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第13回男女雇用機会均等政策研究会議事要旨


日時 平成16年4月23日(木)14:00〜16:00

場所 専用第16会議室(厚生労働省13階)

出席者 浅倉、阿部、田島、奥山、富田、中窪、山川の各委員

議事1 間接差別について
2 意見交換

議事概要;
 1 間接差別についての論点に沿って議論が行われた。
 2 議論の概要は次のとおり。

 ○ 資料に掲げられている事例・抗弁については、全ての事例に一律に同様の抗弁が成立するのでなく、具体的には事実認定によるもので、個別の事例ごとに考える必要がある。

 ○ 「身長・体重」を要件とするケースはイメージしづらいが、「体力」要件については、身体能力的に一定以上のものが要求される場合もあり、職務関連性があるのであれば合理性が認められる場合が多いのではないか。

 ○ 諸外国と日本とで最も異なるのは、採用の時点で将来の職務内容が特定されていないこと。将来必要になるかもしれないとして体力要件をつけるということに正当性が認められるか、また、体力を要しない仕事への配置という配慮をどこまで求めるのかが問題。配慮しないので間接差別と捉えることもできるかもしれないが、一方でそのようにして採用された人は活用できないとも言える。
 日本の場合は、ジョブの概念が特定されているアメリカと異なり、正当性の事由を少し広く認める可能性があるということか。

 ○ 機械を利用すれば体力要件を必要としない場合もあり得る。ただし、中小企業等で、大変なコストがかかり機械が購入できない場合には体力要件を付してもかなり正当性は認められるのではないか。

 ○ 総合職は、キャリア形成が一般職とはかなり違うので、キャリア形成のための配置転換を行う上で転勤が必要というのはありうる。一方、一般職はキャリアの幅が狭いので、全国転勤をさせる必要はない。従って、全国に支店、支社があり、職務能力の養成に転勤が必要で、ローテーションを行う業務上の必要性があるような会社において、総合職について全国転勤を要件とするのは合理性・正当性が認められるのではないか。ただし、今あるコース別雇用管理制度にはそうでないケースもあろう。

 ○ 「身長・体重」要件は、男女で客観的に統計上有意な差があるので間接差別と言えるであろうが、全国転勤できない者に女性が多いと言うことを間接差別と言うこと自体、ステレオタイプであり、違う論点がある。
 コース別雇用管理は労働者の異質性をコントロールするために、企業が採用できる一つの手段。企業が必要な条件を出して、それに手を挙げる者を採用した方が、情報の非対称性を埋めることになり合理性はある。
 現状では、募集・採用の時点で家庭責任を負っていなくても、将来転勤に応じられるか、と身構えるのは、女性が圧倒的に多く、女性の選択肢を狭めている。入り口でハードルを課すのでなく、現に働きはじめてから、ハードルを課すシステムを作っていくと言うのが間接差別法理の新しさだと思う。
 不必要なバリアの除去は必要である。ただ、「間接差別」は差別であり、違法性の話。ポジティブ・アクションをやって下さいと言うなら良いが、法違反の差別とする以上、それなりの論理が必要。この問題は他と違う要素があある。
 選択できる基準の問題か、選択できない基準の問題か、という違いはある。

 ○ アファーマティブ・アクションも機能としては間接差別と同じで、不合理な障壁のクリア。間接差別という手法をとるか、アファーマティブ・アクションという手法をとるか、という二つの方法がある。

 ○ 「人事ローテーション」については、組織活性化に加えて、「雇用の維持」もあるのではないか。日本のように解雇が制限されている国では、雇用の維持の観点を考えることも重要である。
 組織活性化のみではなく、解雇の問題も含めもっと広い意味での企業の組織運営上の問題ではないか。

 ○ 全国転勤の合意で、人生の若いうちに拘束されることになるのは不合理であるが、それを間接差別とすると複雑になるので、配転の法理で改めて考えるべき。

 ○ 企業の中では、易しい仕事から難しい仕事へと、ある一定の幅の職務や職種の中でキャリア形成をしていく。「仕事の幅」を考えたとき、配転させないと、キャリア形成がうまくいかない。それを縛ってしまうのは果たしてどうか。日本においては雇用は流動化されておらず、社を超えたキャリア形成も難しい。

 ○ 全国転勤のようなものは、通常、職務限定をせずに色々な所で仕事をすることがある程度織り込まれているという日本の長期雇用慣行を前提とした上で、合理性を考えていかなければならない。

 ○ 住民票上の世帯主と、主たる生計維持者、扶養者は違う。住民票上の世帯主は、自分で決められるが、主たる生計維持者は、夫婦で話し合って決めることができず、自分では決められないのでより問題だと思う。
 ただし、日産自動車事件では、逆に主たる生計維持者について合理性ありと判断された。
 「個人の選択」という際に、転勤要件のように仕事上の選択・仕事の一部となる要件と違い、仕事とは関係のない事実である住民票上の世帯主かどうか、などということは、その仕事をするに当たっての選択ではないので、統計的に見て、住民票上の世帯主や、主たる生計維持者となる者の比率が、男女で有意な差があるとすれば、どちらとも間接差別になじむ問題ではないか。

 ○ 昇進にあたって一定の勤続年数を要求するのは、日本の雇用慣行上正当性があって当然と考えられる。ただ、有期労働者やパート労働者として働いていた期間を勤続年数にカウントしない場合などは、間接差別に載ってくる可能性がある。

 ○ 昇進・昇格させるに当たって、いわゆる「最低残留年数」のようなものをどう考えるかという問題があるが、実は、出世する人間かどうかは早いうちにかなり分かってしまうそうである。ただ、目に見えて差をつけてしまうと、企業全体の生産性維持ができないので勤続年数を重視するとのこと。

 ○ 採用の際の全国転勤要件というのは、将来あるかもしれない、という程度のものだが、「昇進に当たって転居を伴う転勤経験を要件とすること」というのは、これは絶対に必要であるということだから、間接差別が疑われるかもしれない。
 全国に必ず専門家を配置しなければならず、かつ、幹部になるような人には、職務上、色々な地域の特色を知った上でトータルな視点で組織を運営していかなくてはならないというような場合もあり、合理性がある場合はある。
 全国に店舗のある流通業の話だが、転勤せずに、1店舗のみにいた支店長と、転勤して2、3カ所回った支店長とでは、実は能力的には同じ。ただ、同じ処遇をすると転勤してきた人が納得せず、組織運営がうまくいかないので処遇に差を設けるとのことだった。そのような場合、転勤手当のような他の方法があるかどうかも問題となる。
 一定の受忍をしたことに対する対価を賃金に含ませ得るかという問題はある。業務上の必要性として、社内の賃金政策の合理性があると言えるか。
 処遇は基本的に一緒にしておいて、手厚い転勤手当を出す、というのはより合理的ではないか。
 結果的にそれによって男女間の賃金格差が生じる場合もあるが良いのであろうか。

 ○ パートタイムとフルタイム、一般職と総合職の処遇の問題については、間接差別の俎上に載る。その際に、実質的に職務の内容が異なったり、人材活用の仕方が異なるというような場合には、合理性が認められる。

 ○ 本来仕事の差に見合った処遇の差というのは比例すべきだが、間接差別では、そこまでは判断せずに、差があることについて正当性があるか否かということまで。その後の同一価値労働同一賃金というのは、間接差別の話ではなくなる。
 パートを選択するかフルタイムを選択するかはまさに仕事そのものに関する選択を本人がしているので、間接差別の俎上に載ってくるかについて留保があるが、もし載ってくるなら、職務の実体は全く同じで、ただ名称だけ違うという場合であれば間接差別と言えるだろう。
 パートについてこういう賃金体系を採用するということが、中立的基準になるので、そういう賃金体系に合理性があるかという観点から間接差別の俎上に載りうるのではないか。「個人の選択」は別の次元の問題としてはある。

 ○ パートタイマーとフルタイマーの処遇の差の抗弁として、「会社との結びつきの差」のようなものも合理性の中に含まれるのか。
 仕事とは、責任や将来性も含めたものなのだから、社員としての位置づけが異なれば、含まれよう。

 ○ 福利厚生については、労務の履行の対価とは少し性質が異なる処遇についての問題と考えるが、同じレベルで議論して良いか。
 職務に差があるという抗弁は成り立たない。むしろ、原資が限られている、という問題なのではないか。
 究極的には、企業にとって大切にしたい労働者かどうかに帰着する。それを考え直したらどうか、とは言えるが、間接差別として違法とまで言えるか、疑問である。

 ○ 例えば、特定の学部の出身を要件とする場合も、間接差別の議論の俎上に載りうるのでははいか。職務関連上、仕事で必要ということになれば合理性はある。


照会先:
  雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 牧野内(内線7832)


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