04/05/18 労働条件分科会労災保険部会第7回議事録        第7回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録 第7回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成16年5月18日(火)17:00〜18:00 2 場所 厚生労働省 専用第18〜20会議室(17階) 3 出席者  [委員]   公益代表  保原委員(会長)、石岡委員、岩村委員、松本委員   労働者代表 佐藤委員、須賀委員、真島委員   使用者代表 川合委員、紀陸委員、杏委員、久保委員、下永吉委員  [事務局]   高橋労災補償部長、杉浦労災管理課長、菊入補償課長、明治労災保険業務室長   宇佐美主任中央労災補償監察官、南労災保険財政数理室長   小池職業病認定対策室長、植松労災保険審理室長 4 議題   (1)障害(補償)給付に係る身体障害の障害等級の見直しについて   (2)「労災病院の再編計画」について(報告)   (3)労災保険料率の設定に関する検討会について(報告) 5 議事 ○労災管理課長  ただいまから、第7回労災保険部会を開催いたします。本日は、岸委員、金城委員、 高松委員、寺田委員、内藤委員、早川委員が欠席です。以後の進行は保原会長にお願い いたします。 ○保原会長  初めに、労災補償部長から一言ご挨拶をお願いいたします。 ○労災補償部長  第7回労災保険部会の開催に当たり一言ご挨拶を申し上げます。委員の皆様方には、 大変お忙しい中ご出席を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。本日の議題は、事前 にご案内申し上げているとおりですが、第1に、前回の3月8日に諮問をさせていただ きました省令改正案要綱のうち、障害等級の見直しにかかわる部分につき、引き続きご 審議をいただくこととしております。この部分については、前回いくつかのご指摘、ご 意見をいただきました。本日は、それらのご指摘の点等を改めて整理し、事務局で関連 する資料についてご説明申し上げさせていただきますので、よろしくご審議をいただき たいと思います。  そのほかに報告事項として2点ほど用意しております。1点は、3月30日に公表いた しました「労災病院の再編計画」についてです。2点目は、前回もご報告させていただ きました労災保険料率の設定に関する検討会については、過日発足させていただきまし て、5月12日に1回目の会合を開催させていただきました。この2点についてご報告さ せていただきます。  以上が本日の議題ですが、特に前回の部会から引き続きご審議いただく障害等級の見 直しに関して、労災保険部会としての考え方を取りまとめていただければと思います。 この点につきまして、改めてよろしくご審議を賜ることをお願い申し上げまして、簡単 でございますが開会に当たっての挨拶に代えさせていただきます。どうかよろしくお願 い申し上げます。 ○保原会長  議題に入ります。本日の議題は審議事項として、前回第6回の労災保険部会において 諮問のあった、「労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」及び 「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について引き続き検討することと なりました「障害(補償)給付に係る身体障害の障害等級の見直し」があります。ま た、報告事項として、「労災病院の再編計画」及び「労災保険料率の設定に関する検討 会」の2件を予定しております。まず事務局から、「障害(補償)給付に係る身体障害 の障害等級の見直し」について説明をお願いいたします。 ○補償課長  前回、障害等級に係る省令改正の審議の過程において、主として労働側委員の方々か ら、作業現場における引金工具の取扱い状況等を踏まえながら様々な意見がありまし た。さらに、その後いくつかの機会にも指摘があり、それらの論点について事務局で整 理をいたしましたところ、資料1−1に記しております6点になりました。  この論点を踏まえ、今回の省令案の基になった専門検討会報告書の概要をご説明した 後、専門検討会における示指の引き下げの検討内容、引金工具の取扱い状況、示指亡失 者の実態把握の結果、さらには示指の亡失が高く評価されてきた理由について順次ご説 明させていただきます。  資料1−1は、前回の部会で指摘いただきました事項、その後、主として労働側委員 から示された事項を論点としてまとめたものです。1点目は、専門検討会が行った検討 の全体像に関する説明の必要性。2点目は、釘打ち機械等の引金付き工具の取扱い実態 の把握の必要性。3点目は、示指亡失者の就労状況等の把握の必要性。4点目は、リハ ビリテーション専門家等からの意見聴取の必要性。5点目は、引金を引く動作と専門検 討会における検討の関係の明確化。6点目は、示指の亡失が従来高く評価されてきた背 景の把握の必要性というものです。この6点の論点に従って説明を行っていきます。  資料1−2は、論点の第1に掲げた事項です。障害等級の認定に係る規定は、昭和50 年の見直し以降現在まで見直しは行っておりません。この間の医学的知見の蓄積や、労 働実態の変化等を踏まえた規定の見直しが要望されるようになってまいりました。この ため、障害等級の認定基準については、全般的に見直すこととし、分野ごとに検討会を 設け検討を行ってまいりました。  今回、省令改正をお願いいたします、示指の亡失等に係る部分は、整形外科分野の検 討会によって検討されたものです。この検討会は、平成13年1月に第1回を開催して以 来、本年1月までの3年間に計30回開催し、この2月に報告書が取りまとめられまし た。検討会では、学術文献やほかの論文を収集分析し、諸外国の制度や国内の他の制度 の研究を行った上で、臨床やリハビリの専門家である各医師の議論の末に結論を得てい るものです。  その報告書の概要は別紙のとおりです。検討に当たっては、1点目として近年の医学 の進歩を踏まえ、現行の基準等が不適切となっているものについて見直しを図る。2点 目は、業務実態等の変化等に対応し、評価の見直しをする。3点目は、現行基準のうち 客観性に欠けるものについて斉一的な認定を行う観点からその明確化を図る。あるいは 労働能力の損失と障害の評価の不均衡の是正を図る。これらを基本的な着眼点として行 われており、検討対象であるとか、検討結果はこうした観点により取りまとめられてお ります。  これら1から3の着眼点に応じて具体的な例を申し上げます。1点目の医学的な進歩 の関連では、人工関節、人工骨頭の挿入などというのは、材質が格段に向上している、 医療技術が非常に進展していることから、従来に比べて良好に関節が動くことも多くな っております。現行の、一率に関節が動かなくなった場合と同様に取り扱っているよう な部分について、今後は障害の実態、要するに動く範囲に即した等級で認定することが 適当であるとされております。これについては、別紙の第2の上肢の3の人工関節のと ころです。  2点目の作業実態の関連については、現在の作業実態からすると、前腕の回内・回外 運動の制限、あるいはせき柱の頸部の回旋障害は職業生活において大きな支障になりま すので、新たに障害として評価するとされております。これについては、第1のところ にせき柱がありますが、その1番の部分、それから第4に関節の機能障害の1の前腕の 機能障害が対象になっているところです。  3点目の明確化の部分では、せき柱の著しい変形障害について、現行では変形の程度 を、衣服の上から見た外形によって判断するとなっておりますが、非常に明確性を欠く ということで、今後は変形の程度を椎体の減少度、あるいはX線により側彎の角度を測 るなどにより、客観的な基準により障害の程度を定めていくべきであるとされていま す。  また、今般の省令の改正を諮問している示指の亡失等級等の見直しを図るべきである とされております。これについては、第1のせき柱の2の変形障害、第2の上肢の6手 指の欠損障害に当たるものです。  以上基本的な事例についてご説明させていただきましたが、今回の検討は別紙にも書 いてありますように、せき柱から足の指までと非常に広範囲に及んでおりますので、詳 細については報告書の概要、ないしは報告書本体をご参照いただければと思います。   資料1−3は、問題になっている示指の亡失の等級の引下げについてどのような検 討等が行われてきたかを取りまとめたものです。そもそも労災保険における障害等級に ついては、労働能力の損失の程度に応じて定めることとなっているわけですけれども、 このことを手指に即して申しますと、現にある各指の機能がそれぞれどの程度か、とい うものを評価するわけではなく、いずれかの指をなくした場合において、残された指が 亡失した指の機能をどの程度代償するかも考慮して、手の機能がその障害によりどの程 度労働能力を失ったかということで評価をし、定めているものです。  このようなことを前提として、平成10年に現行の障害等級表に不合理があるとして、 日本災害医学会から意見・要望が提出されました。例えば、1のアは、示指1本と環 指、小指の2本の亡失と比べると、環指及び小指亡失の握力低下は非常に著しい。示指 亡失よりも、明らかに手の機能は低いけれども、両者の等級は同じ10級だというのは不 合理ではないかという指摘です。  イについては、「示指亡失」の手と、「中指亡失」の手では、巧緻性ではあまり変わ ってはいない。握力では、中指が残っている手のほうが勝る。しかし、障害等級は示指 のほうが高いのは不均衡ではないか。ウ及びエも同様に現行の障害等級の不合理・不均 衡を指摘するものでした。  こうした状況を踏まえ、検討会では諸外国における取扱い、国内外の学会、文献等に おける評価等を検討いたしました。いずれも示指を中指よりも高く評価している例は認 められませんでした。  次に、示指亡失による手の機能低下について検討を行いました。その中では、母指を 除く各指の亡失と握力低下の相関関係を見ると、示指亡失の場合が握力低下の程度が最 も小さい。引っかける力も、示指よりも中指のほうが強い。示指亡失手は、中指がよく 機能を代償してつまむ動作等を行う、正常手とほとんど変わらない機能を残すと考えら れる。様々の例から、示指は他指よりも等級を高くするほどではないのではないかとさ れております。  現行の障害等級表のバランスも併せて検討されております。その中では、示指の亡失 は、中指の亡失より特に高くなっていることに伴い、複数指の亡失の場合にバランスが 取れていないということが明らかになっています。これを、示指の亡失の評価を引き下 げるという改正により、バランスが良好に保たれるということも検証しているところで あります。  資料1−1の5で「引金を引くという動作と専門検討会における検討の関係の明確化 」の部分については、今回の資料の1−3の2「手指の機能と評価の着眼点」のところ で述べておりますように、引金を引きあるいは離す動作というのは、示指の屈伸によっ て行うということですので、示指のつまむ動作の制限、要するにつまむも伸ばしたり縮 めたりということによって行うわけですが、そのような制限や代償の程度により検討す れば足りるということです。報告書において十分に検討されていると考えるところで す。  資料1−4については、引金工具の取扱い状況にかかわり、事務局で調査等を行った 結果を6点ほどに取りまとめたものです。1点目は、引金付き工具の実態等を理解する ということもあり、工具メーカーの営業所へ実際に赴き、いろいろな説明を受けたり、 私どもで実際に機械に手を触れて試打をするということを行ったものの取りまとめで す。ここについては、資料1−5に、釘打機の取扱い説明書があります。この2枚目に 各部の名称ということで機械の形が出ています。この釘打機の場合に、ボデーというと ころを押さえて、その真ん中に引金があります。引金を引くと、射出口から釘が出ると いうものです。ただ、現在の機械については、引金の上のところに単連切換レバーとい うのがあり、このレバーを操作することにより、連続打ちなり単発の打ち方ができると いうものになっています。いくつかのメーカーがありますが、その手法あるいはやり方 等についてはほぼ同じと伺っております。  実際に機能、あるいは先ほど申し上げましたように試打を通じて取りまとめたのがこ こに書いてあります。1点は、引金を引くことについては、示指が亡失したとしても十 分中指で代替えが可能である。特にきちんと打つためには、グリップ部分をしっかり握 ることが非常に重要であるということ。通常であれば、連続モードで作業をする。先ほ ど申し上げましたが、単連切換レバーを連続のほうにしておくと、あらかじめ引金を引 いた状態で、射出口を打ちたい場所に押しつけると釘が出る。したがって、連続して打 っていきたい場合は、引金を握ったままトントントンと動かしていくことが可能だとい うことです。現在は、そういう作業のほうが圧倒的に多いということで、釘を打つ回数 よりも、引金を引く回数は格段に少なくなっているのではないかということの説明があ りました。  実際に木造建設の現場等でどのような使われ方をしているかということで、現場に赴 いて調査をさせていただいたものがまとめてあります。ここでも、実際に使っている作 業員に状況を聞き、実際に打つのを見せていただきました。その中で、いずれも示指を 亡失した場合でも、中指で引金を引く等の代償が可能であるということ。亡失により機 能の低下はある、一定の慣れという期間は必要であるけれども、能率等は徐々に回復し ていく。先ほど申しましたように、作業はほとんど連発になっているということ。引金 は単なる電気スイッチという形で、非常に軽く引ける。そこでおっしゃっていたのは、 シャープペンシルの芯出しぐらいの押す力で十分だということでした。  建設現場だけではなく、製造現場にも、同様の機械があるのではないかということ で、その辺について見たのが3番に取りまとめてあります。ここでは、建設現場と同じ ように、引金付き工具についての作業については、ほぼ同じような話でした。ただ、製 造の現場では、昔のように非常に長い流れ作業のラインはどんどん減少していて、セル 式の生産方式が採用されている。そういう中では、特にネジを締めるための引金工具と いうのは非常に減っている。その1つの理由として、何本もネジを締めるようなことで は、とても競争に勝てないということで、どんどんネジを締めても十分なような製品に 変わってきているということでした。  自動車製造等の部分については、引金工具を使っているわけですが、ここについては 「また」というところで書いてありますように、現場では製品の均一化を図るというこ ともあり、トルクの管理が行われているので、いちいち持って、それぞれがどのぐらい まで打つというようなことを考えるまでもなく、押しつけていれば一定のところに来れ ば止まってしまうということで、示指又は中指の屈伸ができれば十分に操作が可能であ るということを聴取しました。  4点目は、私どもの各監督署を通じて、工具の取扱い者等からの意見聴取も行いまし た。こちらについても、引金を引くことについては、示指がなくなったとしても、中指 で代償が可能だということ、示指の亡失と中指の亡失の場合の支障の程度についてはほ ぼ同様である、という意見が多かったということ、示指を亡失した場合の支障の原因に は、握力低下が大きいのではないか、握力低下という問題になってくれば、小指の亡失 のほうがもっと大きな影響があるのではないか、ということを聴取しております。  5番目は、建設業に従事していて、示指の亡失をした事例について調査をしました。 これは平成14年度認定者ということで、私どももこれを探し当てて行ったわけですが、 全国的には6名程度の方しか聴取することができませんでした。それ以上の方はなかな か見つからなかったということです。いずれもそれぞれの方について調査をしたとこ ろ、大体の方は職場復帰をして被災前のように工具を取り扱っていました。労働側委員 からもいろいろお話を聞いておりましたので、その部分についても私どもで検討し、い ろいろな関係者から意見を聴きました。その中でも、専門検討会報告書の内容は妥当 だ、という形に結論づいたところです。  6番目は、リハビリテーションの専門家から意見を聴取しました。ここにおいても、 示指を亡失した場合においても、中指・環指を亡失した場合でも、他の指で機能的に代 償することができて、ほとんど職場に復帰している、亡失による支障が生じることはあ るけれども、示指、中指、環指で基本的には大きな差はないのではないかという話でし た。  資料1−6は、資料1の論点の最後の項目に係るものです。現行の障害等級表では問 題になっておりますように、示指の亡失が、母指及び示指以外の指2指の亡失と同じ等 級に位置づけられており、この高い評価の理由についてどうだということで、前回も指 摘がありました。そのときにも申し上げましたが、労災保険法の中でも、具体的な記載 はありませんし、法の成立時期の資料等でも明確にはなっていないところです。この点 について、その後も明確にできるものはないかという指摘もありましたので、再度調査 をしてまいりました。  現行の障害等級表は、戦前の昭和11年に改正された工場法の施行令の規定を基本的に そのまま引き継いでおります。したがって、工場法施行令の改正時期に、この規定と関 連する法令等がないか調査をしたところ、昭和2年制定の兵役法に基づいて昭和3年に 制定された陸軍身体検査規則の兵役合否の基準で、示指について高い評価が定められて おります。工場法施行令でも同様な規定ぶりとなっておりました。  具体的には、陸軍身体検査規則では甲から丁まであるわけですが、この示指の亡失に ついては丁ということで不合格という取扱いになっていました。当時、兵役は最大の義 務とされていた時代に、徴兵検査が不合格となるという示指の亡失を高く評価したの は、社会通念ないしは社会的要請を踏まえたものではないかと推定されるところです。 工場法施行令の規定が、この身体検査規則の規定に準じて作られたということは断定で きないわけですが、この考え方や当時の社会情勢等を考えると、関連性は大変高いので はないかと思われます。  しかしながら、現在銃器を取り扱えるか否かというのが非常に重要であって、そのた めに各指の機能等を超えて高く評価されなければいけないという社会情勢が、今日では なくなっているということからすると、示指亡失の障害について改めて評価することが 妥当であると考えているところであります。以上、論点に沿い、それぞれについて私ど もで調査をした点についてご説明させていただきました。 ○保原会長  佐藤委員からの提出資料について説明をお願いいたします。 ○佐藤委員  補償課長をはじめとし、私どもの意見についていろいろ調査をしていただいたことに ついては敬意を表します。論点の整理と、いまの課長の説明が的を射ているかどうかと いうと、必ずしもそうではないのではないかと思いますので、若干議論したいと思いま す。  私のほうで2つの資料を用意いたしました。1つは、「デザイナーのためのパースペ クティブ・テクニック」というもので、簡単にいうと透視図を描くことをいっていま す。前回はこのことは申し上げませんでしたので論点にはなっていませんが、86頁の下 の絵を見ますと、スケールの上で、ガラス棒と、その上に乗っているロットリングや烏 口、竹ペン等を使いながら線を引きます。  なぜこれを紹介するかというと、これは示指でないとできない作業だということで す。このことについて、私は何人かの建築士、設計事務所を開いている人たちに確認を 取りました。この作業について、今はCADが主流になっていますが、透視図を描くと きには現在もこういう方法をとるということが説明されています。この横の文章は、全 体的に私が言っていることを説明していることにはなりませんが、示指の等級下げにか かわって、多くの人から議論を聴いている間に、建築士からそういう指摘がありました のでこれをお出ししました。  要するに、これは示指がない場合に、中指でその作業が行えるかというとできないの ではないか。これは、課長をはじめとして補償課の皆さんとの話合いの中で「位置決め 」という言葉を使って説明してきました。そこで、示指亡失の事例について、まず位置 決めの話から先にさせていただきます。聴取6の人の場合については、ちょっと不明な 点が多いのですが、2つ目のポツに、ヘラ、テープ張り、カッティングなどというのは 内装で行う作業ですが、その際にカッターを使うときに、示指を必ずカッターの刃の反 対側に、あるいは上に置いて切る。そのときに示指を使う意味合いは、指差し確認とい う言葉があるように、位置決めという示指特有の機能があるのではないか、ということ を申し上げたいわけです。  示指亡失の事例を6例示しておりますが、補償課で聴取していただいた方々について は、非常に治りの早い方で、回復も非常に早く、すぐに良くなって元に戻れるような書 き方がされている。私も何人かに聴きましたけれども、多くの人たちが30%から40%、 大工についていえばその程度の仕事しかできない。それは、エアーガンを打つだけでは なく、当然カンナも使いますし、ノミも使いますし、ノコギリも使います。電動といっ ても、まだまだ手仕事の部分といいますか、道具や工具の部分が非常に多い。そういう ことから聴取すると、直ちにといいますか、先ほど説明がありました亡失者の機能回復 の事例とは相当違うのではないかと思います。  聴取3で気がついたのですが、運転手になろうと思ったが、大工を続けることにし た。稼働能力は40%に落ちている。その次ですが、課長も説明したとおり中指でエアー ガンを使っているけれども、集中(的中)ができないと答えていました。これは、まさ しく位置決めの示指が持っている役割を示している。事例については、これで終わらせ ていただきます。  エアーガンの説明で、エアーガンは単連切換でやるから、シャープペンシルのノック を叩く程度のものだという説明をされました。課長が説明した資料の使い方の19頁です が、単発打ちをして、どこに打つか決めなければいけないという打ち方があると思いま す。前回も申しましたが、ツーバイで5万、普通の自国在来工法で1万5,000ぐらい打 つそうです。単に緊結するために打つ作業は連発でいいと思います。しかし、確実にそ こに打たなければいけないときについては、ここにも書いてありますように、説明はそ のように読み取れないかもわかりませんが、私にはそのように読み取れます。  引金を素速く確実に引かないといけない。この作業の図は、5指とも健全な方を指し ていますから、当然示指でトリガーを引いております。これは、中指でもいいとおっし ゃられるかもわかりませんが、この注意事項を見ても、そういうことが言えるのではな いだろうか。  併せてトータルで申し上げますと、先ほどの論点に加えて、全体の聴取をした、ある いはこの検討会報告の中で主に説明されましたのは、つまむ、握る、回すというところ です。ですけれども、引くという行為について、そういう言葉を使って書いた部分は一 切ないと思います。この膨大な資料や、ここに引用されている論文も補償課からいただ いたのですが、全然わからないところもありましたが私は全部読みました。  これは資料の説明ではなくて、前回の議論の私の一つの結論のようなものですが、こ の報告書の84頁のヘを見ますと国内外の状況として、前頁からドイツの例、イギリスの 例その他を引いてきて、最終的にはスワンソンの論文も日本語訳されていましたので読 ませていただきました。ここに書いてあるとおり、5つの手指の評価については、医学 的知見としても、国際的にも国内的にも統一されている状況にはないということができ る。ここからスタートされていると思うのです。ここからスタートされているのであれ ば、私たち労働側が主張した、労働現場との実態において、この検討委員会が検討をさ れるべきではなかったのかと強く思うのです。  95頁は意見が2つ書いてありますが、意見1、95頁の上から2行目、それから2のほ うも同じような書き方がされています。手指の機能としては、つまむ機能が、握る機能 より重要であることからと記載されている。それでは、引く機能はつまむ機能なのか握 る機能なのか。本来なら説明されていると課長がおっしゃったのなら、これは明確にそ のように書くべきではないだろうか。  前回の委員会の冒頭に須賀委員が、労働現場の実態について先生方が検討をするため に現場に入ったかという質問をしましたが、そのようなことはなかったと課長は答えま した。いま、私たちは非常に重要なことを決めようとしていると思うのです。これは、 省令で等級表に載っているから、本当はそのほかにいくつもあるのだということはよく わかります。でも、示指の亡失を、なぜいま下げなければならないかという論を私ども の組合、私は建設関係ですから他の産業のことはあまり申しませんが、いくら議論をし ても、親指の次に重要な指はどれかといったら、みんな示指だと申します。あるもの も、ない例はここで示しました。それは素人考えだということになるのかもわかりませ んけれども、私はこの6つの事例、1つのガラス棒を使って行う製図作業の設定作業の 一部を取り上げ、また、内装屋が内装材をカッターで切るときの示指の役割、位置決 め、大きく言って2つのことを論点にしてこの間から申し上げてきました。  前回の委員会では、位置決めのことについては申しておりませんから、本日付け加え て申し上げました。最初に申し上げましたとおり、課長と何度も議論をいたしましたか ら、相当煮詰まっているとは思いますけれども、いまの説明で私の場合は全建総連です が、70万人の組合員にこのことはこうなってたと、他に上がるものも下がるものもある ことは十分承知しています。ですけれども、等級表の中で示指が1級下がるよ、納得し て帰ってきたというような説明はできない。私には説明責任があると思っています。  検討委員会重視、審議会は一体何なのか、そういうことまで考えたりいたしました。 そのこともあって、3月8日から本日まで日が延びたのだと思います。いずれ決定され ることについては皆さんの論議で決まることですけれども、私は私の意見としてはっき り申し上げておきたいと思います。 ○保原会長  事務局及び佐藤委員の説明について、これからご意見、ご質問を承りたいと思います が、その前に溝引きの作業実態等について佐藤委員から発言がありましたので、事務局 から補足がありましたらお願いいたします。 ○補償課長  佐藤委員からお話がありました、溝引き作業の実態等につき、私どもで承知をしてい る部分についてお話をさせていただきます。  この作業については、私どもも大手の建設会社や、地場のある程度の建設会社、デザ イン会社、出版会社、印刷会社といった所にいろいろお聴きしてみました。この辺で は、先ほど佐藤委員のお話にもありましたけれども、コンピューターによる作業にほぼ 変わりつつあるというお話でした。  印刷会社等では、一部行っている所もあり、そういう所でのお話ですけれども実際の 作業担当者等からお聴きいたしましたところ、この作業を行うに当たっては2本の物を 持つことから、母指あるいは示指、中指のどれも非常に大事である。特に母指について は非常に大事である。中指、示指のうちの1指を失う影響については、2本を持つこと からすると、やはり程度は同じぐらいではないか。いちばん困るのは、中指と環指の2 本をなくした場合には、示指1指よりもはるかに影響が出てくる。こういうお話でし た。いずれにしても、この作業ではこの3本の指をとってみると、どの1本が抜けても 作業は大変できづらいというお話でした。特に、これだけがものすごく飛び抜けて重要 だということではないのではないかと思っております。  もう1つ位置決め等の話がありました。ここについては、私どもでも今回の検討会の 先生方等も含め、再度その辺の情報についてお聴きをしたわけですが、その結果では手 指の機能として、一般的に認められているのはつまむ、握る、引っかけるというような ことであり、位置決めというような機能があるという報告は見ておりませんということ です。それから、物を把握する、つかむという部分で、示指が特異な機能を有している という報告についても検索はされませんでしたというお話でした。  今回の資料1−3のところの説明は全部はいたしませんでしたが、こういう中で検討 していくには、1−3の2枚目のところで、指をなくした場合の再接着について、どの ようなことが臨床の現場で行われているかということを書いているのがアの部分です。 そのような部分では、逆に多くの指を失った場合、示指についてはいちばん最後に付け るとか、場合によっては示指だけは付けないというようなことも行われているというこ ともあり、示指だけを特段に重要度が高い、あるいはそれがないと全体として機能が成 り立たないというようなものはないのではないかというお話でした。 ○保原会長  事務局と佐藤委員の説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたしま す。 ○須賀委員  それぞれが説明されたことは、これまでいろいろご努力いただきましたし、私どもも 指摘してきたことについての説明の内容は理解できます。ただし、その説明を聞いて も、示指の見直しをする理由として納得できましたということには、ちょっと腑に落ち ない部分がたくさん残ります。  世の中一般的に、指はどれが大事ですかといえば、まず親指が大事だと、子供に聞い てもこう言います。次にといえば、必ず示指と言います。検討の中にもありましたけれ ども、社会通念、あるいは医学の進捗の度合を見てということですが、社会通念は何も 変わっていないわけです。それに対して、実質的なお答えをいただけた、あるいはその ことは前回も指摘をしたのですが、そういうことに関して私どもなりに腑に落ちるよう な説明とは受け取れないと思いました。  もう1つは、この検討に際して専門家、特に整形外科の専門家の知識にも、あるいは いろいろな経験にも優れた皆さん方が検討されていますから、それはそれでそういう見 地からすると正しい判断なのかもしれませんが、労働災害補償保険法の目的の中に、労 働者の福祉の増進に寄与するということからすると、果たしてこの見直しが福祉の増進 に寄与するのかということの疑念をどうしても払拭できません。  そういう意味では、専門家の皆さん方が、労働の現場をよく見ていただいて、そうい うこととの兼ね合いも含めて医学的な見地を複合した判断の中でこれを見直す、という ことであれば私どもなりに理解のできるところがあったのかもしれませんが、そういっ た意味も含めて説明はわかりました。ただし、内容について私どもとしては理解できま せん。また、この見直しについて同調するわけにもいかないという立場を明確にしてお きたいと思います。  その上で、今後の検討に当たって、先ほど申し上げましたような視点で、たまたま今 回は建設の現場や製造業の一部の所という指摘がありましたけれども、これに別のこと を私どもが指摘すると、またそれについて答えてくれるのか、さらに指摘すると、また 別のことを答えてくれるのかということになってくるのでこれは繰り返しません。いず れにしても、そういう現場の作業の実態をよく見ていただきたいということと、純粋な 医学者としての専門家だけではなくて、リハビリ士や、その他実際に被災をされた方が 社会復帰、あるいは職場復帰をする際に、具体的な別の医学専門家ではない方の視点が 検討の場では必要だと思っております。そういうことについて、これからの検討では、 そういう視点での検討が必要ではないかと思っております。 ○保原会長  須賀委員のご発言は、省令案の内容の一部に関するご意見と、専門家を参集して認定 基準の改正等の検討を行う場合の検討の進め方に関するご意見の2つが含まれていると 思います。いままでの議論の続きとして、障害等級の改正にかかわる省令改正について 意見をお伺いします。公益委員からご発言をお願いいたします。 ○岩村委員  前回の繰り返しになってしまうと思いますが、労災保険の場合、障害等級の位置づけ というのは、ある程度個々の障害の特性や、他の障害とのバランスといったものを考え て、具体的な仕事とは切り離した形で構築せざるを得ないのだろうと思います。  今回の示指の関係については、前回の説明、今回の説明で事務方でもかなり調査をし ていただき、示指と中指との間での差というのは、実際には医学的に見てもそれほどな いし、リハビリの観点からしてもその差はあまりないということであろうかと思いま す。  確かに、個別的には仕事の中身、あるいは対応によって示指が重きを持つこともある のだろうと思います。そのことは、全建総連の佐藤委員からいただいた資料、とりわけ 実際に示指をなくされた方からの聴き取りの資料の中にも示されているとおりだと思い ます。いちばん最初に申し上げたとおり、労災保険の場合は、個別のケースということ ではなくて、そういったものを捨象したところで障害等級の位置づけということはせざ るを得ないのだろうと思います。そうしたことを考えて、今回の事務局からの説明も考 えると、私は諮問案のとおりでよろしいのではないかと思っております。 ○石岡委員  今回、事務局から説明のあった資料1−3を見ますと、専門検討会での検討の全体像 がよくわかりました。前の会議では、必ずしも検討委員会の全体像がよくわかりません でした。全体像を踏まえてみた場合、それから岩村委員がおっしゃったように、労災補 償の場合は手指全体での労働残存能力がどうかという捉え方をいたします。また、平均 的な労働残存能力はどうかという捉え方をいたします。そういうものを踏まえて、専門 家の3年ぐらいにわたる知見が出ているわけです。これを判断材料にしていいのではな いかと思います。  資料1−4が新たに出てまいりまして、この問題のいろいろな角度からの実態調査が 報告されました。従前は、こういう実態調査のデータがなかったのですが、これを見ま すと判断の一つの材料にもなるのではないかと思います。確かに佐藤委員がおっしゃっ た溝引きの問題や位置決めの問題もありますが、それに対して事務局から答えがありま した。それらを包括的に考えて、実態から見た場合に一つの方向が出てくるのではない かと思います。  資料1−6で、どうしていままでの制度がこういう形になったのか、という背景につ いて調べていただきました。このような過去の事情で、現在の制度がある程度成り立っ ていることを考えると、現在の状況は、そういう過去の状況とは大いに変わっているわ けですから、医学的な知見や労働の実態に即して、合理的なものに改定するというのは 一つの方向ではないかと思っております。  その他論点が6つありますので、以下は省略いたしますが、本日の説明から見て、総 合的に判断した場合、省令の改正案は全体として妥当ではないかと考えます。 ○保原会長  ただいま、障害等級の見直しについて公益委員からご意見をいただきました。労使の 委員からご意見があればお願いいたします。 ○佐藤委員  繰り返しはしませんが、資料1−3の2の「ところで」で始まる文章は、この報告書 の中にはないですね。私はそのことを言っているのであって、これは示指のつまむ動作 の制限や代償の程度により検討すれば足りるものである、と誰が断言するのですか。こ れは答えてください。喧嘩腰に言っているつもりはありません。  資料1−4で、木造建設現場の実地視察で、一定期間は要するものの、慣れた場合に は能率等は回復することを聴取した。私は、課長との話合いを何度も行いました。慣れ とは一体何だ、誰だって慣れればそうする以外にないではないか。私は建設の産業に働 いており、とりわけ大工の問題をいま問題にしています。大工の仕事というのは生業で す、業です。事務作業とか、あるいは高度の技術を持った、大工としての技能は持って います。その人が他に転職することが、いまはいろいろな奨励が出ていて農業をやった りしていますけれども、長い間身に付けた技能というのはこれに生活がかかっていま す。そういう意味合いでいえば、慣れですよというような言い方は、全く具体的ではな い。私が聴取したほうがより具体的なことを示していると思います。  亡失した例のところでもそうですが、いずれも職場復帰、被災前のように工具を取り 扱っていた。でも、この間の時間的経過、これは平成14年の調査ですし、いまは平成16 年ですから、もう何の支障もなくやっていたということでしょうか。とても信じられな いです。前と同じような労働が行われていた、ということをおっしゃるのなら、これは 一度その人に会わせていただきたいという気がいたします。  須賀委員も申しましたが、リハビリテーションの専門家から意見聴取したのか。実際 にはどこでしたとも書いてないではないか。私も整形の先生に聴きました。それで、こ の問題についても少しお話をしました。定説がないということが基本であるというこ と、それから本日の資料の中で示されている4指をなくした場合に、示指だけを取り付 けないで放っておく場合がある、というのが大きな理由にされているけれども、それは 整形医としてそのようなことを言い切るのは、自信がないと言っておりました。名前を 挙げてもいいのですが、名誉にかかわりますから申しませんけれども、それは一つのた とえですが示指についてはそのようなことを言われていましたことを紹介しておきま す。いま質問したことについては答えていただきたいと思います。 ○保原会長  以上4点についてですが、1点は資料1−3の「ところで」というところの検討の問 題、2点目は「慣れ」の問題、3点目は元に復する期間、4点目はリハビリについてお 願いいたします。 ○補償課長  資料1−3のところですが、これは冒頭の説明でも申し上げましたように、引金を引 くという部分については、手の指を縮める・伸ばす、要するに屈伸をさせるということ ですので、当然物をつまむときに親指を支点にして、曲げて伸ばすという、広い意味で いうとつまみの中に入ってくるわけですので、当然こういうことができるかどうかとい う話で、この引金を引くという行為の部分は包含されているということです。  あの文章の中に、「引金を引く」という言葉がないということをもって、そういう引 くというような行為は一切考えていなかったかというと、先ほど言いましたように屈伸 ということはあの中でも何回も出てまいりますので、それは十分やっております。そこ は先ほど申し上げましたように、私どもとしては、これは医師のほうにもというのは、 今回の検討会の先生にもこの点については確認をしております。  2点目の「慣れ」の問題についてですが、慣れについてはいろいろな見解があろうか と思います。私どもが申し上げております、あるいは聴いておりますのは、ここには書 いておりませんが、ある1指を亡失したという場合、5本の指が全部あった状態と全く 同じということを言っているわけではなくて、そのために障害が残るわけで、障害補償 を払うわけです。なくなったことによって、前のところにどのような形で、より近づけ るかというような部分です。全く同じようになるなどということは、佐藤委員もおっし ゃっていると思いますが、それは全く同じということを言っているわけではなくて、よ り近づくのかどうかということです。  それは人によって差がある、ということは事実でしょうけれども、私どもが聴いてお りますのは、いずれもそういう工具をまた使っているということです。そのことによっ て、全く扱いができなくなっている、というような状態にはありません、ということを 前提にして考えていただきたいと思っております。  3点目の期間の問題については先ほどのものと関連いたしますが、治癒するまでの期 間がありますし、その程度という問題もあるでしょうから、一律に論じることはできな いわけです。通常であれば、復帰をしてから半年なり1年なりの間にある程度元に近づ くような形で進んできていると私どもは聴いております。したがって、受傷のときから いくらという形ではなくて、治って復帰をしてからということで理解をしております。  4点目のリハビリテーションについては、私どもも中国労災病院のリハビリテーショ ンの専門家の先生に具体的に聴いております。 ○保原会長  課長から答弁がありましたが、いかがでしょうか。                 (特に発言なし) ○保原会長  それでは、障害等級の見直しについてご意見はございませんか。 ○須賀委員  1つ確認しておきたいのですが、資料1−2に、3年間で検討会を30回開催したと書 いてあります。これだけ見ると、ものすごく検討されているのですが、23項目について 3年間かけて検討した。手の指に関する検討は、そのうちどの程度の分量割かれたの か。  もう1つは岩村委員が、個別の作業実態あるいは個々の現場はあまり関係ないのだと おっしゃいました。先ほど紹介しましたように、労働者の社会復帰を促進することから すると、その原則は元働いていた職場にちゃんと戻れることがベースだろうと考えてい ます。そうすると、個別の作業の実態、個々の現場の実情などというのは、確かに私ど ももいろいろ個別事情を挙げてきましたから、いかにもその個別事情を考えてくれ、と いう指摘のようでありますがそうではなくて、それぞれの作業の実情というのは踏まえ なければならないのではないかという視点で言っているのであります。これについて、 失礼がなければ岩村委員はどのように考えておられるのかもう一度お聞かせいただけれ ばありがたいと思います。 ○補償課長  23の項目を30回にわたりということで、1項目を1回ずつやっているわけではありま せん。中には1項目を2回ということもありますし、2、3項目合わせて1回で終わっ たというのもあります。それで指の検討はどうかということですが、報告書の中の分量 を見ていただければわかりますが、相当の枚数書いてあります。実際に何回という正確 な数字は出ませんけれども、3割以上は割いたと思っております。 ○保原会長  岩村委員から何かご発言がありますか。 ○岩村委員  誤解のないように申し上げたいのですが、個別の労働の実態との関係で申し上げたの は、あくまでも補償の水準を決めるに当たり、障害等級の割合をどうするかということ については、個々の職務内容、業務内容を考慮しながら決めるという考え方には、現行 の労災保険法は立ってないということであります。  ただ、他方で私自身は被災者の職場復帰、あるいは社会復帰は大事だと思っておりま す。それは、補償の問題というよりは、リハビリテーションなり、受傷後の職場復帰の ための訓練を考えることによってなされるべきだと考えています。そういう整理をして おります。 ○保原会長  認定基準についていろいろご意見を伺いましたが、どうしてもということがあれば、 後でもう一回ご発言の機会を持ちたいと思います。次に、須賀委員からご意見がありま した、認定基準の改正等の検討を行う場合の、検討の進め方について部長から答弁をお 願いたします。 ○労災補償部長  先ほど来、須賀委員から認定基準等々を見直す際に、専門検討会を組織して検討す る、この中で、どれだけ現場と申しますか、就労の実態、就業の実態といったときには さまざまな実態があり得るわけですが、できるだけ広く就業の実態をどれだけ検討し、 それを反映させてきたのか、あるいは、医学専門家以外の方々の見方も合わせてどう検 討してきたのか、ということについてのご意見がございました。  これは、障害認定に限らずその他の労災認定基準の設定であるとか見直しを行う場合 には、どうしても医学の進歩や、医学的知見の蓄積といったことを踏まえた検討はどう しても必要であります。そういうことから、私どもは医学専門家の皆様方にご参集いた だいて検討をしていただく、ということを主たる手法でやってきております。  もちろんそういう場でありましても、純粋に医学的な検討にとどまるということでは なく、できる限り業務の実態であるとか、問題になっている傷病と業務との関連と申し ますか関係といったものをできるだけ踏まえた検討に努めてきたつもりです。ただ、い ま須賀委員からそういった検討がどれだけ十分であったか、というご指摘がありました とおり、私どもは、そのご指摘を今後も十分踏まえていかなければならないと感じてお ります。今後は、必要に応じてできるだけ就労の現場に即した就業の実態をできるだけ 幅広く聴取していく、把握していく。あるいは、医学専門家のみならず、関連の専門 家、リハビリテーション、その他の専門家の意見も十分聴取していく。  そうした把握の結果を検討のプロセスの中に十分反映させていくような形で、業務の 実態であるとか、傷病と業務の関連も十分踏まえた形での検討に今後努めていきたいと 考えております。 ○保原会長  労災補償部長から、認定基準の改正等の検討作業を進めるに当たっての留意事項につ いて答弁がありましたが、ご意見等はございますか。                 (特に発言なし) ○保原会長  前に戻りまして、認定基準の変更について、なおご意見があればお願いいたします。                 (特に発言なし) ○保原会長  委員の中には、省令案の一部に反対する意見もありますが、2回にわたって十分議論 を尽くしたと考えますので、今回の障害補償給付に係る身体障害の障害等級の見直しに 係る省令改正案の取扱いについては、私に一任させていただきまして、当部会としては 概ね妥当である旨、労働条件分科会に報告したいと考えますがよろしいでしょうか。                   (了承) ○保原会長  ありがとうございました。報告文については、私に一任させていただくことでよろし いでしょうか。                   (了承) ○保原会長  ありがとうございました。次の議題に移ります。労災病院の再編計画及び労災保険料 率の設定に関する検討会について、事務局から説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  資料2、資料3をまとめて報告させていただきます。資料2「労災病院の再編計画に ついて」は、前々回11月に開催された当部会のときに、昨年8月に厚生労働省が出した 再編計画の基本方針についてご説明いたしました。その後、内部で引き続き検討を行 い、本年3月30日に再編計画ということで策定したものです。  概要をご説明いたしますと、資料2の1枚目の2と3のところに概ね書いてありま す。平成13年12月に閣議決定された、特殊法人等整理合理化計画に基づき、労災病院が 労働政策として期待される役割を適切に果たし得るという観点から、この再編計画を策 定したものです。また、この労災病院の設置・運営する労働福祉事業団については本年 4月から、特殊法人から独立行政法人労働者健康福祉機構として設立されて、そちらが 運営することになりました。  こういったことを踏まえ、この再編計画を策定したわけですが、その内容を2頁以降 でご説明させていただきます。前回も、基本方針のところでご説明いたしましたので、 重複する部分も多いわけですが、再編計画の趣旨は省略し、2番の「労災病院の今後の 位置付け」ということで(1)労災病院の役割として、労災病院は被災労働者の早期職 場復帰及び勤労者の健康確保という労働政策の推進に寄与するため、労災疾病に関する 予防から治療、リハビリテーションに至る一貫した高度・専門的な医療(勤労者医療) において、他の医療機関に対して中核的な役割を担うということです。  (2)労災病院が重点的に担う労災疾病の範囲としては、別紙1として表で付けてお りますが、12の分野を定め、労災の疾病に特徴的な疾病を重点的に取り扱っていこうと いうことにしております。  (3)勤労者医療において中核的な役割を担う上で評価すべき機能として、(1)勤労 者医療に関する効果的・効率的な研究・開発といったことから、労災病院群として、そ の研究機能の集約化を図る。(2)一般医療を基盤としつつ、民間医療機関等では対応が 困難な高度・専門的医療の提供体制を確立する。(3)労災指定医療機関に対する研究・ 開発の成果の普及体制の強化、産業医等の臨床研修への積極的な対応による勤労者医療 の地域支援機能の整備といったことを強化すべき機能として挙げております。  こういったことを踏まえ、3の(1)にあるように機能・役割を十分発揮するために 全国の労災病院を再編し、全国的なネットワークを構築するということです。  (2)にあるように、再編に当たっては各労災病院を総合的に評価するということ で、イとして現に有する診療・研究機能を、さまざまな観点から実績を考慮し、ロとし て、経営の収支状況、これまでの収支状況等についての考慮。ハとして、地域的な配置 状況といったことを配慮した結果、3枚目の(2)ですが、現在の37病院を30病院に再編 成する。内容としては、5つの病院を廃止するとともに、4病院を2病院に統合するこ とにしております。具体的な病院名については、別紙2でそれぞれ5つの病院、2カ所 の統合の対象を掲げております。  4は廃止に当たっての留意点です。(1)地方公共団体等関係者との協議ということ で、労災病院を廃止するに当たり、地元の関係者とよく協議をし、地域医療において必 要不可欠との判断から、その病院を存続する必要があるものについては、地方公共団体 又は民間への委譲を積極的に進めていくことにしております。(2)患者への配慮とい うことで、診療・療養に支障を来すことのないよう、その診療・療養先の確保に努める ことにしております。(3)労災病院の職員については配置転換、再就職等による雇用 の確保に十分配慮することとしております。  これに基づき、今後、先ほど申し上げました独立行政法人の労働者健康福祉機構のほ うで、具体的に再編の作業を進めていくことになっております。なお、別紙2にありま す対象病院のうち、九州鹿児島にある霧島温泉労災病院については、既に先月廃止して おります。以上が資料2の労災病院の再編計画についてです。  資料3「労災保険料率の設定に関する検討会」についてご説明いたします。前回の部 会において、開催要綱等についてご説明をしたところですけれども、資料3のとおり開 催要綱や参集者が定められました。先週の5月12日に第1回の会合を開催しましたの で、その概要についてご報告いたします。  参集者の名簿は記載のとおりです。第1回検討会において、座長を参集者の互選によ り、本部会の委員である岩村先生にお願いすることにいたしました。その後、事務局か ら労災保険制度の概要、労災保険料率の設定方法等についての説明を行い、各参集者か らご意見をいただきました。  第1回ということで幅広くご議論いただきましたが、保険料率の設定の考え方につい ては、リスク別の保険料率の設定が、保険料の計算の原則でありますが、民間の保険料 もすべてがリスク別になっているわけではない、労災保険制度というのは社会保険制度 でもあるということから、ある程度産業界の連帯責任ということも必要ではないかとい った意見が出され、特段それに対する異論はなかったと承知しております。今後、それ ぞれのテーマごとに検討をしていただくことにしておりまして、次回第2回については 料率設定の問題について、その後は業種区分の問題やメリット制の問題について順次検 討をしていただくことにしております。  秋ごろには論点の整理をし、本年度末には検討結果を取りまとめていただこうと思っ ておりますが、これらの論点整理や検討結果については、適宜この部会にご報告させて いただき、次回の料率設定に活かすことができるようにしたいと考えております。な お、検討会は公開としておりまして、配付資料、議事録については厚生労働省のホーム ページで掲載することにしております。ペースとしては月1回程度を目処に開催するこ とにしており、次回は5月31日を予定しております。以上、料率設定に関する検討会に ついてご報告申し上げました。 ○保原会長  労災管理課長から、労災病院の再編計画及び労災保険料率の設定に関する検討会につ いて説明をいただきました。ただいまの説明についてご意見、ご質問等がありましたら お願いいたします。                 (特に発言なし) ○保原会長  特に発言がないようですので、本日はこれで終了させていただきます。なお、本日の 議事録署名委員として、労働者側の真島委員、使用者側の杏委員にお願いいたします。 ○佐藤委員  議事とは関係ないのですが、3月8日に開かれたときに諮問された内容が、あたかも 決定されたかのように新聞報道している新聞社があります。私は、そこに抗議しまし た。そしたら、うちは請負でやっていますから、請負元へ言ってくださいと言うので す。あまり部数はないですけれども、出回っている新聞です。これはどう考えてみても 間違いですので、当局も注意をしていただきたいと思います。 ○保原会長  その点については考慮させていただきます。それでは終了いたします。どうもありが とうございました。         照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係             電話03-5253-1111(内線5436)