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サービス産業化、付加価値競争化に伴い、今後働く者には、如何に「分からないことに知恵をしぼるか」、「他人の考えを思いやれるか」が求められることになると考えられる。このような「知恵・思いやり」は、多様な意識を持つ「働く者」がその意欲や能力を最大限に発揮することにより最大の成果を生むものであり、そのためには、「仕事以外」の領域も含めた「生活」全体について心身ともに充実していることが不可欠となる。逆に企業にとっては、働く人の変化に雇用管理を合わせなければ、生産性の低下につながるおそれもある。 |
○ | さらに、我が国がこれまで世界有数の経済大国として確固たる地位を保ってこれたのも、高い技術力と勤勉性、忠誠心に富んだ優秀な労働者によるところが大きく、持続的成長が可能な経済社会を構築するためには、人材活用こそが重要であることに今後とも変わりはない。多様な個々人が生涯にわたって可能な限り意欲・能力を発揮できるようにするとともに、急速な人口構造の変化が進む中で、次代を支える意欲・能力を持った人材が早急かつ着実に育成されるよう、政労使が一体となって取り組むことが必要である。
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○ | このような点を踏まえれば、今後の我が国においては、働き方、働かせ方についての基本として、誰もが自分の生涯を見通し、その選択により「仕事活動」と家庭活動、地域活動、学習活動など「仕事以外の活動」との調和を図り、安心・納得できるようにしておくことの重要性が増しており、それに向けた労使の主体的な取組が求められる。 |
○ | その際、「仕事と生活の調和」の内容として最も重要となるのは、時間の調和である。生活時間の確保という観点からは強い拘束の下での著しい長時間労働そのものを抑制すること、代償措置として集中して働いた後はまとまった休暇を取得できるようにすること、一定以上の時間外労働を行ったときは必ず一定の生活時間が確保されるようにすることなどが考えられる。また、生活との折合いをつけつつ、高い成果を発揮しやすくするという観点からは、健康確保措置を前提に自主的な時間管理を可能とする働き方も考えられる。さらに、働く時間の多様化に伴う公正な処遇が確保されなければ、働く者の納得は得られず、意欲の減退につながることとなる。様々な長さや形態による労働時間の選択肢を整備した上で、自律的な選択を実現していくことが、働く者の意欲と能力の発揮のためにも、また企業にとっての有為な人材の確保や生産性の向上のためにも重要であると考えられる。したがって、今後の労働時間の短縮を考える場合には、従来のように全労働者の年間総実労働時間について一律に目標を掲げるのではなく、個々の労働者がライフステージに応じて希望する働き方を実現することにより結果として社会全体で見た場合の労働時間短縮の達成が図られることを基本とした取組が求められる。 |
○ | 加えて「仕事と生活の調和」については、個々人が職業キャリアを含めた人生キャリアを形成・展開していく中で連続的に考えられるべきである。人生において、ある時期では仕事を優先し、別の時期は家族を優先し、さらに別の時期には自分を優先するなど、状況に応じて重心を移しながら全生涯を見渡したときは充実感を感じられるようにするといった長期的視点からの調和も重要と考えられる。仕事に集中したい時期はうんと働き、子育て期には労働時間を減らすといった労働時間の柔軟化は、最近顕著化している世代間の労働時間格差の平準化にもつながるものである。 |
○ | 従来、ひとつの企業の中での単線的なキャリア形成を念頭に置いてキャリアの形成や展開に関する施策を推進してきたため、ともすれば育児・介護、ボランティア活動、学習などを理由に職場を離れることを「職業キャリアの中断」として消極的にとらえがちであった。しかし、個々人の意識や行動が多様化するとともに、企業や社会において多様な価値観を持った人材ひとりひとりの能力発揮が求められる中で、こうした「職業キャリアの中断」についても、人生キャリアを形づくる上での貴重な過程として前向きにとらえ直していくことが必要である。そうした観点から、労働力の質・量の充実、就業率の向上を主に念頭に置いて展開されてきた従来の労働政策について、働く者の生涯にわたる「仕事と生活の調和」を実現するため、地域での活動、家庭での活動、起業等、個々人の社会との様々な関わり方について広く支援することを視野に入れたものとしていくことが求められる。 |
○ | 「仕事と生活の調和」という考え方は、企業にとってはより独創性と工夫に富んだ従業員の貢献に不可欠であるとともに、優秀な人材の確保にも資する。働く人々の人間力の向上を阻害しない企業活動を行うという社会の一員としての要請にもかなうものとなる。また、働く者にとっては、仕事と生活のメリハリがある、より充実した生涯につながるものとなる。社会全体としても、持続的成長、次世代育成支援につながるものとなる。 |
○ | ただし、働く者にとっては、自助努力による意欲・能力の維持・向上、会社任せの職業キャリアの形成からの脱却など、これまで以上に会社からの自立を図り、確固とした個人として自らの選択や決定に責任を持ち、積極的に社会参加していくことが求められることになる。仕事と生活の調和を図る上では、学校教育段階も含めた若年期から個人の自立・自己責任意識をどう高め、そうした意識を各人の職業キャリアの展開にどうつなげていくかが非常に重要となる。 |
○ | また、「仕事と生活の調和」を図る上で、世帯としての生計確保について留意が必要である。個人が仕事のウエイトを下げれば収入の減少は避けられなくなるが、その対応として夫婦がともに家計の支え手となることが考えられる。また、ダブルジョブ、マルチジョブなど自由度の高い働き方を組み合わせることにより収入水準を確保するといった対応も考えられる。収入確保に係る役割分担について様々なパターンが可能となるような環境整備も必要となってこよう。 |
○ | 同時に、こうした働く者の収入を取り巻く環境変化の中にあって、労働市場における賃金の下支え機能を有する最低賃金制度について、そのセーフティーネットとしての機能が十分に発揮されるようにしていくことも必要である。 |