○ | 働き盛り期の労働者が老後生活への不安を持たずに日々を送れるようにすること、長期の家族介護や高等教育機関への通学等のため職業生活の途中で働き方を見直した者が将来への不安を抱かずに暮らせるようにすること、定年退職等で仕事を離れた者が安心して地域社会での様々な活動に取り組めるようにすること等は、「仕事と生活の調和」を実現する上で重要な課題であるが、いずれも賃金収入の大幅な減少等に伴う所得の確保という問題を内包しているのではないか。
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○ | 人口の高齢化に伴い老後生活の期間が長期化する中では、賃金収入の大幅な減少期である高齢期、とりわけ、公的年金の支給開始年齢までの間の一定の所得の確保が欠かせないのではないか。国民の老後所得を保障するための公的年金に加えて、これを補完する退職金・企業年金についても、その果たす役割及び在り方について検討を加えることが求められるのではないか。
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○ | 退職金・企業年金の在り方について検討する際には、企業間競争の激化に伴って、個々の企業が労働者に雇用を保障できる期間は相対的に短くならざるを得ず、また、従業員に対する福利厚生についても見直しを迫られているという現状に留意することが必要ではないか。
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○ | こうした中、退職金・企業年金の在り方に関して、政府にはどのような姿勢で臨むことが求められるか。労使の主体的な取組を前提に個々の労働者の自助努力を基本としつつ、「仕事と生活の調和」の実現の観点から、見直すべきところは見直し、支援すべきところは支援するという視点が必要ではないか。
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○ | こうしたことを踏まえ、現在の退職金・企業年金の在り方や関連する国の制度の見直しについてどう考えるか。例えば、以下の点についてどう考えるか。
(1) | 退職所得控除の勤続年数要件の在り方
・ | 退職一時金は、同一企業での勤続年数が基礎となって支給総額が決定されており、「賃金の後払い」の性格を有するとの指摘や、勤続年数比例を上回って逓増する設計により従業員の定着等を図る企業が多いとの指摘などがなされている。
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・ | このような退職一時金の特性そのものに変更を加えることは困難であるとしても、政府として、その特性を保持、強化させるか否かについては、「仕事と生活の調和」の観点からの検討が必要ではないか。特に、所得税法における退職所得控除の勤続年数要件(勤続年数20年を超えた者についての20年を超える部分の1年当たりの控除額の在り方)についてどのように考えるか。
* | | 所得税における退職所得控除額
勤続年数 |
退職所得控除額 |
20年以下 |
勤続年数×40万円(80万円に満たない場合、80万円) |
20年超 |
(勤続年数−20年)×70万円+800万円 |
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・ | ただし、この要件の見直しを行う場合には、例えば、単に20年超の期間における1年当たりの控除額を40万円に合わせるならば、長期勤続の労働者に対する課税強化になるが、労働者の自発的なキャリア形成の促進を図るなど「仕事と生活の調和」の観点から、労働者が自己啓発を行う際に要した一定以上の費用を所得税法上の所得控除の対象とするといった措置を同時に講じる必要があるのではないか。
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・ | なお、現行制度の下では、中小企業従業員や、大企業従業員のうち高卒者に支給されるモデル退職金は、その全額が控除される水準にあり、退職金が老後資産としての重要性を増す中でこうした実態にも十分配意した議論が求められるのではないか。 |
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(2) | 加入者資格における所定労働時間・雇用期間の要件
・ | 退職金・企業年金制度の加入者資格における所定労働時間及び雇用期間の定めについては以下のとおりである。
【厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出企業年金(企業型)】
所定労働時間: | 一般労働者の4分の3に満たない者は対象者とならない。 |
雇用期間: | 2か月以内の期間を定めて使用される者は対象者とならない。 |
【中小企業退職金共済】
所定労働時間: | 週所定労働時間30時間未満の短時間労働者は対象としないことができる(ただし、短時間労働被共済者については、最低掛金月額を通常の労働者の5000円より低い2000円とし、その加入を促進)。 |
雇用期間: | 期間を定めて雇用される者は対象としないことができる。 |
┌ │ │ │ │ │ └ |
【適格年金(平成24年3月末には廃止されることとなっている。)】 自主審査要領において、「雇員、準社員等」を対象としない退職金規程の場合、これらの者を加入者から除外することに正当な理由があるとみなされることとされており、一般に短時間労働者や有期労働者を除外することは差し支えないこととされている。 |
┐ │ │ │ │ │ ┘ |
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・ | この結果、所定労働時間が短い働き方を選択する労働者は、それが一時的なものであっても、所定労働時間が短いというだけで、退職金・企業年金制度への加入が制約されている。
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・ | しかし、「仕事と生活の調和」を実現するうえで、所定労働時間の短い働き方は重要な働き方のひとつであり、こうした働き方の者についても長期間働いていれば、退職金・企業年金制度への加入が認められるようにすることが、高齢期の所得確保に資することとなるのではないか。
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・ | このため、「仕事と生活の調和」の実現に向けた環境整備の一環として、各制度において企業への貢献度を反映できる要素は残しつつも、その加入者資格について、多様な働き方を阻害することになっている部分を見直し、働く者の目で見て安心、納得を得られるような制度に改めていく必要があるのではないか。具体的には、所定労働時間の要件を低いもの(例えば週20時間以上)へ見直すことなどが今後の課題として位置づけられないか。 |
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(3) | ポータビリティの向上
・ | 産業構造の変化に伴う労働移動の増加等に伴い、転職者の高齢期における所得確保のために、転職先への原資の移換を容易にする(ポータビリティの向上)という視点で対応してきたところであるが、制度を設けるか否か自体が任意の制度であって、今後は従前ほどには普及が見込めなくなる可能性が高いものについては、強制加入の制度と同等に利用しやすくするといった調整には限度があるのではないか。
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・ | なお、中小企業退職金共済制度においては、これまで中小企業退職金共済契約を締結できる事業主の範囲を逐次拡大するとともに、労働者が転職した場合の掛金納付月数の 通算措置の見直し等を行ってきたが、今後、「仕事と生活の調和」の観点から、さらに、中小企業退職金共済契約を締結できない大企業に転職した場合等であっても、本人の希望に応じ、加入を継続できる仕組みを設けることを検討するとするならば、現行の制度の基本(労働者が企業を退職した時に退職金を支払う)について見直しを行う(例えば、年金支給開始年齢以降に分割支給することも認める)必要があるのではないか。 |
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(4) | 調和の実現に向けた自助努力への支援
・ | 意欲ある高齢者の就業機会の拡大、厳しい経営環境の下での企業の競争力の維持など様々な観点から、今後、賃金カーブの一層のフラット化は避けて通れないと考えられる。
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・ | こうした中で賃金における「生活給」の要素は趨勢的に薄らいでいくものと予想されるが、「仕事と生活の調和」の観点からは、育児・教育・介護・住宅取得・長期休暇などライフステージの各段階での多様な取組が重要となる。そうした取組に際しては、直接・間接に資金の裏付けが必要となるが、そのための資金は、まずもって、個々の労働者が用意することが重要であり、若年期から自助努力で確保していこうという労働者に資産形成の道を開いておくことが重要ではないか。
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・ | このため、勤労者財産形成促進制度については、経済社会環境の変化に応じ、時代の要請に合ったものへと見直していく中で、「仕事と生活の調和」に資する分野における新たな展開として、例えば資産形成が十分でない段階における「還元融資」の充実といったことを視野に入れて制度を見直すことが考えられるのではないか。その際、民業を圧迫することのないような制度としていくという視点も不可欠ではないか。
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・ | 併せて、広い意味でのキャリア教育の一環として、職業生活に入る前の時期や、腰を据えて人生設計を考え始める時期など、様々な段階において自助努力による資産形成の意義や関連制度の概要について、十分な啓発や情報提供を実施していくことが必要ではないか。 |
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○ | また、離職理由による退職一時金の支給率格差を縮小させる必要性についてどのように考えるか。
・ | 退職一時金の給付額について、多くの民間企業が離職理由による差(自己都合退職者に対する支給率の減)を設けており、「長期の家族介護、自己啓発、ボランティアなど生活上の事情から自己都合退職した者」等への支給額が、会社都合退職者した者への支給額と比較して、相当低いものになっている。
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・ | 退職金制度の導入は、企業として任意に行い得るものであり、企業が従業員の離職を抑制することも考慮して制度設計を行うことに問題はない。しかしながら、自己都合退職金の会社都合退職金に対する比率は縮小していることを踏まえつつ、「仕事と生活の調和」の観点から、労働者がキャリア形成等のために自ら転職を行うケースが増える可能性に照らせば、離職理由ごとの退職金支給率についての格差の縮小について、前向きにとらえることもできるのではないか。こうした格差の縮小の背景のひとつには、経営環境の急速な変化に即応するため、従来に比べて、中途採用による人材確保・登用を迫られている企業側の事情もあると考えられるのではないか。 |
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