04/04/14 社会保障審議会障害者部会(第8回)の議事録            第8回社会保障審議会障害者部会議事録     日時  :平成16年4月14日(水)14:00〜17:30     場所  :厚生労働省17階 18・19・20会議室     出席委員:京極部会長、嵐谷委員、安藤委員、猪俣委員、江上委員、          岡田委員、岡谷委員、加藤委員、亀井委員、北岡委員、          君塚委員、古畑委員、斎藤委員、笹川委員、新保委員、          高橋(清)委員、高橋(紘)委員、武田委員、丹下委員、          妻屋委員、堂本委員、徳川委員、永井委員、広田委員、          町野委員、松友委員 ○京極部会長  ただいまから第8回社会保障審議会障害者部会を開催させていただきます。委員の皆 様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。そ れでは事務局から人事異動もありましたので、新たな職員の御紹介もあわせて委員の出 席状況及び資料についての説明をお願いいたします。 ○間企画課長補佐  まず、この4月1日付で厚生労働省内で人事異動がございましたので、新たに障害保 健福祉部に着任をいたしました職員を御紹介をさせていただきます。まず企画課の国立 施設管理室長、前社会参加推進室長の金井博でございます。社会参加推進室長の江波戸 一敏でございます。企画官の大島一博でございます。精神保健福祉課社会復帰対策指導 官の坂崎登でございます。この他本日は出張のため欠席をさせていただいております医 療監察法医療体制整備推進室長の平田強がございます。  また、委員の出欠状況でございますが、本日は小林委員、末安委員、津久江委員、西 島委員、福島委員から欠席との御連絡を頂戴しております。また岡谷委員、永井委員、 広田委員が遅れておられるようでございます。  続きまして資料のご確認をお願いいたします。お手元に配布させていただいておりま す資料は資料番号にそって申し上げますと、資料1といたしまして「論点整理」、これ までも何度もお出しをしているものでございます。それから資料2として「前回までの 議事概要」というものでございます。これまでの御議論をまとめたものです。それから 資料3といたしまして「障害者の就業状況について」という資料がございます。そして 資料4といたしまして「福祉施設から一般就労への移行状況」といった資料があろうか と思われます。 そしてこれから三つは今日御意見発表をいただきます委員の皆様方の 資料でございますが、資料5として丹下委員の提出された資料がございます。資料6と いたしまして「障害者の就労支援について」と題されました斎藤委員から御提出をいた だいた資料がございます。そして資料7としまして、きょうされんの藤井常務理事から 御提出をいただきました「障害のある人々の就労分野をめぐる課題」と題されました資 料がございます。  それから資料8として「障害者の住まいの状況について」という資料がございます。 そして最後に資料9といたしまして「地域生活支援検討会における住まいの確保に関す る意見について」というものがございます。そして会議が始まる前にお配りさせていた だきました一部訂正の資料がお手元にあろうかと思います。  そして前回の議事録を委員の皆様方の机の上に置かせていただいてございます。御発 言内容等に誤りなどがございましたら、次回4月28日(水)までに事務局までお知らせ いただければと存じます。また資料の不足等がございましたら御指摘をいただきたいと 存じます。 ○京極部会長  それでは議事に入ります。なお町野委員が所用で途中で退席されますので、よろしく お願いいたします。当部会では当面、今後の障害者施策の体系制度の大きな方向性を議 論していくことにしておりますが、前回は障害者自立支援のための保健福祉施策の体験 の在り方のうち、ライフステージ等に応じたサービス提供について御議論をいただいた ところでございます。論点整理の紙をご覧いただければと思います。今回はアンダーラ インが引いてあります論点整理の就労支援のところと、それから住まいの確保を中心に 御議論をいただきたいと思います。  それではまず就労支援について議論を進めてまいりたいと思います。本日は事務局か らの説明だけではなくて、日頃から就労支援にそれぞれの御立場で尽力いただいている 丹下委員、斎藤委員、きょうされんの藤井さんから就労支援について意見発表をお願い することといたしております。なお、きょうされんの藤井さんに関しては福島委員から の要望で、この部会のメンバー以外からもぜひ、ということで入っていただいておりま す。それではまず事務局より資料1から資料4まで御説明をお願いいたします。 ○間企画課長補佐  それでは順次御説明をさせていただきます。資料1は論点整理でございます。いま部 会長からお話がございましたように下線を引いてございます。今日は障害者の自立支援 のための保健福祉施策の体系の在り方のうち、就労支援と住まいの確保、このアンダー ラインを引かせていただいた部分について御議論をいただければというふうに考えてお ります。  続きまして資料2ですが、これも前回同様、これまで論点整理にそいまして前回まで いただきました御意見を事務局の方の責任において少し項目ごとに整理をさせていただ いた資料でございます。そして太い字になっている部分がございますが、それが前回い ただいた御意見ということでございます。御参考、御活用いただければというふうに存 じます。 それでは資料3の方から順次説明をさせていただきたいと存じます。資料番 号3、障害者の就業状況についてという資料でございます。表紙をおめくりいただきた いと存じます。就業形態別に見た就業状況推計という資料がございます。これは障害者 の方々が実際働くということに着目してみた場合に、どんな状況にあるかというのを概 観をするために粗い推計を行なったものでございます。なお、ここで申し上げておりま す就業というのは、大変広い意味で使っておりまして、雇用や自営業というものに限ら ず、授産施設や作業所で働くということも含めてここでの就業という言葉を使わせてい ただいております。  これを見ていただきますと、身体障害者の方が352万人いらっしゃるわけですが、一 応就業年齢ということで仮に切らせていただいたとしますと、125万人いらっしゃいま す。知的障害者の場合には26万人いらっしゃいます。精神障害者の方は149万人、精神 障害者の方の場合にはデータの関係で20才以上64才未満になっていることをお許しいた だきたいと存じます。そのうち、就業者数ということで申しますと、身体障害者につき ましては52万人と、大体42%ぐらいというような状況でございます。知的障害者の方に つきましては約半数50%の13万人ということでございます。精神障害者の方につきまし ては、61万人で41%ということでございます。  これをもう少し詳しく今の数字も含めまして示したものが次の2頁以降の資料でござ います。2頁をお開きいただきたいと存じます。これは実際に15才から64才までの身体 障害者の方がどんな状況にあるかというのを示したものでございますが、いわゆる就業 をされている方が42%ほどいらっしゃいますが、そのうち円グラフの外側のところに少 し薄いブルーの部分がございます。ここが雇用されていたり自営をされているような方 々ということですが、この方々が全体に対して36%ほどいらっしゃいまして、他の障害 と比較しましてもこういう方々が大変多いということが伺えるところでございます。  次は3頁です。知的障害者の方15才から64才までの方の就業形態につきましては、先 程申し上げましたように、就業されている方と不就業の方が大体半々というのがデータ としては出てございます。他障害と比べますと、この円グラフの右下の方にあります授 産施設等あるいは作業所といったようなところが31%となっておりまして、シェアが大 きいわけでございます。それともう一つは、他障害と比べますと自営というような形態 よりも雇用の方をされている方がその雇用・自営の中でも多い。自分で商売をされてい るというよりは雇用されている方が多い。障害の特性による部分もあろうかとは思いま す。  次は4頁です。精神障害者の方、今度は20才から64才までの方の就業形態でございま す。就業、不就業の割合は身体障害者の方が42%就業で、精神障害者の方が41%就業で すので、大体似たようなものですが、他障害と比べますと常用雇用の方の割合がやや低 くて、パートタイム、臨時なりパートというものの割合が高いというようなことが伺え ます。これもある程度障害特性から来る部分もあるのではないかと推測しているところ でございます。大変雑駁ですが、資料3につきましては以上でございます。  今度は資料4を御覧いただきたいと思います。福祉施設から一般就労への移行状況と 書いた資料でございます。1頁です。盲学校、聾学校、養護学校高等部の卒業者の進路 というのを文部科学省のデータから引っ張ってきたものでございますが、これを見てい ただきますと、8.5%ぐらいが大学とか教育訓練機関などでさらに進学をするような形 になっております。そして高等部を卒業して就職される方が2割弱、19.4%というふう になっております。そして過半数の方はその後就職される方もいらっしゃいますが、一 旦社会福祉施設、この中には小規模作業所もデータとしては入っているということでご ざいますが、こういったところにいらっしゃっているという状況がここから御覧いただ けます。  そして、では社会福祉施設に行った場合にどんなような状況かということですが、次 は2頁です。これは平成12年に社会就労センターの方で調査をしていただいたものを借 用してございますが、これは例えば授産施設で働いてる方々に、企業で働きたいですか というふうに聞いたところ、実際にその個々の方々が就労の準備が十分できているかど うかというのは別といたしまして、大変高い希望があります。障害の種別で申しますと 精神障害者の方のご希望が特に高いということが伺えるわけです。そして他方、こうい うような状況の一方で、授産施設にも入りたいのだといって地域で待っておられる方々 もいらっしゃるというのが実情でございます。  次の頁です。じゃあこうして先程御覧いただいたように5割の方が社会福祉施設に行 きました。じゃあそのあとどのぐらいその就職というものが可能になっているだろうか というのがこのデータです。このデータにつきましては、大変申し訳ありませんが、分 母に誤りがございまして、先程配布をさせていただいた訂正の資料の方を御覧いただけ ればと存じます。現員数に誤りがございましたので、ここでお詫びをして訂正をさせて いただきます。  配布後の資料でございますが、これはどういうものかと申しますと、実際に身体障害 者授産施設でありますとか、あるいは更生施設、あるいは福祉工場といったところにい らっしゃる方々のうち、就職を理由として退所された方の数がどれぐらいあるのか、そ してその割合がどのぐらいなのかという数字でございます。  障害別に見ますと身体障害者の更生施設が5.9%と高くなってございます。知的障害 者の施設では入所授産が2.3%とやや高くなってございます。精神障害者の場合には通 所授産が4.7%とそれぞれ高くなっておりまして、やや傾向がバラバラでございます。 しかし数全体で見ますと社会福祉施設がこの手の施設の中で全体平均をいたしますと 1.1%の方が就職を理由として退所をされている、5割ほどの方が養護学校などを卒業 されて、もちろん中途障害の方もいらっしゃいますが、そのうち1%ぐらいがこうやっ て一般就労の方に移行されているということでございます。  次は4頁です。では就職以外の退所の理由は何かというのを御覧いただきたいと存じ ます。退所理由につきましては主なものを掲げさせていただいておりますが、就職であ りますとか、家庭に戻ったとか、あるいは他の施設へ転所したとか入院したとか、いろ いろございます。ただ、施設によって若干異なりますが、総じて就職をしたという方よ りも他の施設へ移り変わったということを理由に退所する方が多いという現状がござい ます。  次は5頁です。では実際に退所された方を100とした場合に、就職を理由とする方の 割合が多いところはどこかというのを示したものが5頁ですが、知的障害者で申します と入所授産でありますとか、知的障害者の福祉工場、あるいは精神障害者の通所授産施 設といったところが2割以上そういう方がいらっしゃるというデータが出てまいりま す。これをその就職を理由として退所した方を100とした場合にどんなふうになってい るかという資料が6頁でございます。  これは就職を理由に退所した方を100とした場合に、それぞれ何年ぐらい在所してい らっしゃったという期間を示したものでございます。この赤茶けた色より左が3年未満 の部分だ、青と赤茶けた部分を足しますと3年未満の方だということになります。これ で見ますと、精神障害者の方の施設の場合には3年未満で退所される、就職につながっ ているケースが多いということが見て伺えると思います。知的障害者の場合には逆に入 所系の施設、入所授産でありますとか入所更生といったところが、むしろ水色とか紫と いった5年以上、比較的長くおられて、それから移って行かれた、就職をされたという 方が多いというところを見ていただけるかと存じます。  次は7頁です。今度は逆に参考までなんですが、就職以外の理由により退所した方の 在所期間がどうであっただろうかというものがこの資料でございます。これを見ていた だきますと、精神障害者の場合にはやはり比較的早くに退所される方が多い状況が見て いただけるかと思いますが、身体障害者の施設と知的障害者の施設の場合には、入所系 の施設におきましては、この水色と紫の部分、5年以上入所されて退所された方が多く なっているという状況が見てとれるかと思います。次の頁は全退所者、今のものを含め ましてどうなっているかというのを御参考までにおつけいたしました。  9頁をお開きいただけますでしょうか。これも御参考ですが、必ずしも養護学校の高 等部を卒業された方だけが障害者のわけではございませんで、当たり前ですが、中途障 害の方もいらっしゃいます。そういう意味では参考データといたしまして、光明寮とか 国立身体障害者リハビリテーションセンターの卒業生の方々がその後どんなふうにされ ているかというのを追ったデータを御参考までにおつけしております。この理療教育課 程、あんまとかマッサージとか鍼灸師、こういうような道に基本的にはお進みになられ 方につきましては、赤い部分と再入所の部分を除きますと大体71%の方が何らかの就業 をされている、開業されたり病院に就職されたり治療院に就職をされているといったこ とをされているという状況でございます。  もう一枚おめくりいただきますと、今の数字は特に専門家としてなりたいという希望 を持っている方でございまして、それ以外の一般的なリハビリテーションの課程の方の 場合には半分弱が就職ないし自営をやられているという状況でございます。資料4まで の説明については以上でございます。 ○京極部会長  ありがとうございました。このあと、丹下委員、斎藤委員、藤井さんの意見発表と質 疑、さらに全体的な議論も行いたいと考えておりますので、ただいまの事務局の説明に 関しての御質問御意見等につきましては、後ほど全体の議論の時間の際にお願いいたし ます。  続きまして丹下委員、斎藤委員、藤井さんからの意見発表と質疑を行いたいと思いま す。まず、丹下委員から御発表いただき、その内容についての質疑を行い、その後、斎 藤委員からの発表と質疑、続きまして藤井さんの御発表と質疑を行うという手順とした いと思います。原則としてお1人15分程度でお願いいたします。 ○丹下委員  御指名いただきました丹下でございます。私は企業に勤務いたしまして、それからま た経済団体で仕事をしてきたという経験に立ちまして、障害者の就労雇用について日頃 考えていることを申し上げたいと思っております。お断りするまでもないのですが、私 の申す全体は「全て働くことのできる方は働くことで自立を図るべきだ」と、こういう ことに立っております。それと私が申し上げるいろいろな考え方でございますが、多分 私の考えるところ、多くの企業で同じような考え方をお持ちであると思いますが、あく までも個人の意見であるということを御承知おきをいただきたいと思います。  中身でございますが、まず前半で企業というものについて若干申し上げた後で、それ から就労、雇用と福祉との関連がどうあるべきかということについて申し上げてみたい と思っております。まずその前半でございますが、企業と人ということでございます。 率直に申し上げて、企業の人間は福祉の世界のことに対して大変暗うございます。そし てまた福祉サイドの方々も企業についてあまり知っていただいてはいないんじゃないか という思いがございます。そこでこの部会の委員各位には釈迦に説法という形で大変申 訳けないのですが、広く福祉に携わっておられる皆様方に御理解を賜りたいと思いまし て、あえて最初に企業と人ということについて、若干そもそも論を申し上げてみたいと 思います。  申し上げるまでもございませんが、企業の本質は付加価値の確保であり、継続性の追 求でございます。お手元に資料5というのが届いておりますが、これを御覧いただきた いと思います。その図表1でございますが、御覧いただけますように企業を形成する資 源というのは、人、物、金の、いわゆる三要素でございます。それぞれが最大に効率を 発揮しなければ他の企業との競争に破れるという現実に常に直面しております。破れれ ば雇用も失われます。  その中でも人という存在は自らが能力を高めるということ、それと共にここで言う物 と金が効率を高めるように操る立場という意味で、この三要素の中では最も要の存在で はないかと思っております。したがいまして企業の人についての基本的な考え方を申し ますと、個人の能力をいかに向上させ、いかに発揮させ、そしていかに捉え、いかに処 遇するかということに尽きるわけでございます。勤労者の立場からいたしますと、企業 内で生存していくためには、自己啓発努力が不可欠でございますし、エンプロアビリテ ィが常に問われるわけでございます。そうした事実に立って私が知っていただきたいと 思う点を三点申し上げます。  まず一つは、障害者にとりまして今申し上げたことは極めて厳しい条件と言わざるを 得ませんが、企業の世界では障害者も基本的にはその埒外ではございません。そして企 業の考えというのは単に厳しいということだけではないのでございまして、雇用したか らにはハンディキャップに配慮しながらも、その人の持つ能力を評価して、企業の戦力 として活用するということにあるわけでございます。雇用率を達成したいがために誰で もかまわずに数揃えをして給料を支払うなどという形はおよそ企業の世界にはないとい うことを障害者にまずご理解いただく必要があろうと思っております。  二つ目は、誤解のないようにお願いしたいわけですが、企業と申しますのは大変広範 な様々な仕事と極めて多種多彩な人で成立しておるわけでございまして、誰であれその 人の持つ雇用の能力、つまりレベルと方向性ということでございますが、これが企業の 目的に貢献する可能性は努力によって必ずあるということでございます。  三つ目は、我が国の企業に大変普遍的な風土だと思っておりますが、人間関係の重視 という要素がございます。その基本は一旦雇用した従業員はできるだけ企業内で育成し て、能力を伸長させる努力をするということでございまして、その企業でどうしても根 づくことができない人は別でございますが、自ら積極的に従業員を見捨てていく企業と いうのは決して多い存在ではないということ、これが企業の人に対する認識でございま して,障害者についても基本的に特別なものはないということでございます。  次にその前半の二つ目ですが、雇用の状況を私どもがどう見ているかということを申 し上げます。その資料5の図表2−1、2−2、3とつけてございますが、事実上知的 障害者が雇用のステージに登場いたしましたのが昭和63年でございますが、平成15年ま での間の障害者雇用の推移が2−1でございます。  この間、申し上げるまでもないのですが、我が国の経済が非常に暗転をいたしまし て、きつい経済環境おかれていたということは御想起いただけると思います。全体とし て見ますと、私は逐年雇用が前進していると思っております。特に実雇用率が昭和63年 以降上昇してまいっておりますが、平成14年に逆転いたしました。このことは職業安定 行政にとってみますと小さくない衝撃だったという具合に想像しておりますが、ひいて はそのことは企業にとって、障害者雇用への積極的な対応を求められる引き金になった と、こう受け止めております。  図表2−2でございますが、これは今の表をもう少し詳細に見たもので、知的障害者 が正式に雇用率に含まれることとなった平成10年と15年につきまして、雇用義務対象企 業を規模別に対比してございます。ここでは制度上のカウントではなくて、頭数である シングル・カウントをあえて書きました。この表そのものは障害者雇用の著しい前進と は言い難いデータでございまして、これをもって大変に雇用が云々ということを申し上 げるわけではございませんが、いくつかの点が指摘できると思います。  まずその一つは、企業数が圧倒的に300人未満が多いということ、平成10年では79%、 15年では81%に及んでおりますが、障害者の雇用数では300人以上の企業規模が10年で は66%、15年では68%と、それぞれ3分の2を占めているわけでございます。次に規模 計では、雇用義務対象規模が56人に拡大されたといったことも含めまして、企業数が増 加した一方で、常用労働者数と障害者数が減少しております。その中で300人未満では 障害者雇用数の減少と実雇用率の低下が目立っております。これに対しまして300人以 上規模の企業では全体として雇用数を維持ないしは増加させて、雇用率も上昇しており ます。  端的な現れでございますが、特例子会社の状況を図表の3に載せてみました。最近の 著しい増加は主として300人以上の規模の企業が障害者雇用に対する姿勢をどのように もっているかということの一つの証左という感じがいたします。このことを御理解いた だきたいと思います。特に平成15年から16年にかけましては、それまでの5年刻み、大 体5年刻みで見てまいりました数字に比べまして、大変な増えぶりだということに注目 をしていただきたいと思います。  三つ目には未達成率という欄がございますが、これは各グループとも高くなっており ます。でもこの未達成率でございますが、これは実は実態としましては、1人あるいは 2人僅かに足りないというような企業の比率が思いの外に高いということを私どもは伺 っておりまして,そういう現実があるようでございますから、運び方によりましては未 達成率の改善というのはそれほど困難ではないと私どもは見ておりますが、ただ、未達 成率、そういう1名を補強することによりまして達成度が高まるというだけでは雇用率 の状況には大きく寄与しないわけでございまして、むしろ従来あまり実績がない、これ から本腰を入れて障害者を雇用していこうという企業の増加が大事だと、このように思 っております。  過去15年間の推移と平成10年15年の比較という多少長いタームで傾向を申し上げてお りますが、直近である平成14年15年の比較をいたしますと、300人以上の規模では重度 障害者総雇用数、実雇用率、未達成率が改善されて、一方、300人未満の企業では不調 が続いている。大雑把に申し上げてそういうことでございましょうか。  それをまとめて申し上げて、現在障害者雇用の推進については、300人以上の企業の 規模が大変積極的にやっている。そして300人未満のところは思いはあってもなかなか 実現ができずにいると、このような状態ではないかという具合に見えるわけでございま す。そして300人以上の規模という、そこで一層の改善が今後行なわれていくというこ とと私どもは受け止めておりますが、そして300人以上という規模を先導者にいたしま して、それ以下の300人未満の規模の改善を進めなければならないということだと思い ます。そしてそのために行なうべきことは何かということを後に申し上げたいわけでご ざいます。  次に企業が障害者雇用を行なう動機というのがございます。これを一つお聞きいただ きたいと思います。人手不足に直面している企業が求める能力を有しているからという 理由だけで採用するという場合は、これは別ですが、通常、障害者雇用につきまして、 企業が考えている動機は私は二つあると思っております。一つは理念的なことでござい ます。雇用や就労に最も近い在宅18才以上の障害者の存在というのは、調査上では総人 口の約4%というようなことを言われておりますが、実態把握の困難である知的障害者 を想定したりいたしますと、あるいは6%ぐらいじゃないかという推計もあります。18 才未満も考えますと、相当な障害者の数がいらっしゃるわけでございまして、これは私 は国民が等しく受け止めなければならない我が国社会の基本的な構造条件と考える必要 があるのではないかと、こう思っております。  一方、我が国の総人口1億2,600万でございますが、そのうち就業者が6,400万人、雇 用契約に基づいて組織体で働いている、いわゆる雇用者がその中の84%ほどを占めてお ります。もちろんその全てが民間企業ではございませんが、就労形態として雇用という 形が最も一般的でありますし、雇用労働の中で民間企業の占める比重が相当大きいとい うことを考えますと、企業が社会の有力な構成員の一つとして障害者の自立を実現する ために積極的な雇用に力を尽くす立場にあると考えるべきである、これが私どもの考え 方でございます。  これはいわばポジティブな企業の動機と、このように言うことができると思います が、こうした考え方は大企業に定着しつつあるという具合に見ております。マジョリ ティとまでは申し上げにくいのですが、先進的なこうした考えに立つ企業は逐年増えて きていると思います。たとえばCSRという概念がございますが、これを真剣に考える 動きがございます。企業の社会的責任という言い方は大変古いことでもありますが、最 近の企業にとってこれは株主とか消費者とか、あるいは取引先をはじめとしました社会 全体から近代的企業が当然あるべき姿であるということで期待をされていることでござ いますから、そしてまた企業自身が自分の価値の向上につながる、たとえばコンプライ アンスという意識が受け止められつつあるというのが今の企業、特に大手企業の中に強 い動きだと、このようなことであろうと思います。そういうことの中で障害者雇用とい うテーマもその概念の中に当然比重を高めていくという具合に考えております。  二番目は雇用義務の履行ということでしょう。これについては特別御説明をする必要 もないと思いますが、ただ理念ということを全く省みないで単に数字上のクリアだけを 追求するというケースは実際問題としてそう多くはございません。全体としてネガティ ブな動機と言わざるを得ないけれども、雇用義務の履行ということも立派な動機の一つ であるということは御理解をいただきたいと思います。  理念にしましても、雇用義務の履行ということにしましても、企業というものは企業 イメージという言葉で代表されますような、社会的評価を重視するという立場が常に伴 っております。これはご理解いただいた通りでありますが、これが障害者雇用推進の一 つの大きな動機付けであるということもご理解いただきたいと思います。  その動機ですが、それにさらに拍車をかけている動きが三つほどありますので申し上 げたいと思います。まず一つは障害者雇用に対する職業安定行政の方針変換です。これ は指導基準の強化ということで申し上げておきたいと思います。二つ目は障害者雇用促 進法の改正でございます。その中で特に目立ちます企業に対するモチベーションという のは除外率の削減の問題でして、企業は手をこまぬいていればこの4月1日を越したこ とによりまして機械的に雇用率が低下するということに直面しております。雇用率を維 持するためには奮起を求められているということです。  三つ目が雇用率に関する情報公開請求問題です。これはいわば情報公開法と促進法と 二つの法律がございますが、その中で促進法の施行方針について厚生労働省として引き 続き変わらずに進めていくのかどうかといったコメントも一切今までに頂戴しておりま せんので、二つの法律の結果として社名が表に出るという事態に対しまして、多くの企 業が困惑しているというのが今の実態であろうと思っております。  以上の企業をとりまく状況変化でございますが、その中で障害者雇用は今後次第に伸 びていくと私どもは考えております。さて、そこで伸びていくということで考えた場合 に、私どもが一番関心を持っている問題は障害者についての、言葉は悪うございます が、需要と供給のバランスです。  お手元の2−2の表を御覧いただけますように、平成15年6月1日現在ではシングル・ カウントで計算いたしますと、頭数では雇用されている障害者の総数は181,000人とい うことになっております。そして同じ時点でその常用労働者の数から試算をいたします と、1.8%という義務をクリアするためには一体何人雇用すればいいのかということは、 301,000人という数が計算上出るわけです。つまり今のところマキシマム、これは重度 障害者をダブルカウントするという要素を横においての話ですから、マキシマムの頭数 ということで御理解をいただきたいのですが、120,000人雇用不足であるというのが現 状でございます。  それに対しましてごく直近の求職登録者数を見ますと、約155,000人ということが言 われております。このことですが、120,000人が一度にもちろん雇用の対象として求人 されるということではございません。それから155,000人という求職登録者、これがこ んなにたくさんの方が未就職でいるということは当然これは考えなければならない、ど うかしなければならないという、こういうことから始まるわけですが、しかしこんなに 多くの求職者がいらっしゃるという一方で、企業の求めますのは数だけではありませ ん、質を問いますし、選考いたしますから、120,000人に対して155,000人という、これ は単なる数字の遊びとおっしゃるかもしれませんが、それではたして企業の求める数が 獲得できるのかという不安が私どもの胸にはございます。マッチングの面から考えまし て、はたして十分なのかどうか。むしろ求職者のプールをもっともっと大きくして、大 勢の求職者を、就職を志向する障害者の方々に入って来ていただく必要があるという、 こういうことではないかと思います。  そこで以上申し上げたことから、私どもの問題意識を二つの点に整理して申し上げた いと思うんですが、つまり次の二つの点に対する手立てをどうすればいいんだというこ とです。一つは企業が、今申し上げたように急速に求人を進めてきた時に供給は可能な のかということです。二つ目は企業に障害者雇用の意欲を持たせて、失望と不信を抱か せないための仕組みをどうするかという、こういう問題だろうと思います。この二点を 私は障害者に関係する方々共通のコンセプトにしていただきたいと、このように思うわ けです。  さて後半では障害者の雇用就労を進めるために、私どもはどういう考えを持っている かということを申し上げます。以上、申し上げたことに基づきまして、続いてその障害 者雇用の福祉分野に関わっていく問題について申し上げるわけですが、他に障害者雇用 促進策自体の問題も当然ございますし、それから企業が行なうべき努力ということもご ざいますが、この二点につきましては、この部会のメインテーマではないと思いますの で、別の機会に譲らせていただくことにしまして、割愛しまして、もっぱら福祉分野と 関わっていく問題について申し上げたいと思います。  まず第一は企業が雇用にあたって期待する体制です。企業に障害者雇用の認識が浸透 してくるにつれて、出つつある企業の期待を5点にまとめて申し上げますが、まず一つ は、求人手続きに対して速やかな反応が欲しいということです。端的に申し上げて、な かなか紹介が行なわれずに、企業の採用計画に齟齬がきたすようなことがございます と、せっかくの機運に水を指すということです。手続き的には当然ハローワークを通す ということでございますが、企業からの求人情報に反応して人的資源を提供していただ く就労支援組織、あるいは学校等の協力が強く求められるということです。  二つ目は、紹介に際しての求職者情報の問題です。企業はこの求職者情報というのを 非常に真剣に求めております。マッチングの難しさを乗り越えるためには、最も大切な ことはその人を知るということですし、求職者情報はその意味で企業にとって不可欠な ものです。企業が求めますのは、通常言われておりますような大変いい方であるとか、 あるいは真面目な方だといったような評価ではないのでして、何がどれぐらいできるの か、あるいは何が不得手なのか、社会人としての初歩的な訓練はできているのか、煎じ 詰めればそんなようなポイントでございます。これは実はハローワークから提供してい ただく情報の中にはこの問題は含まれてないのです。こういうきめ細かい情報を欲しい し、どうやって得るか、これが二つ目のポイントです。  三つ目は、十分なマッチングの見極め期間です。マッチングは難しいということを再 々申し上げておりますが、これは健常者の採用にあたってもマッチングは難しいという ことは当然ですが、障害者の場合にはその方が本当にこの企業で求めている仕事にフィ ットしていただけるかどうかということを見極める期間というのは健常者よりも通常長 いと考えざるを得ないと、このように思うわけでございます。  そのためには厚生労働省が進めておられます、いわゆるトライアル雇用という制度は 大変優れたものだと私は思っておりますが、予算という制約もございますので、企業か らの声として申し上げておきたいと思いますのは、仮に予算が伴わない、奨励金を伴わ ないということでも企業がスキームだけの利用を求めるという場合がございましたら、 それをぜひかなえて欲しいと、こういうことがございます。そういうことも含めまして マッチングの十分な見極め期間を企業に与えて欲しい、これが三つ目でございます。  四つ目は就業開始後就労支援組織の援助でございます。これは申し上げるまでもなく ジョブコーチング等のことでございます。五番目が雇用後に退職やむなきに至った時の 支援でございます。雇用後に、例えば労働能力の低下等がありまして、退職のやむなき に至ったという時に、これを受け止めて再訓練して、適格な新しい職務につなげてくれ るという組織の存在を企業としてはぜひ求めたいという気持ちがございます。就職、勤 務、離職、再訓練、就職というサーキュレーションがあるといたしますと、それが定着 することは企業の期待する体制の中で最も重要なことの一つであろうと、このように申 し上げておきたいと思います。  次の二点目ですが、企業の立場から期待している、じゃあ真の就労支援ネットワーク というのは一体何なのか。従来、ネットワークという言葉がやや軽く使われたようなき らいがあるように私は思うわけですが、要は問題解決のためにあって欲しい福祉サイド と職業安定サイドの連携です。  今、障害者の就労に関しまして地域体制を見ますと大体次のようなことが言えるかと 思います。まず職業安定行政で申しますと、各地のハローワークがございます。都道府 県に1カ所ずつの地域職業センターがございます。それから同じく1、2カ所の障害者 就労・生活支援センターという組織かできてきております。能力開発行政関係で申せ ば、各地の障害者職能開発校がございます。福祉行政関係では福祉工場、授産施設、こ れは就労支援組織という言い換えをさせていただいてもいいかもしれません。そして今 申し上げた、同じく障害者就業生活支援センター、これも福祉行政との関わりがござい ます。それとさらに文部行政関係で盲学校、聾学校、養護学校といった存在がございま す。  これらの中でかいつまんだことを申し上げてみたいと思いますが、まずハローワーク です。雇用の安定ということが国の最重要政策の一つであるということは間違いござい ません。そうである以上ハローワークがこれを専管する体制は当然だと思います。問題 は広い管内で大変多い企業という中で、全ての企業の状況を掌握してあまねく指導する というところまでは到底いま行っていないという実情があると思っております。  職業安定行政の仕事といいますのは、いわば求人・求職を調整して、就職率を高める と、簡単に申せばそういうことかと思いますが、従来どちらかと申しますと求職者の就 職のための求人開拓により比重があったように感ずるわけです。今後は求職者のプール をもっと大きくするという見地から、ハローワークは求職者を待つだけではなくて、自 ら発掘し、求職登録に導く努力を要請されると、このように思います。そのためには言 葉は悪いと思いますので御勘弁を願いますが、大供給源と申せる福祉就労支援組織との 連携を密接化することは、ハローワークにとって不可欠なテーマであろうと、このよう に思うわけです。  二つ目は地域職業センターですが、この部会の主たる議題ではございませんので割愛 をさせていただきます。  三つ目が障害者就業・生活支援センターですが、最近始まった制度として着々定着し つつあると思います。設置数も増えておりますし、機能を発揮しつつあると思います が、全国の障害者就労につきまして、その地域地域で全てこのセンターが一元的に担当 し得るものではございませんから、当然民間の就労支援組織と役割分担を行なうべきで あると、このように考えます。それぞれの学校についても失礼ながら割愛をさせていた だきます。  五番目に授産施設、就労支援組織と申してもいいかと思います。これについて申し上 げます。就労支援組織の典型的なパターンは、私どもの感じでは授産施設が立ち上げた 組織による活動ということではないかと思うわけです。これは私どもとして極めて評価 したい動きだと捉えさせていただいておりますが、授産施設に関する福祉法が三障害に 関してそれぞれありますが、その規定の中には就労支援を行なうという役割は謳うれて ないと、感じるわけです。  一方、障害者雇用促進法の中にも、例えば障害の判定について福祉法の引用が行なわ れている程度でございまして、端的に申せば授産施設、就労支援組織、ハローワークと 辿ることのできる福祉行政と職業安定行政とのつながりは公的にはないと理解せざるを 得ないと思っております。実際にそうではない、そういう連携は行なわれているじゃな いかという反論は当然おありかと思いますが、それは私どもの見るところ、双方ともた またま問題意識と行動意欲を持った人とか組織がおられて、ボランタリーに動いている に過ぎないと、このように感ずるわけです。  ところがそういうことではありますが、例えば授産施設とか、あるいはその就労支援 組織は本来お持ちの特性として、障害者個々人の情報をきめ細かく把握しているという ことがございます。これは先程申し上げたように、企業が最も求めていることの一つな んですから、これら組織が就労がベターである方、福祉の領域に止まるべき方、それを 見分けて前者を就労のステージに送る、そして必要な場合には再就労までのケアも可能 という立場と力を持っている、こういう点をぜひ活用していただきたいと思うわけで す。  私どもが感じますのは、何ゆえに福祉分野と雇用セクターとの制度的な連携が従来十 分でないという状況が放置されてきたのかという点が不思議で仕方がないわけです。就 労の舞台へ障害者の参加を本当に促そうとするならば、福祉行政傘下の公私営の就労支 援組織と就業安定行政の有力な支援組織が職業安定行政の有力なパートナーとして位置 づけられるべきではないかと、これは常々私どもは感じているところでございます。  さて、最後になりますが、それでは企業が期待している方向はどういうことなのか。 次のようなことではないかと思っております。まず一つですが、関係しております福祉 の各法律におきまして、障害保健福祉の対象となっております各種施設間に機能の重複 等があるとしますと、これは私は大変不勉強ですから、あると決めつけるつもりはござ いませんが、あるとするならば、まずその整備が必要だろうと思います。そこで意を用 いていただきたいと思っておりますのは、いわば家庭という場に準拠した、いわゆる生 活施設、それから雇用対象に適格ではあってもまだ機会を得られない人、あるいは雇用 には無理があるか、仕事をすることが当然と思われるような方々、そういう方々のため の作業施設とでも言うべき機能分担を明確にしていただきたいということが一つありま す。  二つ目は、現状の分類で申しますと、授産施設あるいは小規模授産施設、福祉工場と いうのはもとよりでございます。小規模作業所、あるいは各更生施設も含めまして、利 用者の中で就労の可能性があると判断される方々については、就労支援組織、あるいは 障害者就業・生活支援センターに登録して道を開くという義務的なことが各福祉法の規 定その他福祉サイドで定めていただきたいと思うわけでございます。  三つ目は就労支援組織でございますが、これは福祉サイドの規定の中で授産施設と、 今ほど申し上げた作業施設と申しますか、それとを機能を分化させまして、つまり就労 支援組織といわゆる作業施設とは機能を分化させて、就労支援組織は福祉の分野に引き 続きありながらも、授産施設とは別の組織として整理する。そしてその一方、促進法サ イドにおいては障害者就業・生活支援センターに準じて職業安定行政に協力する立場で あるということを法律上明確にしていただきたいということです。  四つ目は、じゃあその就労支援組織は何をやるのかということですが、私どもで考え ておりますのは、まず求職求人段階では、一つは雇用が可能であるか、いわゆる福祉的 就労がベターであるかということを見分けるということ、そして雇用可能な方を積極的 に求職登録をする、これが一つです。二つ目は、企業に対して障害者雇用の一般的な相 談に対応していただくということ、三つ目は相談企業に対して施設在籍者の能力状況等 の、詳細な情報を提供していただく、これも繰り返しになりますが、そういうことで す。  二段階目に、就職後の段階がございます。ジョブコーチングによりまして企業と本人 に対するサービスを提供していただければありがたいということ、それから三つ目が先 程申し上げました、いわゆるサーキュレーションの受け皿機能を果たしていただきた い、自ら紹介した方々の就職後の不適合状況を判断して、不適と結論された場合の受け 入れ及び再訓練をお願いしたい、これが就労支援組織に期待したいところです。  それから最後にハローワークについてちょっと触れさせていただきますが、これは本 来この部会の話題ではないかと思いますが、厚生労働省内には省内の検討会議もお作り くださっているということを伺っておりますので、あえて申し上げます。促進法上で就 労支援組織をハローワークの不可欠の協力者という形で位置づけるということにしてい ただきたい。それによって行政サービスの可能性を広げていただきたい。ハローワーク だけが求人に対してその対応に苦慮なさるというような事態は企業も歓迎しないところ でございます。  以上、申し上げた点を効果的に運用するためでございますが、その人が雇用にふさわ しいのか、いわゆる福祉的就労を配慮すべきなのか、福祉の中で保護されるべきなの か、あるいはそれらの中で移動することが妥当なのかという最も大事で基礎的な判断 が、現在は私どもの見るところ様々な機関とか様々な方法で行なわれているように思い ます。  しかし、障害者個々の就労可能性の程度と方向というのはもっと全国的な、例えばフ ランスにありますCOTOREPの組織のような機関で一元的に判定して、それぞれの 方向づけを図るといったことが、企業が安んじて障害者雇用に取り組む近道ではないか と思いますし、また全国的なサービス格差の問題を解決することにもつながると、この ように思うわけです。私ども、全く想像でございますが、障害者職業センターという組 織の構想には当初そういうことがあったのではないだろうかと思っておるわけです。  最後に繰り返しになりますが、こうした今申し上げたような福祉の世界と就労の世界 との結びつきの構造を志向するにあたりましては、福祉の各事業、これは障害保健福祉 サービスと申し上げた方がいいのかもしれませんが、そこでの各施設、各機能間に重複 等の無駄がないか再確認して、国民の負担する税原資を大切に活用する体制とすること を強く求めたいと考えます。  それが行なわれることで雇用就労の場に出るものは積極的にその可能性を確かめ、福 祉の世界でケアすべき方はそれを進めることができる体制が確かなものになるのではな いだろうかと、このように思います。ひいては支援費財政の問題も合理的な方向づけが できるように思うわけでございます。以上のようなことが企業が期待するところの、障 害者の雇用を身近にして可能性を高めるための真の就労支援ネットワークの形成という ことではないかと考えております。以上でございます。 ○京極部会長  大変丁寧な御報告ありがとうございました。ただいまの丹下委員の御発表に対して御 質問等がございましたら、順次ご発言をお願いいたします。 ○徳川委員  非常に貴重な御発言をありがとうございました。私は京都なんですが、京都府の方で 障害者の就労についての業種別の状況調査がございまして、その中で非常に私が奇異に 感じたのは、建設業界が一番雇用率が高い、少なくとも京都の場合は。そして金融業界 が非常に低いという結果が出てきているんですね。原因はわかりません。おそらく労災 の問題とかいろいろあると思いますが、金融業界の場合はいわゆる偏見とか、外見があ るのかもしれません。この辺を少し調べることが雇用促進のための必要ではないかと思 うんですが、丹下さんの方で何かそういうふうな職種とか業種によるバラツキのような ものはお調べになっていらっしゃるのでしょうか。 ○丹下委員  今の御質問の正確なデータにつきましては事務局の方からあるいは御説明を頂戴した 方がいいかと思うんですが、私どもで特にそういう検討を実はしたことはございません が、おっしゃることは今御推察いただいた労災のようなことが背景にあるという感じを 私どもは持っております。ただ、全国的にもそういう傾向が若干見られるということで ございまして、京都府の例としておっしゃいましたような相当極端な感じというところ までは私どもは持っておりません。そんなことでよろしゅうございましょうか。 ○京極部会長  次は笹川委員、お願いいたします。 ○笹川委員  先程の御発表の中で、いわゆる納付金制度についてを全くお触れにならなかったんで すが、障害者の中ではこの納付金制度が雇用を障害しているんじゃないかという声もあ ります。その辺はどのようにお考えになっておられるのかというのが第一点です。 そ れから第二点は、企業が当然採算の面で労働者を雇う際にはいろいろ配慮されるわけで すが、障害者に100%の労働能力を求めても、それは非常に無理だと思います。企業と してどの程度までの能力があれば、つまり100%以下でも雇用ができるか、そしてまた そのマイナス分について何らかの助成制度、今、雇用奨励金等ありますが、そういった ものがあれば雇用が可能なのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。 ○丹下委員  まず納付金でございますが、ヨーロッパに範をとりました我が国の雇用率制度で、そ れを補完する制度として納付金制度があるということだと思っております。これは決し て世上言われておりますようなペナルティというようなことではないと私どもは感じて おりますので、企業が本来障害者雇用、その実態を進めるということ、これを一義的に 考えていただいて、何らかの事情があってそれができない場合に納付金を納付する、こ ういう具合に基本的には考えいるわけですが、残念ながら企業の一部には障害者雇用に 関する努力が必ずしも万全ではないという企業も私どもはあるように思っておりますの で、その結果として納付金が多額に納付されるという状態は、必ずしも健全というわけ にはいかないなと、こういう感じはございます。  ただ、ペナルティということではございませんから、私どもは納付金を支払うという ことにつきまして、企業があたかも後ろめたいような感じを持つということまでお考え いただく必要はないのではないか。その企業が雇用を進められない事情というものを明 確に御説明になれるかなれないかと、こういうところに実は問題があるんだろう、これ が納付金に対してですね。  それから障害者のお持ちの能力ということでございますが、私は障害をお持ちの方が 健常者なみに100%の能力をお持ちだという前提に立ってお話を申し上げたということ ではないわけでございまして、障害者ということはハンディキャップがあるわけでござ いまして、そのハンディキャップは企業としても十分に承知をしております。  ただ、我が国の雇用管理制度上のまだまだこれから検討しなければならない問題かと 思いますが、人間の能力を企業の管理制度の中でどれほど的確に掴んでいくかという、 これは永遠の課題でございますが、そういうこととの兼ね合わせで必ずしも障害者の能 力判断というものが的確に行なわれているかどうかということは当然あろうかと思いま す。これは企業のやはり努力すべき点の一つだろうと思います。  ただ、それとは別に、私が最後にちょっと触れさせていただきましたように、我が国 には障害者のゆえに労働能力をどれぐらい喪失しているか、生活能力、あるいは動作能 力といったような意味での喪失度というものは明確に出されておりますが、労働能力を どれぐらい損失しているかという概念整理は実は行なわれてないということでございま すので、これは別な角度からやはり検討すべきことではないだろうかと、こう思ってお ります。よろしゅうございましょうか。 ○京極部会長  私から質問いたします。今の笹川委員のご質問と関係いたしますので、同じ二点につ いて、一点目につきましては、当面の問題と将来の問題と分けまして、雇用促進のため にいろんな仕掛けというのはしているとは思うんですが、ただ企業によっては免罪符じ ゃないか、課徴金を払っているからそれで勘弁してくださいというところもあるので、 将来的に企業が本来障害者を積極的に雇用していくという立場であれば、もう少しいろ んなやり方もあるんじゃないかという感じもいたしますので、ちょっと御意見をいただ きたい。 それから二点目につきましては、職業能力とか労働能力という場合に、施設 側は授産とか、あるいは職業リハビリとか職業訓練という形で対応しておりますが、企 業の場合に個々の技術は入ってから学ぶことが多うございますので、むしろその働く意 欲とか礼儀作法とか、きちっとした態度がどうも養成されないと、なかなか施設がダメ だというふうに受け取ってもらうと困るのですが、そういう機会がないということもあ って、個々の技術をいかにつけるかということだけではないような問題もあるような気 がしますので、その二つについて何か御示唆をいただければと思います。 ○丹下委員  まず納付金についての御指摘でございますが、雇用率と納付金という制度によって今 障害者雇用が運用されているという、こういう実態でございますが、私は大変個人的な 見解で恐縮でございますが、障害者雇用が現実問題として進めにくい仕事を持つ産業と いうのは、これは今の除外率の問題とは直接の関係という意味で申し上げるわけではな いのですが、今後も引き続き存在するように思うんですね。そういう中でいかに努力を しても障害者雇用義務が遂行できないという場合に、やはりそれを支援する別な制度が あってもいいのではないかということを、私は個人的には考えております。  再三フランスのことを申し上げて恐縮でございますが、障害者施設を業務上活用する ことによってみなしの雇用率として計算するといったような手法を検討することも一つ かなと、このように思います。それから先生の御質問の趣旨がもう一つよくわからない 点がございました。もう一度お願いします。 ○京極部会長  職業能力という時に、作業能力とか、職場に入ってからの能力ということなんでしょ うが、実際には職場でかなりみんなそれぞれ仕事が違いますので、現場で覚えることが たくさんある。現場で覚える前に心構えとか、何かそういう訓練というのは意外にされ てないことが多いんじゃないかな。これは学校側にも責任がありますが。いろんな各施 設もそうですが、1%問題を解決する一つの鍵かなと思いましたので。 ○丹下委員  最初はちょっと取り違えまして失礼をいたしました。おっしゃる通りでございまし て、企業は千の企業があれば千のキャラクターがございまして、どういう仕事をやって いるかというのは、例えば業種ということで括ることは容易でございますが、その中身 は企業によってずいぶん違うという点がございますし、それから企業の組織風土という 言葉がございますが、そういうものにも違いがございますから、その意味も含まして、 今京極先生がおっしゃいますように、企業に入ってからの訓練、特に職業訓練の面では それが大変大事になってくるということが言えると思います。  企業は本当はそれに集中をして障害者を内部で育てていきたいと、こういう気持ちが 濃厚にあると思います。それは違う言葉で申しますと、実はさっき私が申し上げました ように、この人は何が基本的にできるのか、何が不得手なのか、それから社会的な基本 的な初歩的な訓練ができているのかできていないのかということを企業が知りたいと言 っておりますのは、実はそれができている人をいただきたいのであって、そこまで企業 に採用してから訓練をしていく暇はないというのが企業の本音のような気がするわけで す。  その考え方に立って申し上げますと、先生は今ちょっと触れられましたが、学校な り、あるいは就労支援の組織なりで、その前側の訓練をある程度していただくというこ とができれば、企業の雇用姿勢というのはかなり積極化するだろうということが言える んじゃないかと思います。 ○新保委員  貴重な御意見をどうもありがとうございました。企業の理念に基づきながら、企業が 雇用するにあたっての希望等を述べていただいて、その中でことに福祉領域、あるいは 障害者雇用を促進する領域での役割をきちんとして欲しいというお話だったというふう に思うんですね。それはそれできちんとやはり受け止めて私どももいわゆる就労能力を アップさせるというか、キャリアアッパスが図れるような福祉施設のあり方、あるいは 福祉就労という言葉があるんだとすれば、そういう施設体系の見直しを図りつつ、かつ 企業に結びついていくためにどうしたらいいのかということが大きな課題だというふう に思うんですが、お話しをされた中で一点だけ私が気になるのは、これはどういう立場 でかと言いますと、私は精神障害者の施設を運営しております。精神障害者の方々が働 く場というのは、どちらかというと今お話しされたような企業ではなくて、3K、要す るに汚いきついと言われるような、しかも小規模の職場がかなり多いわけです。そうし たところに現実にお願いをして雇用というか、就労につなげているわけですが、それも なかなか十分に進むことができない状況にあります。  そうしたことの状況もふまえながら、いわば小さな数人の会社も含めて先程の話の中 で御指摘がありました、ハローワークがある意味で自ら雇用拡大のために企業を回るぐ らいのことが必要なんだというお話がございましたので、そのことをきちんと進めてい くという前提に立った時に、今、私どもが身近で感じている、いわば零細企業と言われ る企業の方々がハローワークの指導に従うということはいけないかもしれませんが、ハ ローワークとうまく連携ができるようなシステムに対応できるのかどうかということ を、ちょっとお話いただければありがたいんですが。 ○丹下委員  大変粗い申し上げようになるので、ぜひ真意をご理解いただきたいと思いますが、 今、ハローワークの実際の配慮等を横から拝見しておりますと、先程申し上げましたよ うな、仮に企業の規模分類で申し上げますと、雇用義務の対象である56人以上の企業に ほとんど注力なさるので手一杯で、55人以下の企業まではとても力が及ばないというよ うな実態がおありなんじゃないかというふうに思うわけです。  本来そういうことではなくて、職業安定行政というのは企業の規模いかんに関わらず 等しく適用されるものだという具合に思うのですが、実際問題としてそういうことが力 が足りずにおられるということは、私はやはりハローワークを中心とした障害者の雇用 就労の全体の協力構造、協力体制にまだ不十分な点があるからじゃないかと思うので す。  ハローワークの権限を持った担当官の方々は、本来のそういう仕事に没頭していただ いて、本来その方々が今やっておられる企業を尋ねての障害者雇用の要請とか、そうい うようなことについては周辺を囲んでいる就労支援の組織が協力をしてやっていけると いうような状態ができますと、これはずいぶん様子が変わってくるんじゃないだろう か、これが一つです。  それから3Kとおっしゃいましたが、就職難という労働市場がかりにあるといたしま すと、そこで生れてくるのが3K職場ということになるんだろうと思いますが、これを 今申し上げたようなことで、職業的要請だけを私はあげつらうつもりは毛頭ございませ んが、関係者が一同いろいろ努力をしあって、そうではない分野にも精神障害をお持ち の方が進出していけるようなことを工夫していくということは方向として必要なことで はないだろうかと思っております。ただ、大変に難しいいろいろなテーマが途中にある ということでございますので、一つ一つ解決するべきだと、こういうことかと思いま す。 ○高橋(清)委員  貴重なお話をどうもありがとうございました。私が伺いたいのは、精神障害者の雇用 の義務化についての委員のお考えでございますが、丹下委員の只今のお話では雇用の企 業側のモチベーションとして二つあげられている。一つは理念的なもの、それはそれと して、もう一つはの雇用率の達成ですね。それが大きなモチベーションになっている。 さらに企業のイメージを向上するということも一つのモチベーションになるのであっ て、それはあくまでも雇用率を通じての話である。そうなりますと精神障害者が企業の 雇用の努力する対象として入って来ないということになりますね。今後の精神障害者の 雇用を考える上で非常に大きな問題だと思うんですが、その辺を委員はどのようにお考 えでしょうか。 ○丹下委員  これは実は厚生労働省の研究会等で十分御議論になってらっしゃるというふうに伺っ ておりますので、私が個人的に余計なことを申し上げる必要はないんじゃないかという 気がいたしますが、ただ、私個人として感じているところを申し上げますと、精神障害 者というものが基本的には医学医術の進歩によりまして、雇用就労の戦線にも加わりや すくなってきているという,紛れないこれは事実だろうと思っております。  ただ、いろんな態様はあるにいたしましても、基本的にそれが病気であるということ から考えまして、企業が今度は受け入れるということを考えるようになった時に、やは り医学分野との企業の連携というのがどうしても欠かせない要素になってまいるだろう と、私どもはそう思っております。ところが私どもの知る限りでは、その企業が頼りに していただく相談相手、それぞれの個人個人のケアを企業として考えていくために御相 談をしたい相手の先生方の数というのは全国的に12,000人ぐらいしかいらっしゃらない と伺っておりますので、これは絶対数が不足していて、企業が実際に雇用をするという 局面になった時に大きな不安が残るということが一つございます。  もう一つは、企業の中の勤務にどのように溶け込んでいただくかという問題だと思い ます。これは全ての方がそうではございませんが、全体的な姿としてやはり定時間の勤 務は難しいという方が多いということも伺っておりますので、では短い時間で企業に勤 務していただくということは一体どういうことなのか、企業としてはどういう人事制度 でそれを迎え入れたらいいのかということは、まだこれから企業が考えなければならな い問題なんだろうという気がしております。  企業が今それよりもまだ考えておりますのは、おっしゃいますような新しく雇用する という前側で、現在在籍しておられる採用後に障害を持たれた方々、これのプライバシ ーを考えながらどうやって対応していくか、このことがまずありますので、なかなか明 快にそこのところを私の立場からも御説明をしにくいという、そんなことでございま す。 ○永井委員  新参でございますので適切な発言ができるかどうかわかりませんが、今のハローワー クと福祉の枠組みを一緒にするというお話、大変感銘深く伺いました。厚労省になって 初めてできることだろうというふうに思います。  それで今お話になりました障害者の能力判断なんですが、障害者と言っても広くて病 気にかかった精神から神経科がございますが、そのネガティブリストというのを、こう いう人はこういう職業に入ってはいけないというよなリストを私は見たことがあるので すが、それがどうも外国のネガティブリストに比べると日本は相当厳しいんじゃないか なという気がしているんですね。  これはもちろん事務局の方にお伺いすることなんですが、それはたえず医学の進歩な どとも関わって、あるいはもちろん薬の進歩ですね、そういうものと関わってかなり就 労できる、特に神経系ですが、あるのではないかなと思います。そういうものをたえず 見直していく体制というのをぜひお願いしたいということが一つと、そのことについて 企業の方はお困りになることがあるのかもしれませんが、それについてのお考え、それ から千のキャラクターでも、やっぱりお一人一人やっぱりパーソナルに追っかけていく という体制がおっしゃるように必要なんだと思います。  今、団塊の世代の定年退職者も出てまいりますので、労務関係のNPOとか、そうい う方々の活躍の場みたいものを活用しながら、新しい体制に踏み込むことができるのか どうか、その辺をお願いいたします。こういう病気を過去に持った人は就労できないと いうような、例えば運転できないとか、保険に入れないとか、いろいろございますね。 ○丹下委員  例の欠格条項、そのお話でございましょうかね。これはずいぶん解決の方向に向かわ れたと伺っておりますので、ただ、これからはそういう障害を持たれた方が、あいかわ らずとっつきにくい難しい仕事というのは私は残るんだろうと思いますので、それを御 本人がどうやって克服していくのかということが新しい課題として出てくる問題なんじ ゃないかと思います。 ○永井委員  それからパーソナルにそのキャラクター一人一人を見ていくという体制がやっぱり今 はとれてないんだと思うんですね。 ○丹下委員  大変端的な例を申し上げますと、障害者雇用促進法に精神障害者の促進法上の定義と いたしまして規定がございまして、就労可能と判断されたものというようなことが書か れているんですね。じゃあ誰がどういう角度で判断するのかということは一切触れられ てないわけでございまして、これはやはり全国一元的な判断基準というものがあって、 なおかつそれは企業が受け入れられる判断基準であっていただきたいなと、こういうこ とは申し上げたいと思います。そんなことでよろしゅうございましょうか。 ○江上委員  全国障害者家族連合会ですが、私は平成13年11月までは福岡の方の2,000人ぐらいの 工場で働きながら家族会活動をしておったのですが、2,000人の工場の中でも5%、100 人ぐらい精神障害者がおられるわけですね。何らかの治療を受けておられる。その方々 というのは先程丹下委員が言われたように、企業内で我々の力が10としたら、彼らは4 とか5しかないという中で、非常に精神障害者の雇用率をどういう形で入れていくかと いう問題があると思うんですが、そういう5%ぐらいおられる。今、丹下委員が言われ た、そういう精神障害者の方々をどういう形でその企業内の戦力をアップしながら、ま たケアをする、企業内ととしてやっていくか、そういうケアのあり方も含めてですね。  それともう一点は、そういう精神障害者が、先程新保理事が言われたように、いま現 在手帳とか障害を持っておられる障害者に対して、どういう形で例えば雇用率のカウン トも含めて、精神障害に関してどう考えておられるか、ちょっとお聞きしたいんです が。 ○丹下委員  企業内に入社されてから障害が出たという方の実態というのは、まことに申し訳あり ませんが、私は詳細に勉強しているわけではございませんので、的確なお答えができる かどうかわかりませんが、とにかくそれまでに培った人間関係の中で御本人の心情から 申しますと、やはりあまり周辺の同僚等に知られることなしに治療に努めたいと、こう いう多分御心境があるだろうと思いますが。それを会社としては大切にすべきだという ことからしますと、いわゆるプライバシーの問題ですが、そこを実際にどうやって企業 がシステムとして捉えていくのかということを各企業ともまだ正確な答を見い出せずに いるという、今はそういう状態ではないんだろうかと思います。  その問題の中には、やはり精神障害を持っておられる方がいろいろいらっしゃいまし て、基本的に元来入社以前から本当は病身であったんだけれども、たまたま入社後にそ れが発病されたというような方もいらっしゃるかもしれませんし、それから大変日常の 生活なり仕事の上のストレスの影響で一過性の症状を呈されている方もいるかもしれま せん。そういう方の詳細な見分けというのは企業にとってなかなか難しい問題でござい ましょうし、とことん突き詰めてその実態を掘り下げていくということがはたして企業 の人事に許されるのかどうかということもあろうかと思います。そのあたりは大変申し 訳ないんですが、いろいろな知恵のお集まりになった研究会でしかるべき方向づけをし ていただくことによって企業に示唆を与えていただく、こういうことじゃないかと思っ ております。 ○京極部会長  ありがとうございました。あと二人発言がございますので、この辺で丹下委員への御 質問等は打ち切りたいと思います。それではお待たせしました、斎藤委員、問題提起を 含めてお願いいたします。 ○斎藤委員  今、丹下委員よりいろいろ授産施設等に関する御示唆がありましたが、いみじくもこ の御説明の中で雇用の需要と供給の関わりを御説明しておりまして、企業は数でなく質 を求めるという、こういう御発言があったわけですが、この質という枠の中からはずれ た障害者の人たちをどう就労に結びつけるかということが、ここで議論しなければなら ないなというふうに思っております。  現在、厚生労働行政におかれましては、私の記憶では我が国の歴史上初めて省内を横 断する形の障害者の就労などの検討を合同で行なっておるわけです。そのメンバーが厚 労審を責任者に、関係の部局長や課長さんなど、要するに我が国の厚生労働の指揮にあ たっている、そういう立場の皆様方で構成されている、このことは大変重い意味合いを もっているんだろうというふうに思います。  それだけに今日まで未解決になっておりました一般就労につながらない障害者の方々 で働きたいという意欲を持っている方々、この人たちの新しい就労の場としての社会雇 用の創設や、または都道府県レベルでは最近多く出ております条例改正によります小規 模作業所、または福祉施設に対する官工需優先発注、このような新しい制度の誕生に我 々民間は実は期待しているわけであります。  私は自分で会社も経営しておりますので、企業の問題については若干は理解している つもりでありますが、評論家ではありませんので実態数値に基づいて説明をさせていた だきたいというふうに思います。資料は6でございまして、これは全部説明をしている と何時間もかかりますので、中から少し抜粋して御説明をしたいと思います。まず(10) 頁の資料を見ていただきたいと思います。  これは若干丹下委員と異をすることになりますが、我々は改善されない障害者の雇用 状況という思いを持っております。まず(1)は法定雇用率の問題ですが、ここ5年間で 逆に7,500人ほどがマイナス状況になっております。本来ですとここがプラスになって いかないと雇用改善につながらないわけです。単年では改善されている場合もあります が、通年で見ますとこういう状況になっておるということでございます。  それから二つ目に増加する有効求職者数、減少する就職数というタイトルになってお りますが、実はこれは5年だけの実績をとらえていますが、平成7年、これより3年前 に遡りますと求職登録者は88,000人ほどです。これに対して就職したものが27,400人ほ どです。就職率は31%です。平成8年も96,000人ほどの有効求職数に対して就職率は約 30%弱です。比べまして14年度、就職率が18.3%に大きくダウンをしているという現状 であります。  それから三つ目に、就職できない養護学校高等部卒業者の問題ですが、これからの少 子高齢化社会を支えていく若者、特に高校生の就職が非常に厳しさを増しております。 比例する形で養護学校高等部の卒業者の就職率が、次の頁に、これは平成10年からの進 路先の推移表ですが、上の方が我々授産施設等に入ってきております養護学校卒業生の 数であります。要するに平成10年から今日まで6.4%も増え続けている。逆に就職の方 が26.8%が19.3%に7.5%ほど悪化している。こういうような大変厳しい雇用状況の中 で、本当に福祉施設から出たものが就労できるのかどうかということであります。なぜ こういうふうに厳しい状況になっているかというのが(9)頁です。  まず日本の絶対事業所数が5年間で367,000カ所が喪失をしております。これは全体 の5.5%であります。これに連動する形で従事者の数が2,623,000人も減少しておりま す。これは4.2%であります。そして株式・有限・合名等の会社企業数、これも比例し てダウンしている。そして法定雇用率対象企業数、これも減っておりまして、ここで働 いている従業員の数も36万人減少している。あらゆる角度から見て雇用の場が縮小気味 にあるということです。  この縮小傾向の主な理由はデフレ経済、それから終身雇用制度崩壊とか、雇用形態の 変化とか、それから生産拠点の縮小などがあげられると思います。たまたま昨年9月に 東京労働局は都内に本社があります法定雇用率未達成企業9,040社の企業名と実雇用率 の一覧を公表いたしました。先程丹下委員が触れておりましたが、情報公開法による開 示と、障害者雇用促進法による公表とは趣旨とか目的、効果、これが違うわけでありま して、はたしてこの公表がどのぐらい有効性を持っているのかということを精査しなけ ればならないのでないかというふうに思っております。  次に二つ目の実践報告をいたしますが、(3)頁をお開きください。私の法人では知的 の通所授産施設2つと、身体の通所授産施設2カ所、並びに福祉ホーム一か所、5つの 施設を経営しております。実は昭和39年に小規模作業所からスタートいたしまして、51 年に法人格をとりまして、当初、身体障害者入所授産施設定員40名を経営しておりまし た。御多分にもれず我が国の入所施設はプライバシーのない状況であります。  そういう施設を経営することに疑義を感じまして、利用者、家族、職員等々と相談い たしまして、その入所施設を平成9年に廃止をいたしました。そして都下のあきる野市 日の出町等に通所授産施設等生活の拠点を作ったわけであります。働く場としての通所 授産施設の位置づけをしております。これは当初入所授産施設の時には通過施設の位置 づけでたくさんの人たちを企業に出しました。  出しましたが、この表にあるように身体障害者通所授産施設、現員54名、企業離職者 22名と、要するに41%の人が企業で心身ともにダメージを受けて戻されてきた人たちで あります。知的障害者通所授産施設も52%の人が企業で一旦就職したんですが、いろい ろな形で離職をして戻ってきた人たちであります。それから養護学校卒業生、これが先 程御説明した通り、私どものところにも23名おられます。それからこの二つの施設では 3名しか出ておりませんが、1カ月10万以上の手当てを貰って訓練された能力開発校、 ここから授産に来ている人たちもおります。  要するに一般企業で就職して、健常者のように自分の意思で退職するのと違いまし て、いろいろな状況で知的、精神、身障の方々が離職せざるを得なくなる。この受け皿 をどういうふうに構築するのかというのが、我が国の法律上も欠けているわけです。こ れが欧米では保護雇用などという制度で受け皿がきちっとあるわけです。あくまでも働 くというのは本人の意思であります。働いて何をするのかというと、やはり自立の生 活、個人の生活環境というものを自分で作り上げていく、そのために働いて賃金をいた だくんだろうと思うんですね。  次の頁ですが、この入所施設から通所施設に切り換えた40名、この人たちの平均賃金 が1,152,000円、最低が625,000円、最高が2,754,000円、最低の方は手帳上は1種1級 CP両下肢及び聴覚のダブル障害、最高の方は左手麻痺及び聴覚のダブル障害というこ とで、40名に対する賃金支払額が年間約4,600万、これに年金を入れまして8,400万の収 入になるわけであります。障害程度を手帳で申しますと1種が30名、2種が10名、ダブ ル障害が10名、特にこの施設はCPの方が21名、52.5%CPの方であります。  次の頁ですが、居住と生活支援でありますが、通常の我々の生活というものは所得保 障があって、生活する家があってはじめて成り立つわけであります。たとえ雇用に結び ついていても家族の庇護がなければ自立生活が成り立たない支援というのが本当の支援 なのかどうか、また障害者がまちの中で生活するにはいろいろな支援を必要とします。 一般企業に就職した場合には、5時以降の支援が途絶えるわけであります。私は就労を 勧めるのであれば、暮しの充実を同時に図っていかなければ就労は成り立たないと思っ ておりますし、実践でそのことを証明をされているわけであります。  まず、当初この寮からまちのなかに生活するために20戸の住宅を借りました。そして 所得の少ない人やバリアフリー住宅でなければ生活が厳しい人のために、14戸の福祉ホ ームを確保いたしました。この段階でいつも徳川会長がおっしゃっておりますが、5名 の方々が結婚をすることができたわけであります。そしてこの支援に対して国も東京都 も何もやっていただけなかったんですね。ですから我々法人で3名の非常勤のパートタ イマーで生活を支援するスタッフを用意したわけです。  この必要な支援内容という欄を見ていただくと、ここに(1)〜(5)という数字が入って おりますが、(1)が居室清掃、(2)が定期的相談、(3)が買い物、(4)が調理、(5)が金銭 指導、(6)が常時の送迎というような形で、これを3名の支援スタッフが毎日5時過ぎ に仕事が終わってから各家庭を訪問して必要な支援を行なってきた、土日は日中に行っ て行なってきたということであります。  そして次の頁は当時、措置制度のもとの施設でありましたので、費用徴収されており ました。40名のうち37名が費用徴集されておりました。入所施設の最高額が当時月5万 円でした。ですからこの15番目の方が毎月5万円ずつ働いた賃金の中から費用を徴集さ れていたわけであります。なおかつ6名の方が先般名古屋で問題になりましたように所 得税を徴集をされておりますから、費用徴収と所得税がダブルで徴集されたということ でありまして、最高が賃金の89.1%費用徴集されていた。ほとんど自分で得た収入が0 になるという状況でありました。この金額が前の頁のこの家賃に実は充当される形で自 立生活がなし遂げられるという状況になっているわけです。  この前の頁、(5)の頁ですが、長年寮にいたために1人で生活するのが非常に不安だ という方々が2人で生活するということで、7組、2LDKの家を借りて協力しあい生 活をしております。  それから(7)頁ですが、居住環境ですが、これは駅から極力近く、また病院、役所、 デパート、飲食店、施設などに近い場所に限定してこれだけの場所を確保いたしまし た。この間約1年間時間を用意しております。前回、武田委員がまちの不動産屋と仲良 くするといろいろなメリットがあるとおっしゃっていましたが、我々は初めて行く土地 でございますので、そういうつてもなくて、1軒を借りるのに実は23軒の不動産屋、大 家さんに断られた、障害者が使うという理由で、実はそういう目にも遭っているわけで あります。  次の(8)頁でありますが、入所施設を廃止いたしまして、通所施設を開設したことに おいて、年間7,800万円の公費の減収ということになりました。これは都単を入れまし て入所施設の場合は併設通所含めて1億3,700万ほど、公費をいただいておりましたが、 通所に切り換えたことによって5,900万ぐらいで運営できるようになったということで あります。  私がここで今日申し上げたいのは、先程、大供給源が福祉施設だとおっしゃられまし たが、授産施設の中の73%ぐらいが1級2級の障害者の方であります。本当に授産の中 身を精査して皆さん方発言されているのかどうか、要するに我々セルプ協が自主的に情 報収集して、情報公開している資料をもとに今まで話をされ、資料が作られてきている わけです。  これは私に言わせると本来行政がやるべきなんです。授産施設、更生施設、療護施設 等々の実態を調査して、施設体系の在り方を語るなり、就労の在り方を語るべきだろ う。なぜ我々民間団体の資料をもとにして、こういう話をしなければならないのか。で すから間違った情報が伝わっていくわけです。このことはぜひ今回就労体系の在り方等 議論されているのであれば、的確な情報を、抽出でも結構ですから、とられて本当に仕 事に結びつく人がどのぐらいいるのか、このデータをこの審議会に出していただきた い、こういうふうに思うわけであります。  それから(12)頁を見ていただきたいのですが、授産施設は賃金が安いとよく言われま す。それでも平均2万円近く払っているわけです。しかし知的の更生施設、これは同じ 作業訓練をやるということが機能の中に含まれているんですね。作業指導員も配置され ています。作業療法指導員じゃないんですね。作業指導員が配置されているんですね。  そしてこの(12)頁のここに書いている条項は、平成14年度までの条項で、15年4月1 日から新しく条項が変わっておりますので訂正をしておきますが、28条の3、これは知 的障害者福祉施設の設備及び運営に関する基準、ここに作業指導員の項目がございま す。そして37条にこういうことが書かれています。入所者に対し、その能力を活用する ことによって、社会経済活動に参加することができるようにと、これが14年度までは更 生施設は必要に応じて自立して社会生活を営むことができるように作業指導を行なうこ とと、こういうふうになっていたのが、こういうふうに変わりました。  しかし、いずれにしても更生施設は給料は払ってないんです。全く払わないで作業を やらせている施設です。更生施設の中には賃金を払っている施設も出てきています。こ れは施設長がおかしい、何でタダで働かすのかということで、賃金を払っている施設も 福岡にはあります。そういうふうに授産と更生施設はどこが違うのか、この精査もきち んとやっていただかなければ、本当の姿というものが出て来ないんじゃないかというふ うに思います。以上です。 ○京極部会長  ありがとうございました。実践に基づく貴重な報告でございました。御質問御意見等 ございましたらどうぞ。順次お願いいたします。 ○堂本委員  大変な御苦労をされてきたことが今のデータを拝見してとてもよくわかりました。最 後におっしゃった、本来なら行政がやるべき仕事なのだろうと、私もそう思います。私 たち大変遅まきながら、千葉県では障害者の就業を希望する人が大体14,000人、その中 で実際就業している人は52%、大体半分ぐらいです。つい最近始めたことですが、でき るだけどういう仕事が向いているのかということで、キャリアセンターという形で障害 のある方たちにそこで先程の訓練と申しますか,そういうことをしてジョブコーチの方 にずっとついていていただく、そして工業団地の中にそれは開設したばかりですが、そ こから2人ぐらいやっと就職できた人が出て来ました。僅か1、2カ月のことですが。  そして就職してそのジョブコーチが会社までついて行って、会社の方にこの人はどう いう仕事が向いているかというようなことを説明したり、それからさっき丹下委員のお っしゃったことの中で私がやはりいろいろ難しいだろうなと思ったのは、企業の方はや はりこの人は就労向きなのか、それとも福祉就労向きなのか、やはりその選別をとかく されてしまうということが障害者の可能性を限定してしまうのではないかというふうに 思います。ですから実際に就労というのは大変な緊張だと思います。その緊張のために やれることもやれない、そこをジョブコーチが一緒に行くことによって企業の方にも分 かっていただく。  そして内部訓練というふうにおっしゃいましたが、内部訓練では中小企業はできませ ん。ですからそれを行政の方で、またちょっとそこで緊張があるのであれば、またその センターの方に来ていただいて、そこでまた訓練をしなおして、またその生活の仕方、 あるいはその企業の中での挨拶その他についてもまたわかっていただいて、また企業の 方に行くというような形で、だんだん就労への能力開発と申しますか、それから訓練と 申しますか、慣れと申しますか、そういったものをつけていくことがとても大事だろう というふうに思います。  今、行政がとおっしゃった、そこの部分でこれから行政がやっていかなければいけな いことが大変多い領域だろうと思うんですが、私が大変難しさを感じたことの一つは、 やはり先程も斎藤委員が御指摘になりましたように、かつて厚生省と労働省の間の二つ の部署の時にはやはり労働と福祉というのが二分されていて、それが統合されない行政 だった。そのために特に精神障害の方はその谷間に落ちていて、私もその両方を駆けず り回っても、やはりどっちでも担当していませんというお返事をいただいことが何度も ありましたが、そのことがずいぶんと改善されて、いま厚生労働省になって、そこに初 めて、まさに本当ならば何十年前からやるべきことがやっと始まったということは、本 当に嬉しく思っております。  唯一不便さを感じましたのは、最近地方自治体が就労を手掛けてもいいというふうに 改正されましたが、やはり労働の方はどちらかというとナショナルレベル、ハローワー クもそうです。そして福祉の方は分権化されているということで、その間の行政の仕組 みのまだアンバランスがあるように思います。今、斎藤委員がおっしゃったように、行 政の中で就労と福祉と生活とか仕事とか、それから訓練とか、そういったこと全てを一 つの地域の中できちっとやって誰もが障害を持っていても、その地域でその人なりに暮 らすことも働くこともできるようにするためには、制度としてもう少し、まだ大変労働 の方と福祉の方との国と地方との関係が一緒にマッチングすることが難しい状況にあ る。  千葉の場合はそれでもハローワークの方にも連携していただいて、一緒にやっている のですが、それは相当そこのところで意図的にそれをやらないとできない。だから全国 規模で実際にもっと就労を容易にして、しかもそこでもって障害者が暮らせるというシ ステムを作るために、そこのところをぜひ御検討いただきたい。これは行政の方に申し 上げたいというふうに思います。  私たち、今はその三障害一緒にその就労のためのキャリアセンターを立ち上げたわけ ですが、国の方からもこの間来ていただいたんですが、次のこととしてはいかに近くに 暮しを担保していけるのかということがあるというふうに思っています。ということで 今の本当に民間でなさるのがいかばかり大変だったかというふうに思います。だからと 言って全部行政でやりきれるということではないと思いますが、今の時代ですと民間と 行政とがいかによく組み合わせてパートナーシップをやっていくかということで、もっ ともっとやり易くなる。特に私どもの場合は工業団地の中に建物があったものですか ら、そこでやっているので、企業の方とも大変いい連携を最初からとっています。  ということで企業の方たちとも、それからいろんな福祉関係の民間の方たちとも、N POの方たちとも一緒になりながら、行政が核の部分でそのサービスをさせていただく ということがやはりいいのかなというふうに思っておりますので、発言させていただき ました。ありがとうございました。 ○京極部会長  他にどうでしょうか。 ○安藤委員  安藤です。丹下さんの報告に関係してちょっと質問ですが、一つは障害者の就労とか 暮しの問題のキーワードは、職場とか暮しの環境をどう整備していくかにかかっている のではないかと思っています。丹下さんのお話の中で、企業が求めるものとして戦力の 話が出ましたが、この戦力を考えてみますと、障害のない人たちの場合でも入社してす ぐに即戦力となるということはほとんどないわけなんです。企業が戦力になるまでの一 定の期間養成のための投資をしなくてはならないんです。それには聞こえる人たちに教 えた環境の整備があるのですが、障害者が入る場合、その障害に応じた環境の整備とい うものがほとんどなされないままに戦力と言われても非常に不合理ではないかと思うん ですね。それは斎藤さんの言われた施設から一般企業へ就職しても、50%がもとに戻る ということを、それは環境の問題も大きな問題があるのではないかと思うんです。  考えてみますと行政レベルの福祉の理念というものはもう国際的に見ても日本は高い レベルにあると思うんです。ただ、社会的企業的な福祉の理念というものが非常に遅れ るわけですね。これから障害者が社会に参加する場合、その地域で生活する場合、その 社会的合理的な理念というものをもっと高めていかなくてはならないわけです。そうす ることで企業とか社会についての中での環境をどう整備していくか、その方向をはっき りと整理する必要があるのではないかと思うんですね。  したがって丹下さんにも斎藤さんにもお聞きしたいんですが、企業としての環境が整 備そのものがどのように進んでいるのか、また斎藤さんの言われるように企業に入って 50%という大きな数字が失敗して元に戻らなくてはならないという、その環境等の面で どのような具体的な問題があるのかということをお伺いしたいと思います。以上です。 ○京極部会長  丹下委員、斎藤委員、一言ずつお願いいたします。 ○丹下委員  企業で受け入れる時に費やす費用とか労力、これは実は障害をお持ちの方もそうでな い方もその手間につきましては同じと申し上げていいと思います。ですからそのことで 企業が負担感を感じるということはないわけでございまして、ただ、申し上げましたよ うに障害をお持ちの方も、健常の方で、しかもなお健常の方の中でも企業の中心になる ような立場の方ばかりで企業は構成されているわけではないかということを私は申し上 げたと思いますが、いろんな仕事が企業の中にあって、いろんな障害者の方が溶け込め る余地があるということなんですね。そのために企業は、企業へ入ってくるまでの少な くとも準備性だけは持っていただきたい。それから先は企業が引き受けて費用と労力を 費やして一人前の戦力にしていきます。その一人前というのは誤解のないようにお願い したいと思うんですが、やはり企業としてはハンディキャップを十分に考えて一人前だ と、こういう具合にお受け取りいただきたいと思います。 ○斎藤委員  今の安藤委員の質問なんですが、なぜどういう状況で企業を離職してきたのかという わけですが、まず身体障害者の場合は、バリアフリー対策がほとんどの企業でされてな いということが精神的にかなり苦痛だということをおっしゃっています。それからもう 一つ、私のところは聴覚障害とのダブル障害の人が何人かいるわけですが、手話通訳な んかが全く企業にないわけでして、大体いつも孤立している状況だ。やっぱり会話が欲 しいようなことで離職したというようなことであります。 ○京極部会長  藤井さんのお話があとで控えていますが、私の方から一つだけ、これは行政の側でお 答えになってもかまわないんですが、保護雇用という言葉がありますが、私はどうも日 本の施設の場合、福祉的就労か一般的就労か二元化されている気がするんですね。諸外 国で実際に保護雇用と呼んでいるかわかりませんが、要するに一般企業でもいろんなバ リアフリーをやったり、ジョブコーチがいたりしてやっているのは一種の保護雇用で、 堂々とその給料は貰っているという、つまり一般就労よりもかなりかかった保護雇用 で、そして福祉の場合でも福祉工場みたいな方は保護雇用で、実際の施設はちょうどそ の間ぐらいで、つまり雇用被雇用関係では必ずしもないので、入所者という形ですね。  だからそのあたりの整理が、これからの障害者福祉を考えていく時に、更生施設、そ して授産施設、工場それから一般企業における保護的な就労支援という流れがどうもよ く見えてないという感じをしまして、斎藤委員の大変な御努力で、これは授産施設でも 相当優秀な授産施設なので、数字的にも賃金も結構とっている方でございますが、一般 的にはそこまでいかないところがたくさんございますので、相当な御努力の結果なんで すが、このあたりをどう考えたらいいか、ちょっと整理する必要があるのではないかと 思っておりますが。もし行政の方で何か御説明することがございましたらお願いしま す。 ○村木課長  福祉的就労とか一般就労という言葉も、この間定義があるかという御質問があったよ うに、これも行政的に定義をしていませんし、まして保護雇用というのは日本の中では あまり用語としては使って来なかったわけで、まさしく京極先生がおっしゃったよう に、企業の中に働いている方にもいろんなサポートが今は相当ついていますし、それか ら福祉工場のようにまさしく福祉施策と雇用施策から両方から支援がある世界もござい ますし、それから授産や更生といった、かなりグラデーションがありますから、そこは やっぱり機能とそれに対する施策の整理というのをして、概念整理をする必要がおそら くあるんだろうというふうに思っております。 ○徳川委員  今、丹下委員と斎藤委員のお話を伺って、企業側の見方と施設側の見方は、やはり根 本的には違うんだなと思いますね。今、課長がおっしゃったように、いろんな面で企業 も福祉に近づいて、お互いに歩み寄っているのですが、やはり企業というのは基本的に 利潤追求を目的としているし、付加価値の問題もあると思います。、福祉施設の方では やはり発達保障が目的であり、また生活保障も重要であり、基本的に違います。それを どう合わせるか、やはりお二人の話を聞いているとずいぶん近づいたけど溝もある、そ の溝にどういうふうにして橋を架けるかというのが我々のこれからの議論の中心ではな いかと思うんですね。  私はいろんな橋の架け方があると思うのですが、その中で一つだけ気になったのは、 今お話を聞いていると、障害があるから、あるところは役立つけれども、普通よりもや はり50%の能力しかないというふうな見方がどうも根底にあったと思うんです。私はそ うじゃなくて、障害があるがゆえにもっと一般の人よりも高い能力を持っているという 特性があると思うんですね。  例えばこれは一例かもしれないし、失礼になってはいけないんだけれども、知的障害 者の場合はそうでない方よりもずっと持続力がある、同じ作業をずっと続けてやってい くという力がある。そしてまたいろんな障害を持った方が組み合わせをすることによっ て、よりいいものを作ることができる。そういった障害者の持っている健常者にない特 性を見いだしていくというところに、やはり企業の利潤追求と施設の発達保障との間の 橋渡しがあるんじゃないか。こういうふうにして両方を合わせていく方法を模索してい かないと、どこまでたっても溝が残るのではないかと思います。 ○京極部会長  それでは次は藤井さんからよろしくお願いいたします。 ○藤井氏  皆さんお疲れだと思うんですが、最後まで気をしっかり持って聞いてください。きょ うされん、これは共同作業所全国連絡会の略称できょうされんというのですが、今はこ れが正式団体名です。私はこの就労分野に関しまして、一言でこれを言えと言われたら 閉塞感と、こう言いたいですね。もう一言言ってもいいと言われたら格差感を感じると 言いたいと思うんです。この閉塞感と格差感のこの二つの感覚をどう払拭するか、この 払拭の度合いがすなわち就労施策の多分発展の度合いに比例するかと思っています。今 からお話をすることもこういう点で問題提起をしてみようと思っています。  まず、この就労問題に入る前に、この審議会でも冒頭であったようですが、そもそも 就労でも、あるいはこの審議会の中心テーマである介護でも、所詮手段であって、目的 は幸せな生活を送ること、これをもっと平たく言いますと安心で安定した、あるいは安 全な地域生活を維持できることと、こうなりますね。あの安全、安心、安定という地域 生活を考えてみた場合に、やはり私は基幹となる機関というのは幹になる、この施策と いうのは四つだろうと思っています。これは前からの持論です。  一つは日中自分の身に置く場所、一般的に働くということ、あるいは重い障害の場合 にはアクティビティの場が必要だ。もう一点は住まい、生活の場です。三つ目には人的 な支えです。四つ目には所得保障です。非障害者の場合には就労で所得は得られます が、重い障害者の場合には得られません。あるいはかなり不十分です。これをきちんと 確立するということが基本での経済基盤です。これに加えて、障害によっては医療とか バリアフリーという物的な環境条件とか、あるいは文化的な面とかと加わりますが、こ れはオプション分野として考えてもらっていいと思うんですね。  こういう点で言うと、特に今日のテーマであります、私に関係深いのはこの働くとい う問題、これに今日は照準を当てようと思っているんです。その前にこの四つの分野と いうのは精神障害者を含めて全ての障害共通です。この量と質がおそらく、この地域は 進んでいるねとか、この地域は進んでないという、一つのバロメーターかと思っていま す。  さらに特にこの一本目の働くという問題に焦点を当てますが、現状の働く問題の問題 現象、あるいは現象と言ってもいいかと思いますが、これを九項目であげてみました。 まずは一般就労の問題になるのですが、これがもう常態化している、慢性化している雇 用率未達成の低迷。皆さん方御存知のようにヨーロッパなんかではおよそ人口の比例分 ぐらいは法定雇用を作っているのですが、日本は非常に低いわけです。僅か1.8%です。 でもこれも26年間一回もクリアしてない。まあつまり違法行為が常態化しているわけで す。  もう一点は障害種別間の格差が厳然としてこの雇用でもある。特に精神障害者とかて んかんとか、あるいはそういうふうな障害の一部を省かれているということですね。そ れから増えない福祉工場、これは資料1ということになっていますが、福祉工場ができ あがってもう30年以上経ちます。でも一向に増えない。身体障害者の福祉工場は全国の 市町村を見ると、設置されている市町村は31市町村です。そして知的でいうと42、精神 では13市町村しかないのです。  そしてもう一方で、四つ目として通所型の施設が増えているということです。通所授 産、通所更生を含めてです。これはお手元の資料2と出ていますが、これは現在通所型 の施設制度というのは10種類あります。身障・知的、あるいは身障の中でも福祉工場、 通所あるいは入所、小規模通所というタイプに分けていきますと、同じように障害種別 あるいは通所更生も含めて10種類あって、これが増えてきているということ。それから 小規模作業所が激増傾向がやまないということです。急増傾向がやまないということで す。  これが先程斎藤委員がおっしゃった、いわゆる授産と更生の利用者のボーダレス化と いうことなどもあったり、一番下の方には教育と卒業後の、あるいは入院後と退院後の 不連続性ということ、これにかかっている経費の差というのはべらぼうですね。教育年 限と、あるいは医療に入っている期間と退院した後、卒業後とかね、こういう現象があ る。とりわけ問題にしたいのは、A、C、D、E、つまり伸びない雇用、増えない福祉 工場、増える通所型、激増する小規模作業所という、この四つの現象だけ見ても、政策 の方向はあると思うんです。考えるヒントがいっぱいあると思うんです。こういう状況 になっているということをまず押さえてください。  なぜこういうことかというと、ここにいる方々は専門家なので詳しくは言いません が、一つは縦割り行政の弊害です。非一貫性、あるいは非系統性、あるいは非調整性に よる、例えばよく出る話なんですが、養護学校を卒業します、あるいは医療機関を退院 します、自分が行った先の相談機関、これが福祉系か労働系かによって一生が規定され てしまう。もう運みたいなものです。これは福祉行政と労働行政のある面では非調整性 がある。  それからやっぱり私は先程おっしゃったCSRという、やはり企業の障害者分野の参 加が弱いということですね。いわゆる社会的な責任ということですね。やはりこれはい ろんな理由をあれこれ言うにしても、やっぱり大企業ほど未達成が多いということの現 象だけ見ても、一般の国民はこれはやはりおかしいと思うわけです。  しかも今言ったように常態化している雇用率未達成、26年間もですね。これも皆さん 知っていますように今1.48%ですが、これもあれこれ数字をいじったんですね。ダブル カウントしてみたり、短時間労働を組み入れてみたり、これは昔の計算式を言うと一番 最初の昭和53年に一回目を発表していますが、1.09%です。これよりも現状は若干低い んです。前の計算式で言いますとね。等々を含めてここの部分をどういうふうに考える かということが一つありますね。  それから次に今日強調しておきたいことは、やはり障害者の、たとえは小規模作業所 が増えるということなんですが、非常に社会資源が少ないということです。最も矛盾が 凝縮している、あるいは集積していますのは精神障害分野です。資料3を見てくださ い。これを見ますと、これは精神障害者の社会復帰施設がちょうど本年度はできあがっ てから15年が過ぎました。あれこれ5種類、よってたかってこれが1カ所でも設置され ている市町村はたったの15.8%、つまり15年前にできあがった制度ですから、ほぼ1% ずつアップしているということです。最近は町村合併していますから多少カウントが増 えていますが、実際は大変厳しい状況が続いている。これを授産とか福祉工場に限定す ると10%割っています。こういう状況です。これは身障知的もご多分にもれずほぼ変わ りません。つまりないんですね。いわゆる被雇用の、しかし働く場という授産施設とか 福祉工場というのはないということです。これは大きい問題です。  こういう中で我が国の小規模作業所問題というのは一つの今日の問題の警鐘を鳴らし ているということ、あるいは防衛反応として認められればいいと思うんですが、どうか ということですね。まず沿革ということですが、その沿革は今日は省きますが、資料2 の方のこういう経過をたどっています。つまり最近の日本では右肩上がりというのは珍 しいんです。ぐんぐん上がっているんですね。とうとう6,000カ所を超えました。これ は補助金を貰ってない都道府県がありますので現状では6,300を超えています。そして これに小規模通所も加わっていくんですが、相当一般の授産ではないというのが多いと いうことですね。  その背景は、これは資料4ですが、もう一回言いますと、じゃあ身体・知的・精神全 部合わせまして、通所授産で働く場の法定施設です、これが1カ所でもあるという市町 村は24.8%、つまり4分の1なんですね。4分の3は全くこれがないという地域であり ます。つまり通うにも通う場がないということが一つは大きな問題として小規模作業所 の増生の背景にあるということですね。  精神は同じく、もっと厳しい状況です。資料4−(2)ですが、これはもっと厳しい状 況が続いているということですから、ほとんど焼け石に水という状況でいっもいいと思 うんです。そして現状では、ここにありますように、さっき言いました都道府県別まち まちなんですが、この資料の5にありますように、2枚目の方の一番右下に最新の値、 都道府県合計しまして6,025というのが出ています。そこの3枚目には都道府県の補助 金のこんなに差があるということが出ています。  さて、この小規模作業所というものは一体どういう機能、あるいは既存の制度の関係 でどういうふうに見ていくかな、これば資料6に図式してみました。つまり今日の障害 者の就労政策と申しますのは、一般就労を頭にいれながら、そして次は福祉工場や授産 施設、デイサービス事業という、およそ障害程度によって分かれています。小規模作業 所はいずれも若干かぶっている。特に雇用でも一部かぶっているということ、つまり自 分の地域で働く場がないという方々がいます。  精神障害でもやっぱり一般就労能力を持っていながら、たまたま昼休みに薬を飲んで いるのを見られて、ああ俺はもう見られちゃった、いけない、夜間残業に残れと言われ て夜間診療を断ってしまって再発というのが起こってくる。こういう状況を経まして考 えていくと、一般就労も一部いらっしゃる、そして授産福祉工場、デイサービス、かつ てデイサービスでもっと重い層もいらっしゃいます。重症心身に近い、たとえば経管栄 養の方なんかも一部いらっしゃる。  そうしますとどうも小規模作業所だけの政策というよりは、既存のこの制度の量と質 の不備が生んでいるということですね。もし量と質が解決して、なお残っていくのがあ るのかどうか、これはわかりません。一部あるかもわかりませんが、私はおよそこれは 本来は消えていく、今の制度と質の量の不備、特に量、これのもっているやはり原因だ と思っています。  さて、そういう中で改めて小規模作業所問題の本質というのは、いまの繰り返しにな りますが、就労関係の、とりわけ被雇用政策の就労関係の社会資源の量と質の不備に対 する警鐘である、防衛反応であるということですね。したがってこの解消の基本視点は いかに量と質を増やすかということになると思いますね。  さて次のコーナーに入りますが、もう少しズームを引きまして障害者の就労というこ と、働くということを考えていきましょう。この生活を維持していくためには三つの要 素、すなわち本人のニード、つまり働く意思ですね。労働能力、そして支援施策、特に 生活面ですね。これの関係性の中でおそらく働けるんだろうなあ、一般就労でも、ある いは自営であってもですね。  そしてじゃあ働く体系というのは少し図式化してみるとどうか、これは資料7です。 これは場合によっては将来もこうなるかわかりませんが、ここにありますように障害の 程度が割と軽度、生産性が高いという方々は雇用または自営、そしてやや重いという方 々、あるいは生産性ということはある方も一部いらっしゃるということで福祉工場、授 産、そしてこのDというところはデイアクティビィティということですね。そして職業 前訓練、あるいは職業訓練、あるいは再調整、再調整というのは一般就労した方々が一 旦戻ってくる、多分こういうふうになってくるんだという、主要な四層ですね。  Dというところ、これは仮住まいです。したがってロングスパンで言うならばAB C、おそらくこれまではこの実線が太過ぎた、壁が厚過ぎたということですね。したが ってこの部分をどうグラデーション、つまりここを低くしていくのかということが一つ の大きなテーマだと思うんですね。小規模作業所はもっぱらBとCに入っているという ことになっていると思うんです。  実はここで一つは提起したいことは、これまでの我が国の労働行政、福祉行政を含め てなんですが、上半分を労働行政が担ってきたんです。下半分を厚生行政が担ってきた んです。私はこれからは一つは四つ全部を労働行政が担う、四つ全部を福祉行政が担 う、つまりこのAにあってもやはり生活支援という問題は大変重要です。暮しの基礎を 含めて。一方でDというところ、これも軽作業が一部あるかもわかりません、ここには 労働行政の応援でもって企業の仕事をもらうということもあるかもわかりません。つま り上半分は労働行政、下半分は福祉行政ではなくて、多少濃淡はありますよ、全部に関 わるという、つまりもっとはっきり言いますと、統合効果の発揮ということをどうする のかということですね。そして今言った流動化という言葉もあってもいいと思うんです ね。そういう点で言うと、この統合効果と流動化というのは一つのキーワードであろう というふうに思っています。そういう中に小規模作業所の方向性が出てくるんじゃない か。  以上、こういうことをふまえまして当面の課題になりますが、一つはやはりまずはこ の評価、あるいは判定、相談という機能、さっき丹下委員がおっしゃっていましたが、 我が国では労働能力に関する評価というものはまだきちんと開発はしていません。これ を含めてこの一元化、一元化というのは福祉と就労に加えて後期中等教育も含めてなん ですが、この一元化ということです。  そして二つ目はシエルタレンペルメント、いわゆる保護雇用、日本では保護というこ とがつくのですが,要するに企業就職をしやすい条件をどうするのか、それは現行の福 祉工場もありますし、一般雇用に向けてもう少し様々手当てを講じる、私は決め手は人 のケア、人的なケアだと思っています。ジョブコーチングだけではありません。ジョブ サポーターの方もいるんだろうと思っています。これらを含めて、あるいは雇用後のア フターケアを含めて、この部分をどうするのかということ。  それから三つ目は、これはさっきから出ていますように絶対数をどう増やすのかとい うこと、こんなに6,000カ所というのは異常なことなんです。それは多くの背景が社会 資源の貧寒さということをからしますと、これはどうするのか。これは新しい公共事業 論か何かないと、おそらく難しいかわかりませんが、これはどうするのかということで すね。それでもまだまだ小規模もない地域がいっぱいあるんですよ。  それから重度重症重複、この障害者、これのやっぱり適合化をもてる社会資源の創 設、デイサービスはダメですね。これらをどうするのか。あるいは精神障害者について は非医療デイケアとか、非医療のデイアクティビティセンターをどうするのかというこ とを含めて、非雇用、非医療の場を本格的に作っていくということですね。  こういうことを当面の課題ということですが、最後にまとめとしましては、これはど うしても言わないといけないことは、実はこういった提言というのはもうかなり繰り返 しあったんですね。特に90年代に。例えば授産施設制度在り方検討委員会というのは92 年です。ちょうどあの時も申年でした。そしてあの時の座長は京極先生でした。つまり 立派に機能分化論もありましたし、方向性はあったんです。95年には高松先生を中心と したデイアクティビティセンター、活動センターの立派な提言が出ています。97年、98 年には障害関連合同三審議委員会の中間報告、あるいは最終報告が出ています。ここで も立派な方向が出ています。  どうも方向だけは議論するんだけれども、実効性が伴わないということ、きょうされ んができあがって今26年間ですが、今日数えましたら、厚生課長は8人、そして企画課 長は6人、10人も変わったんですよ。たえず先送りだけです。したがってそういう点で 言うと、やはり私は答は見えている、その方程式をどうするか、正解というのはもう大 体わかっているんです。それが一つです。  それからやはり小規模作業所は今言いましたように、これにつきましてはやはりこれ からの日本の非常にネガティブな面ばかりではありません、これの持っているいろんな 面はありますが、やはりこのことの、これを放っておいて私はどうもこの審議会という のはないんじゃないかと思うんです。やはりこの分野、問題というのは、日本における 一つの障害者政策の発展のバロメーターだと思っております。  以上、こういうことで小規模問題ではあったんですが、就労問題全般を含めて、そし て最後に就労問題というのはやっぱり所得保障につながるテーマであるということ、社 会参加を実質化するテーマであるということ、最も人間らしい営みというテーマである ということ、こういう点でこの国が力がなかったら別ですが、力がある国なんです。や っぱりこの国にふさわしい方向はもう出すべきだと思っています。ぜひ審議委員の方々 の真剣な議論を期待しながら発表を終わります。 ○京極部会長  それではただいまの藤井さんの発言について御質問とか御意見がございましたら、ど うぞ順次お願いいたします。 ○武田委員  藤井さんに質問したいのですが、その前に実は私どもの方で精神障害者を地域でサポ ートするにはやはり医療との密接な連携が欠かせないということで、診療所の開設計画 を今たてているのですが、そこで驚いたことは、例えば作業所を作るとかグループホー ムを作るといった時に、障害者プランがありますよね。グループホームなども私たちは もう圏域でいっぱいですから、作ろうと思ってももう作れないんです。作業所も小規模 通所授産の方に手をあげたけれども、圏域にもうすでにあるからダメだということで、 落とされてしまうという状況なんですよね。それが今藤井さんの報告にあったように、 十分ではないということは誰も知っている、知っているけれども障害者プランの数値上 はもういっぱいであるという現象が起きています。  片や診療所という時に、実はこんなに簡単に診療所って開設できるのか。簡単にと言 っても医者がいないと診療所はできない。それが一つ驚いたこととです。もう一つ、デ イケアとデイケアの医療によるデイケアと、じゃあ私たちやっている作業所とどれぐら いの差があるんだろうかということをよく考えて、比較したりとかしているのですが、 そんなに大きな差があるとは思わないし、コストから見ていくとデイケアの方が非常に 高コストがかけられている。じゃあ同じ日中活動の場として作業所はどうかと考えた時 に、非常にローコストである。そのローコストの作業所はなかなかできない、ハイコス トのデイケアはすぐにできる。  あるところにちょっと見学をさせていただいた時に、250人のデイケアがあっという 間にできちゃう。そこにはもちろん作るのにあたって非常に高い投資しなければならな いということがあるかもしれませんが、その高い投資をしたとしてもそれが回収される 仕組みがある、でも作業所にはもちろんかけるコストもないんだけれども、開くことも できないという、最近とみにこれだけ日中の活動、就労の問題であったり、アクティビ ティの問題であったりということ、すでにいろんな方たちが量が足りない、質の問題に まず量が足りないということがあるにも関わらず、そういった状況があるということ で、いま本当に藤井さん、それから斎藤委員などの御発言はそのまま私たち日々思って いることを代表して言ってくださったんですが、藤井さんにお尋ねしたいのは、そうい った中でまず本当に何から着手したらいいのかということをお聞きしたいことと、もう すでに政策提言が出揃っているということでしたが、そういったところで特に何をその 政策提言の中で強調されたいかということをお伺いしたいと思います。 ○藤井氏  何からということなんですが、おそらく皆さん方、目をつぶって考えてみてくださ い。ちょうど15年前は89年、福祉8法が変わって、93年には障害者基本法が改正され る、95年には障害者プラン、そして社会福祉基礎構造、新プラン、ずっと手は打たれて きたんですね。でもこの15年間入所施設の定員数は増える一方です。社会的に見れば微 減です、横ばいです。無認可作業所は2倍ですね。つまり手は打たれても効果はなかっ たんです。とすると、私は少し急がば回れじゃないけれども、立法体系を含めて少し法 律上の問題をやっぱり考えなくちゃあいけない。  精神で言うならば、今日は精神保健福祉課長もいらっしゃると思うんですが、高橋先 生もいらっしゃいますね。あの精神保健福祉法第5条の精神障害とは、精神分裂病また はコメントがあって、その他精神疾患を有するものを言う、精神障害者イコール精神疾 患者、障害イコール病者、あそこから医療施策の根拠がなくても福祉施策の根拠は生れ てきません。  つまりもっと根本問題を考えなければ、どうも部分的にいじっても、多分これは5〜 6年あとにまた同じ問題が出てくるんじゃないか。だからどこからかということは、ち ょっと私は今までの流れで言いますと、とりあえずとか一歩前進、あと振り返ったら一 歩前進二歩後退、つまりもうそういうことはやめましょうということなんです。  したがって今日は話ができませんでしたが、精神保健福祉法でいうならば、本当に今 度の定時改正はどうするのかという方向もありますし、例えばそろそろ障害種別を超え た地域生活支援法とか、そういう原因療法に手をつけるべきじゃないか。ましてやこう いう大きな今回転換期です。少なくとも方向性を確かめあうということはして欲しい な。  それから二点目の、これのいわゆる今まで何回も提言もあったし、あるいはその答申 もありました。私はポイントはやっぱり今言った、機能分化をきちんとするという問題 と、そして機能分化の間のやっぱり流動性をつけるということ、それは言い換えれば安 心、企業も安心、あるいは御本人も安心という、機能分化と流動性というのはキーワー ドではないかな。そのことはまずあったわけですから、これはなぜできなかったのか、 2001年、今から3年前に行政が統合されましたね。この統合効果をもうそろそろ発揮す る時期、したがってこの審議会のポイントは、やっぱり隠れキーワードは統合効果の発 揮ということをぜひ考えて欲しいと思うんですね。 ○猪俣委員  藤井先生に非常にわかりやすく問題提起をしていただいたと思います。特に細かな具 体的な政策提言に関しては、すでにもう10年15年前から個別には論議されてきたという のは、私も全くその通りだろうと感じています。ただ、この三障害を統合した形で施策 をどうするかという問題を考え始まったのは、これは決して古い歴史があるわけではな くて、そういう意味では非常に大きなチャンスだろうと思うんですね。  宮城ではちょうど浅野知事が知的障害者の施設の解体宣言というのを提起されまし た。これは施設を完全に直ちになくするということではなくて、基本的に知的障害者が 地域の中で生活していくためにはどうするのかという、そこをまず出発点にして考えて いこうという発想で、私は極めて自然な発想だろうと思います。これは精神障害に関し ても、社会的入院の解消、病床削減という考え方は、これはやはり精神障害者であって も地域生活をどう援助していくのか、まずそこが出発点であるという、こういう基本的 な理念に基づいて考えるようになったのはそう昔のことではない、今回の新しいこの審 議会の存在意味があるんだろうと思うんですね。  ただし、ここでいろいろ出てきた就労の問題であるとか、あるいは住まいの問題であ るとか、各論に関して言いますと、かなりの部分はもう論議されてきている。それはお そらく前にも座長をやられた京極先生は一番御存知で、腹立たしい思いもしておられる のではないかと思いますし、それから歴代の厚生労働省の担当課長さんたちも前任者の 引き継ぎでこういうことはかなりの議論の煮詰まりがあるんだというふうに認識してお らなければ嘘だと思うんですね。  ですから最後、これは最後に藤井先生はいかにして実行体制を構築していくのが問わ れているんだというふうにまとめてくださったんだろうと思うんです。新しい理念の上 に立ってどう実行していく体制を作るのかという、これは議論の出発点に戻るようで申 し訳ないんですが、そもそもそういう姿勢で藤井さんのお話を受け止めさせていただき ました。ありがとうございました。 ○京極部会長  どうもありがとうございました。猪俣委員から出たことなんですが、介護保険の時は 保健医療福祉の連携ということで、単なる財政システムじゃない保険の導入と考えたん ですが、障害者に対する介護サービスのあり方においては、保健医療福祉の連携のみな らず、やっぱり就労支援とか、あるいは住まい方も入るのかもしれませんが、そこまで 入れた広義の介護サービスという考え方でいかないといけないと思うんですが、どうも この縦割りの議論というのは障害種別の縦割りもあるし、それから保健医療と福祉と就 労支援の縦割り、これは労働省、厚生省分かれた時からずっとあるんですが、そういう ものを領域別の縦割りといいますか、これもなくしていかなくちゃあいけないという、 大きな課題がありまして、おそらくいろいろやってきたんだけど、やっぱり縦割りの組 織形態でやっていくと議論がまた埋没してしまって先に進まないという、だから単に方 針が明確になっていてできないかというと、どうもこの12年、それだけじゃあない問題 があって、やっぱり税金に基づく措置制度とか支援費制度もそうですが、そういう宿命 をどうも持っているんじゃないかという気もしておりますが、これは今後の大きな議論 なので、とりあえずお三方から話を伺いましたので、全体として就労支援について何か こうあるべきだとか、個々の今日のご発表者への御質問というのではなくて、あり方に ついて何か御提言、意見がありましたらどうぞお願いします。 ○堂本委員  私は藤井さんの小規模作業所を見に行ったのは多分この前の申年のもう少し前だった かなと思っていますが、その頃からもう本当に今日おっしゃったようなこと、ずいぶん いろいろ制度が成熟してきたので、変わってはいますけれども、本質は同じような気が します。それでいま猪俣委員がおっしゃったように、どう実行するかというところに来 ていると思います。まさに統合効果というのは中央の厚生労働省になったことで本当に 出して欲しい、これは非常に出して欲しい。  そして私は自分が知事になってみてつくづく今思っていることは、さっき申し上げた ように障害者の就業支援、キャリアセンターというのを作って、それからそこでまた同 時にジョブサポートまではないけど、ジョブコーチまではやって、相当機能的にそれを 動くような仕組みを作り、それからまたこのセンターを中心として障害者の専門学校と か養護学校、あるいは産業界、授産施設、そういった構成員としてのネットワークも作 りと、いろいろやっています。それでもまさに障害者の就労モデル事業をスタートしよ うとしているんですね。  でも今はたと気がついているのは、それじゃあなぜ実効があがらないのか。なぜ私た ちはずっとこういう世界に申年を何度も経験して、私も申なんですが、何度も申を迎え ながら一向にそこから先へ進まないかというと、やはり権限が国ではこれだけ先端的 な、そしてヨーロッパに負けないとは言いませんが、ヨーロッパの考え方なども入れて やっていながら、県のレベルでは私たちこういうことをやっていますが、次はやはり市 町村なんですね。  それで今京極先生から介護保険のお話が出ましたが、やはり介護保険というのは市町 村に対して福祉の面で言えば非常に大きな変革を作ったというふうに思います。今度は 障害の問題、特に精神障害はなかなか市町村では受け入れにくい部分が今までありまし た。でもそれを今度は県のレベルではある程度までできても、本当に一人一人の障害者 であれ高齢者であれ、そういう方たちが仕事ができる、本当に就労できるというために は、私は地域が、いわゆる市町村が、基礎自治体が動いていかなければダメなんじゃな いかなというふうに思っているんですね。だから藤井さんはそこのところをどう考えて らっしゃるのか、また京極先生にだってこれは伺いたいことなんですね。  私たちずっといろんな形でこれを議論して来ていながら、非常にこのパーセンテージ の数字を見るといつまで経っても何か1桁のパーセンテージで、これはとても障害を持 つ方にとって悲しいことです。そしてやはりみんなどこへ行っても一番のやりたいこと をきちっと仕事がしたい、そういう条件整備をしてもなぜ実効が上がらないのかという ところを考える時期に来ているのではないか。また振り出しに戻るような議論かもしれ ませんが、そこから考えることが大事じゃないかなというふうに思っているところで す。 ○徳川委員  今日お三人の発言があったのは非常に良かったと思います。と言うのはみんなそれぞ れ同じ労働の問題ですが、お三方の立場が違うということで、私はそこから考えると労 働って一体何なんだろうというところまで言わなければ、この問題は解決しない。労働 というのは僕は三つあると思っていて、例えば企業的に収入を得ていくということもあ るし、そして授産だったらそこで作業ができるようになっていくという一つの生き方、 そして小規模作業所でも、僕は詳しくわからないけれども、藤井さんとは前からおつき あいをしているのですが、やはりそこではある程度生き甲斐というものも非常に大きい と思う。  そうするとその収入と労働力と、それから生き甲斐ということ全部見ると、労働とい うのは僕はそういったいろんな要素が含まれている、労働って一体何なんだろうという ことをしっかり見ておかないと、障害者の労働権の問題は解決できないと思うんです ね。そして例えばいまここで問題なのは、私は療護施設と授産をやっていますが、療護 施設の場合は本当に労働からはずされた人、本当にその人たちは労働ができないかとい うと、そうじゃなくて、簡単に言いますが、全く体が動かない人がある時近くの会社の 不良コイルを解き戻す作業を本当に硬直した手で1カ月かかって10円儲けたんですよ。 そうしたら初めて自分でお金を儲けたということで、年取ったお母さんも来て手を取り 合って泣いて喜んでいる。そういうのを見るとやはり僕は労働というものはどんなに障 害が重くてもやるべきであって、そこに療護だから授産はできないとか、そういう取組 はいけないと思う。  伺いたいことは、そろそろこの施設の体系というものを見直していかなくちゃあいけ ないと思うんですね。療護だからこれはできないとか、授産だからここまでだとかいう のではなくて、一体どういうふうにこれから、労働の権利を守ることについて障害者の 方々の施設体系、または法的な制度体系をどう直すか、これについてできたら藤井さん と斎藤さんから簡単に御意見を伺いたいと思っているのですが、いかがでしょうか。 ○京極部会長  では他の質問が終わった後で一緒にお答え願います。では松友委員、お願いいたしま す。 ○松友委員  今日は大変貴重な御説明をいただきましてありがとうございました。特に丹下委員の 企業の視点からの話、私たちは本当に聞く機会が比較的少ないというのと、個人的に一 般企業の経験は全くないので、いろんな意味で非常によくわかりました。もっとある面 では率直にいろんな意見を聞きたいなと思ったんですが。ただ一つだけ発言したい。こ れは丹下委員の責任とかいうことではなくて、藤井さんがおっしゃったように、もう結 論が出ていると、この間いろんな分野で言われながらも、なぜ進まないかということで す。根本的にパラダイムを転換していかないと、積み上げ方式では無理なんじゃないか と思うのです。障害概念もガラリと変わっているわけですから。  ですから21世紀になって、右肩上がりになるのは小規模作業所だけだという話です が、そういう中で根本的な解決をするとなると、本当の意味でのパラダイムの転換をや らないといかんのじゃないか。たとえば、登校拒否なんというのは義務教育があるから 登校拒否があるので、義務教育がなくなったらなくなるわけですね。ここに関係ないこ とだから言いやすいので言うのですが。  それで、海外との比較は簡単にできないということは言えるのですが、丹下委員にち ょっとお尋ねしたいのは、これは藤井さんがちらっと書いてありましたが、要するに企 業の雇用について、組織として社会資源というものの、いわゆるレーゾン・デートルに ついて、どのように考えていらっしゃるのか。これはお前さんたちみたいな公益法人で やっているのと違うんだ、うちは商法法人でそして国際競争があって云々として言える のかもしれません。  それはよくわかるのですが、そのあたりの意見を聞かせて欲しい。いわゆる「抱き抱 える」というと変ですが、家族についても、あるいはいろんな社会資源一つの役割とい う中で、社会的責任論というのは昔から言われているのですが、そういう古い表現なの かちょっと違うのか。  要するに社会の中でいろんな行動をやっていく、企業という組織形態がやっていく時 に、いわゆる雇用としていくというか、例えば一定の公的な仕事を受注する場合には、 ある一定の条件をかますというのが米国では厳しいし、日本で今総合評価ということで 入札にあたって、たとえば障害者雇用の現状がどうかとか、欧米なんかは環境問題に対 する対応というのも絡めて、競争の中にそういうものを絡ませていく。  つまり競争とアファーマティブな形のかみ合わせの中で社会的責任を果たさせる、そ のことによって社会全体がコミュニティ、あるいは国家を含めて豊かになっていくとい うところで、それは株価にも影響をしてくるというのを聞くのですが、日本の財界とい いますか、経営界からはお前甘い甘いと言われるのか、いやいやそういう方向で言われ るのか。と申しますのは、私の知的障害の分野は、制度ができて知的雇用が特例子会社 を含めてグッと進んでいるんですね。  ですから何か積み重ね方式じゃなくて、経営者、あるいは組織のリーダーたちの社会 的貢献、あるいは国家貢献を含めた哲学というか、そのあたりも含めた何かないと企業 も前進しないんじゃないか。そのゆえに社会的な前進もしない。我々が見るとその中で 障害者雇用という問題の根本的な転換も図れないんじゃないかなという感じがするの で、そのあたりの御意見を聞かせていただければと思います。 ○京極部会長  それでは今日は名張市長がわざわざいらっしゃっていますので、ぜひ発言をしていた だきたいと思います。 ○亀井委員  先刻、堂本委員の方から基礎的自治体もっと進化しなきゃあダメよと言うふうな激励 のお言葉をいただいたように受け止めてさせていただいたわけですが、福祉8法の改正 以来、一連の動きというのは理解はさせていただいております。福祉サービス等の一元 化であったり、それから地域特性にあった対応をしていかなければならない、こういう ことで理解はさせていただいてるわけでございますが、基礎的自治体の意識が熟してな かったということは私は率直に認めさせていただきたい。こんなふうには思わせていた だいているところでございます。  しかしながら意識も高まって来ていることも確かなんです。平成12年4月の一括法施 行以来、国は地方自治体に対しても保護者としての責めは負えないよと、こういうメッ セージを発せられたわけです。いよいよやってきたなという感じで、そして5月には福 祉法が改正されて地域福祉ということも位置づけられたわけでございますから、基礎的 自治体の長もかなりの意識が改革なされているということなんですが、そこでなんです が、我々は国が縦割りであっても、基礎的自治体に来ますと、もう一本化しているわけ ですよ。ですからいろんなアイデア等も持っております。  ですからそんな中で私は中央政府にお願いしておきたいのは、いろんな制度を作って いくというよりは、規制緩和の方向で何とかお願いをいたしていきたいな、そうします と私どもは知恵を出していろんな政策展開をしていけるということになるわけです。そ れで今考えられている特区も、ちょっと頭出しがされてきたのかな、あるいはまた三位 一体改革の補完的役割を担っていただく地域再生対策債についても、そういう考え方も 盛り込まれているわけでございますから、中央政府にあってはナショナルスタンダード というのはまさにシンプルであっていただきたいなというふうに思っているわけです。 これから基礎的自治体も頑張らせていただきたいと、こういうふうに思ってございま す。 ○京極部会長  それでは住まいのこともありますので、一言ずつ今日の三人の御発言者からコメント をいただきたいと思います。 ○藤井氏  その施設体系、皆様方御存知でしょうかね。いま成人期障害者に関する社会福祉施設 体系は国立の一部を入れますと56種類か55種類ありますね。まさにパッチワークの連続 に近かったんですね。やっぱりこれは前から旧プランの時に行ってます、これはやはり 再編、あるいは複合化という方向を提示をされています。これをどう断行するかという こと、やはりさっき言った大きな機能によって分けていく。  もう一点ここで注意事項は、いくら制度の体系化を簡素化して減らしたにしても、数 が少ないとそこにまた殺到します。つまりいわゆる福祉的就労という場として作ったに しても、結局はデイサービス、あるいはデイアクティビティという方々も入って来ると いう、数が少ないと結局は集中して本来機能を崩壊してくるということですから、体系 問題、実はもう一方裏側のテーマというのは量を増やすということ、セットでこれは進 んでいくということですね。  いずれにしてもいまの厚生労働科学でもそういう研究に入っていますし、厚労省もそ ういう問題意識を持ってらっしゃいますので、それはやはり適正な再編的な、同時に量 を増やしていくということも考えるということだと思いますが。 ○京極部会長  次は斎藤委員お願いします。 ○斎藤委員  いかに一人での多くの就労者を作るかということなんですね。そしてそれが一義的に 一般企業への就労という形じゃなくて、その障害にあった就労の形というものを作り上 げて、そこから所得保障なり消費者なりになっていただく、これは当たり前のことだと 思うんですが、そこがどうも欠けているような気がするということです。 ○京極部会長  それでは丹下委員、お願いします。 ○丹下委員  まず松友委員からの先程の御質問ですが、私は先程お話申し上げた中でCSRのこと を申し上げました。簡単にしか申し上げませんでしたが、こういうことなんですね。か つて企業が社会的責任ということをしばしば口にした時期がございます。その時に大変 大きな手法としてとりあげられましたのはメセナという概念でございます。このメセナ という概念を私は決して悪いと申し上げるつもりはございませんが、今その時の考えの 社会的責任と、言われているCSRとはずいぶん違うんじゃないかという気がしており ます。  どういうふうに違うのかと言いますと、今のCSRという概念の背景には社会的な変 化がございますね。企業を社会の構成員、皆さんが注目して評価をなさってらっしゃ る、こういう目の中で企業がこれからどういうことをしていかなかなきゃあならないか という自覚が出てきたという、これが私流に言わせていただくとCSRの概念ではない かと思います。したがってその中に障害者雇用の問題がだんだん比重を増してくるの は、私は当然だと、このように考えております。それが一つです。  それから先程藤井さんがグラデーションという言葉をお使いになりました。これはま ことに私は適切な表現でいらっしゃったと思います。つまり、私はその前に機能の分化 ですとかあるいは役割分担という意味のことを申し上げました。何も機能の分化の間に 障壁を作ろうなんてということは一言も私は申し上げてないのでして、要諦はやはりグ ラデーションだと思うんですね。そのグラデーションのどこを誰が担当するのか、こう いう問題だと思います。以上です。 ○京極部会長  それでは大変恐縮なんですが、今日はもう一つの議題がございまして、だいぶ就労支 援で時間をとりましたので、多くの視点から御議論をいただきましたがありがとうござ いました。それでは住まいの確保について残された時間で御議論をいただきたいと思い ます。事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○間企画課長補佐  お手元の資料8をお開きいただきたいと思います。ここでは消費者の住まいといいま しょうか、居場所といったものについて基本的なデータを用意させていただいておりま す。1頁です。身体障害者の方の住まいの状況ですが、これを見ていただきますと、持 ち家、これは御本人の持ち家、御家族の持ち家を含めてですが、4分の3を占めるよう なデータとなっております。その他に賃貸住宅もございますし、公社公団もございま す。ここでは住まい、居住の機能ということに着目をしておりますので、先般機能に合 わせて考えようというような御議論があったわけですが、入所施設につきましても一つ の住まいであるという観点からここに整理をさせていただいているところでございま す。  2頁、知的消費者の住まいの状況です。若干趣が異なっております。元となったデー タが違うものですから、若干その整理が違う点につきましてはお許しいただきたいと存 じます。知的消費者の場合には自分の家に加えて、アパートというものを含めて62.3% という状況です。第5回の再開後の最初の障害者部会での資料でもお出ししましたが、 知的障害者の場合には入所施設に入所している方が大変多うございまして、そういった ものも住まいということで捉えた場合には実に28.3%の方がこういったところに入所さ れているという実情がございます。その他、黄色いところですが、グループホームにも 2.7%ほどいらっしゃるのが特徴かと思います。  次の頁をお開きください。精神障害者の場合です。精神障害者の方の場合には整理が やや微妙に違うのでお許しいただきたいのですが、自宅などに81.1%、,グループホー ムなどに1.5%、福祉ホームにも1.1%と、こんな状況でございます。いささか入院して いる部分を住まいを称するのは抵抗があるのですが、居場所ということで見ますと、こ れだけの方が入院をされているということでございます。  ここまでが三障害のそれぞれの方々の住まいの状況を客観的に申し上げたものでござ いますが、これを住まいの議論をいたしますと多く出てきますのは公営住宅の機能の話 が議論になってまいります。これでは先取りをした形になりますが、4頁以下で公営住 宅がどんなような機能を果たしているのかということについて若干御説明をさせていた だきたいと存じます。  まず公営住宅につきましては、一つは社会福祉の関係の工夫といたしまして、グルー プホームとして使えるようになっているという事実がございます。それが4頁にいろい ろと書いてございますが、いわゆる知的障害者のグループホームでありますとか、精神 障害者のグループホームでありますとか、痴呆性高齢者のグループホームといったよう なものを運営する法人、社会福祉法人、あるいはNPO法人などに公営住宅をその住宅 として使用させることが必要であると認める場合には、そういった形の使い方ができ る。公営住宅の空いているような部屋をグループホームとして使うことができる、こう いうような仕組みが導入されてございます。  そしてもう一つ、次は6頁ですが、もう一つ議論になりますのは、そうではなくて公 営住宅に障害者の方が単身入居できるようにすべきではないか、こういうことも多く議 論になってまいります。こういうことが議論になる背景について御説明をいたします。 この公営住宅法が6頁のところに書いてございますが、第23条の入居者資格というのが ございます。ここにアンダーラインを引いておりませんが第1号のところを見ていただ きますと、現に同居し、または同居しようとする親族があることというのが条件になっ ておりまして、要は世帯で入居するのだ、単身ではなくて世帯で入居するのだというの が公営住宅の入居の原則になっております。  しかしながらその同じ23条の下線を引いてあるところにありますが、高齢者とか身体 障害者の方とか、その他必要があると認めるものについては、それはその同居の要件、 世帯の要件というのがはずれている、単身でも入れるということになっております。  じゃあどんな方が単身で入れるのかということですが、7頁ですが、この入居者資格 第6条を見ていただきますと、簡単に申し上げますと、1号とか2号に掲げられている 方がいいですよということになっておりますが、但し書きがございまして、身体上また は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ居宅においてこれを受け ることができず、また受けることが困難であると認められるものを除くと、こういうよ うな形になっております。  そして50才以上の方、それから2号で身体障害者福祉法の身体障害者手帳を受けてい る方というようなものが掲げられておりまして、ここには知的障害者でありますとか、 精神障害者の方というのが特には掲げられておらないわけであります。この点につきま しては従前から国土交通省ともいろいろな話をしているところでございます。どういう 形のサポートがあれば逆に言えば単身入居が認められ得るのかという条件整備につきま しても考えていく必要があると考えているところでございます。資料8につきましては 以上でございます。  次は資料9でございます。これはこの審議会と同時並行的に御議論をいただいており ます障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会、あるいは精神障害者の地域生活支 援の在り方に関する検討会でお出しいただいております関連の御意見をまとめたもので ございます。これを今お読みいただく時間はなかろうと思いますので、抜粋して簡単に 御説明いたします。1枚おめくりいただきたいと存じます。  まず1頁にありますのが障害者の地域生活支援の検討会の方ですが、一つは四つほど 出ておりますが、1枚目のところには知的障害者の親御さんが自分のところを知的障害 者のグループホームとして考えていきたい、こんなアイデアもあるよ、こういったもの も考えなきゃあいけないんじゃないかという御意見もございます。  それから三番目の◇のところには、今申し上げました単身入居ということについて、 知的障害者や精神障害者に関してはまだそこはクリアされていないのだ、そのために市 町村はやりたくてもやれないんだという、こういったような御意見もございました。  続きまして2頁お開きいただきたいと存じます。精神障害者の地域生活支援の在り方 に関する検討会の方でもいろいろ出ております。特に太字にしておりますところが主だ った御意見ということですが、時間の関係もございますので簡単に申し上げますと、一 つはやはり保証人の制度を何とかして欲しい、民間の住宅、アパートなどに入居しよう と思ってもその保証人の方がいなければ借りられないんだ、それを誰が引き受けるの か、個人で引き受けるのか、そうではないのか、ここをちゃんとしなければなかなか地 域生活というのも実現しないのだという、こういう御意見が一つございます。それから 先程の公営住宅などの単独入居の話もこの二つ目の◇のところにも御意見として出てい るところでございます。  次は4頁ですが、先程ちょっとお話が出ておりましたが、制度上は可能になっており ますが、公営住宅のグループホームとしての活用でありますとか、あるいはそれ以外も 含めてグループホームの住居施策の整備が必要だと、こういった御意見が検討会でも御 議論をいただいてるところでございます。以上でございます。 ○京極部会長  ありがとうございました。地域生活支援検討会、全ての部会に出てらっしゃる高橋委 員の方から何か補足はございませんか。 ○高橋(紘)委員  住まいの問題は今日全く触れられてない問題があると思うんです。それはやっぱり住 宅の家賃補助なり、私は公的住宅手当てだと思っているのですが、日本の最大の社会保 障の欠陥は公的住宅手当がないということだというふうに私はかねがね思っているので す。  それで実はこれは歴史的な話をすれば、実は建設省が公的住宅手当の検討を始めた機 会が一度あって、それを私は目撃した。これはオイルショックの前の時に、今は国立に なった社会保障研究所で検討会が始まった。それが無残にもオイルショックでつぶれて しまったということから禍根が始まったなと思っているのですが、公営住宅は先程の議 論では地域的返済があるんですね。地域生活をきちんと可能にするためには、やはり家 賃補助の仕組みを公的にきちんとしなくてはいけないということが、これがきちんとで きれば問題の相当部分は解決するというふうに思います。  それで今さらこの御時世で公的住宅手当てができるとはとても思えないので、私がぜ ひ検討していただきたいのは、生活保護の住宅扶助の現状を、今いろいろな形で障害者 の方たちが使われて、実際それが住宅保障の基礎的な部分になっているはずなんです が、私はあれを単級にしてミーンズテストをはずして、軽いインカムテストにして、手 当化した方がいいのではないか。これはもちろん財政的な問題がたくさんあるとして も、そのぐらいのことをやらないと本当の地域生活移行はできないんだということを含 めて、ぜひ住宅手当なり家賃補助なりのそういうことの政策大綱を、これは地方自治体 はいろんなことをやっておられるわけですから、そういうことを含めてその議論をぜひ やっていただきたい。要するに中身の住まいのそのものの問題もさることながら、そち らの方の議論もぜひ問題の視点としていれていただきたい。  それからもう一つは、やっぱり住宅の条件という意味で言えば、バリアフリーの問題 はやっぱり避けて通れなくて、これはここで出ている持ち家とか自分のアパートと書い てあるんだけど、ちょっと気になるのは家族同居とそうでないというのがどうなってい るのかとか、そこもやっぱり含めなければいけませんし、そういう少し住まいの問題を 考える時に、もうちょっと深めた視点の議論をするための基礎になる素材をお集めいた だくと大変ありがたいなと、ちょっとコメントさせていただきます。 ○京極部会長  ありがとうございました。住まいのあり方について何か御意見、御質問はございませ んか。 ○笹川委員  最初に事務局にお願いします。今日配られた資料の中で就業率の資料がございます。 これは身体障害者全体で52%という数字が出ておりますが、これだけでは視覚障害者の 実態というのは全くわかりません。こんないい加減を資料を出されたのでは困ります。 もしこれが一般的に使われたとしたら、身体障害者52%イコール視覚障害者も52%とい うことになってしまいますから、これは何とか回収をして出し直して貰いたい。総合化 総合化は結構ですが、そのために内容が全然わからなくなってしまう。そういうことで はデータとしては意味がないのです。先程荒っぽいというお話がありましたが、まさに 荒っぽい資料です。こんな資料なら出さない方がいいと思います。この点はぜひ事務局 お願いします。  それからこの住宅問題というのは15分やそこらで討論ができる問題ではないんです。 だから時間がもうありませんから改めて機会を設けていただきたい。私は先程から何度 も発言を求めていますが、就労問題では発言できませんでした。ですから今日せっかく これだけ議論が煮詰まって、まだまだ知りたいことがあるんですから、また意見も述べ たいんですから、もう少し時間を考えてもらいたい。いつでも消化不良です。もうさっ きから胃が痛くてどうしようかと思っているんですが、せっかくの審議会部会ですか ら、その点はもうちょっと配慮してもらいたい。私は藤井さんに聞きたいこともたくさ んあるのです。ですけれどももう住宅問題に入ってしまったから発言できない。そんな ことではこの部会の意味がありませんから、一つ検討してもらいたい。  住宅問題については、就労との関わり合いも非常にあります。それから重度障害者で 多くの人々が在宅就労をしている。しかしそれに対する厚労省の対応というのはまだで きていません。ですからこれも含めて検討する必要があると思います。その辺も一つ含 めてぜひ検討してもらいたい。こんなことなら私はもう次回出てくる気はないですよ。 ○京極部会長  まとめてまた議論する総括的な会合をする機会が会議の予定で入っておりますので、 もちろん時間が足りないことは重々承知していますが、一応5時半という予定で進めて いますので、とりあえず御意見を承っていきたいと思います。 ○嵐谷委員  先程の笹川さんと同じ意見で、就労のところでもうちょっと私なりに発言をしたかっ たのですが、時間がないということで非常に残念ですが、いわゆる先程来から就労支援 という方向での話で進んでおりましたが、じゃあ自立自営というような部分はどうなっ ているのか、ここらは全然切り込んでいってないので、そしてまた私ども肢体障害の当 事者とすれば全く違う角度での就労というような部分がありますので、そこらもまた時 間があれば次回にでも討論させていただきたいなというふうにも思います。もちろん就 労と住宅問題、いろいろ絡んでおりますので、ぜひともそういう形でお願いをいたしま す。 ○京極部会長  では次は岡谷委員お願いします。 ○岡谷委員  私も今お二方がおっしゃったように就労とか住まいの問題というのは、これからどう いうサービスをしていくのかというところでは重要だと思いますので、時間をもう少し かけて議論をしていただきたいということと、それからやはり同じ就労でも今三障害共 通の問題のようにして話をしていますが、やはりそれぞれの障害でおかれている状況も 様々違う部分もあると思いますので、ここは三障害に関係した人がずっと集まっている ので、そういう違いなどもある程度見えてくるような議論も必要なのではないかなとい うふうに思っています。  住まいの確保のことについてちょっとお伺いしたのは、先程も説明がありまして、公 営住宅に精神障害者、知的障害者の単身入居が現在できない状況で、国土交通省との協 議をしているということですが、その国土交通省との協議の内容とか、どこまで進んで いるのかとか、なぜなかなか進まないといったような、そういう見通しができない理由 についてもう少しお聞かせ願えたらというふうに思います。 ○京極部会長  これは事務局の方でどなたかお答えいただけませんか。特に精神、知的、身体みんな 絡んでいますが。 ○村木課長  住宅問題は大変大事な問題ということで、実は国土交通省の住宅局に窓口を開いてい ただいて御相談を始めたところです。この審議会の動きでございますとか、先程御紹介 をした検討会の動きなども国土交通省の方にも情報を投げてお話し合いをして、またこ こで出てきた具体的な施策や提案をまた向うの省へ投げていきたいと思っています。こ れまで向うの省とお話をした時に議論があったのは、やはりサポート体制がきちんとあ って、そして住まいの問題というのはある。悪口という意味で言うわけではありません が、やはり大家さんの御立場としてのお気持ちの中で近隣の人との関係ですとか、ある いは安全に安心して住んでいただくためのサポート体制とか、そういうソフト面の強化 がいるのではないかということが一番大きな問題意識のように受け止められました。こ の辺はまたしっかり御相談をしていきたいというふうに思っております。 ○京極部会長  北岡委員からも手が挙がっておりましたが。 ○北岡委員  僕は就労のことで何回か横で手を挙げていたのですが、せっかく座長の方からお話を してもよいということでしたので、就労について私も発言したかったことを簡単にお話 ししますと、二つありまして、一つはこれまでの方向性はいろいろ前回の申年から出て きたというようなお話もありましたが、もう少しざっくりとした、少しそれでいて具体 的なことについてお話をしたい。一つは今就労ということを考えた時に、福祉的就労と 企業雇用と二つあるのかな、それについて企業で雇用できる人とそうでない人がいると いう話が今日ありました。  そういう中で一方で5,000円ぐらいから20,000円ぐらいの工賃の福祉と、最低賃金を クリアしている企業での格差がすごくあるなと思います。この格差をそれぞれの人の状 況に合わせて働くことができるような、そういう場が必要なんじゃないか。例えば福祉 工場みたいなことがあると思いますが、そういうことを中間的な仕組みというようなこ とで、今後大いに充実していく必要があるだろうということが一つであります。  二つ目は、これは雇用促進ということや就労ということに結びつくために、新しい考 え方というか、施設というか、事業所というか、そういうものが必要なんだろう。多分 福祉工場に類似したものかもしれませんが、一つはかなり小規模で5人ぐらいのことで もよいという中で、地域の企業で働くという立場の視点に立った個別援助計画、個別支 援計画を義務化するというようなことの立場に立ったものが一つ。  それから二つ目のポイントでは、働くということを企業の中で活動するということを 明確に打ち出すべきではないかというふうに思っています。授産施設とか、いろいろあ るわけですが、その中で施設内の仕事は非常に職種が限られていまして、その中で本人 の力量を高めていくという上においては、やはり施設の外で働くということも新しい考 え方として福祉の分野でその就労につないでいく橋渡しとして二つ目のキーワードとし てあるだろう。  三つ目が徹底してそこの企業につなぐという、就労につないでいくという、先程個別 援助計画と言いましたが、そこをちゃんと真面目にやっているかということを徹底して 第三者が評価するという仕組みを持つ新しい福祉の分野であるか、雇用の分野かわかり ませんが、そういうものが必要なんだろうというように思っています。  そしてやはり私は先程例えば5人と言いましたが、これらの人は全て雇用されるとい う前提で考えていってはどうか。もちろん適用の除外申請とか、いろいろあるとは思い ますが、たとえば1日午前中だけ働くとか午後だけ働くというようなことも含めて、様 々な形態を雇用という枠組みに取り込んでいくというのでしょうか、そういうことが必 要だろう。これは私が前回お話をしました通所施設から一般就労に押し出していく力と いうようなことにおいて、どうしても不可欠な視点ではないかというふうに思いまし て、横で手を挙げておりました。どうもすみません。 ○京極部会長  申し訳ないです。今日は3時間半で二つのテーマ、就労支援と住まいのあり方という ことで、何とか時間が長いのでできるかなと思ったのですが、どうも構造的に二つのテ ーマを一回で扱うのは難しかったような気もいたします。笹川委員からは端的に何かも し就労支援で御発言できなかったことで、もしよろしかったら追加していただければと 思います。 ○笹川委員  藤井さんにお尋ねしたいのですが、きょうされんはいろんな実態調査をしておられま す。多分データはいろいろお持ちだと思うんですが、問題は同じ障害者でも種別によっ ていろいろ条件が変わります。例えば重度の障害者の通所授産所への通勤のサポートの 問題、それから実際に授産所でやられている作業の中で視覚障害者ができる作業がどう いうものがあるか、これは斎藤委員の報告の中では具体的に視覚障害者の就労状態が出 ていますが、きょうされんとしてそういうデータをお持ちかどうか。それから在宅就労 ということについて、きょうされんとしてはどのようにお考えになっておられるか、そ の三点をお尋ねします。 ○藤井氏  結論から申しますと、そのデータは今持っておりませんがデータは実はあるんです よ。それをお送りします。次は第二点目、やっぱり私は今日は時間がなくて言えなかっ たんですが、福祉的就労という言葉もやめた方がいいと思うんですね。つまりこれは訳 のわからない言葉で、80年代前半に使われ始めた言葉で、的というのはよくわかりにく いし、つまり非労働市場であっても労働市場であっても、やっぱりさっきも言ったよう にどうしても本人の意思、あるいはニード、能力、これらは要りますね。  プラスやっぱり四つの支援をあげていますが、一つは通所通勤という問題と、それか ら労働に対する支援、ジョブコーチというのは時間のスパンがありますから、やっぱり 永続的な人の支えということによって、つまり言ってみればアシスタントつきの労働、 これはヨーロッパではもう実例がありますね。それから三つ目の支援というのはやはり 生活支援ということです。これは住まいもあれば部分的な所得保障もあるでしょう。そ れから四つ目は医療関係、人工透析にしても、癲癇にしても、精神障害者の通院にしま しても、それは一応いわば有給にするとかという、これはヨーロッパでいろんな例がい っぱいありますよね。やっぱりこういう支えないと、これらは非労働市場であろうが一 般労働市場であろうが、やっぱりできないということですね。  あとはやっぱり障害種別におきましては、私も基本的には労働という問題はその労働 課題で一致できれば種別は超える。しかし支援としてはやっぱり障害種別の細かな支援 がいると思うんです。ですから超えれる部分と、この障害種別に応じた支援というのは 別問題であって、決して機械的統合ではないということですね。細かなデータはまた後 でお話しします。 ○京極部会長  ありがとうございました。時間がなくなりましたので、今日は消化不良というか、時 間切れで欲求不満がたまったと思いますが、とりあえず今後の日程も含めて事務局から 御説明をいただきまして、今日のところはこれで終わりたいと思います。 ○間企画課長補佐  ただいま部会長からお話がござましたように、まだ議論が十分でない部分、まだもっ と議論をしたいという御発言もございました。その点につきましては部会長とも御相談 の上、また別の時間帯で御議論をいただけるような方向で御用意をさせていただきたい というふうに考えております。また、笹川委員から御指摘のありました点につきまして は十分ふまえまして資料をできるだけ用意をさせていただきたき提出をさせていただき たいというふうに考えております。  次回につきましては、一通りの議論を一度していただければというふうに考えており まして、論点整理の3と4にあたりましてケアマネジメント等のあり方、それからサー ビスの計画的な整備と財源配分のあり方ということについて御議論をいただければと考 えております。この点につきましては少し時間を長くとらせていただいて御議論をいた だきたいと考えております。次回は4月28日(水)午後から霞が関ビルの33Fの東海大 学校友会館におきまして開催をさせていただきたいと考えております。なお詳細につき ましては後日事務局から御案内をさせていただきたいと考えておりますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○京極部会長  今日は二つの論点がございました。就労支援と住宅のあり方ということで、司会進行 の不手際で時間切れで申し訳なく思っております。ただ、全体としていろんな障害者介 護サービスが障害者の地域生活を支援するサービスである、あるいは逆に地域生活を支 援するサービスが介護サービスになるという考え方もだんだんと出てきたような気もい たしますし、またそれによって新しい総合的な障害者保健福祉制度にも展開できるとい うふうに思います。以上で本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございまし た。 (照会先)     社会保障審議会障害者部会事務局                     厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部                       企画課 企画法令係(内線3017)