04/05/31 「第8回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」議事録 第8回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会                        日時 平成16年5月31日(月)                           13:30〜                        場所 厚生労働省共用第7会議室 ○医療安全推進室長  ただいまから、「医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」を開催します。委員 の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして誠にありがとうござい ます。本日は16名全員の委員のご出席をもちまして部会を開催します。私は厚生労働省 医政局医療安全推進室長の岩崎です。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせてい ただきますので、よろしくお願いします。  議事に入る前に委員の皆様方をご紹介いたします。五十音順にご紹介をさせていただ きます。  日本医師会常任理事の青木重孝委員。  順天堂大学医学部教授の稲田英一委員。  上智大学法学部助教授の岩田太委員。  東北大学大学院医学系研究科教授の上原鳴夫委員。  日本看護協会常任理事の楠本万里子委員。   佐賀大学医学部教授の小泉俊三委員。  東海大学医学部付属病院本部副本部長の堺秀人委員。  NTT東日本関東病院看護部長の坂本すが委員。  京都大学医学部附属病院看護部長の嶋森好子委員。  東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長の土屋文人委員。  山梨大学大学院医学工学総合研究部長の貫井英明委員。  武蔵野赤十字病院院長の三宅祥三委員。  早稲田大学理工学部教授の棟近雅彦委員。  国立国際医療センター主任臨床工学技士の目黒勉委員。  千葉大学医学部教授の山浦晶委員。  白梅学園短期大学福祉援助科教授の山路憲夫委員。  本日の議事の関係で、国立国際医療センターの山西看護部長、森田看護師長、NTT 東日本関東病院の山元副看護部長に参考人としてご出席いただいています。  次にヒューマンエラー部会の部会長の選出ですが、私どもとしては堺委員を部会長に お願いしたいと存じます。堺委員はこれまで事故事例の検討部会の座長や対策検討会議 の委員としてご活躍でしたので、適切ではないかと考えた次第です。いかがですか。                  (異議なし) ○医療安全推進室長  それでは皆様のご賛同を得ましたので、堺委員にヒューマンエラー部会長をお願いし ます。よろしくお願いします。 ○堺部会長  ご推薦をいただきまして大変光栄に存じます。堺でございます。これからこのヒュー マンエラー部会、よろしくお願いします。医療安全対策検討会議の下に2つの主な部会 があります。1つが医薬品・医療用具等対策部会で、こちらは「物」のほうを扱うわけ ですが、もう1つのヒューマンエラー部会が、それ以外の「人、システム等」に関する ものを扱う大変に間口の広い、しかし大事な部会であると思っています。委員の先生方 は大変ご多忙でいらっしゃいます。これは部会の勝手なのですが、ほかのいろいろなお 仕事がおありなことは重々存じていますけれども、是非この部会のためにご尽力を賜り ますようお願い申し上げます。簡単ですが挨拶とします。議事に入ります。まず事務局 から資料の説明をお願いします。 ○事務局  資料の説明をします。本日の資料は、議事次第、委員名簿、資料1として「国立国際 医療センターにおけるIT活用による医療安全の取組」です。資料2が「NTT東日本 関東病院におけるIT活用による医療安全の取組」です。資料3が「医療に係るIT化 に関する国の主な施策」です。資料4が「医療安全対策ネットワーク整備事業第8回集 計結果」です。参考資料は1〜3です。参考資料1は「単回使用医療用具に関する取り 扱いについて」です。参考資料2は「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハ ット事例収集事業)の実施について」です。参考資料3は「ヒヤリ・ハット(重要事例 )情報データベース公開事業について」です。欠落等ございましたら事務局にお知らせ ください。 ○堺部会長  ありがとうございました。今回は病院におけるIT活用による医療安全の取組につい て、医療の現場、特に実際の病棟で医療に携わっていらっしゃる2つの病院の方々か ら、ご報告を頂戴したいと思います。2つの病院の報告が終わったところで質疑をいた だきたいと思います。国立国際医療センターの山西看護部長と森田看護師長、よろしく お願いします。 ○山西参考人  ご紹介いただきました国立国際医療センターの山西でございます。ITについて、看 護管理の観点からお話をしたいと思っていますので、よろしくお願いします。  国立国際医療センターの情報システムについて、医療安全の観点から部分的に説明を します。医師のオーダーから医療行為が行われるわけですが、電子カルテに実施内容が 記録として残っていきます。その過程でバーコードチェックを行うように業務管理され ていますので、医療安全対策になっているシステムです。処方や注射、看護のオーダ ー、物流システムも含めてですが、オーダー入力されたものがサーバーに集まるように なっていて、人、物、お金の流れがリアルタイムに記録されるシステムになっていま す。  これは病棟のシステムの全体のイメージ図ですが、医師からのオーダーが病棟部門の システムサーバーに格納されるようになっています。PDAからもバーコードを通して 画面に入力されて、入力されたデータは部門システムのサーバーに格納されることにな っています。同時に看護記録の2号用紙の画面にも、リアルタイムに入力されたものが 出てくるようになっています。       これは注射の流れのプロセスを表示したものですが、注射の流れについてはオーダー された後、伝票、薬剤、看護師、職員のバーコード、患者のリストバンドをPDAでチ ェックして、バーコード確認を行為の前、後に行っていきます。物流システムも同時に チェックされるようになっています。  処方監査と混注の間でエラーが出現した場合は、薬剤部に返納されることになってお り、混注後、実施前に変更があった場合には廃棄処分ということになっています。ドク ターが何日分かまとめて指示を出した場合は、指示された日付の下に「指示」と表示さ れます。指示受けされていない時には赤い表示、監査済の場合はグリーンの表示です。  混注後、「実施中」か「終了」か患者の温度板の確認がすぐにでき、色が変わること で皆がわかるようになっています。途中にボトルが動いていますが、これは「実施中」 という約束で、院内で統一されており、この画面を見た時に実施中か終わっているか、 あるいは指示中なのかが分かるようになっています。バーコードを使用していますの で、物流の正確な記録、有効期限やロット管理が可能になっているシステムです。  医療センターのシステムですが、イベント処理によるデータ制御は医療行為の安全性 を確保するとともに、医療行為における無理、無駄の発見に役立っているシステムだと 思っています。プロセス制御からイベント処理へということで、医療センターのシステ ムの特徴ではないかと思います。  本センターのシステムは更に、同時に複数のユーザーがログインできて、リアルタイ ムに業務ができますから、いろいろな情報を連携することが可能です。例えば看護で言 うと、1回ごとナースステーションに戻ってパソコンやPDAを本体に差し込まなくて も、その場でPDAに指示変更が伝わりますので、患者の指示変更もリアルタイムに情 報連携ができています。急な指示変更でも事故を防止できるようになっています。この 図をご覧いただくと特徴の違いがわかると思います。   さらにデータ解析も、蓄積された記録を基に実施できています。注射ビュアーから申 し上げますと、原価計算や経営改善にもこのシステムがつながっていることが特徴で す。監査済の薬剤等は中止した場合には原価に含めませんが、混注前のものであればす ぐに戻して廃棄はしないことになります。  情報の粒度ですが、5W1Hですべて入っていますので、情報の粒度はデータの最小 単位が伝票単位です。例えば医師から注射処方が3日間出たとすると、実際に病棟のほ うに上がってくるのは1日だけで、Rpごとに小分けしてすべて上がってきますから3 日間、それぞれその日に上がってきます。データの最小単位が人の活動、単品単位とな っていて、すべて単品で個別の管理ができるシステムになっています。臨床で働いてい る職員一人ひとりのバーコード化が行われていますので、誰が、いつ、どのように実施 したかもすべてわかるようになっています。  この図は病院全体で2003年1月から3月まで、看護師がPDAを用いて注射薬と伝票 のバーコードチェックをして、途中でPDAによってエラーを発見した率です。22病棟 ありますが病院全体で発生率は4.4%です。これは小児科病棟ですが平均で5.6%、次は 外科病棟ですが、いちばん少ない発生率で2.4%、もう1方の外科病棟は4.9%、呼吸器 内科病棟では5.1%、消化器内科病棟では4.4%です。本センターのシステムの場合は事 故の多面的な分析が可能です。1人の時間軸による線の分析のみでなく、周辺のスタッ フまで併せた面分析が可能です。  具体的に言うと、注射事故を直接起こした本人の行動だけでなく、PDAを用いてい れば発生前後の他の医療スタッフの行動や病棟、外来などの周辺の状況を正確に蓄積さ れたデータから把握が可能です。個人の責任もありますけれども、体制の問題として解 決していく分析が可能なシステムになっています。具体的に病棟の説明をこれから森田 師長が行いますが、看護部長として現場を預かっていますから、このシステムに関して システムの稼働前と後に業務整理等を行い、ヒヤリ・ハットとかインシデントレポート 等も、導入後はかなり変化しており、注射や薬剤に関しては20%近く減ってきていま す。  医療センターで看護管理上、システムとしては私は個人的に安全なシステムになって いるのではないかと思います。ただ、システムが安全であっても、必ず何パーセントか は個人のうっかりミスなどヒューマンエラーがありますので、それをどのようにいかに 少なくしていくかが、現在の課題です。  最後に、24%と左のほうにありますが、従来、PDAで監査をしないでいた時の中止 ・変更のオーダーがそのまま混注されて、破棄していた薬剤の率です。ですから経営的 にも24%の混注が無駄にならなくなったというデータです。残りはリアルタイムで伝わ らないと15%の誤注射の危険があるということで、ここはPDAに頼るところだと思い ますし、看護者としての確認が非常に重要なところだと思っています。以上です。 ○森田参考人  私のほうからは注射オーダリングにおける業務フロー、システム導入前後での事故・ インシデントの軽減、看護師業務の内容の変更、PDA・ワークシートについて順を追 って説明させていただきたいと思います。  注射オーダリングにおける業務フローですが、当センターは平成14年6月から全病棟 で注射オーダリングが稼働しています。患者リストバンドについてですが、これは患者 が入院したときに病院長名で、当センターでは安全性の高い点滴を実施するためのコン ピューターシステムを導入していること、そのため患者様にはリストバンドを装着して いただかなければいけませんという説明が書かれている用紙を、案内文書として入院係 から渡しています。患者様が病棟に上がってくると看護師が患者のリストバンドをリー フ端末から発行して、再度、装着の必要性を説明して手首に装着することになっていま す。  医師に関してですが、医師は注射オーダーを入力します。入力内容は、ここに書かれ ているようにどのルートで、何の薬剤なのか、投与方法は何か、投与順はという項目を すべて入力していきます。ちなみに注射オーダーの指示変更に関しては、点滴開始以前 であれば入力可能なシステムになっています。  薬剤ですが、医師が注射オーダーを入力すると薬剤のほうにその指示が流れ、処方監 査が入って病棟のほうに払い出されることになっています。どのように払い出されるか は先ほど山西部長からも簡単に説明がありましたが、Rp体ごと小さなビニール袋にセ ットされて、患者ごと大きなビニール袋にセットされて病棟に払い出されてきます。  看護師については詳しく説明します。注射オーダーをリーフ端末から指示受けして指 示内容を確認します。その後混注確認をします。混注確認の専用端末は各病棟の準備室 に1台設置されています。手順として、混注用の端末に設置されているバーコードリー ダーがあるのですが、それで作業者のIDを読み取ります。その後に薬剤のバーコード を読み取って、その時に指示変更があるかなど4項目ほどチェックします。指示変更が あった場合は警告音とともにメッセージを端末から確認できるようになっています。問 題がなくエラー音が鳴らなかったら、その後ミキシングに入るのですが、このミキシン グは看護師が目視で注射箋と照合確認をして行います。  その後再度確認して、注射ラベルが薬剤のほうから払い出されますのでラベルをボト ルに貼ります。その後点滴投与になりますが、投与前にはPDAの薬剤のバーコードラ ベルをまず読み取ります。続いて患者のリストバンドを読みます。その時に指示変更な ど4項目ほどチェックし、その時にエラー音が発生したら、今度はPDAから警告音と ともにメッセージが表示されます。問題なければ実施入力になります。  終了ですが、終了に関しては同じように投与量を入力します。どういう形で入力する かというと、点滴が全部終了したら100%、半分であれば50%とパーセントで入力して 確認終了します。これらはリーフ端末に実施記録としてすべて反映されます。会計に関 しては実施入力とともに発生する仕組みになっています。  オーダリングシステム導入前後での事故・インシデントの軽減について報告します。 看護師の業務のうち、与薬業務におけるミスの占める割合がとても多いことが報告され ていますが、今回、IT化することによって予防できる事故発生要因について簡単に説 明します。1つは指示内容の誤認です。これは医師たちにもよるのだと思いますが、手 書きによる指示は薬剤を略語で書いたり、投与量、方法、速度を省略して書いてみた り、字がとても読みにくかったりなど曖昧な部分が割と多くて、確認する看護師が内容 を確認するところで誤認するミスが発生していました。しかし、オーダリングが導入さ れたことで、先ほども説明したように薬剤指示の入力方法が統一されていますし、正確 な文字で表示されますので、それらによる指示内容の読み間違いはなくなっています。  転記間違いですが、オーダリングを導入する前は看護師間の情報伝達媒体としてカー デックスを活用していました。これは医師が出した指示内容をわかりやすく、一括で情 報が取れるように看護師用として指示を転記する作業をしていましたが、そのために転 記ミスが発生していました。今回、このオーダリングを導入し転記ミスをなくすことを 目的にやっていたのですが、導入された後は、端末に入力された指示は端末から出力さ れるワークシートに、注射、内服、検査、看護指示等はすべて印字されて来るようにな りましたから、端末に入力されている項目をカーデックスに転記する必要性はなくなり ました。  ただ、問題なのは全部の科目がオーダリング化されていませんので、その項目はどう するかだったのですが、基本的には転記をなくすことを目的にしていますので、すべて カーデックスを廃止して、オーダリング化されていない項目に関しては、すべて直接手 書きの医師指示票から確認を取るように、システムを病院全体で変更しました。看護師 が手書きの医師の指示票から指示が確認しやすいように、手書きの医師の指示票の見直 しも含めて病院全体で行いました。それによって転記作業は軽減しました。  しかし、新たな問題として、リーフ端末の画面から指示を受けなければいけないの と、診療録から指示を受けなければいけない。一括では取れなくて、両方から確認を取 らなければいけない問題が出てきています。それによって時には指示漏れもあります し、情報を取るのに時間がかかるという声も聞かれます。  情報伝達時の不備については、1人の看護師が点滴の準備から実施まで一連の作業を することが望ましいのですが、休憩や勤務交替時で他の看護師に依頼する機会が多いと 思います。その時の情報伝達が曖昧であればどうしてもエラーが発生してくるという報 告が聞かれます。それらは先ほど説明したPDA操作によって点滴の準備から実施ま で、すべてITによるチェックが入りますので、正確に使えば他者が実施した場合であ ったとしても、患者誤認は予防できると予測出来ます。  薬剤の受領点検ミスですが、オーダリングを導入する前は薬局からまとめてすべて払 い出されていました。それを看護師が患者ごと整理していましたが、オーダリング化さ れたことで、先ほども説明したように患者単位で払い出されるシステムになり、それに よるミスはなくなったと思います。  患者誤認ですが、名前が似ていたり外形が似ていたり、正確に確認が取れない高齢の 方や小児の患者に関しては、確認がうまく取れずに患者誤認が発生していたと思います が、オーダリングが導入されたことで、先ほども言ったように注射の準備から実施まで 患者誤認のところはITにより2回チェックされますので、その部分は軽減していると 思います。  ただ、問題はあります。時によってミスが起こりますが、その原因としては患者に正 しいリストバンドが発行されていなかったり、装着されていなかったり、患者の画面を 間違えて他の患者の画面で処方入力して指示出しする等の指示出しミスがあったり、準 備のときは混注確認用PCできちんと確認してください、PDAで点滴バーコードラベ ルと患者のバーコードラベルの整合性を図って実施してくださいと言っても、忙しい業 務の中で適切な手順を省略してしまったり、看護師が点滴ボトルにラベルを貼ると説明 しましたが、そのラベルを他者ボトルに貼ってしまうなどの事故も出てきているのも現 状です。  今回、表に棒グラフを表示しています。発生要因ごとに数値に出して比較できればよ かったのですが今回はできませんでした。全体的に出された事故件数の中で注射、内 服、点滴事故が何パーセント占めるかを表わしたものです。ちなみに平成13年5月から 処方オーダーが全稼働していますし、注射オーダーは平成14年6月から全稼働していま す。平成12年度と平成15年度を見るとわかりますが、数値的には減少している結果が出 ています。  看護師業務の内容の変更について説明します。この表はIT導入によって看護師の業 務で増えている内容、減っている内容をまとめたものです。簡単に説明しますが、注射 に関しては注射オーダリングを導入する前は、すべて看護師の目視で準備から終了まで していましたが、導入された後はミキシングのときの混注確認、実施のときはPDAで 確認ということでIT操作は確実に増えています。減っている業務としては、カーデッ クスへの転記、注射箋の処理、患者ごとの注射薬のセット、実施記録は反映されますの で実施記録の項目が減っています。  体温表ですが、これは電子温度板のことです。これは平成15年1月から全病棟で稼働 しています。これがいちばん看護の業務量が増えた部分です。なぜかというと、体温表 にデータを反映させるために看護オーダーという入力をしなければならない。この看護 オーダーとは何かと言うと、リーフ端末から看護オーダー画面を開いて、そこから温度 板に反映させたい項目を選択して、その項目の展開期間として日付間隔、実施時間とい うスケジュールをすべて入力して登録する作業が必要になります。その作業をすること でPDAにも反映されてベッドサイドでも実施入力ができるし、実施されたものは電子 温度板に反映されます。  例えば血糖、サチュレーション値、観察項目など、すべてそのような経過を辿って温 度板に反映されるということです。ちなみに臨時測定値ですが、バイタルサインだけは 臨時で入力が可能な形になっています。ほかにサチュレーション値、血糖値を臨時で測 定したいという要望があるのですが、そこまではまだできていません。  これによって多くなっている業務量としては情報収集です。先ほど説明したようにリ ーフ端末からの情報と診療録からも情報を得なければいけない。そういう情報に対する 時間を要するということ。医師も看護師も朝、リーフ端末から情報を収集しますので、 台数の関係で端末が空くまで待つ時間も少し出てきています。もう1つPDAのほうで すが、バイタルサイン値を間違って入力した場合は、その場で修正はできないようにな っています。基本的にはリーフ端末まで戻って修正する形になっているので、そこで時 間がかかったりしています。  看護サマリーに関してですが、今までの手書きのサマリーですと、コピーして診療録 に挟んだり外来カルテに綴じたりする事務作業が多かったのですが、今回、PCに入力 するということで、外来の看護師は外来にリーフ端末があり、そこから看護サマリーの 画面を出して確認できますので、今まで大変だったコピーしたり綴じたりする作業は減 っています。その他の項目もいろいろME機器等にあるのですが、それらに関して端末 の操作は増えましたけれども、伝票処理などの事務的な作業は減っています。  PDAの活用について説明します。どのように活用しているかは今まで説明しました が、実施入力したりバイタルサイン値をベッドサイドで数値を入力したり、注射や点滴 の取り間違いをチェックする目的で活用しています。効果としてはヒューマンエラーの 防止、薬剤投与間違いや患者の取り違い事故防止、ベッドサイドでの実施入力ができる ことによる業務量の減少、実施記録としてリーフ端末に残るなどが挙げられます。PD Aの性質ですが、基本的に水に強くてアルコール消毒も可能です。落下による衝撃にも 強いということ。大きさに関しては資料に載せていますのでご参照ください。  問題としては「操作方法が複雑」と書いていますが、複雑というよりも情報を得るま で操作の回数が多い。画面展開が多いということです。これはどうしてもコンパクトな ので、そこからデータを得るためには何回か展開させる操作が必要だということ。あと ベッドサイドで最新化のオーダーを取得はできるのですが、患者が多いとどうしても時 間がかかってしまうことが1つ問題です。実施項目が多いと一覧では確認しづらいとい うこと。間違って入力しても、そのPDAでは修正できない問題点が挙げられます。  ワークシートの活用についてですが、これは看護師が使うもので、当日、担当する患 者の情報や実施する業務を把握したり、処置、注射、内服などの確認をしたりメモ用紙 的なものとして活用しています。PDAからは情報を得られないので、その代わりにワ ークシートから情報を得る形で使っています。  利点としては、今まで説明したようにオーダリング化されたものに関してはすべて印 字されて出力されますので、患者のスケジュールが一部把握できます。全部把握できな いのはオーダリング化されていない項目があるからです。注射、内服薬の投与値の確認 ができることも利点です。  欠点に関しては、タイムリーな情報は得られないことです。職員のほうにはワークシ ートを出力した後からも指示変更があるので、タイムリーな情報だと勘違いせずに、お かしいなと思ったらPCのほうに戻って確認するように指導しています。ちなみに点 滴、注射薬の変更に関してはアラーム音が鳴って、指示変更のお知らせはあるのです。 内服薬などは全然ありませんので、医師には基本的に声かけをしていただくようにお願 いしているのですが、なかなかそこは徹底されないことも含めて、看護師は必ず朝1 回、昼1回、準夜の申し送り前に1回、PC画面の前に座ってオーダーの確認をする作 業があります。  話が戻りますが、欠点としては、先ほど言ったようにオーダリングが導入されていな い項目は印字されないということ。担当する患者によっては枚数を多く要するので、一 覧では把握できないことになります。資料に「得られる情報」「得られない情報」を挙 げています。得られる情報というのはオーダリング化している情報であり、得られない 情報としては、まだオーダリング化されていない情報ということです。ここに「緊急指 示」と挙げていますが、緊急指示はオーダリング化されていますので省いてください。  まとめですが、ITが導入され、人間の目視以外でのチェックが入って事故の予防に はずいぶん役立っていると思います。ただ、リーフ端末とかPDAを操作するのは人間 ですので、あくまで人間の正しい手順と正しい操作という土台がなければ、ITが導入 されたとしてもエラーを防ぐことはできないということを、よく理解しなければいけな いと感じています。つまりITの使用目的をよく理解して、施設で定められたシステム の手順どおり行うことが大切であるということ。特にミスが重大事故に直結する輸液や 注射に関しては、作業者の3回確認のルールとか6つのRというのがあるのですが、確 実に確認を行うという最低限のルールは絶対省略してはいけない。職員へこのような指 導が必要だと感じています。すべての項目がオーダリング化されていないことによる問 題や、システムダウン時の対応に関する問題、現状のオーダリング機能ではクリアでき ない問題を十分理解して、実際に操作する職員が混乱しないように、そして事故が発生 しないように、ITが導入されることで出てくる問題を補うべき運用を、病院全体で決 定して職員に周知させる必要があると感じています。以上、報告を終わります。ありが とうございました。 ○堺部会長  ありがとうございました。次にNTT東日本関東病院の山元副看護部長、お願いしま す。 ○山元参考人  山元です。よろしくお願いします。お手元の資料で順不同の部分がありますのでご了 承ください。NTT関東病院は2000年12月に新病院になり、それと同時に電子カルテを 含めすべて電子化されています。現在、606床の一般病院です。3月の実績で稼働率が 96.3%、外来患者数は2,179名、手術件数が440件、急性期病院を取っています。  当院の情報システムの概要ですが、各部門システムを全部リンクさせて総合医療情報 システムとして活用しています。ログインの時は指紋で入るようになっていて、職種の ところで医師、看護師、その他ということで選んでログインすることになっています。 またはIDを直接入力後、指紋の読み取りでも可能です。30分放置していると自然に画 面がロックされる形になっています。画面がロックされないままで放置されていると、 最初にログインした人が実施者になり、そのカルテを使って記録することがありますか ら、それを防止するためもあります。画面がロックされた場合は再度指紋認証を行っ て、また最初からやり直す形になっています。  これは病棟のシステムのイメージです。入院患者ケアシステムに患者が登録される と、ナースコールシステム、病室の名前、携帯端末にも患者登録されるようになってい て、迅速に変更データが全部反映されるようになっています。スタッフは院内のPHS を使って、それに患者のナースコールシステムを連動させていますので、コールもそれ で対応するようなシステムになっています。  医療安全の観点から3つの効果ということで、標準化と情報共有、質の改善というと ころでお話をさせていただきます。まず標準化についてです。これは看護計画の立案画 面です。これは系統別ということで、標準看護計画を選んでいく画面をお見せしていま す。看護のところでも全体的な標準看護計画が449セットできていて、系統、経過、共 通項目、検査・治療という形でセット化されています。それを選ぶことにより70、80% の患者に統一したケアができて、それプラス個別の部分については追記で補足していく ことができます。  下にケアフローの画面が出ていますが、体温表のところを当院ではケアフローと呼ん でいます。看護計画を立て、下にマル印で介護介入の計画を立てていくのですが、実施 計画は○で、その計画が済んだ場合は実施済記録として●に変更する形で、実際にやっ たかどうかをそこで確認できるようになっています。看護計画の達成度についても尺度 を全部作っていて、それによってどれぐらいの達成度になっているかを確認していま す。  これはケアフローの観察項目の設定画面です。左側のほうはパスの画面です。右側は 普通の体温表の画面ですが、●で囲んでいる所が観察項目になります。観察項目を設定 すると、その内容が体温表のほうに貼り付く形になります。パスのほうは最初から必要 なものは全部観察項目を設定していますので、その結果をケアフローのほうに入力して いく形になっています。  これはワークシートの医師の指示部分ですが、先ほどもお話があったように転記ミス ということがありますので、指示の転記ミス防止が考えられています。医師の指示、看 護指示はすべて標準様式によるワークシートへの展開ということで、非常に見やすくな っています。  次に情報共有の効果という観点からです。これは病床の画面です。患者の一覧がこれ で全部わかります。これは10階のB病棟となっています。クリックしていくことによっ て、その部署の患者の入院状況がわかりますので、これをベッドコントロールに使って います。該当病棟にベッドがない場合には空いている病棟の空床状況を確認しながら、 そこに患者を早期に入院させていく形で活用しています。一人ひとりの病床のところに BとかMといった文字が出ていますが、MRSAがあったりHBがプラスの方の場合に も表示が出るようになっているので、患者の感染状態もここで簡単にわかるようになっ ています。  右上が患者の基本情報の画面です。外来で診察したときに身長、体重のデータが入力 されると、左のほうは看護の画面ですけれども、看護の患者の活動のところに同じ最初 の基本情報で書かれたものが反映されるということで、重複記録しないで表示されま す。  これはプロブレムと他職種の共有記録の画面です。左上に「全て」とあって、その下 の「プロブレムなし」から「腎臓内科のANCA関連血管炎」となっていますが、医師 によってプロブレムを設定するときに、いろいろな名前で設定していることがあるの で、例えば「泌尿器 前立腺肥大症」というプロブレムだけで患者の状態を見ていると、 他の「プロブレムなし」とか、「脳外 顔面痛」というプロブレムが設定されている情 報が見えにくくなっています。そこで「全て」を選んでいただくことにより、全部の患 者の情報を見ることができ、そうすることで情報収集の漏れを防ぐことができるように なっています。  右のほうは、他職種の記録の履歴ですが、ここには医師、看護師、薬剤師、栄養士、 リハビリの方もすべて、記載した人の履歴が全部残るようになっています。何か問題が あったり事故があったときに、いつのカルテというように日付指定で開くことができま す。経過で括って見ていくことも可能です。  これは医師の画面です。テンプレートの活用と標準化と効率性ということで、医師側 もテンプレートを活用することによって標準様式を使っています。シェーマの活用もさ れていますので、それで記載がされていき、記録の点では非常に効率化も図られていま す。  右下は文書作成の画面です。文書についても電子カルテ上から文書作成が可能になっ ています。サマリー等についてもコピーして貼り付けることで簡単にサマリーの記載が できるようになっています。  これは電子カルテを利用したカンファレンス風景です。いま現在はカンファレンスに なると、プロジェクターを使って患者の一覧を画面に出しています。これは外科の画面 ですが、外科の患者が各病棟に散らばっていますので、外科ということで設定すると外 科の患者の一覧が出るようになっています。その中から患者を選んで、右下の画面にケ アフロー画面というのがありますが、患者の体温表の画面を出して、その状況が確認で きるようになっています。この画面から患者の検査結果、レポート、注射指示の入力等 もリンクしています。左側に見えているのが内視鏡の結果です。カンファレンスをやり ながらフィルムレスですので、検査結果レポートを出して、それでカンファレンスで き、非常に効率化も図られていますし、情報共有にも効果があります。  これはインフォームドコンセントの画面です。上のほうにICという欄があります が、ICをクリックすることによってこの画面が表示されます。通常であればICのほ うに書かれていれば、どういう方でもそのICをクリックすることによって、どういう 内容が書かれているか確認できます。もしここに書かれていないと、カルテのSOAP の記録を見ていくことになります。いま現在検討中なのが、そのSOAPに書かれたも のを、このICの欄に貼り付けできる形にして、医師が簡単にICの記録もできること を考えています。  質の改善についてです。これは薬剤関連の医師の処方オーダーのチェック画面のとこ ろです。例えば重複投与されていれば重複投与の警告がされるようになっています。ま た投与量のオーバー防止も薬剤のほうでチェックが掛かるようになっています。こうい うふうに薬剤のほうでは事故を防ぐ対策がとられています。  これは抗癌剤用量の設定、レジメンセットの選択画面です。抗癌剤に関しては抗癌剤 の名前を入力しても表示されません。抗癌剤の投与に関してはレジメン機能を用いま す。レジメンセットは各科で少し違いますので、各科で責任を持ってレジメンセットを 作っていただくようにしています。指示は複数の医師で必ず確認しながら、選択してく ださいということで、医師に周知しています。  身長、体重から割り出された上限設定も、医師が「ここまで」というので設定されて いますので、そこを変えることはできないようにしています。右のほうに設定のボタン がありますが、この設定ボタンが押せないときには、上限値を超えていますということ で、そこでも防止ができるようになっています。  これはレジメンセットのインターバルチェックです。何か薬剤を使っていてインター バルで引っかかり、次の指示ができないことがありますので、そこも確認できるように なっています。右のほうに調剤確定というのがありますが、この調剤確定をしないと薬 が調剤できないようになっています。ここを確定することによって薬剤部では、それが 「依頼中」に変わりますので、そこで初めて薬剤が調剤されて病棟に上がってきます。  これは検査報告の参照画面です。いまトータルプロテインとアルブミンのデータのと ころが反転していますが、これを時系列の表示で見ると下のように一覧が出るようにな っています。このことによって、例えば患者の採血間違いがあるとデータがおかしい場 合にはすぐ気が付きます。これはケアフローの観察項目のところです。看護師がドレー ンの排液量、血性、発赤がどうかとか全てのデータを残しています。これを感染率等の データとして活用しています。  これはICUの部門システムのデータ管理です。ICUに関してはデータの管理が非 常に重要になっていますので、インシデントが起こったり患者の容体変化といったとき に、医療機器のほうからそのまま連動されたデータが全部残っていますから、そこで確 認していくことが可能になっています。  これはDI検索についてです。服薬時の注意等を看護師も確認できるようになってい ます。患者の内服している薬について患者に説明したい場合とか、何か問題があったと きにDI検索をやることにより、この薬についての効用、用量、注意の情報を早期に取 ることができるようになっています。  これは患者別のワークシートです。患者のワークシートは個別で、1日何をするかと いうのがワークシートに出されるようになっています。多い方で3枚も出るような場合 もあります。その日の治療やケア内容が全部確認できますので、これを使って看護師は 処置をしているという形になります。ただし、急に変更になった場合には、新たにワー クシートは打ち出されるのですが、医師からの伝達がないと以前のままの指示で発して しまうことがありますので、医師からの伝達が非常に重要になっています。この点につ いては、院内のルール化をしており、変更時には必ず変更指示表を看護師に手渡しし て、変更の内容を医師が伝えるというルールを決めております。  これは、当院の電子カルテを立ち上げるときの最初の画面ですが、ここに掲示板とい うのがあります。ここには、毎朝診療録を終了して、再度診療録を起動してくださいと ありますが、何か非常に危険なことがあったときや、皆さんにすぐに周知したいときに も、ここの掲示板を利用して、対策等も含めて周知をする形で使っています。  インシデントの傾向ですが、先ほど発表がありましたが、ほとんど同じ傾向でした。 インシデントについては、やはり医師の手書文字の読み間違いということは減っていま す。転記ミスによる間違いも減っています。ただ、変わらないのはヒューマンエラー的 なインシデント自体は、電子カルテの前も現在も、ほとんど変わらないと思っていま す。  病院ネットワークに関する評価ということで、国立保健医療科学院との共同研究で、 アンケート調査をした結果がありますので、一部抜粋したものをここで報告させていた だきます。  医師業務について、軽減したかどうかということで、360ぐらいの回答の中からのデ ータです。医師業務については、先ほどの画面検査報告の参照確認、検査結果報告の確 認というものが非常に減ったということが、83%の値で出ています。あとは、各種診療 サマリーの作成、報告書や伝票控え等の管理、院内他科への患者紹介、画像検査報告の 読影、これらについては医師業務は軽減しているということを医師が答えています。  看護師の業務軽減ということに関しては、検査の結果報告の参照、医師等の診療記録 の参照、転科転棟時の連携、カンファレンスや事例検討会等の準備、報告書や伝票控え 等の管理、患者情報の伝達(申送り)、こういうものが減少していると答えています。  日常の診療業務の負担が、電子カルテを使ってどうなのかというところでは、「増加 」「やや増加」というところで見ると、医師、看護師、ほとんど似ています。「カルテ への診療情報の記入」、医師は47.6%、看護師は「ケアフローへの記録」が52.8%と、 いちばん高かったです。その他は、診療活動上の総合的な身体的負担、精神的な負担 が、医師、看護師ともに2番目・3番目、3番目・4番目という結果でした。看護師の ほうは、2番目に注射処置の実施入力がちょっと増加しているということで出されてい ます。  医療経営管理への影響ということについては、医師、看護師が影響があるかどうかと いうことで見ているのですが、オーダーの出し忘れやエラー防止、オーダー取り忘れや 実施エラー防止については、50%以上影響があると答えています。  薬剤・注射誤投薬等の減少や、薬剤・注射誤投薬や重複投与の減少についても、高い 値で出ています。チーム医療の推進等についても、看護師は57%と高い値でした。ま た、看護サービス、看護業務の標準化というところでは、医療経営管理に非常に影響が あると看護師も答えていますし、検査治療内容の標準化についても、医師のほうも56.9 %と高い値を示していました。以上です。 ○堺部会長  ありがとうございました。それでは、この2つの病院からのご報告にご質疑を頂戴し たいと思います。実は、今日が最初ですので、私は委員一人ひとりから、こういう医療 安全の推進、特に人やシステムに係わるものについて、今後どのように進めるべきかと いうお考えも伺えればと思っていましたが、残念なことにその時間はなくなってしまっ たと思います。そこで、この2つの病院にご質疑をいただく際に、それと並行して、こ れは是非言っておきたいとお考えのことがあれば、質疑と無関係で結構ですので、それ もお願いしたいと思います。では、どうぞ。 ○稲田委員  どちらも大変立派なシステムのご発表をなさったのですが、国として、こういったも のをモデルとして、いくつかあるうちの1つを選んで、それをさらに改善していくの か、あるいはそれを一緒にして、統一したものを作っていくのか、あるいはこういった お話を伺うことによって、それぞれ基本的な要件、例えば電子情報を共有化することに より、医療の安全を改善し、業務負担を軽減させ、経営効率を改善させてという大きな 目的に沿った要綱を作っていくのか、議論の方向づけが分からないので、最初にお伺い したいと思います。 ○堺部会長  これについては、医療安全推進室長よろしくお願いします。 ○医療安全推進室長  初めにご説明すればよかったのかもしれませんが、医療安全に係るITの問題は、以 前この部会の前身といいましょうか、昨年度までの部会でも少し話題が出ており、雰囲 気というか、全体的なイメージとしては、医療従事者の方々は、医療安全についてIT はあまり有効ではないのではないかという、どちらかというと、あまり評判がよろしく ないという状況ではないかと私どもは感じておりました。一方で、これも昨年ですが、 IOMのコリガンさんという方が日本にお見えになったときに、「これからの10年、医 療安全はITでしょう、これで決まりです」というようなことをおっしゃって帰られた ので、こちらにいらっしゃるような有識者の先生方と、そのような研究者の方の若干の ギャップがあるという問題がありました。  そこで実際に、いわゆる「うまくいっている」と言われているような病院での現状 を、ここでご紹介いただいて、今後、我が国の医療安全はITに関してどのような方向 でいったらいいのか、というのをご議論いただければと考えています。私どもも別途、 さまざまな関係の方々に現在も同時並行でお伺いしているのですが、電子カルテという ような非常に大きなもの以外にも、ベンチャー企業のような所でいろいろなITの機器 が開発されていて、わりと良いものが製品化されているというお話も承っておりますの で、それも含めてここでご議論いただければと考えております。 ○堺部会長  ほかにいかがでしょうか。どのような切り口でも結構です。 ○小泉委員  私たちの病院も電子カルテ導入の真っ最中です。国立国際医療センターでは秋山先生 が中心に開発されていると承っていますが、結局安全管理のためには、1つ1つの行為 を細かく切り分けて、それをリアルタイムで入力していく作業の中で、もし何かエラー があった場合に検出することもできる、例えば物品のロットの間違いとか、不良品があ った場合、ロット管理まで出来ることが必要だということを秋山先生は強調されていた と思うのです。  米国の話も出ましたが、将来は、FDAなどでは、きちんとしたロット番号まで追跡 できるようなシステムが世界標準になるということでしたが、導入にはどのぐらいのエ ネルギーがかかったのか。また、国際医療センターでは、このような方式を最終的には 全国に広めるということで、どのような問題があると考えておられるのか、その辺をお 分かりでしたらお教えいただければと思います。 ○堺部会長  秋山先生にお答えいただかなければいけないかもしれませんが、山西看護部長、いか がでしょうか。 ○山西参考人  なかなか難しいご質問で、一言では答えられないのですが、安全な医療を実施すると いう観点で言いますと、看護職としては、コンピューターにかける業務量が若干多くな っているかもしれないのですが、安全は第一ですので、個人的には、以前は毎日ヒヤヒ ヤとしていた分が大きな薬剤によるミス等は防げているのではないかというので少し安 心しているところなのです。ただ、このシステムを良いからどんどんというようには、 どこまでいくかは私自身は分かりません。  今日、私は医療安全という観点からのシステムの説明だけしました。先ほどNTT関 東病院の方も説明されましたが、標準看護計画とか、その他いろいろな機能も持ってお ります。良い部分とそうでない部分が確かにありますので、どこまでは良くて、どこま ではどうだというところを明確にしないといけないと、普段の業務の中では考えており ます。ただ導入前の業務量が測定できておりませんところに導入しましたので、実施後 の業務量測定が行われていないのです。やっと操作も落ち着いてきたと思ったら、また 新人が大勢入るということで、1年の中でどこがいちばん落ち着いて業務量測定ができ るかというところがまだはっきりしないのですが、そろそろ業務量測定をして、明確に データをとっていかないといけないと思っているところです。将来的なことは、何とも 申し上げられません。 ○小泉委員  業務がある程度増えるというのは必然だと思うのですが、それが安全に結びついてい るということが分かるような仕事であれば納得すると思うのです。それが分からないま まに、何か知らないが仕事だけ増えたというのではうまくいかない。その辺にコツがあ るように思うのですが。 ○目黒委員  同じ国際医療センターで、臨床工学の現場で実際に仕事をやっている者です。今のご 質問ですが、補足させていただきます。例えば、私の場合臨床工学ですので、機械です から、現在のところ、機械がどの患者にどう使われたかという部分までは、実際にはつ ながっていないのが現状です。これから予算が付いたり、いろいろなことでつながって くるのかどうか分かりませんが、実際問題として、業務量としては私たちのほうもかな り増えてくることは事実です。いろいろなことを確認しなければいけないとか、そうい う部分が結構あります。在庫の確認、物がある、ない、どこの病棟にいったという確認 は、仕事量としては増えてきているのが現状です。 ○堺部会長  では、山浦委員お願いします。 ○山浦委員  今日は、ITに関して非常に先端的な2つの病院を紹介いただいたわけですが、詳し い説明を聞きながら感じたことは、最初の発言者が言われたと思うのですが、「この部 会はどの病院を対象に考えていったらいいのだろうか」という疑問でした。先端的なI Tを追求するにはふさわしいプレゼンテーションだったと思うのですが、予算も何もな い、そういった病院も山のようにあるわけで、日本全体の医療安全を考えたときに、ど うなのかということが最後まで頭に残っていました。  ドクターもナースも業務が増えるということをおっしゃっています。それですと、肝 心要の患者のケアはどうなってしまうのだろうかということを、現場の看護師さんにお 聞きしたいと思います。ITに入力するだけがケアではありませんで、患者の傍に行っ てお話をしたり触れたり、そういったことが本当のケアだと思うのですが、コンピュー ターにばかり向かっていて、患者の傍に行かないというような現象は起きませんか。 ○坂本委員  私は、NTT関東病院でちょうど4年目になるのですが、私も最初はそうでした。パ ソコンナースと言われるようになったらどうしようとか、画面ばかり見ている先生方で あったらどうしようということで言っていましたが、はっきり言って、今までナースが やっていた伝票類の整理や、レントゲンフィルムを持って走っていくといった業務はゼ ロになったわけです。当院でのナースの働きを見てみますと、残るは患者のケアで、そ れをきちんとやる時間は、おそらく増えているのではないかと思っています。  2つ調査をした内容においては、前から紙のカルテで仕事をしていたナースと、電子 カルテ等が入ってから入ったナースを比較してみますと、私たちが危惧しているほどI Tにおいて困難さを感じていないといいますか、あまり意識していないというか、大変 という感覚はなくて、数十年前からいる人たちは大変と思うのですが、4年目ぐらいに なっているナースは「えっ、何のことですか」というような感覚です。先生方も、きち んと調査をしますと、「あそこのカルテはどこにいった」とか、「どこにカルテがある の」という話は一切なくなりましたので、そういうことも含めて、おそらく大まかに見 ると、電子カルテ等を導入し、システム化することにより、業務は患者さんに向けられ ていると私たちは今、感じているところです。ただ、これから入れるということになる と、最初に私たちが感じたような疑問や、精神的な負担は大変あるのではないかと思い ます。 ○山西参考人  国際医療センターでも、最初に導入するときは、やはり抵抗がありました。ただ、従 来のシステムが非常に煩雑なシステムで、それを改善して導入しましたので、看護業務 としては、ベッドサイドに行く時間がそんなに減ったとは考えておりません。増えてい るというのは、指示受けに時間がかかっていた分が、コンピューターでやる時間に代わ ったということです。従来、指示受け業務はコンピューターに向かっていたわけではあ りませんので、その辺のところの表現の違いだと思います。業務量としてきちんとデー タは出しておりませんが、コンピューターの前にずっと看護師がいるのかと誤解される と困るのです。超過勤務等も、そんなに多くはなっておりません。最近は短くなってき ております。データをきちんと出す必要性を感じております。またご報告したいと思い ます。 ○堺部会長  では、稲田委員どうぞ。 ○稲田委員  先ほど岩崎室長のお話にもあったのですが、医療事故の防止という点で、IT化によ った情報が明確になって、リアルタイムに流れるということは非常に大切なことだと思 います。もう1つ、こういった分析ができることにより、それぞれの医療行為の行程を 分析することにより、どこに過ちが起こりやすいかということも分かってくると思いま す。先ほど、医療ミスや、薬物の廃棄が減ったというお話があったのですが、例えばシ ステムのエラーとヒューマンエラーが、一体どこに原因があったのかを分析をなさって いるのかどうかということと、もし仮にヒューマンエラーが関与しているとしたら、そ れを改善するためのフールプループ、あるいはフェールセーフといったもので、システ ムそのものを改善していくようなことが実際になされるか、そういったシステムの柔軟 性についてお伺いしたいと思います。  もう1点、医療事故でいちばん多いのは、いまはナースのサイドからだけなので、是 非、薬剤部や、実際に使っている医師の方の意見もお伺いしたいと思います。お願いい たします。 ○堺部会長  いまの稲田委員のご質問について、いかがでしょうか。 ○山西参考人  ヒューマンエラーの部分で、具体的な事例は、先ほど発表しましたが、伝票を貼り間 違えたりというのがたまにございます。それと、PDAでの入力のミスもたまにあり、 データとしてはとっているのですが、まだ全体の中でどのくらいという集計等はできて おりません。そこの部分をもう少し、各病棟からの報告書が、このシステムの中に組み 入れられて上がるように、できればしてほしいという希望は持っているのですが、そこ までまだシステム化されておりません。 ○土屋委員  やはり、こういうITが非常に進んだ病院のシステムを見て大事なことは、それが一 体、ほかにどのように使えるかというときに、何もシステムそのものを使うという考え 方をすることはないわけです。システムなどというのは、道具そのものなのです。実 は、両病院ともプロセスの分析、あるいはイベントの分析を細かくなさっていると思う のです。こういうものが示されてくると、他の病院においては、それをまず自分の所で チェックするということを行うと、そのことはコンピューター・システムを導入する以 前の話として非常に役に立つわけです。何が標準かというのは、今すぐに決められるも のではないと思います。しかし、こういうことがだんだん公開されるようになります と、「ああ、こういうやり方があるのだな」ということで、随分変わってくると思いま す。それは、多大な費用をかけて新しいシステムを導入するよりも、極めて重要なこと だと思います。薬剤のエラー防止ということについて言えば、おそらく、薬剤部がどう いう供給体制をとるのか、薬剤の供給体制あるいは管理体制というものを、基本的に再 検討するということで随分変わってくるのではないかと思います。 ○嶋森委員  私も土屋委員と似たような感想を持っています。こういうレスカルテシステムを入れ るというのは、プロセスの管理を的確に行うことと、その結果を二重、三重に記録をし たりする複雑な手間になるのを防ぐという意味で、安全にならないはずはないと思うの です。ただ、そのことをいかに簡単にやれるようになるかというのが1つと、それによ って複雑になった分と、電子化をしたことによって省略された部分を明らかにしていく ということ、プロセス管理に時間をかけられるような仕組みを、つまり電子化ができな いところも、きちんとそういう時間をとれるように組み立て直すということの参考にで きると思うのです。  どこもかしこもがお金をかけるというのはなかなか難しいのですが、私としても、で きれば電子化をすることによって、かなりの部分が省略化されて、つまりプロセス管理 を的確に出来る時間ができるということが、このIT化の非常に重要な点だと思いま す。やはり予算化して、お金を出して、できるだけプロセス管理を的確にできるような 仕組みをどうやって病院全体が持っていくかということをきちんと目標にして活動を推 進する、ということが重要ではないかと思います。  つまり、看護師は、今までこういう複雑な作業を現場でいくつも積み重ねてやるため に、結果的にヒューマンエラーを起こしているということですから、プロセス管理を的 確にやった上でも、どこにヒューマンエラーが起こるかという辺りを明確にするのが、 ヒューマンエラー部会かなと私自身は認識しています。 ○山路委員  私は、1年余りヒヤリ・ハットの検討会に参加しておりました。私は、去年まで新聞 記者をやっておりましたので、第三者の部外者として率直に意見を申し上げたいと思い ます。前回までの議論と、本日のIT化の話を聞いて、1つ思いますのは、ケアの質の 問題です。ヒヤリ・ハットの場合は、膨大な資料を集めて、非常に詳細な分析をしたの ですが、結論としては、こういう危険なことがありますから気をつけましょうと言う話 で、本日のIT化の話は非常に高度な話ではあるのですが、その間のケアの質をどう高 めていくのかということについての議論が、どうも抜け落ちているのではないかという 気がしてならないのです。  前回のヒヤリ・ハット検討会の中で、慶應大学病院と京都大学病院の事例の発表があ ったのですが、そのときに夜間の転倒防止の報告がありました。1つは看護基準の問 題、例えば夜間に50人患者がいて、実際に看ているのは2人だけ、その前提としてある のは、看護体制をこれ以上強化するのは無理だということ。転倒事例は非常に多いので すが、転倒については、確かにベッドから立ち上がったときに、センサーで見られるよ うな仕組みはできているのですが、ただトイレに行くまでの体制を、どうケアするのか ということについてはできていない。  例えば、看護師の配置基準を高めましょうとか、あるいは看護師が無理であれば、そ れ以外の普通のヘルパーの方々を配置するということはできないのだろうかという問題 です。それは、費用対効果から考えれば、案外、そういう人員配置をすることによって 医療費の節約になるかもしれない。そういう意味での議論が抜け落ちている。結局、医 療保険制度上の問題になると思うのですが、「気をつけましょう」と言うだけでは、や はり限界がある。体制の問題をどうしていくのかということも含めて、今後の問題では 検討していただきたいということを、率直な感想として申し上げたいと思います。 ○三宅委員  私も、IT化というのは非常に重要なテーマで、安全以外にも非常に大きい効果があ ると思っているのです。国際医療センターのシステムは、私も非常に興味を持っている システムなのですが、今日のご発表を聞いていて、看護師さんたちは働きやすくなった のかどうか。お話を伺っていて、あまり嬉しそうな感じを受けなかったのですが、実際 はどうなのだろうかということを、私は聞きたいような気がするのです。 ○堺部会長  これはお答えしにくいような気がしますが、どうですか、嬉しいですか。 ○森田参考人  最初、導入された当時は、システムの操作に慣れていないということで、看護師のほ うから「何故こういうことをしなければいけないのか」という声がよく聞かれていたの ですが、実際にオーダリングが導入されたことで事務的な作業がある程度少なくなった り、システムダウンしたときに、紙カルテに戻って、温度板を手書きするという作業が 必要になって来た時など、改めて今のITは必要なのかなという声も聞かれるようにな りました。  ITを使うことによって業務量が増えたと言っている看護師もいますし、中には必要 なことだと言っている者もいます。今まで自分の目で確認していたのを、しっかりとI Tが確認してくれているという、安心感があるという意見も聞かれています。患者も、 バーコードを使うことで、例えば看護師が作業手順として、読み込まずに薬剤を投与し たときに、患者様のほうが「あれ、読んでくれないの」と。患者様のほうも、医療ミス に対する意識が高まってきている、そういう効果も出てきているのではないかと感じて います。  看護ケアに関しては、先ほど山西部長も言っていましたように、業務量調査をしてい ませんので、増えているのか減っているのかは、はっきり分からないのですが、看護ケ アに対しての時間は、決して少なくなっているとは思っていません。ただ、コンピュー ターが目の前にあるので、どうしてもコンピューターの前に座ってという時間も少なく はないと感じます。しかし、それは、今まで紙カルテからとった指示の時間だったり、 伝票整理をしていたり、レントゲン整理をしていたりという時間だったりということも あるかと思います。実際問題として、うちは全部が稼働していません、紙の部分もあり ますので、IT化されたことで減っているというふうには、はっきりとはお伝えできな いような状況です。 ○堺部会長  ありがとうございました。時間も限られていますので、次のテーマに移らせていただ きます。「医療に係るIT化に関する国の主な施策」に関して、これは事務局から報告 をお願いします。 ○事務局  資料3の「医療に係るIT化に関する国の主な施策」についてご説明させていただき ます。まず「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザインを提示」ということ で、平成13年12月に行っています。電子カルテ等を普及する数値目標を設定、これは5 年間にわたるアクションプランとなっています。電子カルテに関しては、全国の400床 以上の病院の6割以上を平成18年までに、全診療所の6割以上も平成18年度まで、とい った目標が掲げられています。  次に「電子診療情報安全活用モデル事業」ですが、こちらは本年度の予算です。目的 は、地域の中心的役割を果たしている医療機関と周辺の医療機関に、電子カルテを導入 した医療情報ネットワークシステムの構築にあたり、安全に電子的な診療情報を交換す るためのセキュリティ重視をした事業をモデル的に実施するという内容です。事業内容 としては、地域の医療機関のネットワーク化、医療現場における実証実験を通じて、診 療情報をインターネット経由で安全に交換する際のセキュリティが、実際に実用化でき るかどうかについて、モデル的に実証的な実験を行うということです。また、その効果 を実現方法とともに広く公表するといった目的になっています。  3つ目は「医療の安全の確保に資する機械及び装置並びに器具及び備品の特別償却制 度」ということで、対象機器7品目を掲げています。人口呼吸器、シリンジポンプ、生 体情報モニター等7品目に関して、これらを購入した際の特別償却、減価償却というこ とで、取得価格の20%を1年目に加算できるという特別税制の1つです。適用期限が平 成17年3月31日までとなっています。説明は以上です。 ○堺部会長  この説明について、何かご質問、ご意見はございますでしょうか。 ○貫井委員  今の説明は、厚生労働省の施策としてということですか。私どもは、国立大学附属病 院が国立大学法人の附属病院になりましたが、医療の施策が厚生労働省がおやりになっ ていても、文部科学省の支配下の病院には及んでこないのです。ここの辺りをどう考え ておられるのかお聞きしたいのです。大変いいことをやっていただいても、なかなか参 加できないというところがあって、いつも矛盾を感じているわけです。厚生労働省管轄 下の病院は、いろいろしてもらえていいなと思っておりますが、どうなのでしょうか。 ○堺部会長  これもややお答えになりにくいご質問かと思いますが、よろしくお願いします。 ○医療安全推進室長  補助金関係のものは、国から国への補助金はできないというルールになっており、文 部科学省立の病院だけではなく、厚生労働省立の病院にも、補助金は提供できないとい うルールになっていますので、それは同じです。ただ一方で、IT化については、さま ざまな形で施策を打たなければいけないのですが、この前に実は電子カルテについての 補助金があり、それはどちらかというと公的医療機関に流れていますし、それぞれのそ ういう補助金が設置できないような設置主体、国の設置主体でも別途、多くの場合に予 算を組んでいることが多いので、効果としてはあまり変わらないのではないかと思って います。当然、その中では競争がありますので、どこが取れるかということで、それは 国であろうが国でなかろうが、それぞれのグループの中であるかと思います。 ○三宅委員  アクションプランの、電子カルテで400床以上の病院、平成18年度までとあるのは、 18年度まで補助金を出すということですか。 ○事務局  あくまでも400床以上の病院6割というのは達成目標で、予算的な管理の進行計画と パラレルなものではありません。これまで病院への電子カルテの導入については、補正 予算等で平成13年は107カ所、平成14年度134カ所に、導入負担の軽減を図るための措置 を行ったほか、さまざまな基盤整備の取組みとして、情報化に必要な用語コードの体系 の整備、その他、先ほどご説明がありました電子化してネットワーク上で安全に情報を 取り扱うためのセキュリティの在り方の検討、あるいは標準的な電子カルテの在り方、 これは使いやすくてより低廉なシステムが市場に行きわたるための取組みで、そのよう な検討を鋭意行っているところです。そのようなさまざまな施策を組み合わせることに より、官民の役割分担の下で、このような達成目標を目指しているというのが、グラン ドデザインの趣旨です。 ○堺部会長  では、次のテーマに移らせていただきます。資料4「医療安全対策ネットワーク整備 事業、ヒヤリ・ハット事例収集等事業の第8回収集結果」について、事務局から報告を お願いします。 ○事務局  資料4「医療安全対策ネットワーク整備事業、ヒヤリ・ハット事例収集等事業の第8 回の集計結果」についてご報告をさせていただきます。資料が非常に大部ですので、要 点をかいつまんでご説明いたします。  「第8回集計結果の概要について」ですが、報告対象期間が平成15年4月1日から、 同年6月30日までの3カ月間のヒヤリ・ハット事例になります。参加登録施設は250施 設、報告施設が72施設ありました。報告数は、全般コード化情報が、12,909事例、重要 事例情報が477事例、医薬品・医療用具・諸物品等情報が179事例収集されています。  5頁、個別の分野についての報告です。まず、全般コード化情報について「分析結果 」ということで、全事例の報告です。報告事例数が約2割、前回より増加しています が、頻度分布に特に大きな変化は見られず、全体的にほぼ同様な傾向となっています。 特記すべき事項としては、「患者の性別」というところで、前回も指摘があったのです が、男性患者に発生したヒヤリ・ハットの件数が、女性患者よりも多いといった傾向 が、幅広く見られています。  6頁2)「処方・与薬」の内容。7頁「発生場面×発生内容」で、内服関係のヒヤリ ・ハット事例が非常に多いという中で、患者間違い、あるいは薬剤間違いという重篤な 結果につながりかねない事例が合わせて1割以上発生しているという状況でした。  3)「ドレーン・チューブ類の使用管理」においては、全事例の頻度分布と比較する と、相対的に土日・夜間などのリスクが高いと推測されています。  7頁の最後「医療機器の使用管理」。8頁「影響度」で、実施されていれば患者への 影響が大きい、生命に影響すると思われる事例が18件と、今回大幅に増えていました。  5)「輸血」、全事例の件数が増加しているにもかかわらず、輸血に関するヒヤリ・ ハットの発生件数は、前回より減少したという状況です。  17頁以降が集計結果の表とグラフになっています。時間の関係上、割愛させていただ きます。後ほどご覧いただければと思います。  89頁「重要事例情報の分析について」です。3)「収集件数」、総収集件数が477件、 有効件数が464件ありました。分析の結果に関しては、92頁「全体の概要」で、前回に 比べて報告件数が半数程度に減少しています。報告数が多い事例の種類は前回と同様だ が、個別の割合については変化が見受けられている。報告数が比較的多かった転倒・転 落や、チューブ、カテーテル類に関する事例が大幅に減少し、与薬にまつわる事例が全 体の半数以上という形に、今回の報告ではなっています。  93頁、与薬に関する事例の具体的なものとしては、最初の○、危険な薬物投与に関す る新人のヒヤリ・ハットがある。新採用時に危険な薬物を例示し、取扱いに関しての教 育や、1人で行なってもいい時期の判断基準などを検討する必要がある。委員の先生方 はご存じかと思いますが、キシロカインの話などを受けて、また通常のこういったヒヤ リ・ハットの中でも、発生要素は同じようなものが報告されている状況です。  次の○の真ん中以降、処方箋に記載されている医薬品と薬剤師が調製した医薬品が異 なるという報告、あるいは薬剤自体を取り違えるケース、規格違いのものを調剤するケ ース等が報告されています。  (3)転倒・転落に関する事例です。○の2つ目、患者の状態から危険を推測し、事 故を予防できると考えられる事例が多い。確実なアセスメントシステムを導入し、それ でも予防ができない事例については、詳細な背景要因の分析と検討が必要であるといっ たコメントが寄せられています。  96頁、その他の注目すべき事例です。○の2つ目、インスリンの事例が依然として多 く報告されています。あるいは、○の最後、横断的に患者誤認が見られています。  97頁、まとめです。○の最初、今回は抗がん剤、塩化カリウム、塩化ナトリウムをは じめとする電解質輸液、カテコールアミンなど生命に危機の生じる恐れのある医薬品の 取り違いが多く報告されており、報道などでも言われているような、同じような傾向が 出ています。○の2つ目、人口呼吸器の管理や、手術で使用される資材・機材の管理に おいて、特に連携の不備、コミュニケーションエラーが原因と推測される事例が多々見 受けられています。○の3つ目、非効果的な安全のための確認作業により、かえって業 務を多忙にしてしまうことやリスクを高めてしまう恐れがある。その対策が効果的なも のであるか、常に評価・改善しながら、安全管理体制を確立していく必要がある、とい うようにまとめられています。  具体の事例の報告については、101頁からが分析集で、13件ほど個別の事例について 掲げており、それに対してのコメントが記載されています。例えば、106頁、ヒヤリ・ ハットの内容として、昇圧剤等の輸液量の指示、これはコミュニケーションエラーで す。また112頁、ワンショットで打つような注射薬を血管確保用の本体に同時に混入し てしまうという事例。130頁では、MRIで具体的に指示のあった検査とは違った内容 の検査がされてしまったということ。また、手術のときにカツラを着けていることがオ ペ場で分かった、そのまま知らずにいくとやけどをしていた可能性があった、といった 事例が報告されています。これら13件について、コメントが書かれています。  139頁以降が、今回寄せられた464件全例についての記載です。こちらも後ほどご確認 いただければと思います。  次に薬剤関係のご報告をさせていただきます。163頁の1番、分析対象は総事例数 179、うち分析対象事例数が179です。内訳は、医薬品関連情報が134、用具関連が40、 諸物品が5です。2番目、数で多いのが、上から順に規格違いが31件、勘違いが14件、 名称類似と記号違いが13件、数量違いと続いています。前回と比べて、1番、2番は変 わりありません。3番以降が若干入れ替わっています。  164頁は用具関係です。管理が不十分が18件、故障が6件です。前回と比べて、管理 は同じようにいちばん多い。故障は前回は低かったのですが、今回は同様のものが複数 報告されて6件となっています。物品については、今回は5件の報告で、前回と比べて あまり突出したところはありません。  165頁は、前9カ月の分と比較したものです。規格違いが128件、勘違いが76件、以 降、名称類似、記号違い、薬効類似等々と同じように続いています。166頁、用具につ いては、管理が不十分がいちばん多くなっています。  個別の症例について紹介します。181頁のアミパレンとアミノレバンとの名称類似の 勘違いが3件続いています。182頁にも同様のものが72番の症例で1件あり、今回、同 様のものが計4件の報告です。名称類似については、186頁の98番の症例に、タキソテ ールとタキソールの報告があります。以前から報告が多いものですので、何らかの対処 が必要と思っています。時間の関係上、残りの症例については、後程ご覧いただければ と思います。 ○堺部会長  ありがとうございました。ここまでのご説明に、何かご意見がございますでしょう か。先ほど山路委員からご指摘いただいたことも、ここに含まれると思います。いかが でしょうか。  ないようでしたら、先に進ませていただきます。参考資料の1〜3について、事務局 から報告をお願いします。 ○事務局  参考資料の1〜3まで、順次ご説明させていただきます。まず参考資料1「単回使用 医療用具に関する取り扱いについて」です。平成16年2月9日に、表記の通知が医政局 長より出ています。中身については、前回のヒューマンエラー部会において議論になっ た単回使用、シングルユースの医療用具の再使用に関する通知です。ペースメーカーや 人工弁等の埋め込み型の医療材料について、医療安全や感染の防止を担保する観点か ら、その性能や安全性を十分に保証し得ない場合は再使用をしない等の措置をとるな ど、医療機関として十分注意されるよう、関係者に対する周知をお願いした通知です。  参考資料2「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)の 実施について」ということで、こちらの通知では大きく2点ほど、医療機関に周知して います。従来、対象機関が限定されていたものを、全医療機関に拡大をするという趣旨 です。また、収集体制に対して見直しを行う、という趣旨についての通知です。具体的 な見直しの内容は、3頁、収集情報の中、全般コード化情報について、経時的比較等の 分析を実施するために、医療機関を定点化するということ、従来3ヶ月ごとの収集期間 であったのを、6ヶ月ごとの収集期間にするという、全般コード化情報についての変更 点が1点です。また、情報の収集・集計ということで、対象の機関が全国の医療機関に なるという、この2点について3月4日にお知らせをしたところです。  9頁、平成16年3月30日に「ヒヤリ・ハット事例収集事業の実施について」というこ とで、改めて正式な通知をしています。通知の内容は、「収集する事例の追加」という ことで、別紙、2(1)(3)「誤った医療行為等が実施され、その結果、軽微な処置・ 治療を要した事例」を追加するとなっています。こちらは、本年度から開始する予定の 事故事例収集事業において、事故事例として収集する範囲が重篤な処置・治療を要した 事例までとなっていますので、従来行っていたヒヤリ・ハット、患者に全く害のなかっ たところとの間に隙間が生じてしまうということで、こういった軽微な処置・治療を要 した事例については、今年度からヒヤリ・ハット事例収集事業のほうで収集をするとい う旨の通知です。  10頁「収集実施期間の変更」ということで、従来、医薬品副作用被害救済・研究振興 調査機構で収集していましたが、本年4月から財団法人日本医療機能評価機構のほうに 収集の事務局、あるいはデータベースを置いていただくという形になり、その内容につ いての通知です。  本日お配りした「ヒヤリ・ハット事例収集事業登録施設数」ですが、本年の5月28日 現在、登録されている施設数についての報告です。従来250ほどの医療機関だったので すが、5月28日現在で、トータル数が1,023施設になっています。従来は、特定機能病 院、国立病院関係(独法を含む)となっていますが、こちらのカテゴリーの所が主でし た。それ以下の種別について、今回改めて対象機関となった所は、医療関係団体(日赤 ・済生会等)が164、医療法人あるいは公益法人その他が344施設等々、トータル1,023 施設の登録が5月28日現在で行われています。まだ登録施設数は増えている状況です。 これについては、また随時ご報告をさせていただきたいと思っています。  参考資料3「ヒヤリ・ハット(重要事例)情報データベース公開事業について」とい うことで、従来ヒヤリ・ハット情報の中で、重要事例を集めて、本日のような形で公開 してきましたが、ペーパーベースではなかなか調べにくいというご意見をいただいてお りました。それに対して、データベースという形で公開する運びになっています。テス ト運用を3月15日から31日まで行い、その後、こちらに書いてあるアドレスで正式な運 用を開始しています。ご承知おきいただければと思います。事務局からは以上です。 ○堺部会長  資料1〜3についてのご質問、ご意見はございますでしょうか。冒頭にも申し上げま したが、できるだけ委員の皆様方のご意見を伺いながら進めるという時間をとりたいと 思っております。本日、時間の関係で十分ご発言いただけなかったこともあろうかと思 いますが、今後どうかよろしくお願い申し上げます。それでは、本日の質疑はここまで にいたしたいと思います。次回の日程等について、事務局から連絡をお願いします。 ○事務局  次回の部会は、6月21日(月)13時半〜15時半、場所は今回と同じ厚生労働省共用第 7会議室を予定しております。 ○堺部会長  本日はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。                     (照会先)                      医政局総務課医療安全推進室指導係長                       電話 03-5253-1111 (内線2579)