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第3回抗がん剤併用療法に関する検討会 議事要旨


厚生労働省医政局研究開発振興課
厚生労働省医薬食品局審査管理課


○日時 平成16年5月7日(金)14:00〜16:00
○場所 厚生労働省専用第18-20会議室


出席者
(有識者)
有吉  寛 県立愛知病院名誉院長
北島  政樹 慶應義塾大学医学部長・外科学教授
黒川  清 東海大学教授/綜合医学研究所長、日本学術会議会長
西條  長宏 国立がんセンター東病院副院長
佐々木 康綱 埼玉医科大学医学部教授(臨床腫瘍科)
谷川原 祐介 慶應義塾大学医学部教授・薬剤部長
藤村  重文 東北厚生年金病院院長
堀田  知光 東海大学医学部教授
堀内  龍也 群馬大学医学部付属病院薬剤部長
渡辺  亨 国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

(オブザーバー)
米国研究製薬工業協会
欧州製薬団体連合会
日本製薬工業協会

(事務局)
岩尾總一郎 医政局長
阿曽沼慎司 医薬食品局長
安達 一彦 医政局研究開発振興課長
岸田 修一 医薬食品局審査管理課長


議事
 1.開会
 2.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(報告書案)
(1)乳がん AC療法
(2)乳がん パミドロン酸の用量追加
(3)骨・軟部肉腫 イホスファミド
(4)骨・軟部肉腫 ドキソルビシン
(5)小児固形腫瘍 ドキソルビシン
(6)小児固形腫瘍 エトポシド
(7)小児固形腫瘍 イホスファミド
 3.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(抗がん剤併用療法における医薬品の使用について)
 4.その他


配付資料
 資料 1 抗がん剤併用療法に関する検討会 名簿
 資料 2 抗がん剤併用療法に関する検討会 運営要綱
 資料 3 抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループ作業の進行状況
 資料 4―1 乳がん AC療法
 資料 4―2 乳がん パミドロン酸の用量追加
 資料 4−3 骨・軟部肉腫 イホスファミド
 資料 4−4 骨・軟部肉腫 ドキソルビシン
 資料 4−5 小児固形腫瘍 ドキソルビシン
 資料 4−6 小児固形腫瘍 エトポシド
 資料 4−7 小児固形腫瘍 イホスファミド
 資料 5 今後のスケジュールについて
 当日配付資料 抗がん剤併用療法の効能追加等に係わる適正使用確保の方策について(案)


議事要旨
1.開会
事務局より、開会の挨拶が行われた。
4月1日付の人事異動に伴う研究開発振興課長の交代について報告があった。

2.抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループ(WG)からの報告について(報告書案)
事務局より以下の説明があった。
【WGでの検討内容について】
 ・第2回抗がん剤併用療法に関する検討会で承認された第一陣の21候補について担当者を決めエビデンスにかかる報告書(案)の作成を開始した。(資料3)
 ・小児領域はWGに担当者が1名しかいないため、日本大学板橋病院の陳基明氏及び九州がんセンターの永利義久氏の2名を班員に追加した。
 ・WGは3月19日の第2回検討会以降2回の会合をもち、報告書(案)の内容等について検討を行った。
 ・今回は短時間だったこともあり、報告書(案)の整備状況から勘案して7候補を第3回検討会へ上程することとした。
 ・残りの候補品目につてはWGで報告書(案)を精査し、次回以降の検討会へ上程する予定。

参考人として招致した国立がんセンター中央病院 藤原康弘氏より下記のような説明があった。
【統一的見解を持って報告書を作成するために、次のような基準を定めた。】
 ・医学・薬学上の公知の基準として、無作為化比較試験あり、国際的標準教科書記載あり、peer-reviewed journalの総説・メタアナリシスあり、国際的な診療ガイドラインあり、国内での使用実績に関するエビデンスありの5つのクライテリアを用いた。ただし、小児領域、整形科領域のように世界的に見ても無作為化比較試験が行われていないものに関しては、必ずしも無作為化比較試験にはこだわらない。
 ・用法・用量の変更がある場合、提示された用法・用量が公知だといえる理由を明確にする。
 ・安全性に関するデータは特に重視されるので、その点については特に留意し報告書を作成する。
 ・公表されているデータについては出典、webページのアドレス等を掲載する。

乳癌領域について、国立がんセンター中央病院の藤原参考人より次のような説明があった。
【ドキソルビシン(AC療法)について】(資料4-1)
 ・用法・用量の変更について報告書を作成。
 ・投与量の妥当性について、2つの大規模な無作為化比較試験データをもとに医学薬学上公知と判断した。
 ・国内での使用状況については、AC療法があまりにも標準的に使用されているため、論文として公表されたものは存在しないが、現在報告書に記載した無作為化比較試験が順調に進行中であり、公知と判断した。なおこの臨床試験で現在225例に使用経験があり、1症例に心毒性の副作用が報告されているが、それ以外については特に問題なく使用できており、安全性については特に問題ないといえる。また国内での使用実績についても医学薬学上公知の基準を満たすと判断できる。

【パミドロネートについて】(資料4-2)
 ・溶骨性骨転移への効能追加及び用法・用量の変更について報告書を作成。
 ・エビデンスについては海外で無作為化比較試験をはじめとする多くの報告がなされており、公知と判断した。
 ・投与量については、用量を増やすことで有害事象が増加することなく、有意に効果が認められた。
 ・プラセボ群との無作為化比較試験でも骨合併症の頻度を有意に押さえることができる。
 ・2年以上の使用については、海外の報告等からも安全に使用できると判断できる。

【質疑応答】
 ・(質問)ドキソルビシンについて他の領域においても適応外使用がなされている現状があるので、癌腫横断的に整理する必要があるのではないか。→(回答)他の領域については現在WGで検討中である。
 ・(質問)AC療法の術前使用について、何をもって公知と判断したのか。→(回答)報告書については現在使用されている現状について記載しており、(術前)・(術後)などの効能・効果の書きぶり等添付文書の整備については、審査を経て承認される際のこととなるので、行政に判断を任せたい。
 ・(質問)パミドロネートについて低用量(45mg)でも有効性があるという報告があるが、その点についてはどう考えるか。→(回答)そのような報告があるのは事実であるが、ディスカッション等を詳しく見ると高用量(90mg)での効果が高いことが判断できる
 ・(質問)パミドロネートについては第3世代の薬剤が開発されているが、その点についてどう考えるか。→(回答)用法から見ると患者へのメリットは大きいと考えられるが、差別化については新しい薬剤が市場に出てからの検討事項と考える。有効性については海外のガイドラインで優劣はつけがたいとの報告がされている。
 ・(質問)それぞれの薬剤について、PK、PDのデータを審査の際に資料として提出した方がよいのではないか。→(回答)承認の判断資料としてあえてPK、PDの試験を行う必要は無いと考える。承認後に試験を行ってデータを集めていくことを考えている。

整形外科領域について、国立がんセンター中央病院の川井参考人より次の説明があった。
【イホスファミド(資料4-3)、ドキソルビシン(資料4-4)】
 ・悪性骨・軟部腫瘍の効能追加について報告書を作成。用法・用量については現行の他の効能で取得している内容と同じである。
 ・公知と判断した無作為化比較試験等の論文について要点の説明があった。
 ・国内での使用状況については、134件の公表論文が報告されていることからも、十分な使用経験があると判断した。
 ・イホスファミドの安全性について、出血性膀胱炎の特異的予防薬であるメスナについて説明があった。
 ・ドキソルビシンについては、用量規制因子として骨髄抑制、総投与量を規制するものとして心毒性がある。

【質疑応答】
 ・(質問)整形外科領域では複数の薬剤を使用して治療を行うケースがあるが、AI療法の承認で治療方法が簡略化され、医療過誤が減ることは考えられるか→(回答)客観的なデータはないが、治療する側から見ると使用しやすくなる。
 ・(質問)整形外科領域に適応を持った薬剤が少ないのは整形外科領域での抗がん剤による治療が少なかったのではないか。本療法が承認されることで、今まで抗がん剤を使用していなかった医師が使用出来るようになり、危険が増えるのではないか→(回答)各拠点病院には整形外科領域の専門医が十分育ってきているので、あまり心配する必要はないと考えられる。
 ・(質問)ドキソルビシン単剤と併用療法とで生存率に差は認められないが、その点についてどのように考えるか。→(回答)生存率については差が認められないが、細分化してみてみると多剤併用には局所再発を抑えるなど有効性が認められる。
 ・(質問)イホスファミドについて、投与量については何を根拠に設定したのか→(回答)推奨用量については、使用経験より現在国内で使用されている投与量より少な目に設定している。
 ・(質問)イホスファミドはセカンドラインで使用することが多いと思うが、その点についてどのように考えるか。→(回答)悪性軟部腫瘍に対するシクロホスファミドとイホスファミドの優劣については、無作為化比較試験でイホスファミドの方が有効であることが示された。
 ・(質問)ドキソルビシンの投与法を60〜75mg/m2を3日おき投与にしたのはなぜか。→(回答)2〜3日の分割投与の方が報告が多かったため。

小児領域について、国立がんセンター中央病院の牧本参考人より次の説明があった。
【ドキソルビシン(資料4-5)、エトポシド(資料4-6)、イホスファミド(資料4-7)】
 ・効能追加及び用法・用量の変更について報告書を作成した。
 ・小児固形がんについては症例数が非常に少ないため、癌腫横断的に報告書を作成した。
 ・用量設定方法についてはある程度幅をもって設定している。
 ・現在小児固形腫瘍に対して適応を持っている薬剤は、オンコビンとメルファランの2剤のみである。これらの薬剤のみでは十分な治療効果は得られない。
 ・予想しうる副作用に十分な支持療法を行ったとしても、合併症死に至る症例が少なからず発生する。
 ・ドキソルビシンについては、持続点滴が追加事項となる。持続点滴の方が心毒性が少ないとの報告がある。
 ・ドキソルビシンの心毒性については、若年患者により高頻度に出現するというデータがあるので、1歳未満への投与は更に減量して使用する必要があるが、総量に関する論文はない。経験上200mg―300mgと考える。
 ・エトポシド及びイホスファミドについてはセカンドラインで使用するケースが多い
 ・エトポシド及びイホスファミドについては併用で使用することが多い。
 ・エトポシド及びイホスファミドの用量については現行どおり。
 ・エトポシドについては2次発がんの問題があり、使用を抑制する傾向にあるが、疾患によっては本剤を併用することで生存率が延びるケースがあり、ファーストラインで使用することがある。
 ・エトポシドの2次発がんについては既に添付文書に記載があり、報告書に新たなデータとして記載すべきことはない。
 ・イホスファミドについては整形外科領域とほぼ同様。総投与量については、小児は化学療法に対し非常に感受性が高いため、整形外科領域より低く設定した。

【質疑応答】
 ・(質問)ドキソルビシンの長時間の持続点滴は小児に対し非常に苦痛を与えることになると思うが、その点についてどのように考えるか。→(回答)点滴をする際は必ず中心静脈をとおして行うので注射による苦痛はないと考える。
 ・(質問)ドキソルビシンの持続点滴と短時間点滴とで心毒性の発生頻度にどの程度の違いがあるのか。→(回答)発表されたデータはないが、実際に持続点滴が多用されており、経験上からも持続点滴の方が安全に投与出来ると考える。
 ・(質問)年齢の要因は投与量の設定に影響を与えるものなのか。→(回答)ドキソルビシンについては、特に1歳未満に使用する際には注意書きの記載がある。
 ・(質問)小児がんについては成人よりかなり強力な化学療法を行うため、重篤な副作用に十分対応できる環境で治療を行わなくてはならないが、小児領域におけるがん専門医はいるのか。→(回答)現在のところ、がん治療学会、臨床腫瘍学会などが公認したがん専門医はいないが、今後体制を作っていくことを考えている。
 ・(質問)疾患横断的に適応を拡大すると併用療法を行う際、相手となる薬剤が適応を持っていないケースが出てくることが考えられるが、WGでどのような議論がされたのか。→(回答)小児については、今回上程した3候補である程度カバーできると考える。それ以外の薬剤については、エビデンスを収集し、報告書を順次本検討会に上程していくことを考えている。
 ・(質問)添付文書の効能・効果の欄に病名のみでなく使用方法等についても記載すべきではないか。→(回答)効能・効果については変更するのが大変であるため広めにとっておき、事務局レベルで変更可能な使用上の注意等で対応していくのが現実的であると考える。

【その他】
 ・(質問)本検討会を通して承認された薬剤については、最終的な責任は誰が負うのか。→(回答)薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会で審査し厚生労働大臣が承認するので、法律的な責任は厚生労働省が負うことになる。
 ・(質問)事前評価にかけた時点から特定療養費の対象となるが、一方で、昭和55年の通知により、理由書を付して保険の審査を通していた場合もあるので、医療現場が混乱することが予想されるが、どのような対応を考えているのか。→(回答)保険局で議論されている。
 ・今回のスキームについては治験を行わずに承認するため、何らかのかたちで安全性のデータを蓄積する必要があり、学会の既存のデータベースを利用してデータの蓄積を行う等、学会と厚生労働省で協力して行っていく必要がある。そのためにはなんらかの財政的な助成が必要であり、その点について厚生労働省に検討して頂きたい。

【まとめ】
 ・本日上程された7候補については本検討会の了承が得られた。
 ・本検討会での意見を踏まえ、事務局及びWGで再度修正を行い、5月21日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において事前評価をいただく。修正後の報告書については、座長に一任する。

3.抗がん剤併用療法における医薬品の使用について(当日配付資料)

事務局より資料についての説明がなされた
【安全確保の必要性について】
 ・抗がん剤はそもそも毒性が強く、毒性ぎりぎりのところで有効性を発揮する性質のものであり、併用や用量の増加等により、治療関連死も十分起こりうることがあることを前提に、適正に使用して頂くための方策を考える必要がある。
 ・「医学薬学上公知」の判断基準として以下のクライテリアを挙げているが、全てを満たすものは必ずしも多くはない。
>無作為化比較試験あり
>国際的標準教科書記載あり
>peer-reviewed journalの総説・メタアナリシスあり
>国際的な診療ガイドラインあり
>国内での使用実績に関するエビデンスあり
 ・可能な限り想定される治験関連の死亡等を未然に防ぐための適正使用を確保することが必要である。

【適正使用を確保するための方策(案)について】
抗がん剤という薬剤の本来の性質を考慮し、以下のオプションを提示する。これらのオプションは単独ではなく、組み合わせでの対応も考えられる。
 (1)緊急時に十分に措置できる医療施設及びがん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとでの使用を求める
 (2)治療法の内容、副作用、致命的となる症例があること等の本剤のリスクに関する患者への説明と同意の実施
 (3)学会を通じた医師等に対する関連企業や国への重篤な副作用の報告等の励行についての啓発

【意見交換】
 ・承認条件については一定の情報を集め、薬事・食品衛生審議会における事前評価の中で個別に検討を行う。
 ・検討会での意見を踏まえ薬事・食品衛生審議会における事前評価までに、さらに適正使用の確保等について事務局としても検討を行う。
 ・使用経験が少ない医師が使用した場合はどうするのか。
 ・使用制限について制度化する必要があるのか意見がほしい。また、制度化しなければどのような対応をとるのか。→この件については厚生労働省と医師側とでよく議論して決める。

【まとめ】
 ・検討会でいただいた意見を事務局にてとりまとめ、適正使用を確保するための方策(案)に反映させ、事前評価までに具体的な案をまとめる。

4.その他
第4回検討会は、WGより提出される報告書の審議等について、6月までに開催する予定である。


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