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社会保障審議会第12回介護保険部会(4/26)での
主な意見を事務局においてまとめたもの


1.被保険者及び受給者の範囲の拡大に関する意見

 ○ 障害者、高齢者、児童という縦割りの福祉の考え方は限界ではないか。ケアマネジメントの範囲を考えても、高齢者介護においても障害者と同様に就労、住まい、家族の問題は重要なテーマであり、権利擁護、コスト意識等の問題は福祉全体で問われている。
 また、民間市場に開放された介護サービスの対象となることによって、障害者に対する差別がなくなっていくのではと思う。住まい、食事、外出等についても障害者、高齢者別々で検討すべきではないと思っている。 福祉の人材育成の見直しも避けられなくなってきている。専門学校でも、大学でも福祉の専門のコースができているが、それぞれの分野の縦割りではなく、福祉の専門家を育成していかなければいけないのではないかと思う。

 ○ 介護保険制度はさまざまな問題を抱えて出発したが、プラスの部分が多かったと思っている。
 ただし、2号被保険者にとってはほとんど社会保険と言える状態ではない。保険料を払っても15疾病しか給付の対象にならないわけで、真の意味での社会保険制度とは言えない。40歳〜64歳の障害者は保険料を払いながら15疾病以外は給付は受けられず、65歳になった途端に障害者も介護保険から給付が受けられるというのは大変理解し難い。64歳と65歳は何が違うのか。どう考えても40歳と39歳といった一人の人間を年齢で区切るのは無理がある。障害者の問題をどうするかということは制度出発のときから、それから年齢についても96年の老健審の報告の何年も前から検討され続けてきたわけで、今回そのことに何らかの結論を出さないといけないだろう。
 障害者の方々の意向、そして障害者と高齢者のサービスの何が共通なのかもう少し時間をかけて整理して、一定の結論を出すことが本部会に課せられた責任ではないか。

 ○ 国民がさまざまなライフステージで直面する生活課題に包括的で実効的な対応をすべきで、年齢差や障害別に制度をつくるのはいかがなものかと思っている。そういう視点から、障害者部会の意見がまだ十分に煮詰まっていないので少し僣越かもしれないが、やはり支援費制度と介護保険制度は一本化すべきだと思っている。ただ、もし介護保険制度に障害者福祉施策を取り込むということであれば、現状の保険制度を十分見直す必要がある。例えば被保険者を分けずに全年齢を通したものにする必要があるのではないかと思う。保険料についても被扶養者については医療保険のように扶養者が支払う仕組みがいいのではないか。
 その他いろいろな課題があるわけだが、障害者介護と高齢者介護において共通する部分と異なる部分を十分整理した上で、時間をかけて一元化すべきだと思っている。

 ○ 介護保険で高齢者介護は社会化された。同じように精神障害者や障害者の方の介護は北欧社会では社会化されているわけだが、日本ではまだ社会化されてない。それをどうするかという基本的な問題があるのではないか。
 公費で運営してきた障害者の支援費制度を社会保険制度の中に組み込むというのは相当な変化だ。基本原則を変えるわけで、簡単な話ではないと思う。
  財政面も重要な問題だが、制度の趣旨を変えるということは、サービスを受けている人にとって大きな変化を意味する。

 ○ 介護保険制度としては、被保険者範囲の拡大は制度設立当初からの議論で、我々は20歳から当然全国民が参加をする制度であるべきだと主張していたが、結局40歳以上となった。被保険者範囲の拡大はまず現在の介護保険制度の中で年齢を引き下げるかどうかにある。いきなり支援費制度との統合という言い方は非常に問題があると思っている。飛躍した議論になってしまう。
 老人の介護を社会化するには税金だけでは無理だということで、社会保険制度を導入した。数年かかって措置制度から社会保険制度へと進めてきた。障害者の支援費制度についてはまだよくわからないが、今回事務局は障害者制度の遅れを何とかしようと不退転の決意を持って取り組んでいることはよく理解できる。ただ、まず支援費制度を公的な社会保険システムにすることができるのか。もしそうすればどういう形になるのか事務局は示してほしい。そして、社会保険になった場合には障害者の方も保険料をある程度負担すべきだと思う。
 過去、障害者団体の方々は大変な苦労をされて予算確保を訴えてきた、障害者の方々が十分納得いく議論をしていかなければいけない。十分時間をかけて議論してほしい。

 ○ 資料にオランダの例が出ているが、考えなくてはいけないのは日本の介護保険は諸外国に比べて遅れているということ。介護保険は設立当初から対象者は20歳以上で、障害者を入れようということは検討されていた、今新たに言われていることではない。厚生労働省の責任もあるし、我々ジャーナリストも一般の人たちも遅れていると思うので、何とかカバーしたい。そのために、この見直しで障害者福祉も含めて検討していただきたい。時間をかけてもいいし、開催頻度を多くしてもいいのでやっていただきたい。
 高齢者介護も5年前は税金でやっていた、それを社会保険制度にするのは大変だった。そのことを思い出していただきたい。

 ○ 社会保険なので、負担と給付のリンケージを考えないといけない。ドイツの場合は被保険者は20歳からにしたので、障害に伴う介護を入れないと論理的な矛盾が起きる。ドイツは最終段階で障害者介護を入れた。日本の場合は障害者の問題がまとまりにくいということもあった。先程から各委員がご指摘されていることを全部解決しないといけないので、老化に伴う障害に対する介護ということで限定し被保険者40歳以上でスタートした。
 実際に成人になって事故で障害をおった場合に介護保険のサービスは受けられない。別に医療保険や他の税金でやればいいじゃないかと言うかもしれないが、難病患者のように制度の谷間に落ちている方はたくさんいる。市町村の努力だけでは手が回りきれていない。支援費ですら市町村は余りやらないところもある。その辺りはやはり検討しなくてはいけないと個人的に思っている。だから、被保険者の範囲と高齢者介護以外のものがどれだけ介護保険に入ってくるかという話は関連性がある。

 ○ 痴呆について、アルツハイマー病と脳血管性痴呆は65歳より前に発症した人も介護保険から給付を受けられる。もしそうなっていなかったらぞっとする。
 ただ、老化を伴わない痴呆症状、例えば高次脳機能障害等で痴呆になっても介護保険のサービスが受けられない若い人がたくさんいる。

 ○ 障害者部会でケアマネジメントの在り方を議論するということだが、ケアマネジメントを行う範囲が教育や就労、住まいにまで広がると非常に厳しい。ケアマネジャーの業務量が増え、質の担保が非常に厳しくなるので、このことについても障害者部会や本部会で議論していただければと思う。

 ○ 障害者を介護保険にいれることは誰かが求めているのか。団体から介護保険でやってほしいという要望があるのか。いろいろな問題点を抱えたまま介護保険制度は運用されており、まだ安定化していない。これらの問題をどうするか決めて、そして障害者の問題を検討すればいい。少し早過ぎるのではないか。
 介護保険になると1割負担になるわけで、障害者の方は現状より高い負担を強いられることになる。それでも障害者団体は介護保険を適用させてほしいと言っているのか。
 ケアマネジメントは一体どうするのだ。今の介護保険のケアマネジャーが知的障害者に対してどれだけの知識を持っているのか。そして、訪問調査員は十分な知識を持っているのか。我々は調査員に資格を設けて専門員にすべきではないかと主張している。さらに知的障害者が入ってくると調査員は戸惑うだけではないか。
 事務局の説明の中で外国の例を挙げていたが、ドイツは日本ほど充実した介護保険制度ではない。要介護認定を中度以上にすることで対象者を限定している。よく説明していただければ日本の方が優れているということになる。
 日本の介護保険制度は、今安定化しようとする時期だ。1クール終わってから障害者の問題をどうするか考えるべき。立派な制度が確立すれば、障害者の問題も決してないがしろにすべきではないと思うが時期尚早ではないか。

 ○ 介護保険の被保険者の範囲を広げることは極めて慎重であるべきだ。介護保険は加齢による要介護状態の改善を目的とした制度であり、現在の仕組みに至った経緯が過去の審議会等の議論からも十分に読み取ることができる。制度創設からまだ数年しか経っておらず、制度の趣旨そのものを変える状況にあるとは思えない。
 受益者になりうるとの理由で被保険者が40歳以上となっていることは、一定の理解ができるし納得感があるが、2号被保険者は1号被保険者に比べて圧倒的に利用が少ない。2号被保険者は自らが介護を受けるための負担というよりも、介護者としての負担をしている。
 被保険者の範囲を広げようという議論もあるようだが、それは介護に直面する状況の少ない世代に理解が得られないのではないかと思っている。また、年金など他の社会保障制度でも負担は増加しており、個々の制度改革の度に現役世代や企業の負担の増加を求められるのは納得が得られないのではないかと思う。
 さらに、若年の障害者を給付対象にすることについては財源の問題、サービス提供者の問題、介護サービスの多様性の問題など、いろいろな問題がある。若年の障害者は高齢者と違って、介護サービスに加えて移動介護による社会参加や就労支援が議論されていると聞く。現行の介護保険制度の枠組みの中で障害者向けサービスが、一体的、効果的に行えるか疑問だ。
 支援費制度が始まってわずか1年で、制度の検証も十分ではない。まずは支援費制度の中で適正化、効率化を図るべきだ。財源は、制度の見直し及び国と地方を合わせた徹底した行財政改革で確保すべきであり、安易な財源対策として介護保険制度を利用するというのでは納得感が得られない。

 ○ 障害者の方々を介護保険に取り込むということは、地方自治体の負担が生まれてくることになる。財政問題をどうするかについては近々決まっていくと思うが、介護保険と同じ制度で障害者の人たちを入れれば、保険者には負担が大きくのしかかってくる。しかし、今の財政力ではとても負担し得ない。せっかくいい案を作っても、実施する市町村側が猛反対をするということになると実現できない。
 障害者福祉は現行制度で充実させればいい。財政をどうするかも決まらないのにそのような議論をしても、市町村は財政的に負担に耐えられなくなるだけだ。


2.障害者部会等との関係に言及した意見

 ○ 限られた審議時間の中で議論するわけで、漠然と介護保険と障害者の施策を統合するとおっしゃられても難しく、多分委員全員のイメージが違うと思う。少し具体的にどういうことが論点になっていくのかを示していただかないと議論にならないのではないか。
 障害者部会の議論との関係はどうなのか。本部会が先に議論して何かを決めるということではないのではないかと感じている。

 ○ 支援費制度の総括もなく、唐突にかつ具体的にいろいろな資料が本部会に出ていることを非常に奇異に感じている。
 障害者部会でさまざまな課題を検討していくことが決まったということであり、直ちに支援費制度を見直すということではなく見直しも含めて今後検討していくということ。本部会が先走っていろいろ物事を考えること自体奇異に感じている。
 わずか1年で失敗と言われている支援費制度のフォローをするために、介護保険が泥をかぶるのかという思いだ。それよりも、被保険者範囲を40歳以上から20歳以上にするという問題はどうするのか。制度設立当時の厚生省は、10年たてば補助金も保険料も全部2.5倍になるという計算をしているわけで、要介護高齢者が増えて大変だという話は再々承っているが、財政問題も当初の予測範囲内であると思っている。しかし、国は4分の1の負担に耐えられるのだろうか。はっきりした考えを聞きたい。

 ○ 障害者部会で考えがある程度固まってから本部会で議論するのが当然だろう。ただ、三位一体改革の影響はどうなのか。支援費制度は財政的には国が半分、地方が半分だが、三位一体改革で国の負担分を一般財源化するという流れもある。そういったことも考慮すると本部会で議論するには余りにも荷が重いのではないか。
 また、障害者福祉は介護保険のフレームワークにフィットするのだろうか。介護保険は利用者1割負担で残りの9割の給付費の一部が保険料として各自治体の高齢者に跳ね返る仕組みになっている。障害者を取り込んだ制度が示されていないので分からないが、障害者が入ってきた場合、障害者の利用が多い市町村においてどのように負担が障害者に跳ね返ってくるのだろうか。65歳以上の高齢者の場合なら給付費の18%部分として返ってくるが、若年障害者は2号被保険者となり全国から自然に保険料が集まってくる仕組みになっている。現行の制度のまま障害者を取り込むと、地域保険になじまないのではないか。

 ○ 本部会で我々が全国の市町村に向かって、障害者福祉施策を止めて介護保険に持っていくということを言えるのだろうか。どう考えても我々のキャパシティーを超えていると思う。
 地方分権が叫ばれ、補助金の一般財源化が言われている。それに対して本部会が、このようなサービスの在り方では不十分で、介護保険と統合すべきだという結論を出し得るのか。本部会の意思決定としてできるのかということが疑問だ。


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