検討会、研究会等  審議会議事録  厚生労働省ホームページ
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第15回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会
議事録




厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室


第15回内分泌かく乱化学物質の健康影響評価に関する検討会議事次第


日時:平成16年6月14日(月)13:00〜16:15
場所:中央合同庁舎5号館7階 厚生労働省専用第15会議室
議題:
1.開会
2.前回議事録の確認
3.これまでの研究成果について
4.中間報告書追補その2の取りまとめについて
5.その他
6.閉会


〔出席委員〕
 伊東座長
 青山委員 阿部委員 井上委員 岩本委員 押尾委員 菅野委員
 酒井委員 櫻井委員 紫芝委員 鈴木(勝)委員 鈴木(継)委員
 津金委員 中澤委員 藤原委員 眞柄委員 松尾委員 和田委員

〔招聘者〕
 岸 玲子先生、吉川 肇子先生、国包 章一先生、下東 康幸先生、
 螺良 愛郎先生、那須 民江先生、名和田 新先生、舩江 良彦先生、
 牧野 恒久先生、八重樫 伸生先生、山田 健人先生

〔事務局〕
 中尾化学物質安全対策室長、他

〔オブザーバー〕
 内閣府、農林水産省、経済産業省、環境省


○事務局
 事務局でございます。ただいまから第15回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を始めさせていただきます。
 本日は、御多忙中のところ、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、事務局より事務的な御連絡をさせていただきます。
 本日は、井口委員、安田委員が御欠席と伺っておりますので、21名の委員の先生方で検討会を進めさせていただきます。
 なお、岩本先生は遅れてみえるとの御連絡をいただいております。
 また、国包先生、吉川先生は所用のため途中でご退席される旨、あらかじめ御連絡をいただいております。
 また、本日は、関係する厚生労働科学研究班から御発表をいただくため、事前に座長とも御相談をさせていただきまして、委員以外に各研究班の主任研究者の皆さんにも御出席をお願いしております。
 次に、事務局に異動がございましたので、紹介をさせていただきます。
 中尾禎男化学物質安全対策室長でございます。

○中尾化学物質安全対策室長
 中尾でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局
 私、野村と申します。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、開会に先立ちまして、中尾室長より一言ごあいさつを申し上げます。

○中尾室長
 お忙しい中、御参集いただきまして本当にありがとうございます。本来でしたら、鶴田大臣官房審議官より、ごあいさつ申し上げる予定でございましたけれども、本日、国会最終盤でございまして、法律の最後の審議がなされている段階でございまして、誠に恐縮でございます。
 御案内のとおり、この検討会は、平成10年4月に設置されまして、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する諸問題につきまして、鋭意御検討をいただいております。この場をお借りいたしまして、座長の伊東先生を始め、各委員の先生方の多大な御尽力につきまして、改めて感謝申し上げます。
 本日は、厚生労働科学研究における、これまでの成果について、各主任研究者の先生方に御発表をいただくとともに、平成13年12月に取りまとめられました、中間報告書追補以降の取り組みの成果を、中間報告追補その2といたしまして、今後取りまとめる点につきまして御議論をいただきたく、忌憚のない御意見をいただければと思う次第でございます。厚生労働省といたしましては、この検討会での検討結果を十分踏まえまして、国民の健康、安全をより一層確保するための施策に着実につなげていきたいと考えております。
 先生方におかれましても、引き続き御支援、御協力のほどよろしくお願いいたします。 これをもちまして、あいさつに代えさせていただきます。ありがとうございます。

○事務局
 それでは、座長の伊東先生、よろしくお願いいたします。

○伊東座長
 それでは、ただいまから第15回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を始めます。
 まず、資料の確認をお願いいたします。

○事務局
 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、各委員の先生方並びに関係の先生方には事前に郵送させていただいておりますが、その後、一部改訂がございました。
 改訂がございました資料には、資料番号の最後に「改1」と付けております。
 資料1−1改1をごらんください。こちらが配付資料一覧となっております。
 まず、資料1−1改1「配付資料」。
 資料1−2「議事次第」。
 資料1−3「委員等名簿」。
 資料1−4「座席表」。以上がひとまとまりとなっております。
 資料2、こちらは委員限りの配付としておりますけれども、第14回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録(案)でございます。
 資料3「発表予定表」。
 資料4−1、国包先生「水道におけるフタル酸ジ−2−エチルヘキシルの濃縮機構等に関する研究」。
 資料4−2改1、那須先生「化学物質によるヒト生殖・次世代影響の解明と内分泌かく乱作用検出のための新たなバイオマーカーの開発」。
 資料4−3、津金先生「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する疫学研究」。
 資料4−4、岸先生「前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明」。
 資料4−5、八重樫先生「内分泌かく乱化学物質PCBと子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究」。
 資料4−6、山田先生「内分泌かく乱物質・ダイオキシン類の小児、成人の汚染実態及び暴露に関する調査研究」。
 資料4−7、螺良先生「内分泌かく乱物質と大豆等既存食品の発育・癌化及び内分泌かく乱作用の比較」。
 資料4−8、牧野先生「試料分析の信頼性確保と生体暴露量のモニタリングに関する研究」。
 資料4−9−1改1、吉川先生「内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションに関する研究」。
 資料4−9−2、同じく吉川先生「内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションガイドライン(案)」。
 資料4−10、井上先生「内分泌かく乱化学物質の生体影響に関する研究−特に低用量効果・複合効果・作用機構について−」。
 資料4−11改1、菅野先生「内分泌かく乱化学物質の作用機構に焦点を当てた新しいハイ・スルー・プットスクリーニング法による内分泌かく乱性の優先順位付けに関する研究」。併せて今井先生、小野先生の御研究も発表いただきます。
 資料4−12、下東先生「環境ホルモン受容体センシング法による内分泌かく乱性の順位予測」。
 資料4−13、名和田先生「アロマターゼ高発現KGN細胞および三次元共焦点顕微鏡による内分泌代謝かく乱物質のスクリーニングシステムの開発」。
 資料4−14、船江先生「中枢神経系に影響を与える内分泌かく乱化学物質の順位付けとヒトでのリスク予測と回避法の研究」。
 資料4−15、岩本先生「日本人男性の生殖機能に関する疫学的調査研究」。
 資料5、こちらが1枚の紙となっておりますが「中間報告書追補その2の取りまとめについて」。
 最後に参考資料1、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補」でございます。こちらは委員限りの配付させていただいております。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。ただいまの資料につきまして、何か不備がございましたら、どうぞお申し出ください。特にございませんか。
 ありがとうございました。
 それでは、本日の予定につきまして、事務局から御説明ください。

○事務局
 それでは、本日の予定につきまして御説明させていただきます。
 資料1−2「議事次第」をごらんください。
 本日は、この後、議事2といたしまして、前回議事録の確認をさせていただきます。続きまして、議題3「これまでの研究成果について」といたしまして、これまでの研究成果などについて、厚生労働科学研究の主任研究者の先生方から御発表をいただきたいと思います。
 その後、議題4といたしまして、中間報告書追補その2の取りまとめについて御検討をいただきたいと思います。
 最後に、議題5「その他」となっております。
 以上でございます。

○伊東座長
 よろしゅうございましょうか。 それでは、議事録の確認をさせていただきますが、事務局の方からよろしくお願いいたします。

○事務局
 それでは、資料2をごらんください。
 前回、第14回検討会の議事録につきましては、速記録を基に作成をいたしました。
 その上で、事前に委員の先生方には内容を御確認いただいております。特段の問題がなければ、この内容で確定をいたしまして、公開の手続に入らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○伊東座長
 いかがでございますか、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

○伊東座長
 では、どうぞ。

○事務局
 それでは、前回議事録につきましては、この内容で確定をさせていただきます。
 確定したものにつきまして、厚生労働省ホームページへの掲載など、正式な公開の手続に入らせていただくことといたします。

○伊東座長
 それでは、そのように取り計らせていただきます。
 それでは、次に議題3、これまでの研究成果について御発表いただきたいと思います。発表の形式につきまして、事務局から御説明ください。

○事務局
 まず、資料5をごらんいただきたいと思います。
 こちらの検討会では、平成13年12月に、中間報告書追補を取りまとめていただいたところです。
 また、この中間報告書追補におきまして、当面2005年度までに実施をすべき事項について、行動計画を策定いただいております。後ほど本日の議題4で御検討いただきたいと考えておりますが、中間報告書追補が取りまとめられてから、一定期間が経過したこともありまして、その間に得られた成果を中心に、本年度末を目途に、中間報告書追補その2を取りまとめいただきたいと考えております。
 そのため、今から関係する厚生労働科学研究班から、研究の成果について御発表をいただき、またその内容について御検討をいただきたいと思います。

○伊東座長
 それでは、順番に発表いただくことになろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。

○事務局
 それでは、事務局の方から発表の詳細、事務的なところについて御説明をさせていただきます。
 発表は、先生方の御都合などを勘案いたしまして、資料3の発表予定表の順に従いましてお願いをいたしたいと存じます。
 事前に作成いただきましてレジュメについては、資料4−1から資料4−15にございます。
 また、事務局の方でベルを用意してございます。発表終了1分前に1鈴、終了時に2鈴鳴らしますので、よろしくお願いをいたします。

○伊東座長
 それでは、御指名のときに決められた時間内に御発表ください。決められた時間内に発表していただかないということは、やはり内容的に不備があるというふうに、こちらの方で考えますので、どうぞしっかりと御発表くださいますようにお願いいたします。

○事務局
 それでは、国包先生お願いいたします。

○国包先生
 国包でございます。私どものこの研究は、ごらんいただいておりますように、約十名でやっております。今年度が3年度目でございます。
 主な研究内容ですが、1番、2番は、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等に焦点を当てた研究になっております。
 これまでの研究で、浄水場の中で、スカム、後で写真もお見せいたしますが、表面に浮いてくる、かすのようなもの、そういったものにかなり高い濃度で、こういうフタル酸系統のものが濃縮されるということを突き止めておりまして、そこのところをもっと詳しくというような調査でございます。
 それから、そういった機構での濃縮がどういうことなのか。機構の詳細についても検討するようにいたしております。
 3番目は、これは別の角度からなんですが、水道で以前に広く使われておりましたタール系の樹脂塗装からの溶け出しが問題があるんではないかという観点から研究をいたしております。
 これが、先ほど申し上げました浄水場のスカムでございます。表面に泥のようなものが浮いておりますのがごらんいただけるかと思います。ちょっと小さくて見にくいかもしれません。これがその拡大写真でございますけれども、こういうものでございます。
 それから、浄水処理を全部終わった過程で、浄水池あるいは配水池と言いますが、そういったところの表面にも少し浮いてまいりまして、そこの部分でフタル酸ジ−2−エチルヘキシルが非常に高い濃度で検出されております。
 そういった実態について、11か所の浄水場で詳しく調べてみた結果が、これでございます。
 左上のグラフが水中の濃度でして、これはちょっと見にくくて申し訳ないんですが、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)とフタル酸ジ-n-ブチル(DNBP)、この2つを両方併せてグラフに書いております。色の濃い方が原水、薄い方が処理水ということで、ヒストグラムで書いておりますが、横軸が濃度でございまして、処理によってかなり濃度が低くなってきております。ただ、少し残っているというのが見ていただけると思います。ちなみに、定量下限は、0.05μg/L。
 それから、固形物の方はこちらの方にありますように、DEHPとDNBPですが、それぞれ非常に高い濃度で固形物の中に含まれているということが分かっていただけると思います。
 それから、下に沈殿します泥よりも、表面に浮いてきますスカムの方が濃度が高いということも、これから分かっていただけると思います。
 浄水場の中で、流入水、それから流出水、処理水、水道水ですが、それから発生します汚泥、こういったものを通じてのマスバランスがどうであるかということを調べております。
 これは、まだ3回の結果ですので、ちょっとバランスがきれいに取れてはいないんですが、かなり定量下限に近いところで調査をやっておりまして、大体これぐらいのオーダー、これは mg/d という単位で表記しております。括弧の外の数字が3回の平均値、括弧の中が最小から最大の範囲です。
 こうやって見ますと、こういうスカムで浮いてくる部分というのは、非常に量的には少ないわけですが、濃度は非常に高いというのが実態でございます。大半は、沈殿する汚泥の方へ行っております。
 これがDEHP、ある浄水場のデータですが、同様にDNBPのデータでございます。これは、流入流出水、定量限界以下でしたので、水の方は出入りの量は書いてございません。ゼロになっておりますが、少しこういうふうに浮いてくるものがございます。
 こういった浮上濃縮の機構がどうであるかということをいろいろ検討いたしておりまして、いずれにしても細かいことは除きますが、こういう気泡発生、それから気泡による濁りの巻き込み、そのときにフタル酸類が一緒にくっついて上がってくるんではないかというようなことを考えております。
 そういったことの基礎実験として、フタル酸類は添加しない系なんですが、いわゆる水道のジャーテスト、凝集試験のときに、気泡を注入すると、気泡を遅い時点で注入した方が、赤い部分ですが、たくさん上に浮いてくる。あるいは凝集剤をたくさん入れた方がたくさん上に浮いてくるというようなことを確かめております。
 これは、また違った実験でして、管からの溶け出し。先ほど申し上げましたタール系の樹脂塗装からの溶け出しでございます。
 こういった浄水場の中に管を何本かつなぎまして、水を通す実験装置をつくっております。念のために申し上げますが、こういった内面をタール系の樹脂塗装した管というのは、現在は新しくは水道では使われておりません。ただ、何年か前までは使われておりました。 そういったことから、少し後追いにはなりますが、そういったものからの厄介なものの溶け出しはあるか、ないか、あるとすればどのぐらいかというのを、わざわざメーカーにお願いしてそういったものをつくっていただいて実験をやっております。
 これは常時、塩素の入った水を流しておきまして、1か月後とか半年後に、これを全部取り外しまして試験室で溶出試験をやっております。
 その結果がこれでございまして、ゼロの時点、それから1か月後、それから6か月後の溶出試験結果のデータです。これはスラッシュで左右を書き分けておりますが、2種類の径の少し違った管を使っての実験でございまして、だんだん溶出濃度は下がってきております。
 ここには限られた物質名しか書いておりませんが、もっと幾つかやっておりまして、ここでは溶出が認められたものだけを書いております。濃度は、いずれもそんなに高い濃度ではございません。
 次に、こういったタール系の樹脂から溶け出すもののAhレセプター活性を調べております。
 これは、アントラセン類の幾つかのものについて調べた結果でございまして、ものによってTCDDにかなり近い反応が見られております。
 それから、今度はそういったものに臭素イオンを添加した状態で塩素を加えた場合に、どういったものができてくるかということを調べておりまして、塩素系のものだけではなくて、臭素化ピレンもできているということが確認されています。
 時間になってしまいましたので、以下、1枚か2枚あるんですが、これもそういったことの続きのデータですので、一応以上で終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○伊東座長
 ありがとうございました。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、那須先生、御発表は上島先生お願いいたします。

○上島先生
 上島でございます。化学物質によるヒト生殖・次世代影響のリスク評価に関する研究は近年大きく進展しておりますけれども、ヒトでのデータ、特に日本人でのデータはごく限られているのが現状です。
 したがいまして、私たちのグループは、職場や生活環境における化学物質のリスク評価に必要な知見の蓄積、職域や一般集団で検査可能な新たなバイオマーカーの確立を目指して研究を行っております。
 対象ですが、ここに挙げました4つの物質を選定し、暴露量が一般集団に比べて高いと考えられる職域集団、あるいは中毒集団等において、暴露量及び健康状態の調査とバイオマーカー候補の検討を行っております。また、並行して疫学調査に必要な情報に関して実験による予備的検討も行っております。
 最初に、健康影響の調査の検討状況について御報告いたします。
 ハロゲン化炭化水素殺虫剤ですけれども、対象は暴露作業を含む職域の男性職員で、この方々を対象に暴露調査、精液検査を含む健康調査を行っております。
 その結果、暴露指標である血中及び尿中臭化物イオン濃度については、対照者に比べ暴露作業者で有意に高値ということで、確かに暴露しているわけなんですが、一方、影響指標であります血中性ホルモン濃度、その他、検討した項目に関しては、暴露者と対照者との間で有意差が見られませんでした。暴露作業者6名の精液指標に明らかな異常は認められず、集団として生殖機能に対しての異常というのは検出できませんでした。
 しかし、テストステロン濃度に関しては、年齢で調整した後、これは正常範囲の中なんですけれども、高い傾向にあり、今後の検討が必要と考えます。
 有機リン殺虫剤に関しては、暴露作業を含む職域集団において調査を行い、その結果、血中性ホルモン濃度、前立腺体積、その他集団として生殖機能障害所見は見られませんでした。
 一方、白血球の8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)レベルに関しては、夏季の調査において暴露者の方が対照集団より高い結果でした。精液中の 8-OHdG 濃度には暴露と季節による変動は認められませんでした。
 そのほか、実験的検討として、ジクロルボスの生殖機能評価のための実験を行っておりますが、より詳しい内容については、レジュメを御参照ください。
 有機溶剤に関しては、グラビア印刷工場で男性既婚従業員の子どもの性比と印刷機周囲の作業者のトルエン暴露量、尿中馬尿酸量の調査を行っております。
 結果は、現在、解析中です。
 これら3つに物質の共通なんですが、いずれも横断的研究であるということに注意する必要があり、特に影響らしきものが見られた場合にも、因果関係については縦断研究を併せて行って検討していく必要があるというふうに考えております。
 4つ目の物質である有機スズ化合物ですが、中国において、食用油に混入したトリメチル塩化スズにより集団食中毒を起こした患者集団を対象としております。
 摂取したラードの総量と、主に中枢神経系の症状、所見との間に有意な関連性を見出だしております。
 また、予備的検討として行ったマウスライディッヒ腫瘍細胞での実験で、フタル酸エステル類に比べ低用量域でテストステロン合成を阻害することが明らかになっています。
 今後の予定としては、これらについて検討を継続する。特に、量反応関係の検討をより深めて行いたいというふうに考えております。
 ここからは、新たなバイオマーカーに関しての検討状況です。
 バイオマーカーには、影響のバイオマーカー、暴露のバイオマーカー、感受性のバイオマーカーとあるわけですけれども、まず、影響のバイオマーカーとしては、精子クレアチンキナーゼ免疫染色を行いました。
 その結果、形態異常精子、未熟な精子が染色され、新たなバイオマーカーとして利用できる可能性が示されました。
 また、血中性ホルモン濃度に関しては、年齢で黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンを有意に回帰することが確認され、職域集団でバイオマーカーとして用いる場合は、特に年齢幅がありますので、年齢調整が不可欠であるというふうに考えます。
 8-OHdG に関しては、暴露または影響のバイオマーカーとして使用できる可能性があります。
 その他のバイオマーカーに関して、精巣体積、前立腺に関する指標、その他検討を行っておるわけですが、あらかじめ影響が明らかな集団で調査をしているわけではありませんので、そういった点から有効性は、現時点では不明です。今後、検討を更に継続する必要があるというふうに思います。
 暴露マーカーとしては、有機リン殺虫剤の尿中代謝物の測定系が確立しました。一般集団においてのバックグラウンドレベルの測定もできます。
 感受性のバイオマーカーに関しては、有機リン化合物の代謝酵素であるパラオキソナーゼ1の遺伝子多型解析の技術的検討を行い、方法を確立しています。
 今後の予定としましては、新たなバイオマーカーという点に関しては、精子クレアチニンキナーゼ免疫染色、その他性ホルモン、尿中代謝物量、遺伝子多型と、それぞれ影響暴露、感受性のマーカーに関する検討を更に行いたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。ただいまの御発表と、その前の御発表、これにつきまして、何か御質問がございましたらどうぞ。
 どうぞ。

○眞柄委員
 上島先生の御発表で、職場暴露で調査をされているんですが、具体的な暴露量がどの程度のレベルであったかということはお調べになっていらっしゃるんでしょうか。

○上島先生
 暴露量については、パッシブサンプラー、それから尿中代謝物量等で押さえております。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。
 どうぞ。

○津金委員
 上島先生に伺いたいんですけれども、8-OHdG に関して、内分泌かく乱作用等との関係においてバイオマーカーになるという意味ではないわけですか、その辺りを確認したいんですけれども。

○上島先生
 内分泌かく乱作用と直接関係あるというよりは、むしろ酸化ストレスの存在、そういった意味での指標というふうに考えております。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。

○井上委員
 その点は、私もバイオマーカーを探している立場上、お伺いしたかったところなんですけれども、8−ヒドロオキシデオキシグアノシンのアダクツ形成がエンドクラインディスラプターと直接関係する、勿論そういうものはあるでしょうけれども、そういうふうな形で全体を予測する根拠というのは、もう少し明確にしていただく必要があろうかと思いますので、コメントを申し上げます。
 以上です。

○伊東座長
 どうぞ。

○鈴木(継)委員
 有機スズという形で一括されていますけれども、ちょっとまずいんではないですか、有機スズの化合物はものによって大分毒性の質が違いますから、はっきりさせないと。

○上島先生
 ここで取り上げた有機スズはトリメチル塩化スズでございます。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。

○事務局
 それでは国包先生、それから那須先生には生体暴露量の作業班の方に入っていただくということで、併せて那須先生には疫学研究班の作業班の方にも加わっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 続きまして、津金先生、お願いいたします。

○津金先生
 よろしくお願いいたします。
 私ども「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する疫学研究」というものをテーマにした研究班であります。
 疫学研究の知見は世界的にも日本にもほとんどないということが背景で、特に日本人というのは、疾病の罹患状況とか、エストロゲンのレベル、あるいは経口避妊薬の使用、あるいは大豆とか、植物由来のエストロゲンの摂取量とか、遺伝的素因などが大きく違うだろうということで、日本人を対象とした疫学研究が必要であろうということで、生体試料中の内分泌かく乱化学物質と、疾病、内分泌系、健康状態との関連を疫学の方法論に基づいて検討する研究を行っております。
 お手元の配付資料にも示してありますが、基本的には5つの研究からなっております。 1つは、既存の前向きコホート研究に基づくコホート内の症例対照研究。これによって、疾病の結果としてではなく、あくまでも因果関係において先行すべき暴露量を把握できるというメリットがあります。現在、乳がんに関する検討を進めています。
 それから、乳がんの症例対照研究。これはより詳細な暴露に関する情報を得るために乳がんの症例対照研究を行っています。
 それから、子宮内膜症の症例対照研究。これは、前の研究班で集めました症例対照のデータを分析しているという意味で、ここからは現在は結果が出ているということになります。
 それから、男性内分泌系への影響に関する職域での横断研究。
 それから、内分泌かく乱化学物質のヒトの健康影響に関する文献情報収集と情報の公開を継続的に実施しております。
 コホート内症例対照研究は、別の厚生労働省の研究班の多目的コホート研究で収集された血液を用いますが、倫理審査を経まして、乳がん患者 131 人と、1対2のマッチングでのコントロールに関して、症例対照抽出が終わりまして、現在、ビスフェノールA(BPA)、フタル酸エステル、イソフラボン、そのほか内因性ホルモンなどの分析を行っております。
 乳がんの症例対照研究ですが、平成13年1月より症例と対照の収集を長野県の3病院プラス、症例収集のスピードを上げるために1病院加えまして4病院でやっています。
 400 ペアを目標にして、現在、314 症例を集めたという段階で、本年度中に収集は終了しまして、今後、代謝の個人差を考慮してリスク評価を行っていこうという予定であります。
 男性内分泌系への影響に関する職域での調査ですが、これは主に産業医科大学の高橋先生が中心になって行っていまして、倫理審査の承認を得て、ビスフェノールAの暴露者 57 名、フタル酸エステルの暴露者 112 名と、コントロールとして 134 名について質問票調査、採尿、採血が進んでおります。
 そして現在は、ゴナドトロピン、男性ホルモン、生殖歴などの分析とか解析を進めています。これは、以前の研究班において、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの暴露者において、FSHのレベルが下がっているという知見を得ましたので、それを更に確認する意味で、今回、より暴露量が高い集団を見つけまして、現在、こういう検討を進めております。
 これが結果が出ているものなんですけれども、子宮内膜症の症例対照研究で、これは間違いで、症例のステージが2〜4で 58 名だったと思います。それから、対照のステージが0〜1で 81 名だったと思います。
 ダイオキシン、フラン、PCBなどを網羅的にかなりいろいろ測定いたしまして、ここでは総毒性等量というようなことで表現していますが、総毒性量を4分割しまして、最も低い4分の1の血清の毒性等量が最も低い人たちに比べて、2番目の人、3番目の人、4番目の人が、子宮内膜症であるリスクというものを評価していまして、だんだん暴露量が増えるほどリスクが下がるということになりますが、統計的に有意ではないので、あえて下がるとまでは言いませんけれども、少なくとも日本人の子宮内膜症においては、こういうものが関係して、リスクを上げているということはないということは言えるんではないかと考えます。
 それから、尿中のビスフェノールAも測定しまして、これも3分割しまして、尿に関しましては、全員がとらえているわけではないので、少しNが減りますので、3分割しまして、最も低い群に比べて、尿中ビスフェノールAの排泄量が多いグループがリスクが上がるということはないということが分かりました。
 一方、尿中ダイゼインとかゲニスタイン、いわゆる大豆由来の植物エストロゲンに関しましては、尿中の排泄量が増えるに従って、逆にリスクが下がるというようなことが、統計的有意にリスクが下がるというようなことが明らかになり、いわゆる大豆製品などの摂取量が多いと、子宮内膜症のリスクが逆に下がるんではないかというようなことを示唆する知見が得られました。
 それから、もう一つ、実際に総毒性量とかが、何に由来するかということなんですが、魚の摂取量が多ければ多いほど、いわゆる総毒性等量は上がるし、農薬の血中濃度も上がるし、ダイオキシン、PCBも上がると。だからといって、魚を食べているから悪いという話ではなくて、少なくとも、日本人のこういうものに関しての由来は魚であると、魚が大きな由来であると。ただ、魚を食べて健康影響が悪いということはないわけです。これは、少なくとも子宮内膜症に関しては、逆にそういうことはないということが言えます。 今後の予定としましては、コホート内症例対照研究、乳がんに続いて前立腺がんを検討します。
 乳がんに関しましては、症例対照収集が終わりますので、今後は、遺伝子環境相互作用の検討を中心に分析を進める予定です。
 それから、男性内分泌系への影響に関する職域での調査。
 それから、子宮内膜症の症例対照研究に関しましては、さらに遺伝子の情報を取り入れまして検討していきたいというふうに考えています。
 以上でございます。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、岸先生お願いいたします。

○岸先生
 私どもの研究は、予防医学専門家と3大学の産婦人科、それから小児泌尿器専門医、それから暴露を評価いたします薬学、衛生研究所の先生と共同で研究はしております。
 研究の要旨でございますが、妊婦が内分泌かく乱物質に暴露されることにより、胎児の泌尿生殖器奇形、特に尿道下裂・停留精巣が引き起こされるか、これを胎児期からの暴露に焦点を当てまして、地域ベースでできるだけ多くの新生児を対象とした疫学研究を行うということで計画いたしました。
 前向き研究によりまして、比較的正確な発生率が把握できますとともに、これまで諸外国でも、我が国でも行われておりませんでした停留精巣尿道下裂の前向きのリスク評価ができるというふうに考えております。
 バイオマーカーといたしまして、血液、臍帯血を用いて、化学物質量を測定いたしまして、暴露と先天異常との直接的な関連を検討いたします。
 また、比較的低濃度のバックグラウンドレベルの暴露を受けた妊婦で、CYPですとか、GSTの化学物質の代謝の遺伝的な多型によって感受性が異なって胎児への影響が違うのではないか、その点も調べることを目的としております。
 それで、マイクロアレイを使いまして、感受性素因を解明することで、ハイリスクグループの予知と予防を目指します。
 研究の背景を簡単に申し上げますと、アメリカ、ノルウェー等で尿道下裂や停留精巣の増加が指摘されておりまして、これは主として症例対照研究で農業従事者、あるいはビジタリアンの子どもで尿道下裂、停留精巣のリスクが増加するというような報告がございます。
 日本では、全国的に産婦人科の先生方の手で尿道下裂のモニタリングがされておりますが、75年の 1.4 に比べまして、85年が 2.8 、それから98年で 3.4 くらいというふうに、やや増加傾向が指摘されております。
 しかしながら、これは私どもが北海道で病院ベースの手術例を調べましたよりも、まだむしろ低いぐらいでして、これは尿道下裂の一部が、産婦人科の先生がごらんになる出生児には見逃されているものがあることがあると思います。
 尿道下裂、停留精巣と化学物質の直接的な関連をリスク評価した報告は、現在までも内外で乏しいのが現実でございます。
 計画でございますが、北海道内の43施設と交渉いたしまして、倫理委員会を通す作業をいたしました。55種類の外表奇形に関しまして、診断の手引書と実施マニュアルを作成し、また遺伝子マイクロアレイを作成いたしました。
 主として妊婦から立ち上げて、乳児期までを追跡する形で、症例に対しまして、症例が産まれた直後の 2 例をコントロールといたしまして、リスク評価をするという研究デザインになっておりますが、同時に、既に手術を行っている手術症例につきまして、尿道下裂、停留精巣の症例対照研究、及び主として15年度不育症に関しまして、症例対照研究を行っております。
 プロトコールを少し詳しく申し上げますと、ファースト・トライ・マスターであります12週までにインフォームド・コンセントをいたしまして、個人別の調査票、かなり詳しいものですが、書いていただき、主として代謝が早い化学物質につきまして採血し、測定をする。
 また、妊娠後期の8か月と出産時に代謝が遅いPCB、ダイオキシン類について測定いたしまして、同時に出産時臍帯血を採取いたしまして、化学物質の代謝酵素、あるいはレセプターの遺伝子多型を調べる。更に、4か月と1歳で追跡をし、ここで1歳までに停留精巣の一部は下降いたしますので、それを確認することになっております。
 マーカー奇形に関しましては、神奈川で先天異常のモニタリングをされていますが、それに5種類ほど加えまして、55疾患といたしました。更に低出生体重、在胎週数、子宮内発育遅延、羊水異常、乳児期のアトピー、喘息等について調べることをアウトカムとしております。
 DNAマイクロアレイに関しましては、十数種類の遺伝子多型を同時に測定する形で、既にこれは完成しております。
 先天異常の場合には、サンプルサイズが幾らということで、実際に何が明らかにできるのかということがかなり関係してまいりますが、1万人の妊婦が参加した場合には、停留精巣、これは我が国では全くモニタリングされておりませんので、韓国の発生率、0.7% を参考にして算出しましたが 70 人、VSDで約 14 人、口蓋裂が 11 人というような、尿道下裂は1万人でも 3.5 人しかおりませんが、このようなサンプルサイズで先天異常が得られます。
 私どもの研究デザインですと、1万人の場合には、低出生体重、停留精巣、あるいは先天異常トータルといたしまして、それぞれ暴露要因、それから葉酸が主として神経管の異常等と関連しておりますので、全例で葉酸を図っておりますので、このようなことが明らかになりました。
 既にこのように、最初は少し苦労いたしましたが、かなりの数の妊婦が参加してくださっています。現在、40参加施設が協力いたしまして、16年末には 8,000 人が参加見込みであります。
 結果を少し急いでお話しいたします。PFOSに関しまして、これは中澤先生のところとの共同研究で、母と胎児の関係を明らかにいたしました。
 それから、マイクロアレイで低出生体重と、喫煙及び代謝に関する個体の感受性との関連を明らかにいたしました。
 また、カフェインで、300 mg を超えますと、遺伝子多型との関連を明らかにいたしました。これは一部で、詳しいことは、先生方のお手元の資料にございますが、これは症例対照研究で明らかにした事柄。
 これは、モレキュラー・エビデミオロジーの形で、ステロイド代謝酵素の遺伝子多型と尿道下裂、あるいは胎児発育遅延と、母親のCYP17遺伝子多型について比較的きれいなデータが得られております。
 時間を超過いたしましたので、これにて打ち切らせていただきますが、今後も更に先天異常のモニタリングを続けまして、最終的にはフェノール類、あるいはPCB、ダイオキシン類と先天異常の関係、それから個人の遺伝的素因とリスクの関係について明らかにしたいと考えております。
 以上でございます。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、八重樫先生お願いいたします。

○八重樫先生
 東北大学の八重樫です。私は、お手元に配付されています、資料4−5のレジュメのみでプレゼンさせていただきます。
 私どもの研究課題は、内分泌かく乱物質PCBと子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究、疫学研究であります。
 なぜ、今、子宮体がんかということなんですが、子宮体がんは婦人科の患者で決して多くはないんですけれども、過去40年くらいを見ますと、最も頻度が増えているからであります。
 また、子宮の内膜から発生しますので、女性ホルモンの影響を非常に強く受けやすいということで、PCBを始めとした内分泌かく乱のエストロゲン作用する可能性が非常に高いと考えて、この研究を行いました。
 2ページ目をごらんいただきたいんですが、研究自体のプロトコールは非常にシンプルでして、まず、目的はヒトにおける子宮体がんの発生とPCB暴露量との関連について、症例対照研究の手法を用いて交絡要因に十分考慮しながら確実に検証するということです。
 こういったPCBのような非常に微量な物質による影響を推測するためには、さまざまな交絡要因を考慮して研究しなければいけないということであります。
 症例1に対して、対照2を用意すると。年齢ですとか、居住地、あるいは農業従事者、農薬の関係もありますので、そういったものを十分に考慮しながらマッチングしております。
 ここに書いておりますPCB、あるいはDDTを始めとした農薬、エストロゲンあるいは植物性のエストロゲンも測っております。また、生活習慣に関するアンケートを行っています。
 3ページ目なんですが、平成14年度には、PCBと子宮体がんに関する発生リスクに関する文献のレビューを行いました。これは報告書に書いてあります。
 昨年度は、植物エストロゲンと子宮体がんの発生に関するレビューを行っております。 現在の症例及び対照の登録状況は、3ページの図に書いてあるように、4か月ごとに書いておりますが、次第に集まるようになっております。
 次の4ページですが、血液検査として幾つか随時行っておりますけれども、これはまだ解析するところまでは行っておりません。
 それからアンケート調査の結果は、次の5ページ目から何枚かありますが、例えば5ページの年齢、これは勿論年齢を症例と対照でマッチングさせておりますので、年齢の差はないと。
 その下のBの閉経に関しましては、ケース、子宮体がんの方では閉経が遅いということで、そういった傾向が出ております。
 6ページ目に関しましては、ケース、子宮体がんの方は肥満が多いと昔から言われておりますが、そういった方がなっている。
 また、Dのところでは、妊娠回数を見ますと、子宮体がんの方は一般の方に比べて妊娠している数が少ないということも、こういった結果で表われてきております。
 最終的な解析は、最後にやるということになっております。
 9ページ目、今後の予定ですが、症例の登録が目標にまだ足りませんので、研究協力施設を増やして行うことにしております。
 また、食物摂取頻度調査票という非常に詳細な食物、毎日どういうものを食べているかという調査を行っておりますが、これによって最終的には各栄養素、どういったものを取っているかということを補正して求めることにしております。これはまだ全然回収しているだけで、手を付けておりません。
 それから、血中の残留農薬の測定、これは日本農村医薬研究所に委託することが既に決まっております。
 また、植物エストロゲン濃度の測定は、国立がんセンターとの共同研究で行うということも決定しております。
 本来であれば、中途で解析してそれぞれのデータを見てみたいところなんですが、こういった疫学研究におきましては、中途でそういう解析をするのは非常にバイアスをかけるということで、一緒にやっております公衆衛生の先生方から堅く禁じられておりまして、ということで、すべてのこういったデータが出そろって、最終的には多変量解析にかけるということで行うということになっております。
 以上です。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、これまでに御発表いただいた3人の先生方についての御質問がございましたらどうぞ。

○青山委員
 3人の先生に同時にお伺いするような形でよろしいですか。
 八重樫先生のお仕事では、経口避妊薬の有無について、要因として御注目いただいているんですが、例えば、岸先生のお仕事とか、津金先生のところでも、ピルとして暴露された合成エストロゲンというようなものが、私はエストロゲン作用としては非常に強いので、どの程度残っているのかは分かりませんが、見ておく必要はいかがでしょうかという質問です。

○津金委員
 私どもの研究の中では、既に収集が終わっている、コホート研究の中のものでは、要するに経口避妊薬を飲んだか、飲んでいないかという単純な質問のみをしています。
 それから、この研究班が始まってからやっている子宮内膜症の研究とか、乳がんの研究に関しましては、そういうホルモン関係の薬の服用に関しては、詳細に聞き取っております。

○岸先生
 ピルの服用に関しましては、症例対照研究でも、それから前の研究でも調査票の中に入っておりますが、現時点では、服用していた、していないということに関しましては、有意の差が見られておりません。
 それから、先生が重要と思われていることは、私どもも重要だとは思っているんですけれども、それは時間がなくてはしょって申し訳なかったんですが、尿道下裂について、代謝酵素の遺伝子の多型を調べましたところ、17β−水酸基脱水素酵素の3型は精巣に特異的に発現するんですけれども、変異型が尿道下裂のリスクを上昇させました。オッズ比は 3.91 で信頼区間もしっかりしておりました。
 これは逆に言いますと、エストロゲン有意がリスクを上昇させる可能性を遺伝子レベルで示唆したものだと考えております。

○伊東座長
 よろしゅうございますか、そのほかございますか。
 データが集まらないから発表するなと言われているというのは、なんか言い訳のような気もしないでもないんですけれども、一つしっかりと症例を集めるようにして、是非データをきっちり出していただきたいと思います。
 よろしゅうございますか。

○事務局
 それでは、津金先生、岸先生、八重樫先生には疫学研究のまとめをお願いしたいと思います。
 また、津金先生には文献調査もお願いをしておりますところですので、引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、山田先生、お願いいたします。

○山田先生
 私どもは、大学病院でお亡くなりになられた方につきまして、病理解剖を行いますが、その際、御遺族から御同意の得られた方について、要するに日本人のいろんな臓器ですね、脳から内臓の臓器にどのぐらい内分泌かく乱物質などが蓄積しているかということを、まず明らかにしようということで始めております。
 お配りしたレジュメにも書いてありますけれども、臓器としましては、脂肪、下垂体、脳、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、胃、腸管、乳腺、骨髄、血液、胆汁と、ほとんどの臓器を集めております。
 病理解剖は、いろいろな疫学的な解析には適さない部分もあるんですが、その代わり、生前の臨床血液というか、化学データがそろっているということで、そういったものとの関連も見られるかなということでやっております。
 今日は、その中で肝臓、血液、胆汁、それから脂肪について測ってまいりましたが、更に腎臓、膵臓、脾臓、脳、乳腺について、まだ少数なんですが、解析を始めますのでお示しします。
 また、最近、臭素系ダイオキシンが、いわゆる難燃材に含まれるものですが、問題になっているということもあって、それも測り始めました。
 あと、測定方法の中では、今まで血液の測定についてかなり方法が改良されてきたと思うんですが、人間の臓器においても、そういった方法が適しているかどうかも含めて検討しました。
 また、当初から、我々は東京の大学病院なものですから、東京に在住の方の蓄積状況を解析してまいりましたけれども、その他のところで、まず1つ、瀬戸内海に面しているということで、愛媛県の方、まだ3例しかないんですが、始めましたので、お話しさせていただきます。
 年齢は、ファイリング自体は 0 歳から 100 歳までありますが、測定は 20 歳から 98歳まで解析しております。
 まず、測定方法ですけれども、血液で高速溶媒抽出法というのがよいということで、人間の臓器につきましてもやってみました。
 結果としましては、最終的に、これまでの組織の10分の1ぐらいで同様にはかれるということ、それから乾燥のステップとかを省略できたということで、早くはかれるという結論が得られております。
 実際に、ダイオキシン類に関しましては、トータルのTEQの値で示しておりますが、これまで肝臓から胆汁、血液、脂肪につきましては報告してきてきましたが、乳腺、脳について、今回結果が出てまいりました。7 例なんですが、乳腺では脂肪等、脳では脂肪と肝臓の間ぐらいの値が近似値として得られています。
 これらのダイオキシン類の蓄積状況と年齢との相関を見たものですけれども、これまで血液では報告がありますように、実際に、これは肝臓を示していますけれども、やはり年齢とともに蓄積傾向が明らかでした。
 これは、より詳細に検討してみたものですが、左のグラフは、肝臓、脂肪、胆汁、血液といった臓器別に年齢の蓄積状況を見た場合に、例えば、肝臓ですと、70 歳以上で上がってくる傾向があったり、あるいは農薬ですが、クロルデンですと、やはり 70 過ぎて上がってくるところがある。
 あるいは、ヘキサクロロヘキサンでは、比較的若いところから立ち上がってくるというような傾向を見ておりまして、これも症例を増やして、傾向をちゃんと見ていきたいと考えております。
 今回初めて臭素系ダイオキシンの測定を始めましたが、これはいわゆるテレビ、コンピュータなどの難燃材に使われているということで測定しました。実際に、人間の体の血液、胆汁、肝臓、脂肪の中に一定量の蓄積が認められるということ。
 それから、こういった異性体の中で何が多いかということが明らかになりまして、胆汁の中で、こういったものが出てくるということも明らかにしました。
 特に、胆汁の中では、塩素の数が少ないものがたくさん出やすいという傾向が分かりまして、血液と胆汁、あるいは血液と肝臓で濃度は相関があるということが明らかになりました。
 まだ、たった 3 例ですが、肝臓につきまして愛媛県にいらっしゃる方について、愛媛大学の病理学の能勢先生の協力を得まして、インフォームド・コンセントを得た後に解析させていただきました。
 たった 3 例なんですが、これまで愛媛県では母乳の解析を一昨年に終わっておりまして、他の都府県よりも高いという報告があったので、肝臓ではどうかということをやりました。 まだ、たった3例なんですけれども、母乳のように他県よりも高いという傾向はありませんでしたが、愛媛県で前回異性体の中で多かったのと同じものが肝臓でも高い傾向が認められました。
 それから、これはもう既に報告しましたけれども、104 例測定している中で、非常に高い濃度を暴露を受けた膵がんの患者さんが1人いらっしゃいまして、石油関係のプラントに就職されていた方なんですけれども、農薬系、あるいはダイオキシンがいずれも高い濃度を蓄積されていた膵がんの方です。
 実際にがんの部分と、がんではない部分で K-ras というがん遺伝子について変異を見ましたところ、これまでPCBとか、DDTとか、農薬で高濃度暴露の方で、K-ras の特異的な変異が見つけられて、ランセットの方で報告されてきたんですが、この症例では、コドンの12で、両側に違う変異があって、61番で片側に変異があるということで、初めて変異のパターンが明らかとなりました。
 これは、お配りしたレジュメの最後のページでありまして、要するに病理解剖で、全身の臓器について、なるべくたくさんの基礎データを蓄積していこうということで、これまでこういった主要臓器を測定してまいりました。
 まだまだファイリングしたものがたくさんありますので、どんどんやらなければいけないんですが、今年に関しましては、特に大脳、乳腺をもっと症例を増やしていこうということと、下垂体とか、副腎ですとか、内分泌臓器についても測定していこうと考えております。
 ありがとうございました。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、螺良先生お願いいたします。

○螺良先生
 関西医大の螺良でございます。今日は、資料に沿ってお話しいたします。資料4−7を御参照ください。
 まず、私どもの研究目的から申し上げますと、エストロゲン活性を持つ合成化学物質は内分泌かく乱物質として弊害が強調されております。一方、私どもが食品として摂取している成分の中には、天然エストロゲンが存在いたしますが、こちらの方はむしろ健康増進作用が注目されているようであります。相反する評価ということでございますけれども、これからの化学物質のエストロゲン活性を同一の in -vitro のアッセイ系で測定・比較いたしまして、作用強度をまず同定しようと。そして、これらエストロゲン活性を持つ化学物質は、我々の成長期に作用いたしますと、発育、がん化、あるいは内分泌かく乱を来すおそれがございます。
 よって、高いエストロゲン活性を有する化学物質を選別いたしまして、周生期暴露実験によりまして、生体に及ぼす影響を検証しようというのが目的でございます。
 併せて、これらのエストロゲン活性を示す物質の複合作用が存在するのか、否かについても検証いたしました。
 成果でございます。2.の(1)で、天然・合成化学物質のエストロゲン活性を比較いたしましたところ、表1のとおり、酵母 Two-hybrid 法あるいはエストロゲン受容体結合アッセイ等において、体内エストロゲン、すなわち 17β-estradiol に準じまして、比較し得る活性を持ちますのに、Zearalenone と申しますか、mycoestrogenがございます。
 それに続きまし、種々の phytoestrogen があり、一番活性化が低かった代表といたしまして、ビスフェノールAでございました。
 Mycoestrogen が強かったということで、図1にある、 Zearalenone の代謝産物のZearanol についても再度見ましたけれども、DESと比較いたしまして、相対結合 0.77、かなり強いエストロゲン活性を見ました。
 次のページをお願いします。
 これらを踏まえまして、マウスを用いました胎仔期の暴露実験を行いました。被験物質は Genistein 、Resveratrol 、Zearalenone 、ビスフェノールA、それからDESでございます。
 なお、表2のDESの用量の単位、mgとしておりますけれども、μg に御訂正ください。
 これらの化学物質は、押し並べて、マウスの新生児の雌マウスについて体重増加を促進いたしまして、腟開口を早発いたしております。エストロゲン作用があるということでございます。
 表2に黄体欠如マウスの匹数を記載いたしました。4週齢のときに、黄体欠如マウスを組織学的に認めたわけでございますけれども、8週齢に達しますと、すべて旧に復しております。しかし、Zearalenone の高投与群のみは永続する黄体欠如マウスを認めました。すなわち、Zearalenone の暴露は、マウスの不妊を示唆するという結果でございます。
 次の3ページの(3)ですが、ラットにおける実験で追試といたしまして、Genistein 、Resveratrol 、Zearalenone を実施しました。いずれもマウス同様に機能的なエストロゲン作用を認めておりますが、表3を御参照いただきますと、ラットにおけます思春期前のZearalenone の投与によりますと、表3の真ん中辺り書いておりますけれども、黄体欠如ラットが Zearalenone について用量依存性に認めております。
 すなわち、ラットにおきましても、Zearalenone の投与は不妊を示唆するデータでございます。
 エストロゲン活性あるいは内分泌かく乱作用と申しますか、それに加わる発がんに対する影響も知りたいところでございます。
 代表といたしまして、3ページの図2にラットへの Zearalenone 投与におけます誘発乳がんの影響を見ました。
 しかし、これらの化学物質、mycoestrogen にせよ、phytoestrogen にせよ、投与いたしますと、むしろ実験乳腺発がんに関すれば、増悪はしない、むしろサプレスするという結果でございます。
 4ページに移ります。
 最後の項目で、(4)農薬のエストロゲン活性の評価、及び複合作用の有無でございます。
 滋賀県でよく用いらるという、32の農薬について、表4の農薬で示しましたが、エストロゲン活性をE−CALUX法で測定いたしましたところ、表4の左の方に*が付いている5種類にエストロゲン活性を見ました。
 ただし、これらのエストロゲン活性を見ました農薬の濃度と申しますのは、残留農薬分析値を勘案いたしますと、環境中ではエストロゲン活性を発揮しない範囲であるということも付け加えておきます。
 さて、複合作用について、アットランダムに抽出したと申しますか、すなわちエストロゲン活性を見た2の農薬を半量ずつ加えたという実験を実施しました。図3を御参照いただきますと、左の2つは双方ともにエストロゲン活性を見た農薬を投与いたしますと、▲のところが複合した相対発光単位ですけれども、単剤よりも上昇しているということで、要するに複合作用が存在したということでございます。
 図3の右の表は、TEZ、すなわちエストロゲン活性があるものとOPP、すなわちエストロゲン活性がない農薬の組み合わせでございますけれども、これによりましても、複合作用が存在したというデータでございます。
 以上、5ページ目に結論を書きました。天然化学物質のエストロゲン活性は、合成化学物質に比して高い。とりわけ mycoestrogen に高いエストロゲン活性を見たということでございます。
 そして、mycoestrogen には、無排卵性卵巣をきたすことより、不妊、あくまでげっ歯類の話でございますけれども、不妊が示唆されたというのが私どもの現在の得ているデータでございます。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。お二人の御発表に対して、どなたか御質問、御意見はございますか。
 どうぞ。

○酒井委員
 山田先生にお伺いしたいんですけれども、有機臭素化合物をお取り組みになられており、日本の中でまだほとんどデータがないところで、先進的な情報で興味深く拝見したんですが、お取り組みになられたのは、あくまでポリ臭素化ジフェニルエーテルに対しての存在量をお調べになられたわけで、臭素化ダイオキシン、あるいはジベンゾフランを直接測定されたわけではないんですねということを、確認したいのが1点でございます。
 もう一点は、臭素化ジフェニルエーテルを測定されている中で、10臭素でいきますと、209 番になろうかと思いますけれども、デカブロモジフェニルエーテルの存在はいかがでしたかと、この2点をお伺いしたいと思います。

○山田先生
 山田ですが、今の最初の御指摘はそのとおりでございまして、今のところ、まだデータが出ておりません。今後、発表していく予定であります。

○酒井委員
 日本で使われている臭素の難燃材はデカブロモジフェニルエーテルが大半かと思いますので、そのものずばりが検出されているかどうかは、1つの焦点だと思いますので、是非お願いをしたいと思います。

○山田先生
 分かりました。

○伊東座長
 ほかにございますか。
 どうぞ。

○青山委員
 螺良先生にお伺いしたいと思います。図3で農薬を2つ組み合わせると、少しエストロゲン用の活性が高いというデータですが、これはグラフで見ますと、例えば 10-5程度の濃度にしますと、5割増しから2倍ぐらいに見えますが、スタンダード・デビエーション等を考慮して、統計学的にも有意なものでしょうか。

○螺良先生
 正確な統計は取っておりません、申し訳ございません。帰って早速いたします。

○伊東座長
 そのほかございますか。
 山田先生、1つお聞きしたかったんですが、いろいろ剖検例というのになりますと、化学療法とか、そういうふうなことが影響しているんではないかなと思うんですね。例えば膵臓がんで非常に高いというようなことをおっしゃっていましたね。ですから、そういったことについての解析はいかがでございますか。

○山田先生
 御指摘のとおりで、治療につきましては、剖検例の方ですべてリストアップされてデータに入っております。それに全く相関はまだ見ていませんけれども、膵がんの例が 9 例含まれていますので、是非検討してみたいと思います。

○伊東座長
 膵がんがそういったものに、もしも影響されているとすれば、これは大きな問題ですから、十分な検討と御配慮をお願いしたいと思います。

○山田先生
 分かりました。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。

○事務局
 ありがとうございました。それでは、続きまして、牧野先生、お願いいたします。

○牧野先生
 東海大学の牧野でございます。
 私どもの研究は、内分泌かく乱化学物質の試料分析の信頼性の確保と、内分泌かく乱化学物質の生体暴露量のモニタリングに関する研究と題しまして、平成14年、15年、16年と3年間、ここにございますような国内の5施設、5人の先生方を分担研究者といたしまして、研究を行ってまいりました。
 本日の御報告は、中間報告書追補その2を作成するということもありまして、主に全体の研究の中から3つについて御報告をさせていただきたいと思います。
 最初の研究の概要及び目標でございますが、今、申し上げましたように、5施設、5人の分担の研究の先生方にそれぞれ異なったテーマで研究をしていただいているわけでございますが、このように相互関係がございまして、分析法の開発及び精度管理につきましては、当然最終目標が分析法のガイドラインの作成でございますが、この確立した分析のガイドラインに基づきまして、ヒトの暴露量を把握する。
 同時に、暴露ということは生体に入った物質が代謝されるわけでございますので、代謝側からもその情報をフィードバックしていただく。
 それから、新たに加わりましたテーマといたしまして、実験動物の飼育環境下における汚染状況を同じようにガイドラインを作成して把握いたしたいと思っております。
 そのほかに、本日は触れませんが、内分泌かく乱化学物質に感受性のある遺伝子を解析いたしまして、疾患発症まで至るかどうかという検討もさせていただいております。
 具体的な対象物質でございますが、ビスフェノールA、御承知のように、樹脂ポリカーボネートに代表されるようなものでございますが、まだ年間 30万トン前後の工業生産量があるというふうになっております。
 それから、フタル酸エステル類、御承知のようにプラスチックの可塑剤に使用されておりますが、同じように数十万トンの工業生産量がある。
 ノニルフェノールにつきましては、様々な使い方がございますが、主に界面活性剤として年間数万トン使用されているということでございます。
 これら物質に対するガイドラインの作成と暴露量の把握、並びに新たに1テーマに加わりました動物の飼育環境における汚染状況ということで、飼料に含まれるイソフラボン類についても分析を行いつつあります。
 本研究プロジェクトの構成でございますが、既に生体試料の採取保存につきましては、バックグラウンドを極めて無視し得るレベルまで追い込んだ報告を既に平成11年から13年、本厚生科学研究で報告をさせていただいております。
 目下分析法の開発ガイドラインを策定中でございまして、同時に代謝や遺伝子解析を行っております。実験動物の環境下のモニタリングを同時に行ってまいりました。具体的な分析法でございます。平成14年度には、埼玉県衛生研究所では、LC/MS及びGC/MSによる、ビスフェノールAの測定法のガイドラインの試案を策定いたしました。愛知県の衛生研究所では、GS/MSによる、フタル酸エステルの測定法ガイドラインを作成いたしまして、星薬科大学におきましても、ノニルフェノールにつきましてLC/MSによる測定法のガイドラインをそれぞれの分担研究者の方々に検討試案を作成していただいて、私ども東海大学の倫理委員会を通りましたヒトの試料、血清等を供給させていただいて、試案づくりを平成14年にいたしました。
 昨年は、この試案に基づいたもの、東海大学並びに星薬科大学を中心に2つの方向で検討いたしまして、1つの方向は、ここにございますような施設で、私どもが作成いたしましたガイドラインの評価と申しますか、改良の点を検討いただきまして、同時に同じサンプルを外部の委託機関、A社、B社に委託いたしまして、いわゆるクロスチェック、精度管理をいたしまして、今年度は最終的なガイドラインを取りまとめ中でございます。
 具体的なことを更に申し上げますと、このガイドラインの中の通則として一般試料の採取法でございますが、いわゆる採取器具からの測定前の汚染というものを極力なくすためには、平成11年から13年の報告では、具体的に申しますと、フタル酸のジエチルヘキシル等は 10 ppb 以下であるということに心がけまして、実際にはすべて 1 ppb 以下でございました。
 いわゆる抽出法は、ほとんど固相法でございまして、測定法の実際は、当初、いわゆる抗原抗体反応を用いましたELISA法等で検討いたしましたが、どうしても絶対値が高く出る、あるいはブランクにもある程度の値が出てしまうということがございまして、最終的には、ここにございますように、LC/MSあるいはGS/MS、すなわち内部標準を入れまして、それを視覚的にピークを確認いたしまして、試料のピークと比較するという方法でガイドラインを作成いたしました。
 個々の物質について、具体的に報告申し上げますと、左半分は、これは具体的な測定法でございますので、報告書等を御参考いただいて、右側のクロスチェックの結果はブランクにはほとんどA、B、Cの機関でほとんど測定されないと。既知の濃度を入れたものでは大体それに相応するようなものが測定できまして、具体的にヒトのサンプル、これは尿でございますが、A地区で 30 症例、B地区で 7 症例測定いたしますと、1検体だけ非常に高い値がございますが、平均では 0.59 ナノグラム、0.74 ナノグラムで尿量で補正いたしまして、A地区では1日で 905 ナノグラム、B地区では 821 ナノグラムで、いずれも1マイクログラム以下でございました。
 ちなみに、EUにおきまして、暫定、とりあえずのTDIが1日大体 500 マイクログラムということになっておりますので、我が国では、その 500 分の1以下だろうというふうに考えます。
 ノニルフェノールにつきましても、同様に左半分は測定法でございまして、右上はクロスチェックの結果でございます。
 実際の健常人の尿を測定いたしますと、クレアチニンクリアランスで補正いたしまして、フリーのもの、あるいは胞合型も含めたもので、ほとんどこの表にございますように測定されてまいりませんでした。
 フタル酸エステルにつきましては、御承知のように、これも当初の見込みとやや異なりまして、生体で速やかにジエステル型、続いてモノエステル型、最終的にはグルクロン酸と胞合されて、極めて短い時間で尿中に出てしまいますので、フタル酸そのものをはかっても意味がないということで、その代謝産物についてクロスチェックあるいは血清ブランクを測定いたしました。
 この3物質についてまとめてみますと、回収率がここにございますが、3物質とも 95%から 100% ちょっと、非常に良好な回収率でございました。
 相対標準偏差、すなわちふれでございますが、7% から 10% ということで、どの機関で測定いたしましても、このガイドラインに沿った測定法ですと、ふれが少ないということになろうかと思います。
 もう一つの結論といたしましては、血中の半減期が非常に早い、蓄積性が非常に薄いようなこの3物質を血中ではかるよりは、尿中の代謝産物で測定いたしまして、それを人体への暴露量にフィードバックして評価するのも1つの方法ではなかろうかと思います。
 以上、まとめますと、平成14年、15年、16年と、今、申し上げたような形で進行してまいりまして、今年度は、最終的にこれら3物質の測定のガイドラインを取りまとめ、作成させていただきまして、将来は大規模な生体試料の疫学的な研究にも応用し得るというふうなことをもくろんでございます。
 3番目でございますが、新たなテーマでございますが「実験動物の環境汚染」と書いてございますが、この意味するところは、御承知のように、こういう内分泌かく乱化学物質の投与量を増していきますと、その毒性は上がってくるという毒性曲線がございますが、考えてみますと、こういう飼育動物というのは、それ以前に、例えば飼育されている空気中、給水瓶、飼料、床敷、ゲージ等から既に暴露されておって、その動物をヒトに代わって内分泌かく乱化学物質の研究実験に使うということになりますと、この部分が問題になるのではなかろうかと考えまして、ここにございますように、動物の飼育環境の信頼性の検証を意図いたしまして、3物質プラス植物性エストロゲンを加えた分析法を構築いたしまして、バリデーション、すなわち精度管理をいたしまして、ガイドラインを作成し、実際の分析を行う予定でございます。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。ただいまの御発表につきまして、御質問がございましたらどうぞ。ございませんか。
 どうぞ。

○井上委員
 動物実験のことについて、最後にお話がありましたが、ちょっと御質問がないようですので、1つお願いを申し上げておきます。
 私どもの研究所では、植物ホルモンの低い餌を某飼料会社と協力して、市販で既に出しております。皆様方も一部使ってくださっております。これについても、これからの御検索のようですから、加えていただいてお調べいただければ幸いでございます。

○牧野先生
 井上先生から御紹介いただいたのも検討させていただきたいと思います。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。随分莫大な研究費の下で、新しいデータを次々とお出しいただいていますし、非常に信頼性の高い御研究であるというふうに私は考えておりますが、特に、今、井上先生からお話しがありました動物実験に対するデータというのは、いろいろと批判の対象になる、特に低用量の場合には、非常に大きな問題になってまいりますので、慎重に成果を、その研究をしていらっしゃる方々とともにお出しいただきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

○事務局
 牧野先生、ありがとうございました。採取分析法につきましては、検討会から青山先生、それから菅野先生にも作業班に加わっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、吉川先生、お願いいたします。

○吉川先生
 慶応義塾大学の吉川でございます。
 本日は、内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションに関する研究についてお話を申し上げます。
 研究の目的でございますが、内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションについて実証的な検討を行い、主に厚生労働省が行うべきリスクコミュニケーションのガイドラインを提示するということを目的としております。
 研究の流れでございますが、平成14年度で、現状の把握及び要因の抽出を行いました。平成15年度は抽出された要因を基に、主に心理学的実験を基に、効果分析と、試作したリスクコミュニケーションツールの評価を行っております。
 平成16年度現在進行中でございますけれども、実践と活用及び評価と提出を目指しております。これに伴いまして、ガイドラインの作成、パンフレットの作成を鋭意行っております。
 本日、ここで発表申し上げますのは、ガイドラインの構成でございます。ガイドラインの案につきましては、お手元に資料として配付しております。
 構成案ですが、初めに、それからガイドラインの対象者、リスクコミュニケーションの目的、情報の発信者と受信者の関係、情報の内容、情報伝達の手段、それからまとめということになっております。
 初めに、この本ガイドライン案の特色でございますが、1つは内分泌かく乱化学物質という既存の化学物質リスクコミュニケーションマニュアルが適用できない問題を扱っているというところがあります。
 それから、化学物質リスクコミュニケーションマニュアルは既に複数のものがあるわけですけれども、従来のマニュアルは基本的に欧米のマニュアルの翻訳であって、日本における適用可能性の検証がないという問題があります。特にこれは重要な問題と考えておりますけれども、日本語の言語表現については全く資料がありません。
 さて、具体的な構成に入っていきたいと思うんですけれども、ガイドラインの対象者としては、一般消費者、国民と行政、厚生労働省を主たる対象としております。
 リスクコミュニケーションの目的は、後に述べます、情報の発信者と受信者によって若干異なってくるわけですけれども、厚生労働省の立場から見ましたリスクコミュニケーションの目的は第1に国民の健康的な生活への貢献、第2に国民への説明責任、第3に合意形成、第4にリスク管理があると言えます。
 一方、リスクコミュニケーションの主たる受信者となります一般消費者の視点から見ますと、意見表明の機会があること、それから意思決定の参画の機会があることが、主たるリスクコミュニケーションの目的ということになります。
 3節目でございますけれども、情報の発信者と受信者の関係について御説明申し上げます。
 本ガイドライン案では、主たる発信者として厚生労働省、受信者として一般消費者を想定しております。ただし、一般的なリスクコミュニケーションにおきましては、その他の対象、例えば産業界、それからNGOのような非政府組織、それからマスメディアなども同時に発信者、あるいは情報の受信者となり得ることを留意しておかなければなりません。 また、発信者、受信者の関係は、固定的ではなく、ときに受信者と想定されています一般消費者が情報の発信者になるというような場合もあり得ます。
 また、一般消費者と言えども同質ではなく、このことは私どもの研究班の研究成果から特に性差のようなもの、それから年齢差など、同質ではないということを前提としてガイドラインを考えていくことが必要になるということが明らかになっております。     情報の内容でございますけれども、まず、情報の内容はリスクコミュニケーションの目的と一致する必要があります。
 また、一方で、情報の受け手、一般消費者の知りたい情報も、特に日常的な生活に関わる情報ですが、含めておく必要があります。
 それから、一般的な理解を進めるためには、基本的な概念が理解されていないということが明らかになっておりますので、この説明が必要になります。
 それから、政策への理解のためには施策の説明と、その結果についての説明も必要となります。
 また、情報の内容項目としては、以下の7つの項目が必要となります。
 実際に情報伝達のメディアとして考えておりますのは、ウェブページ、それから1枚紙ですけれども、簡単なリーフレット、それから十数ページを想定しておりますけれども、詳細なパンフレット、マスメディア、それから対話集会とか、シンポジウムなどのような対話型の手法を考えております。
 それから、手法の選択については、これらの目的とともに詳細に更に検討していく必要があるかと考えます。
 リスクコミュニケーションについて申しますと、コミュニケーション技法についても慎重に考えておく必要があります。これは、お手元にあります本ガイドライン案の付録として詳細を載せておりますけれども、問題の性質から現状で確定的な情報を伝達することができないのであれば、その情報、特に伝達手法、技法について検討しておくことが必要となります。
 それから、情報伝達の手段について言いますと、継続的な対応は必須ですので、問い合わせの対応、それから情報の更新と発信の継続が重要となります。
 また、コミュニケーションの実行基盤としては、訓練、それから問い合わせ窓口の整備が重要となります。
 まとめとして、制度構築上では、行政機関内で統一的な理念及び方針の共有、システム構築、それから行政機関のコミュニケーション能力の向上などが重要になります。今後の予定ですけれども、ただいま御提示しておりますガイドライン案について、細部についての検討、特に情報、内容項目、具体的な情報の表現について更に詳細に検討します。
 それから、現時点で、想定外の発見が幾つかあるんですけれども、それについては、実験を重ねて再検証したいと思います。
 本年度広範にシンポジウム、訓練、リーフレットなどの作成を経て、実践をし、評価を行いたいと思っております。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。どなかた御質問はございませんか。
 どうぞ。

○眞柄委員
 一般消費者という言葉を使われていらっしゃるんですが、本来はリスクコミュニケーションを役所でやる場合は、一般消費者ではなくて、国民ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○吉川先生
 その表現につきましては、国民でもいいかと思うんですけれども、これはむしろ検討会の先生方の御評価をいただいて、国民の方がよければ、国民の方に直したいと思っております。ありがとうございました。

○伊東座長
 和田先生、よろしゅうございますか。

○和田委員
 リスクコミュニケーション、まだ情報を出す方も、それから消費者の方も慣れていないところがありますけれども、リスクコミュニケーションの機会というのは、非常に増えております。そして、リスクコミュニケーションについての検討なり、研究というものが、きちんと進められるということは大事なことですので、私どももできるだけ消費者にとっての望ましいリスクコミュニケーションの在り方ということで、意見を出させていただきたいと思っております。
 以上です。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、ここで、10分間休憩いたします。

○事務局
 14時50分から再会させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(休憩)

○伊東座長
 それでは、おそろいでございますので、引き続き御発表いただきたいと思います。

○事務局
 それでは、井上先生、お願いいたします。

○井上委員
 低用量効果・複合効果を含む内分泌かく乱化学物質の生体影響メカニズムに関する研究というのが、私どもに与えられたテーマでございます。
 この問題は、この左に示している化学物質で、真ん中のような各々の野生生物に、右のような事柄が起こった、ということが問題の発端となりまして、研究の必要性が浮上してきたということでございます。
 もとより、生体内のホルモンそのものが潜在的なポテンシャル、生体障害性を持つ面も知られており、またいわゆる植物ホルモンなどにもホルモン様の作用が知られていますので、人への影響の如何についても注目がなされたわけであります。
 かくして、WHO/IPCSでは、3年ほどの年月をかけて、実態に対する文献調査を行いまして、各国にピアレビューを出しまして、最終出版をいたしました。
 本邦訳もまもなく厚生労働省関連のホームページに出る運びとなっております。ここで、アダルトでは影響を受けにくいようであること。胎生期と新生児期の成熟過程では、不可逆的な影響を及ぼす可能性があるとまとめられたことについては、御承知のとおりであります。以上のような背景に立ちまして、当研究班では、お手元のポンチ絵にもありますように、内分泌ホルモンリガンドが働くことがある程度あらかじめ知られておりますところの、高次生命系、すなわち神経系、生殖ステロイド、核内受容体系、及び免疫系に注目して、これらの範囲で研究を開始いたしました。
 そのコア部分では、低用量問題を共通のプロジェクト課題として位置付けることといたしてまいりました。
 初めに、低用量プロジェクトの一つとして、ビスフェノールAを中心にした関連の文献調査が取り組まれております。既に御紹介いたしおりますように、従来の NOEL や NOAEL に対しまして、かなり低い部分でいろいろなエンドポイントの変化が認められているということがございます。これは、ビンクロゾリンに関するものであります。
 ここにごらんいただいている文献は、一昨年ピックアップしたものでありますが、いずれも μg/kg オーダーの変化でございますが、種々のエンドポイントで、ビスフェノールAの NOEL が 50 mg/kg というような値ですので、それと比較しますとかなりの違いがあるということになります。
 EDCでは、ビスフェノールAを含めて、LD50 と NOAEL の間に比較的大きな乖離が見られます。ビスフェノールAの場合、NOAEL は、先ほど申しましたように、50 mg/kg という値であります。これは、先に見た種々のエンドポイントとの乖離は大きく、受容体原性の新しい作用の特徴と考えられます。
 ビスフェノールAの文献調査の中では、血液透析を受けている腎障害患者がポリカーボネート樹脂性の装置を使っておりまして、これがビスフェノールAの高暴露集団であることが分かっております。
 これらにおける差し当たりのベネフィットはリスクを上回るものであるということが当然判断されるわけですが、合わせてこれに対応する代替品の開発研究が期待されるところであります。
 今回の調査では、ビスフェノールAに関する報告は、一挙に 216 件に文献は増えておりますが、今その内容の分析中でございます。
 松井班員のお仕事では、食品中にもダイオキシン受容体を介して、生体シグナルを惹起するものがあることが分かりました。シグナル作用に応じて幾つかのタイプに分けられる中で、インディルビン型と呼ばれる、こうした食品類を含むものにつきましては、サイトクロームP450 の 1A タイプの誘導によって、代謝されやすいということが分かりました。ひとまず問題がないものと考えていただいてよかろうと思われます。
 次に、低用量プロジェクトには、発がん性の如何とその低用量域での作用機序に関する研究が行われております。福島班員は、ベンゼンヘキサクロライドを用いた発がんの検討を行っておりますが、低用量域で非線形の用量相関を見ておりますが、詳細については今回は割愛いたします。
 神経・行動系における結果を御紹介いたします。これは、菅野班員によるものですが、神経系のステムセル(幹細胞)にはERのα受容体もβ受容体も双方発現していることが分かりましたが、これらの細胞にERの受容体が発現していることの生理学的意味は、十分には解明されていないと思いますが、DESによるモデル実験レベルでのことという前提で、神経幹細胞の分化への影響を修飾するということが明らかになりました。
 また、班員の中では、行動の面で粟生班員が行動に関する結果を出しておりますが、これについては、省略をさせていただきます。
 免疫・感染防御系については、Tリンパ球系とBリンパ球系に分けて検討が行われております。Tリンパ球系の話は割愛いたしますけれども、B細胞系でも低用量作用が山崎班員によって観察されております。
 ビスフェノールAの作用で、B細胞系が産生する、インターフェロンγというサイトカインがございますが、これを測定いたしますと、10-4 から 10-8 までのオーダーで、対照と比べてさまざまな、上がるもの、下がるものなどが観察されておりまして、この下の結果は、裏付け実験ですけれども、このリンパ球内のカルシウムイオン濃度の上昇を引き起こすこと、また、併せてこうしたタンパク質のチロシン酸化を引き起こしているということなどがありますので、それなりの生体作用を誘起しているものと考えられております。
 次は、生殖・核内レセプター系でございますが、これにつきましては、まずエストラジオールやノニルフェノール、ベンソフェノンなどの投与後の遺伝子発現を解析いたしますと、エストロジェンの低用量暴露から高用量暴露にわたって、発現パターンの間には、用量に応じて発現が上がる遺伝子が増えるという傾向があるものの、発現強度に応じたアナログな変化はここには認められません。むしろ、高用量に関する限りそれに限定してノニルフェノールと似たようなパターンとも受け取れる面があるという結果です。
 ベンゾフェノンに関しましては、そのパターンが似ておりますが、発現が弱いというような印象を与えております。これらについては、今後の検索に待たれるところがあります。
 加藤班員の研究では、AhR、いわゆるダイオキシンレセプターには、異物応答配列に結合するもの以外に、こうしたエストラダイオールの非存在化では、コアクティベーターを伴って、ERα、ERβと結合して、遺伝子の発現を引き起こしたり抑えたりする、すなわち女性ホルモン用に刺激をしたり拮抗したりする、そういった発現経路があるということが発見されており、これが「ネイチャー」に発表されております。
 ゲノミクス支援事業としましては、このほかに五十嵐班員が各班員に対する研究支援を行っておりますが、ここでの成果については割愛いたします。
 最後に、今後の課題でありますが、内分泌かく乱化学物質につきましては、その新しい作用機序ゆえに、従来型のコンベンショナルな試験法で、検出ができないというようなことがあることが分かってまいりました。その adverse effect もどういう意味を持つものか分からないところがございます。早期腟開口であるとか、性早熟 (prematuration) であるとか、といった現象は、一面で早期老化を引き起こして、実験動物学的にはエピジェネティック発がんの亢進につながる可能性も指摘されてきております。しかし、今朝ほどは、そういったことはないというデータも示されておりまして、まだはっきりしておりません。
 多くの成果が上がってきていると思いますが、他方、現段階で御報告できるのは以上のようなところで、まだ本質的なところで分からない点があると言わざるを得ない状況にあります。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。どなたか御質問、御質疑ございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、また後ほどありましたらお願いいたします。

○事務局
 ありがとうございました。井上先生の方には、低用量問題ということで、基盤的な文献調査も含めて進めていただくことになっております。
 それでは、続きまして、試験スキームにつきまして、菅野先生の発表をお願いいたします。菅野先生には、菅野班と分担研究者になっている今井班、それから小野班についてまとめて御発言いただきたいと思います。

○菅野委員
 では、試験スキームについて説明させていただきます。この4種類の班を取りまとめで発表させていただきます理由には、この試験スキームを過不足なく分担して、この4つの研究班が双方的に連絡を取りながらやっているという事情がございまして、まとめて発表する次第であります。
 全体的な目標は、内分泌かく乱性を検討する必要があるとされる数万種の化合物に対して、ホルモン活性に焦点を置いたスクリーニング手法の開発と確立を進め、もって詳細試験に資する優先リストの作成を進めるということと同時に、詳細試験、あるいは確定試験の開発を並行して行う。これすべてに関しまして、ガイドライン化に関わる諸検討も進めるということでございます。
 背景として、国内外の状況がどう推移したか、そのスキームをつくる大本になりました受容体原性毒性に関して、もう一回簡単に御説明し、試験法スキームをもう一度、拡張型の方でございますが、説明させていただいた上で、先に話を進めさせていただきます。
 国内外の状況ですが、国内、厚生労働省、経済産業省が、米国EPAの立場とほぼ同様の考え方を取りまして、身の周りに数万種類ある化合物をどうするかというスタンドポイントで始まりました。
 これに対しまして、環境省及び農水省は、先にもう目の前に化合物があるという立場からスタートされております。いずれにしましても、1998、1999、2000辺りにかけましては、特にスクリーニング法に関しましては、実験者レベル会合等々、横の連携を取りまして、スクリーニングの手法をまず開発し、詳細試験の方を開発するという立場を取りました。
 その成果のうち、特に試験法、スクリーニング法に関しましては、各省庁との連携がうまくいった項目、特に子宮肥大試験とかハーシュバーガー試験でありますが、これらはすべてOECD、WHOの方にフィードバックがかかったという経緯がございます。
 受容体原性の方でございますが、当初からエストロジェニックなもの、アンタイアンドロジェニックなものが世の中にあるということが疑われまして、これらはまず受容体を介しているだろうと。それ以外に、抗甲状腺、こちらはどうも受容体ではなくて、サイロイドペロオキシダーゼ阻害がメインかもしれないという話でスタートしました。
 その後、エストロジェン、アンドロジェン、甲状腺受容体、更にはRXR、PPAR、AhR、ダイオキシン受容体ですが、このようなものに視野が広がってきた経緯がございます。
 内分泌かく乱問題を受容体原性毒性としてとらえることができるというのは、我々の基礎とした立場でございますが、要するに、化学物質でホルモン活性があるものは、受容体を介した影響を起こす。であるから、内分泌かく乱はそのような活性物質で有害性を示すものであるから、受容体を介した毒性というものを定義できるということであります。
 その受容体を介した影響をまず見るためのスクリーニング試験法を構築し、受容体原性毒性を確定するための詳細試験を並行して開発することになったわけです。
 スクリーニングのためのチェックポイントは、細胞質の中の受容体にリガンド分子が来て、核の中のDNAの特定のところに行って転写系が動くという、この古典的な知識の中で利用できる何点かを拾ったということであります。受容体結合にイン・シリコ(in silico)、転写にはレポーター・アッセイ、その先のタンパクまで行くところを見やすくするために、子宮肥大、ハーシュバーガー試験を採用したということであります。
 これを表わしたスキームがこちらでございます。優先リストをつくるために、この3つのシステムを使います。優先リストの中身はお手元の図では見にくくなってしまっているかもしれませんが、エクセル表のような表を考えていただきまして、25万種類の化合物が縦に並んでいるところに、いろいろな試験のデータが隣のカラム、次のカラムと入力されていって、それらデータに関してソーティングを実施していくと、データが豊富でかつ有意な化合物が上位に浮上してくることになります。この浮上しきたものを詳細試験に掛けるというストラテジーでございます。
 このスクリーニングの部分の上2つの○(in silico および in vitro)を、私が主任研究者として担当させていただいた、ハイ・スルー・プット・スクリーニング研究班が分担しました。また、スクリーニングのうちの in vivo 、及び詳細試験に関しまして、今井班及び小野班が担当する様になっております。この両方のデータを基に優先リストができるというストラテジーでございます。中身は何回もこちらで御紹介しておりますので、駆け足にいたしますが、in silico はドッキングモデル、in vitro はHela細胞等々を用いたレポーター・アッセイ、もう一つセルフリー系としては、いわゆる表面プラズモンの共鳴法なども使ってバックアップに使っております。in vivo は、子宮肥大試験、及びハーシュバーガー試験。ターゲットは、子宮、あるいは前立腺等々のものでございます。
 成果の概要をひとまとめに簡単にお示ししますと、お手元のものにはまだミスプリがございますが、バーチャルスクリーニングは 20 万ケミカルについて何回か試しておりまして、上位 2,000 化合物ぐらいが選択されるという形になっております。レポーター・アッセイはここに掲げたとおりでございまして、そのERとERE、あるいはSRC1等々、LxxLL配列との相互作用も含めた検討も進んでおります傍ら、in vivo の方のデータも着々と増えているという段階でございます。
 なお、ここでは多省庁間で協力させていただいている実験者レベルでのデータのダブりは含まれておりませんので、全省庁を合わせると更にデータは豊富になっているはずであります。
 ここに、ガイドラインに関しての概要を簡単にお示しします。今まで実施してきました物の中でスタンダードとなり得る活性の弱いもの、および強いものが、大体揃いつつありますので、これらガイドラインの基準に使用できるというところまで来ております。
 国際的な貢献といたしましては、QSARsに関してECVAMから招聘が参ったり、ノンアニマル(non-animal)という in vitro の系に関してのOECD会合の座長が回ってきたり、in vivo に関してもOECD子宮肥大試験テストガイドライン化のリードカントリーを分担するという形で、各省庁連携した作業がうまく行ったというふうに考えております。
 問題の詳細試験でございますが、従来法ではなかなか扱えないエンドポイントがたくさんあるということで、基礎を固めてまいりました。内分泌、神経、免疫のネットワーク、即ち、胎児期から大人になる間にこのネットワークが成熟する過程に対する影響の問題であるというとらえ方をいたしまして、こういう齧歯類一生涯試験というものを提案させていただいて、これを進めていこうということになりました。
 「一生涯」とは、発生、発達、成熟から老化まで観るという概念でございまして、毒性指標も神経・行動、免疫、内分泌、先ほどの井上先生の方でもありましたが、これらすべてを包括的に観られないかということでありまして、従来の多世代試験の指標に限定されないで構築していくものであります。
 今後の予定でございますが、スクリーニングの方は取りこぼしの無い様に対象を拡大していきたいと考えております。評価すべき受容体系がエストロジェン、アンドロジェン以外にもたくさんあるということは昔から分かっておりましたので、そういうことであります。また、シグナルクロストーク、先ほどダイオキシンとエストロジェンのクロストークの問題が出てまいりましたが、このようなものへの対応強化、更に、低用量問題への対応強化ということで、スクリーニングに関しても強化させていただきたいと考えます。
 詳細試験については、引き続きこの試験法を完成させたいということであります。
 強化スキーム案は、ここで初めてお示しするものですが、in silico、in vitro、すべて今まではER系(エストロジェン受容体系)とAR系(アンドロジェン受容体系)のみでありましたが、TR系(甲状腺ホルモン受容体系)、AhR系(ダイオキシン受容体系)、その他利用できるものはすべてここに入れていきたいと考えます。1つここに新たに加えましたのは、パスウェースクリーニングでありまして、ほぼ手中に収めつつあるマイクロアレーテクノロジーを簡略化した上で導入していくという案でございます。これが、スクリーニングの方の強化案でございます。
 一生涯試験の概念図でございます。上段が、今までの多世代生殖試験であるとしますと、こういう親の代、子の代、その次の子の代について、主に子どもができるか、あるいは奇形が発生するか、と言ったかなり強力なエンドポイントに関してのシステムであったのに対しまして、こちらの一生涯試験の概念は、受精、出産、離乳から死ぬまでの間に、先ほど申し上げた神経、内分泌、免疫の要点を包括的に取り込んでいきたいというものであります。
 具体的に今、計画されておりますのは、この詳細試験の部分でありますが、神経・行動に関しては、ビスフェノールAの妊娠期、授乳期暴露による行動異常の行動評価、及びオペラント実験における高次機能の評価、あるいは脳の分化そのものを見るというものを検討する予定であります。
 免疫に関しましては、機能異常だけを観ても、なかなか有害影響を認定しずらいものですから、免疫異常の発症に影響するか否かというアドバースエフェクトとしてのエンドポイントを設定した免疫毒性学を導入しようと考えております。内分泌に関しましては、内分泌機能、生殖器発達、老化など、生殖能そのものではなく、例えば、人間でいう閉経が早くなるなどの、生理的機能の修飾という側面も重点的に見ていきたいというふうに考えております。
 以上のまとめです。受容体原性毒性の立場から試験スキームを構築してまいりました。今後、シグナル・クロストーク問題、低用量問題等に的確に対応できる体制の確立へ向けて更に、スクリーニングを強化させていただきたいと考えます。
 詳細試験に関しましては、繰り返しになりますが、一生涯を観る、それも神経、内分泌、免疫のネットワークとしての高次生命系として観るというもの開発を、それに必要な技術支援も含めてやっていきたいと考えます。
 また、これを基にいたしまして、今までにも実績は多少ありますが、内分泌かく乱の試験法に関するガイドラインの開発の方へも更に貢献したいと考えます。インターナショナルには、OECD等のバリデーション、あるいはそこで取り上げられる新しいアイテムについても評価していけるような受け入れ体制を常に持ったまま進みたいということであります。
 以上です。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、下東先生、お願いします。

○下東先生
 九州大学の下東です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私どもも多数の化学物質の内分泌かく乱性を迅速に精度よくスクリーニングする方法を開発することを目的に取り組んでおります。
 私どもの方法の眼目は、今、御紹介がありました、化学物質が受容体を介する場合、受容体に結合するかどうか、そして結合する場合ホルモン活性があるかどうか、これを別々に試験するわけですが、できればこれを統括的に1つのアッセイで試験できないか。
 更には、ホルモン活性がない場合、抗ホルモン活性、すなわちアンタゴニスト活性があるかないかまで含めて評価できないか、このような観点から取り組んでおります。
 そして、これに私どもが開発したホルモン受容体にリガンド、あるいは化学物質が結合するとコンホメーションが変わる、これを感知、センシングするような抗体を用いて何かこういう統括的なアッセイ法が組み立てられないか?この方法をかく乱性の順位づけに応用しよう!と、そのような観点から取り組んでおります。
 その方法の原理は、このスライドに示しますように、これは核内受容体、ヒトでは48種類あると言われておりますけれども、これにリガンド、アゴニストが結合すると、このヘリックス12と言われるものの構造が変わること、俗にふたをするようにコンホメーション変化をするというふうに言われますけれども、このような構造変化が起こることを利用したものであります。
 アンタゴニストの場合は、このホルモンの場合と違って、このふたの位置どりが違うと言われております。もしこのヘリックス12に対する抗体を用いれば、こういう構造変化によって隠れた構造、あるいは新たにさらされる構造があるとすれば、これらを識別するような抗体としてアッセイに用いることができるだろうと思われます。このような原理に基づいて、エストロジェン受容体について、この抗体をつくって調べましたところ、非常にうまくいくということが分かりました。エストロジェン受容体の場合、このヘリックス12の後に、この3倍ほどの長さがあるんですけれども、それらを抗原にして抗体を作製しても、そういううまいセンシングは起こりませんで、ヘリックス12についてのみセンシングが起こるということが分かりました。
 この方法のもう一つの利点は、48種ある核内受容体のほとんどすべてがこういう原理でリガンドの受容、ホルモン活性の発現をしていると考えられることです。したがって、この方法が確立すれば、ほかの核内受容体にも適用可能ではないかと考えられる点であります。
 ここにアッセイの原理を示しておりますけれども、抗体がもしできた場合、受容体のみの場合とこれに化学物質を加えて構造、コンホメーションが変化した場合、抗体の認識が違うことになります。この違う差を、例えば、ある受容体濃度を固定して測定すると、このような二次解析ができます。抗体応答で何%ぐらい応答するのか?この程度と、エストロジェン受容体に関して言うとレポータージーンアッセイのホルモン活性と非常によい正の相関があります。それから、この応答を示すのに有効な 50% の応答を引き出す化学物質の濃度が、化学物質の受容体結合試験の IC50 と非常によく一致すること、すなわち、正の相関があるということが判明しました。
 私どもは、エストロジェン受容体について、既に約千種の化合物、化学物質について受容体アッセイをやっておりまして、結合に強弱ありますけれども、結合が予想された 503 化学物質についてこのセンシングアッセイを行いました。その結果、非常に強く応答する化学物質群、ある程度強く応答する物質群、かなり弱いものの応答がはっきり認められる物質群、そして、かろうじて応答が認められる物質群、そして全く応答しない物質群、これらに分けられることが分かりました。
 例えば、最初のある程度応答が認められる物質群について、EC50、これが受容体結合能に相当するパラメーターで、抗体応答率、これがホルモン活性に相当するものと思われるパラメーターですが、これでプロットすると、このような相関が得られます。
 ポリクローナル抗体を用いていますので、これがどのように実際のホルモン活性、あるいは抗ホルモン活性と相関するかという問題がここで出てきます。そこで、私どもはモノクローナル抗体を作製して、こういったものを解決することができないかということで、同様に取り組みました。
 約 400クローンの中からこの実験では3つのクローンが得られ、これらはエスラジオールについて、このような応答性で感応しました。
 例えば、1のものはアゴニストだけに感応するようなものでした。これを用いまして、先ほどのアッセイをやりますと、ポリクローナル抗体を使った場合と非常によい正の相関があって、しかも感度が約十倍ほど上昇するということが分かりました。
 現在、これを用いて一連の化合物の再評価をやっております。抗体としては、アンタゴニストにも感応する抗体が得られておりますので、アゴニスト、アンタゴニストを区別してアッセイする試験系を組み立てようとしております。
 これが私どもの年次計画なんですけれども、このほかこの原理を用いてグルココルチコイド受容体、あるいはAR、TR、PR等についても同様に現在取り組んでおります。これは、環境ホルモン問題というのが、48種の核内受容体すべてに展開されるのではないかという危惧があり、こういう原理の応用と展開で、それぞれの受容体について化学物質を評価していこうということで取り組んでおります。
 以上でございます。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、名和田先生、お願いします。

○名和田先生
 九州大学の名和田と申します。よろしくお願いいたします。
 私たちは、内分泌かく乱物質の効率的なスクリーニングシステムの確立を目指しております。
 1つは、アロマターゼ活性による影響物質のスクリーニング、もう一つは、アンドロゲンレセプター、これはin vitroin vivo でやっています。それから、もう一つがエストロゲンレセプターの作用に対するスクリーニングでございますが、これらを御紹介させていただきます。
 これは、私たちが確立しました、ヒトの卵巣顆粒膜細胞がん患者の腹水から樹立しました、非常に高いアロマターゼ活性を持った優れものの細胞でありまして、このKGN細胞を使いまして、今まで内分泌かく乱物質と言われています55種類を調べますと、確かにスズは転写活性を介してアロマターゼ活性を抑えるとが分かりました。ベノミルは、逆にアロマターゼ活性をあげるという興味ある事実が見つかっております。
 ベノミルは、精子数の低下、精子形成不全を惹起する等報告されています。ベノミルの代謝物としてのカルベンダジムが問題になっておりまして、私たちの系でもこのベノミルとカルベンダジムは共に、アロマターゼの転写活性、メッセンジャーRNA、それからタンパクを調べましたが、すべてこれらを増加させる事を明らかにしました。このカルベンダジムとベノミルは、同じような作用を惹起するということが明らかにあり、代謝物が非常に大切だということを私たちは証明しております。
 私たちは、それでは非常に大量に、簡便に、そして感度の高いアロマターゼアッセイ法ができないかということで、大塚アッセイの株式会社と共同研究を行い、KGNを用いたELISAによるアロマターゼ活性測定法というのを確立いたしました、大塚アッセイはエストロンの非常に鋭敏なELISA法を確立しております。アロマターゼ活性を測定するために、アンドロステロンを基質として、エストロンを測定してもいいわけです。非常に感度が高いために、KGN細胞はわずか 104 で十分であります。これを多くのプレートに撒きまして、調べたい化学物質をここに添加いたします。そして、基質のアンドロステロンを加えまして、そしてエストロンを測定するということです。
 このアッセイ系の非常にいいところは、同時にこの化学物質が細胞にトキシックに働いているかどうかということをMTTアッセイでできるということであります。こういうすばらしいアッセイ系を確立させていただきまして、現在日本で最もよく使われておる産業化学物質の 100 種類を検定してみました。ベノミルのように活性を上げるものは見つかりませんでしたけれども、このアロマターゼ活性を 50% 下げるものが5つ見つかりました。実際、トキシックがどうかを調べますと、2つがトキシックでありまして、結局 100 種類のうち3つアロマターゼ活性を抑制する物質が見つかりました。チオフェノール、それからブメトリゾール、それからヘキサブロモサイクロドデカンというものです。それで、in vitro で見つかりましてこれら化学物質が in vivo でどのような作用を示すかが次のステップの問題になります。アンドロゲンレセプターに関しましては、私たちはいろいろなスクリーニング法を確立しております。1つは、現在よく使われております、転写活性を見るものです。もう一つは、共焦点顕微鏡を使いまして、細胞の中でアゴニストが存在するとレセプターはこういふうにクラスターを形成するということ、アンタゴニストが存在するとクラスターはできないという現象を使いまして、新しいアンドロゲンレゼプターをブロックするかく乱物質のスクリーニングを確立しております。
 もう一つは、ヒトの前立腺がんは、アンドロゲン依存性です。アンドロゲンレセプター変異(T877A)は、リガンドの特異性が喪失するということが証明されています。内分泌かく乱物質が結合するのではないか検討しました。面白いことに55種類の内、ビンクロゾニンが見事に結合してクラスターをつくって、転写活性を上げて、前立腺がんの増殖を促進するということが見られまして、前立腺がん細胞に作用する化学物質のスクリーニング法も確立しております。
 それでは、in vivo での作用を検討するため、私たちは2世代検索ということで、というのはアンドロゲンレセプターが非常に胎児の初期からあることを注目いたしまして、妊娠した母親に抗アンドロゲンを飲ませ、その胎児の始原生殖細胞をはかってみますと、有意にコントロールに比べてビンクロゾン、フルタマイドにより始原生殖細胞が減るということを発見いたしました。in vivo においての2世代における抗アンドロゲンの作用を検定するスクリーニング法を確立しております。
 エストロゲンレセプターにつきましては、多くのエストロジェニックな内分泌かく乱物質は、ERα、β、ともに作用します。ところが、私たちはERαのみ特異的に作用する非常に強い、ブチルベンジルフタレイトを見つけております。柳澤先生たちによりまして、このブチルベンジルフタレイトは柳澤先生らによりクローニングされましたコアチクベータ、P68/72がリクルートする事が明らかになり、そして、レプレッサーを外すことによって、乳がんの増殖に影響するという新しい事実が明らかになりました。ERαに特異的に作用する内分泌かく乱物質も今から重要になってまいります。
 アンドロゲンレセプターに作用する化学物質の in vivo におけるスクリーニングということで、私たちはヒトの前立腺がん細胞に、アクチビンレセプター遺伝子を、細胞にトランスフェクトした、いわゆる恒常発現系を作成しています。これをヌードマウスに移植しますと、このアクチビンレセプターが非常に発現した群が広範囲に腹腔内リンパ節に転移しております。ところが、これは発現ないのは全然リンパ節転移を起こさないという興味ある事実が明らかになりました。これに去勢をしますと、転移が起こったのが全く起こらないということが分かりました。この転移モデルを用いまして、抗アンドロゲン作用を示す in vivo のスクリーニングができるのではないかと考えております。これから私たちが進めていくのは、私が確立しましたアロマターゼアッセイを使用して、100 種類の、日本で最もよく使われている産業化学物質の中から、チオフェノール、ブメトリゾール、ヘキサブロモサイクロドデカンを発見しましたので、これを in vivo でどう影響するかというのを進めていくということと、もう一つは次の 100 種類をスクリーニングするということです。
 それから、私たちは、ARの in vitroin vivo 系で非常にいい系をつくっておりますので、今、使われている 100 種類の化学物質をまずは in vitro でスクリーニングして、その中で引っかかったのを in vivo の中で確定していきたいと思っております。
 以上であります。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、舩江先生、お願いいたします。

○舩江先生
 我々の研究の全体図をここに示しています。まず最初に、アメリカの五大湖のPCBに汚染された魚を大量に食べたお母さんから生まれてきた赤ちゃんに知能低下が見られるという報告があります。また、ほかにも化学物質がこの知能低下に影響するという報告がありますので、我々は脳発達異常に対する化学物質の影響を調べました。
 これまで我々が行ってきました実験において、ビスフェノールを胎仔性にマウスに投与いたしますと、生まれてきた子供に行動異常が見られました。また、その脳内のドーパミン量が低下しているという事実を見つけました。これらの結果は、この化学物質が、後で説明しますが、膜のERに作用して起こったものと考えております。
 このように、ビスフェノールのような化学物質が中枢神経系に影響を及ぼすということが予想されましたので、我々は、このビスフェノールの結合タンパク質、あるいはレセプターというようなものがラットの脳内に存在すると考えまして、それを精製することを始めました。我々は、過去にAhレセプターを生成した経験がありましたので、今回はビスフェノールをリガンドして、アフィニティークロマトグラフィーで精製を行いました。精製されてきたものは、プロテインジサルファイドイソメラーゼ、PDIというタンパクと同一のものであることが判明しました。これはすでにもう報告されているもので、このPDIというのは、甲状腺ホルモン結合タンパク質して報告されているもので、このPDIというのは、甲状腺ホルモンのリザーバーであると報告されております。
 したがいまして、このビスフェノールのこういうものに対する影響は、甲状腺ホルモンを経由する、そのようなメカニズムであろうと考えました。 いずれにしましても、こちらのER、こちらのPDI、これらはノンジェノミックに起こる反応であろうと考えております。
 そこで、我々は、こういう影響を調べるために、化学物質の同定、順位付けを、このようなシステムで行いました。また、これらの作用機序、またヒトにおいてどのような感受性を示すのか、そういうことから中枢神経系への影響予測・回避する方法の開発を試みました。今日はその一部の結果をお示ししたいと思います。
 これは、甲状腺ホルモンかく乱の1つの評価法として考えたものですが、この甲状腺ホルモンのリザーバーであるPDIと、甲状腺ホルモン作用T3を結合させておき、そこへ試験する試薬を加えて、そのときのT3結合の阻害活性を調べたものでいわゆる結合実験であります。今回はラットとヒトのリコンビナントのPDIを用いて行いました。
 ラットの場合は、ここに示しましたようにオクチルフェノールとか、これら環境ホルモンの可能性があると言われている30種類ぐらいのものを調べました。その結果、オクチルフェノールとか、難燃剤で知られておりますテトラブロモビスフェノールA、あるいはテトラクロロビスフェノールAなどが、低いKI値を示しまして、甲状腺ホルモンかく乱の可能性を示しました。
 ヒトにおきましても、ラットと同じような傾向でありました。
 こういうことから、今後ヒトでの甲状腺ホルモンかく乱の実験を行う上におきまして、ラットでのデータがそのまま適用されるのではないかと考えられます。
 これらの化合物の構造式を次に示します。これは甲状腺ホルモンT3ですが、我々の今回引っかかってきました化合物は、いずれもフェノール基を甲状腺ホルモンと同様に有しておりました。
 もうひとつの評価法としまして、ドーパミン放出に関する実験ですが、PC12細胞を用いて、これらの試験薬をその系に加え、細胞外にでてくるドーパミン、実際は細胞内のドーパミンを測定いたしました。
 こちらに並べてある化合物は、有効であったもの、ドーパミンが放出されたものです。こちらは、無効のものでした。このビスフェノールの中で、ビスフェノールの生体内代謝産物として知られております、MBP、これは非常に高いエストロゲン作用を示すということが知られておりますが、この物質が強力にドーパミンを放出するということが分かりました。
 このドーパミン放出のメカニズムを考えるに当たって、我々は、このような実験を行いました。ビスフェノールをこのPC12細胞に加えますと、細胞内のドーパミンは放出されて細胞内のドーパミン含量が低下いたします。そのときに、このエストロゲンレセプターのインヒビターとして知られております、このICIを加えますと、これが元へ戻ります。ということは、ビスフェノールがこのエストロゲンレセプターを介してそのような反応をしているということが予想されます。
 また、蛍光ラベルしたBSAに結合したエストロゲンとBC12細胞をインキュベーションしますと、このPC12の膜に蛍光強度が観察されました。
 今後は、この膜のERに対する、もう少しほかのケミカルの様子を調べること。また、この作用機序、これを神経病理学的な面から検討しております。
 また、ヒトに対する実験ですけれども、母乳中のビスフェノールの濃度と新生児の甲状腺ホルモン濃度の関係など調べていきたいと考えております。そして、最終的には、これらを回避する方法も考えておりますので、次回には必ずいい開発法を示したいと思っております。 以上です。

○伊東座長
 ありがとうございました。最先端の新しい成果を御発表いただきましたが、御質問たくさんあろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○阿部委員
 先生にお訊きしたいんですが、タモキシフェンは、ヒトではアンタイエストロゲンですけれども、ラットではエストロゲン作用を示すアゴニストなんですね。そういうふうに、レセプターというのには種差があるのか。先生なんかの実験では、どうなるのかをお教えいただきたいんですが。

○下東先生
 下東です。種による受容体でどういう応答の差が出るかについては、まだ今のところ検討しておりませんで、今後そういう、特に差があるというものがあれば、特に取り上げて検討していきたいと思っています。

○井上委員
 下東先生に質問が出ましたので、私も1つ伺いたいと思いますが、ビスフェノールAのアクティブサイト、バインディングサイトは、AF1とAF2の両方にまたがるわけですけれども、そしていわゆるエストロゲン(エストラダイオール)と異なった作用の仕方をすることが知られているわけですが、先生の系でアッセイすると、ビスフェノールAなどはどんな現われ方をするのか教えていただきたいと思います。

○下東先生
 ビスフェノールAについては、現在のところポリクローナル抗体だけで見ているんですけれども、応答がほとんど見られないという部類になっております。今後、モノクローナル抗体でやっていくとき、特にビスフェノールについては詳しく試験していきたいと思っております。

○青山委員
 もしかすると事務局に伺うことになってしまうかもしれないんですが、それぞれの先生方がたくさんの手法で優先的に選ぶべき物質を選んで、そこから逆に言われるようなところへというふうに試行しておられるようですが、これは悪く言うとそれぞれの先生方がそれぞれの先生方の個性で、4種類でも5種類でもそういうものをつくっていただいて、厚生労働省はおまとめにならないというようなスタンスでいらっしゃるのか、あるいはどこかへ集約して、そろそろもう五年以上経っているんですが、いまだ一つもこういうリストのようなものは公表されてないんですけれども、その辺りもう方向が見えましたらお伺いしたいんですけれども。

○事務局
 これは事務局の方からお答えをさせていただきます。まさに、後ほど御説明をさせていただきます。取りまとめがございますけれども、この中で試験スキームということで、作業班の班長は菅野先生にお願いすることになっておりますが、この班の中に今回御発表いただいた先生方を含めまして、中で御検討いただくということになりますので、当然1つに集約されるということではなくて、多角的な作用機序などを見ていくことになるので、そこは複数になってくる可能性もあるかと思われますが、今後取りまとめをしながらその辺を検討させていただきたいと考えております。

○松尾委員
 2つばかり御質問したいと思います。
 1つは、下東先生になんですが、ヘリックス12を抗原として抗体をお作りになったと、御説明ありましたが、あれは受容体のポケットのふたなんですね。ふたの方は、カルボン酸が2つか3つ出ていますね。そちらを認識する、そういうものなんでしょうか。
 それと同時に、もう一つ、ではアンタゴニストの場合、しからばどこを認識しているのか。ヘリックス12、これはコアクティベーターをリクルートする非常に面白いところなんで、どこを認識した抗体なのか、その辺がアゴニスト、アンタゴニストを見分ける、非常に面白いところだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○下東先生
 抗原に使ったヘリックス12というのは、受容体の中ではαヘリックスをきちんと取っていると思うんですけれども、抗原として合成したものを、例えば、CDで取ると、TFEを加えると、すなわちある環境にするとヘリックスを取りやすい傾向が見えますけれども、それ自体は割とランダムな構造を取っています。
 したがって、普通抗体はランダムな構造にできやすいと言われておりますので、いろんな抗体がポリクローナル抗体では混ざっていると思われます。
 先生が御指摘のように、私どもが今、思っているのは、そういう抗体、ポリクローナル抗体の場合は抗体のミックスチャーであろうと、ふたをするような構造変化が起こりますと、具体的にはヘリックス12は両親媒性ヘリックスで、ふたの内側に、すなわちリガンド側に向く方は疎水性で、外側に向く方が、今、先生、御指摘のように、カルボキシル基を持つ親水性側だと思います。
 したがって、差が出てきたというのは、多分に疎水性を認識していた抗体があって、その分認識が不十分になってああいうセンシングを起こしたんだろうと思っています。
 それから、アンタゴニストを認識する抗体については、現在のところ1種類しか得てないんですけれども、これはタモキニフェンを認識したんですけれども、分子構造でX線で解析されたもので比較しますと、ヘリックス12のちょっと手前にあるロイシン残基がふたをした状態で露出しているか隠れているかという差があることが分かりました。
 多分、このモノクローナル抗体はそれを識別しているんではないかと想像しております。 そういうような識別は、先ほど言いましたように、原理上から、隠れる構造、さらされる構造という微細な構造を、どのようにうまく識別するか。それから、そういう抗体をいかに選別できるか?そういうものにかかっていると思っています。

○松尾委員
 もう一つ、また哲学的だということでお叱りを受けるんですけれども、菅野先生の確定試験についてお伺いしたいと思います。ちょっと感じは人間研究というふうな感じになってしまいまして、もともと内分泌系は、間接、直接につながっていると思うんです。クロストークにしろ、カスケードにしろ、全部人体そのものにつがなっていると思うんですけれども、それを恐らく全部やらないと、本プロジェクトは終わらないような感じを受けたんです。まさに人間研究だと思うんですが、その辺、ものすごく重い、確定だからいいのかもしれませんけれども、アッセイになると思うんです。
 肝心の、例えば、この場合ですと、一世代はちゃんとカバーしていますけれども、もう一世代でどうだというような話は必ずしもカバーしてないような気がいたしますけれども、いかがでしょうか。

○菅野委員
 2世代はカバーしておりません。そのとおりです。1つには、米国内のNCTRで進んでいる多世代実験の結果が出るということがあったので、その目的とするところにはあえて手を付けてないという言い方ができます。
 それに関しては、もしそちらの方の所見のメカニズムが逆にわかれば、一生涯試験の方のメソドロジーさえ固まっていれば、あとで検証はできるというふうに考えております。NCTRの方でやると言っていた5世代試験が、重要だと言っていた点は多分、先生と認識が一致していると思います。その要点は、子どもができた後、それを死ぬまで見る、あるいは発がん性を見るという亜群が設けてあると言う点です。我々は多世代にわたり観察するというプロジェクトは組まなかったわけですけれども、一生涯を診るという点はフォローできると、できなければいけないような一生涯試験系をつくるということを考えております。

○伊東座長
 ありがとうございました。どうぞ。

○鈴木(継)委員
 これも今の御質問と関連するかもしれませんけれども、阿部委員のおっしゃったのは、脊椎動物の中での種の問題ですけれども、全体が実はヒトの健康を前提にして考えられているわけです。これは特に簡易なので、試験法のスキームに記されておりますけれども、そこら辺で種差の問題をどう考えるのか、これは松尾さんの言う意味での哲学とはまた違った形で、非常に大きなテーマになって、どう裁くかかなり難しい問題になると思いますが、お考えがあったらお願いします。

○菅野委員
 種差に関しましては、実は本日は明確にお示ししていませんけれども、内分泌かく乱の研究の中で、ずっと念頭に置いております。片や毒性試験法の近代化、すなわち不確実係数、安全係数の問題でありますが、これがまさしく種差の問題であります。げっ歯類の実験のデータを人間に適用するときに、一般的な化学物質に関しては、種差10の固体差10、普通100ですけれども、その手続きの近代化を並行して進めております。今、採ろうとしているストラテジーの1つはトキシロゲノミクスになります。分子レベルでメカニズムを解明しない限り種差はなかなか埋まらぬだろうという発想でございます。

○伊東座長
 ありがとうございます。その話になりますと、言いたい方がたくさんいるんじゃないかと思いますので、菅野先生、この会が終わってからディスカッションしていただいたら非常にありがたいと思います。

○伊東座長
 私、そう言いながらちょっと質問させていただきたいんですけれども、1つは、先ほどすばらしい御発表がありましたけれども、下東先生でも名和田先生でもいいんですけれども、低用量の場合、非常に量が少ない場合でも、それはセンシティブにデテクトできるのかということをお聞きしたいんですが。どちらの先生でも結構です。

○下東先生
 抗体を使って、低用量のものができるかどうか、多分モノクローナル抗体でそういう試験はできるかもしれませんけれども、現在のところそういう知見を持っていませんので明確にお答えできません。

○伊東座長
 ですから、比較的多い量で、非常にセンシティブであるということであっても、非常に少ない量というか、我々が一応暴露されるような量の問題についてどうかということのデータを、是非考えに入れて追及していただきたいと思います。

○名和田先生
 in vitro でやる、いわゆるレセプターを介した濃度というのは、1けたも2けたも高いんです。

○伊東座長
 ですから、申し上げたんです。

○名和田先生
 低用量のときですね。私が今、1つ考えているのは、先ほどちょっと出たクロストーク、だから今、いわゆる核内レセプターはいわゆる膜のそういう情報をクロストークしながら、非常にオーギメントされたり抑えられたりするという事実も出ていますし、私たちのところに出ております。ですから、やはり低用量を考えるときは、そこを入れていかないとなかなか難しいだろうということです。

○伊東座長
 ですから、それを是非やっていただきたいということです。

○名和田先生
 はい。ありがとうございます。

○伊東座長
 それでは、最後にもう一方。

○事務局
 続きまして、岩本先生、お願いします。

○岩本委員
 私に与えられました課題は、疫学調査から日本人男性の生殖機能の現状、地域差、個人差、並びに経時的な変化について検討し、化学物質の男性生殖機能への関与の有無を検証することであります。
 本日は、精子の質の問題を中心に、そして一部で測定可能となりました化学物質の暴露状況、そして精液検査標準化ガイドラインについて御報告いたします。
 疫学調査の我々の特色としては、国際共同研究の一環として統一化されたプロトコールに基づいて、国内外の施設でデータが比較できるように精子濃度の測定に関して、精度管理を行いながら実施した点であります。
 対象者は、妊婦のパートナーと若年男性で、本人とその母親が日本で生まれているという条件を付けました。そして、調査項目としてはレジュメでも出ております、このような項目を調べさせていただきました。
 この国際疫学調査の参加国は、EU諸国とアメリカ、そしてオーストラリアであります。
 日本では、川崎/横浜、札幌、大阪、金沢、そして福岡では妊婦配偶者、そして長崎では若年者の調査を行っていただきました。
 疫学調査を行った時期及び期間、そして例数について御報告申し上げます。妊婦のパートナーは、98年から99年に行われて、4都市では、99年から02年にかけて行われました。そして、若年男性では我々のところで2度行いまして、1度は99年から00年です。そして、3年置いて2回目の調査を行い、そして4都市も02年から04年にかけて行っております。
 この若年者の第1回目のときに、季節変動、個人差を見るために、72 名の方々に年4回の調査をお願いしております。そして、この2回目の調査のときに、1年間の精子数の変動、そして個人内変動を見るために、12回の精液検査を 45 人の方にお願いして調査をすべて終えました。そして、参加者合計としては 3,000 名、そして血液、精漿、DNAについては、延べ 3,728 名分の試料、そして 2,352 名の尿を現在凍結保存してございます。
 日本人男性の精子濃度の現状を本日は御報告いたしますけれども、妊婦の配偶者、若年男性とも、5都市間では地域差は認められておりません。
 そして、経時的な変化ですが、2回の調査を行った3年間の間での変化はありません。そして、この3年間で2回の調査を行った方々について、誕生年で9年間の経時的な推移をみたところ、変化はないということでありました。
 それから、季節変動でございますが、2回の調査では春に高い傾向を示しました。しかし、同じ集団を1年間追跡した結果では、変動は認められておりません。
 国内5都市における精子濃度の比較ですが、これは妊婦のパートナーでございますけれども、5都市の間で有意差を認めておりません。
 若年男性2回の疫学調査における精液所見の比較ですが、この2回の間で3年間でデータに有意差を認めておりません。
 出生年次による精子濃度の推移を、若年者の調査から見てみますと、この75年生まれから83年生まれまで変動を認めておりません。
 次に精子濃度の季節変動でございますが、2回の若年男性の調査を行って、春、夏、秋、冬で分けましてプロットした図でございますが、このようにほかの季節に比べて、やや春に高い傾向が見られております。
 一方、1年間、12か月毎月精液検査を 45 人の方にお願いしてみますと、これで見ますと余り1年間で精子濃度の変動はないんですが、個人の変動はかなりあるということが分かりました。そして、これを、春、夏、秋、冬に分けますと、このような図で、季節間で精子濃度に有意差が認められなかったというようなデータでございました。
 次に禁欲期間が精子濃度に及ぼす影響についてお話申し上げます。禁欲時間が 100 時間、200 時間で、それ以上と分けて解析してみますと、禁欲期間が長いと精子濃度が高いということが分かりました。
 そして、ヨーロッパと比較してみますと、日本人の禁欲期間は非常に長いということが分かりました。また日本人とヨーロッパ人とで禁欲期間の精子濃度への影響が異なっていることが判明しました。ヨーロッパ人の禁欲期間の影響が、4日ぐらいまで、日本人では9日ぐらいまで精子濃度が高くなっていました。この禁欲期間を含めて交絡因子で精子濃度を補正しますと、日本人の精子濃度は測定値より低くなると思われます。
 次に、化学物質の暴露状況についてお話します。ダイオキシンの濃度が血液10 cc で測れるようになりまして、若年男性47名について測定しました。一般健常男性の血中ダイオキシン濃度を測定したのは本研究が最初と思われます。
 エクオールについては、このようなデータを示しまして、高齢者になるについてエクオールが高いという結果でありました。
 最後に、国内外の施設の精液検査の結果が比較できるように「精液検査標準化ガイドライン」の本を出版しました。この本には精液検査トレーニング用のサンプルが入ったCDも付けまして、精液検査のトレーニングをしていただき、精度管理に利用してくださるようお願い申し上げます。
 以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。どなたか御質問ございますか。どうぞ。

○押尾委員
 2つお尋ねしたいんですが、大学生の平均値と、それから妊婦配偶者の平均値の間には、どういう差があるとか。グラフが早かったのでよく読み取れなかったんですが、妊婦の方が1億ぐらいですか、学生の 8,000 万弱ぐらいの感じだったので、それについてはどういうふうに解釈するのか。

○岩本委員
 妊婦のパートナーは大体二百数時間の禁欲期間がありますが、若年者の場合にはやはり短こうございまして、七十数時間です。ですから、これを調整しますと、大体ほぼ同じようなデータになろうかと思います。
 現在、国際比較とのことなものですから、我々は相対的な値ということで、川崎、横浜地区と比べて、あるいは日本と比べてヨーロッパはどうかというようなデータを今後出していくつもりですけれども、若年者とを合わすと余り差がないというデータでございます。○押尾委員
 もう一つなんですが、個人変動がかなりあったというお話だったんですが、WHOや何かですと 100 倍ぐらい違っているようなデータもありますけれども、今回の場合は何倍ぐらいまで違っていたんでしょうか。

○岩本委員
 100倍以上の差をみた例もあります。最高値と最小値の差が 60×106/mL 以上あった例は、全体の 45% でした。

○伊東座長
 よろしゅうございますか。それでは、これで発表は終わりますけれども、全体を通じて、一言ここで絶対に発言しておきたいという方がございましたら、どうぞ。
 よろしゅうございますか。それでは、発表会はこれで終わりにさせていただきます。
 この件につきましては、取りまとめということでございますが、いろいろな積極的な御発言もございましたし、事務局の方でいろいろと検討していただきまして、まとめていくということになろうかと思います。

○事務局長
 それでは、事務局の方から、今お話しのございました取りまとめについて御説明をさせていただきたいと思います。資料5をごらんいただければと思います。「中間報告書追補その2の取りまとめについて(案)」というものでございます。
 まず、1番といたしまして、今回取りまとめをいたしますと必要性について御説明をさせていただきたいと思います。この検討会では、これまで2回、中間報告書と中間報告書追補を取りまとめていただいております。特にこの追補につきましては、平成13年12月に取りまとめをいただいたところでございますけれども、その中で行動計画を策定しております。当面2005年までの計画が立てられているところでございますが、一部につきましては、2002年度までを目途としているものもございます。
 実際に、中間報告書追補から一定の期間が経ちまして、厚生労働科学研究を中心に成果が出てきているという理解をしております。
 これらのことを持ちまして、今年度中に中間報告書追補以降の成果を取りまとめさせていただくとともに、取りまとめの結果を踏まえまして必要に応じて先の行動計画の更新、見直しをさせていただきたいと考えております。
 2番では、実際その位置付け、方法、スケジュールなどについて御説明をさせていただきます。位置付けにつきましては、今、御説明をしたように、追補以降に行動計画を踏まえて行われた、調査研究などの成果を取りまとめていただくとともに、今後の行動計画、それから達成目標を示すものとさせていただきます。
 取りまとめ方法につきましては、先ほど発表の間何回か触れさせていただきましたけれども、作業班を設置いたしまして、その作業班で行っていただきたいと考えております。
 構成の方をごらんいただきたいと思いますが、追補の時と同様、5つの柱を重点項目として取りまとめをいただきたいと考えております。
 まず、1つ目として試験スキームです。こちらにつきましては、班長を菅野委員にお願いしたいと思います。そして、その中に参加をする研究班としては、菅野班、小野班、下東班、井上班、名和田班、船江班にお願いをしたいと考えております。
 2つ目の柱でございますが、採取・分析方法でございます。作業班の班長につきましては、牧野班で分析を担当いただいている中沢委員にお願いしたいと思います。
 先ほども触れさせていただきましたが、この作業班には当検討会から青山委員、菅野委員にも御参加をいただきたいと思います。
 3本目の柱は、低用量問題となっております。作業班の班長を井上先生に、そして参加する研究班としては、井上班、この中では副主任研究者の関澤先生にもお願いしたいと思います。それから、小野班、菅野班に御参加をいただきたいと思います。
 4つ目の柱といたしまして、暴露疫学等調査でございます。こちらは生体暴露の班と、それから疫学調査の班、2つに分けさせていただきました。生体暴露量に関しては、牧野先生に班長をお願いしたいと思います。この班に参加いただく研究班としては、牧野班、国包班、山田班、津金班、螺良班、岸班、岩本班、那須班。
 そして、疫学研究につきましては、作業班の班長を津金委員にお願いしたいと思います。この作業班に参加していただく研究班としては、津金班、岸班、八重樫班、岩本班、那須班。ここについては、生体暴露量等と一部重複がございますが、それぞれお願いをしたいと思います。
 リスクコミュニケーションに関してですけれども、これは追補を作成するときに、日本薬剤師研修センター理事長の内山先生に、取りまとめをお願いしたところでございます。今回につきましても、班長として内山先生に御参画をいただき、作業班に参加する研究班としては、吉川班にお願いしたいと思います。
 特にリスクコミュニケーションに関しては、今回、中間報告書追補その2を公表するということが、リスクコミュニケーションの一端であるというふうに事務局は理解をしておりまして、本日ガイドライン案を吉川先生から御提示いただきましたけれども、これを参考にしつつ作業班でガイドラインを更に進めさせていただくということにしたいと思います。なおかつ、この中に含める情報としては、それぞれの取りまとめの内容もございますことから、各作業班の班長、菅野先生、井上先生、牧野先生、津金先生にもリスクコミュニケーションの班には参加をしていただくとともに、より消費者に近い立場から検討会の藤原先生、和田先生にも御参画をいただきたいと考えております。 それから、全体として行動計画を更新させていただきます。
 具体的なスケジュールでございますけれども、本日、第15回検討会で各主任研究者の先生方より、これまでの成果と今後の予定を御発表いただきました。今後、各作業班の班長の方々は、作業班を適宜対面等で招集をいただきまして、取りまとめの作業に入っていただきたいと思います。
 本年11月には、第16回の検討会を予定しておりまして、この中で各作業班の班長から、取りまとめの中間状況の御報告をいただきたいと考えております。
 そして、来年1月でございますけれども、第17回の検討会を開催いたしまして、ここで中間報告書追補その2の取りまとめをさせていただき、来年3月を目途に公表させていただければというふうに考えております。
 失礼いたしました。リスクコミュニケーションに関しては、中澤委員にも御参加をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からの説明は以上でございます。

○伊東座長
 事務局からものすごい宿題が出ましたけれども、ひとつよろしくお願いいたします。今日は、長時間にわたりまして皆様方に積極的な御意見、それから新しい成果を御発表いただきまして、一応の初期の目的は達したのではないかというふうに思っております。
 何か先生方の方で、御意見ございますでしょうか。これは言い足りなかった、これだけは言っておかないと後で大変なことになるというようなことがありましたら、どうぞ。

○井上委員
 後で大変なことになると困るので、一言お願い申し上げておきたいと思います。低用量効果・複合効果について、ただいま事務局から御説明がありましたように、私、取りまとめを仰せつかっておりますけれども、この方向性につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、in vitro のデータが非常に低用量の影響が出ている反面、in vivo では限られた発生期、胎生期の影響が観察されているのみであります。
 その方向でもってまとめるつもりでおりますけれども、是非こういった点につきましては、先ほども座長と名和田先生の間でも議論がありましたし、いろいろ、その方向に抵触するような事実は、説明がどう付こうと事実として上げておきたいと思いますので、日本の英知として私の方に先生方がお持ちの情報をお寄せいただきたいと思います。
 殊にこの問題につきましては、いつも申し上げておりますように、バイオロジカルプロージビリティー、生物学的な蓋然性が最初にあって危惧が発生した問題であります。ですから、分かりやすい例を申しますと、先ほどの岩本委員の御説明にもありましたような、単に調べてみたら差はなかったでは済まないんです。動物実験で実際にそれなりの暴露があれば出てくることが分かっているわけですから。そういう意味でも私どもの低用量の問題につきましては、非常に注目が集まっておりますので、是非御協力いただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○伊東座長
 ありがとうございました。 それでは、ここで一言お願いします。

○化学物質安全対策室長
 化学物質安全対策室長の中尾でございます。本日は、長時間にわたりまして、御審議いただきまして、本当にありがとうございます。今回は、第3回目の中間報告の取りまとめにつきまして御了承いただきまして、本当にありがとうございます。作業班の班長の先生方を中心に、各研究班の先生方におかれましては、本年度中に取りまとめにつきまして格段の御尽力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 また、当検討会におきましても、取りまとめに関する御議論、検討を予定しておりますので、検討会委員の先生方におかれましても、御協力をよろしくお願いいたします。
 厚生労働省といたしましても、今後とも内分泌かく乱化学物質に関する厚生労働科学研究の推進や、OECDを始めとする国際的な貢献につきましても進めたく、今後とも当検討会での活発な御議論をよろしくお願いいたします。
 本日は、長時間本当にありがとうございました。

○事務局
 最後に、事務局の方から一言事務的な御連絡を申し上げます。先ほど第16回の開催予定は11月と申し上げましたが、具体的な日程につきましては、追って調整をさせていただきますので、こちらの方もよろしくお願いいたします。
 本日は長時間どうもありがとうございました。

照会先
 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室
 担当:川嶋
 TEL :03−5253−1111(2424)


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