はじめに
本報告書は、平成13年6月下旬に行われた第15例目の脳死下での臓器提供事例に係る検証結果を取りまとめたものである。
ドナーに対する救命治療、脳死判定等の状況については、まず臓器提供施設からフォーマットに基づく検証資料が提出され、この検証資料を基に、医療分野の専門家からなる「医学的検証作業グループ」が、臓器提供施設の担当医から救命治療、脳死判定等の状況を聴取して評価を行い、報告書案を取りまとめている。第10回脳死下での臓器提供事例に係る検証会議(以下「検証会議」という。)においては、臓器提供施設から提出された検証資料及び当該報告書案を基に検証を行った。その際、当該施設から提出されたCT写真、脳波等の関係資料を参考に検証している。
また、社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)の臓器のあっせん業務の状況については、ネットワークから提出されたコーディネート記録その他関係資料を用いつつ、ネットワークのコーディネーターから一連の経過を聴取し、検証を行った。その際、ネットワークの中央評価委員会における検証結果を踏まえながら検証を行っている。
なお、今回の臓器のあっせんに当たっては、ドナーの生前意思の取扱いについて、ネットワークから厚生労働省に照会があり、厚生労働省からの回答を受けた形でのあっせんが行われているため、厚生労働省の見解を聴取し、その見解に対する検証を含めて検証作業が行われた。
本報告書においては、ドナーに対する救命治療、脳死判定等の状況の検証結果を第1章として、ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果を第2章として取りまとめている。
1.初期診断・治療に関する評価
(1) | 脳神経系の管理について
| ||||
(2) | 呼吸器系の管理について 本症例は酸素投与を受けつつ搬送されている(搬送中の意識水準はJCS1)。救急外来で気道確保のため、経鼻エアウエイが挿入されている。17:10に人工呼吸管理となっている。以後の経過に特記すべき問題はない。 | ||||
(3) | 循環器系の管理について 救急外来から集中治療室に移動した後、JCS300となる時点までの間は、ニカルジピンを断続的に使用し、また、脳ヘルニアが完成したと思われる時点、すなわちJCS300となってからはドパミンを持続的に投与している。後者は漸次増量傾向となったが、動脈血圧は全経過を通して適切な水準に維持されている。 | ||||
(4) | 水電解質の管理について いわゆる細胞外液剤、脳圧降下剤の投与により、低K血症が生じたが、これについては適宜補正が行われている。また、治療終了時(終末期)には脳圧降下剤の投与に伴う脱水傾向のため高Na血症となっている。しかし、治療経過全体にわたって、良好な水電解質管理が行われている。 |
(1) | 脳死判定を行うための前提条件について 本症例は、発症51分後に当該病院に搬送された。到着時、JCS1で片麻痺がみられた。直ちに行われたCTでは、右基底核から視床にかけて大きな脳内血腫が認められた。救急処置中に徐々に意識レベルは低下し、瞳孔不同、失調性呼吸が認められたため、来院2時間4分後に気管内挿管を行い、人工呼吸器を装着している。 失調性呼吸から人工呼吸を必要とする状態になり、高度の意識障害、対光反射消失が認められること、及び大動脈弁置換手術を受けワーファリンを服用中であることから血腫除去手術は行わず、保存的治療が行われた。その後、6月28日22:25に深昏睡、瞳孔散大となり自発呼吸が消失した。 本症例では、6月30日5:30に臨床的脳死と診断され、発症から11時間14分後に第1回法的脳死判定が行われ(終了:6月30日20:07分)、その6時間後に第2回法的脳死判定が行われた(終了:7月1日4:13)。本症例は前段の(1)~(4)で詳述したところから、脳死判定対象例としての前提条件を満たしている。 すなわち
|
(2) | 臨床的脳死診断及び法的脳死判定について
|
(注) | 枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。 |
1. | 初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
【評価】
|
2. | ドナーの医学的検査等
【評価】
|
3. | 脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
【評価】
|
4. | 臓器の搬送
【評価】
|
5. | 臓器摘出後の家族への支援
【評価】
|