04/05/28 感染症分科会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会第六回議事録 厚生科学審議会感染症分科会感染症部会 新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会                      平成16年5月28日(金)                15:00〜17:00                                       厚生労働省省議室(9F)                議  事  次  第 1.開  会 2.議  題 1)新型インフルエンザワクチンについて 2)新型インフルエンザ対策検討小委員会報告書骨子(案)について 3)その他 <資料> 資料1 インフルエンザパンデミックの前及び最中に於ける優先的公衆衛生学的介      入に関するWHO専門家会合【抜粋】 資料2 インフルエンザパンデミックワクチンの開発に関して 資料3 新型インフルエンザ対策検討小委員会報告書(改訂版)骨子案 資料2 1資料1資料1参資料考資料2−2 鳥インフルエンザ緊急総合対策について ○廣田委員長 それでは、ただいまより「新型インフルエンザ対策に関する検討小委員 会」を開催いたします。 最初に牛尾課長よりごあいさつをお願いいたします。 ○牛尾結核感染症課長 委員の皆様方には大変お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。 私のごあいさつと申し上げますよりは、本日の議題及びその目的につきまして、まず最 初に御報告と申しますか、御説明させていただきたいと思います。 本日の議題は2つございまして、1つが、インフルエンザワクチンについてでござい ます。新型インフルエンザ対策として非常に大きな役割を持つものでございまして、言 うまでもなく国際的にも今、非常に精力的に検討されているわけでございます。 これにつきましては、まず最初に前前回、3月に開催いたしました委員会で簡単に御 報告申し上げましたが、WHOの専門家会合、これは非公開でございましたが、それの 概要が出てきましたので、それを訳したものを簡単に御報告させていただきたいと思っ ております。 それに加えまして、本日はワクチンに関する現在の課題等を整理し、今後の参考とす るために、ワクチンのメーカーの方々にお集まりいただきまして、諸課題、あるいは展 望等につきまして、御説明をいただくという予定でございます。お忙しい中、製薬会社 の皆様、本当にありがとうございます。後ほどよろしくお願いいたします。 2つ目の議題としておりますのが、本委員会の検討会報告書の骨子でございます。具 体的には平成9年度の報告書というものがございましたが、それを新しくするというの が本委員会でございました。これまで数次にわたり開催させていただきましたが、その 内容につきまして、骨子として整理させていただきました。したがいまして、本日はそ の骨子の中に抜けていることがないかということを中心に御指摘、あるいは御意見をい ただければと思っております。 それから、前回同様、本日は加地先生にも御参考人として御出席していただいており ます。引き続き適宜御助言をいただければと思っております。 なお、委員につきましては、本日は南委員が少し遅れられるというふうに聞いており ます。また、木田委員は都合により御欠席であるという報告。 それから、岡部委員は所用によりまして、途中で退席されるということも伺っており ます。 以上でございます。ごあいさつに代えまして、本日の議題及びその目的等について御 説明申し上げました。本日も忌憚のない御意見をいただければ幸いでございます。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○廣田委員長 それでは、本日の「議題1)新型インフルエンザワクチンについて」ですけれども、 前前回、3月の会議でその概要について説明がありましたWHO専門家会合に関しまし て、まとめがプレスされましたが、このワクチン部分について、まず事務局から御説明 をお願いいたします。 ○中里感染情報専門官 それでは御説明します。資料1をごらんください。 先ほど委員長から御紹介がありましたとおり、3月16日から18日にかけて、WHO 本部におきまして「インフルエンザパンデミックの前及び最中に於ける優先的公衆衛生 学的介入に関するWHO専門家会合」というのが開催されました。その概要については、 先ほど課長が申しましたように、3月23日に開催しました第4回検討小委員会において 御報告をいたしました次第ですが、そのプレスされたまとめについて今日は御紹介した いと思います。 本日の議題は新型インフルエンザワクチンでございますので、その参考としてワクチ ン部分についてのみ抜粋して御紹介いたします。 まず「より良いワクチン−より良いアクセス」というタイトルでございます。 1番として、季節的インフルエンザ、パンデミックインフルエンザいずれにとっても、 ワクチンが唯一の重要な手段であるということを述べています。 2番目に、パンデミックが始まった段階で適切なワクチンを持っている国はないであ ろう。また、パンデミックウイルスを分離してから、初回ドーズ生産に至るまでには、 最低4−6か月必要である。 また、あらかじめ備蓄するというオプションはないということが述べられています。 3番目に、ワクチンの生産能力はバンデミック以外の年のワクチンの需要に左右され、 結果として限りがあるということです。 4を飛ばしまして、5ですけれども、パンデミックウイルスに対するワクチン生産は、 その開発、ライセシング、生産、出荷に緊急性が要求される点で特殊な面がある。 6として、パンデミックワクチンの速やかな大量生産に対して、知的財産権、生産工 場におけるバイオセフテイ要件、臨床試験の調整と財源等の大きな制約がある。これら の制約については、国際的に問題にすることが解決の早道であるいうことか述べられて おります。 7として、各国の問題として、安全性がはっきりしない新しいワクチンを大量に使用 する際のライセシング手続、試験、並び企業責任の問題を考えておかねばならないとい うことを述べております。 8としまして、供給量を上げるための短期的解決法は、抗原量を少なくし、抗原性を 上げるためにアジュバントを使用することである。 また、パンデミックになり得る可能性のあるウイルスサブタイプに対するワクチンの パイロットを準備することが挙げられております。 しかし、こういったことは企業にとっては決して使われないかもしれない製剤に投資 するのでありますので、その財政的裏付け、あるいは他の動機付けが必要となるという ことも併せて述べております。 9としましては、公的資金は、まずサブタイプ共通で、免疫が長期持続するワクチン の開発に向けられるべきであるということです。 10としましては、パンデミック以外の年によりたくさんのワクチンを使えばワクチン の生産能力は上がるけれども、これはインフルエンザが各国で他の保健健康関係上、ど のくらい重要な位置を占めるかということで決まってくる。パンデミック年以外でワク チン使用を増やす方法としては、地域的なワクチン生産戦略と購買構造につき考える必 要があるということを述べています。 11として、各国は、あらかじめワクチン供給に限度がある場合の接種優先集団をどれ にするか。ワクチン供給が上がってきた場合の接種対象者をどう広げるかについて決め ておかねばならない。 12は省略いたします。 以上でございます。 ○廣田委員長 ありがとうございました。これは御紹介ということですので、これについて議論をする というよりも、このようなWHOの提言を踏まえながら、ワクチン問題について考えて いきたいと思います。 引き続きまして、製薬会社4社より代表の方にプレゼンテーションをお願いいたしま すけれども、それに先立ちまして、細菌製剤協会と製薬会社4社の方の自己紹介をいた だけますでしょうか。 ○内田氏 細菌製剤協会から参りました内田でございます。よろしくお願いします。 ○後藤氏 細菌製剤協会の中にインフルエンザパンデミック専門委員会というのが今度 発足しまして、その中の化血研の後藤でございます。 ○五反田氏 北里研究所の五反田と申します。よろしくお願いします。 ○福家氏 阪大微研会福家と申します。よろしくお願いします。 ○桑原氏 デンカ生研の桑原でございます。よろしくお願いします。 ○廣田委員長 それでは、プレゼンテーションをお願いいたします。 ○後藤氏 細菌製剤協会のインフルエンザバンテミック専門委員会を代表いたしまして、 化血研の後藤がパンデミックワクチンの開発状況について御説明いたします。 先ほど御紹介にありましたように、パンデミック対策におけるワクチンの位置づけと しまして、WHOのガイドラインに、WHOはワクチンはアンチウイルス製剤とともに、 包括的なパンテミック対策の不可欠な構成要素としているというふうに謳っております。 また、ワクチンについては1945年に最初のワクチンが開発されまして、続いて1972 年にスプリットワクチン、1976年にサブユニットワクチンが開発されました。 1997年にはアジュバントワクチンが開発されてきました。その間、多くの解析がなさ れてきましたが、ワクチンについては、一定の効果が確認されてきているというのが現 状でございます。 パンデミック対策においても、ワクチンは最も有効な対策の1つと考えられておりま す。そのためには、できるだけ早く、できるだけたくさんのワクチンを製造する必要が あるというふうにコメントしております。 世界の製薬メーカーが参集しておりますIFPMA、世界製薬協の中に、IVS−タ クスフォースと言いますワクチンのメーカーが参集してパンデミックワクチンの開発に 取り組んでいます。この世界の動きといたしまして、パンデミックは世界的な公衆衛生 上の大問題であり、ワクチンメーカーはそれが属する国と地域でのワクチン製造に責任 があるというふうに謳っております。 当然私ども細菌製剤協会でも、ワクチンの製造には大きな責任があると理解しており ます。 パンデミックワクチンの製造は通常のビジネスとは大きく異なります。いつ来るかわ からないようなパンデミックに対して事前に用意をおくというような通常のワクチンと は違う問題であります。したがって、ワクチンメーカーは規制当局間の連携と役割分担 を明確にする必要があると言っております。 2004年度はIVSタスクフォースの考え方といたしまして、H5N1株のモックアッ プワクチンを作成し、これは模擬ワチクンですけれども、剤型、安定性の検討を行い、 承認申請のための臨床試験等のデザインを作成するという計画で動いております。 ワクチンの生産量は、剤型、備蓄の可能性、新規技術の導入などに左右されます。新 たな増産体制を整備するためには、製造設備のバリデーション、製造要員の教育などを 含めて、3〜5年かかるというふうにIVSタスクフォースの方は述べております。 私ども細菌製剤協会は、この世界製薬協、IVSタスクフォースの中に参入いたしま して、パンデミックワクチンの開発、製造、供給に関する情報、検討を共有化いたしい まして、パンデミックワクチンの開発に取り組もうとしているところでございます。 もう一方、WHOのコラボレーティング・センター等の情報を取りながら、当然、厚 生労働省、感染研の御支援・御指導を仰ぎながらパンデミックワクチンの開発に着手し た段階でございます。 パンデミックワクチンとインターパンデミックワクチンということで、インフルエン ザウイルスは、御存じのとおりH1〜H15までの亜型がございます。人類が感染経験を 持つウイルスは、H1、H2、H3の3つのみでございます。これにつきましては、ワ クチン製造の経験もあります。 では、パンデミックの原因となる可能性があるのは、H4〜H15があるわけですけれ ども、H2のアジア型というのも、まだ可能性は残っております。 こういうようなH4〜H15の亜型のウイルスを用いても、、現行の製法で有効な安全 なワクチンが製造できるかと言いますと、感染の経験のないウイルスですので、人は既 存抗体を持ちません。現行の製法で製造したワクチンで十分な予防効果が期待できるか というのが問題でございます。 そういうことで、新型ウイルスに有効なワクチンの製法、剤型とか用量・用法、そう いうようなもの、製法の確立はできておりませんで、今から解決していきなければいけ ない問題だという状況でございます。 パンデミックワクチンの開発・承認申請ということで、パンデミックが起こりまして、 ワクチンの開発、製造を行っておりましても、遅いわけです。その対応策としてモック アップワクチンでの開発と事前承認を得ておく方法が提案されています。モックアップ ワクチンにつきましては、ヨーロッパのEUのEMEAがガイドラインを出しておりま す。 通常のインターパンデミックの時期にパンデミックと想定されるウイルスをワクチン 株にいたしまして、ワクチンの財型、摂取用量・用法、摂取ルート、こういうものを規 定いたしまして、インターパンデミック時に、モックアップワクチンで臨床試験をいた しまして、事前承認を受けておくという考え方をEUのEMEAのガイドラインは謳っ ております。 我々も現在そういう考え方で進める方向で今行っておりまして、インターパンデミッ ク時にモックアップワクチンの製造承認、臨床試験のデザインを作成しておく必要があ ります。モックアップワクチンの製造株は何にするかということですが、H5、H7、 H9、H2というように、ヒトにセンシティブな亜型のウイルスを選定しなくてはなり ません。一体何を選定するかということです。 強毒のインフルエンザウイルスですので、そういう強毒なウイルスを製造シードにす る為には弱毒をする必要があります。リバースジェネティックの遺伝子改変の方法でウ イルスを弱毒化したNIBRG−14株というのが現在作製されています。この株がモッ クアップワクチン株として候補に上がっております。我々もこのワクチン株を使いまし て、モックアップワクチンの製造、開発ということを計画しようという段階でございま す。 ワクチンの剤型ですけれども、現行のワクチンの製造ライセンスは、スプリットワク チン、それから全粒子ワクチンの2つの剤型がございます。先ほどありましたように、 少ない抗原量で効果の高いワクチンをつくるためには、アジュバントを加えまして、抗 体産生の高いワクチンに仕上げるということが必要ではないだろうかというような考え 方が今は主流になっております。 そういうことでモックアップワクチンとしてスプリットワクチン、全粒子ワクチンを 作製し、アジュバンドのあり、なし等の試験をデザインし前臨床試験それから臨床試験 フェーズ−I、フェーズIIを行いましてスプリットワクチンでいくか全粒子ワクチンで いくか、アジュバントを加えるかというようなモックアップワクチンの剤型を決定して いく計画です。このようにしてインターパンデミック時にモックアップワクチンによる 事前承認申請と認可を受けておくということを考えております。 いざパンデミックがまいりましたらば、パンデミックワクチンの製造に取りかかるわ けですけれども、ワクチン株の作製につきましては、WHOのレファレンス・ラボ等で リバースジェネティックの方法を使いまして、ワクチン株の作製があると聞いておりま す。 このワクチン株の安全性、抗原性が確認された後に各国の管理機関からメーカー へのワクチン株が配布されるという方向で動くと聞いております。 その後、パンデミックワクチンの製造を行います。最低1カ年程必要とする臨床試験 等により安全性と効果について確認後製造認可が行われるのですが、、それを行ってお りますと、パンデミック時には間に合いませんので、モックアップワクチンでの臨床試 験の成績でおおよその安全性、効果等が確認されているという前提条件で、この段階で は臨床試験を経ず、品質試験のみによる確認によって製造認可が下ろされることになり ます。。製造認可をいただきましたならば、パンデミックワクチンの供給という段階に いくわけですけれども、供給されて市場で使われた後でフェーズ−IVと言いますか、製 造販売直後臨床試験によって有効性、安全性の評価をするというやり方でパンデミック ワクチンの製造、安全性、有効性の確認と評価を行います。通常のワクチンと特徴的に 変わりますのは、ワクチンを使いながら有効性、安全性を確認していくというのがパン デミックワクチンの特徴でございます。 実際、我が国でモックアップワクチンをつくって、臨床試験をしていくとなりますと、 どういうスケジュールになるか我々のところで検討しております。通常のワクチンの生 産ラインを用いてモックアップワクチンの製造もするわけですので、開発スケジュール については、通常のワクチン製造期間については、試作ワクチン等の製造は不可能にな ります。通常のワクチンの製造期間は2月〜9月の間でございます。ですから、この期 間については検討ができないということになります。それを加味しまして、モックアッ プワクチンのマスターシード、製造シードを今期の通常のワクチンが終了する9月から 作製いたします。それから試作ワクチンの製造にとりかかります。 その後、治験用ワクチンを次年度の9月以降に作製いたしまして、動物試験前臨床試 験を2年目の後半から3年目にかけて実施する。 更に臨床試験フェーズ−Iでの安全性、フェーズ−IIでの用量安全性、剤型の確認を 行います。前臨床、フェーズI/IIでアジュバントワクチンにするか、スプリットワク チンにするか、ホールワクチンにするかというようなワクチンの剤型を特定していくと いう仕事が3年目までかかります。 その後、特定した剤型のものを試作ワクチンをつくりまして、フェーズIIIに入ります。 フェーズIIIは4年目に入ります。現状ではモックアップワクチンの製造ライセンスが取 得できるのは最低5年くらいかかると予測しております。そういう方向で今対応してい るという状況でございます。 パンデミックワクチンの開発に予想される課題でございますけれども、まずは国家危 機に絡む危機管理の一貫としてワクチンを開発するわけですので、厚生労働省、感染研、 私どもメーカーによる国家プロジェクトの構築が必要だろうと考えております。そうい うような考え方につきましては、WHO・IVSタスクフォースの方でも考えておりま して、世界的な連携が必要である。 それから、4社による共同開発でありますけれども、このワクチンを迅速に速やかに 効率よく開発いたしまして、来るべき時期に備えることが必要です。4社で共同して開 発するについては幾つかの問題がございます。同等の品質のものを各社で製造できるか とか。それを承認していただけるかというような問題がございます。 あと、知的所有権の問題がありまして、当然ワクチンシードはリバースジェネティッ ク方の弱毒化されたシードを使いますけれども、この方法には特許が絡んでおりまして、 特許所有者の同意とか、幾つかの研究機関との交渉が必要であります。 もう一つ、製造設備の封じ込めレベルということで、現行のインフルエンザワクチン はBSL2で製造をしております。私どもの製造設備はBSL3のハードと言うか、設 備は持っておりますけれども、実際の細かな操作、手順というソフトにつきましては、 BSL2で製造していますので、完全にBSL3でワクチンを製造するとなりますと、 ワクチンの製造量が半減するというような問題があります。ここら辺の製造設備の封じ 込めレベルをどこにするかWHO、それから規制当局の考え方が大きな問題になってま いります。 あと開発費用の問題ですけれども、開発した暁にこのワクチンが使われるという可能 性は100 %あるというわけではありません。予測のワクチンですので、開発に投入しま した費用について、回収するというようなチャンスがあるかどうかというものが考えら れます。ですから、開発費用についての支援について、協議していただきたいと考えま す。 次に賠償責任からの保護の問題でございます。このパンデミックワクチンにつき ましては、安全性等につきましては、モックアップワクチンで検討いたしますけれども、 実際のパンデミックワクチンは、使いながら有効性と安全性を見ていくという特殊なワ クチンでありますので、そういう予測が出来ない副作用が出てきた場合に、損害賠償を どこが受けるか。その取り決めはどういうことをしておかなくてはいけないかという問 題があります。そういう損害賠償を100 %製造メーカーが受けるとなりますと、かなり リスクの多い仕事になるという問題がございます。 実際パンデミックが起きた場合に、どのくらいワクチンができるか予測してみました。 算定ベースは現行ワクチンの製造シードの条件、それから製造期間という実績を基に算 出しております。ですから、実際のパンデミック製造シードが来た場合には全く同等と いうことではありません。何か基準を設けないとワクチンの製造量は算出できませんの で、現行ワクチンをベースにしました。製造期間を約9か月、ワクチンの原液製造のみ は6か月ということで算定しています。 そうしますと、今、4つのメーカーで最大の製造能力は4,000 万ドーズということが 算定できます。 パンデミックワクチンとしての考慮すべき点といたしましては、ウイルスの増殖性が 現行のワクチン製造シードと同じレベルであるということが前提です。 それから、現行のワクチンは3株混合ワクチンですけれども、パンデミックワクチン の場合は単株ワクチンであること。しかしながら、接種回数は最低2回は必要だという ことが前提です。 それから、制約されるものとして先ほどありましたように、封じ込 めレベルを現行のワクチンと同じBSL2でやるという条件を押さえておきまして、で は、一体どのくらいかと言いますと、パンデミックワクチンは4,000 万ドーズですが、 単株ワクチンですので、その3倍量できます。しかしながら、2回接種ですので、2で 割りまして、6,000 万人分の供給ができるというふうに算定しております。 この6,000 万人分ということですけれども、これはスプリットワクチン、もしくはホ ールワクチンだけの話でございまして、剤型を考える場合に、アジュバントをこれに添 加いたしますと、抗体産生能力が上がり、データはないのでございますけれども、ワク チン量は5倍から8倍量に増加するというEUでの報告があります。かなりの量ができ るということですが、これは前臨床試験、臨床試験等で剤型を決める中で確認する必要 があり、この数値は変わってくると考えられます。 我々ワクチンメーカーでどういったスケジュールでパンデミックワクチンをつくって いくかというシミュレーションですけれども、0か月から10か月のスパンで考えており ます。パンデミックのワクチンのマスターシード、製造シードを感染研等から入手いた します。その後、製造シードとしてワーキングシードを各ワクチンメーカーで作製しま す。約2か月程度かかるかと考えております。ワーキングシードをつくりながら、バリ デーションを行って、製造体制を固めて、2か月後から卵にワーキングシードを接種し てまいります。 4か月後からワクチン原液を逐次つくってまいりますけれども、凡そ 6か月間、現行のワクチンの生産スケジュールと同じように原液をつくってまいります。 原液は逐次でき上がっていくわけですけれども、出来た原液を用いてコマ目(小ロット サイズ)にバルクをつくりまして、小分けをしていきます。ですから、ここはもっと早 く少量でもいいから、ワクチンが早く欲しいとなりますと、もっと少ロットサイズで小 分けをしていくということになります。2か月間ごとに出来上がった原液毎にバルク・ 小分けをしていく計画です。こういうふうに順次4〜5回に分けてバルク・小分けをし ていくというとなりますと、このワクチンの自家検定とやってまいりますと、第1回目 に小分けをしましたものが、その後国家検定が1月〜1月半かかりますけれども、それ を経まして、最終的に国家検定に合格いたしまして、ワクチンとして包装、供給できる タイミングとしましては、マスターシードを入手しまして、5か月から6か月後にはワ クチンが市場に供給できることになります。逐次供給量は増えていきます。こういうス ケジュールで、5か月から6か月に第1回目のワクチンが供給できるというふうに計画 しております。 パンデミックワクチンの製造に関わる問題ということで、実際に我々が製造を行いま すときの問題点ですけれども、では一体いつ製造を開始するのかという問題がございま す。これについては、WHOのどのアラートレベルでワクチン製造開始という指示が出 てくるかという問題があります。 あと卵の供給の問題です。パンデミックワクチンは当然卵でつくるということですの で、卵の供給は大丈夫かということです。現行のワクチンでの卵の供給体制は十分整っ ております。通時時は雛を前年度の8月から9月に入れます。その後6か月後にその雛 が卵を産卵するようになります。その時期が1月〜2月でございます。11日間ふ化を行 いまして、ウイルスを接種するわけですので、製造ができるのは2月から8月下旬とい う期間にワクチンを製造しています。この期間でしたら、十分にパンデミックワクチン の製造は可能でございます。 しかしながら、現行のワクチンは製造をストップするという制約はございます。 パンデミックワクチンの製造がこの9月、8月以降のタイミングで製造するとなりま すと、現行のワクチンの状況とは少し製造力が落ちるというようなことが考えられます。 申し上げましたように、通常のワクチンを製造をやっておりますので、その製造ライ ンでいつから切り替えるか等の問題がございます。そういうことでパンデミックワクチ ンをつくりましても、いざ市場で使われないというリスクもございますので、ワクチン の供給の仕方、それから市場での流通の仕方、これにつきましては、国の支援と計画的 な使用方法等については、今後、詰めていかなければいけない問題だと考えております。 まとめてございますけれども、パンデミックインフルエンザワクチンの開発、供給体 制の確立までには、今申し上げたように、多くの問題がありまして、今、この問題を一 つひとつ解決していくというようなところにあるわけでございます。インターパンデミ ック時には、これらの問題を解決いたしまして、パンデミックに備える必要がございま す。 パンデミックワクチンの開発、供給体制の確立は、その公益性、重要性の点から、私 ども製造業者だけの問題ではなく、国家の危機管理の一貫として位置づけていただく必 要があるかと考えております。 インフルエンザワクチン製造業者は、厚生労働省、感染研、WHO等の国際機関から の指導、御協力、支援等を受けながら、パンデミックワクチンを迅速に供給できる体制 を構築していきたいというようなことで今、開発の起点に立ったという状況でございま す。 以上でございます。 ○廣田委員長 どうもありがとうございました。 それでは、ただいまの説明について、御質問がございましたらどうぞ。 ○田代委員 いつも話をしているので八百長の質問みたいになってしまうかもしれませ んけれども、基本的には通常のワクチンというのは、個々のそれぞれのメーカーが臨床 試験をして、それで製造承認、発売承認をするというのが原則なわけですね。こういう パンデミックワクチンというのは、つくっても売れないかもしれないし、経済的にはそ のままで考えれば持ち出しになってしまうワクチンになる可能性があるわけですけれど も、そういうワクチンのための臨床試験をやって、あらかじめ申請をしておくというこ とは、それぞれのメーカーが独自に対応できないということなんでしょうか。 ○後藤氏 今、田代先生の方から少し解釈も含めて言われましたけれども、このワクチンの開発は 、迅速に、それから効率よくやらなくちゃいけません。4社で製造方法につきましても、 申請のやり方につきましても、臨床試験につきましても、ばらばらでやりますと、非常 に労力、それから経費的にも負荷がかかりますので、一致団結して技術的なもの、ノウ ハウ的なものも結集させて、それから感染研、厚生労働省等の御指導を仰ぎながら、早 く効率よくつくるということですので、私どもの要望といたしましては、国を含めた共 同開発で迅速に、大量につくれる方法を一刻も早く民間のレベルまで持っ ていきたいなと考えております。 ○内田氏 もう一つ補足しますと、最終的な目標は少なくとも日本の国民の皆さんに行 き渡ることを目指すんだろうと思うんです。そう考えますと、今、4社シェアが同じく らいなんです。どこか1つが先行しても、国民全体に行き渡るだけのものはとてもつく れると思いませんので、そういう意味では4社が協力してやった方が国民の皆様方全体 のニーズに応えられるとになるのかというのが1つ考え方としてあります。 ○雪下委員 実際に使うかどうかわからないのをつくっていただくということになるわけでありま すので、大体これが製造可能になった時点で、全く使われないとした場合に、どのくら いの規模の資金がかかるのか。何億なのか、何兆なのか、その辺はどのくらいのあれに なるんでしょうか。 ○後藤氏 どれだけの量をつくっておって、それが使われなくて廃棄されるかと言う数 量の問題がありますが、現行のインフルエンザワクチンを想定しますと、末端でいきま すと100 億を超えるくらいの数字になるんじゃないでしょうか。 ○雪下委員 ありがとうございました。 ○加地教授 今お話のワクチンをつくっていく段階で、WHOやいろいろなところでなさるとして、 どこの段階から我が国の4社の方はタッチされるんですか。 基本的な、例えばホールパーティクルワクチンがいいとかスプリットにするとか、アジ ュバントを使うとか使わないとか、いろんな問題はそれぞれ最初から我が国での共同で 開発されるんですか。それとも、WHOなり、世界的な規模でどこかでやられて、ある 段階から我が国の手に移ってきて、それぞれでワクチンをつくられるんですか。 ○後藤氏 私どもワクチンメーカーとしましては、ここら辺の情報については、世界の 製薬協タスクフォースというようなところでどういう剤型にしていくか検討が行われて おりますので、この中に入っておりますので、ここで共同で検討しながら情報と方向性 を見ています。そのタスクフォースの情報はWHOとリンクしておりまして、ワクチン の剤型、製造シード等については、基本的にはWHOで統一したものを使うという方向 に進むと聞いています。そういう情報を基に、最終的には感染研の御指導等を仰ぎなか ら、決定していこうと考えています。そこら辺のところの状況は田代先生が一番お詳し いかと思います。 ○田代委員 ちょっと補足しますと、毎年のインフルエンザワクチンの製造にどういうウイルスを使 うかというのは、WHOが一応はリコメンデーションを出しますけれども、このウイルス を使ってワクチンをつくりなさいということは言わないわけです。こういうような抗原性 を持ったウイルスをワクチン用に開発してそれを使いなさいと言っているわけです。 欧米では基本的には個々のメーカーが独自にWHOが推奨したウイルスを基にして、 自分たちのワクチン製造のためのシードをつくっているわけです。日本がそこが伝統的 に国が共通の統一したワクチン製造株を開発して、それをそれぞれのメーカーに分与し ていという形なんです。ですから、日本の場合4社とも同じウイルスを使ったワクチン がつくられています。国内は全部同じ製造株で基本的にはつくられている。それが欧米 と違うわけです。 パンデミックの場合も、今、世界中で一番ワクチンをつくっているのはEUですけれ ども、EUの中では、それぞれの国の個々のメーカーが独自につくるということなんで、 その中で統一したワクチン株、もしくはアジュンバントを使ったとか、ホールビリオン の剤型とかは決まらないと思います。 日本の場合はそこを統一して決めていく必要があるのではないかというふうに考えて おります。 それで、いろんなオプションがあるわけですけれどけも、その中でどれが一番いいの かということを選ぶためには、いろんな比較の試験をしなければいけないわけですけれ ども、それを例えば4社でやるにしても、いろんな剤型を使って、いろんな条件でやる と、これは大変なことになるわけです。何通りもやらなければいけない。そういうむだ な重複を避けるために、世界で16くらいの大きなワクチンメーカーがありますけれども、 それが共同して、それぞれ分担してやったらいいんじゃないかという提案が昨年の9月 になされました。日本の4社のメーカーもそれに賛同して、そのグループに参加すると いうことが決まったわけです。それは先ほど後藤さんからお話があったとおりなんです。 その後、11月ごろになりまして、欧米のメーカーの足並みが乱れてきたわけです。と いうのは、アメリカのNIHが資金を出して、研究費を出して、野外試験、ヒトでの接 種試験をやってほしいということで企画したわけですけれども、実際にヨーロッパのメ ーカーでアメリカにワクチンを輸出しているメーカーは2社しかないんです。アメリカ ではワクチンをつくっている会社は1社しかありません。 そうすると、ほとんどのヨーロッパのメーカーはアメリカの資金でアメリカの製剤基 準にのっとって、アメリカの試験を行う基準に沿って試験をやった場合に、やった成績 はアメリカで発売するためには、申請用に使えるかもしれないけれども、ヨーロッパで は使えない可能性があるわけです。そうすると、そういうむだなことはしたくないとい うことが一番大きな原因なんです。 そういう事情がありまして、それで現時点では、まだ最終的には決まっていませんけ れども、国内では外国の意向に左右されて、計画がどんどん遅れていくということが一 番うまくないということで、国内の4社だけで頑張ってやっていこうじゃないかという のが現在の考え方です。 ○加地教授 そうすると、今お話のことを、4社で最初から、例えば剤型をどうするか、 アジュバントをどうするかとかいうところも、日本は日本で初めから取りかかって、ワ クチンをやられるんですか。 ○後藤氏 今のところ計画では、感染研等から同じマスターシードをいただきまして、 製法につきましては、ホール、スプリット、アジュバントを加えた4種類のワクチンを つくりまして、動物試験、一層試験、二層試験を行いまして、どの剤型が一番いいかと いうことを検討した後に、剤型を決めるというステップで考えております。 ○加地教授 そうすると、ヒトに使う場合の、どうしても必要な段位のフェーズIとか フェーズIIは、我が国独自にやられるわけですね ○後藤氏 一応そのような方向で考えております。 ○廣田委員長 ほかに御質問ございませんでしょうか。 ○加地教授 インフルエンザパンデミックワクチンの場合、アジュバントとしては具体的にはどうい うのを考えてやっておられるでしょうか。これは社外秘ですか。 ○後藤氏 そういうことは全然ありませんで、EUでも一番考えられておりますのか、 アルミゲルワクチンです。このアルミゲルについては、国内でもDTPワクチン、それ からB型肝炎ワクチン等で使われまして、副反応は現行のワクチンよりも多少強くなる でしょうけれども、実績はあるということで、アルミゲルをアジュンバントには考えて おります。 ○廣田委員長 今おっしゃった副反応というのは局所反応ですか? ○後藤氏 局所反応です。 ○廣田委員長 ほかに御質問ございませんか。 ○田代委員 今、後藤さんから紹介があった国際的な取り組みの中での新型ワクチンに 対する剤型というのは、十分な試験をして3年間くらいかかるわけです。そういう試験 をした上で安全性と有効性が確かめられた上で、それを根拠にして、それぞれのメーカ ーが申請をしてもらって、承認を受けておいてもらう。それは新型インフルエンザが出 ない限りは普通使わないわけですけれども、実際に新型インフルエンザが出てきて新し いウイルスが取れたときには、それに基づいてワクチン製造用のプロトタイプと言って いますけれども、安全性、弱毒化したウイルスで、抗原性が元のとおりであるとか、そ ういうことまではWHOが開発して確かめます。それをこういうものを使って、それぞ れのメーカーがワクチン製造に使ってくださいということになるんですけれども、その 場合には、動物を使った前臨床試験だけをすれば、ヒトでの試験はしなくても全くつく り方が同じであって、同じ材料というか、同じヒトから取れたウイルスを材料にしてい る限りは、書類審査だけで、ヨーロッパでは先ほど話があったEMEAというところが 承認を下すわけですけれども、そこは3日間で審査を終える。すぐにワクチン製造に取 りかかけるようにするというを考えています。日本はどういうふうにするか、これから 検討する必要があると思います。○廣田委員長 御意見、御質問がございましたらどう ぞ。メーカーの代表の方も追加発言がございましたらどうぞお願いします。 ○加地教授 これは田代先生がお詳しいんだろうと思いますが、今、文献で見ますと、H5N1の ワクチンというのは、抗体の産生が余りよくないようですね。それでアジュンバントを 考えておられるのか。 あるいは抗原量がある程度の人数分しかできないから、1人当たりの接種量を少なく するためにアジュバントを加えられて、人数分のワクチンをつくられるのか。抗体が上 がりにくいからアジュンバトを使われるのか、どっちなんでしょう。 ○田代委員 両方の目的なんですけれども、一番最初の理由は、抗体が上がらなかった からアジュバントを使うということが目的です。 現行のDTPに使っているリン酸アルミのアジュバントを使った場合、通常は1つの 株当たり15μg のHA抗原が含まれているわけですけれども、それを8分の1くらいま で減らしても、アジュバントを加えた場合には同じ程度に抗体が誘導できるという実験、 それは欧米のメーカーがヒトでやられた成績があるんですけれども、それを今根拠にし て、H5N1の鳥型の場合でもアジュバントを使えば十分な免疫が誘導できるだろうと。 しかも、ワクチンの製造量を増やすことができるだろうということを考えています。 ○廣田委員長 ほかに御意見ございませんでしょうか 先ほどホールバイラスワクチンとスプリットバイラスワクチンと、アジュバントワク チン、3つで考えておるということでございましたけれども、3つのどれでいくかとい う決定で、やはり最終的には一本に絞り込んで生産するという方向になるんでしょうか。 ○後藤氏 絞り込みにつきましては、前臨床試験、それから臨床試験、フェーズI/II で、どれが一番有効性があるか、安全性があるかというデータを見ながらしかるべきと ころで決定していくようになるかと思います。 製造効率からいきますと、多くの種類の違ったワクチンをつくるのは効率が悪いとい うことと、また、臨床試験、市場での評価についても、幾つかのワクチンが混在いたし ますと、評価が非常にしにくくなるという面がありまして、今のところ1つの剤型を選 択して、最終的にはそれを製造していくと今のところは考えております。 ○廣田委員長 研究ベースではこの3本で進んでおるということでございますね。 ほかにございませんでしょうか。 ○加地教授 これは何か接種で事故が起こった場合のことをちょっとお触れになりましたけれども、 こういうのは、いざワクチンを接種するときではなくて、今からいろいろ 検討してお詰めになっておった方がいいんじゃないかと思います。ワクチンができて広 く多くの人に、接種を始めるときになってこういう検討を始めてもいけないわけでして、 私どもは例の1976年のスワインワクチンのことを連想するんですけれども、こういうの は早い時期から関係の方々で検討なさる方がいいんじゃないか。接種なさる医師会側や 接種現場のところでは問題が多いですから、前もって時間的にゆっくりと検討なさった 方がいいじゃないかという気がします。 ○後藤氏 パンデミックワクチンが市場に出始めると同時に、副反応のモニタリングが始められる 体制づくりをしておくということでございます。 ○加地教授 こういうパンデミックワクチンですと、接種対象の数は膨大なものになる だろうと思うんです。そうすると、非常に頻度の低いような接種事故でも当然起こり得 るだろうと考えられます。 ○廣田委員長 ほかにいかがでございましょうか。 ○牛尾課長 もしなければ、私の方から基本的なことを何点かお教えいただきたいんです。 1つ は、こういった現在通常のパンデミックでないときのワクチンというのは、毎年流行株 が変わり得るということで、有効機関の問題がありますけれども、こういったパンデミ ックワクチンの有効期間をどのように考えればいいのかというのが1点。 2点目は、卵の供給については特に問題ないという御説明でございましたが、ウイル スの増殖に関して、卵以外の方法というのは、卵の安定供給ということを考えた場合考 え得るのかということが2点。 3点目が、これは一番最初に資料1でも事務局の方から説明しましたが、ワクチンの 供給ということを考えますと、世界的にかなり限られている。もし、発生した場合、ど うしても日本国として周辺のアジア地域への国際協力ということが求められる可能性が 十分にあると思うんですが、そういう場合の供給ということが何か技術的、あるいは法 的に問題があるのか。あるいは科学的に問題があるのか。その辺の問題点をもし御承知 であれば教えていただきたい。 以上3点でございます。 ○後藤氏 第1点目のワクチンの有効期間ですけれども、これについては、有効期間を 長くすると、プライマリーの抗体がございませんので、接種2回というのか最低であろ うというのが今の状況です。そういう意味で、アジュバントワクチンを用いることにに ついては、持続期間、抗体の上がり等について適当じゃなかろうかと思っています。 2年目からはある程度ワクチンの供給量が達成されますので、追加接種というような 可能性も考えられるわけですけれども、今のワクチンの持続性と同等以上のものは必要 です。ですから、有効期間については、今のところ1年を考えています。備蓄を考えま すと、臨床試験の段階で2年有効であるか、3年有効であるかとか、そういうようなデ ザインを置きまして、ワクチンの有効性、どこまでこのワクチンは有効であるかという のは、事前に検討しておく必要があるとともに、次年度からは抗原性がドリフトしてい くという問題がありますので、簡単に3年備蓄が効くといたしましても、有効性が低く なる。抗原性のギャップが出てくるとかいろんな問題がありますので、持続は長ければ いいんでしょうけれども、そこら辺のところ勘案して有効期間を何年にするというよう な具体的な設定は今のところまだ考えておりません。 2点目の卵の問題ですけれども、卵の供給は問題がないと申し上げたのは、誤解がな いように補足いたしますと、現行の今のワクチンを製造する製造期間、これについては、 事前に計画的にひなを飼って、供給体制を整備しておりますので、2月から9月の製造 期間の中でパンデミックワクチンをつくるということでありましたならば、大きな障害 はありません。しかしながら、10月、11月、12月という時期につくるとなりますと、 少し生産体制を整備する必要があるのではないかと考えております。 それと、卵以外でのワクチン製造ということですけれども、各社セルラインワクチン というものを開発検討している段階です。これにつきましては、まだ製造のライン、製 法を今から構築していくという段階でありまして、少なくとも5年以上開発までには時 間がかかるんじゃないかと思っております。今まで持っております我々の現行ワクチン のノウハウを有効に活用して、迅速に大量にワクチンをつくるとなりますと、現在の段 階では卵を使わざるを得ないかなと考えております。 3点目は他国へのワクチン供給という話ではなかったと思いますけれども、国際協力 という観点から重要な問題であると認識しております。国内の供給量が足らないにもか かわらず国際協力ということはないだろうと思いますので、潤沢にできるというように なりましたならば、関係当局と御相談の上に、どういう供給のやり方をやるか検討をし ておく必要があります。 1つは、輸出するところに輸出のライセンスを取る必要がありますので、そういうよ うな現行の契約、取り決め、そういうものがパンデミック時にどうなるかというのも、 今の段階から考えておく必要があると思っております。 ○岡部委員 これは事務局あるいは医薬局の方かもしれないんですけれども、ちょっと お尋ねしたいんですが、今パンデミックを想定しているワクチンをシフトするときには、 ライセンス等々が問題になっていると思うんですが、今まではH2N2でワクチン開発 が始まって、香港型に変わり、途中からソ連、H1N1が入ってきているわけですけれ ども、そのときはそれぞれのライセンス、あるいはトライアルはどういうようなことで 行っていたわけですか。やはりパンデミックとして新たに全部やったわけではないよう に思うんですけれども。 安全性を無視していいと言っている意味ではなくて、今まではどういうふうであった か。 ○神ノ田補佐 過去のことは承知していないんですが、今回、今検討されているものについては、ア ジュバントを加えるということで、これは全く製法が変わりますので、安全性の面でも しっかりと確認しなければいけないところが多いということで、1からの治験が必要で はないかと考えております。 ですから、通常使っているワクチンは承認されているわけですが、それをそのまま新 型インフルエンザワクチンに適用するということは難しいんではないかというふうに聞 いております。 ○田代委員 私も昔のことははっきり、今は資料を持っていないので言えませんけれど も、H2型のアジア型が入ったときの1957年には臨床試験をやってから承認を得て、そ れで株を変えたということはなかったと思います。68年の香港風邪のときもそれはなか ったと思います。 そのときには、今から考えますと、非常にラッキーだったと思うのは、それでも現行 の従来の製法にのっとってつくったワクチンがヒトに打って特に事故もなく、なおかつ 抗体が上がって有効だったということだったんです。今回は97年の香港のH5N1のと きに、弱毒化の操作をしたわけです。我々はリバースジェネティッスでやりましたけれ ども、イギリスは鳥由来の抗原性が同じ弱得のウイルスをつくってきた。サルゲートの ワクチンをつくったと。そういうことで、全く今までヒトに接種したことのない新しい 剤型であったということで、日本も含めて幾つかの国で臨床試験までやられたわけです。 その結果、加地先生からお話があったように、抗体が上がってこなかった。これは予 想していなかったことなんです。それでアジュバントを加えるなり、抗原量を増やすな り、新たな現行のワクチンとは違った製剤として新たに承認を取る必要があるだろうと いう話になってきているわけです。 ○廣田委員長 アジアかぜの話になると、加地先生何かありませんか。 ○加地教授  何か私ばかり話しているみたいなんですが、今、田代先生お話のように、 例のH2N2が出たときとか、H3N2が出たときは、特別に検討しないで、株だけ変 えたような感じでワクチンは従来の方法でつくられたと思うんです。しかし、そのまま で、特に問題は起こらなかったと思います。今度はどういうことかよくわからないのは、 例えば昔の経験でもホールパーティクルのワクチンから日本ではHAワクチンになりま した。あのとき随分抗原性は落ちましたね。同じ株を使っても。今度の新型の場合にホ ールピリオンワクチンを使うのか、スプリットワクチンを使うのかだけでも随分違うだ ろうと思います。そのスプリットの仕方もいろいろあるようです。そこも問題がかつて はありました。どういう具合にしてHAをつくるかというのもありますし、非常にいろ んな未解決でやってみなければわかないところが随分あるだろうと思うんです。 しかも、インフルエンザでアジュバントを使って、本当にアジュバント効果があって、 副作用もなくて、いいワクチンができるのかどうかというのも、過去では、随分日本で も、インフルエンザアジュバントワクチンの試みがなされましたけれども、結局、今や っておる水性のワクチンを超えて、いいワクチンであるというものはなかったし、その ころもたしかアルミのワクチンを使ったと思うんです。その辺の検討は今からでもずっ とやっておかないと、いざパンデミックストレインが出てきて、それでワクチンをつく ると言いましても、基礎的な実験は例えばH5なり何なりでやれるかもしれませんし、 新型のパンデミックストレインが出てくる前にいろんなことが、ワクチンの製造にしろ、 いろんな法律的なことにしろ、やれるものはやっておかないと、やはり4、5年もかか るようでは、いつもオオカミ少年のように、毎年出るよ出るよと言っておきながら出な いものですから、あれですけれども、ワクチンができるのが5年先という長い先の話に なるとちょっと不安なんです。なるべく事前にやれることはやっておいた方がいいんじ ゃないか。現にH5などが出てきておりますから、それを使って、一応いろんなことを やってみておると、いろんな参考になって、先々パンデミックワクチンをつくる期間を 短縮できることはあるんではないかと思います。 ○廣田委員長 ほかにございませんか。 ○田代委員 今までは製造の話が主な話だったんですれども、実際にパンデミックが起こったときに、 ワクチンがアベーラブルになったと考えたときに、これをどういうふうに実際に使うか。 臨時の接種にするのかとか、そういう問題を十分にあらかじめ検討しておく必要があると 思います。 それから、先ほどWHOの抜粋の中でも話がありましたけれども、実際に製造を始め てから最初のロットが市場に出るまでが4か月〜6か月くらいです。それがだんだん右 肩上がりに少しずつ増えてくるわけですから、最終的に国民全員に行き渡るまでには1 年以上かかるわけですね。そうすると、限られたワクチンをだれから打っていくかとか、 優先順位というのもあらかじめ現時点である程度のコンセンサスを得ておかないと、取 り合いになるというか、大きな社会問題になるんじゃないかと思います。 ○廣田委員長 ほかにございますか。パンデミックワクチンは世界的に非常に開発が困難な問題という ことですけれども、一部では逆にすぐに手に入るような誤解もあるわけでございまして、 そこら辺の認識をきちっと浸透させておかないと混乱が起こるのではないかと思います。 それでは、大体御質問等出尽くしたようですので、次の議題に移らせていただきます。 2番目の「新型インフルエンザ対策検討小委員会報告書骨子(案)について」でござ います。事務局から説明をお願いいたします。 ○中里専門官 それでは事務局から御説明申し上げます。資料3をごらんください。 まず、この骨子案の概要について御説明申し上げます。 今回の報告書は新型インフルエンザ対策検討小委員会報告書(改訂版)ということで、 平成9年度の報告書を改訂するというスタンスで書いていく予定です。 ローマ数字の柱ごとに説明していきますと、「I.はじめに」で、本委員会を設置し た背景・目的等を説明いたします。 「II. 総論」で新型インフルエンザの危機について、新たな知見に基づき加筆修正し ていきます。 「III では前回の報告書の取り組みについて記述していきます。これはWHOも新型 インフルエンザに備えるためには、常日ごろからのインフルエンザ対策が必要であるの で、まずは平成9年度の報告書の提示以降、インフルエンザ対策でさまざまな点が進ん でおりますので、これについて整理するというものです。 次に「IV.レベル別対応」の項においては、前回の委員会で御紹介いただきましたレ ベル別対応という考え方に基づきまして、各レベルにおいて、実施することが必要な対 策にはどのようなものがあるかという観点から各レベルごとに必要な対策について整理 していきます。 V〜IXの項においては、ワクチン、治療薬といった対策の柱となる項目を別に項目を 起こして整理していきます。 全体としてはこのような構成を取っておりますので、引き続きもう少し各項目ごとに 御説明してまいりたいと思います。また最初のページにお戻りください。 「I.はじめに」では、前回の委員会の概要と意味を説明しました上で、本委員会を 設置した背景と目的を説明する。具体的には平成9年以降、平成11年の感染症法の制定、 15年の感染症及び検疫法の改正、また、平成13年の予防接種法の改正。こういった対 策の積み上げと、新たな知見の集積について説明していきます。勿論、この対策の目的 というものが、発生の防止ではなく、被害を最小限にするという点については、変わり ありません。 もう一つ、新な状況としましては、高病原性鳥インフルエンザの人への 感染事例の発生が起こり、それに対して国際的な取り組みがなされておりますので、こ の辺りを記述していく予定です。 「II. 総論−新型インフルエンザの危機」においては、前回の報告書のとおり、新型 インフルエンザ出現の助走過程、出現理論、予測震源地、出現様式、出現した場合の影 響、そして対応の基本姿勢ということについて記述していきます。 「III .前回の報告書以降の取組み」では、先ほど申し上げましたように、平成9年 度以降、インフルエンザ対策として進んだものについて記述していく予定です。 主に進んだ点といたしましては、国内のインフルエンザに関するサーベイランス体制 というのも随分整備が進みましたし、ワクチンについては、生産・供給体制というもの も大きく伸びてきております。 更にインフルエンザの迅速診断キットも承認されまして、安定供給されるようになり ましたし、また、抵インフルエンザ薬も承認され、安定供給がされるようになりました。 このようにインフルエンザ対策として大きく進んだものについて項目ごとに整理して いきます。 「IV.レベル別対応」は、まずは前回までの委員会で御検討いただきましたレベル別 対応について、この考え方について御説明する。 次に、先ほど申し上げましたとおり、レベルの0〜V、各レベルごとにおいて、実施 することが必要なものという観点から必要な対策を整理していくということです。 勿論、この項目で挙げております対策の中には、既に実施しているものもありますし、 今後整備していくことが必要なものもあります。この両方を含めまして、このレベルに おいてはどのような対策を実施していく必要があるかという観点から整理していくもの です。 各レベルごとに見ていきますと、初めにレベルIですが、これは普段からのイ ンフルエンザ対策と新型インフルエンザ対策の関係とその重要性について記述した上で、 平時からの備えということですので、大項目III で整理した対策について記述していき ます。 次にレベルIですけれども、海外で鳥インフルエンザが発生したときですので、その ときに必要な対策としては、例えば海外の発生事例について情報を収集し検査していく といったことが必要になりますし、また、検疫所では渡航者、入国者へ注意喚起などの 情報提供を行っていくことになります。 更に新型インフルエンザワクチンの候補株について開発していくと。こういったこち について記述していきます。 続きまして、レベルIIは、国内で鳥インフルエンザが発生したときです。このときの 発生情報の収集分析としては、もし、ヒトに感染者が出た場合には、感染症法に基づく 4類感染症として報告してもらうことになりますし、また、昨シーズン行いましたとお り、高病原性鳥インフルエンザに関する患者サーベイランスについて強化していきます。 ワクチンについては、これも昨シーズン行いましたが、ヒト鳥インフルエンザウイル スと鳥インフルエンザウイルスへの同時感染を防止する対策として、感染した鳥と接触 した者及び殺処分に従事する者へのヒトインフルエンザワクチンの接種を勧奨する。こ ういった対策について記述していきます。 レベルIVは国内で新型インフルエンザが発生したとき、その初期のときになります。 その際には、例えば国内の流行状況に基づき、精密調査対象集団というものを設定し、 調査を行っていく必要もあるでしょうし、また、その情報については、海外への積極的 に提供していくという情報提供の強化というのも行っていきます。 また、発生拡大防止のために、患者については、感染症法に基づき入院勧告等を行い ますし、検疫では出国時健康審査を実施することもあるでしょうから、そういうことに ついて述べていきます。 レベルVですけれども、これは新型インフルエンザが国内で大規模に発生した場合の 状況です。このときはレベルIVで取りました感染症法に基づく入院勧告等の措置という のが必ずしも有効でなくなっているかもしれません。この場合には、発生拡大防止のた めに、大規模な集会の自粛や学級閉鎖等も行うこともありますし、また、海外への患者 輸出を防止するためには、出国の自粛を求めることもあると思われます。 更に結核病床や空床の活用。 また、公民館、体育館等で患者を治療するということなどを通し、医療体制を確保す るということも必要になってきますので、このようなことを記述していくことになりま す。 以上がレベル別対応についてです。 続きまして、「V.新型インフルエンザワクチン」は、各論としての新型インフルエ ンザワクチンについてです。ここでは開発すべき新型インフルエンザワクチンの種類、 そして開発治験のためにはどのような課題があり、どのように進めていくのかといった ことについてを中心に整理していきます。 併せて接種について優先順位をどうするのかとうこと。 また、副反応については、早急にモニタリングしていくことがあることについて今後 整理した上で記述していくこととします。 「VI. 治療薬」については、前回も御議論いただいたところですけれども、新型イン フルエンザ発生時に備えた抗インフルエンザ薬の種類は何か。 リン産オセルタミビルの必要量についても記述してきますと、また、投与の優先順位 をどうしていくのか。 また、そのような優先順位を決める必要があるのかといったことから整理して記述し ていくこととします。 「VII.医療供給体制」については、既に前回の報告書でもまとめているところですけ れども、超過医療需要の推計。 超過医療需要に対応できる医療供給体制の確保。 院内感染対策について記述していきます。 「VIII. 検査等」については、例えば亜型まで判定可能な迅速な診断方法の確立とい ったことについて記述していきます。 以上のような取り組みについては、これまでも国際的な連携の下で行ってきましたけ れども、今後も引き続き国際的な連携の下でやっていく必要がありますので、IXについ ては国際的な連携について触れる。 最後に資料が付いてくる。全体としては大筋このようにまとめていきたいと思ってお ります。 以上です。 ○廣田委員長 ただいまの御説明について御意見、御質問ございましたらお願いいたします。 ○稲松委員 東京都老人医療センターの稲松でございますけれども、話が蒸し返しになるかもしれ ませんけれども、実際に新型インフルエンザワクチンをつくり出したときに、どのレベ ルまでの新しい治験が要求されるかを、今、ある程度線を引いておかないと、いざその ときになっては、とても論議ができる状況ではないような気がするんです。 製造方法は変わらないけれども、ウイルス株が変わるときに治験が必要なのがとうか。 アジュバントを新たに加えるときに必要なのかどうなのか。 ある意味で今のスプリットワクチンというのは、1950年代につくられたもので、今ま でそのままつくっているわけで、技術的にかなり進歩しているはずなのに、新しいとこ ろがどの程度変えたときに、新しい製剤として治験が必要なのか。そういう原則を少し 整理しておいていただきたいなと思うんです。そのことは恐らくインフルエンザに限ら ず、ほかのワクチン製剤に共通する原則というのはあると思うんで、それをはっきり事 前に国民に知らせておくことはかなり重要なことのような気がいたします。 ○廣田委員長 大事な御指摘ありがとうございます。決して蒸し返しでもございませんで、この報告 書でも項目のV.の2.で「新型インフルエンザワクチンの開発、治験」という項目が ありますので、こういったところで先生の御指摘の点にも触れるということでよろしく お願いいたします。 ほかにございませんでしょうか。 加地教授 今の御説明でレベルIとかIIとかIII とかございますね。レベルIとかレ ベルIIのときには、鳥インフルエンザになっておりますが、これは鶏などのインフルエ ンザですね。鳥型のインフルエンザが人間に感染したというところはレベルIII になり ますね。 ○中里専門官 鳥に起こっている場合もございますし、ヒトに起こっている場合もございます。 その両方を想定して書いております。 ○加地教授 具体的にこの前までの状況ですと、鶏からヒトに、ベトナムとかでかかりましたね。 そうすると、あれはレベルIII になりますか。 ○中里専門官 それはレベルI、海外で発生した場合はレベルIになりますし、国内で発生した場合 はレベルIIになります。 ○加地教授 鳥インフルエンザ発生というものと、新型インフルエンザというものと、 レベルのIIとIII のところが変わりますね。どこで新型インフルエンザになるんです か。 ○中里専門官 新型インフルエンザというのは、ここでの定義としては、ヒト・ヒト感染を容易に行 うようになったものというふうな定義で書いておりますので、前回のベトナムなどは鳥 からヒトへ、勿論、100 %ヒト・ヒトは否定されたわけではないんですが、基本的には 鳥からヒトに感染しているというふうに考えられますので、ベトナムについてはレベル I、同じく日本では幸いにヒトへの鳥インフルエンザの感染というのは起こりませんで したけれども、そのような状況はレベルIIで書いていくつもりでございます。 ○加地教授 わかりました。 ○田代委員 これも前から何回か質問しているか、意見を行っているんですけれども、そのレベル I、レベルIIというのは、あくまでも高病原性の鳥インフルエンザで鳥が被害を被って いる状況ですね。 従来の弱毒型の鳥のインフルエンザに由来する新型インフルエンザ、それはいきなりレ ベルIII からヒトの世界に入ってきたわけですね。I、IIをスキップしてIII から起こ ってくる可能性もあるということを強調しておく必要はあると思います。 ○加地教授 もう一つだけ、これは雪下先生の方からのご意見が大事だと思いますが、 Vで新型インフルエンザワクチンの優先順位の検討というのを、具体的にどのようにな されますか。前回(1997年)の対策委員会の場合には、優先順位というのは、我が 国の実情ではなかなか付けられなかったと記憶しております。たしかABCといったグ ループで分けてありまして、優先順位というわけではなかったんです。これは外国では 優先順位はちゃんとなっておりました。例えば医療従事者とかハイリスクとか順番が付 いておりました。我が国では順番は付いていなかったと思うんです。集団別になってお る。そこをどのようにお考えなのかということです。○廣田委員長 今、明確なお応え できますか? お考えのとおりで、そう明確なお答えにまだならなくても結構です。 ○中里専門官 そこは次回以降の委員会で整理していきたいと思っているところなんで すけれども、基本的にはタミフルについては、既に幅広く治療薬として使われておりま すので、それについてパンデミックだからと言って、優先順位を付けていくことが妥当 かどうか、この辺りから整理していきたいと思っておりますので、必ずしも先に優先順 位を付けるということが前提というわけではございません。 ○廣田委員長 次回また検討するということです。 ○田代委員 今の説明というか、ここに書かれたことは大体全体を網羅していると思う んですけれども、パンデミックに対する対策というのは、WHOがこういうことをしな さいということを幾つか言っているわけです。各国がパンデミック計画を立てなさい。 それを具体的にどうしたらいいかということのガイドラインというか、チェックリスト を今つくっています。ドラフトを前にお送りしたんですけれども、多分、来月のクアラ ルンプールの会議にそれが最終的に出てると思いますけれども、それを参考にしながら、 漏れのないようにしていくということも大事だと思います。 そこで1つ、前回の報告書でも書かれていたと思いますけれども、パンデミック委員 会というものをつくる必要があると思うんです。それは実際にこういう問題が起こる前 に、そこの委員会でどういうことをやるかということをきちっと、国のコンセンサスと して、そういうものをつくっておいて、実際に起こった場合には、だれがリーダーシッ プを取るか、だれが責任者なのか。例えば総理大臣が委員長をやるのか、官房長官なの かとか、危機管理の対応としてそういうことを決めておく必要があると思うんです。 それから、大きなパンデミックプラン、今回の報告書はパンデミックプランではない んですけれども、パンデミックプランの大きな枠組みとしては、事前準備というか、先 ほど稲松先生からもお話があったように、どういうところで仕切るか、優先順位とか、 そういうこともすべて含めて事前準備の計画を立てておくということ。 それから、実際に起こってきた場合には、先ほど説明されたようなレベルがあって、 それに対するアクションプランを考えておく。その2本立てをきちっと書いておく必要 があると思います。 特に2番目については、実際にパンデミックが起こって、だれでもみんな同じように 健康被害を被る可能性があるわけです。そうすると、そのバックアップも十分に考えて おかなければいけない。例えば結核感染症課の皆さん、3分の1が欠勤された場合に、 では、そのバックアップをどうするのかとか、そういうようなことまで計画の中には書 いていて、それを見ればほかの人がある程度は対応できるということをしておかないと いけないんじゃないかと思うんです。 ○藤崎参事官 今の田代先生の御指摘は本当に大事なことだと思いますし、企業管理の要諦だろうと 思うんですが、そのパンデミックプラン、今先生がおっしゃられたものは、今、WHO の要請を受けて作成していただいているというふうに理解しておけばよろしいでしょう か。 ○田代委員 カナダが今年の1月に始めて分厚いものを出しました。今、大体それをお手本にして、 どこの国もつくっていくという作業が進んでいるわけです。 ○藤崎参事官 そうしますと、次回にそれを御提示いただくことは可能でしょうか。 ○田代委員 まだ具体的なことまで進んでおりません。 ○廣田委員長 ほかにございますでしょうか 。 ○稲松委員 「VI.治療薬」の研究ですけれども、前回もお話ししたことですけれども、 ここにリン酸オセルタミビルと入っていますけれども、実際に新しいものが出てきたり、 どうにも足りなくなってアマンタジンを足さなきゃいけないとか、リベンダムをうまく 組み込んでいかなきゃいけないとか、少しフリーハンドを残しておくように、ここは特 定薬剤名ではなくて、抗インフルエンザウイルス薬としておいた方が、多分いざとなっ たら動きやすいんじゃないかとう気がするんですけれども、いかがでしょうか。 ○中里専門官 その点につきましては、まず1.で「新型インフルエンザウイルス発生 時に備えた抗インフルエンザウイルス薬の種類」は何かという辺りで、先生から御指摘 いただいた点について簡単に記述していきたいと思います。 そうは言いましても、WHOが先の3月の専門会合の中で抗インフルエンザ薬として は、入手可能なら治療にはノリラミニダーゼ阻害剤を選択することが選択することがよ いとしていますので、あえてリン酸オセルタミビルの必要量という項目について記述し ていく必要があるんじゃないということで今日の骨子案には書いていった次第です。 ○稲松委員 ただ、ノリラミニダーゼインビヒターにしても2種類あるわけでございますから。 ○中里専門官 了解いたしました。 ○廣田委員長 ほにございませんでしょうか。 先ほど加地先生からパンデミックワクチンをし始めたときの副反応の調査の準備をし ておくという御意見がありましたけれども、このV番目の新型インフルエンザワクチン の5.の「副反応モニタリング」、ここにきちっと記載ということでよろしいでしょう か。 ○加地教授 はい。 ○廣田委員長 それから、さっきの接種の優先順位の件ですけれども、1997年の報告書のときに、行 政担当者というのが最後の方まで遠慮して書かれなかったんです。先ほど田代先生おっ しゃったように、アジア風邪のときも、大体厚生労働省で10%かかったというので対応 が麻痺したと新聞にも載っているような事例もありますし、きちっと遠慮なく行政担当 者というのは入れてください。 ほかにございませんか。 この骨子案は(案)の段階でございまして、今後委員会の討議の中でもまた変わり得 るものですけれども、とは言え報告書としては、そろそろ詰めていく段階にありますの で、大枠これで了承いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。 それでは、また、これに意見がありましたら、事務局にお知らせいただくようにお願 いいたします。また、今後この報告書作成の作業の進め方について事務局から委員の先 生方の方に連絡があるかもしれませんので、そのときには御協力よろしくお願いいたし ます。 その他ですけれども何か事務局からございますか。 ○中里専門官 それでは、大筋で報告書の骨子案について御了解いただいたということ でございますので、追加意見等ございましたら、適宜事務局の方にお知らせいただけれ ばと思うんですけれども、もう一つ、この骨子案を具体的な報告書にしていく過程の中 で、この項目には更にこういうことをもっと書き込んでいくというキーワードというも のがあるのではないと思います。それについてまた後日事務局の方からお問い合わせを させていただいたと思いますので、御協力お願いいたします。 もう一つ、本日先生方からも御指摘ございましたように、治療薬とワクチンの優先順 位、これは必ずしも優先順位をつけて投与することを行うのか、そういったそもそも論 から御意見があるかと思いますので、その辺りについても、次回の検討会を進めていく 上で事前に委員の先生方の御意見をお伺いすることもあるかと思いますので、その際に はよろしくお願いいたします。 以上でございます。 ○廣田委員長 そのほか何かありますでしょうか。よろしゅうございますか。 それでは、これで閉会いたします。どうも御協力ありがとうございました。 ○牛尾課長 ありがとうございました。次回以降の日程につきまして、また日程調整表を送付させて いただきまして、調整させていただきたいと思います。 ありがとうございました。 27 (照会)                                厚生労働省健康局結核感染症課                      担当:近藤(内)2379                         佐藤(内)2386         TEL03−5253−1111