1.障害者福祉制度と介護保険制度の経緯
(1)介護保険制度における障害者の位置づけ
○ | 介護保険制度創設当初から、若年の障害者を対象とするかどうかは、法律上も、今後の検討課題として、積み残されていたものである。 |
○ | 介護を要する高齢の障害者は、介護保険を既に利用している。 |
(2)契約制度に転換した支援費制度の財政方式のあり方
○ | 福祉サービスの利用については、大きな流れとして、自己決定の尊重や利用者本位の理念に立って、措置制度から契約制度に転換してきている。 |
○ | 障害者福祉は、支援費制度によって措置制度から契約制度となり、高齢者福祉は、介護保険制度によって措置制度から契約制度となった。 |
○ | 契約制度のもとで、その理念を活かし、維持していくためには、税方式による制度と、国民の共同連帯(支え合い)の考え方に基づく社会保険方式のいずれがより望ましいのかということが問題となる。 |
2.支援費制度をめぐる状況の変化
(1)サービスの利用の伸び
○ | 平成15年4月からの支援費制度の導入により、ホームヘルプサービスやグループホーム等のサービス利用が急速に伸びてきている。 |
○ | 今後、さらに利用者が増え、利用が急速に伸びることも予想されるが、これに確実に対応していく必要がある。 |
○ | また、支援費制度のもとでは、サービスの利用状況に大きな地域差がみられ、この地域差を縮小していくことも課題である。 |
(2)三位一体改革による地方分権の推進
○ | 政府として、地方分権を推進し、住民に身近な自治体が地域の実情にあった形で責任を持って行政を推進するため、平成16年度からの3年間で4兆円の国庫補助負担金を削減し、権限と財源を地方に移譲する方向が打ち出された。 |
○ | 障害者福祉をはじめ福祉施策の国庫補助負担金について、全国市長会等から一般財源化が求められている。 |
3 制度的な課題
○ | 精神障害者、障害児(施設サービス)は、支援費制度の対象に含まれておらず、別立ての制度になっている。 |
○ | 税方式を基本としたままでは、障害者問題が国民的な議論の対象となりにくく、結果として、地域生活支援の展開が図りにくい。 |
○ | 支給量等の決定についての詳細な基準がなく、これも地域差の原因となっていると考えられる。 |
○ | 障害の程度や状況に応じて、適切なサービス利用を促進し利用者の自己決定を支援するためのケアマネジメントが制度化されていない。 |
○ | 障害種別や年齢によって福祉制度が縦割りになっており、身近なところでサービス提供するための高齢者介護サービス資源等の有効活用が難しい。 |
○ | 安定的な財源が確保されておらず、サービスの伸びに確実かつ計画的に対応することが難しい。 |
○ | また、契約制度を支える上で必要な権利擁護の仕組みが十分とはいえない。 |
○ | 措置制度時代からの課題である、地域生活の保障や就労支援、重度な障害者への対応などが進んでいない。 |
4.支援費制度改革の方向性
○ | 以上のような諸課題を解決していくためには、今後、客観的な制度上の基準や手続きを定めるとともに、安定的な財源確保を図ることができるようにした上で、ケアマネジメント制度の導入、精神障害者や障害児等を対象とすること、計画的なサービス提供体制の整備、政策課題への対応などを進めていく必要がある。 |
5.介護保険制度との関係
○ | 前述したような支援費制度の改革の方向性を考えた場合、
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○ | この場合、介護保険制度の枠組みを活用する障害者施策の範囲をどのように考えるかについて介護保険制度で対応する「介護」の範囲を整理するとともに、この「介護」の範囲に収まらない施策については介護保険制度とは別建ての施策体系を構築し、両者があいまって、障害特性を踏まえた障害者福祉の制度体系を構成する必要がある。 |
○ | 制度設計に際しては、例えば、
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○ | この改革は、介護保険制度を、年齢、障害の種別、疾病の種類等を問わず、介護を必要とする人を国民全体で支え合うユニバーサルな(普遍的な)仕組みとすることができる。 | ||||||||||
○ | このような仕組みのもとでは、サービスを必要とする人が確実に利用できるようになるだけではなく、「障害」を国民にとってより身近な存在とし、共生社会へ近づけることにつながるものである。 | ||||||||||
○ | こうした制度改革の過程において、自己決定の尊重と自立した日常生活の支援という、介護保険制度が元来有する理念の確認と一層の徹底が求められる。 | ||||||||||
○ | なお、上記の障害者福祉制度のあり方とともに、保健医療、住宅や所得保障、就労支援、バリアフリーの推進等の総合的施策の推進が必要なのはいうまでもない。この点については、今後、そのあり方について本部会で論議を深めるとともに、それぞれの場での検討が深められ、総合的な障害者施策体系の再構築が進むことを期待したい。 |
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・・・言うまでもなく、介護に対するニーズは、年齢や障害の原因を問わず、すべての国民が豊かな暮らしを送っていく上で共通して必要なものであり、地域における要介護者の支援体制は、高齢者・若年者にかわるところなく整備していく必要がある。 ・・・しかしながら、障害者施策のうち、介護ニーズへの対応について介護保険制度に移行することについては、(1)障害者施策が公の責任として公費で実施すべきとの関係者の認識が強い点、(2)身体障害者以外の障害者施策が一元的に市町村で行われていない点、(3)障害者の介護サービスの内容は高齢者に比べて多様であり、これに対応したサービス類型を確立するには十分な検討が必要であること、(4)保険移行に当たっては、障害者の介護サービスをはじめとして現行施策との調整が必要と思われる点、等なお検討すべき点も少なくなく、また、これらの点についての関係者の認識も必ずしも一致していない。 ・・・今後この問題については、当審議会としてさらに十分に議論を重ね、また、必要に応じて関係審議会とも連携をとりながら、障害者施策にふさわしい介護サービスとその財政方式のあり方を模索していくこととする。この検討の結果が、介護保険制度案大綱で予定されている将来の見直しにおいて、適切に反映されることを期待するものである。 |
第 | 二条 介護保険制度については、この法律の施行後における介護を要する者等に係る保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の状況、保険給付に要する費用の状況、国民負担の推移、社会経済の情勢等を勘案し、並びに障害者の福祉に係る施策、医療保険制度等との整合性及び市町村が行う介護保険事業の円滑な実施に配慮し、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容及び水準並びに保険料及び納付金(その納付に充てるため医療保険各法の規定により徴収する保険料又は掛金を含む。)の負担の在り方を含め、その全般について検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする。 |