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社会保障審議会−福祉部会
第9回(H16.4.20) 資料3

第8回福祉部会議事録


1 日時: 平成16年2月17日(火)14:00〜15:56
2 場所: 中央合同庁舎第5号館共用第7会議室
 出席委員: 岩田部会長、浅野委員、大石委員、小島委員、佐口委員、佐々木委員、高岡委員、高原委員、新津委員、福田委員、松浦委員、松尾委員、村田委員
 欠席委員: 京極委員、中村委員(福間氏代理出席)、堀田委員
4 議事
(1)岩田部会長による開会あいさつ

(2)事務局による出席状況、資料確認

(3)岩田部会長による冒頭発言
(岩田部会長)
 社会福祉事業及び社会福祉法人については、昭和26年から社会福祉事業法において定められ、以来社会福祉事業の実施が図られてきたが、近年介護保険を始め、社会福祉サービスが措置から利用へと変わり、社会福祉基礎構造改革として全般的に広げられた。
 他方、社会全体の中でも規制改革ということで、社会福祉事業及び社会福祉法人を取り巻く環境自体が大きく変化しており、その在り方を根本的に検討する必要が生じている。

(4)事務局による資料の説明

(5)事務局説明に関する質疑応答
(松浦委員)
 資料2ページの「地域社会の一員として自立した日常生活を営むことを支援する事業」の「自立」の定義とその支援との関係はどのように解釈したらよいか。
(総務課長)
 自立とは、個人が基本的に意思決定をして、自分の意思でいろいろなことができるようにすること。例えば、移動が難しければ、誰かがアシストすることによって移動ができる。移動ができれば社会参加という意味では、その方は自立をしていると言える。したがって、その方が本人の意思で社会参加できるようにしていくために社会的に支援していく。例えば聾唖者の方であれば、周りの方々が手話通訳をすることによって、自分の意思でいろいろなことができるということで、自立した生活を営むのだとお考えいただきたい。

(6)高岡委員の資料説明
(高岡委員)
 全国社会福祉施設経営者協議会を代表してお話させていただくが、社会福祉施設経営者協議会は、社会福祉法人の全国組織であるが、小規模な法人から大規模な法人まであるというのが実態。昭和40年代に国が施設整備を積極的に推進するようになる中で、実態としては、社会福祉事業の独占事業体が社会福祉法人だというような状況になっていた。
 一方、社会福祉法人については保護がされる一方で規制も相当に厳しく、利用者よりむしろ行政の側を向いたサービス提供を行っており、資金使途等についても、単年度でお金を使い切るということを指導されてきた。
 その結果、社会福祉法人のサービスは、あまりにも画一的で非効率的だという指摘がされ、基礎構造改革や総合規制改革会議等から市場原理の積極的な導入や効率的な運営についての意見が出され、民間参入に伴うイコールフッティング論により社会福祉法人の在り方そのものが問われるような状況になった。
 社会福祉法人は、今までは措置制度の受け皿として認められてきたが、措置が契約になればその根拠とするところはなくなる。しかし、公の直接のサービスは、民間企業の活用も必要とはいえ、社会福祉法人という公益的な、非営利法人の存在が社会福祉の中には必要であると、全国社会福祉施設経営者協議会としては考えている。
 福祉の問題は、自助や市場原理だけでは解決しない問題が多くあり、何らかのハンディのある人の24時間365日の生活支援をしていく上で、非営利法人としての社会福祉法人の役割は大きい。社会福祉基礎構造改革では、自助を基本にしながら、利用者・国民がサービスを選択して買う仕組みと、地域の相互扶助の中で福祉の問題を解決していく仕組みという、基本的な枠組みがつくられたが、実態としては、地域福祉を推進していくためにはいくつかの課題があるため、非営利法人あるいは公益法人たる社会福祉法人が地域福祉に積極的に貢献していくことが期待される。その中で、昨年法人制度委員会をつくり、新たな役割と社会福祉法人として地域に一法人一貢献事業を積極的にやっていこうと決めた。
 社会福祉法人や施設の数は多数あり、それらが本来の機能あるいは付随的なことで積極的に地域に貢献していけば、大きな役割を果たしていくと思い、時代に合った運営と地域福祉への積極的貢献という2つの柱立てで推進している。
 社会福祉法人の理事会については、供給体多元化の中で競争できる組織体というよりも、施設経営を管理監督するための理事構成であり、学識経験者や地域の代表者を入れるなど細かい指導がある。地域に合ったニーズを主体的に提供していくため、法人の機関である理事会が積極的、主体的に活動できるように理事構成についてはもっと緩和していただきたい。また、理事の定数については、社会福祉法上は3名であるが法人の審査基準では6名とされているため、全国的に見ると6名が実態になっているので、社会福祉法人が公益に資する法人であることを踏まえ、定数は6名を基本とし、規模の小さい法人については別途考えることとしてもいいのではないか。
 評議員会については、理事会で決めたことについて評議員会で同意を得ることとされており、理事会と評議員会が二重議決機関となっているのが実態である。諮問機関という組織の位置付けをより明確にしていただく必要がある。また、評議員会の同意を要する事項については、その基準を明確にする必要がある。
 資金使途の弾力化であるが、措置費については、今、厚労省において見直しに積極的に取り組んでおり、見直しの案をパブリックコメントの形で国民に提示していただいているところである。保育所運営費について、その収支差額を法人の経費や同一法人が経営する保育所運営費への充当を可能とし、その上で同一法人が経営する他の社会福祉事業への充当や、待機児童の解消や老人や障害者のデイサービス事業等への対応に向けた基盤整備への充当を可能にしてほしい。また、社会福祉事業の収支差額については、公益事業に対しては自由に使えるようにしてほしい。
 資金調達の多様化であるが、昨今の厳しい財政事情により従来の補助額を維持することが難しく、また、社会福祉・医療事業団との独立行政法人化により貸付財源に限界が出てくるという状況の中で、今後は市中金融機関等に借り入れるということも考えなければならないので、基本財産については福祉医療機構の担保にはなるけれども、市中金融機関の担保に供する際には所轄庁の承認が得られないような現行の規制の運用もぜひ見直しをお願いしたい。また、今後ホテルコスト等を利用者に負担をさせるということになれば、従来の数倍の額の資金を借り入れなければならなくなる。そうすると、資金の借り入れの際の保証については、今現在は理事長等が個人で保証人となっているが、実際は理事長にも十分な債務担保力があるとは限らないので、債務保証の制度を充実していただきたい。
 指導監査については、従来は措置費の制度の中で、行政が法人に対して処遇費として支出したお金が適切に使われているか、行政が期待するサービスが担保されているかをチェックするものであったが、今はサービスについては情報公開等で、利用者が選択するという仕組みになり、苦情解決制度、あるいは第三者評価機関によるチェックが行われ、利用者の目が行き届くということになるので、行政の指導監査は施設運営上最低守らなければならないところを守れない施設についてペナルティを課すという役割に見直していただきたい。また、第三者機関によるサービス評価が重要な位置付けになっているが、全国的に見た場合、まだまだ評価機関が整備されていないので早急にその整備体制を整えていただきたい。
 「入札」のあり方で、これは以前、彩福祉グループのときに一般競争入札ですべて行うことという規制に変わってしまった。しかし、我々法人側からすれば、補助が出た場合は行政の規制に合うような入札方法を取り入れることはやぶさかではないが、法人自身のお金で修繕しようとしたときには、そのような方法は難しい。
 社会福祉施設職員等退職手当共済制度については、我々働く職員側からすると変わることについては非常に不安で、どのようになるのかまだ見えていない。社会福祉法人としては、複数の施設を経営している中で、いろいろな退職金制度が混在化するのは非常にやりにくい。
 定款の記載については、地域福祉への積極的な貢献を考えたときに、どこまでを定款で明記しなければならないのかという問題がある。先般総務省の行政監察の中で、定款以外の事業をしているとの指摘があったが、もう少し弾力的に考えてもらってもいいのではないか。

(7)中村委員の資料説明
(福間氏)
 全国老人福祉施設協議会としては、社会福祉法人のあり方についても、介護保険制度施行以来議論しているテーマであり、本日、中村委員が出席できないため、代わりに事務局から述べさせていただく。
 全国老人福祉施設協議会の会員の主たる部分は特別養護老人ホームであり、特養とショートとデイという三本柱で事業展開が行われているところがほとんどであり、また、ホームヘルプも恐らく特養の半分近くが既に行っており、民間企業、NPO等々と競合する中で在宅サービスの提供を行っている。
 現在の特養ホームについては、いわゆる全室個室ユニットケアの施設整備が基本になってきており、15年度の実際の補助金ベースで言えば、これまでの特養の場合には、大体法人負担が4割、国・県等の公費補助が大体6割というバランスとなっているが、生活単位型になると、法人負担は約7割、公費補助は3割と逆転し、この7割の中には、ホテルコストという部分がかなり占める。現在の財政情勢から見ると、施設整備費は限りなく小さくなっていくだろうと考えている。
 そうした中では、福祉医療機構からかなりの金額を借り入れるに当たり抵当物件を差し出されなければならないが、理事会で連帯してそれが出せるかというと、やはり理事長・設立者がほとんど抵当を差し出すのが実態。連帯保証人もなかなかなり手がない。
 今の社会福祉法人の中で、理事会と理事長の権限、責任をどのように考えるかというのが大きな問題意識の1つである。先ほどのホテルコストについて言えば、資金を借り入れたら、全室個室のところが100%回転することを1つの経営努力として持たなければいけない。今現在は待機者が多い施設であるため問題意識として薄いが、今後は、理事会、理事長の経営能力が問われていくことになる。
 また、介護保険事業は契約と、負担と給付のバランスの中で行われていく事業であり、契約概念が定着している中で、寄付を前提にした社会福祉法人の仕組みになっていること自体が成立しないのではないかという意見が会員施設から多く出されている。
 在宅では民間企業と競合する状況にあり、また、特区に見られるように、特養の世界にも民間が参入しての経営が始まりつつある中で、社会福祉法人の経営者の意識が全体としては変わっていない状態にある。法人経営の実態として、理事長が経営責任を持たない状態であったり、また運営管理者、責任者は施設長であったりする。こうした実際の施設運営と経営の体制が遊離する状態の中で、理事会や理事長の機能の形骸化も見られており、きちんとした体制をつくるべきである。
 実際の経営の責任については、介護保険の中では、当然事業認可申請の場合に、事故防止、介護過誤等に対する賠償責任、賠償の体制をきちんととっており、通常賠償保険に入ることでカバーしているわけであるが、賠償保険は、あくまでも事業者側がその賠償責任を認めることで支払われるから、経営者は介護過誤等を起こさないという責任を負う。現在、主に事故防止ということでリスクマネジメントと言われているが、リスクを押さえる能力が経営者には問われる。
 労務管理についても従業員のオーバーワークがあり、労働基準監督署からの指導がなされるが、その際に、ある労働監督署では理事長にその指導の通知が来るが、ある基準監督署では施設長に来る。一体管理責任者はどっちなのだろうと非常に悩んでいる。
 介護保険事業の適正化ということがあり、当然不正請求ということはあってはならないが、非常に多くの通知が出される中で、運用上の解釈が違っていたことによって不正とされることもある。経営者がきちんと責任能力を持たないと、非営利・非課税の社会福祉法人の不正と批判されてしまう。
 介護報酬の場合には、常に介護報酬改定の中での収支差額、利益というものについてもきちんと管理をしていかないと、もうけすぎというような批判を受ける。これについても、法人としての社会貢献等に対して適正な利益処分を行うという努力はすべきであると考えている。
 現場からの意見では、多額の借金をし、経営努力をしながら借金を返済する。経営努力の結果として生み出されたものは基本財産という形になってしまうわけだが、そうしたものに対する評価というものがあっていいのではないか。これは、いわゆる出資や持分といった議論と関係するが、社会福祉法人制度の中で、法制度化できるかどうかという問題はあるが、1つの議論としてぜひしていただきたい。
 介護保険事業においては、現在は低所得者対策としての利用者減免の制度があるが、これをむしろ徹底して、社会福祉法人の義務として行うようにすべき。それから介護予防・地域支え合い事業についても、社会福祉を目的とする事業として広く認めて、そうした事業にかかる費用も低所得対策に要した費用と同じような形で認めていくというようなことを進めていくことが社会福祉法人にとって求められるのではないか。

(8)議事概要
(浅野委員)
 自立とは、自分で選んで、結果責任をとることというのが一般常識。そのときに選ぶために情報収集をして決める。決めて出てきた結果については、基本的に文句を言わないというのが自立の概念。
 最終的には事業者のそれぞれの抱える問題も議論すべきだが、まずはサービスの中で利用者が事業者とサービスを選択する上で、制度設計がうまくいっているのかといったところをまず議論してみたいというのが一点。もう一点は、憲法第89条で、ここで議論すべき慈善とか博愛という文言と、社会福祉という領域の定義のところをどう考えていったらいいのかといったところも検討すべき。ここに記載されております情報以上のことが、過去の経緯の中であれば御説明いただきたい。
(松浦委員)
 資料の1ページに「その人らしい安心のある生活が送れるよう自立を支援することにある」と書いてあるが、この「自立を」ということを除いても文章になる。「地域社会の一員として自立した日常生活を営むことを支援する事業」のところも同様。この「自立」という言葉があえて入った意味というのは、何か非常に大きなものがあるのか。
(総務課長)
 「自立」については、社会福祉基礎構造改革により、自分がいろいろなサービスを選択して決めていくというように大きく仕組みが変わっていく中でその意味するところは大きい。介護保険制度、あるいは支援費制度等が導入されて、基本的には本人が相手方と契約をする際には自己決定をしていく。そういう意味で「自立」というのが非常に強調されているということ。したがって、自立を支援するために、情報公開や第三者評価、あるいは成年後見、地域福祉権利擁護事業等、自立を支援する仕組みというものが導入されてきている。
(岩田部会長)
 難しい問題なのは、社会福祉事業あるいは社会福祉という範囲が列挙でしか示せないということ。時代とともに膨らんでいく面もあり、その中身が、自己決定や権利主体に十分なり得ない未成熟な子供から、高齢者までも含んで非常に広い方々へのサービスであり、そのサービスも、最低生活保障というような、契約ではなく国の責務としてある部分と、ライフスタイルや価値観に非常に結びついているような選択の幅がある部分が、施設の中で混在してくる。2種のように、地域型になりますと、それがパーツになってきますので、契約になじむということが出てくるが、施設のような場合、そこが十分まだ分離できておらず、高齢者の施設にしても、措置という形でどうしてもしなければならないような事態が全くないとは言いにくい側面がある。
 今日のテーマで問題になっていることは、一般の方が多く利用するサービスであることと、恐らく非常に強く関係がある。それを社会福祉事業全体の問題として扱うのかどうかによっても「自立」の解釈に幅が出てくると思う。
(福田委員)
 我が国は戦後、民主主義国家として経済的にも豊かになり、一人ひとりがしっかりと自立して、自分の意思で行動するという時代に入ってきた。日本における民主主義がかなり充実をしてきたのだと解釈している。そうした中で、地方分権を実現するためのキーワードとして自己責任・自己決定と言われているが、この自己責任・自己決定とは、実は地方自治体にのみ求められているのではなく、企業ももちろんだが、国民一人ひとりにも求められているというのが新しい国づくりであり、地方分権型の国づくりなのである。
 そのため、あくまでも、一人ひとりがまず自立をすることが基本で、その自立が自分の力でできない人に対して応援をするというのが社会福祉。社会福祉基礎構造改革は、地方分権型の国づくりの基本的な哲学、理念を社会福祉の中で生かそうとしているのだと私は認識している。
(岩田部会長)
 サービスとしての福祉と所得保障としての公的責任という二重構造がある中で、自立ができないときの支援のあり方に自己決定が導入されており、一言で説明するのはむしろ危険なような気もする。
(松尾委員)
 「自立」という言葉は最近の言葉だと思う。措置制度から言葉も変わってきたが、施設の種類によって違っているため、過去の経緯を並べ、一回見てみたらどうかと思う。介護保険だけでなく全体をきちんととらえておく必要がある。かつては「保護」とか「援護」とかという言葉を使っていたはずなので、その経緯を一回並べてもらうといい。
(岩田部会長)
 生活保護法は自立自助の概念が入った法律なので、私の解釈では、日本は従来から非常に自立意識は強かったように思っている。
(小島委員)
 原点に返って社会福祉事業とはどういうものかということを議論するとすれば、社会福祉基礎構造改革でどういう議論があったのかということをもう一度押さえた上で、今、社会福祉事業のあり方をどうとらえて、それを担っている社会福祉法人はどうあるべきだというところに議論が進むのだろうと思う。その辺を、次回御説明いただきたい。
(新津委員)
 第三者評価の実施の結果、大変気になっていることがある。サービスを選ぶときに、事業者を選ぶということが大きいと思うが、実際はサービスを利用してからの自分が受けるサービスについて選ぶということに関して、利用者は非常に弱い立場にあると、特に施設については思っている。
 様々な施設で、理念は明確になってきて、理念に基づく方針も非常に具体性を持ってきているようには思うが、施設、事業所によって、自立の関係で言えば、意向を表出するということを支援している取組みが乏しいということと、それについての考え方にかなり差があるということ。それから主体性を発揮するということについての支援と取組みについてもばらつきがある。
 また、プライバシー保護という当たり前の環境についての考え、あるいは取組みがかなりの施設において差があり、評価する者としても、どこに基準を当てて評価をしたらいいのか悩むことがある。自立という点から、少し社会福祉法人としてのあるべき姿が具体化されるといいのではないか。
(高原委員)
 民間企業の立場から、今後の社会福祉法人のあり方、ガバナンスを検討するにあたって、説明資料の10ページ「社会福祉法人・社会福祉事業の経営主体に関する現状」の情報に加えて、4点ほど資料をお願いしたい。雇用人員、経営規模、民間と実質的な公的支援を受けながらやっている法人との待遇の違い、今後の民営と公営の将来像をどう展望するかという将来の仮説についてである。改革の方向を検討していく場合に、民間企業の代表としてはこの4点について、詳細なデータがほしい。
(佐口委員)
 イコールフッティングに関して、例えば総合規制改革会議などでは、補助金や税制等を含めて考えており、先ほどの報告の中には民間参入前提でいろいろなことを考えるという話があったが、イコールフッティングそのものについて、どのような立場をとっているのか、前提として考え方を伺いたい。
(高岡委員)
 イコールフッティング論としてまず指摘されるが施設整備補助により社会福祉法人が得をしていてイコールフッティングではないではないかということ。社会福祉を続けてきた立場から言うと、行政施策の中で社会的弱者に対する処遇ということで施設整備を進めていくときに、行政が積極的にお金を出して処遇の拠点をつくっていく意味と、国が数値目標を実現するために、施設整備に伴うお金を1カ所に集めていくらつくれと言うような意味がある。
 また、施設整備補助を出すことによって、利用者の負担が安くなっているため、高齢者は相当お金を持っているのでそれを使ってもらったらどうかという意見があり、それはそれで検討に値すると思うが、イコールフッティング論で施設整備の補助に公費が出ているからそれはおかしいという意味では我々は捉えていない。
 課税の問題は、株式会社については配当して残ったお金に対して国民の義務として負担してもらうが、社会福祉法人のような公益に資する法人については、その分を質の高いサービスや、新たな福祉ニーズへの対応、地域福祉への積極的な貢献、公益事業等の財源へもっていくことの方が国民の福祉水準の確保、セーフティネットという意味では効果があると理解している。
(福間氏)
 十分まとめきれないが、民間企業参入の議論というのは公的補助のあるなしというのが特に施設整備の方で問題になるが、一定額の補助があって、あとは自己責任で賄うといった場合に、民間企業であっても基本的な資金力がないとできないし、社会福祉法人の場合もそれなりの経営能力がないとできない。公費頼りでいくようなことではなくて、安定した事業体にならなければいけない。
 社会福祉法人の税制に関しては、福祉の制度を契約制度にしても、どのような制度にしても、どうしても社会的に援助を必要とする状態というのは生まれる。そういう社会的な支援を必要とする人々への優先的な援助や積極的な支援について、税制優遇を受けている社会福祉法人として、それを理念的ではなくて、義務として行うということが必要ではないかという議論をしている。
(村田委員)
 社会福祉法人に関しては、措置の時代までは一般の国民にとってほとんど関係のない存在で、どういう規制を受けてどういう助成があるのか、行政なのか民間なのかということも知らない人が多かった。しかし、契約の時代になり、すべての国民が社会福祉法人のサービスを利用することがあり得るという点で、より身近な存在になってくる。そういう視点を持って議論をしていかなければいけない。
 高岡さんと中村さんの報告で、社会福祉法人の今後のあり方として、地域への貢献や低所得者に対する役割などがあったが、大変厳しい言い方をすると、今さら新しい今後のあり方として打ち出さなくても、あまりにも当然なことであるという印象を受け、果たしてこれが新しい時代の社会福祉法人のあり方として打ち出すことなのだろうかいう感じを持った。
(高岡委員)
 社会福祉法人が国民になじみがないというのはそのとおりだと思う。しかし、社会福祉法人は、昭和26年からあったが、施設経営ということで言えば法人の組織は全く形骸化されていた。施設自体は国民に非常に身近な問題としてとらえられていたと思う。ただ、国民すべてに普遍化された福祉の供給体として施設がどこまでやってきたかということについては、やはり画一的なサービスに終わっていたと思う。問題なければよしということで、サービスそのものも行政の方に向いていたが、これからはサービスの質、それ以外の地域への貢献ということが我々に課せられた課題だと思っている。今までは仕組み上、がんじがらめになっていて、それができなかったと、我々自身の責任でもあるかもしれないが、理解をしている。
(大石委員)
 社会福祉や社会福祉法人はどうあるべきかという議論は必要だとは思うが、ある程度抽象概念の話になってしまうと思う。特別養護老人ホームも保育所も、一般的な感覚でいうと、圧倒的に数が足りず、かつ非常に画一的なサービスで、情報公開がされようとされまいと、中身で選べるものは非常に少ないと感じる。今到達しようとしている目標がどの程度現実的かどうかというファクトと、中期的な目標でよいが、どの程度の、どういう質のどういう内容の施設を整備しなくてはいけないのかということについて、今までまとめられたものがあるとすれば、その目指す姿が本当に今国民に求められているものなのかということを一度検討し、そこから逆算してこういう社会福祉法人はどうあるべきであるとか、ほかの参入をどうするかとか、公的な費用をどう使うのかという議論ができると思う。そういうまとまったものがあれば、ぜひ拝見させていただきたい。
(福田委員)
 昨年7月28日の部会のときに出された、社会福祉の基礎構造改革についての紙にはこれからどういう構造改革をやっていくのかということが説明されていた。情報公開の徹底と、第三者評価制度の導入、財務内容の開示、この3つをやれば、社会福祉法人であれ、医療法人であれ、株式会社であれ、全く関係なくなってしまう。この3つの仕組みを導入した場合、違いが明確にならない限りは、いろいろな事業主体の参入を認めると、そうならざるを得ないのではないかという指摘をさせていただいたので、もう一度再確認する必要がある。
(岩田部会長)
 導入の議論なので、大変根本的なことから具体的なことまであり、どこに行くのかわからないというような感じを持ったと思うが、これからの議論は、少しずつパーツに分けて具体的なところに入れるように事務局と相談していきたい。
 他の論点や歴史的な経緯もあるので、基礎構造改革の理念も一度にとはいかない。何よりもサービスを適切な範囲で確保することが、供給体の良好な競争と安定的な位置を前提として初めてサービスが安定的に供給されるということもあるので、社会福祉法人だけではなく、供給体全体を見通しながら、イコールフッティングというときに、競争相手として何を見ていくかということも含めて、具体的な議論をお願いしたい。
(佐々木委員)
 高岡委員から、経営協での討議を踏まえたご報告を頂いたが、保育関係者も参画しているので、その関連で付け加えることはない。
 サービスにはコストはつきもの。社会福祉の需要に沿革的に公が中心に対応してきたが、介護保険制度まで進んできた。種々の事業分野があるので、基本論の上に、現実的な改革論議ができるとよいと思う。
(総務課長)
 次回、第9回は、3月の下旬から4月にかけての間に本日と同じく、社会福祉事業及び社会福祉法人につきまして、少し議論を整理して御議論を賜りたいと考えている。
(岩田部会長)
 以上で本日の部会を終了する。


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