04/04/09 第17回社会保障審議会児童部会            第17回社会保障審議会児童部会 議事録 日時 :平成16年4月9日(金)14:00〜17:06 場所 :専用第18・19・20会議室 出席者:岩男部会長、阿藤部会長代理、網野委員、猪俣委員、遠藤委員、大日向委員     小笠原委員、柏女委員、堀委員、前田委員、松原委員、無藤委員     山縣委員、山崎委員、吉田委員     伍藤雇用均等・児童家庭局長、北井審議官、中村総務課長、唐澤保育課長 議事 :1.開会     2.有識者からのヒアリング       増田まゆみ氏(目白大学教授)       北條泰雅氏(学校法人みなと幼稚園理事長)       武田雅弘氏(ベネッセスタイルケア チャイルドケア事業部長)     3.総合施設について     4.閉会 ○岩男部会長  それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第17回社会保障審議会児童部会を 開催させていただきます。本日は大変お忙しいところを御参集いただきましてありがと うございました。  まず、本日の委員の出欠状況につきまして、事務局から御報告をお願いします。 ○中村総務課長  本日の出欠でございますが、津崎委員、渡辺委員から御欠席という連絡を受けており ます。 ○岩男部会長  それでは、議事に入ります。今回、3月に新たに児童部会臨時委員に御就任いただき ました方のうち、前田正子委員が御出席されておりますので、御紹介させていただきま す。 ○前田委員  横浜市の副市長の前田と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○岩男部会長  本日は、まず保育・幼児教育の専門家の方、幼稚園理事長の方、それから民間企業の 方、お三方をお招きしてヒアリングを行うということにしたいと思います。  まず、事務局より、本日おいでいただきました方々の御紹介と、それから、本日の進 め方について御説明をお願いいたします。 ○唐澤保育課長  それでは、本日御出席をいただきました皆様の御紹介をさせていただきます。  まず最初に、目白大学人間福祉学科教授・増田まゆみさんでございます。 ○増田氏  よろしくお願いします。 ○唐澤保育課長  増田先生は、目白大学の教授でいらっしゃいますが、保育・幼児教育が御専門でござ います。本日は保育・教育の研究者の立場から、合同保育の現状、課題及び総合施設に ついてお話しをしていただければと考えております。  続きまして、学校法人みなと幼稚園理事長・北條泰雅さんでございます。 ○北條氏  よろしくお願いいたします。 ○唐澤保育課長  北條さんは、全日本私立幼稚園連合会の政策委員長も務められていらっしゃいます。 また、中央教育審議会幼児教育部会の委員でもいらっしゃいます。本日は幼稚園理事長 の立場から、総合施設についてお話ししていただければと考えております。よろしくお 願い申し上げます。  続きまして、株式会社ベネッセスタイルケア チャイルドケア事業部長・武田雅弘さ んでございます。 ○武田氏  武田でございます。よろしくお願いいたします。 ○唐澤保育課長  武田さんは、ベネッセスタイルケア チャイルドケア事業部において部長を務めてい らっしゃいますが、本日は民間企業の立場から、子育てサービスをめぐる状況と課題に ついてお話をしていただければと考えているところでございます。よろしくお願い申し 上げます。  ヒアリングについてでございますけれども、本日の有識者の皆様方におかれまして は、お一人約15分程度のお話をいただいて、その後にそれぞれ15分程度の質疑応答を行 いたいと考えております。お話をいただきます順番は、ただいま御紹介をさせていただ いた順番で、増田先生、北條先生、武田先生という順でそれぞれお願いをいたしたいと 思っているところでございます。  ヒアリングにつきましては、16時ころを目途に終了させていただきまして、その後の 残りの1時間につきましては、「総合施設について」、先生方相互の間で議論を深めて いただければと考えているところでございます。よろしくお願い申し上げます。 ○岩男部会長  本日、おいでいただきました先生方、大変お忙しい中をありがとうございます。どう ぞよろしくお願いをいたします。  それでは、まず増田先生からお願いをしたいと思います。 ○増田氏  増田でございます。ちょっと風邪を引きまして、大変お聞き苦しい声で失礼をさせて いただきます。お手元に資料2というのがございます。その資料もご覧いただきながら お聞きいただければと思います。  私はここ何年か合同保育につきまして研究・調査を続けて行ってまいりました。新た に保育を創造するという観点から、それぞれの園が努力・工夫をなさっていらっしゃい ましたが、合同保育という今までにない新しい保育の中で、就学前の保育の課題がかな り明確にあらわれてきたように思います。どういうことかといいますと、今、保育所・ 幼稚園合同で行われているのはほとんどが「教育委員会」主導で行われております。  そういった中で保育の内容、方法を見ましたときに生活の視点が欠如しがちである、 1日24時間を視野に入れて保育をしていくという視点が少し欠如しがちである、  また、どうしても合同という、ある限られた時間の中で「教育」というものが強調さ れましたときに、個別的な配慮、活動に入り込めない子ども、体調の悪い子ども、発達 におくれのある子ども、そうした子どもたちへの配慮が欠如しがちになるということで あります。  以上2つのことと関連するのですが、家庭養育・養護の視点が欠如いたします。  更に、制度上の上から生まれる課題といたしましては、多くの行政で幼稚園の園長は 課長職、保育所長は係長職というような職位の上での違い、あるいは直接子どもに使う 保育材料費等で幼保の違いのあるところもかなりございました。  そして最後に、保育所での保育士、幼稚園での幼稚園教諭としての長年にわたって培 われてきた文化の違い、子ども観、保育観というものの違いがこうした合同で保育を行 っていく上で出てきたように思います。  そこで、総合施設をどのように考えていくかの論議は、今著しく育児機能が低下し、 日本はある意味で大変危機的な状況に陥っている件で、改めて日本社会における就学前 の子育ち・子育てのあり方の基本を考えるチャンスではないかと思います。  従来、子どもの育ち、育てられるものということを中心に考えられてきましたが、資 料に書きました京都大学の鯨岡氏の考え方を簡略化して図式化したものでございます。 つまり子どもが「育つ」ということは、大人の「育てる」ということを相合わせて考え ていく必要があり、また、子育ち・子育ての伝承が非常に重要である。まして急には親 になれない、親としての力が十分でない・育児機能が低下している状況の中で、親にな るプロセスでの次世代育成がとても重要であると考えます。  それでは総合施設の具体的な構想をどのように考えるか。これは今申し上げましたよ うに、子どもだけではなくてその背後にある保護者、そして地域を包括した就学前の子 育ち・子育てに機能する施設として考えていく。それは、昨年出ました次世代育成支援 の基本的方向と一致するものであるかと思います。  それでは、就学前の子育ち・子育ての基本を考えていく上で、今まで保育所保育の中 で基本としてきたことを述べさせていただきます。保育所では保育に欠ける乳幼児が長 年にわたって、しかも長時間にわたって、一日の大半を過ごす場として保育が行われて きました。つまり生後間もない産休明けの保育など低年齢児からの保育が長年にわたっ て行われ、その中で何よりも大事なのは、大人との愛情深いかかわり、絆が基盤となっ て、子どもたちが主体的に生活する力、生きていく力が育っていく、こういう保育を保 育所は行ってまいりました。  そして、保育は1日24時間家庭との連続性の中で行っていくことを大切にし、特に子 どもの心身の発達を考えていく上で、保育所保育の特性として、養護と教育の一体性の 中で行われてきたといえます。  平成12年施行の改訂保育指針の中で、「生きる喜びと困難な状況に対処する力」、幼 稚園教育要領では、「生きる力の基礎を培う」という表現になっているかと思います。 生きる喜びを基本としながらも、自分の思うようにならない、そうした困難な状況の中 で一人ひとりの子どもが様々な葛藤体験をしながら自立していくこと。しかもこれは大 人の支えを基盤にしながら、そうした力を育てること、こういったことが保育所保育の 中で行われてきました。  また、長年にわたって職員の協力体制のもとに保育を行うこと、特に家庭養育機能が 低下する中で、家庭とともに子育てをすること、当然両者は上・下の関係ではなくて、 連携のもとに行うということがなされてきたわけであります。  さらに、先ほどの次世代育成の親になる以前の段階で、例えば中学生などの保育体験 などを通して、次の親になる人たちが着実に育っているといった実績がございます。  そこで前段で申し上げました合同保育の中で明らかになってきた課題、そして今申し 上げました保育所保育の基本を考えましたときに、総合施設は保育所保育を基盤にし た、つまり生活を大切にする合同保育、そして家庭・地域を包含した保育というものが 具体的実施においてのプランのポイントであろうと思います。  以下、14年、15年度の合同保育の調査の中から明らかになったことを申し上げたいと 思います。  まず、総合施設をつくっていく上で大事なことは、生活全般を見通したプランが必要 であるということであります。限定された時間内での幼児教育の計画にとどまるのでは なくて、家庭生活をも視野に入れた「生活プラン」というものが大事であるかと思いま す。「生活を重視していく」ということは、例えば具体的に申し上げますと、合同保育 の中で、午前中のいわゆる教育の部分については、保育者もかなりのエネルギーをか け、準備をし、保育をしております。しかし、昼食の時間になると、子どもへの一人ひ とりへの配慮等が欠けがちでございました。食事というのは決してエネルギー源を補充 するということだけではなくて、その中で豊かな生活体験・文化というものを大人との 生活の中で獲得していく、従って保育者の援助が大切である。こういった保育者の姿勢 が非常に重要ではないかと思います。  資料の3ページ目でございます。  総合施設を考えますときに、乳幼児期の発達、0歳から一生涯終わるまで、つまり生 涯発達の視点になって取り組むことが重要であるかと思います。  そして、子どもが行きつ戻りつしながら発達をしていく、そのことを許容しながら、 一人ひとりの子どもの育ちを大切に、しかも一人では人間は生きていかれないことを多 様な体験を通して認識し、自立、立つ方の「自立」と律する方の「自律」を進めていく ことが、就学前の保育、総合施設の中での保育で重要なことではないかと思います。  つまり、3歳未満児の保育と3歳上児を年齢で分断しない子どもの育ちの連続性とい うことが大事であると思います。  次に園内の入所児童の保育にとどまらず、地域の子育て支援を進めていく、そのため に、今まで以上に地域・家庭との連携を進めていくことが大事であります。  最後に5番目といたしましては、先ほども申し上げましたように、保育所と幼稚園の 長い歴史の中で互いに異なる文化を形成してきました。今後、お互いに理解し合うこ と、お互いに研修を受け合うこと、こういったことが大事であります。そのためには、 トップのかなり強いマネージメント力が必要であるかと思います。それは園内にとどま らず、地域、行政を含めてのマネージメントが求められるというふうに思うわけであり ます。  資料の4ページ目をおあけいただきたいと思います。  総合施設はもちろん次世代育成支援で明らかになっておりますように、親が働いてい る、働いてない、そのいかんに問わず、地域のすべての子育て家庭に開かれた施設にな っていくべきであると思います。そのためには、機能的には多機能、様々な機能を備え ておき、利用者がその中から選択をしていくシステムが大事であるかと思います。  そこで検討課題といたしまして、まずは就学前の保育・教育の基本的考えはどういう ことなのかを明らかにすることです。教育を急ぎすぎてはいけない。例えばイギリスで も、5歳児就学という中で、早すぎることへの反省、もう少し検討しなければいけない という動きもございます。  また、小学校との連携についてでありますが、本当の意味で就学前の保育施設と小学 校との連携というのはどういうことなのだろうか、こういったことを含めて、就学前の 保育・教育の基本を明らかにしていくことが求められます。  更に、その就学前の保育・教育を担う人の専門性と質の確保であります。今幼稚園教 育と保育士が行っておりますが、そこには様々な課題があると思っております。  3つ目でありますが、子どもの最善の利益を尊重した保育・教育を実現していくため には、かなり規制緩和が進んでいる今日、質の高い保育を確保していく上では経済的な 負担を伴うものであるという認識でございます。  今、大切にしなければならないことは、子どもを効率よく、安く育てるということで はなくて、子どもに、子育てに、そして次世代育成にやさしい社会にしていくことで す。また、そういう価値観を国民の中につくっていくことです。そのためには、子育ち ・子育てにお金をかけることが日本の将来に非常に大切なことであることを伝えていく 必要があると思います。  しかし、一方でお金をかけるだけではなくて、地域の様々な民間の力を活用しながら 総合施設をつくり上げていくことが大事であろうかと思います。様々な選択肢、つまり 家庭的な保育も含めて総合施設の中にかなりの機能を含ませていくことが必要です。そ のときに民間組織、他の専門職、また機関との連携が大事であるかというふうに思いま す。  与えられた時間が15分でございますので、以上で終わらせていただきたいと思いま す。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問等がご ざいましたら、どうぞ御自由にお手をお挙げいただきたいと思います。 ○網野委員  総合施設をどのように考えていくかということで、非常に参考になるお話をいただき ましてありがとうございました。質問といいますか、あるいはむしろ御意見をお聞きし たい部分がありまして、1つは、生活の視点、これを非常に大切にすると。その中で3 歳未満の子どもの保育ということも重視するお話がありました。いわゆる総合施設とい うのは、幼と保を一体化した機能、これを1つ前提にしていると思うのですが、今のい ろいろお話を伺いますと、年齢の区切りではない、全体をずっととらえたということで 言いますと、いわゆる幼保一元性、幼保一体性だけではなくて一元性という面がいろい ろ御意見の中でちょっと伺えたのですが、私が思い入れ過ぎでそのように受けとめたの かわかりませんが、いわゆる一体的なあり方と一元的なあり方ということで総合施設を どう位置づけておられるのか、それを1つお聞きしたいと思います。  それから、もう一つは、生活の視点、それから当然教育が非常にウエイトを占めるわ けですが、専門性を考えた場合に、合同保育の研究をされた例を挙げていただいてもよ ろしいかと思うのですが、やはり両者は分担して専門的役割を果たしているのか、生活 と教育、あるいは保育士と幼稚園教育という、分担か、あるいは保育士も教育の視点を どんどん取り込む、幼稚園教諭も生活の視点をどんどん取り込む、そのような試みと か、いずれは制度化とも関連するのでしょうが、そういう点での実際の進めている様子 あるいは先生の考え方をお聞かせいただきたい。 ○増田氏  大変難しい御質問かと思うのですが、まず、2番目の方から具体的なことを含めてお 答えしたいと思います。  いくつかの事例はあるかと思いますが、昨年4月からオープンいたしました箱根町が 行っております幼児学園におきましては、特区申請もなされる中で、今年度は幼稚園の 職員として所属している幼稚園教諭と保育所に所属している保育士、これが併任という 形で許可をされた。つまり、教育にも保育にも両者がどちらにも子どもたちの状況、そ して施設の状況によって対応できるという体制になっております。  この教育と生活援助というものをそれぞれ分離して行うべきかどうかというときに、 例えば、教育というところにかなり力が入って、幼稚園教諭の方がやったときに、先ほ ど申し上げましたような、あまりにも強く保育者・幼稚園教諭が意図する方向に向けさ せてしまう、そこにいるすべての子どもを向けさせてしまうという状況が生まれます。  ついこの間、フランスにおきまして、朝から夕方4時半までは教育の担当者、4時半 以降はそうではない人がという状況を見ました。教育担当者によってそれまで統制され ていた子どもたちの動きが、4時半になって、担当する人が変わったことによって急激 に変化をした場面にたまたまかどうかわかりませんが出会いました。  つまり、大人の統制がなくなった状況になったときに、子どもは自分を律すること、 コントロールすることができず、かなり要求を直接的に出していきます。それはある意 味では、子どもが自分の思いを出せるということでありますが、それまでの生活があま りにもコントロールが強すぎるという結果であるかもしれません。  私は保育士と幼稚園教諭が、お互いが教育、そして福祉的な視点というものを理解す る中で、子どもの状況によって柔軟に対応できる体制が望ましいと思います。ただし、 今の制度のもとではそのことは不可能であるかと思いますが、子どもにとっては一貫性 のある生活、また一貫性のある大人とのかかわりというものが大事ではないかというふ うに思います。  それから、総合施設のとらえ方ということでありますが、これは今、制度的に二元化 されている中で様々な課題があるかと思います。ただ、早急に一元化ということは混乱 を起こすだけであろうと思っております。したがって、総合施設というものは、先ほど も申し上げましたように、多機能、教育の部分、ある人は2時間の教育を受けるという 利用者が判断をすれば、そういった利用の仕方もできる。ある人は仕事と子育てを両立 する為にし、長い時間の保育・教育も受けられる。また、地域の中で子育てをしなが ら、きょう一日だけといったような一時的な活用の仕方、様々な活用の仕方ができる、 つまり就学前の子どもの育ち、そして子育てに必要な機能が包含されるような施設をま ず総合施設では指向していくことがいいのではないかと思っております。 ○岩男部会長  松原委員、お願いいたします。 ○松原委員  2点伺いたいと思うんですが、1点目は、今の網野委員に関連したことになります。 総合施設という中で、多機能という中で、親子の保育といいますか、親も参加するよう な形での保育ということを考えていらっしゃる。その場合に保育という観点から見て、 どういう支援というか、働きかけが必要なのかということが1点と、2点目は、いただ いた資料には書かれていらっしゃるのですが、多分時間の関係で発言されなかったと思 うのですが、最後の方で、第三者評価の必要性を書かれていますので、その点、補足し ていただければありがたいです。 ○増田氏  親子というところですけれども、今、多くの親が子育てに不安感を持つ、孤独感の中 で子育てをしているという中で親子共にということがとても大事だと思います。先ほど 申し上げました箱根でも、子育て支援センター機能を併せ持っております。そこには特 に低年齢児の親子が園にやって来て、そして我が子以外の子どもの生活する姿を見なが ら、一緒に遊び、一緒に生活をするという、親にとって大事なことは、知識を得ること ではなくて経験をしていくことだと思います。それはこうした施設で、「何もかもやり ますよと」いう姿勢ではなくて、どのように子どもとかかわっていったらいいのか、経 験を通しながら、あるいは必要な場合には専門家のアドバイスを受けながら、親自身が 我が子を育てる力をつけていくこと、また親自身の子育てをしようという意欲が高まっ ていくことが大事であろうかと思います。決して、この総合施設というのは、子育ち・ 子育てを皆抱え込むということではないと思います。  それから、第三者評価のことでありますが、今の規制緩和の流れの中で、一定の質の 確保、さらに子育ち・子育ての質の高さを保っていくためには客観的な第三者評価とい うものは必須のものだと考えております。  今、私も全国保育士養成協議会の方で第三者評価にかかわっておりますが、保育の質 の評価できるところまでまだまだいっていない状況にあるかと思います。これは今後の 課題でありますが、第三者評価の方のあり方も考えつつ、この評価制度と規制緩和、そ して今後の新たな保育の構築というものはセットで考えていくべきだと考えておりま す。 ○山縣委員  貴重な御意見ありがとうございました。1点だけ教えていただきたいのですが、増田 先生は、今の現行制度の保育所・幼稚園現場非常によく御存じだと思うのですけれど も、その中で合同保育という形のものをたくさん見てこられて、子どもの育ちという方 向から見たときに、どういう違いがあったのか、プラスでもマイナスでも結構ですの で、感じておられる点をいくつか教えていただけるとありがたいのですけど。 ○増田氏  まず、幼保合同になることによって、例えば、今まで幼稚園で3歳児、4〜5歳の子 どもと生活をしていた子どもたちにとって、自分が生活をしている身近に0歳、1歳、 2歳の子どもが生活をしている、そのことを身近に感じながら、時には直接的なかかわ りを持ちながら生活することが子どもの育ちにプラスの影響を及ぼしていると思いま す。  また、幼保合同の中で、例えば保育所側ももちろん生活を重視ながらも養護と教育の 一体性という中で教育もやってはきましたが、しかし、今までの体制の中では保育の事 前の準備、事後のいろいろな相談、こういったものを確保する時間は保育所側には不十 分であるかと思います。  そういう中で、幼稚園の中で十分に遊びを通しての保育という中で検討されてきた、 その教育力の高さというものが幼保合同の中で活かされているという側面もあったと思 います。  また保護者の関係ですが、これは園の姿勢によって随分違うと思いますが、両者がお 互いに理解し合う場面をつくっていく。例えば行事に向けて、幼稚園の方はたっぷり時 間があるのだから幼稚園の方だけではなくて、夕刻からの時間などに保育所保護者もで きるようなシステムをつくっていく、こういう工夫があると、お互いに今まで理解し合 えなかった保護者の相互理解がなされているというようなこともあったかと思います。 ○岩男部会長  堀委員、お願いします。 ○堀委員  レジュメの最初のページに、合同保育は「教育委員会主導」で取り組まれていると書 かれているのですが、その趣旨というのか、どうしてそういうふうになっているのか、 御存じだったら教えていただきたい。 ○増田氏  まず、合同保育の多くが少子化の中で、特に公立幼稚園の子どもの数が激減している という状況への対応策として実施されています。幼稚園の空いたスペースをどのように 活用していくか、一方、保育所の方は待機児がいる、こういう中で幼保合同という形が なされております。ですから建物も幼稚園を使ってという事例が多くございます。もち ろん地方型で新たに町で1か所保育施設というようなときには、新たな建物をつくって いると思います。恐らくこの会で東川町の例などがあったかと思います。したがって、 教育委員会が主体となって行われているところがほとんどでございます。 ○岩男部会長  吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  ちょっとお尋ねしたいのですが、従来の合同保育というのは、0歳から5歳児まで の、いわゆる「保育に欠ける」長時間保育が必要な保育所の子どもたちと、3、4、5 歳児の4時間を標準とする子どもたちの重なる部分で行われていたのですけれども、こ こでおっしゃっている総合施設のイメージとして、いわば3歳未満児は「保育に欠ける 」そういう子どもたちだけなのか、「保育に欠けない」子どもでも3歳未満でも可能な のか。 ○増田氏  先ほど申し上げましたように、今、地域全体の子育て育児機能力というものが低下し ている中で、この総合施設は0から3歳の地域で家庭で子育てをしている、そういう方 たちにも機能する、そういった施設であるべきではないかと思っております。 ○吉田委員  ということは、3歳未満児も保育に欠けない、例えば専業主婦家庭の子どもでも、こ の総合施設で受け入れられると。 ○増田氏  それは従来のように、毎日継続しての保育だけではなくて、週に1日だけかもしれな いし、週に3日かもしれないしというような子どもや家庭の状況によって、かなり柔軟 性を持って対応していくことが大事ではないかと思います。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。  それでは、次に進ませていただきたいと思います。では、北條さんにお願いしたいと 思います。どうぞよろしくお願いします。 ○北條氏  このような発言の機会をお与えいただきましてありがとうございます。  冒頭、一応お断りをいたしたいと思いますが、御紹介の中でも、全日本私立幼稚園連 合会という私立幼稚園団体の役職を務めておりますが、しかし、本日お話しさせていた だくことは、いろいろ団体の中で検討はいたしておりますが、そこで合意を得てここに 述べている話ではございませんので、個人の資格ということで御了承をいただきたいと 思っております。  与えられている時間が大変短いもので大分はしょらなければいけないと思いますが、 最初に、私、幼稚園に勤めておりますが、時どき幼稚園と保育園というのは仲が悪いの ではないかというふうにお考えになる向きがないとは言えないというように思っており ますが、私どもは少なくとも子どもの問題を解決していくためには幼稚園と保育園とと もに手を取り合って……。         (傍聴席より「すいません、聞こえません」と声あり) ○北條氏  これでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。              (傍聴席より「はい」と声あり) ○北條氏  手を取り合っていくべきもので、相協力するお仲間であると、当然私どもも考える し、保育園の方々もそのように認識されていると思っております。  私の幼稚園はここからすぐ近くにございまして、自転車でも簡単に来られるぐらいの 近いところでございます。昭和23年に開園いたしまして、現在57年目を迎えておりま す。そこに1として「過去25年間」というふうに述べましたが、昭和50年代以降、地域 社会が急激に変貌をしていく姿というのをその幼稚園におって私は目にしております。 わずか3年間の間に1小学校を持つ1つの町がほとんどの人口がいなくなってしまうと いうことも目の当たりにしてまいりました。  そうした中で、都心で育つ子どもたちにとって、用意すべき環境、これはやはり草や 木や花や自然あふれるものを、本当の自然ではないわけですけれども、むきになっても つくっていく、そしてそういうところでより自由に主体的な生活が送れる場をつくって いかなければならないと今日まで考えて勤めてきております。  2番目でございますが、そこに書いてありますように、公私幼保の設置状況はそのよ うになっております。しかし一番多かった時期には、私立幼稚園は32か園ございまし た。区立幼稚園は25か園ございました。それから現在幼保一体施設を検討中ということ でございますが、私ども私立幼稚園の立場といたしましては、港区が現在検討しており ます。幼保一体施設については反対の立場でございます。現状において、区立・私立・ 保育所・幼稚園の間で役割分担が明確であり、十分地域のニーズに全体として応えるこ とができているというふうに考えております。  どうして、こういう幼保一体の施設が必要なのかと行政の区の担当に伺いますと、返 ってくる答えはただ1つ、保育園に行っているお子さんの保護者も幼稚園の修了証書が 欲しいんですよという説明です。そんなばかなことはないわけで、こんな説明では営々 と保育園のお仕事に励んでおられる方々に対する甚だしい侮辱だと言わざるを得ませ ん。非常にばかげたことだと考えております。  3番目に、私の幼稚園で、それでは家庭との連携、今の言葉で言えば、子育て支援と いうようなものをいろいろ取り組んではまいっております。時間がないのではしょって しまいますが、1962年(昭和37年)でございますが、その最初の試みといたしまして、 歳末保育というものを実施いたしました。言ってみれば、地域託児所を私立の幼稚園の 中に年末に開設するというものでございます。以降いろいろな経験を踏まえまして、昭 和48年には、「本の部屋の会」という母親を中心とする独自の自主グループの活動を立 ち上げまして、以来、多様な自主活動のグループが育ってきております。  また、父親への働きかけというものも、昭和50年以来、強めてまいりまして、いろい ろな行事を父親の参加を求めてまいりましたが、今日、お父さん方が自主的に自分たち の会、「ゴジラの会」という名前を付けて、大変よく活動をしていただいております。  また、今日「預かり保育」という名前で言われておりますが、私はいい名前でないの で使っておりませんが、そのようなものも昭和54年(1979年)から、幼稚園は午後の1 時半に終わってしまいますので、その後、3時間、夕方の4時半までということで行っ ております。ただ、これは幼稚園のやる事業でございまして、フルタイムで仕事をなさ る保護者の方のニーズに応えられるものではないという限界は感じながら、今日まで来 ております。平成7年からは幼稚園に入園する前のお子さん、3歳児より前のお子さん の親子の登園をする日を設けております。あれやこれや迷いながらいろいろなことをや ってきております。  4番目に幼稚園と「小学校との接続と連携」と書きましたが、現在問われている課題 は、1つには、家庭と幼稚園、あるいは保育園との連続性、接続性の問題、また幼稚園 ・保育所と小学校との連続の問題であろうと思います。子どもが大分やはり変わってま いっております。子どもは簡単に変わるわけではないというのは当たり前でございます が、しかし、言葉の発達に著しいおくれを持つお子さんがじわじわと増えておることは 事実だろうと思います。  また、心が揺れにくい、きれいなものが「きれいだ」というふうになかなか心が動か ない、こういうお子さんも増えてきている。障害ではないけれども、一見すると何か障 害があるのではないかというふうに思いがちのお子さんが増えていることは事実でござ います。これは地域社会が教育力を大幅に失ったというところに最大の理由があろうと 思います。  そういうお子さんを、幼稚園、保育園はご家庭から引き継いでお預かりするわけです ので、かつて地域に力があった時代には、自ずから育っていた力というものを施設の中 でつけていく、そういった意味での接続を考える大きな課題が1点あると思います。  また、小学校との関係で言えば、小学校の教育の形というものが従来の教科学習だけ ではなくなってまいっております。生活科の導入あるいは総合学習等の小学校での努力 もあって、低学年には一定、幼稚園・保育所との同様の形態というのが生まれてきてお ります。しかし、残念ながら、まだまだこの間の壁は厚いと思わなければなりません。 今、5歳児のとりわけ後半をとらえて幼稚園・保育園と小学校1年生とをよりスムーズ に連続させていくというところにともに力を注いでいかなければならないと思っており ます。  ここら辺が前提でございまして、時間を大分使ってしまいましたが、「総合施設」に ついての考え方というところに入らせていただきます。  まず1番、幼児期の教育と保育の一体的取り組みということで総合施設が提起されて おります。しかしながら、私ども幼稚園においても、保育所においても、先ほどは教育 と生活というお話がございましたが、教育と保育というものは元来一体としてとらえて きたはずでございます。保育園の先生方もそのように認識されておりますし、私どもも そのように認識しております。そういった意味で、何のための総合施設なのかという点 が1つピンとまいらないのは正直な気持ちでございます。子どもがこういう状況にあ る、あるいは保護者がこういう状況にある、地域社会がこういう状況にある。それに力 強く対応するために、家庭と小学校をつなぐところに総合施設が必要なのだという御説 明があれば、これは非常にわかりやすいわけでございますが、そういった説明は今日ま で聞いたことがございません。  そこで、私、実は総合施設というものに対するイメージが甚だ貧しいのでございます が、きょうこの機会にお教えいただければ大変ありがたいというふうに思っておりま す。しかし、政治的な動きの中でも、この場でも御説明があったように、既に平成18年 を目途にもうやらなければならないということが決まっているのだということであれ は、それはそれとしていたし方がない。それならば、何とか少しでもいいものを総合施 設として考えていこうと、そういう問題の立て方ならわからなくはないと、そういうこ とから少し考えさせていただいたということでございます。  2番目、地域のニーズにしっかりと対応する必要があるということです。総合施設は 地域の幼稚園と保育所の設置状況、子育て支援の実施状況等に応じ、多様な形態の施設 とすることができるように、柔軟な枠組みが求められる。先ほど増田先生からも柔軟な 枠組みという話がございました。これがこういったメニューがなければ総合施設とは呼 ばないんだよという形で、事細かに規定した総合施設というものをつくり上げてしまえ ば、画一化の弊害こそあれ、いいことは何もないというふうに考えております。  また、その地域に総合施設を設置するニーズがないのならば、当然ながら大切な公費 を使って総合施設をつくる必要はないわけでございまして、全国に何か所とか、1自治 体何か所というふうに数値目標を設定すべき性格のものではないと考えております。  3番目、総合施設をせっかくつくるのであれば、やはり充実した教育機能をその中に 求めたいと思います。また、学校教育の体系としても、一貫したものとなるよう「幼稚 園教育要領」を基本とした教育が行われるべきであろうと考えております。また、小学 校との連続・連携というところでの関連で申しますと、現在幼稚園では「指導要録」と いうものを作成して、これを小学校に送付しております。昔は小学校の先生、これを全 然読んでくださいませんでした。しかし最近は非常によく目を通していただくようにな っております。この総合施設においても、この指導要録に準ずる、あるいは同様のもの をつくっていくべきだろうと思います。家庭教育、幼児教育、小学校教育、そして高等 教育につながり、さらには生涯教育というふうに教育の視点から1つ筋を通すべきでは ないかと思っております。  と同時に、せっかく総合施設をつくるのであれば、その大切な事業として、「保護者 教育」、ちょっと言葉がこなれません、親を支えるといいましょうか、自分の力で子ど もを育てたいと願っている親を支える教育というものを同時に基本的な機能とすべきだ ろうというふうに思います。保護者の子育て力を向上を支援する事業ということでござ います。 入園年齢・要件のところでございます。  中央教育審議会の幼児教育部会の方で、集団教育は何歳から可能かということを、日 本保育学会会長・小川博久先生に質問がございました。小川先生は、3歳児以上は当然 であろうと、2歳児については条件が十分整っていれば可能であろうというお答えでご ざいました。そんなところから、集団教育の対象は、原則として3歳から5歳児である というふうに一応考えるべきであろう。2歳児については、今後の検討課題とすべきで ある。0歳、1歳児については、原則として家庭教育の対象とすべきである。育児休業 制度の充実によって対応すべきものである。したがって、総合施設の入園年齢というも のは原則として3歳児からというふうにすべきであるということです。  また、最後のところに、これは間違いです。撤廃ではございません。何もないわけで すので、「保育に欠ける」要件は要しないと、これは当然のことであろうと考えます。  5番目の利用形態でございますが、最大限8時間、「8時間を原則とする」と書きま したが、8時間を限度とするというふうに考えるべきで、できるだけ教育時間と子育て 支援を合わせても8時間にならないように努めるべきである。8時間を超えるもの、あ るいは2歳以下に対するいわゆる長時間の保育というものは、これは原則として総合施 設ではやらないというメッセージを出すべきであろうと思います。しかし、どうしても 地域として必要である場合には、もちろんこれはやらざるを得ないわけでありますが、 その場合には、極力短時間のものにとどめるべきである。  なお、この8時間を超える部分等、就労支援というところにつきましては、公費負担 は行わないという原則をとるべきであろうと考えます。なお、企業も就労支援について は、当然受益者として負担をするべきであると思います。  「費用負担」というふうにまとめましたが、今言ってしまったことがそこに書いてご ざいます。しかし、安上がりの教育、安上がりの子育て支援ということは、これはあり 得ないわけでございまして、国として、この際、子育てに対してしっかりと責任を果た すという決意を込めた支援を実現していただきたいというふうに考えます。  7番でございますが、公費負担の問題につきましては、私立幼稚園といたしまして は、公私幼保という組み合わせの中で、従来言ってみれば、虐げられた立場にきており ます。この「公費負担の公平化」というのが前提として行われ、かつこの総合施設にお いても公私の公費負担の差がないという状況をつくり上げていっていただきたいと思い ます。  8番目付加的機能、総合施設における「学童保育等」と書きましたが、学童保育につ いては、特にこれを小学校入学前の施設になぜ求めるのか、非常に理解に苦しむところ でございます。閣議決定も「小学校入学前の」ということになっておるわけでございま して、学童保育は小学校に設置するのが当然ではないかと思います。  それから、9番目、既存の一体施設というのがいろいろございます。増田先生の資料 の中にも、例えば事例1として、千代田区の子ども園が挙がっております。これはいろ いろなところで大変実績を上げた先行事例ということで高く評価されておるやに伺って おりますが、私が伺っているところでは、これは成功事例とは到底言えない、失敗事例 だというふうに考えます。いろいろ難しい点があるのですが、公費負担のあり方1つと りましても、1人当たりの公費負担が300 万になっているということ、そして、そのう ちの95%程度が自治体の持ち出しになっているということ。これはある意味では、その 自治体の住民の利益にはならないというものでございます。元来、この地域には公立幼 稚園、保育所、それと私立の幼稚園があったところでございますが、この一体施設がで きたことによって、私立の幼稚園が大きな打撃を受けている。社会資本として営々と努 力を積み重ねてきたものを困難に陥らせるような総合施設というのは一体何なのかと、 一体施設でございますが、これは失敗事例としか言いようがないと。  これに限らず、多くは公立の幼稚園と保育園の一体施設でございますが、例外なしに 非常に公費がかかっております。自治体負担が今より多くなるという大変奇妙なことが 起こっておる。とても成功事例とは言えないのではないかと。いずれにいたしまして も、総合施設を立ち上げるのであれば、自分で子どもを育てたいと願う親を支えるとい う強いメッセージをこの際出していただきたい、かように考えております。  時間を超過して申し訳ございませんでした。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、ただいま御説明ございました内容につきまし て、御質問あるいは御意見等、御発言いただきたいと思います。吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  2点ほど御質問したいのですけれども、5の「利用形態」のところで、教育4時間、 子育て支援4時間とありますが、「保育に欠ける」要件を撤廃した場合に、極端に言う と、専業主婦家庭の子どもも、働いている母親の家庭の子どもも、8時間までなら同じ ように入れると、園にいるというイメージでいいのかどうかが1点。  それから、もう一つは、ここで言う、子育て支援4時間という、もう少しイメージが わからないものですから、この辺の御説明もう少し補足していただきたいと思います。 ○北條氏  私、実は子どもが3人おりまして、一番上の子どもは、0歳から公立の保育所にお世 話になりました。2番目の子どもは、当時は無認可保育所と言われておりましたけれど も、0歳からお世話になりました。大変保育所にはお世話になっております。また、私 の幼稚園の職員も3名ほど保育所のお世話になっておりまして、大変感謝いたしており ます。  それで8時間を原則だか標準でしたか、最低基準、やはりあれは厳守されるべきもの だろうというふうに考えます。通勤時間どうするのだとかいろいろ議論がございます が、どんどん今エンゼルプランあるいは新エンゼルプラン等の中で、12時間開所、13時 間開所ということが行われて、従来持っていた、ゆったりとした保育を行う保育園のよ い文化というのが、一方では失われているというところもあるのではないかと思ってお ります。それで、企業の側も、12時間保育をとれば残業できるでしょうという形で子育 ての期間の親に対して非常に強く出る傾向がこの間あるわけでして、やはりメッセージ としては、8時間に限定するということで、また、企業にも当然子育てをする親に対す る支援措置というのは、強く強く求めてしかるべきものだと思っております。  もう一つ、何でしたか。 ○吉田委員  今の表現で、「保育に欠ける」子どもでも、欠けない子どもでも、今おっしゃった意 味の8時間の枠内であれば、同じような利用ができるのかと。 ○北條氏  はい、そうです。もう一つ、ありましたよね。 ○吉田委員  子育て支援4時間という、このイメージがわからないのですけど。 ○北條氏  すいません。割と思いつきなもので、要するに教育の営みを含めて、教育と生活が一 体化しているわけですけれども、8時間超えてはだめだよというふうに御理解いただけ れば結構でございます。 ○前田委員  先生からも、ご自分の幼稚園で、2歳児の親子保育を受けているというアイディアを お聞かせいただいたのですけれども、横浜市は非常に専業主婦が多い地域でして、0、 1、2歳で保育園に行っている子どもたちは5%もおりません。今、自治体や地域で大 きく問題になっておりますのは、0、1、2歳のお母さんたちに子育て支援が非常に手 薄でして、そこに育児ノイローゼをお持ちになったり、いろいろ虐待の問題も発生いた しまして、ここをどう支えていくかということが大きな課題になっています。  ですから、総合施設をもし横浜市でつくるとなった場合、専業主婦のお母さんたち、 特に0、1、2歳児をもつお母さんたちが、経験できる場が必要だと思っているのです が、一方で、年子のきょうだいの子どもさんが病気になるとか、ご自分が病気になると かで、緊急一時保育のニーズも非常に強くありますので、そういう0、1、2歳の子育 て支援も必要ではないかと思っています。低年齢児の保育、子育て支援についてはどの ようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。 ○北條氏  既存の幼稚園あるいは保育園でそれに通っておられない0歳から2歳、うちの幼稚園 にも赤ちゃんから2歳まで親子でお見えになりますけれども、そういう方々を受け入れ る事業というのはぜひともやっていかなければならないというふうに思います。ただ、 しかし、ただいま最後のところでお述べになりましたように、総合施設に0、1、2の 長時間の保育を担う機能を、これは義務づけるのでなければ、地域の実情によってそう いうことはやって私はいいと思うし、元来は保育所をきちんと整備すべき問題だと思う んですね。要は少しでも安上がりに何とかならないかというのが根底にあるわけではな いでしょうか。そういう考え方は間違っていると思いますね。やはり本当に必要な方に は、まさに自治体の責任で保育所を充実させるべきものだと思います。  ただし、現在、低年齢の保育所を利用している方と、それから専業主婦という言葉も よくないので、フルタイムマザーズと言った方がいいと思いますけれども、そういう方 々への公費支援がアンバランスだということを、従来、専業主婦と言われている方々が 深刻に気づいてきているんですね、今。ですから、いわゆるフルタイムマザーズをして いたらば、公費負担の上から損をするのだよというメッセージは出してはいけないと思 うんですね、新しい総合施設においては、そういう気持ちでございます。 ○堀委員  2点お伺いします。1点目なのですが、レジュメの2番目のところに、総合施設につ いて「地域のニーズにしっかりと対応」と書かれています。これは大変重要な指摘だと 思うので、この部会で私も意見をいくつか申し上げました。児童福祉サイドのニーズに ついては、保育所あるいは幼稚園で対応できないニーズをいくつか指摘しました。幼児 教育サイドでは、新しいニーズとか、あるいは充足されてないニーズとか、何があるの ですか。ここには保護者教育とか、小学校との接続など書いてありますけれども、総合 施設の必要性という観点から、幼児教育サイドのニーズといったものがあったら教えて いただきたい。  それから、2点目なのですが、預かり保育について割と消極的な御意見だったと思う のですが、その理由と、それから、預かり保育の実態、これは多分文科省で把握してい るのかもしれませんけれども、御存知でしたら教えてください。あるいは北條さんのと ころの預かり保育についてどういうことを行っているか、お伺いしたいと思います。 ○北條氏  幼児教育のニーズとしては、繰り返しになってしまうかもしれませんけれど、やはり 地域で、かつては大きな異年齢を含んだ集団の中で、身の安全を確保するとか、それか ら、初歩的な他と交流する表現、言葉を中心とした表現というのはかなりの程度、自然 のうちに身につけたと思います。しかし、そういった機能が今、特に私のところなど は、私が育ったころは、私、ガキ大将でございまして、30〜40人の集団で遊んでいたん ですね。私の長男のころになりますと、5人ぐらいがやっとだったんですね。現在その 地域にすっと遊べる同年齢の子どもというのはいないんですよね、1人しか。そういう 状態ですから身についてこないわけです。それを幼稚園なり保育園では補っていくとい うことがどうしても必要だろうと思います。これが1つ。  それから、小学校へ向けたことは、先ほど申し上げましたので繰り返しませんが、も う一つの課題はそこにあろうかと思います。  それから、預かり保育でございますが、私はこの名前が嫌だというだけで、やってい ることに反対ではございませんし、昭和53年だったと思いますが、私の幼稚園で、今で いう預かり保育を始めました。先ほど言いましたように、1時半から4時半までの3時 間でございます。港区役所の方に、私はこれも教育活動だと思いましたから、園則変更 届というのを出さなければいけないんですね。保育時間の変更を届けに行きましたら、 学校教育法に反するからだめだとつっ返されまして、結局受理してもらえなかった。し かし、そのまま実施はしてまいったわけでございますが、今に至ると補助金までくださ るという、こういう話でございまして、私立幼稚園ですと、概ね80%が何らかの形で預 かり保育を現在実施しております。概ね教育時間に引き継ぐ3時間ぐらいが標準だろう と思います。公立幼稚園はちょっとわかりませんが、パーセンテージは大きく下回ると 思います。  私のところでは、3時間の中に、おやつをみんなで食べる時間を含んで大部分はごく 自由に活動をする。昔の私どもが子どもだったころ、路地裏で大きい子ども、小さい子 どもが混ざって遊ぶような、そういう遊びをしてもらいたい。保育者は1人専任でつき ますが、その先生の役割は、言ってみればがき大将という、そういう役割でございま す。  当初、昼寝をさせることが必要かと思いましたが、どうやら必要ないということで、 幼稚園ですと、3歳児以上でございますので、昼寝をしなくても、集中力を欠いて事故 につながるということが、もう長いことやっておりますが、通常の保育時間帯よりも事 故発生率は極端に低いものとなっております。  こんなことでよろしゅうございますか。 ○網野委員  先生の総合施設に対するイメージ、やや、疑問というか、それも含めていろいろ聞か せていただいたのですが、お話を伺ったことを少しかいつまんで受けとめますと、1つ は、特に入園年齢要件ということで具体的に示されたことが基本になるかと思うのです が、総合施設は、いわゆる日々通うといいますか、ちょうど現在の保育園や幼稚園の子 どもたちが通常の教育や保育を受けている、その姿と非常に私は重なってお話をお聞き したのですね。その場合に、いわゆる利用型といいますか、あるいは随時必要なときと いうことを含めて、先ほどの子育て支援とも非常に関連するのですが、あるいは0、 1、2歳、あるいは働いている、働いていないに関係ない、いろんな状況の中で、この とき、こういうことでニーズがあって、総合施設に子どもを通わせたいというふうな場 合も含めてイメージしてよろしいのでしょうか。  それで、もう少し具体的に言いますと、どちらかというと、幼稚園での、午前中とは 言いませんが、幼稚園の教育、それに拡大して保育園の保育というふうなシステムなの かなというふうに受けとめられましたので、ちょっとその点を1つ確認したかったこと と、それから、それに関連しますが、確かにおっしゃるように、幼稚園も保育園も、い わゆる幼保一体といいますか、そういう部分はあるということを私もよくわかるのです が、どちらかといいますと、保育園は保育指針で明らかに幼稚園教育要領に準ずるとい う表現になりますが、あくまでもそれを包含してやっていますが、もし幼稚園が、現在 の預かり保育の状態を見ても、誰が、子どもとかかわるのかという部分は結構いろんな 課題があるように思うのですけれども、先生、今、おっしゃったような趣旨の総合施設 でいいますと、いわゆる職員のシステムとしては、両方の資格を持っている人がかかわ るのが望ましいというのは当然でしょうが、そのあたり、どのような構成が適当であ る、ふさわしいとお考えか、その2つをお聞きしたいと思います。 ○北條氏  前の方でございますが、やはり基本は、私はもう一回繰り返しますけど、イメージが どうもわかないんですよね、総合施設。わかないのだけれども、つくらなければいけな いのなら、こういう柔軟なものでということでございますので、もう一回、お断りした 上ででございますが、3歳から5歳については、通常のフルタイムですよね。例えば、 5時間のお子さんもいるかもしれない、6時間の方もいる、7時間の方もいる、最大8 時間の方もおられるかもしれないけれども、臨時型ではない、基本的には。しかし、親 御さんが入院されたとか、そういう事態のときに、それを支えられるような臨時的な保 育を引き受ける、そういう態勢も当然必要だろうと思いますので、最初の御質問でいえ ば、先生が御指摘になったところは対象になると考えます。  それから、2番目の資格の問題でございますが、どっちでもいいのだと思うんですけ れども、私、幼稚園の立場から発言しますので、幼稚園教員の資格があれば、それでよ いと。また、仮に現在保育所を運営されていて、保育士資格であるところが、私のイメ ージでいけば、そこから総合施設に転換するところなんてないと思いますけれども、仮 にあるとすれば、もちろん現職の方が保育士資格で総合施設の職員となることは何ら差 し支えないと思います。  ただ、教育要領に基づくということを確認するのであれば、将来的には教員資格を取 っていただくということになろうと思いますけれども、現職の保育士の方が担当される 場合は、経過措置として、それは当然認めなければ混乱するばかりだろうと思います。 ○山縣委員  1点だけ教えていただきたいのですけも、前提条件である、制度上つくらなければな らないとすればということと、市町村等が目標値を持つべきではないと、それを理解し た上で、先生は、幼稚園協会の役員さんとして、少子化著しい地域、過疎地等の、そう いう地域においても、そういう前提でお考えなのでしょうか。それとも地域によって少 し違う考え方は積極的にやるべきだというふうなお考えなのでしょうか。 ○北條氏  増田先生のを利用させていただいて恐縮でございますが、事例2の箱根の場合、これ などはやるべきだと思いますね。こんなところで、公立の幼稚園と保育園を2つつくる なんて非常にばかげておることでして、それから六合村でしたか、群馬県、ああいった 人口が最大のニーズとして、幼稚園と保育園を1か園ずつつくったのでは、両方とも定 員を充足しないというところは現実にあるわけでございまして、そういうところは積極 的に総合施設を導入すべきだと考えています。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。それでは、次に移らせていただきます。武田さんお願いい たします。 ○武田委員  ベネッセスタイルケアの武田でございます。本日は、このような意見陳述の機会をち ょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。  私ども「ベネッセスタイルケア」という社名になっておりますけれども、ベネッセコ ーポレーション、御存知の方も多いかとは存じますが、もともと通信教育の方からスタ ートしまして、ベネッセ、造語なのですけれども、ベネ(よく)エッセ(生きる)とい うことで、生活全般を支えるような会社というようになりたいという思いでやってきて おるところでございます。  その中で高齢者介護の分野と保育分野と、いわゆる福祉関連サービスに携わる部分を この4月1日より分社化いたしまして、「ベネッセスタイルケア」という形で新たに出 発を切ったところでございます。そういうことで「ベネッセスタイルケア」という肩書 に私の方はなっておるところでございます。  本日は、もちろんこのベネッセの事業内容そのものを宣伝する場でもございません し、あまり長くお時間とるわけにもいきませんので、概略だけお話しさせていただきま すと、まずベネッセの保育、こちらのレジュメの方、最初に書かせていただいています とおり、現在認可園を8園、それから認可外園7園、全部で15園運営させていただいて おります。認可園の方は、公設民営、これは三鷹市の方で全国最初の事例をお引き受け させていただいておりますので、いろんなところでお目に触れていることかと思います けれども、三鷹市を皮切りに現在のところ6園運営させていただいております。今年度 中にさらに2園、受託の方が、増える予定になっておりますので、今年度中には8園に なるということになります。  それから、ベネッセ立ということでやらせていただいております認可園、こちらの方 が神戸と横須賀に各1園ずつ、2園ございます。  その他、認可外園は、都の認証園が1園、横浜保育室が2園、駅型保育試行事業に則 ってやっておりますところが1園ございまして、さらにそれ以外の園が3園ございま す。なお、このうち駅型保育試行事業の方は、近い将来の制度の打ち切りということも 控えておりますので、今年度中には民設民営の認可園の方に転換予定ということになっ ております。したがいまして、年度内には認可園が11園、認可外園が6園という構成に なる予定でございます。  私どもの方で提供させていただいております保育の内容につきましては、あまり詳し く触れる時間もございませんので、お手元の方にパンフレットをお配りさせていただい ております。一言だけ申し添えさせていただければ、ベネッセ、割と教育の会社という イメージが強うございますので、何か早期教育とか英才教育とか、特別なことをやって いるのではないかというイメージでとらえられる方が非常に多うございます。しかしな がら、一切そういったいわゆる奇をてらうようなことは何もやっておりません。家庭的 な雰囲気の中で一人ひとりを大切に育むというある意味で保育の本道、これを愚直に展 開させていただいているところです。教育を中心とした会社であるというところから、 そういう誤解を受けがちではあるのですけれども、地道に着実にやっているというとこ ろを御理解いただければと考えております。また、パンフレットの方はご覧いただけれ ばというふうに思います。  今回、幼保総合園についての検討ということで、何か意見を披露してはというお話を ちょうだいいたしまして、まず、これまでの制度の議論の過程、ある程度マスコミレベ ルでありますけれども、これを自分なりに勉強させていただきました。先ほど来も、い くつか議論はございましたけれども、もちろんニーズとしては、郊外なり、比較的過疎 が進んでいるところで、幼稚園・保育園両方の定員を埋めるだけの子どもがいないので 一緒にやりたいであるとか、それから、先ほど増田先生の方からもございましたけれど も、幼稚園の方は、随分と欠員が出ているにもかかわらず、保育園の方は待機がある と、こういった地域等において、幼稚園と保育園を一緒にしたいという流れなり、ニー ズなりがあることは理解できるところです。  しかしながら、それで一緒にするということだけで新しい制度をつくっていいのかな という点には非常に大きな疑問を持っているところです。幼保総合園という新しいカテ ゴリー、新しい施設の類型の方をつくっていく以上は、やはり、現在の保育園・幼稚園 で満たされないニーズは何なのか。そのニーズをいかにすくい上げて、幼保総合園の中 で提供されるべきサービスの中身を定めていくのか。やはりここのところに注目しない ことには新しい制度をつくる意味そのもの、また制度の骨格というものが固まってこな いのではないかということを非常に強く感じる次第です。  そういった中で、私どもがこれまで保育事業、それからの教育も含めてですけれど も、こういった事業をやってくる中で、では、どういったところに今の保育園・幼稚園 で満たされないニーズがあるのかということをちょっと考えてみました。  私ども現在では認可園がたくさんという状況になっておりますけれども、もともと認 可外園の方からスタートしております。これは制度的に認可園ができなかったというこ ともあるわけですけれども、幼稚園に行かせたい、教育には熱心で、教育投資もしたい のだけれども、ただ、預かり時間が圧倒的に不足していて、これでは本当に仕事をやめ なければいけないというようなご家庭を対象に、教育的観点、それから保育という観 点、これをうまく調和させながらサービスの提供ができないかというところからスター トしておるわけでございます。  現在、認可園の方が多くなってきている状況ではありますが、現在、私どもの認可園 に通っていただいているお子様・ご父兄の中でも、本当は幼稚園に行かせたいんだけど ね、というようなことをお考えの方というのは結構多いというふうに感じてはおりま す。  あくまで参考ではございますけれども、資料として「第2回子育て生活基本調査(幼 児版)」というのをお手元にお配りしてございます。これは今回の幼保総合園の議論の ためにとったものでは全くございませんで、私どもベネッセコーポレーションの方で、 「未来教育センター」という比較的教育の分野では名の通ったシンクタンクを持ってお るのですけれども、こちらの方で、昨年の秋にとったデータの中から、幼稚園に通わせ ておられる保護者の方、それから保育園に通わせておられる保護者の方、それぞれを抽 出してみて、どんな傾向の違いがあるのかというところを見てみたものでございます。  3ページ目の方に数が出ておりますが、やはり多いのはお母様が専業主婦で幼稚園と いうご家庭、それから、お母様が常勤で保育園というご家庭と、これは大体想像のとお りでございます。  はしょって御説明させていただきますけれども、1つ注目すべきは、常勤であるにも かかわらず幼稚園に行かせておられるご家庭も結構ございまして、ここの傾向というの が非常に顕著に出ております。右肩の方にページ数を付けておりますけれども、6ペー ジの方をご覧いただきますと、例えば常勤で幼稚園に行かせておられる方、これはやは り非常に教育熱が高いと。小学校受験の意向も非常に高こうございます。それから、7 ページの方をご覧いただきましても、常勤・幼稚園については、教育投資が非常に高い 傾向が出ております。それから、8ページ目の方に、「子育ての楽しさ/仕事と両立の 負担」というところがございますが、常勤・幼稚園を見ていただければ、物すごく仕事 との両立は負担なんだけれども、子育ては楽しいという非常に顕著な傾向が出てきてお ります。  私どもが現在保育園を運営している中で、「本当は幼稚園に行かせたいのだけれども 」というような層は、これは仮説でしかございませんけれども、もっと教育投資もした い、教育にもっと熱心にかかわりたいのだけれども、なかなかその機会がないというの か、保育園という制度の枠の中でしかどうにもやっていくことができないという状況に あるのではないかと思われます。今の段階では、なかなか定量的にお示しできませんけ れども、こうした層が一定数存在するのではないかということは言えるのではないかと 思います。  そうした中で、先ほど北條先生からもございましたけれども、私たち保育園も、もち ろん教育ということは一生懸命やってきたつもりです。保育と教育というのは切っても 切れないものですし、ただ単に預かって、そこにいさせるだけなんていうことをやって きているつもりは全くないわけです。しかしながら、やはり幼稚園と保育園、何が違う のかというふうに突き詰めて考えた場合、例えば幼稚園の先生方、これは当然私も知り 合いに何人もおりますが、例えば放課後さぼっているわけでももちろんありませんし、 夏休み、冬休み、春休み、決してさぼっているわけではなくて、そこで準備したものを すべて通常に園が運営されているときの、9時から2時という基本5時間の中に投入し ていく。やはりそれだけの準備の上にこの教育というものが成り立っている部分という のは非常に強く感じます。ある意味で人の使い方としては非常に贅沢な使い方である と。正直、保育園ではすべての準備を走りながらやらざるを得ません。保育をしなが ら、次の準備、次の準備ということをやっていかなければならない。ここはもちろん最 大限の努力はしても、どうしても、周到な準備の上に教育を積み上げるという、こうい うところではどうしても追いつかない部分はあるな、ということを保育園を運営してい る中で感じるところでございます。  本当は幼稚園に行かせたいんだけどな、という層の、本来のニーズというのは、非常 に周到な準備の上に成り立った教育という、どうしても保育園で追いつかない部分が事 の本質なのかなというふうに、現段階では本当に仮説にすぎませんけれども、そのよう にとらえられるのかなと思っております。  したがいまして、幼保総合園という新しいものをつくっていくのであれば、特に3歳 から5歳、この幼稚園か、保育園かという選択にさらされる年齢の子どもさんにとっ て、やはり幼稚園が持つ、コストの制約にとらわれずというのは言い過ぎですけも、さ っき申し上げたような、非常に周到な準備の上に成り立った教育というものと、それか ら保育園が持つ家庭的な雰囲気の中で長い時間を一人ひとり大切に育んでいくメリット とを兼ね備えた新たなサービスコンテンツの提供を柱にする必要があるのではないかと いうふうに考えておるところでございます。  もう一つは、子育て支援、これも本日、何度か議論にはのぼっておりますけれども、 この部分かと思います。先ほどの参考資料の方、一番後ろに参考資料2というのを付け させていただいております。これも先ほどの調査の中で、これ用にとったものではなく 使えそうなものを抜粋しただけなのですけれども、ここで注目すべきは、例えば就労形 態別に見たときに、右下のグラフです。常勤のお母さまにとって、お子様のしつけや教 育について、誰に相談するのか、どこからその情報を得ているのか。これは自分の親に 匹敵するぐらい、やはり幼稚園の先生、保育園の先生に相談をしています。常勤であれ ば、なかなかご近所のお友達とそういう話をする機会もないなというのが、このグラフ から見てとれるかと思うのですけれども、保育園・幼稚園に対する育児支援機能、相談 して知識を得てという機能が要望として非常に高まってきているのは、こうしたグラフ からも見てとれるのではないかというふうに思っております。  本調査は、幼稚園・保育園に通わせているお母様方からのみの調査でございますけれ ども、それ以外の専業主婦家庭も含めて、子育て支援に対するニーズは当然強まってき ているだろうと思っております。したがいまして、幼保総合施設においては、在園児の 保育・教育の充実を図ることはもちろんですけれども、在園児の保護者、さらには地域 の中の非在園児の保護者に対しても子育て支援の機能を充実させていくことは、今の保 育園・幼稚園で足りないニーズという観点からどうしても必要になるところではないか なととらえておるところでございます。  やはりこうしたものを実現していく上で、これは民間企業から見てという部分が多分 にございますけれども、今の保育園制度から見た場合に何が論点になり得るのかなとい うところを私なりに挙げさせていただいたものがこの3番になります。まず先ほど来出 ておりましたが、サービス内容の多様化です。先ほど申しましたとおり、幼稚園での教 育という面でのコンテンツ、これはやはり園ごとに非常にバリエーションが多いという のは見ていて感じるところです。それは言ってみれば、価格的なしばり、コストのしば りというところから、保育園よりはある程度自由な中でいろいろなコンテンツを考え て、提供していけるというところがそういったバリエーションにつながっているのかな と思うところです。一方、今の保育園の制度、これは認可園であれば運営費補助金、な いしは自治体ごとに独自の補助が一定ありますけれども、コスト的にかなりかちっと枠 をはめられている中でどうするかということで、工夫の範囲は正直かなり限定されてし まうというのが状況かと思います。  そこで、新たな制度をつくっていくのであれば、提供するサービス内容を基礎的な部 分と付加的部分、これは生活支援的部分と教育的部分というふうに言い換えてもいいの かもわかりませんけれども、こういった2つの部分に分けてとらえ、後者の教育的部分 については対価徴収と価格設定を自由化していただければ、現在の幼稚園と同じですけ れども、そういう中で提供するサービスの多様化は当然図っていけるのではないかと考 えております。  例えば、高齢者介護に関して介護保険制度がございますが、こうした中でも、例えば 一定の職員配置を基礎的部分として保険で見ましょう、それを超えた部分については付 加的給付ということで、それは相対で料金を決めて取ってくださいと、こういう構成を とっている領域もございます。したがいまして、ここの切り分けというのはいろんな考 え方があるだろうと思いますし、今の段階でこうであるべきだという定見を持っている わけではございませんけれども、何か基礎的部分と付加的部分と、こういう切り分けに おいて、価格設定の自由化というものを導入していってはどうかと考えておるところで ございます。さらに利用者による選択ということをさらに徹底していくのであれば、利 用者と園との直接契約の仕組み現在間接契約という形になっておりますけれども、こう いった仕組みは重要ではないかと思っております。  先ほども第三者評価のお話ございましたが、やはりサービスが多様化して消費者・利 用者の方が選択をするということは、これは権利であると同時に非常に大きな責任を伴 います。したがいまして、適切な選択が可能になるように、とにかく利用者がちゃんと 選択できるだけの情報が利用者の方にきちんといっていなければならない。そういった 観点から、第三者評価も含めた情報開示の仕組み、これを徹底していくことが自由化の 前提になるだろうと考えております。  次に、もう一つはお金の面でございます。今の選択と自由化というところとも絡みま すけれども、まず、やはり保育サービスというのは、極めて価格弾力性が高いという事 実は押さえなければならないと思っています。端的な言い方をすれば、よく認可外園の 業界で、「保護者負担額の月額10万円の壁ということが言われるのですけれども、要は 保育に要する費用が10万円を超えるようなことになってくれば、「私、仕事やめて、う ちにいるわ」ということにどうしてもなってしまいがちなわけです。したがいまして、 やはり価格というのは保育サービスというものを提供する上で非常に大事な要素になっ ております。ですから「ジャブジャブに補助を入れろ」というようなことでは全くなく て、ただ、雇用というものが継続する、お勤めを続けながら、どれぐらいなら負担でき るのかというところの適正な価格の水準はきちんと見きわめないことには、制度として 普及ができないということになろうかと思います。  そういうことからすれば、先ほどの議論につながりますが、やはり基礎的部分につい ては、きちんと手厚い補助金を投入していくことが必要でありましょうし、また、後者 の部分、付加価値の部分についてまで、今度は逆に補助金を投入していくというのは、 これは財政の面からもなかなか難しい部分あるでしょうから、そこは逆に価格の自由化 と直接徴収の可能化というところで構成していけば、非常に安定性の高いよい制度にな っていくのではないかと考えているところでございます。  さらに、私ども民間企業として現在保育園を運営しておりまして、現在の補助の仕組 みが運営費補助という事業者補助の仕組みをとっておりますので、民間企業であるか、 社会福祉法人であるかによって補助の出方が違う場合がございます。特に東京都加算と いうのが非常に我々として悔しい思いをしておるわけなんですけれども、社会福祉法人 には出るけど、民間企業には出ない。われわれ事業者にとってどうかということではな く、これはある意味で、私ども民間企業がやっている認可園に通っているお子様と、そ れから社会福祉法人さんがやられている認可園に通ってお子様とで受益できる補助金が 違うということに他なりません。一人ひとりのお子様に着目したときに、それぞれどっ ちの園に通うかで補助の出方が違う、補助金の受益のあり方が違うと、こういう形はや はり望ましくないのではないかと思っております。そういった意味で、事業者に対して 補助するという考え方よりは、本来かかるべき費用に対して発生する利用料に対する補 助、利用する方、個人に対する補助という方向に変えていければ、こういった問題も解 決するということだろうと思います。ぜひ、こういった仕組みについても御検討の方を ちょうだいできればと考えているところです。  以上、とりとめのないお話ですし、また、私もあまり細かく詰めて考えたわけでもご ざいませんが、頭の中に浮かぶことをるる書き述べさせていただいております。御検討 の方をいただければ幸いでございます。ありがとうございました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの武田さんの御説明、それから、少し 時間もございますので、さきのお二方の御説明について、さらに御質問等ございました ら、どうぞ、御自由に御発言いただきたいと思います。阿藤委員、どうぞ。 ○阿藤部会長代理  今の武田さんの方から、大変民間企業の立場から、ある意味、非常にわかりやすい御 説明いただいたと思います。1つは、既にある認可外保育園で、10万円の壁とか言われ ている、ということは、現在の段階でも企業の立場として、いわば高所得の共働き家庭 に対して、そういうサービスをする教育的なものを、高度の教育も含めて提供されてい る既に事例があるのかどうか。そうであれば、こういう一元化の議論をわざわざ起こす までもないということになるのですが、その辺を確認したいのですけれども。 ○武田氏  確かに、私ども認可外園の方をいくつか運営しておるところでございますけれども、 正直、価格の方、補助金なしでは10万円を超える設定をしなければ事業として成り立た ないというのが現状でございます。これは事業計画上甘かったと言われればそれまでな のですけれども、正直、非常に苦しい運営になっております。10万円を超える価格設定 をすれば、お客様が減り、稼働率が落ち、それを下回る設定をすれば、今度はお客様は ある程度集まっても、全く赤字になってしまうということで、正直事業として成り立っ ている状況にはないというふうにお考えいただければと思います。 ○無藤委員  サービス内容を基礎的と付加的に分けるという案がおもしろいと思いますけれども、 そこでいう基礎的ということのイメージ、何かあれば、保育のどういう部分を基礎的と 考えているのか、お教えいただきたい。 ○武田氏  ここにつきましては、先ほども申しましたとおり、これといって定見があるわけでは ないのですが、例えば1つの考え方としては、現在の認可園に対して、人員配置という のは当然一定の配置は課されております。ある意味ではここを基礎的というふうにみな して、この人数であれば、そういう意味では朝から夜まできちんとした保育が提供でき るだろうと。この根拠というのは、当然行政の側がお持ちだろうと思うのですけれど も、それに加えて、例えば加配をした場合、教育ということにあまりに専門特化する必 要まではないと思いますし、先ほどから何度か議論が出ていますとおり、幼稚園教諭と それから保育士と両方の資格を持っている人がたくさんいれば、これはもちろん流動性 が多くなっても構わないと思うのですが、こういった人の加配をした場合、その加配に 対してこれだけの料金を別途ちょうだいしますというような体系がとれれば、それはそ れで基礎と付加という切り分けになるでしょう。また、本当にサービスの中身の方で切 り分ける切り分け方、これはにわかに念頭に浮かびませんでしたので、今、申し述べる ことは控えさせていただければと思いますが、もしかしたら、そんな切り口もあるかも なというふうには思っております。 ○岩男部会長  前田委員、堀委員。関連でしたら、堀委員、お願いします。 ○堀委員  今の基礎的、付加的サービスに対する費用負担の話や、先ほど北條さんからは、8時 間超の保育サービスとか、2歳以下の児童については就労支援については、企業負担も 含めて受益者負担という話がありました。このように自己負担についての考えが示され たのですが、自己負担というのは、逆から見れば公費負担ということですね。公費負担 するには何らかの理由が必要です。公費負担する理由としては能力基準と便益基準とい う考え方があって、能力基準は負担能力の低い人には公費負担するというものです。そ れから、便益基準というのは、個人的な便益ではなく社会的な便益が生ずるものについ ては公費負担するという考え方です。基礎的サービス、付加的サービスについてです が、例えば延長保育とか、障害児保育とか、これは一般のサービスよりも付加的といえ ば付加的なのですが、そういったものについてどうするか。  幼稚園と保育園を考えると、教育サービスと子どもの生活を支えるサービスとがある わけですね。そういったサービスについて公費負担する理由があるかどうかとか、もう 少し広くいろんなことを考えて、自己負担、公費負担を考えていく必要があると思うの ですが、そういった考え方から踏まえると、こういう基準でいいというふうにお考えで しょうか。 ○武田氏  なかなか難しい御質問なのですけれども、念頭に置いておりますのは、どちらかとい うと、よく医療保険の世界で議論をされる混合給付論などをベースに考えていくのかな と。これも必要最小限の医療というのが何なのかという定義は非常に難しゅうございま すし、また、これまでいろいろ議論はされてきたところかと思うのですが、そうした意 味で、保育サービスとして必要最小限のものというのは何なのか。これはもちろん議論 した上で決めていかなければならない話だと思います。  逆にそこが決めきれるか、決めきれないのかというところが基礎的、付加的というこ とを分けられるのか、分けられないのかというメルクマールになると思います。申し訳 ないですけど、今の段階では、ここで切れるというのは、私自身ちょっとイメージの 方、細かくできているわけではございませんので、今はそれぐらいしかご回答できない のですけれども。 ○堀委員  北條さんに。 ○北條氏  私の考えは、単純過ぎると叱られてしまうかもしれませんが、8時間を超えて公費を 支出するような国は、社会主義国はあるでしょうけれども、聞いたことがないというこ とが前提でございます。教育一般については、国が社会を担う国民を育成するという意 味で、社会全体が利益があるのだろうと。それから、この少子化の時代、いろいろ子育 てが大変になっているわけですので、その中で有効、公平に、公平性というのも大事だ と思いますけれども、有効かつ公平に子育て支援を行うというのも、これも社会の大き な利益であろうと考えますので、そこまでは公費負担は筋が通ると考えております。 ○前田委員  1点だけ質問させていただきたいのですが、ベネッセさんならではの論点で、今まで 幼保の合同施設といいますと、過疎地でそれぞれの施設が維持できないような場所で、 物理的な条件からつくられてきたのが実態です。今、常勤で小学校受験を考えるような 親御さんにニーズがあるのではないかと言われたわけなんですけれども、小学校受験を 考える親御さんというのはほとんど首都圏に住んでいるごく少数の親御さんだと思うの ですね。また、一方では、ベネッセさん、認可保育園やっておられますよね。というこ とは、保育に欠ける要件が高い方、ですから、かなり小学校受験の世界とは違う価値観 や社会的状況で生活している親御さんもおられると思うんですけれども、総合施設は一 面経済力とそれだけのものを買う意欲がある親の施設として成り立つ。その方が民間企 業の賛同した価値があるとお考えなのか。それとも、総合施設においても、今の認可で 行っているような様々な階層の事情を統合していく場として可能性があるとお考えなの かを伺いたいのですけれども。 ○武田氏  実際、今、私ども認可園を運営していく中で、もちろんケース・バイ・ケースですけ れども、極端に言えば、やはり2つの大きな層に分かれつつある、分かれているのが実 態だろうと思います。要は共働きをしなければならない、事情があって、共働きをして いて保育に欠けるという、言ってみれば、昔から本来保育園制度が対象としてきた層 と、それから両親とも常勤職、そういう意味では非常に収入も高く、ただ、要は専業主 婦という生き方をあえて選ばず、あえて二人で働いているという生活のスタイルをとる ご家庭のお子様という非常に大きな2つの層に分かれてきているのは感じられるところ です。  そういう中で、クリームスキミングをよしとするということではもちろんないので しょうけれども、やはり保育園という制度の枠の中で、後者の人たちを、これまでどお り、その枠の中に取り込み続けていくのかというところに関しては、認可園をやる中で もちょっと疑問があります。保育園制度というのは、御承知のとおり、非常に多くの公 費を導入して、その分、負担を下げてやっていくものです。これは本来的には前者をタ ーゲットにしてやってきた施策ですから、逆にこういった保育制度の中に後者の人たち をこのまま入れ続けることそのものの是非は問われなければならないのではないかと思 っております。  そうした中で、幼保総合園という新しい制度をつくるのであれば、そういう層を吸収 するものとして組んでもいいのではないかというふうに感じております。明らかに今対 象層が分かれてきている中で、そういう後者を取り込む制度こそが、ある意味で幼稚園 と保育園のちょうど間にあるものとして求められているのではないか、こういうふうに 考えるところです。 ○松原委員  関連する質問なのですが、前田委員が御指摘のように、ベネッセスタイルケアが都市 部を中心に認可園と認可外園をお設けなのですが、いわゆる人口が少なくて、幼稚園と 保育園を一緒にせざるを得ないような地域で、仮にこれを民営でやろうというような発 想が出てきたときに、企業として、そういうところへ進出される意欲というか、企業的 な意欲、それがおありになるのか。あるいは実際にもしそういうことをされようとした 場合には、どんな条件があれば、そういったところにも出て行こうというふうに思われ るのか、その辺のもし条件があればお聞かせ願いたい。 ○武田氏  例えば地方部において、進出の意欲があるかどうかということですけれども、もちろ んいろんな要素がございますので、ケースバイケースとなります。例えばオペレーショ ンコストということからしても、今、我々は確かに首都圏を中心にやらせていただいて おりまして、例えば新しい園をつくるにしても、一個離れたところにつくるというのは 非常にコストがかかるし、管理コストもかかりますので、展開は徐々に徐々に面的に行 っていかざるを得ないことから、なかなか飛び地が難しいというのは1つあります。  それと同時にもう一つありますのが、やはり今、認可園ということであれば、負担と いうのは、ある意味で全国ほぼ揃っているわけですけれども、ある程度自由化される部 分というのをつくっていったときには、当然負担力の差というのが直接効いてくるとこ ろは出てくると思います。そうした場合、同じ負担額1万円、負担額2万円ということ でも、東京都心部と地方部においては当然負担感というのは差が出てくるでしょう。  逆に企業が地方に出て行けるとすれば、その負担感の差に匹敵するところ、これはも ちろん例えば人件費が安いとか、そういったところでコストダウンできるところもある かと思いますが、それでもしカバーできないところがあるとすれば、行政からの補助と いうことで下駄をはかなければ、これはなかなか事業としては難しいというのが論理的 な帰結かと思います。 ○網野委員  実は、先ほども増田先生、北條先生に同様の質問をさせていただいたのですが、やは り子どもとかかわる職員の専門性とか役割ということで、先ほど非常に興味深く伺った のですが、確かに保育園は走って準備をすると。そういう意味で言えば、幼稚園は周到 な準備、座って準備をするような部分の違いがあるのかもしれませんが゛このことがひ ょっとしたら、両者が一緒になったとき、デメリットではなくてメリットとして活かす ような方向という趣旨が結構含まれていたかと思うんですが、その場合、恐らく先ほど 来、御質問や、先ほどのお答えの中にも関連する基礎的部分で、例えば基本的にこのよ うな職員構成ということが、仮に基礎的部分の重要な部分としてあった場合に、いろん なこれまでの経験された内容と、今回特に示していただいている幼保総合園この具体的 な姿で考えた場合、法制度上どうなるかはともかく、現在の保育士と幼稚園教諭、ある いは一部看護師も大事ですし、保健師も大事ですし、そのような全体を含めて、先ほど お話されたことを本当に理想的に進めようとする場合にはどのような専門性を持った職 員が不可欠なのでしょうか。今までのシステムを統合するということも、統合というの は、分化したものをうまく役割分担ということもあるかと思うのですが、もし、さらに それを超えるようなことをお考えでしたら、ぜひ聞かせていただきたい。 ○武田氏  これも本当にこれまでやってきた中での経験値でしかないわけですけれども、実は認 可外園からスタートしてしまいりましたこともあって、幼稚園教諭を持っているスタッ フは、結構私どもの方にはたくさんいるわけなんですね。やはりもともと成り立ちから して、幼稚園教諭の資格を持っている方をたくさん採って、認可外園の方でやってきた という歴史はありますので、両側の特性というのはある程度わかっているつもりではあ ります。  そういう中で、やはり幼稚園教諭の方々も、これはそれこそ幼保総合園ということ で、一部公立でやられているところでヒアリングした結果も同じなんですけれども、互 いに得るものというのは非常に大きいとおっしゃります。先ほど申し上げたところとダ ブりますけれども、やはり保育園の保育士の方から見ると、「これだけ教育を提供する ために、これだけ下準備しているのかというところが初めて見れた。こういうものなん だね。」というところはすごく参考になる。  逆に幼稚園の方から見ますと、1つは「子どもの育ちの時系列からして、私たちは3 歳からとらえていたけど、0、1、2という、こういう流れがあって、初めて3歳では こうなるのかというところが見られるというのは、自分の教育観を非常に大きく変え た。」などという話をもらうこともあります。  先ほど分業論なのか、それとも相互乗入れなのかというお話があったかと思うのです けれども、そういう意味からすれば、分業よりは相互乗入れをしていく中で、全体とし て、これもまさに一元、単に統合ではなくて、一元という方向を志向することによっ て、初めて幼保総合園ならではという新しいサービスというのができてくるのではない かというふうに考えた次第です。 ○山縣委員  すいません、1点だけお聞かせ願いたいのですが、武田さんの話で、唯一運営主体の 話が出てきましたので、その点について教えていただきたいのですけれども、現在の認 可、保育所事業についての問題提起でしたか、企業であることによるデメリット、それ を公平にしてほしい、そういうご趣旨だったと思うのですけれども、選択の方法は、企 業そのものが社会福祉法人格を取るという選択もあり得るわけですね。ベネッセさんが 社会福祉法人になられない理由が、きっと企業であるメリットがあるのではないかと思 っているわけですが、そのことも含めて、総合施設の運営主体に関して、学校法人、社 会福祉法人、市町村直営プラス企業も含めた多様なものといろいろな選択肢があろうか と思うのですが、武田さんのお考えだったら、その運営主体というのは、どういうふう なあり方が望ましいとお考えなのでしょうか。 ○武田氏  今、なぜ、ベネッセで社会福祉法人を取らないのかというところが根っこにあるだろ うと思います。よく営利か、非営利かという話が出ますが、決して営利法人だからぼろ もうけして何かうまい汁を吸う非営利事業だから清貧だ、などということは全くないわ けなんです。ただ、唯一、営利か、非営利かということの差は、そこで上がった収益と いうのを、当該事業のみにしか再投資できないのか、それとも外部に対して出していく 可能性を残すのか、という点だけだろうと思います。よく、もうける、もうけないとい う理屈と、営利、非営利というのがダイレクトに結びつく議論がされるのですが、そこ は違うだろうということを前提に置いた上で申し上げたいと思います。社会福祉法人、 これは現在利益というのを外に出せない構造になっておりますが、一方、株式会社とい うのは株主に投資していただいて、その中で収益を上げて配当としてお返しするのが基 本となります。実際にどういうふうにしているかというのは、これは日本独特の事情が ありますので、アメリカのように大々的に配当しているわけではないというのは御承知 かと思いますけれども、やはり理屈として絶対配当できない事業に投資するというので は、株主に対する説明がつかない。メセナとしてやるならともかくとして、株式会社が 社会福祉法人をつくってやるというのは基本的には理念の面で難しいところがあるかと 思います。  実際、私ども今やっておりますベネッセスタイルケアというのは福祉の専業会社です から、まさに福祉という事業に再投資して拡大していくということでやっていますの で、ある意味で社会福祉法人と同じ事業構造ではあります。株式会社という形をとる意 味の一つとしては、外部の目、外部監査機能ということが入ることによって透明性が担 保される部分ということも当然あります。株式会社だからNGで、社会福祉法人ならOKと いうようなことではなく、同じように参入させていただければありがたいと考えている ところです。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。それでは、ここで、ヒアリングは一応終了ということにさ せていただきたいと思います。おいでいただきました先生方、本当に貴重なお話を聞か せていただきまして、ありがとうございました。              (増田氏、北條氏、武田氏退席) ○岩男部会長  これから、総合施設についての議論に移りたいと思います。  本日は、前田委員から、地方行政の観点から、「保育、子育てに関する状況と課題に ついて」という資料をご提出していただいておりますので、まず、前田委員から御発言 をいただきたいと思います。 ○前田委員  それでは、御説明させていただきます。横浜で就学前の子どもたちがどういう状況か ということを見ていただきたいと思います。  横浜市は、350 万人の市ですので、0、1、2、3、4、大体3万3,000 人前後子ど もがおります。もともと専業主婦が非常に多い地域で、保育所の箇所数が少ないから専 業主婦が多かったというのもあると思うんです。現在、保育所の数をすごい勢いで増や しておりますけれども、0歳児に関しましては、大体3万3,000 人に対して保育所の定 員が1,800 人しかないということで、5%ぐらいということでございます。  それから、0、1、2歳児への保育園に入らない子どもたちへのケアがあまりないの が実情でございます。例えば、0歳児では、母子訪問指導、4か月健診などに来ますけ れども、4か月健診でも必ずしも全員のお母さんたちは来られるわけではないので、こ ういう健診に来られないお母さんたちが虐待予備群といいますか、非常にフォローが必 要なお母さんたちになっております。  0歳児に関しては、医療的ケアも必要ということで、いわゆる保健所なども絡みまし た健診なども非常に多いのですが、1、2歳児になりますと、それが急速に減りますの で、公的機関が1、2歳児を持つお母さんたちと接触するチャンスが激減いたします。 ですから1歳6か月健診の後、もう健診がございませんので、1歳6か月健診で漏れて しまいますと、しばらく公的な機関が3歳児健診まで、お母さんを手紙などで呼び出す チャンスがなくなるわけなんですね。  このほかにも、この数年、急速に専業主婦のお母さんたちが子育ての悩みを持ってい らっしゃることが顕在化しましたので、行政としてもおくればせながら、いろいろな自 主的な子育てグループを立ち上げたり、中学校区に1つずつあります地区センターで、 毎日ではないのですけれども、子育て支援者が来まして、子育て相談をしたりしている のですが、実情を言えば、保育園に入ればほとんどフルタイムのケアを受けられるけれ ども、それに落ちこぼれたお母さんたちは、意識に目覚めていて行動力のあるお母さん は子育てサークルに加わったり、いろんな集いの広場に行ったりして場を広げていけま すけれども、そういうお母さんに対する場もに圧倒的に足りないし、しかも、そういう ところに行きにくいハイリスクグループのお母さんたちに関しては、今のところ行政が いろいろ手を出すような場が非常に少なくなっているということがあります。もし横浜 で総合施設をつくることになれば、0、1、2歳の待機児解消ももちろん総合施設が期 待を担っているわけですが、0、1、2歳の在宅のお母さんたちの子育て支援も今まで とは違った形で、さらに大きな仕掛けでできるような場になっていただきたいと。横浜 などではそういうことが総合施設の役割として期待されるのではないかなと思っており ます。  次に、横浜は専業主婦の比率が非常に政令都市でも最も高いうちに入りますので、幼 稚園は非常に在園児数も高くて、平成15年度で、就学前児童の約3割が幼稚園、約12% が保育園に行っております。ですから就学前の子どもたちで施設に入っているお子さん は大体43%ですが、繰り返しますけれども、0、1、2に関しては施設でフォローされ ている子が少ないです。  横浜市でも、いくら子どもが多いとはいえ、地域的に偏在しておりますので、北部地 域では幼稚園も満杯という状況ですが、南部地域では幼稚園は定員割れしておりまし て、園児数が減っている幼稚園などでは、保育園の待機児童は割とまんべんなくござい ますので、幼稚園を活かした待機児対策として、幼稚園の預かり保育が48園になってお りますが、フルタイムで働いている人でも預けていただけるような預かり保育を目指し ております。  それから、2つ目は、幼稚園の敷地内で認可保育所を整備していくことを進めており まして、この4月1日に1か所オープンしましたが、この次にまた1か所オープンしま す。  さらに、東京の認証保育園に似た、補助金を入れておりますけれども、あくまでも認 可外である「横浜保育室」というのがございまして、これを幼稚園が経営しているもの がございます。ですから幼稚園に保育園機能を持たすという意味で、今の実情を言え ば、わざわざ新しい総合施設をつくらなくても、今の段階でもできることは、一応やっ ております。ですから幼稚園の預かり保育、フルタイムの人も預けられる預かり保育、 それから、敷地内での認可保育所整備、認可外保育園というようなことをやっておりま す。  3人の先生方から、総合施設の今の現状についてなど、いろいろな御説明がありまし たけれども、もし、横浜で待機児解消をしなければならないとすれば、総合施設をつく らずに保育園をつくるのが一番簡単で効果的でございまして、ですからわざわざといい ますか、横浜で「浜っ子幼保園」をつくるという構想も立ち上がっているのですけれど も、つくるとしたら、横浜で押さえたいと思っていますのは、まず第1番には子育て支 援機能は欠かせないということで、何回も繰り返しになりますが、3歳未満児の親子を ターゲットとした施設が必要であろうということがございます。  それから、2番目はやはり待機児対策が必要でございまして、横浜は圧倒的に保育所 が不足しておりまして、実はことし43か所つくるのですけれども、それでも足りない状 況でございますので、もし保育に欠けるという要件を残して総合施設をつくって入所者 を全部決めてしまうと、現状と同じく保育園に来る子たちが入ってしまうということ で、児童の構成をどう決めるかということも考えていかなければならないと思います。  それから、待機児童解消で、横浜は働く人が今急激に増えておりますので、保育園が 足りないわけで、北條先生には、保育園が足りないからだめだと、自治体の責務がなっ てないとお叱りを受けたわけなんですが、増えていても、女性の就労状況があまりによ くないということと、フルタイムの働き方は非常にきついので、パートのお母さんが増 えております。しかし、フルタイムでの待機もいる状況で、パートの特例保育の方を認 可で今受け入れられる状況ではございませんので、恥ずかしながら横浜では、本来緊急 でやるべきだった一時保育が週に2日、3日のパートの勤務の方の受け入れになってお りまして、本来、機能を果たすべき緊急的な一時保育、親の事故とか病気だとか、冠婚 葬祭とか、そういう一時保育の受入先は全くございません。今の認可保育園の枠組み で、そういう緊急的な一時保育まで対応するのは非常に難しいので、この総合施設がそ ういう機能を持つかどうかは別としても、今の認可で全部フォローしていくのは難しい と思っております。  4番目は、増田先生からも、効果として挙がっていたと思うんですけれども、また北 條先生も、専業主婦のお母さんは、育児に対する公費負担の享受が少ないので損だと思 っているということがございましたけれども、地域が親の就労状況によって分断されて いるという状況は非常によくないと思います。世代でも、今、地域は非常に利害対立が あって、地区センターの子育て支援のときに、赤ちゃん連れのお母さんたちが行くと、 高齢者の人から、ベビーカーをとめるなと怒られるとか、世代間対立も地域では非常に 厳しいですし、こういう総合施設が子どもを通じた地域社会とコミュニティの再生とい いますか、子どもたちをいろんな立場の親が支えていく場にしてもらう。また、さらに いろんな世代の人が加われる場としていけば、総合施設として横浜では意味があるので はないかと思いますが、制度的にどうするかと、お金もどうするかという問題がござい ますので、いろいろ考えている最中でございます。  以上です。ありがとうございました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ちょっと時間もありますので、ただいまの前田委員の御説 明につきまして、何か御質問ございましたら、遠藤委員、どうぞ。 ○遠藤委員  私も前田先生のおっしゃられた内容で、子育て支援の対応で、親子をターゲットにし ていくというのは、横浜市だけでなくて、それは地方であっても非常に重要な課題であ ると思うのですね。今まで幼稚園や保育園の中で、子育て支援をしていますというふう におっしゃられるところはたくさんございますけれども、実質的に中身を見たときに、 ある時間、時間的な園庭の開放であるとか、相談のある方には相談に乗るけれども、本 務はやはり子どもの保育であって、そこに常時通ってきている子どもたちがやはり一番 大事であって、週1回とか園庭を開放している日に来るお母さんたちは、相談には乗る けれども、さほど継続的なかかわりを持ててないというのが実態ではないかと思ってお ります。  そういう意味で親子も見るというのは、いわゆる子どもだけの専門家では到底足りな いだろうというふうに思います。先ほど0歳児から2歳児の中で、現在では保健所の関 与も大きい。横浜市であれば、保健所等がかなり機能していらっしゃる検診活動を通し ながら、そこに来ているお母さんたち、あるいはお父さんたちに子育てグループ等をつ くらないかといったサポートをしながらやっているのが現実です。なかなかその辺はシ ステマチックに動いてなくて、何となく力のあるうちはできるけれども、いつの間にか 解消していくというふうな実態のではないかと思います。総合施設というのはもう少し その部分をきちんとバックアップしていくというところに意義があり、そして、そのこ とが世代間の、いずれは親になり、祖母、祖父になっていくというようなところで、地 域づくりというところでは、行政がかなりかまないと難しいと思います。発見、予防な どあと、虐待等のケースの連携等のことも考えますと、行政の関与もないと難しいかと 考えます。  先ほどベネッセコーポレーションさんのお話にもございましたけれども、少し性質が 違うような感じも受けたりしておりますが、いかがなものでしょうか。 ○前田委員  深刻な子育ての問題を持つお子さんたちが増えていますので、児童相談所の職員とか 保健所の職員が、問題事例にかかわりますので、その前にちょっとケアすれば、健全な 楽しい育児ができるお母さんたちのフォローまで手が回らないのが実情で、輻輳的な子 育て支援の仕組みをつくらなくてはいけないと思っています。総合施設は、先生がおっ しゃるとおり、制度的に目に見える問題がない親子を本当に子育てが楽しいという状況 を維持してもらうための仕組みが必要だと思っております。 ○岩男部会長  それでは、既に総合施設の議論に入っておりますけれども、ここからは資料7とし て、総合施設に係る主な検討事項(案)という事務局が用意されたものが出されており ますので、この中の総論としての1、総合施設の機能・サービス、2の利用、3の総合 施設の施設・人員・運営の基準、この3ぐらいまでを中心に、本日は議論していきたい と考えております。前回、本日とお三方ずつ6名の方からヒアリングをいたしましたけ れども、そのヒアリングの内容等を踏まえて議論を進められればと思っております。ど なたでも御自由に、小笠原委員どうぞ。 ○小笠原委員  私は保育現場を与かる者といたしまして、先ほど3人の先生からの御意見を承ってお りまして、北條先生は幼稚園という立場でありながら、昭和37年には年末保育をお始め になったり、父親参加を求められたり、親子登園をされたりということで、どちらかと いうと保育事業に近い形の御苦労されてこられたことは、私どもも大変共感する部分が 多うございます。  このお話と、増田先生のお話もありましたが、私どもが抱えている共通な課題という のは、先ほど来、出ておりますように、親の問題と子の問題で、親と子とセットで考え るということは、私どもは保育事業の立場としても大変共感するものでございます。  子育てに悩みがあって、虐待に近いお母さんが当方の保育園の「一時保育」でお預け になることもあります。当方での一時保育利用は、延べにいたしまして年間2,000 人ぐ らいお見えになるのですが、そのうちにわずか15人ぐらいしか、正式に入所の役所の方 に申込みをいたしません。  入園を希望するというケースはほとんどございません。それは定員がいっぱいだから だということではなくて、ちゃんとした使い分けをされているお母さんたちが大変多う ございます。  その中でほとんどのお母さんたちは、私たちの職員の専門的なアドバイスでうんぬん というよりも、子どもさんをお預けになって、自分の子どもの日々の成長でありますと か、言葉が出たとか、誰々ちゃんと友達になったという姿を見たり、保育士の報告の一 言で親は勇気づけられて変わってくるわけです。  こういう制度で、今「一時保育」や「特例保育」、あるいは「子育てサークル」など の子育て支援事業の中で子育て支援の促進を図っていただいておりますことは大変意義 が深いし、喜ばしいことだと思っています。このような事業は当然、主に就労をしてい る保護者を対象にした枠の中では収めきれず、不特定の保護者を対象にした子育て需要 という中で膨らんできたのです。  国のエンゼルプランが出たときから、全国的に保育園の需要が非常に高まってきたと いう背景があると思われます。  私どもが子育て支援といいましても、「一時保育事業」は、俗称で「親育て対策」と 陰の言葉で言っているぐらいでございまして、それぐらい「一時保育事業」は、親御さ んが元気が出るというか、すごい力があります。  0歳児保育にいたしましても、以前にも申し上げましたが、厚生労働省からのデータ の中に、父親の帰宅が遅いというのがありました。私は都市部ではございませんが、想 像はつきます。「公園デビュー」でありますとか、高層住宅の中で、お母さんとたった 2人の人関係の中で父親の帰りをただひたすら夜遅くまで待つ、ということはアブノー マルではないかと前から感じております。子どもは子どもの世界を好み、お母さんたち にしても息抜きがほしいと思います。0歳児の子どもさんでも、6か月過ぎますと、同 じような年齢の赤ちゃんを見て、喜々として笑顔も出ますし、喜びの声も出るぐらいで ございます。  生後一年までは親がみるべきだとか、親がだめになるであるとか、行政にとって負担 になるからという、狭い考え方でなくて、こういう実態が実際あるわけでございますの で、育児には多様な保育の選択ができる土壌が大事ではないかと思います。  ここの資料7にありますように、次代を担う子どもの育ちを支える一貫した次世代育 成というものは、まさに総合施設としての機能を確固たるものとして、ここに位置づけ ないと、何のための総合施設かということになってくるかと思います。  総合施設としての旗印といたしましては、表の一番最後にありますように、子どもの 育ちをどうするかという問題を基本としなければならないと存じます。最終的にはそこ をピタッと押さえなければならないと思いますが…。  先に申しましたように、私たちは保育事業の中で「一時保育事業」を行っております が、一方では「一時保育」等が負担になっているという施設もございます。本来の保育 事業に合わせて「一時保育」や「特例保育」までやらなければいけないのかという声も あります。 総合施設がすべての子どもさんを対象にして、子どもの育ちを保障すると いう機能と役割をしっかりと持つということをぜひお願いを申し上げたいと思います。 これは待機児童解消策にもつながって当然だと思うわけです。  利用にあたっては、公費投入ということもございますが、基本的には、働くお母さん たちだけではなくて、先ほど副市長がおっしゃいましたように、いろんなお母さんたち の利用やいろんな家庭のお子さんを見るということになれば、「直接利用申込制度」に していただきたいと思います。「一時保育」でありますとか、「子育てサークル」のよ うに保護者自身が申込みをしていくという形をとっていく方が、利用はよりスムーズに なると思います。  以上でございます。 ○岩男部会長  ただいま何点か大事な点を御指摘があったと思うんですけれども、これまでもたびた び子育て支援サービスを併設するというか、必ず総合施設には入れるという御意見がヒ アリングでお招きした先生方からも出ておりましたけれども、そのウエイトをかなり大 きなウエイトにするという、そういうふうに理解をすればよろしゅうございますね。 ○小笠原委員  はい。 ○岩男部会長  順に、山縣委員、無藤委員、お願いします。 ○山縣委員  1番の総合施設の機能、サービスについてのみ意見を言わせていただきたいんです、 とりあえず。今の小笠原委員の意見、部会長のまとめと一緒で、今、資料8、資料7の 1に書いてあるような部分の(2)の部分をもう少し強調した方がいいのではないかとい うのが私の意見でして、加えて、前田委員もおっしゃったように、(3)の待機児童の解 消をここまでの位置に持ってくるような施設なのかどうかというのは、私は少し疑問を 感じています。待機児童の解消は、本来、保育制度でいくのが筋ではないか。大量な待 機児童がなければ、これは間接的に資するというのは当然だと思うのですけれども、そ れが本来の機能であって、重要な三本柱の機能であると考えるのは、待機児童がいる地 域は、地域的には限られていますので、これからの少子化が進むと待機児は減っていく わけですから、むしろ2番目の機能を強化することによって、「保育に欠ける」、今の 保育所制度が持っている就労等をイメージしたような「保育に欠ける」、親の側の都合 による「保育に欠ける」ではなくて、親が十分に子育てができないという意味で「保育 に欠ける」といいますか、十分な育ちが保障できていない、そういうところを強調した ようなものがより必要なもの、長期的にはここに求められてくるのではないだろうかと 考えます。短期的には、待機児童の解消は一定の意味があるけれども、この(3)をイメ ージしてやられる地域は都市部のごく一部に限られていくのではないか。  以上です。 ○岩男部会長  今の点、御質問というか、コメントなのですけも、(3)の待機児童の点についてなん ですが、少子化が進むと待機児童が減ってくるという、そういう見方も1つだと思いま すけれども、現在家庭にいるお母さんたちで、就労意欲の調査をすると非常に意欲が高 いわけですね。ですから待機児童を受け入れてくださるところが増えていくと、益々潜 在需要を掘り起こすようなことになって、待機児童は一時的なものかもしれませんけれ ども、増えていくという、そういう予測も私は成り立つのではないかと考えます。  失礼しました。それでは、どうぞ、無藤委員。 ○無藤委員  総合施設の機能・サービス、3つマルがあるわけですけれども、私はそれぞれ必要だ と思うのですが、特に申し上げたいのは、1つは乳幼児の保育・教育で、きょうの3人 のヒアリングの先生方おっしゃっていたように、幼稚園・保育園のそれぞれの特徴とよ さがあると思うんですね。それを考えてみると、むしろ保育園・幼稚園とそこで分断し ている方が不思議なわけで、両方とも必要なことだと思うのですね。そういう意味で は、総合施設に全部切り換える必要はないと思いますが、総合施設で両方のよさを本当 に総合できるような保育形態をつくっていくべきだというのは1つ思います。その意味 では、全体が100 としたときに、子育て支援と、それが50、50だとか、そういう言い方 をすればそうかもしれませんが、それぞれをしっかりよくしていくべきだというふうに 思うわけです。  2番目に、子育て支援については、既に何人もおっしゃっているように、特に親子を 含めた低年齢児の支援はかなり必要だろうというふうに思います。  3番目の待機児童ですけれども、典型的に保育に欠ける家庭の場合には保育園という のが本来だと思うんですが、実際にはかなりニーズが多様化しているので、待機児童に カウントされているかどうか微妙なケースは非常に増えていると思うんですね。具体的 に申し上げれば、私はいくつかの幼稚園の運営にもかかわっておりますが、そこの預か り保育を見ていると、完全にフルタイム共働きの方もいるし、パートだったり、勉強み たいな形だったり、週に3日働いているとか、極めてそういう多様性が毎年増えてきて いるように思います。それが待機児童に入っている場合もあるし、入ってない場合もあ るわけですけれども、それに応えるということを考えてみると、現在の幼稚園の預かり 保育というのはいろいろな意味で半端といえば半端な制度ですね。それは人員的にも制 度的にもそういうところがあって、それをしっかりやりたいともし考えるなら、そこで やはり総合施設への期待というのは非常に大きくなるのではないかということを思いま す。  それと同じようなことは、幼稚園で2歳児保育の試みもやっておりますけれども、そ こで試行的に親子登園をしたり、週に1日のところを、例えば週に3回にするとか、1 回を何時間、いろんな今試行をやっておりますけれども、やっぱりやってみると、1歳 から来ていいのかとか、そういう電話がよく来るわけですね。そういうのを何と呼ぶか わかりませんけれども、広げていくべきだなというふうに思います。  それから、3番目は、これも幼稚園の日々非常に困っているのが、いろいろな障害を 持ったお子さんへの対応です。私のかかわっている幼稚園では、本当に入園時期しょっ ちゅう障害のあるお子さんをお持ちの親御さんから、入れたいという希望が来るわけで すけれども、こちらとしても対応の限度があって、例えば1クラスに1人程度でないと なかなか人員配置できないとかいろんな事情があります。これも自治体によって随分体 制違うようですけれども、なかなか十分な体制がとれないので、1人大人別につけると いう贅沢な体制がなかなか組めません。きょうも、例えば自分のお金で保育者雇うから どうかという申出がありましたけれども、それもしかし幼稚園としてやっていいことで ない気もするので、ですから親御さんたちは困っているわけですね。その辺で保育園が かなりある意味で進んでいる部分がありますが、幼稚園を希望される方も多いので、そ ういうことも総合施設へのきっと期待ではないかと思います。 ○岩男部会長  松原委員、どうぞ。 ○松原委員  私も1のところにかかわって少し発言をしたいんです。皆さんがおっしゃることと重 なる部分があるのですが、総合施設の場合にメインのターゲットに親子というのを置く べきだと思います。ただ、これ子育て支援というふうに、0、1、2と限定して構想す るのではなくて、場合によって未就学年齢、つまり3、4、5まで含めて親子で利用で きるという、そういう形で考えるべきだと思っていますし、それから、それだけではな くて、もちろん日中子どもを親子離れて預かる機能というのが必要で、よく親たちに聞 くと、見ず知らずの先生のところへ行って一時保育というのは、親としても不安だとい うふうによく聞きます。したがって、親子で来ている方たちと、例えばある種の総合的 な保育をするところは分断されていっても、これはしようがないので、必要に応じて、 例えばこの期間は、親子別で過ごしたいというときには、そちらの機能の部分を利用で きる縦割り的なものが総合施設に入ってしまうのではなくて、選択が効くような形で柔 軟性を持つ必要があると思いますし、そういう中で、親と子が離れる場合の中での保育 ないしはそういう短時間での保育あるいは教育的なもの、それも様々なメニューという ものが準備をされている。そちらを利用されている方も、きょうは実は親子で過ごした いということであれば、親子で過ごしていってもいいと。  これは現実に、その部屋をどういうふうに一緒にするかとか、そういう問題はちょっ と置きまして、機能ということですから、そういう形で、まさに総合的な機能を、親と 子どもが総合的に使えるような、そういうような施設機能を構想するべきではないかと 考えています。 ○網野委員  私もまず総合施設の機能サービスということで最初申し上げたいと思うんですが、基 本的には保育園か幼稚園かとかという意味から出発した総合化ということよりも、本当 に包括した保育、乳幼児期の子どもにとって保育が必要である。この保育が必要である というのは教育も含まれますが、そのような視点で本来的に1の(1)の(1)の部分を本 格的に、かなり重要な目標とした役割ということで位置づけることは、これまでの議論 やヒアリングの結果からも、私はとても大切なことだと思います。したがって、「保育 に欠ける」という要件を超えたあり方、役割ということをこの中で重視していく部分が 出てくるのかと思います。  そこで2番目の利用という点で考えますと、0歳から就学前までのすべての子育て家 庭を視野に置くと、これを前提とした方がよろしいのではないかと思います。例えばヒ アリングの先ほどのお話の中でも少しありましたが、いわゆる集団保育が適当か、適当 でないか、可能か、可能でないかということよりも、教育そのものも全部含めて、先ほ どお話にもありましたような、ほかの子どもにとっても、0歳からの子どもに触れる、 それから、0歳、1歳、2歳の子どもも3歳以上の子どもと触れる、これ自体が家庭教 育とか社会教育で見られる環境としての非常に重要な部分であると思いますし、さらに は、そういう年齢ごとの交流の中で何も大人が教育をするという部分でない、そこを専 門職者がどういうふうに教育的に導くかという部分、これがかえっていい意味で浮き彫 りになってくると思います。  そういう意味では、私は幼保一元とかという場合に関しては、前にも申し上げました ように、3歳以上ということでの重要な視点が大事かと思いますが、まさにここで言 う、総合施設という点からいえば、保育も教育も一体となった0歳からの子育て・子育 ちをしっかりと見据えるということが大事かと思います。  そうしますと、実際には入所の仕組みは、直接契約的な要素が基本にあるでしょう し、まして随時、臨時的な利用ということ、特に子育て支援という部分で広げますと、 いわゆる包括的な意味で直接契約という部分がいろいろ出てくるかと思います。  3番目の人員とか運営の面で見ていきますと、私は今の日本で急速に何か新しい形の 専門性をここでつくり上げるというのはかなり難しい、もっともっと年月が必要かと思 いますので、いろいろ御意見にもありましたようなお互いの専門性のよさ、メリットを 活かす活用の仕方ということで、従来の専門職の相互の協力・連携ということが基本に なると思いますが、その場合に、やはり従来教育ではほとんどその部分が見られなかっ た部分、あるいは保育でも本当に近年重要視されてくるようになった、いわゆる保育ソ ーシャルワークの部分、これは専門職と必置として保育士で適応するか、あるいはむし ろそういう子育て支援とかコーディネーター、ハシリティーターになり得る、そういう 職種を位置づけて、この総合施設の中でしっかり定めていくということがよいのではな いかと思います。  さらに、ここで3番目の最後に書いてあります保育・教育内容及び運営の基準で言い ますと、私は保育所保育指針というのは、やはり最低基準というよりも、ガイドライン の性格があると思います。どちらかというと、保育に欠ける子どものためというより も、むしろ私は保護者の皆さんまで読んでもらいたいぐらいの非常に深い、ウェルディ ングのためのとてもよいガイドラインだと思います。  そういう視点から言いますと、教育ももちろん含めた保育指針を総合施設としてどう いうふうに進めるか。また、独自のものをあれを基盤にしてつくり上げるかという課題 はあるかと思いますが、保育所保育指針、0歳から就学前までの保育指針に書かれてい ることをまずちょっと前提に、あるいは基盤にして、本格的にそれをどう運用するかと いうことが課題であるかなと思います。 ○岩男部会長  ちょっとよろしいですか。今の網野委員のお話を伺いながら思ったのですけど、私か 間違っていれば、事務局の方で訂正をしていただきたいと思うのですが、保育所・幼稚 園それぞれのもちろんいいところを取り込むというのはどんどん積極的に取り込むとよ ろしいと思うんですね、総合施設に。ただ、総合施設という新しいものをつくる一方、 引き続き、保育所・幼稚園は残っていくわけですから、その場合にあまりこれまでの経 験や何かにとらわれるというよりも、今本当に必要なものは何なのだろうという視点 で、新しいこれまでにないようないいものをつくるという、そういうことを考えた方が いいのではないかと思うんですね。  それから、同時に、これから社会がどういうふうに変わっていくかをふまえておく。 例えば、女性たちの就労状況を見ても、非正規の雇用者が急速に増えているわけです ね。ですから、そういう人たちにもちゃんと対応できるような世の中の動きも視野に入 れながら計画する。せっかく新しいものをつくるのですからという、思いが私にはある のですが。 ○網野委員  もし、今の点が、保育・教育内容及び運営ということで申し上げていまして、保育所 保育指針は保育所のためということでというよりも、私はあの内容は、非常に子育て・ 子育ちに重要なものを相当含んでいると思います。ですから、それを運用するというの ではなくて、それを基盤として総合施設としてどういうふうに考えたらいいか。もちろ ん、ですから幼稚園教育要領もこの中には含まれているわけですが、そういう趣旨で申 し上げました。 ○岩男部会長  結局同じことなのだと思うんですね。いいものはどんどん活かしていきましょうとい うか、既にあるものでという、そういうつもりで申し上げた。それに新しいものを自由 に少し組み込みながらという、そんな思いでございますけれども。  失礼しました。柏女委員、どうぞ。 ○柏女委員  今まで出ていた御意見に基本的に反対するものではないのですけれども、この総合施 設の性格というものが、今の岩男部会長の御発言にも関連するのですが、どのようなイ メージなのか、恐らく皆様方の中でお一人お一人違っているのではないかなというふう に思うんです。例えば幼稚園と保育所はそのままで、今、第三の施設というふうに部会 長おっしゃいましたが、そうしますと、恐らく幼稚園や保育所の数ほどこの総合施設と いうきは設置できないだろうと。せいぜいいって各市町村に1か所だろうと。横浜のよ うな大きいところは別ですけれども、学区に1か所とかですね。  そうしますと、いわば総合調整のような機能を果たしていくのだろうと。そして、 0、1、2の在宅で子育てをしている方々のための新しいサービスが、例えば広場事業 のようなものが、コンビニの数ほど用意されていかなければいけない。それは総合施設 とは別に、今、そういうサービスがないから、それを用意していかなければいけない と。その上に総合施設というのを考えると、こういう考え方でいくのか、あるいは前回 の北海道の元町長さんがおっしゃっていたように、総合施設としてつくるけれども、い ずれは幼稚園も保育所も、総合施設に収れんしていくような制度設計をすべきだという お話をされていたと思うんですが、そういう形でもしいくとするならば、この総合施設 の機能というのはやはり幅広に両方ともが対応できるような、そういう制度設計にして おかなければいけないのではないか。そこがどういうふうになるのだろうかというとこ ろがすごく見えてきにくいなと。  この施設は、児童福祉法にいう、児童福祉施設として規定するのか、学校教育法によ る学校として規定するのか、あるいは総合施設だけれども、幼稚園と名乗ってもいい と。あるいは総合施設だけど、保育園の看板を立ててもいいと、あるいはそれぞれ全く 別の施設にするのか、その辺のところが、これは既存の枠組みから離れてないと言われ ればそのとおりなのですが、そこをうまく整理していかないと、なかなか進んでいかな いような感じがするんです。基本的な持つべき機能とか、その辺は、今網野先生などが おっしゃっていた意見に賛成ですけれども、枠組みを整理した方がいいのかなというこ とを思いました。 ○岩男部会長  何か事務局の方で。 ○唐澤保育課長  すいません、ちょっとお休みしておりました。振られてしまいました。  今の部会長も柏女先生も、ほかの先生方もお話をいただきましたように、総合施設を どういうものとしてイメージをするかというのは微妙に少しずつ違うのだと思うんです ね。ただし、それぞれの皆さんが、子育てに対して目指しているものは私はそんなに変 わらないと思っております。  それでどうするかということは難しいので、今、御議論いただいていますけれども、 私は、何度も申しましたけれども、幼保は一元化をするのでなくて、三元化で始めます と、この総合施設ですね。そして、それぞれの地域事情というのがございますので、そ ういうものにそれぞれの実情に対応したものでやっていかなければいけないだろうと思 っております。  それから、あと1つだけつけ加えますと、さらにその上に、きょうもお話がございま したけれども、社会的なニーズというものは変化をしている。それから家庭の保育ある いは教育力というようなものに変化がある。それを社会的にどこまで公的に受けとめる かということについては大いに御議論がございますけれども、変化をしていることは紛 れもない事実でございますし、人間の行動自体も私はかなり変化しておるのではないか と思いますので、そういうものに対応した、子どもと親のためのよいものをつくりたい という気持ちでございます。あまり御説明になりませんで、申し訳ありません。 ○岩男部会長  猪俣委員、どうぞ。 ○猪俣委員  総合施設の検討は、総合施設固有の建物を建設するというイメージで設計図を描くと いうことなのでしょうか。それより、次世代育成支援策の一環なのですから、21世紀 型子育て支援資源のあり方として、すべての乳幼児、青少年、親までを対象とした、今 後の望ましい支援資源を既存の保育所・幼稚園、他の事業も含めて総体的に討議し、す べての基礎となる設計図を描いてはどうかと思うのですが。  今日、切実に求められているサービスメニュー、支援メニュー、支援資源は、地域に よって個々人によって多様です。多様なサービス、支援策、資源を組み合わせることが 可能な総合施設の概念図とすることはできないでしょうか。  現実には、それらの事業を、企業、NPO、個人も含めて、既存の事業者と共に地域の 実情に合わせて選択的に事業展開できたらと願うのですが。 ○岩男部会長  1のところは建物を建てるということよりも、むしろ先生のおっしゃっている概念図 的な部分だと思うんですね。3のところで、直接的には運営とかかわるようなことをお 話ししようという、こういうことだというふうに理解をしております。  どなたか、柏女委員、どうぞ、それから山崎委員。 ○柏女委員  補足です。もし、この総合施設がちょっと行方がわからなくて、全体的な機能を考え ようということであれば、利用のところですけれども、今の保育所が持っているような サービス利用の応諾義務ですね。正当な理由がない限り、断れないという、いわゆる手 間暇かかる親子が排除されてしまわないような、そういう仕組みはやはり必要なのでは ないかと思います。  それから、もう一つは、基本的な機能の役割の中で、いわゆるソーシャルワーク機能 ですね。要するにそこに連れて来れない、あるいは来ない親たちに対して、いわば夜討 ち朝駆けといいましょうか、お話を聞きながら気持ちを引き出していくような、そうい う機能も必要なのではないか。  もう一つは、幼稚園、私は学校の専門ではないのでわからないのですが、学校の教員 と生徒・児童、幼児さんとの間の特別な関係があるのだろうと思うんですが、保育所長 さんは子どもに対して、親がいるけれども、子どものしつけのために特別な措置をとる 権限が児童福祉法で与えられていますが、それと同じような権限が与えられていない と、先生たちは非常にやりにくくなるのではないかというふうに思いますので、そうい う機能も保育所長には与えていく。観護、教育、懲戒についての必要な措置をとる権限 を与えていくようなことは大事なのではないかと思います。補足です。 ○山崎委員  私は、理念的なところでいろんな先生からおっしゃっていただいたのは非常に納得で きるのですが、実は私は兼業で、大阪市の教育委員会の委員長をいたしておりまして、 政策的な問題、あるいは現実的な問題として、総合施設の基本的な役割・機能のところ で、待機児童解消は欠かせません。私どもの都市では、待機児童というのが政令指定都 市では一番多いんですね。割合から言いますと、そんなに高くはないのですけど、人数 としては多うございます。  ここにあります1、2の問題はやはりきちんと考えていかなければならないと同時 に、3の待機児童をどういう形で解消していくか。これが本当に今一番求められており ます。  幼稚園の場合、空き教室をかなり抱えております。大阪市の場合は、公立幼稚園が政 令指定都市の中で一番数が多うございまして、60園でしょうか、ございますのですが、 これも地域によって差があるのですが、空き教室のあるところがございます。空き教室 のあるところを廃止するか統合するか、話題にのぼっているところに、この総合施設化 の話が出てまいりまして、幼稚園の保育所化というような形で総合施設を考えて、幼稚 園の空き教室のところへ0歳から3歳までの待機児童あるいは地域の子どもたちを受け 入れたらどうか、検討を始めています。施設などの問題になりますと、調理室を設ける か、設けないか、こういう具体的な問題も出てまいりますし、建て替えを必要とするよ うなところはできるだけ総合施設化を図っていこうと、考えています。とりわけ幼稚園 には空き教室の問題がございますので、教育委員会が中心になって一応計画を立て、そ して市長部局の民生課と話を詰めていくということになるでしょう。  それから、幼稚園の先生と保育所の保育士さん、この両者をどういう形で統合して雇 っていくかというような問題も具体的に詰めていこうと、思っております。  最後に、公費負担の問題ですけれども、私どもとしては、人間の一生涯にどういう形 で教育的な費用を投入していくかという観点から考えますと、今日、先ほどからも児童 虐待の問題だとか、あるいは育児不安を抱えている母親の問題だとかいろいろ出ており ましたが、早い段階、つまり就学前の段階にお金をつぎ込むことによりまして、非行少 年の問題、犯罪少年の問題策も解決できる可能性があるわけですので、就学前教育、保 育に多くの公費を投入するというのは、長い将来を見通しますと、非常に有効なことな のではないかと考えております。そういう点で、この総合施設化の問題は、もちろん保 育所・幼稚園も残していきますけれども、1つのモデルケースとして必要なところに何 か所か設けて、そして、それが実効性があるという評価を得ますと広げていったらどう だろうかと、こんなことを今考えている段階でございます。 ○岩男部会長  それでは、恐縮でございますけど、最後に手短に。 ○吉田委員  手短に申し上げます。総合施設のイメージということですが、逆に考えて、今、幼稚 園というのは、これまで3、4、5歳児を中心に入園制限はない、誰でも入れる。しか し保育時間は4時間を標準とすると。そうすると0、1、2歳というのは全く幼稚園か らは該当しない。一方で保育所は、0、1、2、3、4、5歳ですけれども、「保育に 欠ける」という基本要件で、そうでない方は利用できない。そこから結局外れるのは3 歳未満の、「保育に欠けない」、先ほど来、問題になっている子どもたち。それから、 3、4、5歳児であっても、今の状況で専業主婦家庭の子どもが幼稚園が終わって、で は家庭で安心して本当に過ごせる場所があるかというと、これは恐らく今昔と大分状況 が違ってきている。  つまり今までの幼稚園・保育園それぞれが棲み分けを多分していたと思うんです。そ の棲み分けができない状況がかなり広がってきた。それぞれを拡充するだけでは多分追 いつかない。そこで第3の総合施設という話に当然なってくるのだろうと思います。あ るいはライフスタイルも変わりましたし、就労状況も変わった、あるいは離婚やリスト ラということで、幼稚園に行った子どもが保育所に行かなくてはいけなくなる。そうす ると、せっかくそこで育ってきたのが途中から全然違う環境になってしまうとか、かな り状況が変わってきた。そういう中での第3の施設ということで考えるべきだろうし、 これももう一つは、子育て支援という話が大分出ていましたが、やはり次世代育成支援 という流れの中で、本当に総合施設にこういう機能として考えなければいけないものが どれだけあるのか。やはり既存の保育所にその機能をもっと強めた方がいいのか、ある いは先導的にパイロット的に総合施設が先にそこに切り込んでいくような機能を果たし た方がいいのか、その辺、きちんと押さえるというか、整理すべきではないかと思うん ですけれども。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ほかにもいろいろ御意見がございますと思いますけれど も、時間が参りましたので、この続きは、今月のもう一回ございますので、次回の部会 でさせていただきたいと思います。  事務局の方から何か。 ○唐澤保育課長  私の方から2つ申し上げます。きょういろいろな御議論がございましたので、恐らく 先生方の総合的な子育て支援という御議論がかなりございまして、そして、その中に新 しい施設の類型として総合施設、別の議論としてあるのですが、総合と言ってしまうと 全部同じになってしまうものですから、ちょっと私どもの方で、これまで出ました御議 論を整理をさせていただきたいと思います。  それから、もう一つ、非常に時間も限られておりますし、きょうの御議論のお時間も 限られておりましたし、次回もまた2時間ということでなかなか新種のものなので、し ゃべり足りないという先生方がいらっしゃると思いますので、私どもの方にFAXなり でお送りをしていただければと思います。この点についてはこういうことだと。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、本日はこれで閉会にしたいと思います。 ○唐澤保育課長  1つだけ、資料の方を御説明させていただきます。申し訳ありません。 ○事務局  すいません、資料6、1点だけ御報告をさせていただきます。  保育士資格、幼稚園教諭免許の相互取得・併有化の促進についてでございますけれど も、現在、新規で卒業される方の中には、保育士と幼稚園の教諭を併せてカリキュラム 取って、両方お持ちで卒業される方もございますが、中には一方だけ免許を取って、あ るいは保育士資格を取ってご卒業される方がおられます。そういう方たちのために併有 化を促進するために、下に「措置状況」とございますが、保育士試験における科目免 除、まず、これから御説明させていただきます。  幼稚園教諭免許を持っておられない場合に、保育士の方は保育士試験という制度で保 育士資格が取れます。その保育士試験の科目のうちに、幼稚園教諭を免許を取るときに 必須科目として履修している科目については免除しようという趣旨でございます。筆記 の試験、そこに(1)から(8)書いてございます。この筆記の試験というのは2日間ござい ます。それから実技試験、(9)の保育実習実技というのが1日ございますが、この科目 のうち、(3)のうち発達心理学力、(7)のうちの教育原理、そして(9)の実技試験科目は 保育実習実技、この3つを免除科目とさせていただきたいということでございます。  実際の試験は、年に一度行われておりまして、16年度も8月に行われますので、この 16年の8月の保育試験から、幼稚園教諭免許をお持ちの方については、この免除科目が 申請により適用されるということです。  それから、併せまして、幼稚園の方ですけれども、保育士資格をお持ちの方が幼稚園 免許を取る場合、これは今、幼稚園の方には試験の制度がございませんけれども、これ は文科省の方でございますが、幼稚園の教員資格認定試験というのを新たに創設をする ということを聞いております。実施の年度、これは平成17年度からということで、授与 される免許は幼稚園教諭の二種免許状ということでございまして、これは現在これの計 画の内容を文部科学省の方で詰めているということを聞いております。  以上、報告までです。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、これで閉会にいたします。どうもありがとうございました。 ○中村総務課長  次回の日程をちょっとお話しさせていただきます。次回は4月23日(金曜日)10時か ら12時まで、議題は本日に引き続きまして、「総合施設」の検討ということで、場所に つきましては、この場所で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  どうもありがとうございました。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局総務課 (担当)水口 03−5253−1111(内線7823)