04/05/13第7回社会保障審議会医療保険部会議事録            社会保険審議会医療保険部会(第7回)                    議事録              日時:平成16年5月13日(木)              場所:厚生労働省省議室 星野部会長  これより第7回医療保険部会を開催いたします。委員の皆様には本日はご多忙の折、 お集まりいただき御礼申し上げます。  開会の前に、委員の異動がございましたのでご紹介させていただきます。青柳委員が 退任され、松原委員(日本医師会常任理事)が新たに就任されています。  次に、本日の委員の出欠状況についてご報告いたします。本日は井伊委員、井堂委 員、岩本委員、清家委員、西村委員より、ご欠席の連絡をいただいております。また、 浅野委員は若干遅れているようです。  事務局より、委員の退任について報告があるので説明願います。 間杉課長  総務課長でございます。下村委員につきましては、4月21日付の辞職願が出され、翌 日付で厚生労働大臣よりこれが承認されたところでございます。以上、ご報告申し上げ ます。 星野部会長  続きまして、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りします。北郷委員(国 民健康保険中央会理事長)の代わりの桜井参考人(国民健康保険中央会常務理事)、岡 谷委員(日本看護協会専務理事)の代わりの小川参考人(日本看護協会政策企画室長 )、漆畑委員(日本薬剤師会副会長)の代わりの飯島参考人(日本薬剤師会常務理事) のご出席につきご承認いただければと思いますが、いかがでございましょうか。 各委員  異議なし。 星野部会長  ありがとうございます。それでは本題に移りたいと存じます。今回は前回に引き続 き、高齢者医療制度について議論したいと思います。事務局より説明を聴取し、議論を いたします。それでは事務局から説明を願います。 間杉課長  総務課長でございます。本日、高齢者医療制度ということでご議論をいただきたい 点、大きく二つでございます。一つは、前回から高齢者医療制度論のご議論をお願いし てございますけれども、かなり幅広な角度から様々なご意見を頂戴いたしました。その 点を少し、私どもなりに再整理をさせていただいて、ご議論いただきたいということが 一つございます。それから、前回の審議会の中でもご意見がございましたけれども、医 療制度と介護保険、あるいは医療の提供体制、さらには保健事業と、こういった非常に 緊密に連関のある諸制度、諸施策について医療制度側としてどういうふうな認識を持つ べきか、というふうなことについてご議論をいただきたいと、この2点でございます。  それでは資料の説明をさせていただきます。まず資料1が、高齢者医療制度に関する 論点案でございます。まずこのペーパーの性格でございますけれども、これは、冒頭申 し上げましたとおり、様々なご議論がございました。それで、閣議決定そのものは非常 にエキスでございますし、前回のご議論も、閣議決定というのはもう少し敷衍をして噛 み砕いて考えるとどういうふうな基本的な考え方なのだろうかと、こういうふうなこと ではなかったろうかと思います。そこで、私ども事務局あるいは政策当局といたしまし て、これは当局としての当面の検討の方向性ということでお願いできればということで ございました。もちろん現在、直ちにこれについてご異論がないというふうな性格のも のでは全くございません。さらにご議論を重ねていただければ、という姿勢でおりま す。  ご説明をさせていただきますと、まず「基本的な考え方」でございますが、我が国の 医療保険制度、これは社会保険方式のもとで、被用者保険加入者以外の者をすべて国民 健康保険でカバーするという、国民皆保険を達成するというふうな目標のもとに、極め て稀有な体制をとってきたというふうなこと、国保問題に真正面から取り組んできたと いうふうな体制でやってきたところでございます。  その中で、老人保健制度ができます以前にも、国民皆保険を守るという理念のもと で、地域連帯、これは例えば国保、あるいは職域連帯、これは政管あるいは共済、組合 といったそれぞれの保険集団ごとに、その中で高齢者についてもカバーをするというふ うなこと。高齢者につきましては、いずれの制度もその高齢者の世代だけで医療費を支 えることというのは、これはもう大変難しゅうございますので、保険原理のもとで、 個々の保険者の内部で、世代間の連帯を含めた保険手段全体の連帯というふうな考え方 で、医療費の負担が行われてきたということでございます。  しかしながら、様々な状況の中で、医療費全体に占める高齢者医療費の割合が高まっ ております。それから産業構造の変化により、国民健康保険に加入する若年者が相対的 に減少すると。一方で、退職により被用者グループのほうから国保グループに移行する 者が増加をしたというふうなこと等々がございまして、老人加入率の格差によって生じ た負担格差というふうなものをできるだけ均衡化しようという趣旨で、老人保健制度が 創設されたわけでございます。  2ページ目でございますが、以上のように老人保健制度、これを従来からあった保険 集団ごとの世代間の連帯、これを国民皆保険というより大きな枠組みで維持したら、と いうふうに考えることができるのではないかということでございます。  2ページの下にまいりまして、その際、新たな高齢者医療制度の創設にあたりまし て、後期高齢者につきましては、縷々ご議論いただいてまいりましたけれども、生理的 能力等が低下しているというふうなことで、医療あるいは受療行動がかなりそれまでの ものとは異なるのではないかというふうなことで、国民皆保険の枠組みは維持しながら も、後期高齢者をそれ以外の集団と分けた上で、後期高齢者にふさわしい負担の仕組み をとる。  3ページでございますけれども、給付面におきましても、地域における医療サービス と介護サービスとの連携というふうなものを通じてQOLの向上を目指す。こういった ことに着目して、独立した保険制度としてはどうかというふうなことでございます。ま た、これによりまして、医療費負担における財政責任を担う主体はだれなのかという、 保険者が明確化されるのではないか。  この場合、後期高齢者につきましては、そうは申しましても、保険制度としてみた場 合には、定型的にはリスクが相当高い集団でございます。こうしたことから、その特性 にふさわしい負担の仕組みとして、公費は5割、それから後期高齢者自ら適切な水準の 保険料を負担すると、その上で若年者から社会連帯的な保険料としての支援を求めると いうことでございます。  一方で、65歳以上75歳未満の前期高齢者でございますが、このグループにつきまして は、これはむしろ医療のあり方論として、若年層あるいは壮年期からの一貫した重症化 予防を含めた予防という観点を重視しながら、QOLの向上、ひいてはそれが医療費の 適正化にもつながるということではないかということ。それから、経済的にみましても 現役世代と遜色のない負担能力を有するというふうなことに着目をして、現役世代と区 分することのない、従来どおりの被保険者としての保険集団に属することが妥当ではな いかというふうなことでございます。  3ページの下でございますが、これは高齢退職者について触れてございます。3ペー ジ目から4ページ目にかけてでございますが、高齢退職者、OBにつきましては退職者 医療制度というふうなことで、これまで負担を行ってまいりました。しかしながら、今 後の退職年齢である65歳以上の前期高齢者、これは後ほど見ていただきますけれども、 雇用の流動化を背景として、被保険者集団が支えるグループとそうでないグループ、だ れがOBかということについての境目が相当あいまいになってきているのではないかと いうふうなこと。  それから、健康づくり、あるいは効率的で適正な医療サービスのあり方というふうな ものを求めながら、その年齢層がいずれの保険制度に加入あるいは移行しようとも、公 平な負担のもとに医療が保証されるよう調整を行う制度に移行する。この場合、各保険 制度において、高齢被扶養者を含め保険料負担を求めるというふうなことでございま す。  また一方におきまして、これは前期高齢期に達する前から、個々の保険者が保健事業 を実施し、健康づくり、それによる医療費適正化の成果といったものがあるわけでござ いまして、こういったものが調整に際して有利になる、メリットがあると、そういうふ うな仕組みを検討してはどうかというふうなことでございます。  5ページ目は「保険料」でございます。年金制度が充実する中で、一般的には高齢者 も現役世代と比べて経済的に遜色のない負担能力を持ってきております。したがいまし て、前期高齢期、あるいは後期高齢者ともに、新たな体系で適切な水準の保険料負担を 求めたいというふうなことでございます。  この場合、まず後期高齢者医療制度でございますけれども、これは後期高齢者自身も 一定の保険料を負担していただくというふうなことを大前提にして、現役世代から支援 を求めるというふうなことでございますので、保険料負担につきましても、応益的な部 分と応能的な部分といったものを組み合わせることが適当ではないか。それから前期高 齢者につきましても、これに準じた保険料負担を求めることが適切ではないかというふ うなことでございます。それから、前回もご議論がありましたけれども、前期高齢期の 被扶養者、これは65歳を過ぎますと、国民皆年金制度のもとで年金という定型的な収入 があるということから、私ども、負担を求めると考えておりまして、逆に申し上げれ ば、高齢被扶養者のそういった取り扱いが、若年の被扶養者に対して保険料負担を求め るということには必ずしもつながらないのではないか、というふうに考えます。  6ページでございます。「社会連帯的な保険料」でございます。その性格をどのよう に考えるかということでございます。冒頭申し上げましたように、従来から世代間の連 帯というふうなこと、これを含めた保険集団全体の連帯で国民皆保険制度が成立してい るということでございます。したがって、政策的に医療行動あるいは受療行動の特性に 着目して後期高齢者の制度を独立させたとしても、国民皆保険という全体の枠組みの中 で、同じような連帯というふうなものが成り立つのではないか、というふうなことが一 つ。  それから後期高齢者。これは自らが現役世代だったときに当時の高齢者を支えるとい うこと、いわば順送りの扶養というふうなことが行われてきているということでござい ます。したがいまして、後期高齢者の医療あるいは受療特性に着目をして、公費負担5 割というふうな高率の負担の中で、高齢者自身の保険料を後期高齢者制度に先充てする というふうなこと。そういった後期高齢者の自立を前提としましても、なお足らざる部 分について、それ以外の世代からの拠出を社会連帯的な保険料と位置づけることができ るのではないか、ということでございます。合わせて、社会保険制度というふうなこと を議論していきますと、逆に、当然のことながら滞納問題というふうなことについてど う考えるかということも必要ではないか。  それから、前回以来のご議論でも、現役世代の理解・納得というのは大変重要ではな いかというふうなご意見が出されたところでございます。この点、私ども、次の3点を 考えてみたらどうか、というふうなことでございます。老人医療費が世代間でどのよう に負担されているかということについて、わかりやすい仕組みにするということ。2点 目に、国保あるいは被用者保険の現役の保険者、これが何らかの形で上の高齢者医療制 度に関与できるようにするということ。3点目に、医療費適正化に向けた保険者の努 力。これは当然のことながら、自らの制度の医療費負担を軽減させますが、それにとど まらず、高齢者医療制度における負担においてメリットがあると、こういうふうな仕掛 けが検討できないかということでございます。  8ページでございますが、ここからが介護保険、医療提供体制、あるいは保健事業と の関係でございます。生理的能力、生活機能の低下が進む後期高齢者につきましては、 あるべき医療論、あるべき医療サービスのあり方というものを検討するとともに、介護 との役割分担を明確にした上で連携を強化すべきではないか。前回もご議論がございま したように、介護保険導入後のサービスの移行状況、あるいは社会的入院といったもの について、どのように評価するかというふうな点がございます。  それから、これは前期高齢期あるいは後期高齢期を通じてでございますけれども、地 域における医療の提供、あるいは機能分担といったことを、患者のQOLの向上といっ たことを視点に置いて行うべきではないか、というふうな方向で、「具体的には」と書 いてございますけれども、地域の医療資源の状況をより詳細に明らかにし、急性期から 退院後の在宅に至るまでのサービスが確保されるような機能分化と連携というふうなこ とについて、検討すべきではないか。  また、そういったことに、地域の関係者の一つとして保険者がより積極的に関与でき るようにしておくべきではないか、というふうなこと。  それから、これも縷々ご議論をいただいてまいりましたけれども、生活習慣病対策を 中心とする効果的な健康づくり、これを地域と保険者が一体的に取り組む体制を構築す る、といったこと。  それから、最後のページになりますが、生活習慣病の症状の進行。これは一定の指標 の変化によって把握しうるものだというふうなことでございます。したがいまして、 個々人の健康時からの健診データを活用すれば、より効果的な予防が可能なのではない か、というふうなことで、一定の成果を上げている事業とか手法を検証しながら、地域 ・保険者あげて、より効果的な保健事業を展開すべきではないか。それから医療保険制 度として、制度論としてこのような保健事業への努力、あるいは医療費適正化への成 果、こういったものが医療費負担に反映される制度をつくるべきではないか、といった ことでございます。  それでは、以上に関連をいたしまして、資料をご覧いただきたいと思います。資料2 でございます。1ページあけていただきまして、2ページ目でございます。これは、冒 頭申し上げました世代間の連帯あるいは扶養というふうなことにつきまして、かつて国 保なら国保、被用者保険なら被用者保険というふうなことの中で行われていた。しか し、それは国民皆保険制度というふうな全体の枠組みの中での世代間連帯というふうに とらえることができるのではないか。これがだんだん発展的に、老人保健制度あるいは 退職者医療制度というふうなことで、保険者の枠組みを越えた連帯の仕組みに移行して きたと。今回の新たな後期高齢者医療制度というふうなことで、さらにそこを明確化し てはどうか、というふうなことを図示したものでございます。  3ページでございますが、これもかつてお出しをさせていただきました資料でござい まして。そういう考え方に立ちますと、とにかく75歳までは地域の国保あるいは職域の 被用者保険、それぞれが保険者による保健事業の推進、あるいは地域における保健事業 との連携、そういったことを通じまして、とにかく徹底的に健康の維持・増進、健康寿 命の延伸ということに取り組むと。それから75歳を過ぎたところで、介護のサービスも にらみ合わせながら、加齢に伴う生理的能力の低下にふさわしい医療が行えるような制 度体系としていくべきではないか、という図でございます。  4ページでございます。これは各年齢区分ごとにどれだけ医療費を使い、あるいはど れだけ保険料を払っているか、というふうな図でございます。ご覧をいただきますよう に、高齢期になるにつれて医療サービスの受給額は多くなる。一方で保険料負担は、45 歳あるいは50歳代をピークにだんだん下がっていくというふうなことで、医療保険、こ ういった形で見ますと、極めて世代間の扶養的な色彩の強い制度だというふうなことで す。  5ページでございますが、これは国民健康保険と被用者保険の年齢構造の変化でござ います。昭和36年が皆保険達成。ちょっとその段階のデータがなかったのですが、一番 近いものとして昭和41年度(1966年度)が茶色の線でございます。だんだん若い層、中 高年層が国保のほうはやせ細っていきまして、逆に65歳のところをちょうど支点にする ようにして、てこのように65歳以上の人口が増加をしていると、こういった構造変化で ございます。  6ページでございますが、雇用の変化でございます。これは上にございますが、標準 労働者ということで、学卒後直ちに企業に就職し同一企業に継続勤務していると、そう いうふうな、いわばこれまでの典型的な労働者像というふうなものの割合の推移でござ います。これをご覧いただきますと、一番下の50歳から59歳という▲の線は、高齢者雇 用が大分進んでおりますので延伸をしてきてございますが、一方で1996年あたりから、 一番上の若年層の標準的な労働者、実増というものが落ち込んできている。したがっ て、一番下でございますが、1982年の段階で20歳から59歳の年齢の中で約半分強、51.5 %が、いわゆる典型的な労働者だったというのが、2001年には5割を割り込んで、46.4 %というふうなことでございます。  7ページでございます。これもかつてご議論いただいた資料でございます。できるだ け高齢者の医療論に即した制度設計をしたいというふうなことでございまして、ご覧い ただきますように、前期高齢期までは生活習慣病によります外来の受療率が増加をして おります。ところが、後期高齢期になりますと、逆にそういった病気が入院受療率の増 加につながっていると。一方で、寝たきりとか痴呆とか栄養・摂食障害、あるいは肺炎 併発、そういったものが命取りになると、こういったことのご議論をいただきました。 もちろん、個人差はございますが、集団全体として見るとこのような変化が見受けられ るというふうなことでございます。  8ページは、労働力人口比率でございます。ここでご覧をいただきたいのは、75歳を 過ぎますとさすがに労働力人口比率9.3%というふうなことでございますが、65歳から 69歳、それから70歳から74歳、一番右に65歳から74歳ということで前期高齢期を再掲し てございますが、3割近い労働力人口比率がまだ得られているというふうなことでござ います。  9ページは、所得でございます。これも、右のほうをご覧いただきますと、右から3 番目が65歳未満ということで年間216.9万円。65歳〜74歳が218万円ということで、まだ 前期高齢期は年金収入等のほかに稼働所得その他というふうなこともございまして、65 歳未満と遜色のない水準がある。さすがに75歳を過ぎますと155.7万ということで、少 し落ち込みます。  10ページは、公的年金の充実でございます。これは昭和58年度、老健制度ができたと きの厚生年金保険の年金月額が、上から2段目でございますが、11万3,296円。これは 現在、13年度が17万4,800円ということで、約1.5倍の伸びでございます。国民年金は、 同じように58年度が2万5,881円、現在5万1,684円ということで、約2倍の伸びという ことでございます。もちろん、平均年金額でございますから、個々人によってばらつき はございますけれども、平均的には相当、年金の成熟化ということが見てとれるのでは ないか、ということです。  11ページは、個人の所得分布であります。75歳以上の所得についてはどうか、という ふうなことでございます。一番左側のほうが収入が低いほう、右に行くにつれて高くな るわけでございますが、確かにここをご覧いただきまして、「なし」の層も、低所得者 層もかなりございます。ばらつきがあるというふうなことは言えるかと思います。ただ し、真ん中に点線を引いてございますけれども、75歳以上の平均が156万円、65歳未満 の平均が217万円というふうなことで、これを凌駕する層というのも存在をしていると いうふうなことでございます。  12ページ、13ページは、それぞれご説明をさせていただいておりますので省略をさせ ていただきます。  15ページでございます。ここは高齢者医療の制度論と、それからさまざまな地域にお ける取組みとの接点、連続性をどう考えていくかというふうなことでございます。上の ほうにございますように、何とかQOLの維持向上を図ることによって健康度を高めた い。あるいは生活の自立度を高めたい。そうすることによって、結果的に医療費につい てもそう大きなものにならないというふうなことができるのではないかというふうなこ とで、そのために、提供体制としての真ん中の医療計画、あるいは介護保険事業支援計 画、そういったものとの連携、それから健康増進計画に基づいた生活習慣病の発症・重 症化予防、そういったこととのかかわりについてご議論をお願いしてきたわけでござい ます。  16ページからは、「医療と介護の関係」ということでございます。  17ページでございますが、いわゆる社会的入院というふうなものが議論をされてまい りました。そういったものに対して、どう制度的な取組みをしてきたかというふうなこ とでございます。  まず第1番目に、医療機関における病床等の機能分化の促進というふうなことで、第 2次医療法改正。ここで初めて、長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるとい う、療養型病床群というふうなことの制度化が行われました。また並行いたしまして、 診療報酬におきましても、長期入院の是正、あるいは在宅医療の推進というふうな観点 から、中長期の入院患者の入院料の見直し、あるいは包括評価、それから在宅の高齢者 に対する医学管理あるいは訪問看護、こういったことを進めてきたわけでございます。  18ページでございますが、平成12年に至りまして、介護保険法、介護保険制度がスタ ートをしたわけでございます。これはもともと老人医療の中に含まれていました生活支 援的な部分、あるいは老人福祉、そういったものを再編成するというふうなこと。これ を契機に社会的入院の解消を目指そう、というふうなものでございました。ここに数字 が書いてございますけれども、サービス利用者をこのように想定をして制度がスタート をしたというふうなことがございます。  3番目でございますが、第4次医療法改正によりまして、従来、一般病床、その他病 床というふうなことであったわけでございますけれども、これを療養病床と一般病床に 区分して、医療機関のほうに届出をお願いするというふうなことで、平成15年の8月末 までに届出をお願いをしたというふうなことでございます。  それから下でございますけれども、診療報酬のほうでも、入院期間が180日を超える 入院についてはその費用の一部を患者さんからいただく、というふうな仕掛けも導入し たわけでございます。  19ページ。実際に介護保険ができて、医療保険にどういうふうな影響があったのかと いうふうなことでございます。  (1)でございますけれども、私ども、介護保険ができたときに、平成12年度のベー スで約2兆1,000億円が介護保険に移行すると見込んでございました。ところが、これ は国保中央会のほうの推計でございますが、平成12年度における移行分は約1兆7,000 億円というふうなことで、8割程度ではないかというふうな推計が一つございます。  それから、介護保険適用後の療養病床が目標とどうであったかということでございま すが、一番左にありますように、平成15年度の当初の見込みは19万5,000床でございま した。それが今、平成15年9月現在という直近でございますが、約13万6,000床という ことで、達成率約7割といったところでございます。  20ページでございますが、これは介護保険ができましてから、平成13年に医療経済研 究機構のほうでの調査が行われたところでございます。今申しました療養病床、その中 で、上は医療保険の療養病床に入院されておられる患者さんのうち、このブルーの部 分、容態急変の可能性は低く福祉施設や在宅によっても対応できると言われる方が約4 割いらっしゃる。それから介護保険の療養病床のほうでも、必ずしもこの療養病床とい うふうなところでなくても、例えば特養あるいは在宅といった他の手段によって対応で きるという方が、これも約4割というふうな数字がございます。  21ページは、それを年齢階級別に見たものでございまして、特に医療保険適用の療養 型病床群につきましては、ほぼ年齢を問わず大体同じような数字が出ているというふう なことでございます。  22ページからは、老人医療費と介護サービス費の地域特性というふうなことでご覧を いただきたいと思います。(1)、一番上にございますように、老人医療が約1.5倍、 各県によって、一番大きいところと一番小さいところの開きがある。これはかつてご紹 介申し上げました。同じように、介護サービスにつきましても約1.7倍の開きがあると いうことでございます。  1ページおめくりをいただきまして、23ページでございます。これはかつてご覧をい ただきました、1人当たり老人医療費の各県別の数字でございます。このように一番大 きい北海道から一番低い長野まで格差があるわけでございます。  同様に、24ページでございますが、これは介護保険のほうの1人当たり支給額といっ たものでございまして、棒でありますのが実額、それから丸でつないでございますの が、これは年齢補正をかけたあとの数字でございます。ご覧をいただきますように、実 際の支給額もばらつきがございますが、このブルーの施設と上のピンクの在宅、これの バランスもかなり、各県によって違うというふうなことが見てとれるわけでございま す。  25ページは、それではということで、老人1人当たりの医療費の伸び率と、1人当た りの介護サービスの伸び率と、これがどう相関をしているのか、していないのかという ふうなものを各県別に見たものでございます。本来であれば、介護保険制度ができた趣 旨からいけば、介護保険が伸びているところは相対的に医療費が小さくなっているので はないかと思われるわけでございますけれども、実際は相関係数がマイナス0.1ぐらい というふうなことで、弱い相関でございますが、ほとんど関連がないというふうなこと でございまして、この辺をどう見るかというふうなことでございます。  26ページは、都道府県別のベッド数でございます。灰色のところが、先ほどご覧いた だきました長期療養の療養病床、白が一般病床でございます。一番ベッド数の多い高知 県から一番少ない埼玉県まで、ずっと並べてございます。病床数そのものにも、人口10 万単位合わせてもばらつきがございますが、その中で、ご覧をいただきますように一番 左の高知県が、療養型の病床は、これは灰色のところが52%でございます。ここが一番 療養型の比率が高い。それから逆に一番白い、一般病床の比率が高いのは、右から見て いただきますと山形県というのがございまして、これが一番一般病床の割合が高くて85 %といったことで、ここもかなり地域によって大きな差が出てくる。  27ページは、同じ療養病床の中でも医療保険の適用と介護保険の適用の間で違いがあ るというふうなことでございまして、これも地域によって、医療型の高いところ、介護 型の高いところ、これもほぼ同じようなばらつきが出ているわけであります。  続きまして、医療提供の機能分化・連携というふうなことで、資料を若干用意させて いただいております。  29ページでございます。医療法等ということで、提供体制をまとめて左のほうに書か せていただいてございますが、医療計画ができましたのがちょうど昭和61年、第1次の 医療法の改正でございまして、その後、これは医療法そのものではございませんけれど も、老人保健施設の創設、あるいは訪問看護制度の創設。一方で診療報酬のほうも、平 成2年にいわゆる介護力強化病院の評価というふうなものが入ってございますが、これ が平成5年になって、第2次医療法改正で療養型病床群というふうなことで、長期療養 というふうなことで制度化をされる。それから一方で特定機能病院というふうなこと で、高度医療、急性期医療というふうなものが創設をされたわけでございます。  めくっていただきまして、30ページでございますが、診療報酬のほうで平成12年、こ れはかなりいろいろなことをやってございまして、医療機関の機能に応じた入院基本料 の新設ということで、一般、精神、老人、あるいは療養型、そういった各部に応じた入 院基本料をつくっていると。それから急性期入院、あるいは回復期リハ、それから病院 の外来機能とかかりつけ機能の明確化と、さまざまなこういった機能分化と連携のため の点数設定が行われたということでございます。  おめくりをいただきまして、31ページでございますけれども、平成13年、左のほうで ございますが、第4次医療法改正で、先ほどご覧いただきましたような一般病床と療養 病床の区分が設けられ、平成15年8月に届出が締め切られたということでございます。 一方、診療報酬体系のほうでは、15年の4月に特定機能病院にDPCが導入をされる と。さらには、今回の16年の改正で、亜急性期の入院医療評価というふうなことが行わ れてきているというふうなことでございます。ご覧をいただきますと、下に、DPCの 82病院では平均在院日数が短くなってきてございます。したがいまして、こうした急性 期、それから亜急性期、それからそのあとに例えば在宅といったものも含めて、どう提 供体制を形づくっていくかというふうなことではなかろうかというふうに考えておりま す。  若干資料を飛ばしまして、最後に、保険者による保健事業の推進ということでご覧を いただきたいと思います。  35ページは、これはかつてご議論をしていただいた資料でございますが、年齢と1人 当たり医療費の関係ということで、今はブルーの線のように老人医療費がぐんと伸びる というふうなことでございますが、疾病のリスク要因というものについてはおそらく介 入可能だろうというふうなことで、下にございますような健康増進、あるいは発症抑 制、重症化抑制、次のステップに移ることをできるだけ抑制をすると、こういったこと によって発症水準に至らないようにすると、そのことによって結果的に老人医療費の適 正化というふうなこともできるのではないかというふうなことをご議論いただいたわけ でございます。  それに関連していくつか資料が見つかりましたのでご紹介を申し上げますと、36ペー ジ。これは58年、63年、平成5年というこの3時点で、全国の市町村を対象にしまし て、市町村の保健センターがあるかどうか等々、保健事業と医療費の関係を分析したデ ータでございます。2の(1)にございますように、保健センターを設置しているとこ ろは1人当たり老人医療費が低い。とりわけ昔からやっているところほど、長期的な効 果が出ている。それから増加率が低いというふうなデータでございます。それから規模 が、やはりある程度の規模は必要だというふうなこと。それから多機能、あるいはコー ディネートだとか相談機能を果たしているところが低いと、こんなデータでございま す。  37ページ。これは保険者による効果的な保健事業というふうなことで、今、保険者に よる保健事業について、さまざまな問題点が指摘をされております。一番上で見ていた だきますと、例えば制度間で健診の検査項目や検査方法が違うとか、検査を実施する者 によって検査結果が異なる。これはもう本当に基本的な問題でございます。それから、 健診結果が必ずしもその後の指導、フォローにつながっていない。それから結果がそれ ぞれ、現役時代あるいは退職後、そこで切れてしまって連続性がないということで、有 効に活用されていないといった問題が指摘をされております。こういった問題について も、取組み方を考えていく必要があるというふうなことでございます。  それから重症化との関係で、38ページでございます。これも先生方のご研究でござい ますが、年齢別の重症度と医療費の関係。糖尿病でございます。それで、境界領域型の 糖尿病のときには1年間の医療費が2万5,000円というふうなことでございますが、こ れが月2回通院というふうなことで内服治療が始まりますと、1桁、桁が跳ね上がりま す。それから(4)で透析が始まりますと、575万といったことで、こういうふうな数字に なると。重症化と医療費の関係でございます。  最後、39ページでございます。これは合併症と医療費の関係でございます。これも、 計4,558人と載ってございますが、こういった町全体で国保加入者グループについて全 数調査を行ったというふうな調査でございます。一番下をご覧いただきますと、糖尿病 のほかに合併症が一つある人は医療費が50万等々のってございます。それから人工透析 が始まりますと500万等々というふうなことで、この町の国民健康保険の総医療費が年 間8億、その中で約1億6,000万円が糖尿病で使われているというふうなことで、重症 化あるいは合併症の予防ができればより低いレベルですむのではないかと、こんな研究 でございます。  大分長くなりましたが、資料のご説明は以上でございます。 星野部会長  どうもありがとうございました。それではご意見、ご質問等ございましたら、お願い 申し上げます。どうぞ、上野委員。 上野委員  それでは今回の医療保険制度改革、あるいは高齢者医療制度改革の創設の目的をいま 一度振り返って、今回の論点を整理していきたいと思います。昨年3月28日に閣議決定 されました基本方針の医療保険制度体系、基本的な考え方として、第1に安定的で持続 可能な医療保険制度の構築、第2に給付の平等・負担の公平、3番目に良質かつ効率的 な医療の確保、という三つが記載されております。  これを私どもの被用者保険に照らし合わせて論点を整理してまいりますと、まず「安 定的で持続可能な医療保険制度の構築について」とありますが、2003年度は健保組合の 減少数が過去最高になるなど、まさに持続可能性の危機に直面しております。この最大 の原因は、健保組合にとって全くコントロールのきかない老人保健拠出金の増加である ことは明らかでありまして、新高齢者医療制度案で老人保健制度の廃止を打ち出された ことは評価できるというように考えております。  一方、老人保健拠出金に替わるものとして新たにご提案されている社会連帯的な保険 料についてでございますが、現段階では具体的な姿が見えず、評価のしようがないとい うのが正直なところでございます。第1ラウンドは論点整理の場ということでございま すので、 評価は第2ラウンド以降にゆだねることとしまして、老人保健拠出金と同様の性格の制 度になることだけは絶対に避けなければ医療制度改革は成立しないということは、申し 上げておきたいと思います。  そのためにも社会連帯的な保険料という名称、あるいは法的位置づけ、財政計算、い ろいろ今まで論点が出ておりますが、さらに今回は論点案ペーパーの6ページ下から7 ページに記載の「社会連帯的な保険料の理解・納得を得るための仕組み」、こういった ことは本部会の極めて重要な論点テーマだろうと思います。これらを実効性のあるもの とするために、第2ラウンド以降、具体的な方策について突っ込んだ議論を徹底的に行 う必要があると考えております。  次に、「給付の平等・負担の公平について」とありますが、高齢者自身の保険料や社 会連帯的保険料の項目で、世代間、保険者間の保険料負担の公平化がうたわれておりま す。何をもって公平とするか、その基準について議論が必要だと考えております。被用 者保険は取れるところから取るという方式によって、過重な負担を課せられているとい う意識をもっております。後期高齢者については公費負担を5割とするとありますが、 公費についても、現役世代の負担割合が大きいのではないかと思います。やはり制度全 体の負担について、保険料ばかりでなく公費についても、だれがどれだけ負担している かを示した上で、公平かどうかを議論する必要があろうと考えております。  やはり社会連帯をうたうのであれば、どのようにして公平で納得できる負担制度とす るかを考えなくてはならないと思います。サラリーマンと自営業者の所得捕捉の問題 や、国保の未納・未加入の問題は、すでにいろいろ議論が出ておりますので、ここでは あえて繰り返しませんが、一つの案を申し上げれば、現役世代による支援は、消費税等 を活用することで、これらの問題を解消した公平な負担制度とすることができるものと 考えております。  また、「高齢者本人が負担する保険料について」とありますが、論点案にあるとお り、高齢者は年齢、被扶養の区別なく、原則として保険料を負担すべきというように考 えております。経済的な負担能力を判断する際には、貯蓄などストック面も考慮すべき であり、フローの所得のみでは不十分であると思っております。低所得で低資産の場合 には、一定の配慮が求められると考えております。保険料徴収にあたりましては、介護 保険と同様に年金からの徴収を原則とすべきと考えております。  さらに患者の一部負担割合についても、現役世代との均衡の観点から、引き上げる方 向で検討することも重要な論点として追加すべきと思っております。  最後に、「良質かつ効率的な医療の確保について」とありますが、基本方針では、保 険者に対して保険者機能を発揮することが期待されていると思いますが、保険者機能発 揮のためには、それを促すインセンティブが不可欠であります。本日の論点ペーパーで も、保険者機能の強化に関する記述が数多く見受けられておりますが、まだまだ具体的 な姿が描かれていないと思います。やはり第2ラウンド以降、どのようなインセンティ ブのもとに保険者機能を発揮され、その効果はどのようなものなのか、具体的な姿をお 示しいただく必要があろうかと思います。  いずれにいたしましても、保険者機能発揮のためのインセンティブ論議は、医療保険 制度改革を成功に導くために必要不可欠でありまして、重要な論点として取り上げるべ きだと思っております。  以上、基本方針に立ち返って意見を述べさせていただきましたが、高齢者医療の適正 化についても、一言申し上げたいと思います。私も過去何度もこの部会で申し上げてま いりましたが、医療費の適正化ということを行わない限り、いかに制度体系を変えよう とも、医療保険制度は存続し得ないと考えております。後期高齢者について独立した保 険制度とすることで、財政責任と運営責任を担う主体を明確化するという考え方には賛 同いたしますが、財政責任を全うするための方策であります医療費の適正化で示されて おりますのは、医療提供体制の機能分化・連携の促進と、保健事業の強化にとどまって おります。これらが中長期的に効果があることは予想されますが、いま少し短期的に効 果が得られるような追加的な方策、仕組みが必要ではないかと考えております。  また今回、いわゆる社会的入院に対する対応として資料提供されたことは適切だろう と考えます。配付資料2の20ページに記載がございますが、福祉施設や在宅で対応が可 能な方の割合は4割程度いるということであります。介護保険制度の創設の目標であり ます社会的入院、あるいは社会的入所の解消が実現されていないと思っております。医 療機関や介護保険施設が生活の場となっている状況を解決することが、引き続き重要な 課題ではないかと思っております。  最後になりますが、日本経団連といたしましては、高齢者医療に限らず、医療、年 金、介護などの社会保障全般について一体的な見直しを行い、消費税のあり方を含む抜 本的税制改正の議論と合わせて負担の議論をする必要があると考えており、この点につ きまして先般、日本経団連の奥田会長から小泉首相にも申し出を行っております。これ は日本経団連の社会保障改革の基本的スタンスでありますので、ご理解を賜ればと存じ ます。長くなりましたが、私からは以上でございます。 星野部会長  ありがとうございました。ほかにご意見等ございませんか。どうぞ、久保田委員。 久保田委員  遅れてきて申しわけございません。ご意見を申し上げる前に、一言お詫びを申し上げ たいと思います。過日の中医協を舞台にしました贈収賄の事件につきまして、連合の副 会長であり、連合推薦の委員が逮捕されたということがございました。この場をお借り しまして、連合としてお詫びを申し上げます。あってはならないことであり、即、様々 な処置、処分を行いましたが、二度とこのようなことがないよう再発防止を含めて今、 すべての連合推薦の審議会の委員を集めて、もう一度しっかり認識をさせる等々行動を とっております。今後の委員としてのあり方等々についても議論を進めているところで ございますので、この場で冒頭、お詫びを申し上げたいと存じます。  それでは、意見を申し上げたいのですが、まずこの部会の議論と今後の運び方につき まして、疑問点がございます。一つは、この高齢者医療に関する論点を今回、次回も行 うのではないかと思いますが、もう一つ議論が十分尽くされたのかということと、それ からこれまでの様々な意見、私も申し上げてきたのですが、それがこの論点整理という ことに、どう生かされているのか、よく見えません。ほかの審議会等々では、様々な意 見が出たことにつきまして、それをくくり、論点を整理しながら、具体的に一つ一つ詰 めていくというようなやり方をしているところが多いのですが、どうもそう見えずに、 言いっぱなしで、次はまた似たようなものが出てくる、というような感じがしていま す。  二点目は、今後の検討の進め方、最終的な報告書は基礎委員会等々でやるのかという ことも含めてこの部会での詰め方とスケジュールについて、事務局にお伺いしたいと思 います。  三点目は、日本経団連さんから今ありましたが、この年金の問題に絡みまして、連合 としても小泉首相に、日本経団連さんと同じ日に要請をいたしまして、年金の抜本改革 と同時に、年金・介護・医療の一体的な改革、社会保険と税のあり方ということを含め た議論をすべし、しかも期限を切ってやるべきではないか。これは年金の出口の問題と して問題提起をしたのですが、ほぼ日本経団連さんと同じ主張を、中身は大分同床異夢 のところがあるのかもしれませんが、やっております。  やはりこの制度全体の設計、それが本当に国民各層の負担に耐え得るのかどうかとい う意味からしますと、一定の財政試算、あるいはシミュレーションを、前提を置きなが らも、少し早めに提起をしてもらいたい。また、そういうものがなければ、具体的な現 実的な議論がなかなかしにくいのではないかという感じはしますので、この年金の出 口、そして社会保障全体の税を含めた検討が、放っておけないという意味からしても、 全体のペースを速めると同時に、できるだけ早くそういうことが検討できるように、財 政試算については要望しておきたいと思います。  具体的に今日の論点項目についていくつかご意見を申し上げたいと思いますが、まず 75歳以上の新たな後期高齢者制度について、これは先ほど申し上げたこととの関連です が、連合としてはやはり、どうこれまでの議論と資料を見ても、なぜ75歳以上を独立さ せた医療保険制度にすべきなのかという根拠には乏しいのではないか。いわゆる高齢者 医療の特性という視点だけでは、いえないのではないか。加齢に従って連続的に重症化 していくというようなことで、あえて75歳の前後で分けなければならないという根拠は なかったと理解をすべきではないかと思います。リスクの高い後期高齢者だけで医療保 険制度というのは本当に持続可能なのか。財政面も含めて自立した制度になるのか。  また、要望いたしました諸外国の例が、前回の資料で出てきておりましたが、結局、 高齢者に着目した医療制度というものをもっている国はないと、日本ではないかという ことも含めて、独立保険制度を創設するということについてはまだ大きな疑問をもって いるというようなことを、現時点では言わざるを得ません。  同時に、肝心の保険者が決まっていないということも、大きな問題ではないか。国保 再編統合推進委員会での議論の経過等々の報告がありましたら、お伺いをしたいと思い ます。  それから、65歳以上75歳未満の前期高齢者制度の問題でございます。ここについて は、イメージが、まだこの文章ではよくわからないというのが率直なところです。もう 少し具体的にイメージをすべきではないかというように思いますし、退職者医療制度の 廃止ということになりますと、これをどうするのか。老健拠出金に該当していたものは いったいどうなるのか。それは社会連帯保険料に含まれるのか。前期高齢者について、 国保と被用者保険の財政調整をまさか公費抜きでというようなことは考えておられない のだと思いますが、その辺のイメージがこの文章だけではよくわからないので、評価の しようがないというのが率直なところでございます。  それから保険料の水準の問題が出ておりました。前期高齢者の被扶養者に対する保険 料負担というものが、唐突に出てきているという感じがいたします。大きく言えば、世 帯単位から個人単位へというような何か流れがあるのかというふうに見えなくもないの ですが、そうなってきますと、被用者保険の基本原則にかかわる大きな課題ではないか と思います。医療保険財政のつじつま合わせのために軽々に論じるわけにはいかないの ではないかと思っています。  それから、「年金があるからいいじゃないか」ということなのですが、いろいろご意 見もあるかもしれませんが、今回の年金法案は給付面でも非常に大きな引き下げが提案 されています。今の仕組みはこれも一律です。政府提案が通ってしまいますとそういう ことになりますし、一方、税制では、高齢者に対する老齢者控除の廃止など、年金課税 の強化策もあります。年金受給者の手取り収入をさらに引き下げるというのは、中身が いろいろですし、本当に高齢者によって実態が違いますので、一律に年金があるからと いうことだけではすまないのではないかと思います。  したがいまして、データを求めたいのですが、対象となる65歳以上の被扶養者がいっ たいどれぐらいいるのか。その対象の年金水準は。所得水準、世帯の所得水準はいった いどうなのか。対象となる層の実態をもう少し浮き彫りにする中で検討していくべきで はないかと思います。  それから、社会連帯的な保険料は、一言で言って現行の老健拠出金の仕組みとの違い がもうひとつよくわからない。理念としては、社会連帯の理念自体を否定するものでは ありませんし、現役世代が高齢者医療費について一定の負担をせざるを得ないというこ とについて、理解はできるのですが、老健拠出金とどう違うかというのがよく見えませ ん。保険者の努力とほとんど無関係に拠出額が決定されていって、年々増加していっ て、というような圧迫要因になっているという現在の老健拠出金の負担のものとは明確 に違うということが、もう少し具体的に出ないことには、評価も難しいのではないかと 思っております。  それから、日本経団連さんのほうからも言われましたが、やはり保険制度の改革は、 医療提供体制の改革との関連性を抜きには語れないのではないかと考えます。一方で医 療費の適正化ということを、本当にどうやって具体的にメスを入れていくのか。そのこ との姿形が見えなければ、枠のくくり方をいろいろやったとしても、本質論議にはなら ないのではないか。したがって、これはセット問題だと考えるべきです。  そういう意味では、社会的入院の問題が資料でも出ておりましたけれども、来年は介 護保険制度の見直しの時期を迎えていますので、今、やはり介護保険とのリンケージを 含めて、どれだけ医療費の適正化が前に進むのか、具体的なデータや実態についてもっ と検証してみるべきだと思います。同時に、医療費適正化の進捗状況という点では、昨 年9月に老人医療費の伸びを適正化するための指針が出ていると思いますので、その推 進体制はいったいどう進捗しているのか。一定の時期で結構ですが、報告をきちっとい ただきたい。  具体的にどういう形で何をどう切り込んでいけばそういう形になっていくのかという ことについて、踏み込んだプログラムと検討をしていくべきではないかと思いますの で、意見とさせていただきたいと思います。以上です。 星野部会長  ありがとうございました。どうぞ。 間杉課長  ただいま冒頭、進め方についてご質問がございましたので、私どもなりの考え方をお 話しさせていただきますと、去年からご議論をいただきまして、医療論、それから保険 者の再編、それから今回、高齢者医療制度ということで、まだ2回目でございます。一 巡目のご議論をいただいているというふうに、私どもは考えております。したがいまし て、夏までの間、こういったご議論を一巡させていただきたいと思っております。  そういう意味で、冒頭、私のほうから申し上げましたこと、大変恐縮でございました けれども、今回の論点メモ、これの性格でございますけれども、これは前回もずっと、 様々なご議論が1項目1項目ございまして。閣議決定は本当にエキスだけでございます ので、これがどういう考え方によって来るかということは、私ども政策当局の立場とし て、誠実にやっぱりお示しをすべきではないかというふうなことで、今回の論点メモを つくらせていただきました。そういった意味で、これは私どもの、事務当局の資料、案 でございまして、もちろん、これについて様々なご議論、ご異論があるということは、 今の段階では私ども、ごく当然なことだろうというふうに思っております。  夏の段階で、これは部会長ともよく相談をさせていただきたいと思いますけれども、 いったん様々な論点を整理させていただき、その上でまた第2ラウンドに臨むというふ うなことも、十分相談させていただきたいと思っております。以上でございます。 星野部会長  久保田委員、よろしゅうございますか。今、かなりアバウトな話だったように思いま すけれど、よろしゅうございますか。 久保田委員  具体的なスケジューリング等々については、やはり提起をしていただきたいと思いま すが。この部会について。 星野部会長  どうぞ。 間杉課長  わかりました。私ども今、今年、年金改革。それから次は介護。大臣も国会で、医療 制度改革を遅くとも18年度までにと申し上げていますので、したがいまして、それはこ のあと、さまざまなタイミングがあり得るのだろうというふうに思っております。例え ば部会の今後の進め方というふうなことで一回出してみろということであれば、部会長 とご相談の上で出させていただきたいと思います。 星野部会長  ほかにございますか。どうぞ。 河内山委員  上野委員さん、それから久保田委員さんから、被用者保険サイドのお話として、いろ いろと論点をお話しになりました。市町村国保を運営する立場から、地域保険で高齢者 医療とか高齢者の方々のこういうケースというものをどういうふうにとらえているかと いうことをまず冒頭に、これはあまり客観的な話ではありませんが、主観的な話として 申し上げたいと思います。  人生をきちんと、若いころからまじめに生きてこられた方が、残念ながら人生の後半 で介護を必要とする状況になられるとか、あるいは、特に高齢者が高齢者を介護すると いう老老介護、そういう状況というのは、介護保険が始まりましたので相当緩和はされ たものの、そういう存在になること自体、個人にとっても非常にそれは不幸なことであ りますし、そのことを何とか予防ができるものならば予防していこうではないかという 気持ちをもつようなケースであります。我々市町村長というのは、オギャアと生まれた お子さんの問題もあれば、障害をおもちの方もあれば、そしてこの高齢者の問題もあれ ば、いろんなケースに遭遇しますので、そういう立場から申し上げますと、新たな高齢 者医療保険制度がきちんとして、高齢者の方にとっても安心感を与えるものでなければ なりませんし、人間はだれもが老いますので、少なくとも、「将来、そういう制度があ れば、個人の負担は伴うものの、やはり安心だ」と思えるような制度設計をすることが 極めて大事だと思っております。  そういう中で、地域保険がどうしても新たな高齢者医療保険制度を担っていく保険者 として、まだ決まってはいませんけれども想定をされるとするならば、やはりこれは、 先ほどお2人の委員さんも言われましたように、老健拠出金とどう違うのかというよう な。具体的な財政のお話はお話として非常に大事なのですけれども、少なくとも社会連 帯的な気持ちをもって、被用者保険の方々にも、逆に「どの部分が今けしからないの で、どういう仕組みだったら我々としても大丈夫ではないか」というような、そういう 形でも問題提起をしていただくといいのではないかというふうに思います。  別にこれは国保が、将来これを我々が担うということが決まったという意味ではあり ませんけれども、もしそういうことになるとするならば、全体としてだれかが、「どの 程度、税で負担するのか。社会保険料で負担するのか」、やはりそういう負担の仕組み というものをつくり上げていかないことには、「年金も将来まだまだ不安。介護保険も どうなるかわからない。医療保険もどうなるかわからない」というようなことでは… …。冒頭に申し上げましたが、自ら進んで介護を必要とする、あるいは自ら進んで寝た きりになろうという方は1人もいらっしゃらないわけで、残念ながらそういう状況に置 かれた方が、やはり安心感をもたれるような制度設計をするためには、私は被用者保険 がどうだ、地域保険がどうだということを乗り越えた議論をそろそろしなければならな いのではないか。これは個人的な、主観的な意見でございます。  その上に立って、やはり何と言いましても、国保を運営しておりまして考えますと、 被用者保険とは違いまして、今度は新たな高齢者保険制度もそうなる可能性はあります けれども、天引きではなくてわざわざ負担を求める方が、先ほど年金からのというよう な話がございましたけれども、それでも天引き以外の方が生まれてくるかもしれませ ん。  そういうことになりますと、保険料の徴収もなかなか大変な新たな保険制度になると 思いますが、これは国保からしますと相当、どの割合にするのかは別として、やはり若 年層からの社会連帯的な保険料というものを相当覚悟していかないと。徴収も困難な高 齢者からさらに、「介護保険も徴収しております。さらには新たな高齢者医療保険制度 も徴収します」ということになると、非常にこれは難しい制度ができ上がるのではない かという懸念を一つ持っております。これはもちろん、低所得者の対策は対策として講 ぜられることがあるとしましても、限界事例というのは、難しい方は存在してくると思 いますので、そのことはやはり非常に懸念材料としてございます。  それから、全体的なお話でございますが、これは被用者保険のほうからも問題提起が されたことと全く同感なのですが、医療提供だとか、介護計画だとか、医療計画だと か、そういうものを担っておられる。浅野委員がおこしになりましたので、都道府県と してこの高齢者医療保険制度をどういうふうに評価をされるのか。これは国保の再編・ 統合の話とも、実は表裏一体のお話になるかもしれませんけれども、やはり医療提供の ほうの権限をおもちだとか、介護のほうも同様に計画をつくる機能をもっておられる、 そういう都道府県が、国保のほうもそうでありますけれども、もし地域保険が担うよう な形になるとするならば、新たな高齢者医療保険制度については、都道府県がどういう ふうにおかかわりになるのかということについても、いろいろと覚悟をしていただいた ほうが、私はいいのではないかと、そんな意見をもっております。以上、雑駁な話でご ざいますけれども、申し上げました。 星野部会長  ありがとうございました。今、河内山委員から、二つのサイドに質問を投げかけられ まして。上野委員と久保田委員、今の河内山委員のお問いかけ、主観的なというあれが ついておりましたが、お問いかけにお答えになられますか。それとも、今の段階ではま だ早いというようにお考えですか。 上野委員  社会連帯的な保険料を否定しているわけではないのですが、今提案されている制度そ のものが、老健拠出金制度とどう違うのかが明確でない。ここをはっきりさせないと、 なかなか現段階では判断できないということを申し上げているわけでございますが、ご 指摘の社会連帯的な保険料、名称はともかくとしまして、何らかの検討をしていかなけ ればならないということは当然、念頭に置いております。 星野部会長  多分、お答えにくい話だから、これ以上突っ込まないほうがいいと思いますけれど、 河内山委員の言われたのは、やっぱり現在の拠出でやっていることはどういう格好で、 さらに続けるべきなのか、それとも全く違う形を想定するのか。そこらについて、経団 連なり、あるいは連合なりがどういうふうに考えるのかという、問いかけをされたのだ と思うんです。  私、客観的に思えば、事務局がこうやって堂々巡りした議論みたいなことを何べんも やっているのは、だんだんとそういう雰囲気が、もはや、本当は議論ではそこへ到着し てきているのではないかと思います。ただ、まだまだ周りの状況、年金がどうなるかと か、そういうのがまだ決まっていないことだとか、おそらく、あとで浅野委員にもお伺 いしたいと思ったのですけれど、河内山委員が言ったように「県はどうしてくれるの? 」というのに対して、まだまだ、そう熟しているのかなという気もする。  先に私が言ってしまって申しわけないですけれど、そういうことに対して、もし今の 段階でもう少し積極的に、上野委員なり久保田委員から、「我々は実はこう思っている んだ」というのでも開陳していただけると、事務方も勉強になって、この会議というの がもう少し前へ進めるのかなというような感じがいたします。そういうことではないか と思います。どうぞ、無理してご発言は必要ないと思いますが、できれば何かヒントを 与えていただければありがたいと思います。久保田委員、どうでしょうか。 久保田委員  具体的に今、部会長が言われることに対して、答えをまだ用意できていないのです が、そういうことを検討することも含めて、単なる財政のつじつま合わせではないとい うことから、やはり人の命にかかわることですし、人の一生をいったいどうするのかと いうところで、オーソドックスに検討されてきており、そういう議論のもとに、地域特 性や資料も色々つくってやるというのはよくわかるのですが、もう少し具体的なイメー ジをお互いに想定しながら「どうあるべきか」という議論をしないと、ぼやっとした中 でそれがどうなるかわからない。  私も先ほどの発言で「社会連帯的なことについて、一切否定するつもりはありません 」と、「基本的に、理念的には必要でしょう」ということを言ったつもりですが、しか し、しっかり自らの努力と、そういうことがちゃんときいてくる仕組みをつくるには、 まだ連合としては、やっぱり縦一本でやることと、地域での横との組み合わせが本当に できないのか。「一定の年齢で、誕生日が来たらこう」ということの違和感も含めて、 「本当にそれしかないんですか」と、「もう一回、地域保険と被用者保険それぞれの縦 一本の仕組みで検討はできないのでしょうか」と、「そこはこだわります」ということ を申し上げているつもりです。  「そこにもう一歩踏み込むためには、もう少し色々な、データと言ったらおかしいの ですけれど、我々が言う財政シミュレーション的なことも踏み込まないことには検討で きないのではないか。堂々巡りではないですか」ということを申し上げたかったので す。 星野部会長  もし、ご勉強なさる上で必要なデータ等があったら、事務局が耐え得る限りは、いろ いろ資料の提供を要求されたらよろしいのではないかというふうに思います。  浅野委員、あまり議論をお聞きになっていないと思いますが、ただ河内山委員が言わ れたことは、浅野委員はもう先刻、何重にもご議論なさっていることなので。もしよろ しければ、何かご発言いただいたらと思いますけれど。 浅野委員  そのような形で振られるとは思わなかったんですが。「県はどうするんだ」というふ うに言われましたが、それとはちょっと違うかもしれないのですが、こういう観点から 考えてみたいと思うんです。これはゲームなんですよ。登場人物がいて、そしてこれは ゲームと同じようにルールの中でゲームは進行していくんです。  どういうことかというと、75歳以上の高齢者の特別な制度をつくるということを行っ て、それからあとのことです。それからあと、1年1年たっていくときに、必ずこれは 問題になるはずです。多分、保険料負担者から悲鳴が上がるでしょう。どこまで保険料 を上げるんだ。75歳以上の人たちからも、怨嗟の声が出るでしょう。もうちょっと十分 な医療を保障してほしい、というようなことがあるんです。みんなそれぞれ、登場人物 は登場人物で、それなりに自分たちの希望というものをもっています。それで、ゲーム のルールと言ったのは、それをゲームのルールの中でどうやって調整していくか。これ はすぐれて政治の問題なんです。  今、私が問題としているのは、この今の議論の中でそういったような局面、局面にお いて、そういうゲームのルールが正しく反映されるような仕組みになるかどうかという ことなんです。この際に一つのアナロジーとして、障害者分野である支援費制度と介護 保険の問題をちょっと考えるところがあるんです。これはまた別な議論として、今、障 害者対象の支援費制度が昨年度から始まったわけですが、これはもう発足2年目にして ちょっと行き詰っています。それは、地域で支えるという仕組みで支援費制度を構築し たのだけれども、財政的な担保がないので、十分な金が回りません。もう2年度目にし て、そういう怨嗟の声が上がっているんです。  ここでゲームのルールと言ったわけです。では、それを満足させるためにどうするか というときに、今の支援費制度ですと、これは財源が税金ですから、ゲームのルールが うまく働かないんです。支援費制度を少し充実させるために、税率を上げるとか、そう いうことをできないですね。それもあって、実は私も、介護保険の中に支援費制度を入 れてはどうかと提案しています。介護保険の中に入れるというのは財源が安定するとい うだけでなくて、これはゲームのルールの中に入れようということなんです。というの は、「そういうような障害者に対する在宅支援の給付を厚めにするというなら、保険料 も上げなくてはいけませんね」ということを、それぞれ問いかけながら、どこかでバラ ンスがつくでしょうと、こういうことなんです。  それからもう一つは、今、社会連帯の何とかと言っているんですが、これについてで す。税金も、払っているというのはある意味では社会連帯なんですが、この制度の中で 考えていくと、保険料は目的税なんです。その目的税で賄っていくというときに、「連 帯」というふうに非常に文学的な表現がされていますけれども、さらにまた文学的表現 で言うと「明日は我が身」ということなんです。介護保険が介護保険として今成立して いるというのは、40歳から加入を義務づけて何とか納得して払っているのは、「明日は 我が身」だからなんですね。「保険料は払いたくないけれども、それはいずれ自分もお 世話になるときがあるから払っておこう」ということがあって、「連帯」というのが単 なる文学的表現でなくて成り立っていると。  では、この今問題になっている75歳以上の後期高齢者のための制度というのは、保険 料を払っている側から言って、「明日は我が身」というのが成り立つのかどうか、とい うことです。それと同時に、それがある程度行き詰まったというか、怨嗟の声が聞こえ てきたときにどう裁くかというゲームのルールが、ちゃんと発揮できるような制度にし ているのかどうかということです。  それで河内山委員からあったのは、実はこのゲームの中にもう一つの変数があるんで す。今、たまたま給付の水準と保険料の水準だけで行っていますが、もう一つの変数と いうのは医療費適正化の問題です。予防をどうするかとか、また社会的入院をどう減ら すかという、そういう変数がもう一つあるということなんです。その点について、今ご 指摘があったと思うので、では県としてどうかといったときに、前回、辻保険局長から 「これは医療費適正化についてマクロでのコントロールではなくて、地域や医療のあり 方を考える中でのミクロの取り組みによる適正化」というお話があったというふうに伺 っています。これは、すごくわかりやすく言えば「国はあまりできないから、県がやっ てちょうだい」というふうに聞こえたのですけれども。それは「いや、勘弁してくれ」 と言うつもりはないですが、私は答えは両様だと思っているわけです。地方とか県と か、保険者任せということだけでは、実効性のある医療費の適正化は困難だと思いま す。したがって、県もやりますけれどもやはり、辻局長もそういう意味でご発言された のではないと思いますが、医療費適正化ということに関しても国の役割は相変わらず必 要とされるのだろうと思っておりますので、それはそれとして両様やっていきましょ う。  リクエストされたことに直接お答えしたわけではないですが、どうしても強調したい のは、こういう社会保険という仕組みの中でやっていくというときのゲームのルールと いう、必ずそれは政治の場で解決されるはずのものだということを、しっかりと認識を して、それがうまく……。どちらにしてもけんかになるのです。どちらにしてもけんか になるのですが、そのけんかをある程度合理的に裁くためのゲームのルールというのが ちゃんと成り立つような仕組みにしなくてはいけない。答えはどうかと言われたら、 「わかりません」というのが答えです。 星野部会長  どうもありがとうございました。大変示唆に富んでいると、私は思います。先ほど久 保田委員が医療費の適正化ということを言われました。それで今、浅野委員も、もう一 つの変数としての医療費の適正化ということを言われたのですが、久保田委員が言われ ている医療費の適正化というのは、これはどういうことを言われようとしたのでしょう か。医療費が上がらないということですね。 久保田委員  抑制するということですね、トータルの。 星野部会長  抑制ということですよね。適正化と、お互いに使っているのはね。そういうように理 解すると。先ほど、河内山委員のほうは非常に言葉を選んで言われたのですが、「まじ めに働いた人がたまたま病気になったら、その人が安心できるようなシステムになって いなければならないだろう」ということは、医療の適正化という言葉と矛盾しませんよ ね。するように一見聞こえるんですよ。医療費を下げてしまうということだけれど、た だ下げるということではなくて、維持できるシステムでぎりぎりのところを探るのだと いうふうにとれば、矛盾でも何でもない。  さらに、浅野委員が今言ってくださったように、非常にダイナミズムの中でとらまえ ていく必要があるのだから、そういうものもみんな変数として一緒に入れていくという 考え方で理解してよろしいのではないかと思いますが。河内山委員のおっしゃったこと と、久保田委員のおっしゃったことが矛盾しているとは思わないのですが。お2人とも そういうふうに理解してよろしいですね。 河内山委員  はい。矛盾はしておりません。 久保田委員  地域によって、少ない医療費でやっている県はあるじゃないですか。そこは地域特性 もあるんじゃないですか。あるいは予防からということがですね。そういう一方で、こ れはいろいろ意見があるのかもしれませんけれど、やっぱり出来高払い制の中で、病床 が多くて、経営ということを考えると、老人の多剤投与やいろんなことでかかっている 部分というのは大きいのではないでしょうか。それがいったいどの辺まであるのか。そ ういうことを徹底して切り込んで、「患者本位で、しかしコストは安くて」ということ を追求しなければ、「これだけかかったから全部つけ回しますと、取りやすいところか ら払ってください、というわけには絶対にいきません」ということを強調しているわけ です。 星野部会長  わかりました。ありがとうございました。どうぞ、山本委員。 山本委員  たまには変わったことを申し上げないと活気が出ないでしょうから、申し上げます が、現行制度の中でこういうことを考えるから難しくなるのです。これはどなたも共通 していると思います。だから、「現行制度の中で高齢者だけを別個にしてやろう。で は、だれが保険者になるのか」という、そういう疑問が次から次へ出てくるわけですか ら、だからそういう議論が非常に難しくなってくるわけです。しかし、今は何でも改革 論時代ですから、この75歳以上の後期高齢者の人たちの医療だけを現行制度から外し て、別立ての制度を設けるということで考えて議論していきますと、また新たな議論が 生まれてくると思うのです。それがまず1点目。  それから2点目ですが、そういうような後期高齢者の人たちの医療をどう考えるかと いうことの、この論点の原点です。原点はどこにあるのかということを考えますと、結 局は医療費の高騰がそれを言わしめていると思うのです。ですから、医療費の適正化と いう言葉でうまく言いあらわしてはおりますけれども、突っ込んでいきますと、医療費 が上がらなければこういう議論は出てこなかったと思うのです。  ですから高齢者の医療というのは、これは非常に難しいと私は思いますが、これはも う言葉で表現するのは難しいのですけれども、例えば私のことを実例でお話しさせてい ただきますけれども、母が病気でもうあと余命幾日もないと、こういうときでしたか ら、医者の子供に私は「東京に行ってくるから、おれが帰ってくるまでよろしく頼む」 と、こう言ったんですよ、母親を。そうしないとお別れができないと、こう言ったとこ ろが、子供が私にこう答えた。「病気ならば、病気のところを抑えておけば、それは可 能かもしれないけれども、おばあちゃんは老衰だから抑えることはできない。だから、 それだけは無理な注文だ」と、子供が私にそう答えました。「そこを精一杯やるのがお 前の仕事じゃないか」と厳しく言ったのですが。そういうことがありました。  ですから後期高齢者の病気というのは、いったいどういうふうにしてどう治療してい くのかという、やはりマニュアルみたいな基準を設けて、それでいけるのかどうかとい う、そういう疑問がありますけれども、やらざるを得ないのかなと。こういうことをま た議論するようになってくると、ということも考えなければならないのではないでしょ うか。それから、新たな仕組みを考えていかなければなりませんから、例えば保険者を いったいだれにするか。今はもう、ご承知のように何でも民営化、あるいはまた「民で できるところは民で」というのが今の政府の方針ですから、必ずしもこの医療というも のが、保険者が私どものような国民健康保険が、市町村がもつ必要はないと思うので す。民営でもいいと思うのです。それぐらいの思い切ったことをやらないと、こういう 高齢者の問題にとっかかってしまうのです。  ですから、例えば高齢者のこの保険者をいったいどうするのかということになります と、私どもが考えると、やはりもう今の国民健康保険だけで申し上げると、それぞれの 保険者で抱えていけというのは難しくなってきます。支えられないと、そういうことに なってきますから。さっきのお話のように、県なら県単位で、何か民営化みたいな形の ものの保険者をつくっていく。もちろん、色々な連携は市町村と行っていくことは当然 ですけれども、そういうことまで踏み込んで検討する必要があるのではないかと、さっ きからお話を聞いておりまして考えました。  ですから私ども町村にとってみますと、もう今の国民健康保険は支えていくだけの力 を失いました。今年のようなこういう財源状態になってまいりますと、これをこのまま 今の方針は……。交付税も削減され、来年も今年よりももっと厳しく財源状態はなると こう言われておりますから、もしそうなってきますと、今、3,000億以上の一般財源か ら赤字補填しておりますその財源というのを失ってしまうことになりますから、国保の 保険者としては、今申し上げたような抜本的な、とにかく特異な保険者をつくってそこ へ移行していく、しかし実務だけは市町村がやるというような、そういう多角的な仕組 みによって運営をしていくということを考えることのほうが、より効果的ではないかと いうふうに思いました。  今日はそこまで議論していきますと、色々あると思いますので、そういう意味でもう 少し視野を変えた、角度を変えた議論をしていくことが必要ではないかと、そういうよ うに思いましたので、ご提言を申し上げております。 星野部会長  どうもありがとうございました。どうぞ。 小川参考人  河内山委員のほうからいろいろ示唆に富むご発言もありましたし、山本委員のほうか らも、保険者の民営化という話もございました。また、老人医療のスキームとどう違う 制度をつくるのかという話もございましたけれども、私はある種、この新たな高齢者医 療保険制度というのは、保険者機能がどう生かせるのかというところがやはり大きなネ ックだというふうに思います。  そういう意味では、民営化という話もございましたけれども、今現在やられている事 業と新しい保険制度が徴収コストの面でどうなのかとか、運営コストの面でどうなのか というものが、やはり一定、今よりもいい制度になる、保険者機能が発揮されてより効 率的な医療ができる、あるいは健康づくりだとか体力づくりも含めて取り組めるのかど うかといったようなことが、大きな論点になるのだというふうに思います。  そうすると75歳以上の高齢者の保険者というのが、どうもちょっとしっくり、私は分 からないのです。いわゆる健康づくりだとか体力づくりというのは、これは若いころか らやっていかなければならない話です。確かに閣議決定では、「前期・後期高齢者とい うことで分けて考えましょう」ということが決められております。閣議決定は、それは 踏まえなければならないのかもしれませんが、やはり工夫として、その保険者が健康づ くりだとか体力づくりについて責任をもてる、そういうものもやはり制度として考えて いく必要性があるのかなというふうに思います。  河内山委員のほうからのいろいろな示唆というのは、抽象的な議論だけではやはり議 論は先に進まないという話だと思うのです。そういう意味では、仮に市町村、あるいは 仮に都道府県、あるいは民営化という話もございましたけれども、仮に例えば都道府県 や市町村が共同事業で行うとか、そういうものを一つ、案として出して、それを色々な 角度から検討をするということも、一つあるのではないかというふうに思います。  それともう一つ、保険者機能を発揮するインセンティブということもございました。 ここはちょっと私、疑問というか感想になるのかもしれませんけれども、公費50%、そ れに社会連帯的な保険料が入る。そういう保険財政の収入がある。例えば高齢者の保険 料が1割とか2割だとかという世界であれば、公費と社会連帯的な保険料が大半を占め る、そういう収入がある中で、保険者機能というのはどういうふうに発揮されるのかと いうのは、ちょっとよく分からないのです。何もしなくても収入は入ってくるなかで保 険者の機能というのは十分に発揮されるのかどうかというところも、ちょっと私は疑問 に思います。  ただ、社会連帯的な保険料を否定するわけではありません。そういう仕組みというの もある種必要なのかもしれませんけれども、ただ、いわゆる所得再分配機能ということ で言えば年金制度があるわけで、年金と医療保険でやるその所得再配分というものをど ういうふうに考えていったらいいのかというのも、やはり一つ議論をしていただきた い。国民に分かりやすいように、そこは議論をしていただければというふうに思ってお ります。  そういう保険者機能という観点から一つ、徴収コストだとか運営コストだとかを含め て検討する必要はありますが、ちょっと民営化というのは、株主への配当というのを考 えるとどうなのかなと思います。民間の手法の活用というものはやはり必要だと思いま すけれども、株主への配当までいくと、公的保険、社会保険というものからすると、疑 問はございます。  最後に、これはお願いですが、老人医療の適正化に昨年度から取り組んでいらっしゃ ると思うので、その辺の実施状況なども、次回以降、資料でお願いできればと思いま す。以上でございます。 星野部会長  ありがとうございました。今何か、事務方、言うことはありますか。どうぞ。 間杉課長  資料の関係でございますけれども、先ほど来、適正化指針ないしその実施状況につい ての、今どういう状況かといふうなお話がございましたので、これは改めて資料として 整理をしてお出しをさせていただきたいというふうに思います。それから、せっかく議 論が続いているところで余計な話かもしれませんが、先ほど浅野委員から、あるいは 今、小川参考人からも色々お話がございましたけれども、「ゲーム」というふうな言葉 を使われましたけれども、後期高齢者医療制度の登場人物ということで考えてみます と、一つは被保険者、それから公費、もう一つは若い世代。おそらくこの3通りぐらい が今、登場人物として考えられるのだろう。  そこが今の老健制度でどうなっているかといいますと、大事な登場人物の1人である はずの被保険者が、もうそれぞれの制度の中に埋没をしてしまって、国保は国保で保険 料を払う。それから健保は健保で保険料を払う。そこはもう、若い人の保険料と一緒く たになってしまっている。そういう中で、結果的に老人医療費の例えば5割は公費で、 残りの5割は奉加帳が回ってきて、これはもう拠出金でもってください。これが今の老 健制度でございます。  そういう意味で、また次回改めて資料などもお出ししたと思いますけれども、私ど も、今回ご提案を申し上げている後期高齢者の医療保険制度というのは、とにかく後期 高齢者自身というものを当事者として登場させよう。それで、そこの保険料というふう なものを、医療費との関係で明確に徴収をしていただいて、その不足前を世代間の支援 をしようというふうなことで、いわゆる登場人物の緊張関係という関係では、今の老健 制度とはおそらく全然違うのではないかというふうに思っているわけでございます。余 計なことを申しました。その辺、また次回でも資料をお出しさせていただきます。 星野部会長  どうぞ、浅野委員。 浅野委員  今、登場人物ということでちょっと抜けているかなと思ったのは、医療提供者です。 それで、ちょっとそれに関連して質問というか、もうご説明があったのかもしれません が、例えば75歳以上の後期高齢者についての診療報酬体系というのは、一緒ですか。そ れとも、75歳で大きく変えるんですか。  多分、ちょっと違うゲームの、別な分かもしれませんが、一つの方向としては、何で 75歳だということは、後期高齢者で、さっき山本委員がおっしゃったように、お母様に 与えられる医療というのは、老衰の方に対する医療というのは、もうちょっと違うわけ です。それはやっぱり35歳に対する医療とも違うし、65歳の人の医療とも違うというこ となので。  どういうふうにお考えになっているのか、ちょっと質問という形で聞きますが、診療 報酬体系については、この後期高齢者について特別扱いをするということは前提なので しょうか。それともそうではないのでしょうか。 星野部会長  どうぞ。 間杉課長  そこはまさに、あるべき医療論によってどう考えるかというお話だと、私どもは思っ ております。あくまでもこの部会の議論としては、まず後期高齢者の、あるいは前期高 齢者のあるべき医療論というものを丁寧にご議論をいただく。その上で、それをどうサ ポートしたらいいかというふうなことは、また手法論として考えるということではない かというふうに思っております。 星野部会長  どうぞ、山本委員。 山本委員  この次の議論をするために、今日のようなこんな資料を、事務局のほうで出していた だいたのはありがたいのですけれども、もう少し、「もうこうやりましょうよ」とい う。それがどんな提案でもいいと思います。それが皆さんたちの議論の対象になってい って、進歩していけばいいわけですから。何か少し遠慮しているような感じが、私はす るんです。ですから、「私のほうは、後期高齢者の保険者の実態はこう考えます」と か、「これについてはこう考えます」というようなことで提案をしていただくように、 部会長のほうからお計らいをしてください。  そうしないと、こんな資料だけで議論しますと、自分がいいようなことばかり、みん な言って、噛み合わないのです。もちろん、噛み合うことが一番いいことですけれど も、噛み合わなくても結構ですけれども。いつかは噛み合うでしょう。しかし、何か出 さないと、もっと突っ込んだ議論ができないのではないでしょうか。お計らいをいただ きますよう、要望しておきます。 星野部会長  大内委員、手があがっていました。どうぞ。 大内委員  久保田委員から75歳で高齢者を分ける根拠は薄弱であって、色々なことが連続して起 こっているということで、なぜ75歳で分けるのかというご指摘がございましたが、ただ いま浅野委員から、65歳、あるいはもっと若い方の医療と75歳以上の医療は全然違うと いうご意見がありました。高齢者の新しい保険制度をつくるということで制度論がかな り出ているわけですが、こういった保険制度をつくるときに、まさに浅野委員がおっし ゃったように、その保険の中身ですね。これをどのようにつくるかというのが、キーポ イントだと思います。  と申しますのは、今まで医療保険と言いますのは、疾病オリエンテッドで、ある病気 にかかって、その病気を治療して治癒したらいくら保険の給付があると、こういう考え 方なわけです。それからもう一つは、疾病の予防に対しては基本的に給付がされないと いうように私は理解しています。社会が高齢化していない時代にはおそらくそれで十分 機能したわけで、そのために日本はこのような高齢社会になったと、私は考えていま す。  やはりこの75歳を超えた後期高齢者の生理特性の変化、これは本当に大きく変わるわ けです。「連続的だから75歳で分けるのは意味があるのか」ということを言われました けれども、それは決してそうではなくて、集団として見た場合には、やはり大きく特性 が変わってくる。そのときに、こういった高齢者に特化した保険をつくる場合には、今 までのような疾病オリエンテッドの考え方では、おそらくうまくいかないだろう。やは り個人全体のケアとか、あるいは機能の保持とか、あるいは老年疾患をどういうふうに 予防していくかという、こういう具体的なことにインセンティブをつけなければいけな いのではないかと考えています。  前回の会議のとき、私は口腔ケアのことをご紹介しましたけれども、現時点では口腔 ケアをしたところでほとんど保険の給付というのはないわけです。ところが、あれだけ 疾病も予防できるし、医療費も節減できる。そうしたら、もう少しインセンティブをつ けてもいいのではないかということに自然になっていくわけで、その例としてお出しし たわけです。そういった基本的なコンセプトの違う保険制度をつくっていく必要がある と思います。  集団で見たら、確かに75歳以前でも老年疾患にかかって寝たきりの方もおられます し、逆に75歳を超えても非常にお元気な方もおられるのは事実ですけれども、やはり集 団として見た場合にその75歳というところで分岐点があるわけで、そこからの後期の高 齢者に関しては、そういう保険制度の中身を構築していくときに根本的に違うコンセプ トで臨まなくてはいけないと私は考えています。 星野部会長  どうもありがとうございました。ほかにご意見等ございませんか。この際でございま す。何かご発言がありましたら。どうぞ。 久保田委員  大内先生にちょっとお伺いしたいのですが、そういう意味で言うと、諸外国にあまり 例がないというのは、何かあるのでしょうか。日本の特有の、というのは? 大内委員  諸外国に例がない。 久保田委員  年齢に着目した、ここで言う後期高齢者という集団としての、それはちょっと違うと いう。 大内委員  それは諸外国というよりは、わが国が、国の政策として、後期高齢者の医療をどのよ うに考えていくかということになるわけで、それをつくる場合、日本の高齢者の生理特 性を十分考えた制度にすべきであるということを申し上げました。 星野部会長  総務課長、どうぞ。 間杉課長  ご参考になるかどうか、つたない話でございますけれども。おそらく諸外国というこ とで考えた場合に、冒頭申し上げましたけれども、社会保険方式の下で被用者以外の人 間を全部、自営業者、無業者を含めて国保という形で真正面からとらまえている国とい うのは、まずないと思います。諸外国の場合には、被用者の制度が中心にあって、例え ばそれに近いギルドのものを独立させてやるとか、あるいは被用者制度に任意加入させ るとかいうふうなことで、ある意味では自営業者問題というのは生じていないわけで す。その結果として諸外国では、例えばドイツとかフランスでは、従前の制度にそのま ま高齢者も加入している。しかし、その間で非常に厳しい財政調整を行うというのが、 諸外国の形でございます。  したがいまして、私ども、もともと高齢者医療制度は難しい問題でございますけれど も、やはりこのよって来るところというのは、国保という制度をもちながら国民皆保険 を実現する。その辺に一番ウエイトを置いてきた。ある意味ではこれは日本の律儀さ、 まじめさではないかというふうに、私、思っております。そういう特殊な状況の中で、 どう制度を構築していくかというふうなご議論をぜひ賜りたいということでございま す。 星野部会長  ありがとうございました。先ほど山本委員から私に注文がありまして、これに答える 義務があると思います。  私も実はずっと議論を、今日で7回ですか、やらせていただきまして、山本委員と全 く同じような、何かいつも隔靴掻痒の気分がありまして。それで、何が隔靴掻痒なのか と言うと、これは上野委員が今日冒頭に言われたように、具体的な姿が見えない。  今日提出していただいた事務方の資料というのは、私は精細に読んでみると、実によ くできているんです。今までの過去の経緯をちゃんとどこかに埋め込んだりです。老健 制度や何かをきちんと埋め込んでいるから、システムのわかっている人なら、「ああ、 あそこで50%なら、改正されたんだな」とか、そういうのはみんなわかる。これを見て いると何かイメージは浮かぶのですが、しかしこれもまた上野委員と久保田委員が言わ れたように、「そうなら、いったいそれぞれの関係者はどういう覚悟をするのか」と。 つまり「自分たちはいくら負担しなければいけないか」とか、「患者さんはいくらぐら い、今より負担が増えるのだろうか」とかです。そこまで入らないと、実はぎりぎりの ところの議論というのはできないです。だからそういう意味では、極めて隔靴掻痒だと いうのはそういうことなので。  考え方のフレームはもう事務方の資料をよく読んでいただくと、私は非常に、ご無礼 な言い方をしているのかもしれませんが、実によくできた資料を今まで提供されている と思うんです。ただ、具体的イメージがわかないです。イメージがわかないというの は、数字的なイメージがわかない。「おれは損をするのか、どうするのか」。「おれ」 の中には当然、患者は入っているわけです。ということだろうと思うので。  しからばそれをどうやって進めるか、というのは非常に難しいと思います。というの が、この会議は公開しております。公開されますと、例えば総務課長がこういう案を出 すと、「厚生労働省はこういう考え方をもっている」というふうにすぐ、一般的には書 かれてしまうかもしれません。すると、あとで抜き差しならなくなって、国会へ呼ばれ たり何かするかもしれない。  だからおそらく、今日上野委員と久保田委員にわざわざお聞きしたのは、一回持ち帰 って議論しなければ、とても経団連だって連合だって、上野委員に全部お任せするわけ にはいかないだろうし、久保田委員にお任せするわけにはいかない。そうすると、「お 前たちはいったいあそこでなぜ、お前たちの負担が増えるのを黙ってニヤニヤして見て いたんだ?」とこう、怒られることになってしまうわけです。  ということを考えると、一番強いのは、多分、地方の首長さんたちが一番強いんでし ょう。選挙であとは勝負すればいいんですから。だから、勝手なことを何でも言えるの だと思いますが、大体ほかの、組織で使われている人はみんな、なかなか言えない。と いうことなので、実は時間をかけながら周囲のイライラを待ちながらやっているという のが、多分、総務課長あたりの知恵ではないのだろうかと推測しているのです。  しかしながら、これではおもしろくないから、少し色々やり方を工夫したほうがいい のではないかというふうに思います。ただし、どういう格好でできるかというのは、実 は名前をつけて意見を言うわけですから、名前をつけた人が傷ついてしまうと、私とし ては、座長としては、そんな失礼な話はない。座長としては、そこらは非常に慎重にや りたいと思いますので、そこらはお酌み取りをいただいた運営をお任せいただきたいと いうふうに思います。よろしくお願い申し上げたいと思います。  ほかに何かご意見はございませんか。どうぞ、松原委員。 松原委員  本日は直接皆様のご意見を、文書ではなくてお聞きしたわけでございますが、私ど も、こういった制度を考える上で一番大切なことは、まず日本国民がどのような国にし てほしいのか、すなわち国のあり方の問題であると考えています。その中でやはり、河 内山委員がおっしゃっていたように、国民が安心して暮らせる制度の設計、これを行わ なければなりません。税金も保険料も、一見すると国のお金が税金のようですが、すべ て国民のお金です。国民のお金をどのようにして使うかという問題でございますから、 最終的には国民が安心して暮らせる制度を設計するというのが当然でございます。財政 のつじつま合わせだけで本当に国民の幸福が保てるのかと私どもは考えております。  先ほど、医療費の適正化という問題がございました。医療を提供する側から申します と、例えばGDPの比で考えますと、アメリカよりもはるかに低い金額、約半分の金額 で、日本の医療は運営されているわけです。そして、その結果として、少なくともアメ リカの平均的な方よりは、日本の国民のほうが医療について、かなり幸福な状態にある のではないかと考えております。確かに、一つ一つの事例については、余分な医療とい うものがあるのかもしれません。そういったものを是正していくのは当然のことであり ます。  今現在、私どものこの国が、このような制度の問題にぶつかっている一番大きな原因 は、急速に老齢化しているということと、そして医療が進歩しているということでござ います。「お年を取った方は、もうこの医療でいいのだ」というような決め方をされま すと、その方の将来受けるべき権利を剥奪することにもなりかねません。そういう面か ら考えますと、はたして75歳のところで、「昨日までは74歳でよかったですね。今日か ら75歳ですから、あなたの医療を受ける権利は制約されます」という制度をつくること が、本当に国民にとって安心して暮らせる制度なのかどうか。ということも、やはり議 論していただかねばならないのではないかと思っております。  本日は私、初めての出席でございますので、皆様の個々の熱意ある議論をお聞きし て、少し考えてみたいと思っております。以上でございます。 星野部会長  ありがとうございました。次回からはどうぞ、もっと積極的によろしくお願いいたし ます。  それでは時間もまいりましたので、今日はこの辺にしたいと思います。お願いは、本 日各委員から要求のあった資料については、ぜひ事務局のほうで資料として次回に提出 いただくように準備をお願いしたいと思います。次回の日程につきましては、事務局に よって調整の上、ご連絡することとしたいと思います。  本日は本当にお忙しいところお集まりいただき、なおかつ非常に実のある議論をして いただきましてありがとうございました。それでは本日は解散いたします。ありがとう ございました。                                    (終了)  (照会先)   厚生労働省保険局総務課企画調査係  (代)03−5253−1111 (内線)3218