戻る

労働災害防止計画(抜粋)

1.計画のねらい
(1) 基本的考え方
 労働者の安全と健康の確保
 労働者の安全と健康を確保することは、最も重要な国民的課題の一つである。
 事業者は、労働者の安全と健康を確保する本来的な責務を有しており、この観点から、労働安全衛生関係法令に規定された最低基準としての労働災害防止措置を履行するだけではなく、自主的な安全衛生活動を体系的かつ積極的に展開し、職場内のリスクの確実な低減に取り組む必要がある。また、労働者も業務に関する知識等の維持、向上を図ることにより職場における安全と健康の確保を自らの問題として捉え、事業者の行う安全衛生活動に主体的に参画していくことが求められる。
 新たな対応
 労働災害は長期的には減少傾向にあるが、今なお年間約55万人もの労働者が被災し、死亡災害は2,000人を下回るようになったものの、千人台の後半で推移しており、労働災害防止に向けて一層の努力を傾注しなければならない。
 さらに、これまでの経済発展を支え、それとともに成熟してきた我が国の社会経済システムは、内外の激しい変化の中で、将来に向けて大きな変革を求められている。企業においては、新しい経済環境に対処するため、事業分野、経営形態、人事労務管理等あらゆる面で事業活動が見直されている。労働市場においても、派遣労働、パートタイム労働等が増加する等、就業形態の多様化、雇用の流動化が進んでいる。このような変化により、労働安全衛生分野において新たな事象が発生する可能性もあることから、この変化が安全衛生分野においてどのような影響を及ぼすかを注意深く見極めていく必要があり、こうしたことを踏まえ、今後の安全衛生対策の在り方を検討し、効果的な安全衛生対策の推進を図る必要がある。
 本計画は、このような状況を踏まえ、我が国における労働災害防止の主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を示すものである。
(2) これまでの取組
(3) 本計画の基本方針
 本計画は、以上の基本的考え方に基づき、社会経済情勢等の変化を踏まえ、すべての働く人々の安全と健康の確保の実現を目指して、次に示す基本方針に立って策定したものである。
 死亡災害の撲滅
 中小企業における安全衛生の確保
 業務上の心身の負担の増大等に対応した労働衛生対策の推進
 近年、一般定期健康診断における有所見率や職場生活等において強い不安、ストレス等を感じる労働者の割合も増加し続けており、これらを背景として、過重労働により誘発される脳血管疾患及び虚血性心疾患、業務による心理的負荷により誘発される精神障害等の労災の申請、認定件数も増加傾向にある。
 経営環境の厳しさが増す中、企業における組織の見直し等が進行し、業務の質的、量的変化等による心身の負担の一層の増加が懸念されており、我が国の社会の健全な発展という観点からも、職業性疾病予防はもとより、職場においてより積極的に労働者の健康の確保を図る。
 リスクを低減させる安全衛生管理手法の展開等
 就業形態の多様化、雇用の流動化等への対応

2.計画の期間
 本計画は、平成15年度を初年度とし、平成19年度を目標年度とする5か年計画とする。
 ただし、この計画期間中に労働災害防止に関し、特別の事情が生じた場合は、必要に応じ計画の見直しを行うものとする。

3.計画の目標
(1) 労働災害による死亡者数の減少傾向を堅持するとともに、年間1,500人を大きく下回ることを目指し、一層の減少を図ること
(2) 計画期間中における労働災害総件数を20%以上減少させること
(3) じん肺、職業がん等の重篤な職業性疾病の減少、死亡災害に直結しやすい酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等の撲滅を図ること
(4) 過重労働による健康障害、職場のストレスによる健康障害等の作業関連疾患の着実な減少を図ること
を目標とする。

4.労働災害防止を推進する上での課題
 労働災害防止を推進する上での主要な課題は、次のとおりである。
(1) 労働災害の動向等からみた課題
(2) 労働者の健康確保をめぐる課題
 職業性疾病の発生状況等
 化学物質による健康障害の発生状況等
 過重労働による健康障害、職場のストレスによる健康障害等の作業関連疾患の発生状況等
 一般健康診断結果によれば、有所見率は年々増加し、平成13年では約46%にも達しており、その中で脳血管疾患や虚血性心疾患等につながる高脂血症、高血圧症等に関連する所見を有する者が大きな割合を占めている。
 高脂血症、高血圧症等の基礎疾患を有した労働者に業務による明らかな過重負荷が加わることによって、脳血管疾患や虚血性心疾患等の疾病が誘発されることがあり、平成13年度の労災認定件数は140件を超えている。
 また、職場生活等において強い不安、ストレス等を感じる労働者の割合が増加し続け、63%にも上っており、さらに、業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症し、あるいは自殺に至る事案が近年急増する傾向にあり、平成13年度の労災認定件数は70件に上っている。
 快適な職場環境を推進する必要性
(3) 転換期の産業社会における安全衛生面の課題
(4) 安全衛生管理をめぐる課題

5.重点対象分野における労働災害防止対策

6.労働者の健康確保対策
 労働者の健康確保対策については、特に、産業保健関連機関の連携を強化しつつ、次のような対策を推進する。
(1) 職業性疾病予防対策
(2) 化学物質による健康障害の予防対策
(3) メンタルヘルス対策
 労働者の心の健康確保については、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に基づき、事業者が事業場の状況を踏まえた適切な「心の健康づくり計画」を作成し、その計画に沿ったセルフケア、ラインによるケア等を内容とするメンタルヘルスケアの積極的な推進を図る。また、職場においてうつ病等への偏見をなくし、うつ病等の予防、早期把握とそれに続く適切な治療、職場復帰に結びつけられる職場体制の整備を図るとともに、事業場外資源との効果的な連携を推進する。さらに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対応方策についても検討する。なお、メンタルヘルス対策の推進に当たっては、プライバシーの保護について特に配慮する。
 自殺予防については、「職場の自殺予防マニュアル」の周知を図るとともに、相談体制の確保、産業保健と地域保健の関係機関が連携した自殺防止対策を推進する。また、有効な対策の策定に資するため、引き続き労働者の自殺に関する調査研究を行う。
(4) 過重労働による健康障害の防止対策
 過重労働による健康障害の予防を的確に進めるため、過重労働となるような長時間の時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進などにより長時間労働を排除するとともに、長時間労働が発生し、疲労が蓄積するおそれがある場合には、産業医や地域産業保健センターの登録医の活用等により、その助言指導に基づく改善や、労働者への面接による保健指導等の健康管理対策の徹底を図る。さらに、過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止措置の徹底を図る。
(5) 職場における着実な健康確保対策
 労働者の心身の健康を確保し、職業性疾病や作業関連疾患を予防するため、産業医、衛生管理者等産業保健スタッフの選任の徹底と専門性の向上を図るとともに、健康診断の実施とその結果に基づく事後措置、職場巡視の実施とその結果に基づく改善措置等の作業関連疾患等の防止対策の一層の推進を図る。
 また、産業医その他の産業保健関係者を支援する産業保健推進センター、小規模事業場に対して産業保健サービスを提供する地域産業保健センター等の連携を強化する。
 なお、労働者の健康確保対策を効果的に推進するためには、労働者との信頼関係の確立が前提にあることから、健康診断結果等の健康情報等についてプライバシー保護の強化を図る。
 以上の内容に加え、次の項目を推進する。
 小規模事業場対策
 健康診断の実施率や受診率が低く労働者の有所見率が高い小規模事業場の健康確保については、地域産業保健センターの活用、小規模事業場産業保健活動支援促進事業(産業医共同選任事業)を推進するとともに、産業保健活動の具体的方法を示し、その活用を図る。
 健康づくり対策
 事業場における健康づくり対策の総合的評価を踏まえ、健康づくり手法の改善を図るとともに、事業場等における健康づくり対策に係る目標の設定と評価の明確化及びその計画的な推進等により健康づくりの普及・定着を図る。特に、中小規模事業場については、健康づくりの取組に立ち後れの傾向が見られることから、その普及・定着を促進する。なお、健康増進法の制定を踏まえ、地域保健との連携の強化等を図り、より実効ある健康づくりを推進する。
(6) 快適職場づくり対策

7.安全衛生管理対策の強化

8.労働災害防止の支援体制の整備


トップへ
戻る