであり、応益負担も稼得能力の生まれつき無いような障害者に課すことは制度理念から言って問題があるところである。このような、無理なこじ付けをして介護保険に統合を考えるよりはすっきりと国の責任を認め、税によるサービスを基本とするという従来の方針を継続すべきである。

9.1〜4月の厚労省との話し合いで、より深まった疑問〜譲れない基本問題
 今年1〜4月に、厚生労働省との週1回の話し合いが継続された。障害者団体が指摘する問題点に対する具体的な解答・対応は示されてこなかった。それどころか、厚労省からの説明や資料提供により、一層、疑問は深まった。いずれも、障害者の自立生活に関わる、譲れない基本問題である。

 第1点に、介護保険には35万円の上限があること。
 これはホームヘルプサービスにおいては1日3時間にあたる。これでは、全身性障害者の80%以上の人達が暮らせない。知的障害者、精神障害者にとっても、不十分なサービスとなり、家族への依存を深めさせ、自立を阻害する。

 第2点は、自立の理念が異なること。
 介護保険では介助を使わなくなることが自立という発想が、障害者福祉においては1982年に国連から出された「障害者に関する世界行動計画」(注5)で「リハビリテーションは期限と目的を限って行われるべきものである」という規定をして以来、介助を受けながらの自立という方向に障害者福祉は大きく舵をきった。介護保険の、「要介護状態でないこと=自立」とする概念は82年以前に戻る論議であり、承服しがたい。

 第3点は、介護保険にはないサービスとして、ガイドヘルパー、移動外出などがあること。
 手足の機能が不十分な場合、外出中でも必要な手助けは必要であり、家の中と同様に頻繁に水をのませる、汗を拭く、倒れた体や首をおこすことなどが必要となる。2階建て論議の中では、生活部分は介護保険で、ガイドヘルパーなどは横だし部分でという論理だてのようだが、ことさら、そこに財源を別立てにする境界をつける意味づけができない。個人の生活をサービスで類型化することによる弊害は現場でははかりしれないものがある。

 第4点に、介護保険制度では要介護度4、5になると半数以上が施設入居させられていること。
 支援費制度になって、ようやく知的障害者を含めた重度障害者の自立生活が始まってきた、ようやく施設から地域生活へ移行することができるようになってきた。こうした動きを、逆行させることは絶対認められない。

 第5点に、介護保険の「利用料1割負担」は同居家族全員の扶養義務強化につながること。
 支援費制度になって利用者負担の扶養義務範囲から親、兄弟がはずされたことにより利用者が増えた。介護保険の「利用料1割負担」では低所得者に対する減免制度があるといわれているが、減免制度は『住民税非課税世帯』を対象としている。これでは再び、親・兄弟などと同居している障害者の場合は、実際には家族の了解がなければサービスが使えず、実質的なサービス利用ができなくなる状況に陥ることは措置の時代のホームヘルプサービスの実態から明らかである。介護保険の「利用料1割負担」は同居家族全員の扶養義務強化をはかることになるので了承しがたい。

10.重度障害者がなぜ介護保険に反対するのか?
 地域でくらす障害者は365日休みなく生活している。時には命の危険にさらされながら介助者の到来を待つこともある。筋ジストロフィーの両手両足の動かない利用者は夜、1人で寝ているとゴキブリが顔をはっても、はらうこともできない。それでも地域で自分の人生を生きることに喜びを感じ、なかには仕事を持って非障害者よりはるかに生産的な毎日をおくっている人たちもいる。
 施設から出た障害者に何が一番今うれしいかを聞くと、「自分の好きなときにトイレにいけること」と答えられ、胸がつまった。施設では職員が「後でね」言いながら、ほったらかしにされることが多かったという。トイレにいけることが喜びという障害者に介護保険の1日3時間のサービスで我慢してくれ、トイレに自由に行きたければ施設に戻れと宣告する無慈悲な福祉サービスを我々は二度と受けたくない。それが、6月9日の介護保険統合反対デモの奥に隠された心である。
 地域のサービス利用当事者、行政の現場窓口職員、サービス提供者は介護保険の現場のサービスのあり方から考えて、介護保険に障害者が入ることが良い福祉サービスを提供することになるとはまったく思っていない。このすべての人々を説得する材料がこの障害者部会の一人一人にあるのだろうか、それが可能でない限り、介護保険統合賛成を安易に唱えるべきではない。利用者の今後数十年にわたる障害者の苦しみを考え、冷静な判断を皆さんに今、求めている。


(注1) 「介護保険と障害者施策に関する緊急アンケート」
全国自立生活センター協議会が2月24日から3月11までにインターネットを通じて調査。全国の身体、知的、精神の障害当事者680名から回答を得た。アンケート結果は下記ホームページに公開されている。
http://www.j-il.jp/jil.files/kaigohokenn/tyuukann.htm

(注2) 「高齢者・障害者のサービス利用の実態・意識調査」
日本高齢者生活協同組合連合会が2003年5月より8月にかけて実施。
調査対象は全身性の障害をもつ自立生活センター利用者747名と要介護度3以上で、本人回答が可能な高齢者生活協同組合・労働者組合の在宅サービス利用者200名。回収方法は障害者が郵送法、高齢者が面接回答法にて行う。有効回収票・有効回収率は障害者464名で62.1%、高齢者が173名で86.5%。

(注3) ・イギリスについての調査研究報告書:「障害当事者が提案する地域ケアシステム」、ヒューマンケア協会ケアマネジメント研究会編、1998年、ヒューマンケア協会
・カナダについての調査研究報告書;「当事者主体の介助サービスシステム」、ヒューマンケア協会ケアマネジメント研究会編、1999年、ヒューマンケア協会

(注4) 岩波新書「当事者主権」、上野千鶴子・中西正司共著、2003年、岩波書店

(注5) 「障害者に関する世界行動計画」(1982年の国連総会決議)
「リハビリテーションとは、損傷した者が精神的、身体的及びまたは社会的に最も適した機能水準を達成することを目的とした、目標志向的かつ時間を限定したプロセスであり、これにより、各個人に対し自らの人生を変革する手段を提供することを意味する。これには、機能の喪失あるいは機能の制約を補う(たとえば補助具により)ことを目的とした施策、及び社会的適応あるいは再適応を促進するための施策を含みうる。」


資料1 介護保険と障害者施策に関する緊急アンケート調査結果(2004年3月実施)

Q.介護保険と障害者施策について論議されていますが、あなたはこれについてどう思いますか?

図1 介護保険と障害者施策に関する緊急アンケート調査結果(2004年3月実施)のグラフ
反対 575
賛成 22
わからない 70
その他 13
合計 680


資料2 高齢者・障害者のサービス利用の実態・意識調査より(2003年8月実施)

図 2−1 1人暮らしへの希望(高齢者)
n=101

  図 2−2 1人暮らしへの希望(CIL利用者)
n=448

図 2−1 1人暮らしへの希望(高齢者) 図 2−2 1人暮らしへの希望(CIL利用者)


図2−3 依頼先、介護内容、ケアマネージャーの決定者 (高齢者)

図2−3 依頼先、介護内容、ケアマネージャーの決定者 (高齢者)
  ケアマネージャーの決定者(n=152) ケアプランの決定者(n=157) サービス依頼先の決定者(n=156)
本人 16.4% 37.0% 22.4%
家族 40.1% 53.4% 47.4%
団体紹介 25.0% 0.0% 0.0%
わからない 5.9% 3.4% 5.8%
友人・知人 2.6% 0.7% 1.3%
ケアマネ 0.0% 0.0% 15.4%
その他 9.9% 5.5% 7.7%


図 2−4 依頼先、介助内容の決定者 (CIL利用者)

図 2−4 依頼先、介助内容の決定者 (CIL利用者)


図2−5 高齢者の介助利用時間(1ヶ月)

図2−5 高齢者の介助利用時間(1ヶ月)


図2−6 CIL利用者の介助利用時間(1ヶ月)

図2−6 CIL利用者の介助利用時間(1ヶ月)




高齢者エンパワメント調査・研究事業
「高齢協・自立生活センター統合版」



この報告書には、比較可能なデータのみが記載されている。より詳しいデータ、報告については、「高齢者生活協同組合版」および「自立生活センター版」を参照のこと。
以後、自立生活センターは略称CILを用いている箇所もある。

報告書の数値の見方
それぞれの質問項目の回答者総数はnで示している。
有意確率はαで示している。
%の数値は、小数第1位、もしくは小数切捨で示している。このため、各回答の数値の合計がかならずしも100%にならない場合がある。
回答は、単純回答(あてはまるものに○1つ)と複数回答(あてはまるものすべてに○)の種類がある。複数回答の場合、その回答割合の合計は100%を超えることがあり得る。
図表やコメント部分での回答肢は、簡略化して表現している場合がある。正式な回答肢は調査票を参照のこと。


I 回答者の属性

【性別】
図 1 性別(高齢協)   図 2 性別(CIL)
図 1 性別(高齢協) 図 2 性別(CIL)
高齢協
男性3割、女性7割。
CIL
男性、女性の割合は、ほぼ半々。

【年齢】
図 3 年齢(高齢協)
図 3 年齢(高齢協)
 
図 4 年齢(CIL)
図 4 年齢(CIL)

高齢協
平均年齢は78.44歳。80代が4割以上を占め、最も多い。
 
CIL
平均年齢は約40.58歳、30代、40代が最も多い。最高年齢78歳までと幅広い層の利用者がいる。女性の平均年齢の方が高い(女性41.81才、男性39.45才)。

【居住形態】

図 5 居住形態(高齢協)

  図 6 居住形態(CIL版)

図 5 居住形態(高齢協) 図 6 居住形態(CIL版)

高齢協
62%の人が、主な介護者である親族と同居している。31%が一人暮らし。親族と暮らしながら、主に他人介護を受けている人は、6%と少ない。
 年齢による居住形態の変化は、みることができない。
 
CIL
一人暮しをしている人が、半数を上回る。18.5%の人が親族と暮らしながら、他人介助を受けている。年齢が高くなるにつれて、一人暮しの人の割合も増える。また、同居している親族から介助を受けている人の平均年齢が他と比べて低い(CIL版3頁図5)。


【1人暮らしへの希望】

図 7 1人暮らしへの希望(高齢協)

  図 8 1人暮らしへの希望(CIL)

図 7 1人暮らしへの希望(高齢協) 図 8 1人暮らしへの希望(CIL)

高齢協
同居する親族から介護を受けている人のうち、半数以上が今後も主な介護者である親族と同居することを望んでいる。一方で、35%の人が、親族と同居を継続するも、他人介護を望んでいる
 1人暮らしへの希望に、年齢による差は見られないが、障害による差を見ることができる。障害の重い人ほど、今後の希望について「わからない」を選択。障害が比較的軽い人ほど、「1人暮らし」を希望している(高齢協版3頁図6)。
 
CIL
同居する親族から介助を受けている人のうち、45%が一人暮しを希望、35%が親族と同居を継続するも、他人介助を望んでいる。
 年齢をみると、一人暮しを希望する人の平均年齢が低いことから、一人暮しを希望する人は、現在親と同居している割合が高いようだ。一方、他人介助を中心に利用しながら親族との同居継続(「親族同居他人介助」)を選択している人は、配偶者との同居の割合が高いことが予想される


【日常生活動作の状況】
図 9 日常生活の状況(高齢協)
図 9 日常生活の状況(高齢協)
 
図 10 日常生活の状況(CIL)
図 10 日常生活の状況(CIL)

高齢協
平均して4割強の人が、寝返り、トイレ、食事、に介護が必要。移乗、意思伝達では3割。 障害が最も重いのは、親族と同居しながら、主に他人介護を受けている人。次に親族と同居し、介護を受けている人の障害が重く(高齢協版4頁図8)、親族が多くの介護を提供していることがうかがえる。
 
CIL
平均して約7割の人が、寝返り、トイレ(小便)、食事、に介助が必要。意思伝達では、25%。日常生活動作に介助が必要な程度と、年齢、性別、居住地に有意な関連はない。


【1人暮らしの年数】
図 11 1人暮らしの年数(高齢協)
図 11 1人暮らしの年数(高齢協)
 
図 12 1人暮らしの年数(CIL)
図 12 1人暮らしの年数(CIL)

高齢協
一人暮らしの平均年数は、11年。半数が、一人暮らしを始めて6年以内。3年目の人が最も多い。
 半数の人が、一人暮らしを始めてから6年以内ということから、死別等によって一人暮らしを始めた利用者が多いことがうかがえる。
 
CIL
一人暮しの平均年数は、7,5年。一人暮しを始めてから1年目以内の割合が最も多い。一人で4人に一人は、10年以上一人暮しをしている。
 51.6%が一人暮しをはじめて、5年以内。このことは、今回のアンケートを依頼した地方の自立生活センターの多くが発足してから時間がたっていないことの影響もあると考えられる。


II サービス利用状況

【利用時間】
図 13 利用時間合計(高齢協)
図 13 利用時間合計(高齢協)
 
図 14 利用時間合計(CIL)
図 14 利用時間合計(CIL)

高齢協
介護サービスの利用合計時間の月平均は、39.65時間、中央値は28時間。
最も多いのは、月に14時間の利用。親族と同居し主に他人介護を受けている人の合計利用時間平均が最も長い(高齢協版8頁図14)。日常生活動作、性別には、統計的に有意な関連はない。
 
CIL
介助サービスの利用合計時間の月平均は284時間、中央値は240時間。
最も多いのは720時間(1日24時間×30日)と230時間〜240時間(1日約8時間×30日)の利用者。平均利用時間と、日常生活動作、居住形態、性別が統計的に有意な関連を持つ。日常生活動作では、全体介助の必要な人ほど平均利用時間は長くなる(CIL版7頁図12)。居住形態では、一人暮しの人の平均利用時間が長い(CIL版8頁表2)。また性別では、女性の方が平均利用時間が長い(CIL版8頁図4)。


【内容別利用時間】
図 15 内容別利用時間(高齢協)
図 15 内容別利用時間(高齢協)
 
図 16 内容別利用時間(CIL)
図 16 内容別利用時間(CIL)

高齢協
利用時間の内訳では、「家事援助」の平均時間が18.1時間で最も多い。全体の利用時間の中で、高齢協が、それぞれの利用時間の8割以上を提供しており、特に「家事援助」では、99%を占めている。
 
CIL
利用時間の内訳では、身体介助の平均時間が、110.9時間で最も多い。全体の利用時間の中で、自立生活センターが、それぞれの利用時間の8割以上を提供しており、自立生活センター抜きでは生活が成り立たない利用者が多いことがうかがえる。


【サービス依頼先】
図 17 サービス依頼先(介護保険内)(高齢協)
図 17 サービス依頼先(介護保険内)(高齢協)
 
図 18 サービス依頼先(CIL)
図 18 サービス依頼先(CIL)

高齢協
家事援助で96.3%、身体介護で87.9%、複合型で94.3%の人が高齢協からのみサービスを利用している。介護保険外では、高齢協のみからサービスを受けている人の割合が非常に高い(身体介護および複合型で高齢協のみが100%、家事援助で93.8%)。 障害の重い人ほど、高齢協と他の団体を組み合わせて利用している(高齢協版10頁図17)。
 
CIL
身体介助で66.5%、家事援助で69%、移動介助で80.1%の人が自立生活センターからのみサービスを利用している。身体介助、家事援助では2割以上の人が、公的団体、民間団体と自立生活センターを組み合わせてサービスを受けている。
自立生活センターの利用者がもっとも、障害が重い(CIL版11頁図15)。


【利用日・時間帯別サービス依頼先】

図 19 利用日・時間帯別サービス利用先(高齢協)
図 19 利用日・時間帯別サービス利用先(高齢協)
 
図 20 利用日・時間帯別サービス利用先(CIL)
図 20 利用日・時間帯別サービス利用先(CIL)

高齢協
早朝深夜72.7%、日曜祭日82.1%、緊急時60%の人が高齢協にサービスを依頼。
 
CIL
早朝深夜79%、日曜祭日77%、緊急時75%の人が自立生活センターにサービスを依頼。


【利用料金負担】
図 21 利用料金負担(高齢協)   図 22 利用料金負担(CIL)
図 21 利用料金負担(高齢協) 図 22 利用料金負担(CIL)

高齢協
本人負担が59%を占める。次いで、家族が32%。利用料金を負担していない人は、7%のみ。
 
CIL
3 / 4の人が、利用料金を負担していない。利用料金を負担している場合は、78%が本人、家族が14.7%。


【利用料金の負担感】
図 23 利用料金の負担感(高齢協)   図 24 利用料金の負担感(CIL)
図 23 利用料金の負担感(高齢協) 図 24 利用料金の負担感(CIL)

高齢協
利用料金を負担に感じている人は、47.9%と半数以下。
 
CIL
利用料金を負担に感じている人は、66.3%。


【制度の認知度】
図 25 介護保険制度の項目別認知度(高齢協)
図 25 介護保険制度の項目別認知度(高齢協)
 
図 26 支援費制度の項目別認知度(CIL)
図 26 支援費制度の項目別認知度(CIL)

高齢協
 介護保険の主な特徴をひとつも知らない人(25.8%)が、全て把握している人(19.6%)を上回る。特に「ケアプランを自分で作成できる」は4人に1人(25.7%)のみしか知らない。また介護保険制度の認知度は、年齢が高くなるほど低くなる傾向がある(高齢協版頁図24 )。
 
CIL
 77%の人が支援費制度の主な特徴を全て把握している。全く知らない人は、2.4%のみ。合計利用時間の多い人ほど、支援費制度について把握しており(CIL版13頁図20)、居住形態では、親族と同居し親族から介助を受けている人の認知度が低い(CIL版13頁表5)。


III サービス提供団体の満足度

【サービス提供団体への評価】
図 27 サービス提供団体への評価(高齢協)
図 27 サービス提供団体への評価(高齢協)

表1 サービス提供団体への評価(高齢協)
評価項目 高齢協 他団体 高齢協-
他団体
評価項目 高齢協 他団体 高齢協-
他団体
時間延長など対応が柔軟である 88.00% 68.30% 19.80% 苦情や相談を受けつける 89.60% 83.60% 6.00%
必要なときにサービスが利用でき 63.80% 59.70% 4.20% まかせてよいと信頼できる 92.60% 85.70% 6.90%
介護者が意見を尊重する 91.80% 89.10% 2.70% 必要な情報を提供している 80.60% 74.20% 6.40%
計画通りに介護が進む 92.10% 89.10% 3.00% 利用者どうしで知識や
情報交換ができる
41.70% 42.60% -0.90%

図 28 サービス提供団体への評価(CIL)
図 28 サービス提供団体への評価(CIL)

表2サービス提供団体への評価(CIL)
評価項目 自立生活
センター
他団体 自立生活センター
―他団体評価
評価項目 自立生活
センター
他団体 自立生活センター
―他団体評価
時間延長など対応が柔軟 85.30% 49.40% 35.90% 苦情相談を受けつける 91% 66.40% 24.60%
必要な時にサービスが利用できる 84% 42.70% 41.30% まかせてよいと信頼できる 80.30% 59.60% 20.70%
介助者が意見を尊重している 93.50% 75.70% 17.80% 必要な情報を提供している 80.30% 38% 42.30%
計画通りに介助が進む 87.30% 77.20% 10.10% 利用者同士で知識や情報の交換ができる 70.90% 26.70% 44.20%

高齢協
高齢協への評価は高い。それぞれの項目では、平均して80%の人が満足している。25.3%の人が全ての点において満足。最も評価が高いのは、「まかせてよいと信頼できる」「計画通りに介護が進む」点であり、一方他の項目と比較すると、「必要なときにサービスが利用できる」63.8%、「利用者どうしで知識や情報の交換ができる」41.7%と評価が低い。

他のサービス提供団体と比較すると、「利用者同士で知識や情報の交換ができる」点を除く、その他全ての点において高齢協の方が評価が高い。特に、「時間延長など対応が柔軟」な点において、高齢協は高く評価されている。
 
CIL
自立生活センターへの評価は高い。それぞれの項目では、平均して84%の人が満足し ている。42%の人が全ての点において満足。最も評価が高いのは、「介助者があなたの意見を尊重している」「苦情や相談を受けつける」点にあり、一方他の項目と比較すると「利用者同士で知識や情報の交換ができる」のみが70%と相対的にみて、評価が低い。

他のサービス団体と比較すると、全での項目において自立生活センターの方が評価が高 い。特に、自立生活センターは、サービス提供だけでなく、利用者同士のつながりや情報提供の点において評価が高い。ピアカウンセラーや自立生活体験室などの、当事者による情報提供が、高く評価されているといえよう。


【サービス利用と生活の変化】
図 29 サービスの利用と生活の変化(高齢協)
図 29 サービスの利用と生活の変化(高齢協)

表3 サービス利用と生活の変化(高齢協)
項目 高齢協 他団体 高齢協-他団体 項目 高齢協 他団体 高齢協-他団体
安心して暮せるようになった 85.20% 76.30% 9.00% 物事を自分で決めるようになった 16.80% 15.30% 1.50%
生活がより自由になった 32.20% 28.80% 3.40% 自己卑下をしなくなった 16.80% 13.60% 3.20%
食事やトイレなど生活が楽になった 49.00% 44.10% 4.90% 毎日がより楽しくなった 38.90% 39.00% -0.10%
外出が可能になった 32.20% 30.50% 1.70% 人生に対して積極的になった 26.20% 26.70% -0.50%

図 30 サービスの利用と生活の変化(CIL)
図 30 サービスの利用と生活の変化(CIL)

表4 サービスの利用と生活の変化(CIL)
項目 自立生活
センター
他団体 自立生活センター
―他団体
項目 自立生活
センター
他団体 自立生活センター
―他団体
安心して暮らせるようになった 69.30% 51.10% 18.20% 物事を自分で決めるようになった 54.90% 34.60% 20.30%
生活がより自由になった 60.20% 39.30% 20.90% 自己卑下をしなくなった 29.70% 13.20% 16.50%
食事やトイレなど生活が楽になった 57.70% 55.90% 1.80% 毎日がより楽しくなった 45.30% 25.20% 20.10%
外出が可能になった 60.70% 31.60% 29.10% 人生に対して積極的になった 43.40% 23.70% 19.70%

高齢協
高齢協のサービスを利用して最も変化したと評価されているのは、「安心して暮らせるようになった」ことである。85.2%の人がこの点を評価していることから、高齢協のサービスは利用者に生活の「安心」を与えているといえよう。次いで、「食事やトイレなど生活が楽になった」とする人が、半数近くいる。
他のサービス供給団体と比較すると、「安心してくらせるようになった」において高齢協の評価が高い。
 
CIL
自立生活センターのサービスを利用することで、もっとも変化したと評価されているのは「安心して暮らせるようになった」(69.3%)点である。次に、「外出が可能になった」(60.7%)「生活がより自由になった」(60.2%)の選択が高い割合を示している。自立生活センターの利用によって、生活の「安心」と「自由」が得られていることがうかがえる。
 他のサービス供給団体と比較すると、利用者は自立生活センターを利用することで、他団体も提供している生活の利便性や安心だけでなく、外出を可能になるなど、生活の自由を得ていることが明らかになった。自立生活センターは、利用者の生活を支えるだけでなく、日々の生活により積極的な価値をも見出す助けになっていることがわかる。このことは、「外出が可能になった」「生活がより自由になった」だけでなく、「毎日がより楽しくなる」「物事を自分で決めるようになる」「人生に積極的になる」等の選択の割合も、他団体に比べ20%前後高いことから推測できるだろう。


【他団体との比較評価】
図 31 他団体との比較評価(高齢協)
図 31 他団体との比較評価(高齢協)
 
図 32 他団体との比較評価(CIL)
図 32 他団体との比較評価(CIL)

高齢協
評価した人のうち、16%の人が高齢協の方がいいと評価している。全体で40%の人が「他の団体を利用した経験がないからわからない」とし、評価不可能。
 
CIL
評価した人のうち、35%の人が、自立生活センターの方がいいと評価している。全体で27%の人が「他の団体を利用した経験がないからわからない」としている。


IV 介護内容、依頼先、介護者の決定


【依頼先、介護内容、ケアマネージャーの決定者】
図 33 依頼先、介護内容、ケアマネージャーの決定者 (高齢協)
図 33 依頼先、介護内容、ケアマネージャーの決定者 (高齢協)
 
図 34 依頼先、介助内容の決定者 (CIL)
図 34 依頼先、介助内容の決定者 (CIL)

高齢協
依頼先、介護内容、ケアマネージャーを「誰の意見を中心に決めたか」の問いに対して、ともに家族が4割以上を占めている。どの問いに対しても「家族」が最も多い。依頼先の決定で47.4%、介護内容の決定で 49.7%、ケアマネージャーの決定で 40.1%を「家族」が占める。介護内容の決定では「本人」34.4%が次に来るが、依頼先の決定では「ケアマネージャー」15.4%、ケアマネージャーの決定では、「サービス依頼先団体の紹介」が25%で2番目に多くなる。
 また、居住形態では、1人暮らしおよび親族と同居しながら他人介護を主に受けている人では、「本人」(60%)が介護内容を決めた割合が高い。一方、主に介護を受ける親族と同居している人では、「家族」が介護内容を決定した割合が高い(高齢協版20頁図30)。
 
CIL
 介助内容、依頼先ともに「本人」が8割近くを占めている。特徴としては、依頼先の決定では、「障害をもつ友人」の意見を中心に決めた人の割合が、介助内容では「ピアカウンセラー」の割合が多くなっている。
 介助内容の主な決定者では、一人暮しの年数が短い人は、「障害を持つ友人」や「ピアカウンセラー」の意見を主として決定している(CIL版18頁図26)。一人暮らしを始めた時期には、これら「障害を持つ友人」や「ピアカウンセラー」といった人々の存在が重要なことが示唆される。また居住形態では、主に介護を受ける親族と同居している人では「家族」の割合が15%と、他と比較して家族が主に介助内容を決めた割合が高くなる(CIL版18頁図25)。


【介護(助)者の決定】
図 35 サービス提供先別介護者の決定(高齢協)
図 35 サービス提供先別介護者の決定(高齢協)
 
図 36 サービス提供先別介助者の決定(CIL)
図 36 サービス提供先別介助者の決定(CIL)

高齢協
「誰が介護者を決定したか」の質問に対して、公的サービス、高齢協では「家族」(34.8%)が、民間サービスでは「提供先」(31.7%)の割合が最も高い。また、高齢協では、本人(23%)の割合が他と比べ高い。いずれの機関でも、「家族」の割合が高い(公的サービス44.4%、高齢協34.8%、民間サービス22%)。高齢協では「家族」の次に、「提供先」28.9%、「本人」23%と続く。公的サービスも同様の順。民間サービスでは「わからない」の割合が高く、14.6%に及ぶ。
 
CIL
 民間サービスでは「提供先」が、自立生活センターおよび公的サービスでは「本人」が決定している場合が多い。自立生活センターでは、「本人とサービス提供先」の協力で決定しているケースが多いのが特徴である。介助内容の決定者に、ピアカウンセラーが多かったことから、自立生活センターではサービス提供先もピアカウンセラーとの協力で決定されることが多いと言えよう。


V介護(助)者の評価


【介護(助)者の評価】
図 37 介護者の評価(高齢協)
図 37 介護者の評価(高齢協)
 
図 38 介助者の評価(CIL)
図 38 介助者の評価(CIL)

高齢協
介護者の評価は概して高い。介護者に望むのは、割合の高い順に「効率的に作業を行う」86%、「臨機応変な対応」82.8%、「あなたの指示に従う」81.1%。一方最も要望が低いのは、「介護の資格を持つ」9.1%。
 現在の主な介護者に対する評価では、概ね高い評価がみられるが、「一般的でなく個別な介護の知識を持つ」点が若干低い。
 
CIL
 介助者の評価は概して高い。介助者に望むのは、「指示に従う」「臨機応変な対応」「効率よく作業する」「一般的ではなく本人の介助に関して十分な知識を持つ」。要望が低いのは、「介助の資格を有する」「頼まなくても動く」。利用者からの要望は低いが、介助者はそれでも有資格者が多い。
 現在の主な介助者に対する評価では、概ね高い評価がみられるが、「一般的ではなく本人の介助に関して十分な知識を持つ」点が若干低く、また多くの介助者が当事者の希望に関わりなく、ホームヘルパー等の資格を有していることが明らかになった。


VI充実を希望するサービス


図 39 充実を希望するサービス(高齢協)
図 39 充実を希望するサービス(高齢協)
 
図 40 充実を希望するサービス(CIL)
図 40 充実を希望するサービス(CIL)

高齢協
最も充実を望まれているのは、順に「訪問家事サービス」13.2%、「情報提供」11.8%、 「デイサービス」10.6%、「訪問介護サービス」10.6%。逆に希望が少ないのは、低い順に「訪問看護」0.7%、「訪問入浴介護」2.6%、「グループホーム」2.6%。現状で十分と思う人は、55.6%。
 
CIL
最も充実を望まれているのは、順に「情報提供」(54.6%)、「住宅改善支援」(51,9%)、「福祉用品の供貸与」(38.2%)。逆に希望が少ないのは、「ショートステイ」(8.8%)「デイサービス」(10%)「グループホーム」(10.9%)。現状で十分と思う人は、14%。


【充実を希望するサービス(関連項目)】

表5 充実を希望するサービス(関連項目)

年齢 低い 「住宅改善支援」
日常生活動作 介護が必要な程度が重い 「訪問リハビリテーション」
「ショートステイ」
居住形態 親族と同居 「ショートステイ」
 
表6 充実を希望するサービス(関連項目)

年齢 高い 「訪問リハビリテーション」
低い 「情報提供」
居住形態 一人暮らし 「訪問看護」「訪問リハビリテーション」
親族が介助者で同居 「ショートステイ」
一人暮らしの年数 長い 「訪問家事」
短い 「福祉用品の供貸与」

日常生活動作

介助が必要な程度が重い 「訪問家事」「訪問入浴介助」
介助サービス合計利用時間 平均利用時間が多い 「訪問リハビリテーション」
「住宅改善支援」

高齢協
 「年齢」、「居住形態」、「日常生活動作」、と充実を望むサービスの間には、統計的に有意な関連がある。
「年齢」が低い人ほど、「住宅改善支援」を希望し、「日常生活動作」で介護が必要な程度が重い人ほど、「訪問リハビリテーション」、「ショートステイ」を希望している。居住形態では、「ショートステイ」を希望しているのは、親族と同居している人に多い。
 
CIL
 「年齢」、「居住形態」、「一人暮らしの年数」、「日常生活動作」、「介助サービス合計利用時間」と充実を望むサービスの間には、有意な関連がある。「年齢」が高い人は、「訪問リハビリテーション」を、低い人は「情報提供」を、「居住形態」では、一人暮らしの人が「訪問看護」、「訪問リハビリテーション」を、親族が介助者で同居している人は、高齢者と同様「ショートステイ」を、「1人暮らし」の年数が長い人は、「訪問家事」を、短い人は「福祉用品の供貸与」を、「日常生活動作」で介助が必要な程度が重い人ほど、「訪問看護」「訪問入浴」を、「介助サービス合計利用時間」が多い人ほど、「訪問リハビリテーション」と「住宅改善支援」を望む傾向にある。


VII 今後の利用量の予測


高齢協
「増えると思う」と「同じくらい」がほぼ同率。「減っていく」と思うのは4.7%のみ。今後の利用量の予測と年齢の間には、統計的に有意な関連がある。「同じくらい」と予測している人の平均年齢が最も高く、「減っていく」と予測する人の平均年齢が、最も低い(高齢協版26頁図38)。
 
CIL
今後の利用量への予測は「増える」54.7%「同じくらいのまま」33.4%「減っていく」11.9%。「減っていく」と予測する人は、一人暮しの人の割合が多く、逆に「増える」と予測する人は介助者である親族と同居している人の割合が多い傾向にあるため、今後一人暮しをすることを考慮してのことと推測できる。

図 41 今後の利用量の予測(高齢協)

  図 42 今後の利用量の予測(CIL)

図 41 今後の利用量の予測(高齢協) 図 42 今後の利用量の予測(CIL)


VIII サービス利用における抵抗感


図 43 サービス利用における抵抗感(高齢協)

  図 44 サービス利用における抵抗感(CIL)

図 43 サービス利用における抵抗感(高齢協) 図 44 サービス利用における抵抗感(CIL)

高齢協
75.1%の人がサービス利用に抵抗を感じていない。ちなみに、どの属性もサービス利用への抵抗感には関係していない。
 
CIL
8割以上の人がサービス利用に抵抗を感じていない。「全く抵抗感がない」人の利用合計時間平均は長く、「抵抗感がある」人の利用合計時間平均は短い(CIL版24頁図32)。


【サービス利用への抵抗感の理由】
図 45 サービス利用への抵抗感の理由(高齢協)

  図 46 サービス利用への抵抗感の理由(CIL)

図 45 サービス利用への抵抗感の理由(高齢協) 図 46 サービス利用への抵抗感の理由(CIL)

高齢協
サービス利用への抵抗感の理由としては、「他人と接するのは緊張する」、「自宅に他人が入るのに抵抗がある」の割合が比較的高い。
 
CIL
サービス利用への抵抗感の理由として、「他人と接するのは緊張する」「できるだけ自分でやりたい」ことがあげられている。その他の記述項目の中では、「自分の時間がほしい」「介助者によっては、タイプが合わない」といった内容が比較的多かった。


【サービス利用に抵抗感のない理由】
図 47 サービスに抵抗感のない理由(高齢協)

  図 48 サービスに抵抗感のない理由(CIL)

図 47 サービスに抵抗感のない理由(高齢協) 図 48 サービスに抵抗感のない理由(CIL)

高齢協
抵抗感のない理由としては、「慣れたので感じない」が約半数を占める。
 
CIL
抵抗感のない理由としては、「自分の権利だから」「抵抗感のない介助者を選んでいる」の割合が高い。一方で、「慣れたので感じない」という消極的な理由もあげられているが、権利意識が高いことがうかがえる。


IX 社会参加

【社会参加の状況】
図 49 社会参加の希望・経験(高齢協)
図 49 社会参加の希望・経験(高齢協)
 
図 50 社会参加の希望・経験
図 50 社会参加の希望・経験

高齢協
介護を利用しての外出経験のない人が、68.3%に及ぶ。「買物」「趣味を楽しむための外出」「映画やお芝居を見に行く」「泊りがけの旅行」を希望する人の割合が高い。一方で、35.7%の人が特に希望はなく、20%の人が「迷惑をかけるので望まない」を選択している。
 年齢が高くなるほど、「特になし」を選択する率が多くなり、「特になし」を選択している人は、「迷惑をかけるので望まない」を選択している傾向があるため、社会参加への希望が障害者と比べて弱い理由として、年齢が大きな要因として考えられる。
 
CIL
多くの人が、様々なところに介助を利用して外出・参加を希望し、また実行している。障害が重い人ほど、介助を利用しての外出経験、希望ともに高い。日常生活動作とは、統計的に有意な関連があり、日常生活動作に介助が必要な人ほど、外出経験、希望がともに高い(CIL版26頁図36)。年齢による統計的に有意な差はみられない。



DPI資料

障害ヘルパー等を介護保険と統合するとおきる18の問題


(1)ヘルパー時間上限問題 (巻末に補足)

 介護保険では最高の要介護5でも身体介護1日3時間が上限。(深夜なら1日2時間が上限)。介護保険と支援費ヘルパーの2階建て方式では、9割の市町村で介護保険の1日3時間の上限が、全制度の上限になる。しかも今後、制度は伸びなくなる。日本のほとんどの地域で施設から出られない世の中になる。

(介護保険では、1日3時間=月90時間程度の上限がある。現在、1人暮らしの全身性障害者がいない9割の市町村では、月90時間以下のヘルパー利用実績しかないので、介護保険に統合すると、介護保険だけで介護需要が充足する。このため、介護保険と支援費ヘルパーの2階建て制度が実施されたとしても、2階建て制度が実施されるのは、東京や大阪など1部の都市部だけにとどまる。9割の地方の市町村では、上乗せ用の障害ヘルパー予算は必要なくなり、廃止される。また、2階建て障害ヘルパー利用者1人程度の市では、年間予算が数十万円という、きわめて小さい予算の制度になってしまう。こうなった場合、数年後に重度全身性障害者の同居家族が死亡した場合、または、施設に入っている重度障害者が自立を希望した場合、その市町村には、2階部分の支援費ヘルパー予算は0か、きわめて少ないので、必要なヘルパー時間が決定されることはできなくなる。(0や数十万円の予算の制度を、補正で1000万円予算にすることは不可能)。市町村の財政部や理事者や議会は、1階部分の介護保険だけで十分と判断し、支援費ヘルパー予算を大きく増やす補正を許可しなくなる。この結果、毎年、順調に伸びてきていた障害ヘルパー制度は今後は伸びることはなくなる。日本の9割の地域では、3時間以上介護の必要な障害者は施設から永久に地域に自立することはできなくなってしまう。)

(2)別の方法の2階建て制度を採用した場合でも問題がある

 一方、2階部分の制度を「新たな時間数決定方式」をもつ障害ヘルパー制度として1から組み立てなおす方式もあり、「このような障害者ならこの時間数を2階部分で出すべきである」と全国共通の時間数決定のガイドラインをつくるという方法もある。この方式は、現在、長時間の利用者がいない地域でも、たとえば、家族と同居の最重度全身性障害者でも、ある程度はヘルパー利用時間を強制的にのばす効果がある。そうすれば、予算は0ではないので、重度障害者が突然1人暮らしをはじめても、補正予算などで長時間のヘルパー時間を確保できる可能性もある(ただし、2階部分の予算規模が、現在の障害ヘルパー制度全体より小さくなっていれば、長時間のヘルパー時間が受けられる可能性は現行制度よりも低くなる)

この方法の欠点は、 以下の2点。

(1)全国共通の時間数決定のガイドラインというものは、現状の先進自治体(24時間介護保障の実現している自治体)の時間数決定の考え方よりどうしても(かなり)水準が下がってしまう。
(2)今までは、1人暮らしをはじめた最重度障害者が市町村と交渉をし、命にかかわるということで市町村も補正予算を組んで、ヘルパー制度を伸ばしてきたという全国での実績と歴史があるが、この方法が同じようにとれなくなる(水準の低いガイドラインを作ると、それ以上には、ヘルパー制度が伸びなくなる)。

(3)要介護認定(アセスメント)の問題

(知的・精神・聴覚・視覚・内部障害は、介護保険の要介護認定では多くが自立になってしまう。別項目で判定するアセスメントが必要。 しかし、多くの老人は肢体障害である。同じ障害である若い肢体障害者は現在の介護保険の判定方法を使うしかない。介護保険の肢体不自由むけの判定は、施設での介護職員から受ける介護時間を基に算定されているため、いつあるかわからない「緊急事態」や「トイレ」や「水分補給」や「物を取る」などのために介護者が見守り待機することが必要な時間数が反映されない。15分おきの車椅子の上でのじゅくそう防止の体位交換なども必要性が時間に反映されない。このため、障害者の在宅生活で、健常者家族との同居の場合に、家族の介護も足し合わせて何とか生活できる水準でしか、介護保険はサービスが提供されない。 また、介護保険は1人暮らしでもヘルパー時間数が増えない。1人暮らしの場合などは別のアセスメント方式が必要。)

(4)要介護3・4の人は十分上乗せできるか?

(旧全身性障害者介護人派遣事業の対象者(特別障害者手当て受給者で1人暮らしなどが対象で、東京では毎日8〜24時間が決定されている)でも、要介護2・3・4の人はかなりいる。たとえば、食事が自分でできる場合は、要介護4以下になる。要介護が5でない場合に、十分な上乗せが受けられるかどうか、疑問がある。特に制度利用者の少ない地方の市町村では要介護5でないと上乗せを認めない運用になる可能性が高い)

(5)ヘルパー資格問題 (日常生活支援など)

(現在日常生活支援毎日8時間の利用者の場合、このうち3時間が介護保険ヘルパーに切り替わった場合、なれた介護者は日常生活支援の資格しか持っていないが、どうするか。介護者は平均2〜3年程度で退職するので、無資格者を求人して補充が必要で、面接採用後に2日で受講できる日常生活支援の研修を受けさせている。(無資格者の求人でないと、求職者が少ないため、男性ヘルパーで休日・夜間・早朝・とまり介護ができ、正月も働け、きちんとした介護のできる人材は確保できない。)2〜3級ヘルパー研修はなかなか受講機会がない。)

また、全身性障害者の場合は支援費前は無資格者に障害者が教えて介護に入れていくという方法をとっていた。日常生活支援ではなく身体介護型ヘルパーの決定を受けている障害者は、支援費以後は、自分の介助者に3級を受けさせている。しかし、3級は介護保険では90%に減算される。

(6)セルフケアプランが事実上不可能になる問題

(支援費制度では、自分で自分の計画を決める制度であるので、ヘルパーが時間変更に対応できる限り、毎日、障害者が、仕事などの終わる時間に合わせてヘルパー利用予定を変えることも可能。しかし、介護保険では、このようなことは不可能。介護保険でも、自己プラン制度はあるが、多くの市町村は認めていない。しかも、自分で点数計算して複雑な書類を毎月市町村に提出する能力がある障害者以外は、自己プランは選択できない。また、その能力があっても、市町村に毎日変更されたケアプランを(点数計算して)出しに行くことは不可能。現在の介護保険制度では、99%の障害者がケアマネージャーを利用するしかない。)

(7)介護保険のケアマネージャーに管理される

(支援費では毎月・毎週・毎日、障害者が自分の予定を変えることが可能だが、介護保険ではプラン変更のたびにケアマネージャーの許可を受けなくてはいけないため、迅速なプラン変更が不可能になる。そのほか、ケアマネージャーにさまざまな管理をされ使い勝手が悪くなる。これは、現在介護保険利用をしているALSの障害者などで、実証されている。ケアマネージャーを使うか、ケアコンサルタントを使うか、選択できるようにすべきである。(ケアコンサルタントとは、支援費と同様に、障害者は利用希望時間を毎日変えることが可能で、ケアコンサルタントは社会資源の情報提要や制度の仕組みの情報提供や保険点数計算の補助のみを行い、管理権限はない。))

(8)介護保険では健常者家族同居の場合、家事援助や窓拭きなどの規制がある

(障害ヘルパーでは家事援助の規制はなく、健常者の家族が同居している場合でも、障害者が自立して生活するのに必要なヘルパー時間が決定されるが、介護保険では健常者家族がいる場合は、家事援助が利用できない(多くの市町村の介護保険課はそういう運用を行っている)。子育て支援や草抜きや窓拭きも障害ヘルパーでは可能だが、介護保険では禁止されている。)

(9)入院時のヘルパーの問題

支援費の障害ヘルパーでは自治体が認めれば、(国庫補助を使わずに)全身性障害者が一時入院中もヘルパーを利用できる。(東京都、札幌市、さいたま市などで実績あり)。1日24時間介護が必要な障害者の1日3時間が介護保険ヘルパーになると、3時間分はこのような措置がなくなる。介護保険は国の縛りが大きく、障害者団体の交渉による制度改善が不可能。諸外国では重度障害者の入院中のヘルパー利用が認められているので、国との交渉で今後少しずつ実現していく可能性があるが、介護保険に入ると、その道は閉ざされる。

(10)自己負担の問題

(1人暮らしの知的障害者や精神障害者は、ほとんどは月6万円台の年金が唯一の収入で あり、1人暮らしの全身性障害者も8万円台の年金のみが収入という場合がほとんどである。 介護保険の自己負担の上限(高額介護サービス費)として月15000円(非課税で老齢年金 受給者)〜約2.5万円(非課税)〜約3.5万円(一般)があるが、居宅支援費の自己負担は 0円(非課税)〜数千円(低所得)が上限である。
また、支援費の自己負担は本人以外に配偶者と子供の収入が対象である。介護保険の自己負担の上限は、配偶者、子供だけでなく親の収入も対象になる。)

(11)車椅子など補装具の問題

(介護保険に入ると、JIS型普通車椅子やリクライニング車椅子は介護保険レンタル事業所からレンタルできるので、非常に特殊な改造が必要な場合を除き障害制度の補装具制度での支給はされなくなる。ところが、現在でも、多くの市町村は介護保険の方が自治体負担額が少ないという理由で、体に合わない介護保険のレンタル車椅子を使うよう強制している事例がある。40歳以上の特定疾患障害者で、介護保険開始前は自分の体の幅に合わせたリクライニング車椅子を補装具制度で作ってもらっていたが、介護保険に入り、体の幅に合わないリクライニング車いすを介護保険レンタルで利用するように強制されている例がある。重度全身性障害者にとっては、車椅子の各部分のサイズが体に少しでも合わないと、座位が保てないので、使い物にならない場合も多い。褥瘡ができ易くなる。しかし、更正相談所での特殊な改造の許可が出るほどでない障害者の方が圧倒的に多い。このため、「更正相談所での特殊改造の許可が出るほどではないが、既成のレンタル車椅子ではサイズなどが合わない」多くの障害者にとって、外出などが困難になり、閉じこもりや寝たきりとなってしまう。

(12)精神障害者の地域移行にはつながらず病院(療養型病床群)が介護保険で増えてしまう。

 精神障害者は先進国で最悪の30万人が病院に入っており、当面7万2000人を早急に地域移行してもらうことが決まっているが、その財源が、障害分野の予算不足で、まったくめどが立たないということが介護保険統合の理由にされている。介護保険に入れば、入所施設やデイサービスやショートステイ、ホームヘルプが精神障害でも利用できるようになるとも言われている。しかし、要介護認定が改善されないと、ほとんどの精神障害者は自立判定になり、サービス利用できない。さらに、精神系列の医療法人が精神専用の療養型病床群をたくさん作ってしまい、地域移行は進まない(障害保健福祉部では介護保険に入れば精神病院の中に精神の療養型病床群のようなものができれば、介護保険の対象になると言っている)。介護保険開始時にも、老人病院を運営する医療法人は、大量に療養型病床群(介護保険対象の入所施設の1つで、医療法人が作る)を作り、介護保険を食い物にした。

(13)小規模作業所の問題は介護保険では解決しない

 介護保険に入る際に、デイサービスの1種として小規模作業所を位置づければ、飛躍的に予算が作業所に確保できる可能性があるといわれている。しかし、すでにNPO法人化して支援費の知的障害者デイサービスなどの指定を取っている作業所があるが、さまざまな問題があり、わずかである。介護保険は支援費よりも基準が高いがこれをクリアしなくてはいけない。支援費でデイサービスを取れない作業所が介護保険で取れるわけがない。

(14)過疎地などの町村部で障害ヘルパーをほとんど行っていない地域でもヘルパー制度が受けられるようになるが、1日3時間の水準から先は制度が伸びなくなり、地域自立は不可能。

 支援費制度では、障害福祉に熱心でない市町村では、極端に制度が悪い。特に、重度障害者の1人暮らしなどがない町村の場合は、大多数の障害者は家族が介護して何とかなる場合が多いので、障害ヘルパー制度がないところも多い。介護保険制度になれば、家族同居でも、1人暮らしでも、おなじ障害状況ならば同じ要介護認定が出るので、市町村は必ず制度を行うことになる。町村でもヘルパー制度が受けられるようになる。ただし、最重度の要介護5(全介助で、食事も介護が必要な程度が目安)でも、ヘルパーなら身体介護で1日3時間分しかなく、現状よりはヘルパー時間数がアップするが、そこから先が制度が伸びない。つまり、町村部のほとんどでは3時間以上介護の必要な重度障害者は一生家族から自立(1人暮らし)できなくなる。つまり家族が高齢になり死亡すれば施設に入るしかなくなる。

(15)健常者家族と同居している重度障害者のほとんどは、ヘルパー時間数がアップするが、費用負担する家族の許可がないと利用できなくなる。

 介護保険制度になれば、家族同居でも、1人暮らしでも、おなじ障害状況ならば同じ要介護認定が出るので、健常者と同居の場合は、たいていは時間数はアップする。家族と同居の場合は、時間数がアップするが、家族の収入があるので、1割負担(昼間身体介護ヘルパー利用は、1時間402円の自己負担)となり、要介護5のすべて(毎日3時間の身体介護)を使い切ると、3万5000円の自己負担となる。一般家庭にとってはかなりの高額であり、費用を負担する家族の許可がない限り、ヘルパーは使えないことになる。これに対して、現在は家族と同居の障害者のほとんどは未婚で、支援費制度では自己負担はないので、親と同居でも、ヘルパー利用に際して親が反対しない。視覚障害者団体からは「子供と同居する中高年の視覚障害者がガイドヘルパーを利用しようとしても、子どもに費用負担がかかるので、利用させてもらえない」という報告も「ありかた検討会」であった。これと同様のことが介護保険に入れば全ての障害者に発生する。

(16)障害者団体が自治体の障害福祉課に対して交渉し、介護制度の改善がされてきた長い歴史と実績があるが、今後、それができなくなる

 日本の障害者の在宅介護制度は、1970年代から、障害者団体が自治体や厚生省の障害福祉担当課と交渉して、制度が改善されてきた実績がある。介護保険に介護制度が吸収されると、交渉が不可能になる。特に、介護保険では、市町村が動かせる裁量の部分がほとんどなく、制度改善がされない。

(17)介護保険の要介護5の障害者には電動車椅子レンタルが対象外似なる問題

 先ごろパブリックコメントに出されていた、介護保険の要介護度5の者へは電動車いすのレンタルが制限される方針になっているが、これが拡大解釈されれば障害者も必要な器具の使用などにも一方的に規制され日常生活に困難をきたすことになる。

(18)ALSなどの人工呼吸器利用者について

 人工呼吸器の管理や吸引などの医療的ケアや意思伝達方法や寝返りなどには個別性がもとめられる難病患者の介護でも、1時間などの細切れの身体介護でしか派遣しない介護保険事業者が多い。すべて介護保険になったら、患者のニーズに的確に対応してもらえるか

(1)の補足

障害が介護保険に入ると非常に大きな問題点がある

 介護保険本体はかなりの財政難で、今後、団塊の世代が老人になるので、現在約5兆円の介護保険規模が今後、20兆円以上必要になっていくと想定されています。このため、老健局担当の介護保険自体を「上限なし」に変更するのはかなり厳しい状況です。
 現状で可能性があるのは、現状のままの制度上限の介護保険ヘルパーが1階とすると、障害ヘルパーを2階とする方式だと考えられます。しかし、この解決方法では、以下のような大きな問題が発生します。

(1) 24時間/日のヘルパー時間が出ている市では・・・・・(介護保険ヘルパーが1階とすると、障害ヘルパーを2階とすることで、現状と同じ制度利用が可能)

介護保険ヘルパー3時間/日 障害ヘルパー(2階部分)21時間/日

(2) 3時間/日以下のヘルパー利用者しかいない市町村では・・・・(介護保険ヘルパーだけが残り、障害ヘルパー予算は消滅する。3300市町村の9割がこうなる)

介護保険ヘルパー3時間/日が上限


3300市町村の9割の市町村で
1日3時間以上介護の必要な障害者は施設から出られない地域になり、将来も固定化の可能性大。

(介護保険では身体介護1時間4000円×3回×30日=36万円。1日3時間で上限突破する。現在、支援費ヘルパー利用者全員がこの水準以下の市町村では、介護保険だけが残り、上乗せ部分の障害ヘルパー予算は消滅する。消滅した予算が復活することは財政難の中で非常に難しい。これらの市町村で5年後に施設から自立希望者が出ても、障害ヘルパー予算は0なので、3時間以上介護が必要な障害者は施設から出られない)

毎年ヘルパー制度は伸びてきているが、上記の地域では、今後一切伸びなくなる

 たとえば、1日16時間の介護が必要な障害者が、施設から自立希望が出たり、介護していた親が死亡した場合で、1人暮らしになった場合には、現在は、小規模市町村でもヘルパー時間数が1日8〜24時間に伸びている。これは、少ないといっても、それなりの予算規模があるから。1日8〜24時間のヘルパーが決定されるには、大きく補正予算を組む必要がある。予算規模が年間数十万円以下や0円の市町村では無理。しかも、介護保険に障害が入ると、少なくとも介護保険で「一階部分」が保障されているという理由で、「二階部分」が実施される可能性は極めて少なくなる。


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