04/05/21 社会保障審議会児童部会第1回総合施設に関する合同検討会議議事録              総合施設に関する合同の検討会議          中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会と            社会保障審議会児童部会の合同の検討会議                  第1回議事録              厚生労働省雇用均等・児童家庭局            第1回 総合施設に関する合同の検討会議 (中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の                   検討会議)                   議事次第            日時:平成16年5月21日(金) 10:00 〜11:52            場所:経済産業省別館827号会議室 1.開会 2.設置趣旨等説明 3.委員紹介 4.事務局紹介 5.両部会における議論について 6.自由討議 7.閉会 ○唐澤保育課長  おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回「中央 教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会 議」を開催させていただきます。  本日は御多忙のところ、御参集をいただきまして大変ありがとうございます。  私は、第1回の事務局を担当させていただきます、厚生労働省の雇用均等児童家庭局 の保育課長の唐澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず合同の検討会議の設置趣旨と進め方について御説明を申し上げます。 先生方の資料をつくっていただきましてたくさん資料がそろっておりますが、全部で6 つございますけれども、そのうちの資料1というものをごらんをいただきたいと思いま す。  この「総合施設に関する合同の検討会議の開催について」という資料でございますけ れども、趣旨については既に御承知のとおりでございますが、「『就学前の教育・保育 を一体として捉えた一貫した総合施設』の在り方についての検討を進めるため、中央教 育審議会幼児教育部会委員と社会保障審議会児童部会委員からなる合同の検討会議を開 催する」ということでございまして、検討のスケジュールは、7月中を目途として議論 の取りまとめを行っていただきたいと考えております。  今日、5月21日が第1回目の開催ということになりますけれども、本日はこれまでの 両部会の、それぞれの部会の議論の状況を御報告いただきまして意見交換をしていただ き、6月中には関係団体からの要望や意見をお聞きしながら意見交換をしていただき、 7月中にとりまとめをしていただければ大変ありがたいと考えております。  こういう月1回を目途としてお願いをいたしたいと考えておりますけれども、必要に 応じて2回お願いすることもあろうかと考えております。  メンバーにつきましては、これからそれぞれ本日の委員の先生方を御紹介させていた だきます。  運営につきましては、司会進行を務めていただきます主査、それから副主査を選出し て運営をしていただき、事務局は文部科学省と厚生労働省が交代で行うことにいたした いと考えております。  残りの資料の方は、また後ほどごらんをいただくことにいたしまして、本日のこの合 同会議のメンバー、委員につきまして御紹介をさせていただきたいと思います。  まず、幼児教育部会の委員の先生方から御紹介をさせていただきます。  本日、御出席をいただいておりますのは、まず幼児教育部会部会長でございます田村 哲夫委員でございます。田村先生は、学校法人渋谷教育学園の理事長でいらっしゃいま す。 門川大作委員でございます。角川先生は、京都市教育委員会教育長でいらっしゃ います。 酒井幸子委員でございます。酒井先生は、文京区立小日向台町幼稚園園長で いらっしゃいます。  北條泰雅委員でございます。北條先生は、学校法人みなと幼稚園理事長でいらっしゃ います。  無藤隆委員でございます。無藤先生は、白梅学園短期大学学長でいらっしゃいます。 無藤先生は児童部会の委員でも、両部会の委員でもいらっしゃいますので、既に先生 方、よく御存じだと思います。  山口茂嘉委員でございます。山口先生は、岡山大学教授でいらっしゃいます。  なお、本日は國分正明委員、前日本芸術文化振興会理事長でいらっしゃいますけれど も、御欠席となっております。  それでは、児童部会の委員を御紹介させていただきます。  最初に、部会長でいらっしゃいます岩男寿美子委員でございます。岩男先生は、武蔵 工業大学環境情報学部教授でいらっしゃいます。  小笠原文孝委員でございます。小笠原先生は、よいこのもり第2保育園園長でいらっ しゃいます。  吉田正幸委員でございます。吉田先生は、有限会社遊育代表取締役でいらっしゃいま す。 なお、本日は猪股祥委員、平塚保育園園長、それから、津崎哲郎委員、花園大学 社会福祉学部教授は御欠席でいらっしゃいまして、柏女霊峰委員、淑徳大学社会学部教 授は、少し遅れていらっしゃるということでございます。  本日は、以上の先生方でございます。御参集、御就任に御快諾をいただきましたこと につきまして、心より御礼を申し上げます。  引き続きまして、簡単に事務局の出席者を御紹介させていただきます。  最初に、文部科学省初等中等教育局長の近藤信司局長でございます。  厚生労働省雇用均等児童家庭局長の伍藤忠晴局長でございます。  文部科学省大臣官房審議官、初等中等教育局担当の金森越哉審議官でございます。  厚生労働省大臣官房審議官、雇用均等児童家庭局担当の北井久美子審議官でございま す。 本日は御欠席でございますが、文部科学省初等中等教育局主任視学官の嶋野道弘 視学官も御出席をいただくこととなります。  厚生労働省雇用均等児童家庭局総務課長の中村吉夫課長でございます。  文部科学省初等中等教育局幼児教育課長の義本博司課長でございます。  私、保育課長の唐澤でございます。  以上、8名でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、委員会の進め方に関係をいたしまして、先ほどの設置の趣旨の中でも触れ させていただきましたけれども、司会進行をお願いするということで、主査、副主査を 選出させていただきたいと思います。  主査につきましては、両部会でそれぞれ部会長を務めていらっしゃいます田村先生と 岩男先生にお願いをしたいと考えております。  それから、副主査につきましては両部会のそれぞれの部会の委員でいらっしゃいます 無藤先生にお願いをしたいと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○唐澤保育課長  ありがとうございます。それでは、御承認をいただきましたので、まず両主査の方か らごあいさつをいただきたいと思います。  それでは、田村先生、お願いいたします。 ○田村主査  御指名でございますので、主査を務めさせていただきます田村でございます。力がな いんですけれども、非常に大事なテーマでございますので、一生懸命頑張っていきたい と思っております。   先般、OECDの教育レポートを読んでいましたら、デマンドセンシティブという言 葉が何回も出てくるんです。どこの国でもやっぱりデマンド、つまり需要が変わってき ていると。それに対して、教育ができるだけそれに敏感に対応して変わっていかなけれ ばいけない。こういう趣旨だと思いますが、世界中、どの国も苦労しているんだなとい う感じがいたしました。  我々も、デマンドセンシティブというキーワードを使いながらも、しかし本筋は外さ ない、私どもは教育という観点がありますが、一生懸命議論をさせていただきたいと思 っておりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○唐澤保育課長  それでは、岩男主査、引き続きお願いいたします。 ○岩男主査  それでは、田村先生と御協力をしながらできるだけのことをさせていただきたいと思 っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  社会が大きく変わって、今日いろんな新たなニーズが出てきて、対応し切れていない というようなところから、考えるべき課題はたくさんあると思いますけれども、私とい たしましては、その際に既にあるニーズに応えるだけではなくて少し先を見通して、こ れからの社会の変化にも対応できるような、そういうものにできればいいなというふう に思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。 ○唐澤保育課長  それでは、副主査の無藤先生も一言ごあいさつをお願いいたします。 ○無藤委員  無藤でございます。たまたま、全く偶然にそれぞれ委員を務めておりましたけれど も、ちょうどそれぞれに共通する主題ということで総合施設の問題が大きく浮かび上が りました。  私は、保育幼児教育を専攻しておりますので、できる限りそういう立場でお役に立ち たいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○唐澤保育課長  ありがとうございました。  それでは、本日の司会につきましては第1回目の事務局を厚生労働省が務めておりま す関係で、岩男先生にお願いをいたしたいと思います。それでは、以後は岩男先生、よ ろしくお願いをいたします。 ○岩男主査  それでは、本日の司会を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたしま す。  早速でございますけれども、総合施設につきまして委員の間で議論をする前に、これ までに幼児教育部会及び児童部会でいろいろと御議論がございました。その内容につき まして事務局から御報告をお願いをしたいと思います。 ○義本幼児教育課長  それでは、幼児教育部会の議論の状況につきまして、私、幼児教育課長の方から簡単 に御報告させていただきたいと存じます。  資料1をごらんいただきたいと思います。その3ページでございますが、幼児教育部 会におきましては田村主査の方からもお話しございましたように、主に幼児教育という 観点から総合施設の在り方について2月2日から議論をされまして、合計7回にわたり まして、この問題について議論をいただいたわけでございます。  ここにございますように、その間においては委員同士の御議論を始め幼稚園と保育所 の一体的な施設で既に実施しているところ、あるいは特区での合同活動をやっておられ るところの施設の長、あるいは市区町村、あるいは私立の園において幼稚園、保育所を 両方経営されているところの方から具体的に今の状況、課題等もヒアリングを行いなが ら討議を進めていっていただいたというところでございます。  資料2をごらんいただきたいと存じます。  幼児教育部会におきます主な検討事項につきましては、この資料2にございますよう に、基本的な事項としましては基本理念あるいは期待される役割、発達段階に応じまし た教育・保育の在り方、あるいは利用形態の問題。  更に、これを踏まえました設置及び管理運営ということで、職員の資格・配置、ある いは施設整備の在り方、あるいは設置主体、管理運営、費用負担の在り方。  更には、それに関連するその他の問題としまして、幼稚園と保育所あるいは小学校と の連携・接続、子育ての支援の在り方等々につきまして幅広い観点から御議論をいただ いたところでございます。  その議論の状況につきましては、資料3をごらんいただきたいと存じます。  この資料3におきまして、7回にわたりまして議論をした内容、主なポイントの意 見、あるいは議論の状況につきまして整理したものでございます。  その後ろに、横のカラー刷りの資料を3枚ほど用意しておりますけれども、この議論 の整理のポイントを用意したものでございます。主にこれに基づきまして、その議論の 経緯あるいは状況について簡単に御報告したいと存じます。  幼児教育部会におきましては、まず基本的な意義につきまして御議論をいただきまし て、主に3つの点から整理できるのではないかというふうな形での御議論がございまし た。  1点は、「幼児教育の機会の拡大」という問題でございます。家庭や地域の教育力の 低下、あるいは大人優先社会などの傾向によりまして子どもたちの育ちに大きな課題が ある。例えば、基本的な生活習慣の欠如ですとか、他人と関わる力が落ちているとか、 あるいは運動能力の低下、こういうふうな状況にかんがみました場合、これからの幼児 教育においては生涯にわたる人間力の形成ということをコアにしたような子どもたちの 育ちを保障していくというような幼児教育と併せまして、地域や家庭での本来あるべき 教育力を補完していくというふうな両面から幼児教育をしっかり、すべての子どもたち に対して行っていくことが大事だというふうな認識に基づいて、現状において考えまし た場合、やはりいろんな課題がある。  「A 幼児教育の機会の拡大」のコラムの中の2つ目にございますけれども、地域に よりましては幼児教育の機会が偏在している。あるいは、少子化の影響によりまして集 団的な活動がなかなか難しくなっているという状況も見られる。あるいは、3つ目の○ にございますようにニーズとしましては、先ほどの話にもございましたように、しっか り幼児教育を受けさせたいというふうな課題がある一方、親の就労形態あるいは家庭の 状況によりましては幼稚園教育を受けられないような場合も出てくるというふうな課題 がある。  総合施設というのは、新たな枠組みを創設することによりまして、幼稚園・保育所と 相まって幼児教育の機会の拡大に寄与していけるのではないかというふうな意義がある ということではないかというふうな御議論がございました。  2点目は、「『親の育ち』のための子育て支援の推進」というような観点でございま す。  本来は、子育てはごらんのとおり大きな喜びであり生きがいであるけれども、その前 提としましては家庭や地域の支えあってこそということでございますが、現状において は教育力の低下の中から子育てのハンディキャップ、あるいは負担と感じる中で孤立あ るいは不安、焦り、あるいは場合によっては虐待の不安等が指摘される。  そういう中で、家庭で愛情を持って育てられるということを実施していくためにおい ては、子育ての親の力をしっかり支援していくことが大事ではないか。  他方、家庭と仕事の両立というのは重要な政策課題でございますけれども、ややもす れば、例えば安易に施設に預ける、あるいは依存するというふうな「育児の外部化」の 傾向が指摘されるというふうな御意見もございました。  そういう中で、子育ては本来親自身が自ら学び、人との交流を通じまして親としての 力をつけていくというふうな生涯学習の基本ではないか。すなわち、「親と子が共に育 つ」というふうな観点から幼児教育の一環として親の育児の肩代わりではない「親の育 ち」を支援していくということを明確にしていく。そういうふうな意義が、総合施設の ポイントであるのではないかというふうな観点からの御議論をいただきました。  3点目は、「幼稚園・保育所などを巡る諸課題の解決」の問題でございます。  特区との取り組み、あるいは幼保の一体的な運営推進ということの既存の枠組みの中 で取り組んで成果を上げているところがございますが、地域によりましてはそういうふ うな対応ではなかなか難しいというふうな御指摘もあるわけでございまして、具体的に は行政の所管あるいは制度が異なる中で、例えば基準ですとか財政措置、あるいは行政 の窓口等々の問題がございまして、事務の煩雑化・非効率化等の指摘が地方からも出て おるところでございます。  あるいは、幼稚園と保育所も含めてでございますけれども、小学校との連携というこ とが課題として挙げられておりますけれども、なかなか進んでいないという状況でござ います。こうした幼児をめぐる課題によりまして、地域の実情に応じて総合施設という 柔軟な新たな枠組みを設けることによりまして、モデルとして取り組んでいくというふ うに意義があるのではないかというふうな御指摘をいただいたところでございます。  こういう3つの意義を踏まえまして、今後の幼児教育のいろんな課題になる取り組み に対して積極的に推進するということによりまして、幼稚園ないし保育所に対してもあ る意味での適切な影響を与えることができるのではないかというふうな御意見をいただ いたところでございます。  1枚めくっていただきまして、これを踏まえました具体的な、総合施設の機能につい て議論をやっていただいたところでございます。その中で、9点ほどの観点から整理し ております。  1点目は、「対象児・利用形態」の問題でございます。  特に、受け入れる子どもの対象範囲としては、幼児教育の機会の拡大、「親の育ち」 のための子育て支援の推進という観点から、主たる対象としては3歳から5歳が対象に なるのではないかというふうな御意見もありますが、一方では地域の実情に応じて弾力 的な取り組みを可能にするとか、あるいは一貫した教育・保育を実施するという観点か らは3歳未満の低年児を含めたすべての乳幼児を対象とすることも必要ではないかとい うふうな議論があったところでございます。  そんな家庭においては、特に低年齢児の保育においては家庭的な雰囲気の中で行うと ともにお母さん方の負担ですとか、あるいは受け入れている子どもたちの状況を考えま したら余りにも長時間にわたることのないように保育時間の短縮ですとか、柔軟な対応 にすべきではないかというふうな御意見もあったところでございます。特に、3歳未満 の低年齢児の問題については教育的な視点から、例えば短時間の保育とか、異年齢の交 流とか、その段階にふさわしい育ちの機会を確保するということが大事ではないかと。  それから、更にはこの施設の在り方自身が就労形態に区別することなく教育・保育の 機会を提供していくということを考えますれば、いわゆる「保育に欠ける」という要件 は設けないということも基本的に考えるべきではないかというふうな御意見があったと ころでございます。  それから、入所の在り方については、この施設が多様な形で展開していく、あるいは 施設自身が保護者と直接向き合うというふうな関係を考えますれば、直接契約というよ うな形態を取る。これは幼稚園で今実施している方式でございますけれども、そういう ことがあり得るのではないかと。  他方、低年児のお子さんにつきましては、市町村が一定の形で優先順位を決定するな どの認定なりの観点からの関わりが大事ではないかというふうな御意見もあったところ でございます。  2点目が、「教育・保育内容」の問題でございます。  特に、この施設が長時間の子ども、あるいは短時間の子どもを受け入れるというこ と、あるいは幼児教育の機会をしっかり充実したものとしてやっていくという観点から すれば、3歳から5歳の子どもにつきましては幼稚園教育要領に基づいた教育を行うと いうことが基本ではないか。学級編成等の集団を形成するとか、あるいは標準的な時間 を確保するとか、それと併せまして異年齢の交流をしっかりやっていくということが大 事ではないかというふうな御指摘があったところでございます。  それから、4時間の教育活動を考えました場合、午後においては子どもたちの生活リ ズムとか負担とかを考えました場合、先ほどの話にもございましたような地域や家庭で の教育の補完という観点からもゆったりとした家庭的な雰囲気の中で教育活動を展開す るということが基本として考えられるのではないかという御意見がございました。特 に、その中で生活時間の異なります長時間児、短時間児があるということを考えました 場合、保護の幼児に対してきめ細やかな配慮が必要だという御意見が、特に今、先行で 実施されている幼保の一体施設の方からも御意見として出ていたところでございます。  それから、カリキュラムを考えました場合、0歳から5歳までの一貫した在り方を考 えるという視点は極めて重要でございますが、新たな指針を設けるかどうかについて は、やはり現状では幼稚園教育要領と保育所保育指針という形で実施しておりますので 、そのあり方も含めまして、引き続き専門的な検討が必要だというふうな御議論がござ いました。  3点目は、「施設設備・職員配置」の問題でございます。  施設の基準につきましては、この資料6の比較表を後で御参照いただきたいと存じま すが、主な違いとしましては人員の配置の在り方であります。  保育所については年齢ごとに職員1人当たりの幼児を定めていますが、幼稚園につき ましては1学級35人に1人というような定員配置になっておりますし、施設につきまし てもほぼ共通しておりますけれども、幼稚園については運動場を同一敷地内に確保す る、あるいは保育所については調理室をきちっとしているというような違いがあるわけ でございますが、総合規制改革会議等で指摘されているような低い基準に合わせるとい うことについては、今の幼児教育・保育の実施にはふさわしくないというふうな御意見 がある一方、教育の質とその環境の確保という観点と、地域において弾力的な取り組 み、運営ができるような両方の観点から議論が必要ではないかという御意見がありまし た。  特にそういうふうなことを考えました場合、保育・教育の実施において最低限必要と なる基準、それから、望ましいものとして備えるべき標準的なものということを区別し て、それぞれ具体的内容をここで検討すべきだというふうな御意見をいただいたところ でございます。  4点目が、「職員資格」の問題でございます。  原則としては、幼稚園教諭、保育士の資格の併有ということを原則とするべきではな いかという御意見がございますが、現職の先生を中心にしまして一方の資格しかない方 もいらっしゃいますので、当分の間の取扱いとしては、いずれか一方でも認めるべきで はないかという御意見がある一方、例えば低年齢児の子どもさんを担当する職員につい ては保育士の資格がないということについて、あるいは逆に3歳から5歳のお子さんの 学級担任について幼稚園教諭の資格がないということについてはやはり課題があろうと いうことで、その点については、その取扱いについては慎重に検討すべきではないかと いうような御意見もあったところでございます。  それから、特に先行実施のところからお話がございましたけれども、職員の専門性の 向上を図っていくということが非常に重要だ。そのために、絶えず研修の機会を確保す るということを基本に据えて考えていく必要があろうというふうな御指摘をいただいて おります。  その辺の観点から、職員配置の問題もございますが、カウンセリングの専門家ですと か、育児の経験者とか、積極的に外部の人材を活用していくということもしっかり併せ て検討するべきではないかというふうな御議論がございました。  それから、将来的な問題としては教育・保育の双方の高い資格、専門性を有するよう な新たな資格あるいは養成の方法についても検討すべきではないかというような御指摘 をいただいたところでございます。  一枚めくっていただきまして、5点目、6点目につきましてはそれぞれの総合施設の 在り方として、その御判断として考えるべきではないかというような事柄として「小学 校との連携・接続の推進」「子育て支援の推進」ということを挙げて御議論がございま したが、小学校の連携と接続につきましては、特に総合施設をモデル的に小学校の接続 を推進していく観点から、例えば、このEのポツ2つございますように、共通の目的を設 定し、年長児つまり5歳児を中心としまして幼児同士が工夫して特定の課題に取り組ん でいくような「協同的な学び」という取組を推進してはどうか、あるいは小学校との具 体的な連携・接続を考えていく観点から、合同活動とか交流を推進するような学級を「 幼小連携推進クラス(仮称)」、という形で位置づけて取り組んではどうか、それを市 町村教育委員会が中心になって奨励することも考えられるのではないかという御意見が ございました。  それから、子育て支援の在り方につきましては子育ての相談ですとか、親同士の学習 ですとか、サークル活動など子育て力の向上のための取り組みを支援していくというこ とを積極的に推進すべきではないかという御意見があったところでございます。  その具体的な事業の中身につきましては、それぞれの地域の実情ですとか、施設の考 え方もございますので、内容の問題についてはそれぞれの施設の判断によって柔軟な取 り組みができるようにすべきではないかというような御意見もございましたし、2つ目 、3つ目の○にございますように、中高生や若者の保育体験の場として、あるいは虐待 への対応ですとか、生涯のあるお子さんへの対応ということで一段と連携、密接な連携 を推進していくべきではないかという御意見がございました。  7点目につきましては、「設置主体・管理運営等」でございます。  設置主体はごらんのとおり、保育所につきましては特段の制限はございませんが、幼 稚園につきましてはいわゆる地方公共団体と学校法人を原則とするという形になってお りまして、その主体の在り方について、一つの議論のポイントでございますが、幼児教 育部会においては教育保育の質の確保、あるいは安定的な、継続的な取り組みができる というふうな仕組みを整えるということをベースにしまして、幼児教育の機会の拡充に 資する、あるいは民間の能力の活用という観点から可能な限り柔軟なものとして検討す ることが必要ではないかというふうな御意見が今までございました。  他方、この一つ目の○の「また」以下に書いてございますように、いろんな対応、形 態ができるような形として、単に一つの一体型の施設だけではなくて既存の施設が、例 えば組み合わせで地域内で協力して総合施設を構成するとかというふうな柔軟な多様な 形態も認めることが大事ではないかというふうな御意見もございました。  それから、管理運営の在り方につきましては民間活力の活用の観点から、公設民営も 含めまして、可能な限り多様な形態も考えるべきではないかという御意見がございまし た。 それから、質の確保あるいは安定的な継続性の担保という観点からは、3つ目の ○にございますように研修の奨励、地域に開かれた運営、その中には住民の方、保護者 の方々の運営への参加の問題、あるいは自己点検、自己評価、情報提供。自己点検、自 己評価をベースにしました関係者によります、あるいは地域の方々の総合評価を含めま した外部評価も、その仕組みとして検討するべきだというふうな議論もございました。  8点目は、「行政体制等」の問題でございますが、行政体制につきましては地域の実 情に応じた柔軟な対応をベースにするということで、地域それぞれの御判断をベースに して考えるべきではないかというふうな御意見がございましたが、その一方で、やはり 教育の機能を重視する観点からは地域の教育委員会が積極的に役割を果たすということ を期待するというふうな議論もございました。  それから、小学校との連携、あるいは保育・教育を通じました事務の一元的な取り組 みという観点から総合行政を進めやすいような仕組みについても併せて検討すべきでは ないかというふうな御意見がございました。  それから、費用負担の問題につきましては、特に総合施設の問題だけでなくて幼稚 園、保育所、それから公立、私立の現状での公的負担、保護者の負担の不均衡の問題 等々を考えました場合、そういうふうな問題の是正にも資するような視野に入れつつ、 その在り方について検討するということを基本に考えていくべきだというふうな御意見 があったところでございます。  「I その他」としましては、特に名称の問題が議論として一つのポイントでござい ました。  総合施設の名称は、仮称ではございますけれども、その機能自身が何をするかについ てよくわからない、あるいは施設というふうな物理的な建物を連想する中で実態として 合っていないのではないかということで、理念や機能を踏まえつつ一般的にわかりやす い、親しみやすい名称を考えるような形での検討を進めていくべきだというような御意 見がございました。  それから、既存の幼稚園、保育所との関係では、それぞれの地域によりまして状況も 異なります。そういう観点から、既存の幼稚園、保育所との適正な配置の調整ができる ような仕組みを検討すべきではないかという御意見があったところでございます。  それから、最後に総合施設の問題につきましては、これまでの幼稚園・保育所をめぐ ります議論の中で出てきた問題でございますが、就学前の教育・保育の将来像を、この 総合施設の問題を契機にして幅広い議論のきっかけとすべきではないかという御意見が 出たところでございます。  以上が、議論の主なポイントでございます。雑駁でございますけれども、説明させて いただきまして、ありがとうございました。 ○唐澤保育課長  それでは、児童部会における主な御意見について御紹介をさせていただきたいと思い ます。  資料4、5というのがその関係の資料でございまして、資料4は検討事項として児童 部会で整理をしたものでございまして、この1から5の検討事項に沿って御議論をいた だきました。  それで資料5の方をごらんいただきたいんですが、資料5は、まず主な意見というこ とで、3枚の資料にした色つきのものでございます。  それから、もう一つ同じ、この続きでございますけれども、それを更に詳細にいたし ました、全部で9ページございます資料がございますけれども、この9ページの資料 を、この色刷りの資料の方に要約をしたものでございます。この色の付いた方でごらん をいただきたいと思います。  それでは、先ほど義本課長の方から幼児教育部会の御議論を御紹介いただきましたけ れども、児童部会の委員の意見も、かなりの部分では問題意識としては共通のものがご ざいます。  まず、「総論」でございますけれども、「総合施設の在り方」として大きな観点とい たしましては子どもの育ちを支える、次世代育成支援に資すると。次の世代を育ててい くという大きな観点から検討することが必要ではないかと。  保育園・幼稚園の機能、これは現行の機能ということで、そこに通園をされているお 子さんだけではなくて子育てのネットワーク機能でありますとか、コーディネートの機 能を兼ね備えたものにしていってはどうかというような御意見がございました。  総合施設では、幼稚園で対応できていない3歳未満児やパートの親のニーズ、あるい は保育所で対応できていない幼児教育のニーズを満たすものであるべきという御意見が あったところであります。  「子育てをめぐる現状と課題」という観点では、現実の認識の問題といたしまして親 が十分な子育てができないという意味での、言わば非常に広い意味での「保育に欠ける 」という状況が今日の時代に存在をしているという認識がございまして、家庭の子育て 力が低下する中で保育に欠けない3歳未満児の子育て支援が手薄であると。子育てが不 安定化していると。こういう人たちに対する社会的養育、言わば広い意味での子育ての 支援というものをどう考えるかが大きな課題であるという御指摘があったところでござ います。  そういう総論を踏まえての「総合施設の機能・サービス」ということで、最初のペー ジの右側の方に移りますけれども、親子を対象に子育て支援をすることが重要である と。親だけで子どもの育児をしている現状が異常と。  これはちょっと表現はあれですけれども、つまり孤独な子育てと。だれの助けも借り ないというような子育てをしている親子というものが現実に幾つかありまして、児童虐 待ということも社会問題化していると。積極的な親支援、親の子育て支援、親自体の支 援というものを行っていくべきではないかという御指摘があったわけであります。  2番目は、機能として家庭養育の補完を行うと。これは従来の発想でございますけれ ども、家庭の育児力というものの向上を図るという考え方への発展が必要だと。これ は、言ってみればパートナーシップというようなことだと思いますけれども、家庭の補 完をするというだけではなくて、パートナーとして子どもを育てていくというようなこ とが必要ではないかという御指摘がございました。  3番目には、現在、地域では親の就労の有無によって子ども集団が分断されるという 事態。これは、劇的な仕組み上からそうなっているわけでありますけれども、子育て支 援を通じた地域のつながりを構築していくということが必要ではないかという御議論で ございます。  最後、4番目には、地域の子育て家庭の多様なニーズに応えるという機能が重要であ ると。こういうような機能サービスについての御指摘があったところでございます。  2ページ目をお開きをいただきたいと思います。  「利用」の関係でございますけれども、「利用できるものの範囲」、利用者の範囲と いうことでは対象は親子ということで、子どもだけではなくて親と子がともに利用でき る施設にしていくべきではないかと。  子どもは0〜5歳児を対象にして、集団保育が可能か否かという観点のみならず、異 年齢児が一緒に過ごす社会的教育効果も非常に重要であるという御指摘がございます。  すべての子どもに一定時間の保育を保障すべき、これは幅の広いことで、時間の長短 はそれぞれの方の事情によって違うんだと思いますけれども、一定時間の保育が利用で きるようなことを考えていくべきであると。  同時に、障害のある子どもさんたちも利用できるような配慮をしていくべきであると いうような御指摘があったところでございます。  「入所の仕組みなど利用方法」につきましては、利用者が施設に対して意見を言いや すいように、言えるようにしていこうということでは、利用者と施設が向き合う直接契 約が望ましいという御意見。ただし、市町村が要保育認定などを行う配慮が必要と。こ れは、優先的な入所を必要とする人たちに対する配慮が必要であろうという御指摘でご ざいます。 配慮が必要な親子を排除しないよう、これは言わば、先ほどお話をさせて いただきました優先的な利用ということでございますけれども、保育所と同様にサービ ス利用の応諾義務を課することが必要と。これは、難しいケースが断られるというよう なことを防いでいると。逆選択が生じないようにするというような御指摘であると思い ます。  「総合施設の施設・人員・運営の基準」の関係の御指摘でございますけれども、「備 えるべき構造設備」については、余り構造設備の細かな御議論はまだこれからというこ とでございますけれども、子どもの生活の場であるということを念頭に置いた調理室等 の基準設定が必要であるという御指摘がありました。  「従事者が有すべき資格」でございますけれども、保育士あるいは幼稚園教諭のいず れかの資格のみで可能とすべきではないかという御意見がある一方で、3歳未満は保育 士資格を必須とすべきではないかという御指摘もあったところでございます。  親育ちなど、新しい機能を付与すべきと。先ほどの総合的な子育て支援ということに なりますけれども、研修の充実強化をすべきであると。そういうことによって、総合施 設において親子と予防的な関わりができ、児童相談所との連携でありますとか、虐待予 防の機能を果たすことも可能ではないかということがございました。  なお、研修については、いずれにいたしましても両方の資格を持っている職員の方 も、現実には一つの職場でこれまで巣立ってこられておりますので、やはり研修につい ては重視をしていくべきだという、資格の有無にかかわらず重視をすべきだという御指 摘もあったところでございます。  保育ソーシャルワークの観点から、子育て支援ソーシャルワーカーなどといった専門 の職種を位置づけることも考えていくべきではないか、必要ではないかという御指摘が あったところでございます。  「職員配置基準」でございますけれども、これは幼稚園・保育所のそれぞれの現行の 基準では十分と言えないところもあり、それらを検証した上で総合施設の基準を検討す べきだという御指摘がありました。  子育て支援は、保育者が空いた時間でやるのは難しいと。無理であるということで、 専任の枠を置く必要があるだろうという御指摘があったわけでございます。  「保育・教育内容及び運営の基準」でございますが、1点ではカリキュラムの充実や 指導方法の充実が求められており、総合施設においてもその点を意識をしていくべきで あるというような御指摘がございました。  最後の3枚目をお開きいただきたいと思います。  まず、左側の方は「費用負担の在り方」ということでございます。  これは非常に本質的な問題でございますけれども、「国と地方の負担など財源の在り 方」ということになりますが、高齢者関連給付と児童家庭関連給付の不均衡を維持した ままにするのか、改めるかといった視点も必要ではないか。これは、現実にはかなりの 財源というものが高齢者関連対策に注ぎ込まれているわけでございますけれども、子ど もや家庭に対する社会的な意味での投資と申しますか、財源の負担というようなものを きちんと考えていくべきではないか、融資をしていくべきではないかという御指摘でご ざいます。  2番目は、保育所、幼稚園、つどいの広場、これは親子の、お母さんだけではありま せんけれども、主にお母さんとお子様ということが多いんですが、そういうつどいの広 場など、そういう交流の場など、すべてを含めた上での財源の在り方を考えていくべき ではないかということの御指摘がありました。これは、非常に幅広い意味での子育て支 援、あるいは親が育つ支援というようなものを総合的に視野に入れた財源の在り方とい うようなことを考えるべきではないかという御指摘でございます。  3番目は、現在の就学前の児童にかかる負担、これは税、それから、これは医療関係 の中のごく一部に入っておりますけれども、医療保険でありますとか、それから雇用保 険からも事業所内の保育所のような支援が費用の負担に入っておりますけれども、非常 に財源がばらばら、たくさん入っておるので、そういうものを整理して考えていくこと が必要ではないか、大きな視点から一度考えてみることが必要ではないかという御指摘 がありました。  費用負担は、これは総合施設の費用負担という意味でございますけれども、原則とし ては地方が負担をしていく。これは保育、幼稚園とももともとは、特に保育の関係は市 町村が中心というのが必要でありますので、現行でも費用の最終的な支弁の主体、負担 の主体というのが一つになっているわけでありますけれども、原則では地方負担で、次 世代育成支援という観点から国も負担をするという整理がいいのではないかということ の御指摘があったわけであります。  これは、子育てという幅広い意味、あるいは保育という少し狭い意味でもそうした恩 恵、メリットというものは企業も多くのメリットを受けているわけでありますので、そ の費用、それが保育なのか、総合施設なのか、子育て支援全体なのか、ここはいろいろ 御議論があると思いますけれども、何らかの一定程度の費用負担を行うべきではないか という御指摘があったところでございます。  「利用者の利用料負担の在り方」でございます。これは、幼稚園と保育所で利用者負 担の在り方、制度の仕組みが異なっているわけでありますけれども、総合施設では利用 者負担のルールをある程度そろえるべきだという御指摘がありました。  利用者負担につきましては、現行の保育所と同様、応益負担を原則としつつ、それに 応能的な要素を加味するのがよい。多少、所得に応じた負担ということを考えていくべ きではないかという御指摘でございます。  最後、一番右の方、半分が「その他」でいろんな関係でございますが、まず「基盤整 備の在り方」という点では、総合施設では施設整備費を社会福祉法人だけではなく、そ の他の主体にも補助すべきではないかというような御指摘がありました。  「既存制度との関係」ということでございますけれども、この子育て支援機能、総合 施設の一つの求められる機能としての子育て支援機能については、総合施設だけではな くて幼稚園と保育所にも付加をするということで進めていくのか、あるいは総合施設の みにして、それを普及するということで検討を進める、付加するのかというようなこと を検討をすべきではないかという御指摘。  最後に、総合施設と小学校の連携という視点も検討の際には必要である。  あるいは、児童相談所や市町村保健センターなどと連携をして重層的な支援を行うこ とが必要。  あるいは、総合施設に来ない層、来られない層。これは、なかなか利用の足が遠の く、あるいは利用する時間がないというような方たちに対するケアをするためのソー シャルワーク的な機能を持たせることが必要ではないかと。  これは全部、必ずしも整合的な御意見ではございませんけれども、主な御意見として 以上のような御意見があったということでございます。  以上でございます。 ○岩男主査  ありがとうございました。それでは、ここから大体1時間ぐらい委員の先生方の総合 施設についての御議論に移りたいと思います。  事務局より、それぞれの部会に提出されておりました「総合施設に係る主な検討事項 」が示されておりますので、そちらも参照しながら御意見をちょうだいできればと思っ ております。  それでは、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いしたいと思いま す。 どうぞ、酒井委員。 ○酒井委員  今日は、双方の議論につきまして詳しくお聞きしましたので、本当によくわかった点 と、まだ少しこんな点が自分の中で消化できていないという点と両方があると思いなが ら聞かせていただきました。  初めに、是非ともこれだけは聞いておきたいというか確認しておきたいなと思うこと がございます。  今、この総合施設の議論というのは本当に大勢の関係者が注目をしているわけです。 そういった意味では乳幼児、小さな子どもたちがこれだけ明るいところで、明るい場に 出されて議論をするというのが大変喜ばしいことだというふうには感じております。で すけれども、この総合施設の方向がどのような方向に進むかによって相当数、さまざま な影響が出てくるだろうなというふうに思っております。  私は公立幼稚園ですので、公立幼稚園の実態を調べてみましても、公立幼稚園が配置 されている自治体の約二割が、既にこういったことの実施を考えているということも含 めて約二割が前向きの姿勢を示しております。  そういった中でよくも悪くも大きく影響していきますので、せっかくの場ですから、 この議論が是非ともいい方向に進むといいというふうに思うんですけれども、その中で 一点だけどうしても押さえておいてもらいたいと思うのは、やはり子どもの視点に立つ ということです。  骨太の方針から、この総合施設の議論が出てきたんだと思いますけれども、そこでも 児童の視点に立ってということはしっかり言われておりますので、ニーズに応えるです とか、サービスですとか、そういったことが必要な状況もとてもよくわかりますので、 そういったことも勿論必要なんですけれども、そちらの方向に偏ってしまって本当の意 味での子どもの幸せというものが消えてしまわないように、そこだけは大前提にして議 論を進めていただけたらいいなと強く思っております。  以上です。 ○岩男主査  ありがとうございました。児童部会の方でも、子どもの視点ということはまず第1の 条件というようなことで、これはもう当たり前のことというようなことで合意が得られ ているというふうに思っております。  北條委員、お願いいたします。 ○北條委員  今の酒井先生の御指摘に勿論賛成でございますし、また、今日御説明いただいた両方 のペーパーも、御説明いただいた限りでは、その視点に立とうとしていただいていると いうふうに理解しております。  このたびの、いわゆる総合施設を検討するに当たりましては、やはり最近の子どもが 置かれている状況というのをどういうふうに認識するかというようなことが大事だと思 います。  それで、私は最近、ここ10年とか15年というスパンの中で乳幼児が以前より全体とし て子どもの権利が守られる幸せな状態に向かっていったというふうには思っておらない わけでございます。それだけに、今一度子どもの視点、子どもの権利、また、子どもの 育ちの視点ということをしっかりと守っていくんだということを御確認いただけたのは 幸いなことだと思っております。  ただ、以前、児童部会にお呼びいただいたときにも申し上げたことでございますが、 この総合施設を検討することになった経緯というのが今日に至るまで、残念ながら腑に 落ちないわけでございます。要するに、かくかくしかじかの必要があって、この問題に 対応するために総合施設というのであれば大変わかるのでございますが、今、酒井先生 もちらっと御指摘になりましたように、そういう観点ではなく、経済財政諮問会議等か らの働きかけを受けて今日に至っているということだろうと思います。しかし、であれ ばなおさら少しでもいいものをつくらなければならないわけでございます。  それで一点、ちょっと最初にお伺いいたしたいのは、児童部会の方のおまとめの御説 明で明確でない、よくわからなかったところがございますのは、幼稚園という制度、施 設がある。保育所という制度、施設がある。その上に総合施設という制度と施設をつく るということを意味しているように感じられたんですが、幼児教育部会の方で検討して まいった中ではいわゆる箱もの、施設をつくるという意味での制度の創設では必ずしも ないということが議論されて、その前提となって話されておりますし、本日の幼児教育 部会の報告もそういうものだと思っております。  もしも、第3の制度と第3の建物、施設ということをイメージされておるのであれ ば、かたい制度によって現在の二元体制が三元化されて一層の混乱を生んでしまうとい う危険性があるということ。また、現状において3歳以降においては、これは幼稚園と 保育所を全体として見ました場合、既に我が国では施設は過剰状態にあると見てよいの だろうと思います。  それで2006年以降、人口の減少期を迎え、乳幼児人口も急激に減少することが見込ま れるわけですが、仮にただいま指摘しましたような視点からまとめられていきますと、 地方の末端ではそれいけやれいけでぴかぴかの総合施設をつくれつくれつくれというこ とになってしまうわけでございまして、これは財源的にも非常な無駄遣いを起こします し、混乱ばかりを起こしてしまう、そういう可能性があると思います。  私も、施設をつくる地域があるということはそのとおりだと思っておりますが、それ を全国津々浦々につくり上げていくということには反対の立場でございます。 ○岩男主査  私がお答えをするのが適切かどうかですけれども、足りない部分はほかの委員の先生 方あるいは課長から補っていただきたいと思いますが、一つの問題は恐らく総合施設と いう名称からくる誤解なんだろうと思うんです。つまり、これは総合施設ではなく総合 プログラムとでも言えば、今、おっしゃったような誤解は生じないんだろうというふう に思うんですけれども、たまたま施設という言葉が使われているものですから、そこか ら誤解が生じやすくなっているのかなというふうに思います。  それから、児童部会の方でも当然のことながら、今日の財政状況で新たな施設、ぴか ぴかな施設を全国につくるなんていう非現実的なことはだれも考えていないわけでござ いまして、むしろ単に、例えば空いているスペースのある幼稚園など既存のものを活用 するだけではなくて、統廃合して空いている小学校なども視野に入れて、そういうもの を活用するというようなことで、新たに何か箱ものをつくるというようなことではない という、これは非常にはっきりしていると思うんです。  勿論、地域によっては、今、おっしゃったようにどうしても新しいものが必要だとい うところもあると思います。これは当然、また別の問題として考えることだろうと思う んです。  それから、この既存のもの、例えば保育所、それから幼稚園はそのまま存続してい く。今、考えているのは新しい別のもの、第3のプログラムをここで考えているという ことだと思うんです。ですから、何か既存のものがすべて総合プログラムか何かに変わ るということではないという辺りは、児童部会では非常に明快に御説明があり、合意が 得られているところだというふうに思いますが、そんなことでよろしゅうございます か。 ○北條委員  ありがとうございます。 ○岩男主査  ほかに、どうぞ。それでは、吉田委員、それから小笠原委員、お願いします。 ○吉田委員  一つ、議論をすっきり進めるために、むしろ事務局にお願いしたいんでございます が、幼稚園・保育園の比較がございますが、両部会のこの資料を共通する部分と、ある いは異なる部分と、あるいはどちらかの部会だけがその議論の話をして、例えば幼児教 育部会でこの話をしているけれども児童部会でやっていない、あるいはその逆だとか、 両方、これはほぼ同じ意見であるとか微妙に違うとか、一覧になるかどうかは別とし て、何かそれをうまくまとめていただくと議論が次から大変進みやすいのではないかと 思いますので、できれば一つはその辺をお願いしたいと思います。  それから、もう一つは、いわゆる子育て支援ということは私は恐らく総合施設という 限り、機能としてかなり重要になると思うんですが、これでも両部会ともかなり触れて ございまして、いわゆる今度は親がやっていたことの肩代わりをするだけの支援ではな くて、むしろその親が育っていくような支援をしなければいかぬ。これは恐らく両部会 に出ていたことで、それはやはり次世代育成支援という視点にもかなり合致しますし、 幼児教育部会サイドで考えれば生涯学習という視点にも当然なるわけで、これはかなり 重視していただきたいというふうに思います。  それから、実はかなり両方で違っていたのは、当然ですけれども、幼児園・幼児教育 を比較的ベースに考えた場合と、子どものケアとか子育て支援的な要素をかなり重視し て生活支援的な発想で考えた場合とで違う部分があるんですが、この合同検討会議では できればそれは踏まえながらも、議論の定義は踏まえながらも、やはり両方足して2で 割る話でもございませんし、木に竹を接ぐような話でもございませんので、一応、理念 的にはある種ゼロベースで考えていくべきではないかと思います。  特に、個人的には0、1、2歳と3、4、5歳児で何か余りに線引きをしようなこと ではなくて、子どもは連続しているわけですから、この辺の視点を大事にして、特に、 実は幼稚園も保育園も一番目が向けられていなかったのは、確かに保育に欠けない3歳 未満の子どもでございまして、これは幼稚園も対象にしていない、保育園も対象にして いない。しかし、そこに総合施設というのは何かあってもいいのではないかと。  しかし、それは幼稚園・保育園のように別に毎日朝からお昼とか、毎日朝から晩まで と来る必要もないので、定型的なある種のサービス提供にとらわれずに、もう少し柔軟 なものがあっていいのではないかというふうに思います。 ○岩男主査  小笠原委員、お願いをいたします。 ○小笠原委員  吉田委員がおっしゃったように総合施設の利用対象にする子どもさんの問題は全く同 感でございまして、ここまで少子化が進みまして、いよいよ2007年からは人口全体が減 少するという時代に突入するわけです。私は北條委員がおっしゃったこととは異にする ものでございまして、総合施設、いわゆる総合的なプログラムの施設ができることによ って一層の混乱が生じるとは思っておりません。  なぜならば、保育所におきましても幼稚園におきましても、今までそれぞれ機能を異 にした経過があるわけで、保育所におきましては待機児童という現象が出ております し、幼稚園におかれては私どもの地域の例ではございますが、大変経営が難しいという 現象が生まれております。  検討されている総合施設は保育所の屋上屋を架すというものでもなく、幼稚園の屋上 屋を架すというものであってはならないと思っています。  これだけ少子化になりましても悩めるお母さんがそこにいて、子どもを育てることが うまくいかないということを保育所だけで、あるいは幼稚園だけで片づけられるか、と いう問題を抱えており、実際に保育現場は実感しております。  非常に悩めるお母さんと申しますと、育児ができないとか、あるいは子どもがいると いうことで精神的に負担を感じており、双極性障害(そううつ病)のお母さんが大変増 えております。  そういう中で、厚生労働省が「一時保育事業」の中で、新たに「保護者に育児疲れを 解消する」項目を設定していただきましたことで「一時保育事業」というものが本当に 子育て支援として役に立っております。需要が多くございます。  こういう現実を考えますと、子どもの幸せとは何かの視点から、子育てがうまくいか ないから「一時保育事業」を利用する、そのことによって親が育児放棄をするのではな いかということがございますが、そういうことと結びつけることは早計だと思います。 保育事業の中の一時保育事業が地域にとっても、家庭にとってもどれだけ力強い支援で あるかということは、これは数字が示しており現実的な証拠があるわけです。  働いていらっしゃるお母さんだけではなくて、すべての親を対象にして保育所・幼稚 園以外の選択肢が増えるという形でとらえていただくことが、肝要と思います。  施設が決して過剰になるということではなくて、これから先はこれだけ少子化になっ ていく中で、子どもさんを持つお母さんたちにとって、いろんな施設を利用できるとい う選択肢を広げていくことが私たちの社会的な責任ではないかと思います。  子どもさんが少なく、兄弟も少ないなかで就労されるお母さんたちはもっと増えてく るだろうとは思います。以前の児童部会で厚生労働省より説明のありました資料の中 で、一般の母親を対象にした子育てアンケートがあり、これは平成15年の3月のUFJ の総合研究所の調査ですが、子育てで、どんなものを期待するかという問いで、「遊ば せる機会の提供が欲しい」というのが圧倒的に61%もありまして、「親のリフレッシュ とか、その機会提供が欲しい」というのが45%もありまして、更には「親の不安とか悩 みの相談を受けるところが欲しい」というのが32%もあったということは、けっして「 一時保育事業」だけで私たちの機能が充実しているということではないのです。  本来の保育事業というものを超えて、あるいは本体の事業に付加して行っている「一 時保育事業」の拡大というのは、建物にいたしましても、人材にいたしましても、勿 論、資源、財源にいたしましても限度があります。地方自治体が行っております子育て 支援をみましても3,500 の自治体があるなかで、子育て支援を取り組んでいる3,200の 自治体で「地域子育て支援センター」が何とたった1,381 しかありません。子育て支援 事業の取組みが極めて不十分だという証拠があります。  一般の人たちから、社会福祉法人の保育所が現状ではでき得ない部分、幼稚園の手の 届かないところの0歳児から就学前まで、あるいは放課後児童まで受け入れできるよう な子育て支援の施設が期待されているのではないかと思います。  就労している特定の方たちだけを対象にしたのではなくて、すべての方を対象にした 方たちが自由に利用できるという仕組みをつくるということが、今の少子化に向けて世 論も歓迎することではないかと考えております。 ○岩男主査  北條委員、どうぞ。 ○北條委員  小笠原先生がただいま御指摘くださいましたような機能を、全体として私どもが持っ ていくということは当然必要なことでございまして、そのことに私は賛成でございま す。  だから、私が申し上げたいのは、ただいまの小笠原先生のお言葉をそのまま受け取り ますと、要するに全国津々浦々に箱ものとしての施設をつくることを意味しているんで しょうか。そうでなければ、そうでないのであれば、私は先生がおっしゃっていること に何ら異論はないんです。私も同じ考えでございます。 ○岩男主査  どうぞ。 ○小笠原委員  ありがとうございます。全くそうでございまして、私は全国津々浦々に総合施設を造 るというよりも、今のこういう財政の厳しい折に、しかも過疎地では幼稚園も保育園も 非常に運営が厳しいので、そういうところにあえて地方自治体が造るということはあり 得ないと思います。  もし、そのような状況でも造るとなれば、何らかの規制を設けたり、あるいはムダな 公共事業であれば住民運動で反対するとか、当然それはしていくべきものであろうと思 います。昔ながらの公共事業の箱もの、ぴかぴかなものを造ることではなくて、岩男先 生がおっしゃいましたように、その施設が機能を有しているということがとても大事な ことであり、学校の空き部屋や公民館が空いておれば、職員を派遣したり、職員がお手 伝い行く形で良いのではないかと思います。  運営費の経費の問題もありましょうが、私の友人で「子育ての支援センター」の実践 をしている者と話しますと、どうも保育所の保育士さんでありますとか、幼稚園の教師 でありますとかそういう人たちに限っての対応だけではなくて、母子保健推進員のよう な方たちの「子育て推進委員」みたいなようなものを作って月に3回から5回、あるい は1週間に3回くらい来てもらって助言したり、育児のお手伝いをされることであれ ば、そんなに多くの財源は要らないのではないかと思う次第です。  実際に宮崎県でそういうことを実践している地区の例がございまして、その地域では 反響が強くあり、そういう意味で何も総合施設というものが建物を概念化するものでは なくて機能を概念することが一番肝要と思います。北條先生、おっしゃってくださいま したことをありがたく、私も確認として今後の意欲を感じました。ありがとうございま した。 ○岩男主査  どうぞ、酒井委員。 ○酒井委員  児童部会の方にちょっとお聞きしたいことがあります。  先ほど吉田委員から児童部会と幼児教育部会で共通のものもあれば、幼児教育部会の 取り組みと児童部会の取り組みで異なっているところもあるというふうに言っていらっ しゃいました。  幼児教育部会の方では、いろいろな特色を持った総合施設ができてくるんだろうとい うような中で、教育というところを重視して、その中でも幼稚園と小学校の連携等を重 視した総合施設があってもいいだろうというような話が出ていたわけですけれども、児 童部会から出していただきました資料5の「総論」の「総合施設の在り方」という左の 一番冒頭のポツの3つ目なんですけれども、ここに「総合施設は」と書かれていて、 「保育所で対応できていない幼児教育」というふうな表現がされているんですけれど も、先ほど言ったような教育を重視した総合施設をつくっていくときに、この教育をど うとらえるかというところはとても問題なんだろうと思うんです。  それで、ここでは「保育所で対応できていない幼児教育」というふうにありますけれ ども、私が保育所の先生方といろいろお話をするときに、保育所の保育指針が幼稚園教 育要領に準じているので教育はしていますという方がこれまで多いように思うんです。 もし、この辺で何か議論がございましたら、その議論を御紹介いただけたらと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○唐澤保育課長  済みません、これはいただいた意見を比較的そのまま載せておりますので、保育所で 幼児教育をしていないという意味ではなくて、保育指針も幼稚園教育要領に準拠してや っていますので幼児教育をやっているんですけれども、幼稚園の中には充実した幼児教 育の体制をとられているところがあるということで、幼児教育・保育の両面に力を置い て新しい総合施設の在り方というのを考えたらどうかと。どうしても、幼稚園・保育園 ともそれぞれの歴史の背景というものがございますので、その延長に今まで来ているか ら、そういうものに必ずしもとらわれずに両方の視点に置いた新しいものを機能として 考えていってはどうかというような御指摘でございます。 ○酒井委員  わかりました。確かに幼稚園教育要領に準じてしているところと、それから幼稚園教 育要領に基づいてしているところと、そして資格・免許を同じように持っていれば、多 分スタートは同じだと私も思うんです。  ですけれども、多分、幼稚園教育と保育所の、どちらかといえば3、4、5歳の部分 になるんですけれども、そこのところでも大きな違いというのはその後の教職員の意識 向上のためのシステムとか、それから職員の配置の仕方ですとか、そういったものが影 響が出てくるんだろうと思うんです。  ですから、総合施設においてはそこら辺を是非考慮していただいて、保育の部分で、 あるいは、保育の部分でも同じだと思うんですけれども、それぞれが、スタートライン は同じだけれども、その後、いい経験が積んでいけるような研修システムですとか、そ れから安易なローテーションをしないですとか、そういった整備を是非、細かいところ ですけれども、図っていっていただけるといいなというのは私の意見です。 ○岩男主査  どうぞ、田村委員。 ○田村委員  両方の部会の御意見が出たところで、少し問題を整理する意味で考えてきたことをち ょっと申し上げてみたいと思っているんですが、かなり出たというのは議論されてきた ことなんです。  明治のときに学校という制度が導入されたときに、当時の先見的な教育、啓蒙思想家 たちの教育関係者が共通して言っていることは、学校がうまくいくためには家庭教育が 必要だということをだれもが言っているんです。学校がうまくいくためというのは、学 校教育をやるためには家庭がちゃんと教育してくれないとできませんという前提で制度 ができているわけです。それが、その場合は勿論、幼稚園という考え方ではないわけで すけれども、この幼児教育が充実していく中でそれがだんだん下がってきているという 一つの面があります。  しかし、事態としては家庭がしっかり教育をしてくれないと、学校というのは集団を 基盤にした教育のシステムというのは機能しにくいんだということは、これは変わって いないんだろうと思うんです。そこの部分が社会の変化、それから少子化も大きいと思 います。例えば、簡単な自閉症的な症状というのは集団治療で治るんです。それは証明 されていることでありますけれども、そういうようなことが家庭の環境、あるいは社会 の変化で大きく出てきてしまう、こういう問題があって、具体的にいいますと、学校の システムで今、一番困っているのは、よく言われる小学校1年プログラムというもので す。小学校1年生の段階で学級崩壊が今、全国的に広がっているわけです。それで、対 応の立て方がないんです。非常に応急措置的な対応で、ベテランの先生ほど怒るとかい ろんなことがうわさみたいにして言われて、非常に困っている状態がある。  しかし、これはどこに根源があるかというのは、そう簡単には言えないと思いますけ れども、現実にこの議論をするときに、両部会ともはっきり意識しておかないといけな いのは、学校教育が成り立つためには家庭教育がないとだめだという、この言葉を思い 出しながら、その部分にどう関わってどうやるかということを私ども考えていく必要が あると思うんです。  それで、どのくらい家庭教育に関われるか。これもなかなか難しいテーマだと思うん ですけれども、子育て支援というのはそういうことを別の表現で言っていることなんだ ろうと思います。  ですから、方向性は余り違わないと思うんですけれども、その際、是非お願いしたい のは、形としてできているからやっているはずだという言い方はもうやめた方がいいと 思います。例えば保育所は、私もたくさんケースを知っていますが、保育指針があるけ れども、実際やっていないんです。それはなぜかというと、保育所の場合、研修する暇 が全然ないんです。十何時間店開きしていて、研修する時間を仕事をしている人たちが 持てないというのが実態としてあるわけです。ちゃんとやっているところもあるかと思 います。しかし、幼稚園ですと夏休み、春休み、冬休みがあるからその時間も使い、そ れから保育時間も制限されていますから、それ以外でやれます。  ですから、なかなか十分にはいかないということはやはり認めた方がいいと思いま す。幼稚園も、当然のことですけれども、質が違う、ばらばらですから、全国一律にし て理想的にやっているわけではないんです。そういうのを総合的に議論の中で認め合っ て、建設的な意見のまとめをしていかないと、まさに子どもの視点に立った議論になら ない危険があるような気がしてしようがないんです。  ですから、資料を整理されるときにそういうこともやはり視野に入れて、幼児教育の 部分は大人の社会から本当に一生懸命やってきていなかったのではないかという反省が 私がいたときにはあるんです。酒井先生が最初におっしゃったので、全くその意味では 同感なんですけれども、だから、ここで本当のところをよく議論を出して、問題点を指 摘して、新しいものを考えていく、こういうことでいった方がいい。  それから、総合施設という言葉は、私はやはり変えた方がいいと思います。地方の首 長はそういうものを議論しているというと必ず言うのは、それではうちの地区でも一つ つくるかと、必ずそういう反応があるわけです。つくるというのはどういうことかとい うと、施設だからそういう箱ものをつくるという考え方です。  だから、言い方はやはり考えた方がいいような気がします。システムなんです。プロ グラムと言ってもいいのかもしれませんけれども、そこのところをはっきりさせないと 何の問題解決にもならない危険があると思います。  済みません、当事者として、それから評論家みたいなことも言ってしまって、勘弁し てください。以上です。 ○岩男主査  小笠原委員、どうぞ。 ○小笠原委員  私は当初、幼児教育の部会を何度か拝聴させていただく機会があったのですが、一つ どうも御理解をなさっていないというか、誤解をなさっていらっしゃるのではないかと いうのが、今、先生がおっしゃった研修のことでございます。  私は早速、各県や各市町村に職員研修のことを調べてもらいました。保育所というの は御案内のとおり、指導監査というものがございますので、研修というも厳しく指導さ れております。何月何日に誰がどの研修を受けた、どの団体のものを受けたとか、復命 書も指導監査の中で調べられるわけでございます。  私はこの研修というのは質を高めるということだけではなくて、保育所の方向性を確 認する、偏重的な方向に行っていないか、保育所の方向性というものも見れるわけでご ざいますから、指導監査でチェックされるだけでもありがたいと思っているところでご ざいます。  ところが、幼稚園の方に聞きましたら、全く逆転しているような気がいたしまして、 保育所はかなりの量で研修をしており、国庫補助研修から相当な量がございまして、初 任者、主任者、中堅、所長研修会も、所長ゼミナール等、大変大きな研修をやっており まして、講師としてお招きになる団体や組織の先生には幼児教育指導の大学の先生方も います。  幼児教育を主に御指導なさっている先生でありますとか、ソーシャルワーク等々ピン からキリまで相当に私たちはその方たちから勉強をし、研修を受けているわけで、どう して保育所には研修が少ない、という話が幼稚園側から出るのかと思います。幼稚園業 界に聞きましたら研修を受ける機会は逆転しているんだと。実は、保育所の方がよく勉 強されていますよ、ということを聞きました。  今言われていることは、ある特定の幼稚園をお取りになられたり、ある特定の保育園 をお取りになるからではないかと思いますが、保育組織団体から見ましてもかなりの勉 強をしていると自負しておりますし、それだけのことは実績がございますので、お調べ になっていただきたいと思います。  これは本当に、私は前から少し不満だというか、憤慨をしているところでございまし て、こういうものが表に公開されますと、社会から保育所の職員は勉強していないん だ、という誤解を与えられる可能性がございます。  幼稚園では、私学と国立は研修も違うと思います。私学と国立はとは条件も違います し、環境も違うと思います。小学校との連携をとりあげても、異なると思います。   一つの特殊な例をお挙げになられて出されるということについては、もう少し根拠の あるものを出して論議されないと、保育界としては大変憤慨でございまして、腹立たし いところがありますので、私はこれだけは申し添えておきます。 ○岩男主査  ちょっと一言申し上げたいと思いますけれども、私は保育園も、現場では知りません し、それから幼稚園も知らない人間で、どちらの利害関係者でも全くないわけですけれ ども、要するに私たちがここで議論をするのは、よりよい総合システムあるいはプログ ラムにするための議論であって、自己弁護のための議論でもなければ、相手を批判する ための議論ではありません。それぞれ、課題を抱えているに違いないと思うんです。  仮に課題を抱えていなくてもよりよいものにするというチャレンジは両方ともにある はずなので、是非、前向きの議論にしていきたいと思います。それからいろんなケース がそれぞれにあるんだろうと思います。ですから、それを取り上げて全体に拡大するよ うな議論だけはお互いに気をつけて、しないようにしていきたいと思っております。 ○田村委員  小笠原先生のお話で、ちょっと誤解があるので申し上げておきますけれども、幼稚園 というか学校の研修の中心は校内研修なんです。ですから、その日に何かを研修してこ ういうことがあったということをやることが一番重要だと考えているわけです。  外部に行って勉強するというのは、ただそれを補足するだけで、校内研修を中心に考 えるとなかなか時間がなくて大変だろうなという意味で申し上げたわけで、しかもすべ ての保育園がやっていないというふうには考えておりません。  ただし、なかなか大変だろうと思うので、その点はやはりよく踏まえて、お互いに大 事なところを議論していく必要があるというふうに思っています。 ○岩男主査  どうぞ、山口委員。 ○山口委員  保育に欠けるとか欠けないとかという基準が、何かどんどんあいまいになってきてし まっているような気もしますし、保育に欠けない3歳児未満ということでも出てきてい ます。このいただいた資料の中で、機能として家庭養育の補完を行うという発想から家 庭の育児力の向上という、ここが本当に非常に重要なポイントだと思うんです。  私は岡山に住んでいます。岡山では親子クラブという組織が非常に発達しているんで す。3歳未満ぐらいの、ここで言うと保育に欠けない3歳未満のお子さんとお母さんを 組織しているクラブで、それがネットワークしているんです。  それを全部抱え込むのではなくて、それをどう支えていく、何か基地みたいなものと 言うのでしょうか。どうも今日の議論を聞いていると、何か全部取り込んだり抱え込む みたいな発想があるんだけれども、そうではなくてもっと開かれていて、要するにリソ ースセンターみたいな機能というのか、そこに行くと、例えば遊びの道具を貸してくれ るとか、遊びの指導者がいるとか、オーストラリアのキャンベラに行ったことがあるん ですけれども、そこにはやはりプレイグループというのがあって、プレイグループには ちゃんとリソースセンターというのがあるんです。ここでは、それぞれの小さなグルー プもたくさんたくさんあるんだけれども、それをバックアップしてくれるような、何か そういう機能というか。私はやはり、この場合には非常に重要になってくるのではない かというふうに思います。その意味では、やはりそれぞれのお母さんが子育てを通して 育つ部分というのが非常に重要であって、その部分をどんどん抱え込んで、長時間化す ればするほど親が育つ部分の機能を逆に弱体化させてしまうというか、これは誤解され ると困るのでこの言葉は非常に慎重に言うんですけれども、子育て支援が子捨て支援に なっていけないということです。そういう意味では、それぞれのお母さん方の育てる喜 びを支えあうお互いのネットワークをどう私たちはバックアップできるかというか、そ ういう形のものをつくっていく必要があるのでないでしょうか。 ○岩男主査  無藤委員、お願いします。 ○無藤委員  少し基本というか、出発点みたいなところの議論なんですけれども、何で総合施設と 仮称で呼ばれているものが必要かというのは、勿論、財政的なことや、特に子どもが極 めて少なくなった地域のニーズがあると思うんですが、もう少し広く、日本全国的に言 うと、それぞれの部会の報告にありますが、要するにいわゆる乳幼児の保育、更に幼児 教育と子育て支援というものをもっと統合的に扱おうということだろうと思うんです。  それは勿論、従来、保育園も幼稚園も子育て支援に努力してきましたけれども、やは り現場で見れば、中心はまず預かったお子さんの保育であることは当たり前でありまし て、それのおまけよりはもうちょっと一生懸命やっていると思うんですけれども、なか なか難しいということがあります。  勿論、保育園は子どもを預かっている自体が子育て支援というのは勿論子育て支援で すけれども、実際の地域のニーズとしてはフルタイムで預かっている以外の親の支援と いうことが今、非常にどんどん課題になって参加者が増えてもうあっぷあっぷしている という感じがいたします。  ですから、それに真剣に対応しなければいけないんですけれども、そのときに単に幼 稚園・保育園にもう一つ子育て支援センターをまた別につくって対応するという考えは ありますが、そうではなくて育児力向上という視点で考えたときに乳幼児をしっかり育 てるには、園で預かって保育教育をするということと、親の育児力向上とがもっと密接 に連関してやった方がいいんだと。そういう意味では、親の問題というのは0歳から就 学前まで全部のところで考えるべきであるという視点というものが重要になっていく。  そういう意味で、私は乳幼児保育、幼児教育の考え方でしょうか、枠組みがこの数年 で大きく変貌しつつあると思います。  ただし、それを一律に全国ですぐそうなるべきかというと、それはかなり地域、家庭 でニーズが違いますので、子育て支援を本気でかなり幅広くやらなければならない場合 もありますが、必ずしもそうではない場合もあるというように思いました。それが一つ 申し上げたいことです。  それから、もう一つは先ほどの研修のこともそうなんですけれども、もう少し広く言 うと、部会の報告にもありましたけれども、どうやって子どもにとってよいものにする か、つまり別な言い方をすれば、保育の質をどう確保するかという問題なんです。  これはそれぞれの部会で私、発言したことの繰り返しになってしまうんですけれど も、保育の質をどう確保するかというのは、すごく大雑把に言いますと4つほどの観点 がありまして、1つは保育者の資質部分ですが、資質を決める一番基本というのは一つ はキャリアだろうと思うんです。そのキャリアの一つというのは、学歴といいますか、 養成の年数ですけれども、これが現実には、平均的に言えば幼稚園の教諭と保育士の間 に違いがあります。最近、保育士は4年制大学養成も増えてまいりましたけれども、や はり差はあると。そこをどう考えるかというのは、長期的には問題があります。  それから、もう一つの問題は、保育士と幼稚園教諭の比較の表がどこかにありますけ れども、保育士資格というのは幼稚園教諭でいうと2種に、2種というのは短大レベル ですけれども、それに該当することになりますが、幼稚園教諭の場合には4年制は1 種、大学院の専修というようなことで、そういう差をつけるのがいいのか悪いのか別の 問題がありますけれども、一つの励まし、目標にはなるわけで、それを保育士の場合ど うするかというのは、やはりこれは長期的な課題ではないかと思います。  それから、キャリアという面でもう一つ重要なのが、それぞれの園で勤務されている 先生方の経験年数がある程度長い方も含められると。全員がベテランである必要はない わけですけれども、若い新人の方もあるし、10年選手もいるし、20年選手もいると。そ ういうことが可能になることだろうと思うんです。それは、5人しかいないのに必ず分 けろとかそういう話ではないんですが、それがどう可能にするかということを考える必 要があります。  そのことは、2番目の話なんですけれども、さまざまな基準ということとも連動しま す。基準とか、補助です。つまり、経験年数や学歴の問題というのは、実は待遇の問題 と密接に関連するわけで、これは補助金の問題とも連動して非常に複雑ですけれども、 つまり幼稚園と保育所とシステムが違う。更に、公立と私立でシステムが違うというこ とで簡単に言えないんですが、非常にいろんな組み合わせの中で一番条件が悪いところ ですと、10年選手を雇うことがそもそも不可能な補助水準のところもあるらしいです。 そういう低い水準に総合施設が合わせられてしまうと保育の質の一番根幹が保てないと いうことで、私は非常にそこを気にいたします。  それから、もう一つ、基準ということで、設備はいろんなことがありましょうけれど も、大事なのはやはり保育者1人当たりの子どもの人数だろうと思うんです。これは特 に保育所では十分に検討されてきておりますので、そういうことを念頭に置いて考えた 方がいい。 これは別な言い方をすると、幼稚園の定員にちょっと大き過ぎると現場に いれば思うので、幼稚園の一番大きなものを総合施設に持ち込まれるとちょっと困ると いう危惧であります。  3番目に申し上げたいのは、先ほど議論があった研修なんですけれども、これは公 立、私立と幼稚園、保育園、それから県、自治体で実は非常に落差が大きいので、なか なか全国一律には言いがたいところもありますけれども、おっしゃったようにいわゆる 講習会とともに園内の研修というものは必要で、これが保育園の中で交代制でやってい ますので、みんなで集まってというのは非常に難しい。  だから、非常に努力されているところは夜集まるとか、場合によっては日曜日までや るとかという努力をされている園もありますが、なかなか全国的に言うと難しいだろう というのがあります。  それから、もう一つ、幼稚園と保育士で私は研修で落差があると思うのは、特に公立 幼稚園の場合に、全部ではないんですが、一部ではかなり長期の研修が認められてきた ところもあります。つまり、大学院に行くとか、何か月かの研修とか、そういうことが 従来可能でありまして、最近、またいろいろ複雑な事情がありますが、それは保育所の 場合には基本的にはないというので、全員が高い水準の教育を受ける必要はないんです が、中核的な教員とか保育士とか、園長クラス、主任クラスの人たちがもっと勉強でき る機会をどう保障していくか。これはやはり、1日や2日の研修では済まないレベルの ことがあるのではないかというふうに思います。  それは、児童部会の方にも提案がありましたが、保育のソーシャルワーカーでした か、そういった専門家を入れるというときも、全く保育を知らない人をどこかからか連 れてきて入れるよりは、保育の経験者を更に訓練とか教育をしてより高い専門に持って いくというのが一番現実的だと思うんですけれども、そういうことをできるためには研 修制度というものを長期にわたっての保障というのも将来的には入れるというふうに思 います。  済みません、長くなって。最後に、4番目は評価の問題です。  保育所は、御存じのように既に第三者評価が動いているわけですけれども、そういっ たものをどう広げていくか。それから、第三者評価も今のところ、保育所についてより 高いところを、頑張っているところをうまく取り出すというところまでは余り機能して いないと思うんです。ある一定水準を割と確保するということを努力して、つまり非常 に悪いところがないようにするというのを今、保育所の第三者評価で頑張っているわけ で、より高いところを目指すにはどうしたらいいかという意味での第三者評価をこれか ら工夫する必要がありますし、また、それは当然、園の自己評価とどう連動させるかと いう問題も控えていて、これは特に幼稚園はまだ余りやっておりませんので大きな課題 になると思いました。  済みません、ちょっと整理ができなくて長くなりました。 ○岩男主査  吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  私が一番、多分、幼保を顧問のように関わっている立場なんですけれども、先ほど田 村先生がおっしゃったように、確かに学校教育が成り立つには家庭教育が必要だという ことから考えていくと、やはり教育部分にも子ども、親を含めた生活支援の部分がもっ と考えられないかもしれないし、逆に生活支援あるいは児童福祉の部分でも生涯学習と いう視点からの教育要素を当然、考えなければいけない。その意味で、総合施設である 種の教育的な部分と生活支援、あるいはケアという、このバランスの在り方をどうする かという意味で少し理念的に整理しておかなければいかぬかなというのが一点でござい ます。 それから、もう一つは、児童部会でもちょっと申し上げたんですが、やはり地 域の活性化というか、地域づくり、つまり家庭の肩代わりをするのではない、家庭自身 が力を取り戻す支援であると同時に、そのためには地域自体がもう一回ある種、力を持 ってこなければいけない。できれば、幼稚園・保育園にも期待されていますが、総合施 設ではその先導的な意味でも地域づくり、地域活動とかにつながるような機能を持って いただきたい。  なぜならば、例えば幼稚園で、特に私立幼稚園は今、7割前後ぐらいになるんでしょ うか、いわゆる幼稚園バスがございまして、かなり広域的になる。そうすると、幼稚園 は1か所なんだけれども、子どもは卒園すると5か所、10か所の小学校にばらけていっ てしまう。すると、せっかく幼稚園で親も子どもを媒介に親集団ができたのに、行って いる小学校がばらばらになって、また親の関係も地域で切れてしまう。  極端に言えば、それも小地区レベルにも影響しているのではないかと私は思うんです が、あるいは保育所も、特に都市部で違った保育所的なものになると、私が職員研修で それこそ行ったところでは、数字はちょっと正確ではないんですけれども、23人卒園し て、行った先の小学校は21か所だったという極端なケースもあるわけでございまして、 これは幼保どちらともいわずに、だんだんそういう選択肢が増えるほど、逆にばらけて いってしまう。しかし、総合施設ではやはり、もう少し何か地域との関わりを意識する ということが逆に大事ではないかというふうに思います。 ○岩男主査  ただいまのお話と、それから先ほど田村先生がおっしゃったこととも関連するんです けれども、家庭教育がしっかりしなければいけないという、これに反対をする人はいな いと思うんです。ただそのときに、いわゆる家庭教育と言ったときの教育の担い手が、 要するに先生がおっしゃった明治とか、あるいは私が子どものころとは大きく違ってい るのではないかと思うんです。  つまり、昔の親がそんなに立派だったかといいますと、資質的には今日の親とそんな に大きく違うわけではなくて、家庭というものに、ほかの人がいたわけです。親類縁者 がおり、それから兄弟がたくさんいて、そして地域がありということです。そこで私 は、家庭という言葉でありながら実際に意味するものは何か、教育の担い手はだれなの か、というようなことも併せて考える必要がある。そのときに今、吉田委員が言われ、 私も児童部会でも申しましたけれども、この新しいプログラムができることによって地 域の力を回復する一つのてこになる、あるいはコアになる、そういうものを期待したら いいのではないか、こんなふうに思っております。  門川先生、どうぞ。 ○門川委員  子育てのためには、福祉と教育、医療、この三位一体が非常に大事なわけでして、こ ういうオープンな場で保育園・幼稚園の総合施設ということを皮切りに議論できるとい うことは、非常にすばらしいことだというふうに思っています。  どうも、保育園と幼稚園、長年の文化が違い、住み分けをしてきましたので、いろん な感情的なものもあろうかと思うんですけれども、京都で子育て支援総合センター子ど もみらい館というのを5年前につくりまして、教育、福祉、医療、三位一体でやろう と。そして、幼稚園と保育園の垣根を超えた研修、相談、研究、情報発信していこう と。国立、私立、京都市立、その垣根も超えよう。保育園連盟も幼稚園協会も両方が一 緒の建物の中に事務所を置いてもらおうと。研修なんかも保育士さんと幼稚園の先生と 合同研修を企画委員会をつくってやっていこうと。  そういう共同の取り組みをしていきますと、かなり変わってきているということでし て、総合施設をどこの省庁が担当するかとか、地方でどこの首長、部局が担当するか、 教育委員会が担当するかとかいろんな問題があると思うんですけれども、少なくとも部 局が違っても保育所・幼稚園担当の部屋を一緒にする。そうすると遠い親戚より近い他 人というように、今、子育てで地域社会が非常に大事だというような形で制度の枠を超 えた、同じ共通理解ができるのではないか。そんなことを一つ痛感していました。  子育ては、本当に手間、暇、心をかけることと同時にお金がかかるということで、 今、制度改革論議の中でみんなが気にしているのはお金の問題の方が非常に大きいので はないかと。私も今、国の責務である小・中・養護学校、義務教育の教員の給与負担で すらが国の財政的な責任があいまいにされようとしかねない時期に、ここで言うべきこ とではないかもしれませんけれども、危惧はこの議論の中でも感じますけれども、国の 子育てに対する財政的な責任も明確にする中で、同時に、この新しいせっかくの制度で すので、地方分権、地方自治権の下で、地方でできるだけ柔軟に絵がかけるような制度 設計、柔軟な制度設計をお願いしたいと思っています。  これまでの13回の幼児教育部会の議論、それからホームページで児童部会の議論も公 開されています。それも見せていただいて、課題意識等については多くは共有できてい る部分があるのではないか。ただし、地域によって随分ニーズが違うということは感じ ますので、制度設計についてできるだけ基本を押さえつつも、どれだけ柔軟にするかと いうことではないかと思っています。  もう一点は、社会の変化とニーズに対応していくということは非常に大事な視点であ ると思います。しかし、このニーズというのが本当に今、子育てという社会で最も大事 な営みが大人社会の都合で左右されてきていないかと。  どんどん大人社会では便利になって、24時間営業のお店が増えました。いろんな店が 夜遅くまで開いている。そのために、0歳の子ども、1歳の子どもを持ったお母さんが 深夜まで仕事をしなければならない。社会が本当に維持していくために必要最小限度の ことはやっていかなければならない、同時にそういう選択肢もあればいいのですけれど も、大人社会全体が今の便利さの追求のために子育てが犠牲になっている部分はないだ ろうかと思っています。  今、幸いに待望の次世代育成支援の法律もできました。そして、国も地方も民間企業 も含めて子育て支援についても基本計画をつくっていこうという時期であります。社会 がいろいろどんどん変化していく中で、その変化に対応して子どもをどう育てていくの かということではなしに、子どもの学び、育ちに焦点を当てて、ちょっと極端なことを 言いますと、かつては産後の休暇は6週間でした。8週間になった。今は、育児休暇が 3年間、取ろうと思ったらお父さんも取っていただきましょうと、こういうようなこと を奨励しようとしていっている今の社会ですので、本当に必要な人に必要なサービスと いうのは絶対に必要ですけれども、大人社会全体の在り方をこの機会に、せっかく関係 者が全部一同に集まっていますから、企業も含めて考えていかなければいけないと思い ます。  私ども、京都で経済界、お医者さん、保育関係者、教育関係者、地域の各種団体、93 の団体で人づくり21世紀委員会というものをつくっていただき同じ場で議論をします。 企業の経営者の方々が、最近の就職してくる子どもの家庭のしつけが悪いという厳しい 指摘がある、あいさつもできないと。しかし、その親の多くはあなた方のところの社員 ですよと。相手ばかり批判しているのでは解決できないと。また、乳幼児教育が大事、 保育が大事だと言いつつ、しかし、0歳の親に長時間労働を強いている。その辺のこと も含めて、大人社会をもう一度見直していく、そういうちょうどいい時期ではないか と。その辺の情報発信も、この合同部会からしていただけたらありがたいと思います。  もう繰り返しませんが、小学校教育との接続も非常に大事であります。また、地域、 家庭の教育との連携も大事であります。ただし、片方では小学校も含めて学校選択の自 由ということで地域社会が、これも非常に難しくなっていく。それも含めて、地域地域 で何が子どものためにいいのかという議論を提議していく、そんな機会になったらあり がたいと思っています。 ○岩男主査  ただいま御指摘の通りで、大人社会を変えていかなければいけない。例えば、延長保 育をするというようなことよりも、むしろ働き方を変えてほしい。  ただ、当面、ここでの議論の範囲外だと思います。ほかの例えば男女共同参画会議な どでもそういうことは繰り返し指摘されてきておりますので、そちらで頑張っていただ きたいと思いますけれども、非常に大事な点だと思います。  それから一つ。前回の児童部会の後でたまたまお医者様とお話をしていて、ある意味 では目からうろこだったんですけれども、「備えるべき構造設備」というところに調理 室を備えるというのがあるわけです。これが保育所の方は必ずあり、幼稚園はないから というようなことでいつも問題になるわけですけれども、今、入院患者を入れている病 院で、ものすごくいいケータリングサービスといいましょうか、3食届き、非常に簡単 に提供できる。何もその場でつくるということだけを考えないで、そういう先端的な可 能性についても少し考えてみたらいいのではないかというふうに思います。 ○唐澤保育課長  それでは、また資料を整理して。 ○岩男主査  柏女先生、どうぞ。 ○柏女委員  遅れてまいりまして発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  淑徳大学の柏女と申します。児童福祉を中心に研究をしております。特に、児童福 祉、子ども家庭福祉サービスの供給体制の在り方を中心に研究しておりますので、この 総合施設の設置についてもちょっと意見を述べさせていただいてよろしゅうございます でしょうか。乳幼児期の子育て支援、あるいは子どもの育ちのサービス全体の組み直し の視点から考えていきたいというふうに思っています。  先ほど来、途中からでしたけれども、議論を伺っておりました。家庭教育をしっかり していかなければいけないのではないか、あるいは大人社会に対してもっともっと私た ちは子どもの育ちの視点からアピールをしていかなければならないのではないかという 点で、とても賛成でございますが、ただそうした場をどこに求めていくのかということ を考えると、やはりすべての子どもの育ちと、それから親の育ちの場を保障していく、 そういう場がやはり必要なのではないか。そして、子どもの育ちを、子育てをいとう、 そんな社会状況に対して子どもの育ちを応援していくこと、あるいはそのために親と親 がつながっていくことはとても大切なんだという、そんな場を用意していくことが大切 なのではないかというふうに思います。  そんなことを考えますと、やはりすべての子ども、0歳から6歳までのすべての乳幼 児に一定の期間、育ち合える場を保障していくことがとても大切なのではないかという ふうに思っています。そして、その上で付加的に子育て支援としてのサービスの、例え ば育児と就労の両立支援のためのサービスを付加的に提供していく施設があってもいい だろうというふうに思いますし、それから虐待や、あるいは障害を持って、どうしても ハンディキャップを持っている子どもたちをケアする福祉的な機能を持った施設があっ てもいいだろうというふうに思います。  そうしたふうに、すべての基本機能というものをまず整理をした上で、そして付加的 なサービスとしてどんなものがあるだろうかというふうに考えていけないかというふう に思っています。特に、すべての子どもの育ちの場というものを、機会というものを0 歳から保障していこうということになりますと、例えば病棟保育の問題なんかも、ある いは病院の話がちょっと出ておりましたが、病院で入院をしている子どもたちの保育の 場、あるいは家庭で療育、長期療養を余儀なくされている慢性疾患の子どもたち、こう した子どもたちには例えば週に1回、午前中だけとかの保育の場を提供していけるよう な、そういう派遣型の保育といったものもこうした総合施設の中の機能としてすべての 子どもに一定期間、ともに育ち合える場を保障していくということを考えるならば、そ うした子どもたちにもサービスの手が届くような仕組みにしていきたいというふうに思 っています。  そう考えていきますと財源などもやはり、当面は今、厳しい状況だということですけ れども、サービス全体を統合していくということになれば、財源も将来的には統合がで きていけばいいというふうに思っております。  それから、資格については、幼稚園教諭と保育士の両方の資格を持っていなければな らないといったような議論もございますけれども、0歳から6歳までの子どもの育ちを 総合的に支えていくということ、そして親の育ちも支えていくということを考えると、 やはり両方持っていなければいけないということにこだわることは、私はないのではな いかというふうに思います。どちらか一方の資格を持っている方が、いろんな知識・機 能を持った方々が集まってこれるような、そんな総合施設の方がイメージができやすい のではないかというふうに思っています。  済みません、遅れてまいりまして時間をいただきまして御発言をさせていただける機 会を与えていただきましたことを感謝いたします。 ○岩男主査  まだいろいろ御意見おありかと思いますけれども、第1回、予定の時刻となりました ので、この辺りで本日、一応、閉めさせていただきまして、最後に事務局の方から御説 明いただきたいと思います。 ○唐澤保育課長  どうもありがとうございました。大変活発な御意見の御交換をいただきまして、お礼 を申し上げたいと思います。  第2回目でございますけれども、次回の開催は6月中を予定しております。正式な日 時、場所につきましては第2回の事務局でございます文部科学省の幼児教育課の方から 御連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○岩男主査  それでは、これをもちまして第1回の合同会議を終了させていただきます。どうも、 本当にありがとうございました。                    (照会先)                    雇用均等・児童家庭局総務課 (担当)水口                    03−5253−1111(内線7823)